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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072559
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】試験片保持器及び試験片排出機構
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
G01N35/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185192
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古里 紀明
(72)【発明者】
【氏名】和田 佑亮
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC09
2G058CD24
(57)【要約】
【課題】試験片を確実に1枚ずつ取り出すことが可能で、それに伴い試験片に生じるダメージが低減される試験片保持器を提供する。
【解決手段】内周の少なくとも下方側の一部が円筒形状を呈する円筒面であり、内部に長尺かつ厚さXの試験片が保持され、かつ、前記円筒面の仮想的な中心軸の方向が水平方向又は鉛直方向に対し傾斜した方向である保持部材と、前記保持部材の外面に設けられる開口部と、前記中心軸と一致する回転軸を中心に前記保持部材の内部で回転する選別部材と、前記選別部材において前記中心軸と平行な先端縁から前記回転の方向へ突出する押圧片と、前記押圧片の先端から前記円筒面へ向かって突出する選別片と、を備え、前記先端縁において前記円筒面に最も近い位置と前記円筒面との距離はX未満であり、前記選別片において前記円筒面に最も近い位置と前記円筒面との距離AはX≦A<2Xである、試験片保持器。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周の少なくとも下方側の一部が円筒形状を呈する円筒面であり、内部に長尺かつ厚さXの試験片が保持され、かつ、前記円筒面の仮想的な中心軸の方向が水平方向又は鉛直方向に対し傾斜した方向である保持部材と、
前記保持部材の外面に設けられる開口部と、
前記中心軸と一致する回転軸を中心に前記保持部材の内部で回転する選別部材と、
前記選別部材において前記中心軸と平行な先端縁から前記回転の方向へ突出する押圧片と、
前記押圧片の先端から前記円筒面へ向かって突出する選別片と、
を備え、
前記先端縁において前記円筒面に最も近い位置と前記円筒面との距離はX未満であり、
前記選別片において前記円筒面に最も近い位置と前記円筒面との距離Aは
X≦A<2X
である、試験片保持器。
【請求項2】
前記試験片の短尺方向の長さYに対し、
前記押圧片において前記選別部材の前記先端縁から前記選別片までの距離Bは、
Y≦B<2Y
であるとともに、
前記選別片において前記押圧片から前記円筒面へ突出している部分の長さCは、
0.5X≦C<1.5X
である、請求項1に記載の試験片保持器。
【請求項3】
前記保持部材は、前記回転軸を中心軸とし、長手方向の長さが前記試験片の長さ以上の円筒形状であるとともに、
前記開口部は前記保持部材の側面に長手方向に沿って設けられ、
前記開口部の長さは前記試験片の長さ以上である、請求項1又は請求項2に記載の試験片保持器。
【請求項4】
前記先端縁から前記押圧片が2つ並行して突出している、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の試験片保持器。
【請求項5】
前記保持部材内に複数の前記選別部材が配置されている、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の試験片保持器。
【請求項6】
前記選別部材は前記保持部材と別体に形成されるともに前記保持部材に対して回転する、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の試験片保持器。
【請求項7】
前記開口部は、前記開口部の周方向の仮想的な中心線が、前記選別部材の前記回転における最上位置に対して、前記選別部材が前記回転方向へ下降した位置であるように設けられる、請求項6に記載の試験片保持器。
【請求項8】
前記選別片の先端縁が前記最上位置にあるときの回転角度を0°とすると、前記中心線は、前記回転角度45°~90°の位置である、請求項7に記載の試験片保持器。
【請求項9】
前記選別部材の外周面と、前記保持部材の前記円筒面とには、互いに噛み合う凹凸構造が形成されている、請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載の試験片保持器。
【請求項10】
前記開口部には、開閉可能な扉部材が設けられている、請求項6から請求項9までのいずれか1項に記載の試験片保持器。
【請求項11】
前記保持部材の前記内周の全部が前記円筒面であり、
前記選別部材は前記保持部材に対して固定されて前記保持部材とともに回転するとともに、
前記開口部は前記選別部材に対し前記回転方向の先端側に形成されるとともに、
前記開口部には開閉可能な扉部材が設けられる、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の試験片保持器。
【請求項12】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の試験片保持器と、
前記選別部材を回転させる回転駆動器と、
前記開口部を開閉させる開閉部材と、
前記選別部材が前記開口部に近接すると前記開閉部材を開放させる開閉操作器と、
を備える、試験片排出機構。
【請求項13】
請求項10又は請求項11に記載の試験片保持器と、
前記選別部材を回転させる回転駆動器と、
前記選別部材が前記開口部に近接すると前記扉部材を開放させる開閉操作器と、
を備える、試験片排出機構。
