(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072483
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185068
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE06
5H430EE12
5H430EE17
5H430FF01
5H430FF13
5H430GG08
5H430HH03
5H430HH05
5H430LA04
(57)【要約】
【課題】ハイサイドスイッチICにおいてトランジスタのオン抵抗による出力電圧の低下の対策に要するチップコストの増大を抑える。
【解決手段】電圧入力端子と電圧出力端子との間に接続されたスイッチ用トランジスタと、制御信号に基づいてスイッチ用トランジスタをオン状態またはオフ状態に制御する制御回路とを備えた半導体集積回路装置において、制御回路は、電圧入力端子に入力された前記直流電圧より基準電圧を生成する基準電圧源と、基準電圧と電圧出力端子の電圧を入力としスイッチ用トランジスタの制御端子に印加される電圧を出力する差動アンプと、外部端子からの制御信号に基づいて差動アンプの動作状態を制御する信号を生成するロジック回路とを備え、差動アンプは、ロジック回路の出力信号に応じて制御信号が第1論理レベルの時にスイッチ用トランジスタをオン状態に制御し、第2論理レベルの時にオフ状態に制御するように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される電圧入力端子と電圧出力端子との間に接続されたスイッチ用トランジスタと、制御信号が入力される外部端子と、前記制御信号に基づいて前記スイッチ用トランジスタをオン状態またはオフ状態に制御する制御回路と、を備えた半導体集積回路装置であって、
前記制御回路は、
前記電圧入力端子に入力された前記直流電圧より基準電圧を生成する基準電圧源と、
前記基準電圧と前記電圧出力端子の電圧を入力とし前記スイッチ用トランジスタの制御端子に印加される電圧を出力する差動アンプと、
前記外部端子に入力された前記制御信号に基づいて前記差動アンプの動作状態を制御する信号を生成するロジック回路と、を備え、
前記差動アンプは、前記ロジック回路の出力信号に応じて、前記制御信号が第1の論理レベルの時に前記スイッチ用トランジスタをオン状態に制御し、前記制御信号が第2の論理レベルの時に前記スイッチ用トランジスタをオフ状態に制御することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記基準電圧をVref、前記スイッチ用トランジスタから前記電圧出力端子へ向かって流れる出力電流Ioutとすると、
前記スイッチ用トランジスタは、そのオン抵抗Ronが、Ron<Vref/Ioutなる条件を満たす特性を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記差動アンプは、
一対の差動トランジスタを有する差動入力段と該差動入力段の後段に設けられた出力段とから構成され、
前記出力段のトランジスタは前記差動入力段の出力ノードに制御端子が接続されており、前記制御端子と接地点との間に前記ロジック回路から出力される信号に基づいてオン、オフ制御される第1スイッチ素子が設けられ、
前記制御信号が第2の論理レベルの時に、前記差動入力段の動作電流が遮断され、前記スイッチ用トランジスタをオフ状態に維持した状態でその差動増幅動作を停止するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記スイッチ用トランジスタおよび前記出力段のトランジスタは、Pチャンネル形MOSトランジスタで構成され、
前記出力段のトランジスタは、ソース端子が前記電圧入力端子に接続され、前記制御信号が第2の論理レベルの時に前記第1スイッチ素子がオン状態にされることでオン状態にされて、前記スイッチ用トランジスタをオフ状態に維持することを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記基準電圧源と接地点との間に、前記ロジック回路から出力される信号に基づいてオン、オフ制御される第2スイッチ素子が接続され、
前記制御信号が第2の論理レベルの時に前記第2スイッチ素子がオフ状態にされることで前記基準電圧源が動作を停止することを特徴とする請求項3または4に記載の半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記スイッチ用トランジスタは、Nチャンネル形MOSトランジスタで構成され、
