(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000725
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】底地の課税評価額予測サービス支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/10 20230101AFI20221222BHJP
G06Q 50/16 20120101ALI20221222BHJP
【FI】
G06Q40/00 300
G06Q50/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101710
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】520393842
【氏名又は名称】株式会社山口地所
(71)【出願人】
【識別番号】520393853
【氏名又は名称】株式会社ランドフォーライフ
(71)【出願人】
【識別番号】521269746
【氏名又は名称】株式会社鈴木不動産鑑定
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆志
(72)【発明者】
【氏名】田中 利彦
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049CC28
5L055BB00
(57)【要約】
【課題】底地の土地課税評価額予測サービスを、クラウド型サーバを用いて簡易かつ迅速に提供できる支援システムを提供する。
【解決手段】クラウド型サーバは、底地の所有者などの依頼者側の第一の通信端末に対して底地の基礎データのアップロードを許容する一方で、依頼者側の依頼に応じた受諾者側の第二の通信端末に対しては、該基礎データのダウンロードを許容する基礎データ橋渡し手段と、第二の通信端末に対して、基礎データに基づいて作成され、かつ底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、底地の地代を基準とした課税評価予想額とを含んだ課税評価額予測レポートのアップロードを許容する一方で、第一の通信端末に対しては、予測レポートのダウンロードを許容する課税評価額予測レポート橋渡し手段とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウド型サーバを通じて行う、土地課税評価額予測サービス支援システムであって、
前記土地は第三者に賃貸されている底地であり、
前記クラウド型サーバは、
依頼者側の第一の通信端末に対して前記底地の基礎データのアップロードを許容する一方で、前記依頼者側の依頼に応じた受託者側の第二の通信端末に対しては該基礎データのダウンロードを許容する基礎データ橋渡し手段と、
前記第二の通信端末に対して、前記基礎データに基づいて作成され、かつ前記底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、前記底地の地代を基準とした課税評価予想額とを含んだ課税評価額予測レポートのアップロードを許容する一方で、前記第一の通信端末に対しては、該予測レポートのダウンロードを許容する課税評価額予測レポート橋渡し手段と、
を備えていることを特徴とするクラウド対応型の底地の課税評価額予測サービス支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記課税評価額予測レポートは、底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、底地の地代を基準とした課税評価予想額とを対比し、表示したものである、クラウド対応型の底地の課税評価額予測サービス支援システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第一の通信端末は、画像の送信機能を備えた携帯端末である、クラウド対応型の底地の課税評価額予測サービス支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラウド型サーバを通じて行う底地に特化した課税評価額予測サービス支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する従来技術の例として、次の特許文献には、農地から宅地に転用するときの宅地造成費を評価し不動産投資の判断をすることができる相続税評価システムが提案されている。