【請求項14】
前記回転駆動器は、前記選別部材が前記開口部に近接すると前記選別部材の回転を停止させるとともに、前記開閉操作器が前記開口部を閉鎖すると前記選別部材の回転を再開させる、請求項12又は請求項13に記載の試験片排出機構。
【請求項15】
前記選別部材が前記開口部に近接したことを検知する近接検知器を備え、
前記開閉操作器は、前記近接検知器が前記近接を検知することにより作動する、請求項12又は請求項13に記載の試験片排出機構。
【請求項16】
前記回転駆動器は、前記近接検知器が前記近接を検知すると前記選別部材の回転を停止させるとともに、前記開閉操作器が前記開口部を閉鎖すると前記選別部材の回転を再開させる、請求項15に記載の試験片排出機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片保持器及び試験片排出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
尿などの検体中に含まれる所定の項目を測定するために使われる試験片を用いて、連続して測定を行うため、複数枚の試験片を装置に投入し、投入された試験片から一枚ずつ取り出しを行う機構が利用されていた。このような機構によって取り出された試験片に検体を点着して、当該所定の項目が測定される。
【0003】
たとえば、特許文献1記載の技術ではドラム容器に「ドラム内つめ部」を設けている。そして、ドラム容器は回転運動をしながら格納する試験紙を一枚づつ、この「ドラム内つめ部」にひっかけてソータラック上に落としていた。また、たとえば、特許文献2記載の試験片送出機構では、投入部に投入された複数枚の試験片が試験片検出ブロックまで移動してくると、仕切板によって1枚のみに平坦化され、これにより投入部から1枚ずつ試験片を取り出して次の検査部に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-264540号公報
【特許文献2】特開2000-35433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の技術では、複数枚の試験片が「ドラム内つめ部」に入り込んでしまうと複数枚の試験片が排出される場合があった。また、特許文献2記載の技術では、積み重なった試験片が仕切板によって平坦化される際に、上に重なった試験片を摺り切るように排除するが、その際、仕切板と試験片との接触による削り屑が生ずることがあった。
【0006】
そこで本開示の実施態様は、試験片を確実に1枚ずつ取り出すことが可能で、それに伴い試験片に生じるダメージが低減される試験片保持器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施態様の試験片保持器では、内周の少なくとも下方側の一部が円筒形状を呈する円筒面であり、内部に長尺かつ厚さXの試験片が保持され、かつ、円筒面の仮想的な中心軸の方向が水平方向又は鉛直方向に対し傾斜した方向である保持部材と、保持部材の外面に設けられる開口部と、中心軸と一致する回転軸を中心に保持部材の内部で回転する選別部材と、選別部材において中心軸と平行な先端縁から回転の方向へ突出する押圧片と、押圧片の先端から円筒面へ向かって突出する選別片と、を備え、先端縁において円筒面に最も近い位置と円筒面との距離はX未満であり、選別片において円筒面に最も近い位置と円筒面との距離Aは
X≦A<2X
である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の実施態様は上記のように構成されているので、試験片を確実に1枚ずつ取り出すことが可能で、それに伴い試験片に生じるダメージが低減される試験片保持器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態の試験片保持器を正面図で示す。
図2図1の試験片保持器を前方斜視図で示す。
図3図2の試験片保持器からキャップ及び扉部材を除いた状態を前方斜視図で示す。
図4図1の試験片保持器を後方斜視図で示す。
図5図1の試験片保持器における保持部材の内周である円筒面を、図1のB-B′断面で示す。
図6A】試験片を斜視図で示す。
図6B】試験片を正面図で示す。
図6C】試験片を側面図で示す。
図7図1の試験片保持器に収容される回転部材を前方斜視図で示す。
図8図5の回転部材を後方斜視図で示す。
図9図1のA-A′断面図である。
図10】押圧片及び選別片を拡大して示す。
図11】試験片保持機構の機能ブロック図である。
図12図11の制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図13A】試験片排出処理の概要を示すフローチャートである。
図13B】試験片排出処理の概要を示すフローチャートである。
図14A】試験片を保持する状態を断面図で示す。
図14B】試験片を保持する状態を断面図で示す。
図14C】試験片を保持する状態を断面図で示す。
図14D】試験片を保持する状態を断面図で示す。
図14E】試験片が排出される状態を断面図で示す。
図15】第2の実施形態の試験片保持器を正面図で示す。
図16図15の試験片保持器を前方斜視図で示す。
図17】扉部材の外方斜視図である。
図18】扉部材の内方斜視図である。
図19図15のC-C′断面図である。
図20A】試験片が排出される状態を断面図で示す。
図20B】試験片が排出される状態を断面図で示す。
図20C】試験片が排出される状態を断面図で示す。
図21】第3の実施形態の試験片保持器を断面図で示す。
図22】第3の実施形態の変形例を断面図で示す。
図23】第4の実施形態の試験片保持器の一部を断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において共通して付されている符号については、以下における各図の説明にて言及されていない場合であっても同一の対象を指し示している。
【0011】
(1)第1の実施形態