前記差動アンプの出力端子と前記スイッチ用トランジスタの制御端子との間には、前記差動アンプの出力のレベルを押し上げるブートストラップ回路が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧入力端子と出力端子との間に接続されたスイッチ用トランジスタおよび該トランジスタをオン、オフ制御する回路を備えた半導体集積回路装置(IC)に関し、例えばハイサイドスイッチICに利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電源から負荷へ電源電圧を供給する電源ライン上に設けられ、負荷に電源電圧を供給したり遮断したりするための素子(デバイス)としてハイサイドスイッチICがある。
ハイサイドスイッチICは、
図5に示すように、例えばセンサやパソコン周辺機器等のUSBデバイス21へUSB電源20から電源電圧を供給する電源ライン22上に設けられ、マイコン23からの指令による電源の供給/遮断制御や、マイコン23でデバイス21の状態を監視してショートなどの異常が発生した時に、電源供給を遮断してデバイスを保護するために使用される。
【0003】
従来のハイサイドスイッチIC10は、
図6に示すように、電源20からの電源電圧が入力される電圧入力端子INと負荷デバイス21が接続される出力端子OUTとの間に接続されたスイッチ用トランジスタM1および該トランジスタをオン、オフ制御するロジック回路11とにより構成され、ICの外部端子としての制御端子CEに外部のマイコン等の制御装置からオン、オフ制御信号が入力されることで、電源の供給/遮断を行うように構成されている。このような機能を有するハイサイドスイッチICの発明としては、例えば特許文献1や2に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-91584号公報
【特許文献2】特開2012-90214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示されているような構成を有するハイサイドスイッチICにおいては、トランジスタM1のゲート端子がローレベルにされてM1がオンされると、M1のオン抵抗Ronを介して入力端子INと出力端子OUTとの間が導通されて電流が流されるため、
図7に示すように、負荷へ流れる出力電流Ioutに応じて出力電圧Voutが変化してΔVが生じる。
そのため、出力電圧Voutの変動幅を小さくするには、M1としてオン抵抗Ronが小さいつまり素子サイズの大きなトランジスタを使用したりボンディングワイヤの数を増やしたりする必要があり、チップコストの増大を招く。また、出力電流Ioutが急に変化して出力電圧Voutが変化すると、ノイズが発生するため、ノイズ対策として出力端子に接続する安定化用の平滑コンデンサCoとして大容量のコンデンサを使用したりフィルタ回路を設けたりする必要があり、コストアップを招くという課題がある。
【0006】
さらに、トランジスタM1のオン抵抗に関わらず負荷デバイスの電源端子に所定の電源電圧が供給されるようにするには、電源から電圧入力端子に入力される電圧を補正する必要があり、例えばオン抵抗による電圧降下分だけ高い方へずらし、入力電圧を出力電圧の規定範囲に入る中間点に設定するなどの方法が考えられる。しかし、出力端子に接続される負荷デバイスの消費電流の大きさに応じてシステムごとに補正量を変える必要があるため、ユーザの設計負担が大きくなるという課題がある。
【0007】
この発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、トランジスタのオン抵抗による出力電圧の低下の対策に要するチップコストの増大を抑えることができるハイサイドスイッチICとしての半導体集積回路装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、出力電圧の変動を小さくしてノイズの発生を抑えることができ、ノイズ対策に要するコストを少なくすることができるハイサイドスイッチICとしての半導体集積回路装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、システムごとの入力電圧の補正が不要でありもってユーザの設計負担を減らすことができるハイサイドスイッチICとしての半導体集積回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
直流電圧が入力される電圧入力端子と電圧出力端子との間に接続されたスイッチ用トランジスタと、制御信号が入力される外部端子(CE)と、前記制御信号に基づいて前記スイッチ用トランジスタをオン状態またはオフ状態に制御する制御回路と、を備えた半導体集積回路装置において、
前記制御回路は、
前記電圧入力端子に入力された前記直流電圧より基準電圧を生成する基準電圧源と、
前記基準電圧と前記電圧出力端子の電圧を入力とし前記スイッチ用トランジスタの制御端子(ゲート端子)に印加される電圧を出力する差動アンプと、
前記外部端子に入力された前記制御信号に基づいて前記差動アンプの動作状態を制御する信号を生成するロジック回路と、を備え、
