(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007255
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20230111BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20230111BHJP
A23L 3/3418 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
A23L3/36 Z
A23L3/3418
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110383
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】西坂 洋輔
【テーマコード(参考)】
3L345
4B021
4B022
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA30
3L345BB01
3L345GG19
3L345GG25
3L345KK02
3L345KK04
4B021MC05
4B021MK01
4B021MP10
4B022LA01
4B022LA04
4B022LN01
4B022LT06
(57)【要約】
【課題】貯蔵室内の二酸化炭素濃度を外気より高く保持できる貯蔵庫を提供する。
【解決手段】貯蔵庫10は、食料を貯蔵する貯蔵室30と、この貯蔵室30の二酸化炭素濃度を増加させる増二酸化炭素部60と、を有する。増二酸化炭素部60は、貯蔵室30内の気体を循環させる第1流路61と、外気が通過する第2流路66と、第1流路61に対応する放二酸化炭素位置PAと第2流路66に対応する吸二酸化炭素位置PBとを移動可能に回転し、二酸化炭素吸脱着能を備えるハニカムローター80と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食料を貯蔵する貯蔵室と、この貯蔵室の二酸化炭素濃度を増加させる増二酸化炭素部と、を有する貯蔵庫において、
前記増二酸化炭素部は、
前記貯蔵室内の気体を循環させる第1流路と、
外気が通過する第2流路と、
前記第1流路に対応する放二酸化炭素位置と前記第2流路に対応する吸二酸化炭素位置とを移動可能に回転し、二酸化炭素吸脱着能を備えるハニカムローターと、を備える、ことを特徴とする貯蔵庫。
【請求項2】
前記ハニカムローターがアミンを担持したアミンハニカムローターである、請求項1に記載の貯蔵庫。
【請求項3】
前記ハニカムローターがアミンをグラフト担持したアミングラフトハニカムローターである、請求項1又は2に記載の貯蔵庫。
【請求項4】
前記第1流路を通過する気体の温度は、前記第2流路を通過する気体の温度より低い、請求項1~3のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【請求項5】
前記放二酸化炭素位置において前記ハニカムローターを通過する気体の流速は、前記吸二酸化炭素位置において前記ハニカムローターを通過する気体の流速よりも速い、請求項1~4のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵室内の冷却に用いられるヒートポンプを備え、
前記ヒートポンプからの放熱によって前記吸二酸化炭素位置に向かう気体が加熱される、請求項1~5のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【請求項7】
前記貯蔵室内に白金を含む触媒が設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【請求項8】
前記貯蔵室内の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素検出手段を有し、
前記二酸化炭素検出手段による二酸化炭素濃度の検出結果に基づいて、前記ハニカムローターの回転有無および前記ハニカムローターの回転速度が制御される、請求項1~7のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【請求項9】
前記貯蔵庫は冷蔵庫である、請求項1~8のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先進国における食料浪費の低減が課題となっている。そこでフードロス低減のため、食料の品質保持期間、特に痛みやすい青果物の品質保持期間を延長する技術が各種検討されている。
【0003】
青果物等の食料が傷む原因は、酸素による直接酸化や、エチレンによる過熟成、細菌やカビなどの微生物による食料の腐敗等、多様な要因が主である。そのため青果物を含む冷蔵庫や低温倉庫といった貯蔵庫においては、温度、湿度、光度、酸素濃度、二酸化炭素濃度、エチレン量等のパラメーターを制御することによって、長期間の品質保持を目指している(非特許文献1)。
【0004】
例えば、冷蔵庫においては、一般に、冷蔵庫を構成する箱体内部の上部に冷蔵室、中間部に冷凍室、下部に野菜室を配置し、それぞれの貯蔵室同士は熱の移動が少ないように断熱仕切壁により区画されている。そして、冷蔵庫として一般的に主流である間冷式冷蔵庫(冷却器で冷やされた冷気を、送風ファンによって冷凍室、冷蔵室、野菜室に吹き出す方式の冷蔵庫)では、冷蔵庫内部に冷気を生成する冷凍サイクルを備え、この冷凍サイクルの冷却器で生成された冷気を送風機により各貯蔵室に循環させて貯蔵物の冷却を行っている。
このような冷蔵庫内において、酸素を燃焼させることで酸素を低減し、二酸化炭素を増加させる方法も開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】月報野菜情報 2016年9月号 44頁~56頁 野菜の品質保持技術について
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の燃焼を含む酸素の酸化反応は発熱反応であり、貯蔵庫の開閉毎に庫内で発熱を生じさせた後、ヒートポンプで発熱分も冷却することはエネルギー効率が大きく悪化するという問題があった。
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、貯蔵庫内で酸素を消費するような酸化反応(発熱反応)を必要とせず、エネルギー効率に優れ、貯蔵庫内の二酸化炭素濃度を外気より高く保持できる貯蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは電力産業や鉄鋼産業等の大規模排出源からの二酸化炭素回収に用いられるアミン系吸収液やアミン系固体吸収剤を用いて、貯蔵庫内二酸化炭素の高濃度化を検討したが、脱離時に熱量が必要であることや、二酸化炭素の回収系から脱離系に液体や固体を移動させるタイミングで冷気が庫外に放出されるという問題が新たに見いだされた。そこで、更なる検討の結果、二酸化炭素吸着能を持つハニカムローターを介して外気から二酸化炭素を回収し、庫内に継続的に二酸化炭素を放出することによって、貯蔵庫内の二酸化炭素濃度を増加させ、その状態を維持できることがわかった。