図1は、第1の実施形態の試験片保持器10を正面図で示す。図2は、この試験片保持器10を前方斜視図で示す。図3は、この試験片保持器10からキャップ21及び扉部材40を除いた状態を前方斜視図で示す。図4は、この試験片保持器10を後方斜視図で示す。なお、以後の説明では、試験片保持器10において、キャップ21(図1図2図4)が設けられている方向を前方と称し、接続部20Cが設けられている方向を後方と称する。
【0012】
本実施形態の試験片保持器10は、側面が円筒形状の保持部材20を有する。この保持部材20の一端側には、図1図2及び図4に示すように、短円筒形状のキャップ21が装着されている。保持部材20の側面には、正面視(図1)で略長方形状の扉部材40が設けられている。扉部材40の両端には略円筒上に外方に突出した1対の軸受40Bが設けられている。一対の軸受40Bの各々は、保持部材20の側面から膨出した同径の円筒形状の軸受20Bと連接している。これらの軸受40B、20Bには1対の扉軸41(図3)が収容されている。扉部材40はこれら1対の扉軸41で軸支され、後述するように回転可能となっている。
【0013】
一方、保持部材20の他端側には、外方に膨出した円筒形状の駆動軸収容部20Aが設けられている。この駆動軸収容部20Aには、図4に示すように扉駆動軸46が収容されている。扉駆動軸46と扉軸41とは軸心同一である。扉駆動軸46は後述する開閉操作器4(図11参照)に保持され、軸心の周りを回動することで、扉部材40が開閉される。さらに、保持部材20の他端側には、やや小径の円筒形状の接続部20Cが突出している。この接続部20Cは、試験片保持器10が後述する試験片排出機構1に装着されるときに回転駆動器3(図11参照)に接続される部分である。接続部20Cの中心に設けられる開口からは、後述する回転部材30(図7図8)の回転駆動軸36が視認される。
【0014】
保持部材20は、図1のB-B′断面を示す図5に示すように、内周の少なくとも下方側の一部(本実施形態では、全部)が円筒形状を呈する円筒面22となっている。円筒面22の中心軸が保持部材20の仮想的な中心軸15となる(図1)。さらにこの円筒面22には、周方向に沿って複数の内周溝23が形成されている。なお、保持部材20においては、少なくとも下方側の一部(たとえば、半分)が円筒面22となっていれば、上半分が開口部24となっていてもよい場合がある。
【0015】
試験片保持器10の保持部材20の内部には、図6A図6Cに示す長尺形状の試験片90が保持される。本実施形態では、尿中の物理的性状又は特定の成分の濃度若しくは有無を測定するための尿試験片を試験片90の一例として記載する。
【0016】
図示のように、この試験片90は、短冊状の基板94の上に、複数の試薬パッド93が配置されているという構成である。基板94は、その一端に図示しない測定装置内で把持される把持部95が設けられ、その他の領域は、試薬パッド配置領域96となっている(図6C参照)。試薬パッド配置領域96には、複数の試薬パッド93が長手方向に沿って、かつ相互に一定の間隔を持って直列に配置されている。
【0017】
前記基板94の材質は特に制限されず、たとえば、樹脂、金属、ガラスなどがある。基板の色は、特に制限されず、白色、灰色、黒色、有彩色、透明のいずれであってもよい。前記基板94の大きさは、特に制限されず、検査項目、使用する分析装置の規格等により適宜決定され、たとえば、長さ50~150mm、幅2~10mm、厚み0.1~1.0mmとすることができる。本実施形態では、試験片90の長尺方向、すなわち長辺92の長さはL2(図6B)、及び短尺方向、すなわち短辺91の長さはY(図6B)である。したがって、保持部材20の長手方向の長さは試験片の長さ以上である。このように、本実施形態の試験片保持器10に適合可能な試験片90はサイズが限定されている。
【0018】
試薬パッド93の材料としては、たとえば、ろ紙、ガラス繊維ろ紙、編物、織物、不織布、メンブランフィルター、多孔質樹脂シート、プラスチックフィルムなどがある。また、試薬パッド93の形は特に制限されず、正方形、長方形、円形、楕円形などがある。試薬パッド93の大きさは、特に制限されず、形状が矩形の場合、たとえば、縦及び横2~10mm、厚み0.05~1.0mmとすることができる。本実施形態では、厚肉部の厚さはX(図6C)である。試薬パッド93は、前記したパッド材料に試薬を保持させてから所定形状に成形してもよいし、パッド材料を所定形状に成形してから試薬を保持させてもよい。試薬の保持は、たとえば、パッド材料を試薬溶液に浸漬し、乾燥させることにより実施できる。また、基板94への試薬パッド93の配置には、たとえば、接着剤又は粘着剤を使用することができる。接着剤又は粘着剤としては、たとえば、ポリウレタン系、アクリル系、塩化ビニル系、エポキシ系、ナイロン系、ホットメルト系、シアノアクリレート系、ゴム系等を使用することができる。
【0019】
なお、試験片90の厚さXは、試験片保持器10に使用される試験片における最も厚い部分の距離であり、上述の試験片90では試薬パッド93の厚みとなる。もし、試験片90に試薬パッド93より厚肉の部分を有する場合は、その箇所の厚さがXとなる。
【0020】
後述する試験片排出機構1において、試験片保持器10は、その保持部材20の仮想的な中心軸15(図1)の方向が水平方向になるように装着される。ただし、この中心軸15の方向は水平方向には限られず、鉛直方向に対して傾斜した方向であれば(換言すると、鉛直方向でなければ)、試験片90を保持するのに差し支えない。すなわち、この中心軸15の方向と鉛直方向とがなす角度のうち、90°以下である方の角度の大きさは、0°超かつ90°以下、望ましくは30°以上90°以下、さらに望ましくは45°以上90°以下、より望ましくは60°以上90°以下、最も望ましくは90°、すなわち水平方向である。
【0021】
扉部材40の長辺のうち一方の2箇所には矩形の切欠部42が形成されている。この一方の長辺は、この2箇所の切欠部42によって、3個の舌片状の弾発部43に分割されている。また、保持部材20の側面において、扉部材40の長辺のうち他方の近傍の2箇所には、長方形状の検知窓26が形成されている。
