IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クレハエラストマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-圧力センサおよび圧力センサユニット 図1
  • 特開-圧力センサおよび圧力センサユニット 図2
  • 特開-圧力センサおよび圧力センサユニット 図3
  • 特開-圧力センサおよび圧力センサユニット 図4
  • 特開-圧力センサおよび圧力センサユニット 図5
  • 特開-圧力センサおよび圧力センサユニット 図6
  • 特開-圧力センサおよび圧力センサユニット 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072610
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】圧力センサおよび圧力センサユニット
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
G01L1/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185305
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】591005006
【氏名又は名称】マクセルクレハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】水谷 武
(57)【要約】
【課題】簡易な構造としながら、耐荷重性に優れる圧力センサ、および該圧力センサを備える圧力センサユニットを提供する。
【解決手段】圧力センサ1は、一端側に受圧面2aを有する略柱状の弾性芯材2と、弾性芯材2の側面に配置されたシート状のセンサ部材3とを有し、受圧面2aに荷重が加わることに伴うセンサ部材3の変形によって圧力を検出し、センサ部材3はエラストマー製であり、2組の導電層と、これらの導電層の間に介在する少なくとも1層の絶縁層とを有し、弾性芯材2の側面に内側から順に、一方の導電層、絶縁層、他方の導電層が配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に受圧面を有する略柱状の弾性芯材と、前記弾性芯材の側面に配置されたシート状のセンサ部材とを有し、前記受圧面に荷重が加わることに伴う前記センサ部材の変形によって圧力を検出することを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記センサ部材はエラストマー製であり、2組の導電層と、これらの導電層の間に介在する少なくとも1層の絶縁層とを有し、前記弾性芯材の側面に内側から順に、一方の導電層、前記絶縁層、他方の導電層が配置されることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記弾性芯材の軸方向における前記絶縁層の幅が、前記他方の導電層の幅よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記絶縁層の厚みが20μm~150μmであり、前記導電層の厚みが50μm~200μmであることを特徴とする請求項2または請求項3記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記センサ部材は前記弾性芯材の側面を略周回するように配置され、その周回方向の1箇所において前記弾性芯材に対して固定されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記弾性芯材と前記センサ部材との間に樹脂フィルムが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の圧力センサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の圧力センサが略平面上に複数配列されて構成されていることを特徴とする圧力センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサ、および該圧力センサを備える圧力センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサとして、荷重に伴う静電容量の変化を検出する圧力センサなどが知られている。この圧力センサでは、複数の検出部で静電容量の変化を検出することで、圧力センサの面方向の圧力分布を測定することができる。このような圧力センサは、例えばベッドなどに設置され、就寝者の体圧分布の測定などに用いられる。
【0003】
静電容量型の圧力センサとして、電極がシート状にマトリックスを形成した構造のセンサが知られている。例えば、特許文献1には、エラストマー製の誘電層と、誘電層の表側に配置され、エラストマーおよび導電性フィラーを含んで形成された表側電極部と、誘電層の裏側に配置され、エラストマーおよび導電性フィラーを含んで形成された裏側電極部とを有するシート状の圧力センサが記載されている。表側電極部は、帯状に形成された複数の表側電極を有し、各電極はX軸方向に延出している。また、裏側電極部は、帯状に形成された複数の裏側電極を有し、各電極はY軸方向に延出している。この圧力センサは、誘電層に加えて、表側電極部および裏側電極部がエラストマーで形成されるので、検出部に荷重が付与されると、表側電極および裏側電極が、誘電層とともに伸長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-43881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されるような電極をシート状に組み合わせた圧力センサの場合、シート全面で荷重を受圧するため、シートが破損しやすく、耐荷重性の点で懸念がある。また、シートの下支えの構造の検討も必要となり、構造が複雑化するおそれもある。