前記差動アンプは、前記ロジック回路の出力信号に応じて、前記制御信号が第1の論理レベルの時に前記スイッチ用トランジスタをオン状態に制御し、前記制御信号が第2の論理レベルの時に前記スイッチ用トランジスタをオフ状態に制御するように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する半導体集積回路装置によれば、スイッチ用トランジスタを制御する制御回路を構成する差動アンプが、反転入力端子の電位と非反転入力端子の電位を一致させるように動作することで、基準電圧源と差動アンプとスイッチ用トランジスタが定電圧回路として動作するため、出力電流すなわち負荷デバイスに流れる電流が変化しても出力電圧を一定に維持することができ、トランジスタのオン抵抗による出力電圧の不安定化を防止することができる。また、出力電流の変化による出力電圧の変動を防止してノイズの発生を抑えることができる。
【0010】
また、電圧入力端子に上記定電圧を加えた電圧を印加することで、スイッチ用トランジスタのサイズを大きくするなど出力電圧の低下の対策に要するチップコストの増大を抑えることができるとともに、負荷電流の変化に伴う出力電圧の変動を小さくしてノイズの発生を抑えることができ、ノイズ対策に要するコストを少なくすることができる。
さらに、スイッチ用トランジスタのオン抵抗による電圧降下量が出力電流の大きさに関わらず一定であるため、システムごとに入力電圧の補正量を変える必要がなく、ユーザの設計負担を減らすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電圧入力端子と出力端子との間に接続されたトランジスタを備えたハイサイドスイッチICとしての半導体集積回路装置において、トランジスタのオン抵抗による出力電圧の低下の対策に要するチップコストの増大を抑えることができる。また、出力電圧の変動を小さくしてノイズの発生を抑えることができ、ノイズ対策に要するコストを少なくすることができる。さらに、システムごとの入力電圧の補正が不要であり、ユーザの設計負担を減らすことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を適用したハイサイドスイッチICの一実施形態を示す回路構成図である。
【
図2】実施形態のハイサイドスイッチICの出力電流-出力電圧特性を示す特性図である。
【
図3】実施形態のハイサイドスイッチICの具体的な回路例を示す回路図である。
【
図4】実施形態のハイサイドスイッチICの変形例を示す回路構成図である。
【
図5】ハイサイドスイッチICを使用したシステムの一般的な構成を示すシステム構成図である。
【
図6】従来のハイサイドスイッチICの一般的な構成を示す回路構成図である。
【
図7】
図6に示すハイサイドスイッチICの出力電流-出力電圧特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用したハイサイドスイッチICの一実施形態を示す。なお、
図1において、一点鎖線で囲まれた部分は、単結晶シリコンのような半導体チップ上に半導体集積回路(IC)10として形成され、該IC10の出力端子OUTに出力安定化用のコンデンサCoが接続されている。
【0014】
本実施形態のハイサイドスイッチIC10においては、
図1に示すように、直流電圧VDDが印加される電圧入力端子INと負荷となる各種デバイス21が接続される出力端子OUTとの間に、PチャンネルMOSトランジスタからなるスイッチ用のトランジスタM1が接続されている。また、IC10には、外部のマイコン(CPU)などからの信号が入力されるチップ制御用の端子CEと、端子CEの電位を入力とするロジック回路11およびロジック回路11の出力によってトランジスタM1のゲート制御信号を生成する差動アンプ(差動増幅回路)12が設けられており、ロジック回路11は端子CEの電位に応じて差動アンプ12をオン、オフ制御する。ロジック回路11はインバータなどの論理ゲート回路によって、所望の論理機能を有するように構成される。
【0015】
差動アンプ12の反転入力端子(-)と電圧入力端子INとの間には基準電圧Vrefを生成する基準電圧源13が接続され、差動アンプ12の非反転入力端子(+)には出力端子OUTの電圧Voutが入力されている。そのため、差動アンプ12は、イマジナリーショートにより、出力端子OUTの電圧VoutすなわちトランジスタM1のドレイン電圧が反転入力端子(-)の電圧(VDD-Vref)と同じ電圧となるようにM1のゲート端子を駆動する。これにより、トランジスタM1と差動アンプ12と基準電圧源13は、
図2に示すように、負荷デバイス21へ流れる出力電流Ioutが変化しても一定の電圧(VDD-Vref)を生成し出力する定電圧回路として動作することとなる。
【0016】
なお、スイッチ用のトランジスタM1は、そのオン抵抗をRon、当該ICの仕様として定めた最大出力電流をIoutとすると、オン抵抗がRon<Vref/Ioutなる条件を満たす特性を有するように設計すれば良い。また、負荷に流れる電流の大小にかかわらず、負荷デバイス21の電源電圧端子に所定の電圧Vccを供給したい場合には、電圧入力端子INに入力する電源電圧VDDを、Vccよりも入力端子INの電圧と出力端子OUTの電圧の差分に相当するΔVだけ高い方へシフトした電圧に設定すればよい。