【0022】
試験片保持器10からキャップ21及び扉部材40を除いた状態を表す図3に示すように、保持部材20の側面には長方形状の開口部24が長手方向に沿って設けられ、ここに扉部材40が開閉可能に設けられる。開口部24からは、保持部材20の内部に収容され、保持部材20の内部で前記中心軸15を回転軸15として回転する回転部材30の選別部材31が視認される。開口部24の長手方向の長さL1は、前記した試験片90の長尺方向の長さL2以上、換言すると開口部24から試験片90が排出されるのに問題がない程度の長さである。また、保持部材20の前方側の中心には、保持部材20に試験片90を投入するための投入口25が形成されている。なお、開口部24は、保持部材20の円筒形状としての側面に設けられ、たとえば、試験片保持器10が水平に載置された場合、下方側の部分に設けられていてもよい。なお、開口部24は、幾何学的な意味での円筒形状である保持部材20の「側面」のみならず、「側面」と「底面」とを合わせた意味での「外面」に設けられていればよい。
【0023】
なお、図中に破線で示した中心線24Aは、開口部24を長手方向に沿って二等分する仮想的な線である。ここで、保持部材20の内部における選別部材31の到達する最上位置31A(図9参照)に対し、この中心線24Aは、回転方向へ下降した位置にある。望ましくは、この最上位置31Aの回転角度を0°とすると、この中心線24Aは回転角度45°以上90°以下の位置、さらに望ましくは90°の位置にある。
【0024】
試験片保持器10において、保持部材20に収容される回転部材30を、図7の前方斜視図及び図8の後方斜視図で示す。回転部材30は、前方側に位置する円形の前板30Aと、前板30Aから試験片の長辺の長さL2よりも長い距離を隔てて後方側に位置する同径の円形の後板30Bとの間に複数、具体的には3個の選別部材31が配置された構造を有する。選別部材31は試験片の短辺91の長さYよりも長い距離を隔ててそれぞれ設けられている。前板30Aと後板30Bの直径は、保持部材20の円筒面22によって形成される円筒形の直径と同じであり、前板30Aの円の中心軸と後板30Bの円の中心軸が一致するように選別部材31によって固定されている。
【0025】
換言すると、前板30Aの中心軸及び後板30Bの中心軸は一致しており、回転部材30の回転軸15となる。後板30Bの円の中心からは後板30Bの中心軸に沿って後方に回転駆動軸36が突出している(図8)。保持部材20の円筒面22に回転部材30の前板30Aの外周面と後板30Bの外周面が接触するように収容すると、円筒面22によって形成される円筒形の直径と前板30Aの直径および後板30Bの直径は同じなので、保持部材20の中心軸15と回転部材30の回転軸15は一致する。
【0026】
回転駆動軸36は、後述する回転駆動器3と接続され、回転駆動器3からの回転力が伝達されることで、図7及び図8に示した矢印の方向へ回転部材30全体が回転する。これにより、選別部材31は中心軸15と一致する回転軸15を中心に保持部材20の内部で回転し、これにより保持部材20の内部で試験片90を移動させる。すなわち、選別部材31は保持部材20とは別体に形成されるともに保持部材20に対して回転する。換言すれば、選別部材31は保持部材20の中心軸15から所定距離を保って中心軸15の周りを回るように構成されている。
【0027】
前板30Aには、前板30Aの円の中央に円形の開口が設けられており(図8)、該開口と同じ外径の円筒が嵌められている(図7)。円筒は前板30Aから前方に突出している。保持部材20に回転部材30が収容されると、保持部材20の投入口25と連結する。よって試験片保持器10の投入口25に投入された試験片90は前板30Aと後板30Bの間に保持される。
【0028】
選別部材31は回転軸15の方向に沿って設けられた略板状の部材である。選別部材31は、前板30Aの内側の円形面と後板30Bの内側の円形面に回転軸15から離間して取り付けられている。選別部材31は回転部材30の外側の方向を向いた外周面と、回転軸15の方向を向いた内周面と、中心軸15と平行しており回転方向を向いた第1の側面と、中心軸15と平行しており回転方向と反対側の方向を向いた第2の側面とを備えている。外周面と内周面は回転軸15を中心とした曲面である。第1の側面と第2の側面は外周面と内周面とを接続する面であり、外周面から中心軸に向かう方向に展開している平面である。外周面と第1の側面との縁に沿って複数の摺動突起35が外周面に配設されている。摺動突起35は、保持部材20に回転部材30を収容したときに円筒面22に設けられた内周溝23に嵌る突起であり、回転部材30の外側に向かって鋭くなる底辺が四角形の錘台形状である。摺動突起35の回転方向側の面は回転軸15に向かって展開する平面となっており、選別部材31の第1の側面の一部を形成している。摺動突起35の回転方向側の面を含む第1の側面が選別部材31の先端縁32である。
【0029】
選別部材31の各々は、回転方向の先端部分に当たり、中心軸と平行な先端縁32を有する。この先端縁32から回転方向へ長手方向に所定の長さを有する直方体状の2つの押圧片33が少なくとも距離Bより長い所定の距離D(図10参照)で並行して突出している。押圧片33の数は、2つに限定されず、回転中であっても試験片90を保持できればよく、1つ又は3つ以上でもよい。また、回転中であっても試験片90を保持できれば、押圧片33の長手方向の位置は特に限定されない。さらにこの押圧片の先端からは、外方へ、すなわち、円筒面22(図5)に向かって直方体状の選別片34が突出している。また、選別部材31の外周面には、先端縁32及び後端縁32Aに沿ってそれぞれ、円筒面22(図5)に向かって、複数の摺動突起35が一列に配設されている。選別部材31の外周面に設けられてる摺動突起35と、保持部材20の円筒面22に設けられている内周溝23(図5)とは、互いに噛み合う凹凸構造として形成されている。保持部材20の中心軸15から所定距離を保って中心軸15の周りを回る選別部材31に押圧片33と選別片34はいずれも固定されている。そのため、押圧片33と選別片34も中心軸15から所定距離を保って中心軸15の周りを回る。