【0009】
[1] 食料を貯蔵する貯蔵室と、この貯蔵室の二酸化炭素濃度を増加させる増二酸化炭素部と、を有する貯蔵庫において、
前記増二酸化炭素部は、
前記貯蔵室内の気体を循環させる第1流路と、
外気が通過する第2流路と、
前記第1流路に対応する放二酸化炭素位置と前記第2流路に対応する吸二酸化炭素位置とを移動可能に回転し、二酸化炭素吸脱着能を備えるハニカムローターと、を備える、ことを特徴とする貯蔵庫。
【0010】
[2] 前記ハニカムローターがアミンを担持したアミンハニカムローターである、[1]に記載の貯蔵庫。
【0011】
[3] 前記ハニカムローターがアミンをグラフト担持したアミングラフトハニカムローターである、[1]又は[2]に記載の貯蔵庫。
【0012】
[4] 前記第1流路を通過する気体の温度は、前記第2流路を通過する気体の温度より低い、[1]~[3]のいずれかに記載の貯蔵庫。
【0013】
[5] 前記放二酸化炭素位置において前記ハニカムローターを通過する気体の流速は、前記吸二酸化炭素位置において前記ハニカムローターを通過する気体の流速より速い、[1]~[4]のいずれかに記載の貯蔵庫。
【0014】
[6] 前記貯蔵室内の冷却に用いられるヒートポンプを備え、
前記ヒートポンプからの放熱によって前記吸二酸化炭素位置に向かう気体が加熱される、[1]~[5]のいずれかに記載の貯蔵庫。
【0015】
[7] 前記貯蔵室内に白金を含む触媒が設けられている、[1]~[6]のいずれかに記載の貯蔵庫。
【0016】
[8] 前記貯蔵室内の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素検出手段を有し、
前記二酸化炭素検出手段による二酸化炭素濃度の検出結果に基づいて、前記ハニカムローターの回転有無および前記ハニカムローターの回転速度が制御される、[1]~[7]のいずれかに記載の貯蔵庫。
【0017】
[9] 前記貯蔵庫は冷蔵庫である、[1]~[8]のいずれかに記載の貯蔵庫。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貯蔵庫内の二酸化炭素濃度を外気より高く保持することができる。それにより、青果物や花卉等の代謝を抑制し、鮮度を長時間保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態を説明する図であって、貯蔵庫の一適用例である冷蔵庫を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の冷蔵庫に含まれる得る冷却部の概略構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図2の冷蔵庫に含まれる得る増二酸化炭素部の概略構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図4の増二酸化炭素部に含まれる得る二酸化炭素交換装置を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図4の二酸化炭素交換装置に含まれる得るハニカムローターを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7のハニカムローターの一部分を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図4に対応する図であって、増二酸化炭素部の一変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図4に対応する図であって、増二酸化炭素部の他の変形例を示す図である。
【
図11】
図11は、
図4に対応する図であって、冷却部及び増二酸化炭素部の一変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0021】
本明細書において、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0022】
方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3を共通する方向として示している。第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3は、互いに直交している。矢印の先端側が、各方向の一側となる。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、例えば
図6に示すように、円の中に点を設けた記号により示した。
【0023】
図1~
図11は、一実施の形態を説明するための図であり、図示された具体例を参照して、一実施の形態を説明する。本実施の形態による貯蔵庫10は、食料を貯蔵する貯蔵室30と、この貯蔵室30の二酸化炭素濃度を増加させる増二酸化炭素部60と、を有している。増二酸化炭素部60によれば、貯蔵室30内における二酸化炭素濃度を空気における二酸化炭素濃度よりも高濃度に維持することができる。とりわけ本実施の形態によれば、貯蔵庫10内で酸素を消費するような酸化反応を必要とせず、優れたエネルギー効率にて、貯蔵室30内における二酸化炭素濃度を高濃度に維持し得る工夫がなされている。これにより、青果物等の食料の代謝を抑制して、長期間に亘って品質を保持しながら食料を貯蔵することができる。
【0024】
貯蔵庫10は、食料を貯蔵する貯蔵室30を有した種々の設備に適用可能である。貯蔵庫10は、具体例として、倉庫、冷蔵倉庫、冷凍倉庫、コンテナ、冷蔵コンテナ、冷凍コンテナ、家庭用又は業務用の冷蔵庫12、冷蔵車両、冷凍車両等であってもよい。図示された例において、貯蔵庫10は冷蔵庫12である。以下、貯蔵庫10を冷蔵庫12に適用した例について説明するが、本実施の形態のよる貯蔵庫10は、冷蔵庫12への適用に限定されない。
【0025】
図示された冷蔵庫12は、貯蔵庫本体20及び閉鎖体25と、冷却部40、及び増二酸化炭素部60を有している。貯蔵庫本体20及び閉鎖体25は、貯蔵室30を区画する。図示された貯蔵庫10は、更に、制御器35及び二酸化炭素検出部36を有している。
【0026】