このシステムは、農地転用宅地相続税評価額を算出することが特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近時、相続に係る土地課税評価額を予測するサービスはコンサルティング会社や不動産鑑定士等が依頼者と面談し、土地の基礎データや評価レポートなどを紙媒体として収集し、授受するという従来の手法で実施されており、その整理、収集に手間が掛かるという問題がある。これに対して本発明は、クラウド型サーバを用いて、底地の土地課税評価額予測サービスを、不動産鑑定士などの専門家が行って得た鑑定結果をベースにして提供することで、従来は殆ど利用のなかった底地の土地課税評価を、簡易かつ迅速に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、クラウド型サーバを通じて行う、土地課税評価額予測サービス支援システムであって、評価対象となる土地は第三者に賃貸されている底地に特化されている。
クラウド型サーバは、基礎データ橋渡し手段と、課税評価額予測レポート橋渡し手段とを備えており、ここに、基礎データ橋渡し手段は、底地の所有者などの依頼者側が使用する第一の通信端末に対して、底地の基礎データのアップロードを許容する。その一方で、依頼者側の依頼に応じた受諾者側の第二の通信端末に対しては、該基礎データのダウンロードを許容する。また、課税評価額予測レポート橋渡し手段は、第二の通信端末に対しては、基礎データに基づいて作成され、かつ底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、底地の地代を基準とした課税評価予想額とを含んだ課税評価額予測レポートのアップロードを許容する。そして、その一方で、第一の通信端末に対しては、該予測レポートのダウンロードを許容する構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、底地の土地課税評価額予測サービスがインターネットを用いて、簡易かつ迅速に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る底地の課税評価額予測サービス支援システムの基本的な構成図である。
【
図2】(a)、(b)はそれぞれ底地の路線価を基準とした課税評価予測額、実勢価格又は地代を基準とした課税評価額の計算例を示す図面である。
【
図3】課税評価額予測レポートの一例を示す図面である。
【
図4】本発明の支援システムを構成するIT機器間のデータ伝送を示すシステム図である。
【
図5】本発明の支援システムを構成するIT機器の基本処理を時系列的に示すフロー図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明システムを図に従って詳細に説明する。
図1は本発明システムの基本的な構成図である。このシステムSは、底地の所有者などの依頼者がインターネットを用いて、特定サイトにアクセスし、サービスを依頼すれば、そのサイトを通じて、底地の相続税対策として有益な課税評価額予測レポートを簡易かつ迅速に取得できる。
【0009】
図1に示すように支援システムは、コンサルタント会社等によって運営されるクラウド型サーバ10と、底地の所有者などの依頼者側が所持する第一の通信端末11と、不動産鑑定士等の受託者側が所持する第二の通信端末12とで構成される。なお13はコンサルタント会社等に設置されたサーバメンテナンス用の通信端末である。
【0010】
クラウド型サーバ10は、インターネット上に構成された仮想サーバである。
第一の通信端末11は、底地の所有者などの依頼者側に設置され、ノートパソコン、タブレット、あるいはスマートフォンが代表的であるが、写真や図面を撮影して伝送するためにカメラを搭載していることが望ましい。また、第二の通信端末12は、不動産鑑定士や税理士の事務所などに設置され、一般的なパーソナルコンピュータを想定しているが、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンであってもよい。
【0011】
クラウド型サーバ10は、機能的要素として、第一の通信端末11に対しては、底地の基礎データのアップロードを許容する一方で、第二の通信端末12に対しては、該基礎データのダウンロードを許容する基礎データ橋渡し手段10aと、第二の通信端末12に対して、底地の基礎データに基づいて作成され、かつ底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、底地の地代を基準とした課税評価額とを含んだ課税評価額予測レポートのアップロードを許容する一方で、第一の通信端末11に対しては、該予測レポートのダウンロードを許容する課税評価額予測レポート橋渡し手段10bとを備えている。
【0012】
なお課税評価額予測レポートは、様式は問わないが、底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、底地の地代を基準とした課税評価額とを区分し、それらを比較可能な形式で表示するようになっている。