【0006】
本発明はこのような事情に対処するためになされたものであり、簡易な構造としながら、耐荷重性に優れる圧力センサ、および該圧力センサを備える圧力センサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧力センサは、一端側に受圧面を有する略柱状の弾性芯材と、上記弾性芯材の側面に配置されたシート状のセンサ部材とを有し、上記受圧面に荷重が加わることに伴う上記センサ部材の変形によって圧力を検出することを特徴とする。
【0008】
上記センサ部材はエラストマー製であり、2組の導電層と、これらの導電層の間に介在する少なくとも1層の絶縁層とを有し、上記弾性芯材の側面に内側から順に、一方の導電層、上記絶縁層、他方の導電層が配置されることを特徴とする。
【0009】
上記弾性芯材の軸方向における上記絶縁層の幅が、上記他方の導電層の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
上記絶縁層の厚みが20μm~150μmであり、上記導電層の厚みが50μm~200μmであることを特徴とする。
【0011】
上記センサ部材は上記弾性芯材の側面を略周回するように配置され、その周回方向の1箇所において上記弾性芯材に対して固定されていることを特徴とする。
【0012】
上記弾性芯材と上記センサ部材との間に樹脂フィルムが配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の圧力センサユニットは、本発明の圧力センサが略平面上に複数配列されて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧力センサは、一端側に受圧面を有する略柱状の弾性芯材と、弾性芯材の側面に配置されたシート状のセンサ部材とを有し、受圧面に荷重が加わることに伴うセンサ部材の変形によって圧力を検出するので、外からの荷重を弾性芯材で受圧でき、簡易な構造としながら耐荷重性に優れる圧力センサになる。
【0015】
センサ部材は、2組の導電層と、これらの導電層の間に介在する少なくとも1層の絶縁層とを有し、具体的な形態として、絶縁層と導電層が積層した第1の積層体と、絶縁層と導電層が積層した第2の積層体で構成され、第1の積層体の導電層と第2の積層体の導電層の間に、第1の積層体の絶縁層および第2の積層体の絶縁層の少なくともいずれか一方の絶縁層が設けられる。このセンサ構造によれば、受圧面に荷重が加わった際に生じるセンサ部材の変形に応じて静電容量の変化が生じ、当該静電容量に基づいて圧力を検出することができる。また、センサ部材はエラストマー製であるので、センサ部材が変形しやすく静電容量の変化が大きくなり、センサ精度を向上できる。
【0016】
弾性芯材の側面に内側から順に、一方の導電層、絶縁層、他方の導電層が配置され、弾性芯材の軸方向における絶縁層の幅が、該絶縁層の外側に位置する導電層の幅よりも大きいので、センサ部材が変形した場合であっても、絶縁層の内側に位置する導電層と外側に位置する導電層とが接触しにくくなる。これにより、2組の導電層が接触することによって生じる短絡を、好適に防止できる。
【0017】
センサ部材は弾性芯材の側面を略周回するように配置され、その周回方向の1箇所において弾性芯材に対して固定されており、当該固定部以外では弾性芯材に対して固定されていないので、センサ部材を変形しやすくして、センサ精度を向上できる。
【0018】
弾性芯材とセンサ部材との間に樹脂フィルムが配置されているので、センサ部材の動きがスムーズになりやすく、より変形しやすくなる。
【0019】
本発明の圧力センサユニットは、本発明の圧力センサが略平面上に複数配列されて構成されているので、耐荷重性に優れるとともに、対象物の圧力分布を精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の圧力センサの一形態を示す概略構成図である。
図2図1のセンサ本体部の概略平面図である。
図3】本発明の圧力センサの検出原理を説明するための図である。
図4】センサ部材の一形態を説明するための図である。
図5図4のセンサ部材を備えるセンサ本体部の一形態を示す部分断面図である。
図6】センサ本体部の他の形態を示す断面図である。
図7】本発明の圧力センサユニットの一形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の圧力センサの一形態を図1に基づいて説明する。図1は圧力センサの概略構成図である。図1に示す圧力センサは、センサ本体部と、該センサ本体部に接続された検出部とを有し、センサ本体部の受圧面に荷重が掛かった際にその圧力を検出するセンサである。本発明の圧力センサは、例えば、衝撃を検出する衝撃センサや、配管などの下部に設けられ、振動を検出する振動センサなどとして用いることができる。
【0022】