貯蔵庫本体20は、開口した貯蔵室30を区画する。閉鎖体25は、貯蔵庫本体20に対して相対動作可能であり、引き戸や扉として機能する。閉鎖体25は、貯蔵庫本体20の開口を開閉可能である。すなわち、閉鎖体25は、貯蔵室30を開放可能に閉鎖する。図示された冷蔵庫12は、貯蔵室30として、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33を有している。第1貯蔵室31は、上下方向における最上部に設けれ、冷蔵室として用いられ得る。第2貯蔵室32は、上下方向において、第1貯蔵室31及び第3貯蔵室33の間に位置する。第2貯蔵室32は、冷凍室として用いられ得る。第3貯蔵室33は、上下方向における最下部に設けられ、野菜室として用いられ得る。貯蔵庫本体20及び閉鎖体25は、貯蔵室30を低温に維持するため、断熱材を内蔵している。
【0027】
冷却部40は、貯蔵室30を室温や外気温よりも低温に維持する。冷却部40は、冷気を貯蔵室30に供給することによって、貯蔵室30を低温に維持する。
図2に示された冷却部40は、循環路41及びヒートポンプ50を有している。ヒートポンプ50は、吸熱部51及び放熱部52を有している。ヒートポンプ50は、吸熱部51において、貯蔵室30から回収されて循環路41内を移動する気体から熱を吸収する。ヒートポンプ50は、放熱部52において、冷蔵庫12(貯蔵庫10)の外部に熱を排出する。循環路41は、送風機43を設けられ、貯蔵室30及びヒートポンプ50を通過する循環路で気体を循環させる。貯蔵室30内の気体が吸熱部51に回収され、吸熱部51で冷却された冷気が貯蔵室30内に供給される。これにより、貯蔵室30を低温に維持することができる。以下、図示された具体例を参照して、冷却部40を更に詳細に説明する。
【0028】
図3に示すように、循環路41は、貯蔵室30およびヒートポンプ50の間を循環する気体の流路である。循環路41は、供給筒部42A、回収筒部42B及び熱交換部42Cを有している。熱交換部42Cは、ヒートポンプ50の吸熱部51の周囲を通過する気体流路を構成する。供給筒部42Aは、熱交換部42Cと貯蔵室30との間を延び、熱交換部42Cから貯蔵室30へ向けた気体流路を構成する。回収筒部42Bは、熱交換部42Cと貯蔵室30との間を延び、貯蔵室30から熱交換部42Cへ向けた気体流路を構成する。供給筒部42A、回収筒部42B及び熱交換部42Cは、一例として、金属や樹脂によって構成されたダクトとしてもよい。図示された例において、貯蔵室30は、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33を有している。熱交換部42Cから延び出した供給筒部42Aは、三つに分岐して、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33へ接続している。第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33から延び出す三つの回収筒部42Bが合流して熱交換部42Cに接続している。送風機43は、供給筒部42Aに設けられている。
【0029】
図3に示すように、ヒートポンプ50は、圧縮器56、凝縮器57、膨張弁58及び蒸発器59を有している。イソブタン等の冷媒が、圧縮器56、凝縮器57、膨張弁58及び蒸発器59を、この順で循環する。圧縮器56は、コンプレッサーとも呼ばれ、電気エネルギーによって冷媒を圧縮する。冷媒の温度は、断熱圧縮されることによって、上昇する。凝縮器57は、コンデンサとも呼ばれ、圧縮器56で圧縮された冷媒ガスを液化する。凝縮器57は、冷媒の液化にともない、放熱する。すなわち、凝縮器57は、放熱部52を構成する。圧縮器56及び凝縮器57は、冷蔵庫12の外部に露出している。冷媒の温度は、液化することによって、低下する。膨張弁58は、冷媒を膨張させる。断熱膨張によって、冷媒の温度および冷媒の圧力が低下する。また圧力の低下にともなって、冷媒の沸点が低下する。蒸発器59は、エバポレータとも呼ばれ、膨張弁58で沸点が低下した液体冷媒を気化する。膨張弁58は、吸熱部51を構成している。膨張弁58は、熱交換部42Cを通過する気体から吸熱する。これにより、循環路41内を移動する気体が冷却される。
【0030】
図3に示された例において、冷蔵庫12は、制御器35を有している。制御器35は、送風機43及びヒートポンプ50と、配線37を介して電気的に接続されている。制御器35は、図示しない温度センサ等での検出結果にともない、送風機43及びヒートポンプ50の動作を制御し、これにより、貯蔵室30内を所望の温度に維持する。制御器35は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサを含んでもよい。制御器35は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリを更に含んでもよい。
【0031】
なお、供給筒部42Aや回収筒部42Bの各貯蔵室31,32,33に分岐した位置に循環路41を開閉する弁が設けられていてもよい。この弁を操作することによって、各貯蔵室31,32,33の温度を別個に調節できる。
【0032】
増二酸化炭素部60は、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を、空気における二酸化炭素濃度よりも、高濃度に維持する。増二酸化炭素部60は、二酸化炭素を高濃度に含む気体を貯蔵室30に供給することによって、貯蔵室30の二酸化炭素濃度を高濃度に維持する。
【0033】
図2に示された増二酸化炭素部60は、第1流路61、第2流路66及び二酸化炭素交換装置70を有している。第1流路61は、貯蔵室30および二酸化炭素交換装置70を通過する気体の循環流路である。第2流路66は、二酸化炭素交換装置70を通過する外気の流路である。二酸化炭素交換装置70は、回転可能なハニカムローター80を有している。ハニカムローター80は、二酸化炭素を吸着可能および脱離可能な二酸化炭素吸脱着能を有している。ハニカムローター80が回転することによって、ハニカムローター80の各部分は、第1流路61に対応する放二酸化炭素位置PAと第2流路66に対応する吸二酸化炭素位置PBとに交互に到達する。ハニカムローター80は、吸二酸化炭素位置PBにおいて、第2流路66を移動する外気中の二酸化炭素を吸着する。ハニカムローター80に吸着された二酸化炭素は、放二酸化炭素位置PAにおいて、脱離する。ハニカムローター80から脱離した二酸化炭素は、第1流路61を移動する気体とともに、貯蔵室30に送り込まれる。これにより、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を高濃度に維持できる。以下、図示された具体例を参照して、増二酸化炭素部60を更に詳細に説明する。
【0034】