【0017】
図5に示す従来のハイサイドスイッチICにおいては、負荷デバイス21へ流れる出力電流が異なると供給される電圧が変動するため、出力電流Ioutが変動しても出力電圧Voutの変動幅を小さくするには、前述したように、M1として素子サイズの大きなトランジスタを使用したりボンディングワイヤの数を増やしたりする必要があり、チップコストの増大を招くという課題があった。これに対し、本実施形態のハイサイドスイッチICにおいては、トランジスタM1が定電圧回路の出力トランジスタとして動作するため、予めΔVだけ高い電圧を入力端子INへ入力すれば、M1として素子サイズのかなり大きなトランジスタを使用したりボンディングワイヤの数を増やしたりする必要がなく、チップコストの増大を回避することができる。
【0018】
また、出力電流Ioutが変動しても出力電圧Voutの変動を小さくすることができるため、ノイズの発生を抑えることができ、ノイズ対策に要するコストを少なくすることができる。
さらに、負荷デバイス21へ流れる出力電流Ioutが変化しても一定の電圧を生成し出力するため、出力端子に接続する負荷デバイス21として消費電流の異なるもの使用する場合にも、入力電圧の補正が不要であり、ユーザの設計負担を減らすことができる。
なお、上記基準電圧Vrefの適切な値としては、例えば0.05V~0.5Vのような範囲の値が考えられる。
【0019】
次に、
図1に示すハイサイドスイッチIC10の具体的な回路例ついて、
図3を用いて説明する。
図3に示すように、差動アンプ12は、NチャンネルMOSトランジスタからなりソース端子が共通接続された差動トランジスタM5,M6と、M5,M6の共通ソースと接地点との間に接続された定電流源CC1と、M5,M6のドレイン端子と電圧入力端子INとの間に接続されたPチャンネルMOSトランジスタからなるアクティブ負荷トランジスタM7,M8とからなる差動入力段と、電圧入力端子INと接地点との間に直列に接続されたPチャンネルMOSトランジスタM9および定電流源CC2からなる出力段とを備える。トランジスタM7はゲート端子とドレイン端子が結合され、M8のゲート端子はM7のゲート端子に接続されている。また、上記出力段のトランジスタM9のゲート端子は、トランジスタM8とM6の接続ノードすなわち差動入力段の出力ノードN0に接続されている。
【0020】
基準電圧源13は、電圧入力端子INと接地点との間に直列に接続されたデプレッション型のNチャンネルMOSトランジスタM2およびエンハンスメント型のNチャンネルMOSトランジスタM3と、電圧入力端子INと接地点との間に直列に接続された抵抗R2-NチャンネルMOSトランジスタM4-抵抗R1と、を備える。
そして、デプレッション型のトランジスタM2はゲートとソースが結合されて常時オン状態とされ、MOSトランジスタM3のゲート端子はM4と抵抗R1との接続ノードN2に接続され、MOSトランジスタM4のゲート端子はM2とM3との接続ノードN1に接続されている。これにより、基準電圧源13は、MOSトランジスタM3のゲート・ソース間電圧をVGS3、抵抗R2とNチャンネルMOSトランジスタM4のドレイン端子の接続ノードN3の電圧をVrefとおくと、
Vref=(R2/R1)×VGS3
で表わされる基準電圧Vrefを生成し、生成された基準電圧Vrefが差動アンプ12の差動トランジスタM5のゲート端子に入力され、差動アンプ12の他方の差動トランジスタM6のゲート端子には出力端子の電圧Voutが入力されるように構成されている。
【0021】
さらに、本実施形態においては、基準電圧源13および差動アンプ12のサブグランドラインSGLと主グランドラインMGLとの間および差動アンプ12の出力段のトランジスタM9のゲート端子と主グランドラインMGLとの間に、ロジック回路11からの出力信号によってオン、オフされるスイッチ素子SW1,SW2がそれぞれ設けられており、スイッチ素子SW1とSW2は、ロジック回路11からの出力信号によって相補的にオン状態またはオフ状態されるように構成されている。
【0022】
上記のような構成の場合、ロジック回路11は、例えばチップ制御用の端子CEの論理レベルを反転するインバータと、このインバータの出力をさらに反転するインバータとにより構成することができ、後段のインバータの出力でスイッチ素子SW1を制御し、前段のインバータの出力でスイッチ素子SW2を制御するように構成される。
これによって、制御用端子CEにハイレベルの信号が入力されると、スイッチ素子SW1がオン状態にされて基準電圧源13および差動アンプ12が活性化されるとともに、スイッチ素子SW2がオフ状態にされて、電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に接続されたスイッチ用のトランジスタM1が、差動アンプ12の出力によってオン状態に制御される。