【0030】
図9は、図1のA-A′断面図である。保持部材20の円筒面22は概ね断面円形の断面を呈しており、開口部24に設けられる扉部材40の内周面は保持部材20の円筒面22と面一の円弧状を呈している。また、3個の選別部材31は概ね円弧状の断面形状を有し、中心軸15に対して等配されている。なお、選別部材31は必ずしも等配されている必要はなく、その数も3個には限られないが、数に応じて回転部材30の一周につき保持できる試験片90の数が増え、試験片90を試験片保持器10から取り出す速度が向上するため、複数設けることが好ましい。しかし、数が多いほど、前後の選別部材31の間隔が狭くなり、試験片90を保持できずに回転しまう確率が高くため、3個~5個であることが好ましい。さらに、選別部材31の先端側及び後端側の両方に設けられている摺動突起35は、円筒面22の内周溝23に嵌入し、この内周溝23に沿って図中の矢印で示す回転方向へ摺動する。なお、摺動突起35は2つ以上設けられていれば、凹凸で噛み合っていなくても選別部材31と円筒面22との間への試験片90の噛み込みが阻止できる。
【0031】
選別部材31の押圧片33及び選別片34と、円筒面22との位置関係を、図10の拡大断面図で示す。すなわち、選別部材31の先端縁32において、円筒面22に最も近い位置(すなわち、摺動突起35の先端)と円筒面22との距離は、試験片90の厚さX(図6C)を下回るよう設定されている。これによって、試験片90の、選別部材31と円筒面22との間への噛み込みが阻止されているとともに、選別部材31の回転に伴い、先端縁32が試験片90を回転方向に押すことができるようになっている。そして、選別片34において円筒面22に最も近い位置と円筒面22との距離Aは、試験片90の厚さX以上、かつ、Xの2倍未満となるよう設定されている。
【0032】
つまり、距離Aは選別片34と円筒面22との間には1枚の試験片90が入り込むことができるが、2枚以上の試験片が入ることができないような距離になっている。これによって、押圧片33と円筒面22との間に試験片90が2枚以上重なって同時に入り込むことが阻止されている。なお、試験片90の製造誤差を許容すること、および、試験片90の入り込みやすさの点から、距離Aは試験片90の厚さXの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましい。また、上述のような試験片90における試薬パッド93はろ紙などを材料とするため、厚さXは押圧されることによって、Xより薄くなることがあるため、距離Aは試験片90の厚さXの1.8倍未満であることが好ましく、1.6倍未満であることがより好ましい。
【0033】
また、試験片90の短尺方向の長さY(図6B)に対し、押圧片33において選別部材31の先端縁32から選別片34までの距離Bは、Y以上、かつ、Yの2倍未満となるよう設定されている。つまり、先端縁32及び選別片34で挟まれる押圧片33と円筒面22との間には、回転方向において1枚の試験片90が入りこむことができるが、2枚以上の試験片90が入ることができないような距離になっている。これによって、押圧片33と円筒面22との間に試験片90が2枚以上回転方向に並んで保持されることが阻止されている。なお、試験片90の製造誤差を許容すること、および、試験片90の入り込みやすさの点から、距離Bは試験片90の長さYの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましい。また、試験片90が立ち上がってしまうと2枚以上の試験片が入り込むおそれがあるため、距離Bは試験片90の長さYの1.8倍未満であることが好ましく、1.6倍未満であることがより好ましい。
【0034】
さらに、選別片34において押圧片33から円筒面22へ突出している部分の長さCは、試験片90の厚さXの0.5倍以上、かつ、Xの1.5倍未満となるよう設定されている。つまり、先端縁32及び選別片34で挟まれる押圧片33と円筒面22との間に入り込んでいる1枚の試験片90を保持することができるが、2枚以上の試験片90を保持することができないような距離になっている。このような距離B及び長さCの条件によって、選別部材31(押圧片33)が2枚以上の試験片90を保持したまま回転していたとしても、押圧片33が最上位置31Aに達した直後(すなわち、鉛直下方のベクトルが少ない位置に達したとき)に、選別部材31から押圧片33側の試験片90のみが、選別片34の長さCの突出部分の内側で保持され、それ以外の試験片90は選別片34では保持できないため、落下するようになっている。なお、試験片90の厚さXの0.5倍以上、かつ、Xの1.0倍未満であれば、保持される1枚の試験片90以外は選別片34の長さCの突出部分の内側とは一切接触しないため、確実に落下できるようにすることができる点でより好ましい。
【0035】
また、試験片90の短尺方向の長さYに対し、先端縁32の回転方向における長さである距離E(図10参照)は、幅を有し、Y未満であるように設定されており、試験片90の長さYの0.5倍未満であることが好ましい。このような距離Eの条件によって、最上位置31Aに達した直後に、選別片34と円筒面22の間に保持された試験片が落下できるようになる。なお、距離Eは、距離Dから距離Bを減じた距離とほぼ同じ長さである。
【0036】
試験片排出機構1の機能ブロック図を図11に示す。試験片排出機構1は、たとえば尿検体のような生体試料の物理的性状又は特定の成分の濃度若しくは有無を、特定の試薬が塗布された試験片90によって測定する測定機器として構成される。
【0037】