図4に示すように、第1流路61は、貯蔵室30および二酸化炭素交換装置70の間を循環する気体の流路である。第1流路61は、供給筒部62A及び回収筒部62Bを有している。供給筒部62A及び回収筒部62Bの各々が、貯蔵室30及び二酸化炭素交換装置70の間を延びている。貯蔵室30内の気体は、回収筒部62B内を移動して、放二酸化炭素位置PAである二酸化炭素交換装置70に到達する。放二酸化炭素位置PAで二酸化炭素を付与された気体が、供給筒部62A内を移動して、二酸化炭素交換装置70から貯蔵室30に到達する。供給筒部62A及び回収筒部62Bは、一例として、金属や樹脂によって構成されたダクトとしてもよい。二酸化炭素交換装置70から延び出した供給筒部62Aは、三つに分岐して、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33へ接続している。第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33から延び出す三つの回収筒部62Bが合流して二酸化炭素交換装置70に接続している。第1送風機63が、回収筒部62Bに設けられている。
【0035】
弁64が、第1流路61に設けられている。弁64は、第1流路61を開閉する。弁64は、供給筒部62Aや回収筒部62Bの各貯蔵室31,32,33に対応して分岐した部分に設けられてもよい。図示された例において、弁64は、供給筒部62Aの三つに分岐した部分にそれぞれ設けられている。各弁64を操作することによって、各貯蔵室31,32,33内の二酸化炭素濃度を別個に調節できる。
【0036】
第2流路66は、冷蔵庫12の外部および二酸化炭素交換装置70の間を循環する気体の流路である。第2流路66は、吸込筒部67A及び排出筒部67Bを有している。吸込筒部67A及び排出筒部67Bは、それぞれ二酸化炭素交換装置70に接続している。吸込筒部67A及び排出筒部67Bの間に二酸化炭素交換装置70が位置している。外気としての空気が、吸込筒部67Aに吸い込まれる。空気は吸込筒部67A内を移動して、吸二酸化炭素位置PBである二酸化炭素交換装置70に到達する。吸二酸化炭素位置PBにおいて、外気中の二酸化炭素が二酸化炭素交換装置70のハニカムローター80に吸着する。二酸化炭素を吸収された気体は、排出筒部67B内を移動して外気中に放出される。吸込筒部67A及び排出筒部67Bは、一例として、金属や樹脂によって構成されたダクトとしてもよい。第2送風機68が、吸込筒部67Aに設けられている。
【0037】
図5及び
図6に示すように、二酸化炭素交換装置70は、ハニカムローター80と、ハニカムローター80を収容するケーシング72と、ハニカムローター80を回転駆動する駆動機76と、を有している。駆動機76として、電動機が例示される。ケーシング72は、ハニカムローター80を回転可能に収容する。ケーシング72には、ハニカムローター80の軸部材84が関する貫通穴74H(
図6参照)が設けられている。ケーシング72及びハニカムローター80は、概ね円柱状に構成され、この円柱の軸方向の長さは当該円柱の直径よりも短くなっている。
【0038】
ケーシング72は、円柱の底面に相当する各面に、第1開口部73A及び第2開口部73Bを設けられている。ケーシング72は、第1開口部73A及び第2開口部73Bの間となる位置に、中間枠部74を有している。
図6に示すように、一対の中間枠部74のそれぞれに、貫通穴74Hが設けられている。駆動機76は、ケーシング72に固定されている。駆動機76は、軸部材84に接続して、軸部材84を回転駆動する。図示された例において、駆動機76は、一方の中間枠部74に固定され、軸部材84に直接接続している。ただし、この例によらず、駆動機76は、Vベルトや歯車等の動力伝達手段を介して、軸部材84に接続してもよい。
【0039】
図6に示すように、第1流路61の供給筒部62A及び回収筒部62Bは、ケーシング72の第1開口部73Aに挿入されている。第1開口部73Aは、供給筒部62A及び回収筒部62Bによって塞がれている。供給筒部62A及び回収筒部62Bは、ハニカムローター80の回転を妨げない程度に、ハニカムローター80に接近又は接触している。これにより、回収筒部62Bからの気体は、ハニカムローター80外へと漏れ出すことを抑制され、ハニカムローター80の後述する貫通孔80Hを通過して供給筒部62Aへ進む。第2流路66の吸込筒部67A及び排出筒部67Bは、ケーシング72の第2開口部73Bに挿入されている。第2開口部73Bは、吸込筒部67A及び排出筒部67Bによって塞がれている。吸込筒部67A及び排出筒部67Bは、ハニカムローター80の回転を妨げない程度に、ハニカムローター80に接近又は接触している。これにより、吸込筒部67Aからの気体は、ハニカムローター80外へと漏れ出すことを抑制され、ハニカムローター80の後述する貫通孔80Hを通過して排出筒部67Bへ進む。
【0040】
図6及び
図7に示すように、ハニカムローター80には、通気用の貫通孔80Hが設けられている。貫通孔80Hは、ハニカムローター80の回転軸線と平行な第1方向D1に延びている。ハニカムローター80における貫通孔80Hの配列は、ハニカム配列に限られない。ハニカムローター80における貫通孔80Hの開口形状は、六角形に限られない。貫通孔80Hの配列は、規則的でもよく不規則的であってもよい。多数の貫通孔80Hを有するハニカムローター80の製造方法は、特に限定されない。
【0041】
図7に示された例において、ハニカムローター80は、軸部材84と、軸部材84に巻き取られた第1シート81及び第2シート82を有している。第1シート81は、平坦なシートである。第2シート82は、波状のシートである。波状の第2シート82は、平坦な樹脂製シートをコルゲートマシンによってコルゲート加工することによって、作製され得る。第1シート81及び第2シート82を交互の一枚ずつ重ねることによって、ハニカムローター80を作製してもよい。第1シート81及び第2シート82を交互に二枚ずつ重ねることによって、又は交互に多数枚重ねることによって、ハニカムローター80を作製してもよい。第1シート81及び第2シート82として、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルムなどの熱可塑性フィルム、銅箔やアルミ箔などの金属箔、不織布、和紙、織布、多孔質フィルムを用いてもよい。第1シート81及び第2シート82は、エンボス加工やマット処理が施されていてもよい。
【0042】