【0013】
この構成では、クラウド型サーバ10はファイル共有プログラムを稼働して実現されており、第一、第二の通信端末12には共有プログラムに対して電子ファイルをアップロード及びダウンロードするためのクライアントプログラムがインストールされている。ファイル共有プログラムは例えばエバーノート社のEvernote(登録商標)等を用いることができる。なお第一の通信端末11を操作する依頼者や第二の通信端末12を操作する受託者はファイル共有プログラムのユーザーとして予め登録されている必要がある。
【0014】
クラウド型サーバ10に第一の通信端末11からアップロードされる底地の基本情報は、相続に係る底地の登記情報、賃貸借契約情報、一時金や地代の領収記録等が記載された電子ファイルであるが、これは書類を撮影した画像ファイルであっても構わない。
クラウド型サーバ10に第二の通信端末12からアップロードされる課税評価額予測レポートは、底地の路線価を基準とした課税評価予測額、底地の地代又は実勢価格を基準とした課税評価額が対比して記載された電子ファイルであるが、これは例えばPDF(登録商標)であってもよい。
【0015】
ところで底地を相続する場合、底地の課税評価額は、底地の路線価を基準とした課税評価額が採用され、これは底地の地代又は実勢価格を基準とした課税評価額よりも大幅に高くなっている。この点の理解のために以下土地の課税評価について簡単に説明する。
【0016】
土地の課税評価の基準としては、公示地価、相続税路線価、固定資産税路線価がある。
公示地価は、国土交通省が例年3月に公表するその年1月1日時点における全国の標準地の土地価格のことであり、不動産取引時の評価額の目安となるものである。
一方の相続税路線価は、国税局長が例年7月に公表するその年の1月1日時点における相続税や贈与税を算定基準となるものであり、固定資産税路線価は、市町村長が例年3月に公表する(3年毎に評価替え)する固定資産税の他、登録免許税、不動産取得税等の算定基準となるものである。なお相続税路線価、固定資産税路線価は、現行では、それぞれ公示地価の80%、70%の水準となるように決定されている。
【0017】
本発明が着目している底地の路線価を基準とした課税評価予測額は、基本的に底地を当地域の不動産取引の実勢価格の観点で評価するものであるが、底地の流通性はきわめて低く、底地の所有者と借地権者との間での取引しかないというのが現実である。したがって、底地をそのまま第三者の譲渡することはほぼ不可能であるから、ここでいう課税評価額は、借地の所有者、借地権者間、そして税務当局にのみに通用する理論的なものとなる。
評価額の計算方法としては、底地の相続税路線価に面積を掛けて更地としての評価額を算出し、それに底地割合を掛けることで、課税評価額が算出される。底地割合は、更地の価値を借地権の価値と底地の価値とに分けたときに後者が占める割合(借地権割合+底地割合=100%)である。底地割合は、公示地価に借地権割合が併記されているから、そこから逆算すれば得られる。しかしながら、正確な評価には路線価や底地割合だけでなく、底地の固有条件、例えば不整形地補正等も考慮する必要があるので、不動産鑑定士等による専門家の鑑定が不可欠である。
【0018】
一方、底地の地代を基準とした課税評価額は、その底地を収益性の観点で評価するものである。底地から得られる収益は基本的に地代であるが、更新料や承諾料等の一時金もそこに含まれる。ただし一時金は不確定な面もあり、底地の賃貸借契約書に特記されているか否か等が重要な問題になる。通常の地代(賃貸借契約時に相応の一時金が支払われている)は更地の価額×底地割合×6%とされており、相応の地代(賃貸借契約時に相応の一時金が支払われていない)は更地の価格×6%とされている。しかしながら地代は長期間低廉なまま放置されていることも多いので、ここでの課税評価額としては、実際の地代の還元利回り(総収益から必要経費等を差し引いた利回り)を2~4%に設定して逆算することが望ましいと考えられる。しかし、還元利回り等の設定においては当地域の実情等を考慮する必要もあるから、やはり不動産鑑定士等の専門家による鑑定が必要である。
【0019】
以下、底地の路線価を基準とした課税評価予測額及び地代を基準とした課税評価予想額の算出を具体的に説明する。
図2(a)、(b)はそれぞれ底地の路線価を基準とした課税評価予測額、実勢価格又は地代を基準とした課税評価額の計算例を示す図面である。
【0020】
図2(a)に示すように更地として公示地価が15,000万円とされる底地の場合、その相続税路線価を基準とした概算の課税評価額は、底地割合が60%と仮定すれば、15,000万円×0.8×0.6=7,200万円になる。