制御部100は、この試験片排出機構1の各部を制御するものである。制御部100は、後述するハードウェア構成によって、近接検知器2、回転駆動器3、開閉操作器4及び測定部5を制御する。試験片保持器10が試験片排出機構1に装着されると、先述したように回転駆動器3が回転部材30の回転駆動軸36(図8)に接続され、また、開閉操作器4が扉部材40の扉駆動軸46(図4)に接続される。近接検知器2は、たとえば光学センサ又は接近センサなどで構成され、保持部材20の検知窓26(図9)を通じて選別部材31の開口部24への近接を検知する。なお、近接検知器2は、選別部材31に保持された試験片90の近接を検知するものであってもよい。制御部100は、近接検知器2での検知に応じて、回転駆動器3を駆動させて回転部材30(選別部材31)を回転させ、また停止させる。制御部100はまた、近接検知器2での検知に応じて、開閉操作器4を駆動させて扉部材40を開閉させる。なお、開口部24に、扉部材40ではない開閉部材50(図22参照)が設けられている場合、開閉操作器4は扉部材40の代わりに開閉部材50を開閉させる。また制御部100は、測定機器としての種々の部位や装置で構成される測定部5も制御する。
【0038】
制御部100は、図12のハードウェア構成に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103及びストレージ104を有する。各構成は、バス109を介して相互に通信可能に接続されている。
【0039】
CPU101は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU101は、ROM102又はストレージ104からプログラムを読み出し、RAM103を作業領域としてプログラムを実行する。CPU101は、ROM102又はストレージ104に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0040】
ROM102は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ104は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本態様では、ROM102又はストレージ104には、測定や判定に関するプログラムや各種データが格納されている。また、ストレージ104には、測定データを保存しておくこともできる。
【0041】
制御部100は、上記ハードウェア構成のうちCPU101が、前記したプログラムを実行することによって、近接検知器2、回転駆動器3、開閉操作器4及び測定部5の制御を実行する。
【0042】
以上の構成によって、制御部100の制御により、回転駆動器3は、選別部材31が開口部24に近接すると選別部材31の回転を停止させるとともに、開閉操作器4が開口部24を閉鎖すると選別部材31の回転を再開させることもできる。この開閉操作器4の作動は、近接検知器2がこの近接を検知することにより作動するように制御部100が制御することもできる。さらに制御部100は、近接検知器2がこの近接を検知することにより回転駆動器3による回転の停止を制御するとともに、開閉操作器4が開口部24を閉鎖すると回転駆動器3による回転の再開を制御することもできる。
【0043】
次に、本実施形態の試験片保持器10による試験片90の取り出しを、図13A(又は図13B)のフローチャートと、図14A図14Eの断面図を参照しつつ説明する。なお、図14A図14Eの断面図においては、1つの選別部材31に着目した動作を説明するが、他の2つの選別部材31における動作も当然に同時進行で実行されている。
【0044】
まず、試験片排出機構1の電源が投入されると、S100に示す段階において機器の初期設定が実行される。この初期設定には、制御部100が回転駆動器3を制御することで、回転部材30を回転の初期位置へセットすることも含まれる。
【0045】
そして、測定の準備が完了したら、制御部100は、S110に示す段階において、回転駆動器3を駆動させて回転部材30の回転を開始させる。この制御部100は、S120に示す段階で、近接検知器2が検知窓26を通じて選別部材31を検知するまで、回転部材30の回転を続行させる。なお、近接検知器2を備えずに、たとえば回転駆動器3としてステップモータを採用するような構成の場合は、図13BのフローチャートのS120′に示す段階で、所定のステップ数(たとえば、回転停止を経て回転を再開してから、次に選別部材31が開口部24に近接するまでに要するステップ数)が経過するまで回転部材30の回転を続行させることができる。
【0046】
この間、図14Aにおいて、保持部材20の内部空間の下方には複数枚の試験片90が滞留して一番下に位置している。この選別部材31の押圧片33はこの滞留している複数枚の試験片90を回転方向に押圧して行く。
【0047】
選別部材31は回転を続け、図14Bに示すように鉛直方向の最下位置を過ぎた位置に来ると、最も外側に位置していた試験片90が1枚だけ、選別片34と円筒面22との間の、幅Aの間隙(図10参照)をすり抜けて、先端縁32に長辺92を接触させる位置まで入り込む。なお、別の試験片90も、選別片34と円筒面22との間の間隙に一部だけ入り込むことがある。その他の試験片90は、押圧片33によって上方へ持ち上げられる。
【0048】
選別部材31はさらに回転を続け、図14Cに示すように押圧片33が最上位置31Aに達すると、選別片34と円筒面22との間の間隙に入り込めなかった試験片90は全て下方へ落下する。そしてさらに図14Dに示す位置まで選別部材31が回転すると、選別片34と円筒面22との間の間隙に一部だけ入り込んでいた試験片90も遂に落下するが、先端縁32に接するまで入り込んでいた試験片90は、押圧片33と選別片34とにより保持され落下を免れる。
【0049】