ハニカムローター80は、二酸化炭素吸脱着能を有している。ハニカムローター80に二酸化炭素吸脱着能を付与するため、ハニカムローター80は、二酸化炭素吸脱着剤を担持している。上述した第1シート81及び第2シート82の、いずれか一方または両方が、二酸化炭素吸脱着剤を担持してもよい。二酸化炭素吸脱着剤の具体例として、アミンが例示される。ハニカムローター80は、アミンを担持したアミン担持ハニカムローターであってもよい。上述した第1シート81及び第2シート82の、いずれか一方または両方が、アミンを担持してもよい。第1シート81及び第2シート82は、一方の面のみにアミンを担持してもよいし、両方の面にアミンを担持してもよい。
【0043】
アミンとは、アンモニアの水素原子を炭化水素基または芳香族原子団で置換した化合物の総称であり、アミノ化合物とも呼ばれる。すなわち、アミン(アミノ化合物)としては、化学構造においてアミノ基(NH2-)を備える各種の化合物を特に制限なく考慮することができる。かかるアミノ基が有する二酸化炭素に対する物理的および化学的親和性により、アミン担持ハニカムローターが二酸化炭素に対して強い相互作用、すなわち二酸化炭素吸着性を示し得ることとなる。このようなアミンとしては、例えば、アミンの一分子に一つのアミノ基を備えるモノアミンタイプであっても良いし、アミンの一分子に2つ以上のアミノ基を備えるポリアミンタイプであってもよい。なお、二酸化炭素吸着性に加えて、二酸化炭素の脱離性を考慮すると、アミンとしては、二酸化炭素の分離回収技術の分野において通常使用されているアミンを好ましく用いることができる。かかるアミンとして、モノアミンあるいは3以上のアミノ基を備えるポリアミンであることが好ましく、さらには、ポリアミンであることがより好ましい。さらに、アミンが2個以上あるプロピルアミン、ジエチレントリアミン、数平均分子量800~3000ポリエチレンイミンが、ハニカムローター80に担持されていてもよい。
【0044】
また、他の側面から、アミンとして、アミノオルガノシランを用いることも好ましい。アミノオルガノシランを用いることによって、ハニカムローター80が、アミンをグラフト担持することができる。第1シート81や第2シート82の表層に化学反応によってアミンを担持する方法や、アミンをグラフト担持したシリカ粒子やメソポーラスシリカをハニカムローターに担持することによって、アミンが蒸散等によってハニカムローター80から脱落してしまうことを効果的に抑制することができる。すなわち、貯蔵室30に流入するアミンの量を低減できる。さらに、原因の詳細は不明であるが、ハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する気体の流れを調節することによって、アミンに吸着された二酸化炭素の当該アミンからの脱離を効果的に促進することができる。
また、グラフト担持されたアミンに吸着された二酸化炭素は、含浸担持されたアミンに吸着された二酸化炭素よりも、気体の吹き付けによってアミンから脱離しやすい。
その理由の推測を以下に示す。通常のアミンと二酸化炭素とのカルバメート反応以外にもアミンとの弱い相互作用によってハニカムローター上に保持されている二酸化炭素が微量存在し、それら二酸化炭素は、温度、流速等の僅かな条件の違いによって急脱着が生じる。
そして、弱い相互作用によって吸着する二酸化炭素は、二酸化炭素吸収剤が目的とする吸脱着容量に比べれば僅かな量であるが、数十ppmの脱離であっても、密閉空間内に継続的に脱離させ続けることで、数%程度の濃度とすることができた。
その中でも、ハニカムローター表面に均一にアミン層が形成され、アミンと気体の接触面積が大きいグラフト法によるアミン担持が行われたハニカムローターの方が好適に吸脱着が行われたものと考えられる。
【0045】
シランカップリング剤等として知られているオルガノシランの有機鎖にアミノ基を導入した化合物であって、例えばアミノ基を一分子中に一つ導入したアミノオルガノシランの分子構造は、下記の一般式(1)により表すことができる。
H2N-R-Si(OR’)3 ・・・(1)
なお、式(1)中、Rは任意のアルキル基、ビニル基、グリシドオキシプロピル基等の官能基であり、R’は同一または異種のアルキル基であり得る。
より具体的には、例えば、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノ-プロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましい例として示される。
また、グラフト処理の方法については、Tsuyoshi Watabe “Development of Amine-Modified Solid Sorbents for Postcombustion CO2 Capture” Energy Procedia Vol 37, 2013, 199-204 等の記載を参考にすることができる。
【0046】
図4に示された例において、冷蔵庫12は、貯蔵室30,31,32,33内の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素検出部36を有している。二酸化炭素検出部36は、配線37によって制御器35に電気的に接続している。制御器35は、弁64、第1送風機63、第2送風機68及び二酸化炭素交換装置70の駆動機76と、配線37を介して電気的に接続している。図示された例では、二酸化炭素検出部36での検出結果に応じて、すなわち貯蔵室30内の二酸化炭素濃度に応じて、増二酸化炭素部60の動作が制御され、これにより、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を所望の濃度に調整することができる。具体的には、二酸化炭素検出部36による二酸化炭素濃度の検出結果に基づいて、ハニカムローター80回転有無およびハニカムローター80の回転速度が制御される。二酸化炭素検出部36の検出結果に基づき、各弁64の開閉及び開度が制御される。二酸化炭素検出部36の検出結果に基づき、各送風機63,68の回転有無および回転速度が制御される。特に図示された例では、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33に別個の二酸化炭素検出部36が設けられている。各貯蔵室31,32,33に対応した二酸化炭素検出部36での検出結果に基づいて、各貯蔵室31,32,33内の二酸化炭素濃度を当該貯蔵室31,32,33内への貯蔵物に適した濃度に迅速かつ高精度に調節することができる。
【0047】
次に、以上の構成を有する冷蔵庫12(貯蔵庫10)の作用について説明する。
【0048】
まず、冷蔵庫12は、冷却部40を有している。冷却部40は、貯蔵室30内の気体を循環させる循環路41を有している。冷却部40は、吸熱部51を含むヒートポンプ50を有している。ヒートポンプ50は、吸熱部51において、循環路41の熱交換部42C内を移動する気体から熱を奪う。ヒートポンプ50によって冷却された冷気が、貯蔵室30内に供給される。これにより、貯蔵室30内を低温の維持することができる。貯蔵室30内に貯蔵された食料の劣化を抑制しつつ、当該食料を長期管に亘って貯蔵できる。