【0021】
これに対して
図2(b)に示すように、その同一底地の固定資産税路線価を基準とした課税評価額は12,000万円であり、その維持のための必要経費(固定資産税、都市計画税)は204万円となる。ここで底地割合が60%、かつ地代は通常の地代の70%(賃貸借契約時からの地価上昇を考慮)、すなわち15,000万円×0.6×0.06×0.7=378万円であれば、必要経費を差し引いた純収益は174万円である。ここで底地の還元利回りを3%と仮定すれば、地代を基準とした課税評価額は、174万円÷0.03=5,800万円ということになる。
【0022】
このように底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、地代を基準とした課税評価予測額は一致せず、特に地代が低廉な場合は前者が後者よりも大幅に高くなる。
【0023】
このような事情があるので、相続税対策としては、相続人を株主とする同族企業を底地の所有者が存命の内に設立し、底地をその同族企業に譲渡するという方法が有効になり得る。底地を同族企業に譲渡しておけば、相続人は底地の相続税を支払うことなく、より低額な譲渡所得税を払うことになって節税効果が得られる。このとき底地の譲渡所得税は、その課税評価額が低いほど節税効果はあるが、低廉譲渡に該当しない譲渡価格で同族企業に譲渡することも重要である。
【0024】
図3は課税評価額予測レポートの一例を示す図面である。
この図に示すように、課税評価額予測レポートは、底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、底地の実勢価格又は地代を基準とした課税評価額とを対比できるような形式になっており、更に前者の課税評価予測額から推定される相続税予想額や、後者の課税評価予測額から推定される譲渡所得税予想額も併記されている。
【0025】
次いで本発明の支援システムの基本動作を説明する。
図4は支援システムを構成するIT機器間のデータ伝送を示すシステム図である。図中、(1)、(2)は底地の基礎データの伝送を示している。また(3)は課税評価予測レポートの作成工程、(4)、(5)は課税評価予測レポートの伝送を示している。
【0026】
このシステム図に示すように、まず依頼者側は、第一の通信端末11によって、クラウド型サーバ10にログインして、底地の課税評価額予測レポートの作成を依頼し、依頼が受付けられると、サーバ10の指示に従って、底地の登記謄本、賃貸借契約書、地代や一時金の受領記録等の書類を撮影するなどして、その電子ファイルを作成する。
作成した電子ファイルは、底地の基本データとしてアップロードする(1)。
クラウド型サーバ10は、第一の通信端末11から課税評価額予測レポートの依頼を受けると、提携先の不動産鑑定事務所などの第二の通信端末12に通知する。第二の通信端末12が複数ある場合には、一斉に依頼を受けていることを通知する。
いずれかの提携先の不動産鑑定士が依頼者側の依頼を受諾すると、受諾者側は、クラウド型サーバ10の指示に従って、クラウド型サーバ10にログインして前記底地の基本データをダウンロード(2)し、その底地の基本データに基づいて、固定資産税の軽減予想総額と、償却資産税の予想総額とを算出して課税評価額予測レポートを作成する(3)。
かくして作成された課税評価額予測レポートは、第二の通信端末12を通じてクラウド型サーバ10にアップロードされる(4)。
クラウド型サーバ10は、そのアップロードを受けると、依頼者側の第一の通信端末11に、課税評価額予測レポートが作成されたことを通知する。
依頼者が、その通知を受けると、第一の通信端末11を通じてクラウド型サーバ10にログインして、課税評価額予測レポートをダウンロード(5)し、それを画面又は印刷表示させる。依頼者は、このような方法で、課税評価額予測レポートを取得することが出来るので、、課税評価額予測レポートを見れば、底地の路線価を基準とした課税評価予測額と、底地の実勢価格又は地代を基準とした課税評価額とを対比することが可能となり、有益な相続税対策が積極的に行えるようになる。
【0027】
図5は支援システムを構成するIT機器の基本処理を時系列的に示すフロー図である。ここにステップS11~S13,S18,S19は第一の通信端末11、ステップS14~S17は第二の通信端末12の動作である。
【0028】
以上の説明から理解されるように、本発明によればクラウド型サーバを通じて底地の基礎データや課税評価額レポートが授受されるので、従来ではなかった底地の土地課税評価額予測サービスを簡易かつ迅速に取得できる。
【符号の説明】
【0029】
10 クラウド型サーバ
10a 基礎データ橋渡し手段
10b 課税評価額予測レポート橋渡し手段
11 第一の通信端末
12 第二の通信端末