すなわち、選別片34の円筒面22に最も近い位置と円筒面22との距離AがX≦A<2Xであることによって、選別部材31を回転することで最上位置31Aから少し回転した位置では一枚の試験片90のみを保持した状態となっている。なお、押圧片33の先端縁32から選別片34までの距離BがY≦B<2Yであり、選別片34の押圧片33から円筒面22へ突出している部分の長さCが0.5X≦C<1.5Xであることによって、選別部材31は、最上位置31Aから少し回転した位置で、より確実に試験片90のみを保持した状態とすることができる。
【0050】
そして、図14Eに示す位置まで選別部材31が回転してくると、S120に示す段階において近接検知器2が選別部材31の近接を検知し(又はS120′に示す段階において制御部100が所定のステップ数の経過を検知し)、S130に示す段階において制御部100は回転駆動器3の駆動を停止させ、選別部材31の回転は停止する。そして次にS140に示す段階において制御部100は、開閉操作器4を駆動させて、扉部材40を図14Eに示す状態にまで回転させて開放する。
【0051】
この扉部材40の回転で、切欠部42が押圧片33の位置に達すると同時に、弾発部43が、押圧片33又は試験片90と衝突することで、押圧片33と選別片34とで保持されていた試験片90に対して衝撃を付与して、選別部材31から試験片90を開放した扉部材40に向けて落下させる。試験片90は、扉部材40の凹曲面を滑り落ちるようにして、保持部材20から外側に排出させ、その後、試験片90は、図示しない搬送手段によって、測定部5へ移動され、そこで所定の測定に供される。
【0052】
そして、S150に示す段階で、制御部100は開閉操作器4を再び駆動させて扉部材40を逆回転させ、再び図14Aに示す状態のように扉部材40を閉鎖させる。扉部材40の閉鎖タイミングは、試験片90が保持部材20から外側に排出されたことを検知する排出検知器を備え、排出検知器によって試験片90の排出を検知することで扉部材40を閉鎖してもよいし、開放から所定の時間が経過後に閉鎖してもよい。そして、S160に示す段階で次の測定があるかどうかを制御部100が判断し、ある場合には再びS110に示す段階へ戻り、制御部100は回転駆動器3を駆動させて回転部材30の回転を再開させる。
【0053】
このように、扉部材40は試験片90を保持部材20から排出する間のみ開放するため、選別部材31が回転する導線上に扉部材40の開閉時の導線があっても、選別部材31の移動に対する影響がない。加えて、扉部材40を除いて、気密性を有する保持部材20を使用する場合には、保持部材20に収容されている試験片90を扉部材40の開放時を除いて外気から遮断することができる。それにより、外気の湿気等から試験片90の変質を防ぐことができる。
【0054】
(2)第2の実施形態
図15及び図16は、扉部材40を別形態とした試験片保持器10をそれぞれ正面図及び前方斜視図で示す。保持部材20の側面には、外方に突出した円筒形状の扉収容部27が設けられている。扉収容部27は、保持部材20より小径でかつ長手方向の長さが試験片90の長さ以上の円柱形状の一部が、保持部材20から外方に突出した形状を呈している。また、扉収容部27の長手方向に沿って、試験片90の長さ以上の開口である排出口28が設けられている。排出口28は、扉収容部27の下方側において、扉収容部の内部と外部とを連絡している。
【0055】
扉収容部27には、図17に外方斜視図で、図18に内方斜視図でそれぞれ示す形状の扉部材40が収容される。扉部材40は円柱形状の側面の一部を、保持部材20の円筒面22の凹曲面で抉ったような、断面略三日月状の形状を呈する。そして側面の凸曲面を遮断部45、また、凹曲面を傾斜面44と称する。傾斜面44の下縁の2箇所には矩形の切欠部42が形成されていてもよい。この下縁は、この2箇所の切欠部42によって、3個の舌片状の弾発部43に分割されている。扉部材40の両端からは、円柱形状の軸心上に設けられた扉軸41が突出している。
【0056】
扉収容部27の前方側は、保持部材20の側面から膨出した、扉収容部27より小径の円筒形状の軸受20Bと連接している。この軸受20Bには扉軸41の一方が収容されている。また、扉収容部27の上方近傍の2箇所には、長方形状の検知窓26が形成されている。扉部材40は、保持部材20の側面において保持部材20の長手方向に沿った方向に設けられている。
【0057】
一方、保持部材20の他端側には、扉収容部27に連接し外方に膨出した円筒形状の駆動軸収容部20Aが設けられている。この駆動軸収容部20Aには、扉駆動軸46(図4参照)が収容されている。扉駆動軸46と扉軸41とは軸心同一である。扉駆動軸46は第1実施形態と同様の開閉操作器4(図11参照)に保持され、軸心の周りを回動することで、扉部材40が回動する。さらに、保持部材20の他端側には、やや小径の円筒形状の接続部20Cが突出している。この接続部20Cは、試験片保持器10が第1実施形態と同様の試験片排出機構1に装着されるときに回転駆動器3(図11参照)に接続される部分である。接続部20Cの中心に設けられる開口からは、第1実施形態と同様の回転部材30(図7図8)の回転駆動軸36が視認される。
【0058】
選別部材31は、保持部材20に収容されている試験片90を、保持部材20の内周面である円筒面22に沿って回転移動させる。扉部材40は、この試験片90を保持部材20の外部に排出するために、保持部材20の側面に開閉可能に設けられている。また、扉部材40はその閉鎖時には、保持部材20の内部と外部とを遮断している。扉収容部27は保持部材20の外側から扉部材40を覆っている。扉部材40は扉収容部27の内部で回転することで開閉可能となっている。
【0059】
排出口28は、保持部材20の外部、すなわち扉収容部27内に排出された試験片をこの扉収容部27の外部に排出するために設けられている。排出口28は、扉収容部27内で回転する扉部材40によって外部に対して開閉可能となっている。すなわち、排出口28が閉鎖されているときには、扉収容部27の内部と外部とは遮断される。一方で、排出口28が開放するときには後述するように扉部材40が保持部材20の開口部24を閉鎖する。
【0060】