【0049】
次に、冷蔵庫12は、増二酸化炭素部60を有している。増二酸化炭素部60は、第1流路61、第2流路66、及び二酸化炭素交換装置70を有している。
図4に示すように、第1流路61は、貯蔵室30内の気体の循環流路であり、放二酸化炭素位置PAにおいて二酸化炭素交換装置70を通過する。第2流路66は、外気の循環流路であり、吸二酸化炭素位置PBにおいて二酸化炭素交換装置70を通過する。二酸化炭素交換装置70は、回転可能なハニカムローター80を有している。ハニカムローター80には貫通孔80Hが設けられている。貫通孔80Hは、第1流路61及び第2流路66に沿った第1方向D1に延びている。ハニカムローター80は、二酸化炭素着脱着能を有している。
【0050】
第2送風機68が動作することによって、第2流路66内を外気が流れる。外気は、吸二酸化炭素位置PBにおいて、ハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する。すなわち、外気は、貫通孔80Hを通過して、吸込筒部67Aから排出筒部67Bへと移動する。貫通孔80Hは、第1シート81及び第2シート82によって区画されている。第1シート81及び第2シート82は、二酸化炭素吸脱着剤、例えばアミンを担持している。したがって、吸二酸化炭素位置PBにおいて、第1流路61内を移動する外気中の二酸化炭素が、ハニカムローター80に吸着される。
【0051】
第1送風機63が動作することによって、貯蔵室30内の気体が、第1流路61内を流れる。気体は、放二酸化炭素位置PAにおいて、ハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する。すなわち、気体は、貫通孔80Hを通過して、回収筒部62Bから供給筒部62Aへと移動する。貫通孔80H内を流れる気体の風圧によって、二酸化炭素が、二酸化炭素吸脱着剤から、例えばアミンから、脱離する。ハニカムローター80から脱離した二酸化炭素は、第1流路61内を流れる気体とともに、貯蔵室30内に流入する。
【0052】
ハニカムローター80が回転することによって、ハニカムローター80の各部分は、吸二酸化炭素位置PB及び放二酸化炭素位置PAに交互に到達する。すなわち、吸二酸化炭素位置PBにおいて二酸化炭素を吸着したハニカムローター80は、放二酸化炭素位置PAに移動して、吸着した二酸化炭素を放出する。以上により、二酸化炭素交換装置70を経由して、外気の二酸化炭素を貯蔵室30に移送することができる。これにより、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を空気の二酸化炭素濃度よりも高濃度に維持することができる。
【0053】
貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を空気よりも高濃度とするには、吸二酸化炭素位置PBでの二酸化炭素の吸着を促進し、放二酸化炭素位置PAでの二酸化炭素の脱離を促進することが有効である。具体的には、貫通孔80Hを通過する気体の流速を速くすることによって、ハニカムローター80からの二酸化炭素の脱離を促進することができ、且つハニカムローター80への二酸化炭素の吸着を抑制することができる。貫通孔80Hを通過する気体の流速を遅くすることによって、ハニカムローター80からの二酸化炭素の脱離を抑制することができ、且つハニカムローター80への二酸化炭素の吸着を促進することができる。本件発明者が鋭意検討を重ねたところ、二酸化炭素の脱離および吸着が流速に影響を受ける現象は、アミンがグラフト担持されたハニカムローター80において、例えばシランカップリング剤を用いてアミンがグラフト担持されたハニカムローター80において、より顕著となった。
【0054】
そこで、第1送風機63の出力を上げることによって、放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する気体の流速を速くしてもよい。これにより、放二酸化炭素位置PAにおいて、二酸化炭素の吸着より、二酸化炭素の脱離を促進することができる。第2送風機68の出力を抑えることによって、吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する外気の流速を遅くしてもよい。これにより、吸二酸化炭素位置PBにおいて、二酸化炭素の脱離より、二酸化炭素の吸着を促進することができる。
【0055】
また、放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する気体の流速を、吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する気体の流速より速くしてもよい。放二酸化炭素位置PAでの流速を吸二酸化炭素位置PBでの流速より速くすることによって、二酸化炭素の脱離を吸二酸化炭素位置PBよりも放二酸化炭素位置PAにおいて促進することができる。
【0056】
放二酸化炭素位置PAでの流速および吸二酸化炭素位置PBでの流速は、送風機63,68の出力制御により、調節することができる。放二酸化炭素位置PAでの流速および吸二酸化炭素位置PBでの流速は、送風機63,68の出力制御に代えて又は加えて、流路断面積を調節することによっても調節可能である。流路断面積を小さくすることによって、流速を速くすることができる。流路断面積を大きくすることによって、流速を遅くすることができる。例えば、
図9に示された例において、第1流路61が接続するケーシング72の第1開口部73Aの開口面積が、第2流路66が接続するケーシング72の第2開口部73Bの開口面積よりも小さい。この例によれば、放二酸化炭素位置PAにおける第1流路61の流路断面積を、吸二酸化炭素位置PBにおける第2流路66の流路断面積よりも小さくできる。この例によれば、放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80を通過する気体の流速を、吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80を通過する気体の流速より速くすることができる。
【0057】
なお、第1流路61の流路断面積を、放二酸化炭素位置PAにおいて、放二酸化炭素位置PA以外の位置よりも小さくしてもよい。すなわち、放二酸化炭素位置PAでの第1流路61の流路断面積を、供給筒部62Aの流路断面積よりも小さくし且つ回収筒部62Bの流路断面積よりも小さくしてもよい。この例によれば、第1流路61内を移動する気体の流速を、放二酸化炭素位置PAにおいて、局所的に上昇させることができる。
【0058】