【0023】
一方、制御用端子CEにローレベルの信号が入力されると、スイッチ素子SW1がオフ状態にされて基準電圧源13および差動アンプ12の動作が停止されるとともに、スイッチ素子SW2がオン状態にされて、差動アンプ12の出力段のトランジスタM9のゲート端子に接地電位が印加されてM9が完全なオン状態にされることで、電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に接続されたスイッチ用のトランジスタM1のゲート端子に入力電圧VDDが印加されてM1がオフ状態になる。
【0024】
なお、ICの動作上はスイッチ素子SW1を省略することも可能であるが、スイッチ素子SW1を設けることで、スイッチ用のトランジスタM1をオフ状態にさせている間におけるICの消費電流を低減することができる。また、ICの低消費電流化の観点からは、ロジック回路11を構成するインバータもCMOSインバータとするのが望ましい。
また、差動アンプ12の定電流源CC1,CC2を例えばカレントミラー回路で構成するような場合、ロジック回路11の出力によって定電流源CC1,CC2を直接オン、オフ制御するように構成しても良い。
【0025】
デプレッション型MOSトランジスタを使用した基準電圧源13の基本的な構成は、特開2000-112548号公報等において開示されていて公知であるので、詳しい動作の説明は省略するが、デプレッション型トランジスタM2が有する正の温度特性を、トランジスタM3が有する負の温度特性でキャンセルして、温度依存性のない基準電圧Vrefを生成することができる。
また、ソースフォロワ回路の部分に抵抗R2,R1を設けているため、抵抗比を適切に設計することで、入力電圧VDDを基準にして前述した0.05V~0.5Vの基準電圧Vrefを生成することができる。
【0026】
(変形例)
図4には上記実施形態のハイサイドスイッチIC10の変形例が示されている。
図4に示す変形例のハイサイドスイッチIC10は、電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に接続されているスイッチ用のトランジスタM1として、PチャンネルMOSトランジスタの代わりにNチャンネルMOSトランジスタを使用するとともに、差動アンプ12の後段にチャージポンプなどからなるブートストラップ回路14を設けて、差動アンプ12の出力電圧を押し上げた電圧でトランジスタM1をオンさせるように構成したものである。
なお、本変形例においては、差動アンプ12の非反転入力端子に基準電圧Vrefが入力され、反転入力端子に出力電圧Voutが入力されるように構成される。
【0027】
ブートストラップ回路14を設けずに、差動アンプ12の出力電圧でNチャンネル形のトランジスタM1をオンさせると、M1が不完全なオン状態となって出力電圧Voutが入力電圧VDDよりも、MOSトランジスタのしきい値電圧分だけ低い電圧になってしまうが、差動アンプ12の出力電圧を押し上げた電圧でトランジスタM1をオンさせることで、完全なオン状態にして出力電圧Voutが低くなるのを防止することができる。また、同じ電流供給能力を実現したい場合には、PチャンネルMOSトランジスタの代わりにNチャンネルMOSトランジスタを使用することで、素子サイズを約1/2にすることができ、ICのチップサイズを低減することができるという利点がある。
【0028】
また、ハイサイドスイッチIC10に、スイッチ用のトランジスタM1を過電流から保護する過電流保護回路や出力電流Ioutが所定値以上流れないように電流を制限するカレントリミット回路、チップの温度が所定値以上になったことを検出した場合に、前記出力トランジスタをオフさせるための信号を生成し出力するサーマルシャットダウン回路を設けるように構成しても良い。
ハイサイドスイッチICにおける過電流保護回路やカレントリミット回路、サーマルシャットダウン回路は公知の技術であるので、回路の構成例および動作の説明は省略する。
【0029】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、ハイサイドスイッチIC10の内部回路を構成するトランジスタとしてMOSトランジスタを使用したものを示したが、MOSトランジスタの代わりにバイポーラ・トランジスタを使用するようにしてもよい。また、トランジスタM1は、オン抵抗を下げるためディスクリートのトランジスタを使用してもよい。
【0030】
また、ハイサイドスイッチIC10に、過電流検出回路が過電流を検出したりカレントリミット回路やサーマルシャットダウン回路が電流異常やチップ温度異常を検出したりした場合に、検出信号を外部へ出力するための外部端子と検出信号出力回路を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
10…ハイサイドスイッチIC、11…ロジック回路、12…差動アンプ、13…基準電圧源、14…ブートストラップ回路、M1…スイッチ用トランジスタ、CE…制御用の外部端子