扉部材40の傾斜面44は、図19に示す閉鎖時には保持部材20の内側面である円筒面22と面一となる凹面形状の内周面となっている。この傾斜面44の反対側の遮断部45は、図19に示す閉鎖時には扉収容部の内部の円筒凹面に対応する円筒凸面形状を呈し、開口部24と排出口28との両方を閉鎖しているが、図20Cに示すように排出口28の開放時にはこの遮断部45は収容部材の内部を外部から遮断する。
【0061】
すなわち、この扉部材40の回転で、切欠部42が押圧片33の位置に達すると同時に、弾発部43の傾斜面44が、押圧片33と選別片34とで保持されていた試験片90に対して衝撃を付与して、保持部材20から外側に排出させる(図20A参照)。このとき、排出されて落下する試験片90は、扉部材40の傾斜面44により保持部材20の外部へ誘導される。この状態で、扉部材40は、保持部材20を開放しつつ、排出口28は閉鎖している。
【0062】
扉部材40がさらに回転して図20Bに示す状態に至ると、扉部材40は遮断部45によって再び開口部24と排出口28とを閉鎖する。そして、排出された試験片90は傾斜面44に沿って落下する(図20B参照)。
【0063】
扉部材40がさらに回転して図20Cに示す状態に至ると、遮断部45は開口部24を閉鎖しつつ、排出口28を開放する(図20C参照)。排出された試験片90は傾斜面44に沿って開放した排出口28へ誘導され、排出口28から扉収容部27の外に排出された試験片90は測定部5へ移動していき、そこで所定の測定に供される。
【0064】
以上の第2の実施形態では、扉部材40は常に保持部材20の開口部24と扉収容部27の排出口28とのうち少なくとも一方を閉鎖している。換言すると、開口部24と排出口28とが同時に開放していることがないので、保持部材20に収容されている試験片90を常に外気から遮断することができる。それにより、外気の湿気等から試験片90の変質を防ぐことができる。
【0065】
(3)第3の実施形態
図21は、第3の実施形態の試験片保持器10を断面図で示す。本実施形態では、最上位置31Aから見て135°程度回転した位置に開口部24があり、扉部材40は存在していない。このような形態であっても、回転して下降してきた選別部材31に保持されてきた試験片90を開口部24から落下させることは可能である。
【0066】
なお、図22に示す本実施形態の変形例のように、開口部24を開閉する開閉部材50を設けることとしてもよい。この開閉部材50は、図11のブロック図における開閉操作器4で開閉させることができる。
【0067】
(4)第4の実施形態
図23は、第4の実施形態の試験片保持器10の一部を示す断面図である。上述の第1~第3の実施形態では、保持部材20は回転せず、選別部材31が保持部材20に対して回転していたが、本実施形態では、内周の全部が円筒面である保持部材20そのものが回転する。そして、選別部材31は、保持部材20の内面から内方へ突出している。換言すると、選別部材31は保持部材に対して固定されて、保持部材20とともに回転する。
【0068】
そして、開口部24は選別部材31に対し回転方向の先端側や押圧片33の対面の保持部材20の内面に形成されるとともに、この開口部24には開閉可能な扉部材40が設けられる。この実施形態においても、選別部材31による試験片90の保持は、図14A図14Eに示すのと同様に行うことができる。そして、開口部24が、最上位置31Aの回転角度を0°としたとき、開口部24は回転角度90°以上180°以下の位置、さらに望ましくは135°の位置に回転してきたら、図11に示す開閉操作器4によって扉部材40を開放させることで、試験片90を保持部材20の外側へ取り出すことができる。
【0069】
なお、本実施形態の選別部材31は、保持部材20とは別体に設けるものの、保持部材20の外周に環状に巻き付けられる図示しない固定部によって保持部材20に対して固定することで、選別部材31を保持部材20とともに回転させることができる。
【0070】
(5)第1~第4の実施形態の作用効果
以上の第1~第4の実施形態では、選別片34と円筒面22との間の間隙から試験片90を1枚だけ通過させるとともに、通過できなかった試験片90は、選別部材31が回転している間に下向きになったときに落下する。これによって、選別部材31が保持部材20の中で回転するだけで、通過できなかった試験片90に押圧によるストレスを過度に与えることなく、自ずと1枚の試験片90のみが選別片34と押圧片33とで把持され、開口部24から取り出すことができる。
【0071】
(6)その他
なお、上記の各実施形態では、試験片90として尿試験片の場合を説明してきたが、本発明はこれに限定されず、長尺かつ厚さXの試験片であればよい。
【0072】
保持部材20には投入口25は設けずに、あらかじめ複数の試験片90が試験片保持器10に収容されているディスポーザブルタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 試験片排出機構 2 近接検知器 3 回転駆動器 4 開閉操作器
5 測定部
10 試験片保持器 15 回転軸(中心軸)
20 保持部材 20A 駆動軸収容部 20B 軸受 20C 接続部
21 キャップ 22 円筒面 23 内周溝 24 開口部 24A 中心線
25 投入口 26 検知窓 27 扉収容部 28 排出口
30 回転部材 30A 前板 30B 後板 31 選別部材
31A 最上位置 32 先端縁 32A 後端縁 33 押圧片
34 選別片 35 摺動突起 36 回転駆動軸
40 扉部材 40B 軸受 41 扉軸 42 切欠部 43 弾発部
44 傾斜面 45 遮断部 46 扉駆動軸
50 開閉部材
90 試験片 91 短辺 92 長辺 93 試薬パッド 94 基板
95 把持部 96 試薬パッド配置領域
100 制御部 101 CPU 102 ROM 103 RAM
104 ストレージ 109 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23