また、第2流路66の流路断面積を、吸二酸化炭素位置PBにおいて、吸二酸化炭素位置PB以外の位置よりも大きくしてもよい。すなわち、吸二酸化炭素位置PBでの第2流路66の流路断面積を、吸込筒部67Aの流路断面積よりも大きくし且つ排出筒部67Bの流路断面積よりも大きくしてもよい。この例によれば、第2流路66内を移動する外気の流速を、吸二酸化炭素位置PBにおいて、局所的に低下させることができる。
【0059】
また、放二酸化炭素位置PAを単位時間に通過する気体の流量を多くすることによって、ハニカムローター80からの二酸化炭素の脱離を促進することができ、且つハニカムローター80への二酸化炭素の吸着を抑制することができる。吸二酸化炭素位置PBを単位時間に通過する気体の流量を少なくすることによって、ハニカムローター80からの二酸化炭素の脱離を抑制することができ、且つハニカムローター80への二酸化炭素の吸着を促進することができる。本件発明者が鋭意検討を重ねたところ、二酸化炭素の脱離および吸着が流量に影響を受ける現象は、アミンがグラフト担持されたハニカムローター80において、例えばシランカップリング剤を用いてアミンがグラフト担持されたハニカムローター80において、より顕著となった。
【0060】
そこで、第1送風機63の出力を上げることによって、放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する気体の流量を多くしてもよい。これにより、放二酸化炭素位置PAにおいて、二酸化炭素の吸着より、二酸化炭素の脱離を促進することができる。第2送風機68の出力を抑えることによって、吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する外気の流量を少なくしてもよい。これにより、吸二酸化炭素位置PBにおいて、二酸化炭素の脱離より、二酸化炭素の吸着を促進することができる。
【0061】
また、放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する気体の流量を、吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80の貫通孔80Hを通過する気体の流量より多くしてもよい。放二酸化炭素位置PAでの流量を吸二酸化炭素位置PBでの流量より多くすることによって、二酸化炭素の脱離を吸二酸化炭素位置PBよりも放二酸化炭素位置PAにおいて促進することができる。
【0062】
ここで、
図10に示された例では、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33に対して、別個の第1流路61が割り当てられている。
図10に示された例によれば、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33の各々を循環する気体の風量を十分に確保することができる。これにより、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33内の二酸化炭素濃度を高濃度に維持することができる。加えて、
図10に示された例では、各第1流路61に対して、別個の放二酸化炭素位置PAが用意されている。各放二酸化炭素位置PAの面積は、吸二酸化炭素位置PBの面積と比較して小さくなっている。したがって、第1貯蔵室31、第2貯蔵室32及び第3貯蔵室33の各々に対応した第1流路61において、放二酸化炭素位置PAでの流速が増大し、放二酸化炭素位置PAでの二酸化炭素の脱離を促進させることができる。
【0063】
さらに、二酸化炭素の吸着効率は、20℃(室温)以上60℃以下の温度範囲において、ガス拡散とカルバメート形成の観点から最も効率的となる。その一方で、60℃以下の温度範囲、例えば-10℃以上30℃以下の温度範囲において、一度カルバメートを形成した二酸化炭素が脱離することはなく、二酸化炭素の脱離効率は、温度に依存して、大きく変化することはない。しかし、本件発明者が鋭意検討を重ねたところ、当該温度における吸着量および脱離量は、アミンがグラフト担持されたハニカムローター80において、例えばシランカップリング剤を用いてアミンがグラフト担持されたハニカムローター80において、より顕著となった。
【0064】
貯蔵庫10の冷蔵庫12への適用において、第1流路61内を移動する気体は、貯蔵室30内の冷却された気体となる。したがって、放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80を通過する気体の温度は、20℃以下となる。すなわち、放二酸化炭素位置PAにおいて、放二酸化炭素位置PAにおいて二酸化炭素の吸着を効果的に抑制することができる。したがって、冷蔵庫12における貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を高濃度に安定して維持することができる。
【0065】
とりわけ、冷蔵庫12への貯蔵庫10の適用においては、第1流路61を通過する気体の温度は、第2流路66を通過する気体の温度未満となる。言い換えると、第2流路66を通過する気体の温度は、第1流路61を通過する気体の温度よりも高くなる。この例によれば、放二酸化炭素位置PAよりも吸二酸化炭素位置PBにおいて、二酸化炭素の吸着を促進することができる。
【0066】
吸二酸化炭素位置PBでの二酸化炭素の吸着を促進する観点から、吸込筒部67A内を移動する外気を積極的に加熱してもよい。この例において、吸二酸化炭素位置PBに向かう外気の温度を20℃以上60℃以下に調節することによって、吸二酸化炭素位置PBでの二酸化炭素の吸着を促進することができる。
図11に示された例では、ヒートポンプ50の放熱部52から放出される熱によって、二酸化炭素交換装置70に向かう吸込筒部67A内の外気が加熱される。具体的な構成として、放熱部52の周囲を外気が流れるように、吸込筒部67Aは構成されている。
図11に示された例によれば、冷蔵庫12の外部からエネルギーを加えることなく、吸二酸化炭素位置PBに向かう外気を加熱することができ、エネルギー効率においても有利である。
【0067】
なお、
図11に示された例において、増二酸化炭素部60の第1流路61が、冷却部40の循環路41としても機能する。すなわち、第1流路61が、循環路41と兼用されている。この例によれば、第1送風機63及び送風機43が兼用されるので、エネルギー効率を向上させることができる。貯蔵室30に接続する流路の数が減少し、貯蔵室30の密閉性が向上する。これにより、冷却部40による冷却効率が改善され、エネルギー効率を更に向上させることができる。また、第1流路61及び循環路41が兼用されるので、冷蔵庫12(貯蔵庫10)を小型化することができる。
【0068】
ところで、貯蔵室30内に白金を含む触媒が設けられていてもよい。ハニカムローター80がアミンを担持している場合、アミンがハニカムローター80から脱落し、このアミンが貯蔵室30内に放出されることも想定され得る。白金を含む触媒によれば、アミンを分解することができる。したがって、貯蔵室30内の貯蔵物に対するアミンの影響を抑制することができる。また、白金を含む触媒はエチレンを除去することもできる。これにより、貯蔵室30内の貯蔵物に対するエチレンの影響を抑制できる。ただし、本件発明者の調査によれば、アミンがシランカップリング剤等を用いてグラフト担持されている場合、ハニカムローター80に担持されたアミンが、蒸散等によってハニカムローター80から消失してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0069】
以上に説明してきた一実施の形態において、貯蔵庫10は、食料を貯蔵する貯蔵室30と、この貯蔵室30の二酸化炭素濃度を増加させる増二酸化炭素部60と、を有している。増二酸化炭素部60は、貯蔵室30内の気体を循環させる第1流路61と、外気が循環する第2流路66と、第1流路61に対応する放二酸化炭素位置PAと第2流路66に対応する吸二酸化炭素位置PBとを移動可能に回転し、二酸化炭素吸脱着能を備えるハニカムローター80と、を有している。本実施の形態によれば、外気が第2流路66を流れることによって、吸二酸化炭素位置PBにおいて、ハニカムローター80に二酸化炭素が吸着する。貯蔵室30内の気体が第1流路61内を流れることによって、放二酸化炭素位置PAにおいて、ハニカムローター80から二酸化炭素が脱離する。したがって、貯蔵室30外の二酸化炭素を貯蔵室30内に供給して、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を上昇させることができる。すなわち、貯蔵室30内で酸素を消費するような酸化反応を必要とせず、貯蔵室30内の酸素濃度を上昇させることができる。また、貯蔵庫10に関連するエネルギー効率を大きく劣化させることなく、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を上昇させることができる。貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を上昇させることによって、貯蔵室30内に貯蔵された食料等の貯蔵物の品質保持期間を長期化することができ、フードロス低減に貢献し得る。
【0070】
上述した一実施の形態の一具体例において、ハニカムローター80がアミンを担持したアミンハニカムローターとなっている。アミンは、シランカップリング剤を用いてグラフト担持され得る。アミンが化学反応によってハニカムローター80の表層に担持されることによって、アミンがハニカムローター80から放出されることを効果的に抑制できる。したがって、貯蔵室30内や貯蔵庫外へのアミンの放出を効果的に抑制できる。また、ハニカムローター80に向けた気体の吹き付けによって、ハニカムローター80から二酸化炭素を効率的に脱離させることができる。これにより、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を高濃度に安定して維持できる。
【0071】
上述した一実施の形態の一具体例において、第1流路61を通過する気体の温度が、第2流路66を通過する気体の温度未満となる。この具体例において、第1流路61内の気体の温度が低いことから、第1流路61内の気体に含まれる二酸化炭素が放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80に吸着することを効果的に抑制できる。したがって、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を高濃度に安定して維持できる。
【0072】
上述した一実施の形態の一具体例において、放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80を通過する気体の流速は、吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80を通過する気体の流速よりも速い。放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80を通過する気体の流速が速いことから、二酸化炭素が放二酸化炭素位置PAにおいてハニカムローター80から脱離することを効果的に促進することができる。吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80を通過する気体の流速が遅いことから、二酸化炭素が吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80から脱離することを効果的に抑制することができる。したがって、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を高濃度に安定して維持できる。
【0073】
上述した一実施の形態の一具体例において、貯蔵庫10は、貯蔵室30内の冷却に用いられるヒートポンプ50を有している。ヒートポンプ50からの放熱によって吸二酸化炭素位置PBに向かう気体が加熱される。したがって、吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80を通過する気体の温度を高温にすることができ、二酸化炭素が吸二酸化炭素位置PBにおいてハニカムローター80に吸着することを効果的に促進することができる。これにより、貯蔵室30内の二酸化炭素濃度を高濃度に安定して維持できる。
【0074】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
PA:放二酸化炭素位置、PB:吸二酸化炭素位置、10:貯蔵庫、12:冷蔵庫、20:貯蔵庫本体、25:閉鎖体、30:貯蔵室、31:第1貯蔵室、32:第2貯蔵室、33:第3貯蔵室、35:制御器、36:二酸化炭素検出部、37:配線、40:冷却部、41:循環路、42A:供給筒部、42B:回収筒部、42C:熱交換部、43:送風機、50:ヒートポンプ、51:吸熱部、52:放熱部、56:圧縮器、57:凝縮器、58:膨張弁、59:蒸発器、60:増二酸化炭素部、61:第1流路、62A:供給筒部、62B:回収筒部、63:第1送風機、64:弁、66:第2流路、67A:吸込筒部、67B:排出筒部、68:第2送風機、70:二酸化炭素交換装置、72:ケーシング、73A:第1開口部、73B:第2開口部、74:中間枠部、74H:貫通穴、76:駆動機、80:ハニカムローター、80H:貫通孔、81:第1シート、82:第2シート、84:軸部材