図1において、圧力センサ1のセンサ本体部は、略円柱状に形成されており、主な構成部材として、略円柱状の弾性芯材2と、その弾性芯材2の側面2bに配置されたシート状のセンサ部材3とを有する。センサ部材3はエラストマー製であることが好ましい。センサ部材3は、弾性芯材2の側面2bに、直接または樹脂フィルムなどの他部材を介して配置される。
【0023】
圧力センサ1において、弾性芯材2は軸方向一方側に受圧面2aを有しており、この受圧面2aで外からの荷重を受ける構造になっている。受圧面2aの構造は平面に限らず、圧力センサの用途などに応じて適宜設定できる。例えば、受圧面2aが、軸方向に膨出または凹んだ曲面で形成されてもよい。
【0024】
弾性芯材2の素材としては、柔軟性および弾性があれば、特に限定されないが、センサ部材3を側面に巻き付ける際に変形しない程度の硬さを有することが好ましい。弾性芯材として、具体的には、複数の気泡を有する発泡ゴムや発泡樹脂などの発泡弾性体、ソリッドゴムなどを用いることができる。特に、クッション性(衝撃吸収能)に優れる発泡ウレタン(ウレタンスポンジ)などを用いることが好ましい。
【0025】
図1において、センサ部材3は帯状に形成されており、弾性芯材2の側面2bを略周回するように配置されている。具体的には、センサ部材3は、弾性芯材2の側面2bを一周しない程度(例えば0.90周以上1.0周未満)周回し、一対の端部3a、3a’が互いに離間するように配置されている。例えば、センサ部材3は、テンションをかけながら弾性芯材2の側面2bに巻き付けられる。そして、一対の端部3a、3a’を外側から覆うように固定部材6が設けられている。固定部材6は、弾性芯材2に対してセンサ部材3を固定するものであればよく、例えば接着テープなどを用いることができる。
【0026】
図2に示すように、固定部材6は、一対の端部3a、3a’間の隙間を埋めるように弾性芯材2に接着しており、これにより、センサ部材3が弾性芯材2に対して固定される。この場合、センサ部材3は、その周回方向の1箇所において弾性芯材2に対して固定される。一方、それ以外の箇所(周回方向の大部分の箇所)では、センサ部材3は弾性芯材2に対して固定されておらず、非接着の状態となっている。なお、後述する樹脂フィルムを間に配置する構成の場合、該樹脂フィルムに対して非接着の状態となっている。このように、センサ部材3を周回方向の1箇所において弾性芯材2に対して固定することで、固定部材6とセンサ部材3との分離を避けつつ、センサ部材3の独立性が高められ、より変形しやすくなる。
【0027】
図1において、センサ部材3は、2組の導電層(図示省略)と、これらの導電層の間に介在する少なくとも1層の絶縁層(図示省略)とを有している。この場合、弾性芯材の側面に内側から順に、一方の導電層、少なくとも1層の絶縁層、他方の導電層が配置される。なお、明細書において、これらの層が積み重なる方向を積層方向という。外側の導電層には電極7aが取り付けられ、内側の導電層には電極7bが取り付けられる。電極7a、7bは、導線を介して検出器8に接続される。電極7a、7bには、銅、アルミニウムなどの金属からなる金属箔や、PETフィルムなどの上に、銅、アルミニウムなどの金属ペーストが塗布などされたフィルム状電極、導電テープなどを用いることができる。
【0028】
なお、図1では、センサ本体部において、電極やセンサ部材の導電層が露出した状態となっているが、これらが絶縁フィルム(図示省略)などで覆われていてもよい。
【0029】
図1の圧力センサ1は、静電容量型の圧力センサである。この圧力センサの検出原理を図3(a)に基づいて説明する。図3(a)は圧力センサの部分断面図を示している。図3(a)に示すように、圧力センサ1はセンサ部材3として、2組の導電層3aおよび3bと、絶縁層3cとを有している。なお、図3(a)では便宜上、センサ部材3が3層構造として説明する。圧力センサ1の受圧面2aに荷重Fが加わると、弾性芯材2が変形し、それに伴ってセンサ部材3も変形(伸長)する。そして、センサ部材3の変形に応じて導電層3aおよび3b間の距離が変化し、静電容量が変化する。そして、検出器によって静電容量の変化を検出することで、荷重の程度を把握することができる。このように、本発明の圧力センサでは、加わった荷重に応じるセンサ部材の変形によって圧力を検出している。
【0030】
図3(b)には、従来のシート状に組み合わせた圧力センサ21に荷重が加わった状態を示す。図3(b)に示すように、シート状のセンサ部材22の受圧面22aに荷重Fが加わると、センサ部材22の変形(伸長)に応じて静電容量が変化し、この静電容量の変化に基づいて圧力が検出される。ここで、従来の構成では、外からの荷重をセンサ部材22の全面で受け、荷重が加わる方向と、センサ部材22の伸長方向が略一致している。センサ部材に対して、荷重が直接加わることになるため、センサ部材のへたりや破損などが生じるおそれがあった。
【0031】
これに対して、本発明に係る圧力センサ1は、外からの荷重を弾性芯材2で受けることから耐荷重性に優れる。また、圧力センサ1では、荷重が加わる方向に対して、センサ部材3の積層方向が略直交するようにセンサ部材3が配置されている。この場合、センサ部材3は、荷重が加わる方向とは異なる方向に伸長することから、従来の構成に比べて、センサ部材3の負荷も軽減できると考えられる。
【0032】
次に、センサ部材の具体的な一形態について、図4を用いて説明する。図4(a)は、センサ部材を周回方向に展開した状態を側面から見た図であり、図4(b)は上方から見た図である。
【0033】
図4に示すセンサ部材3は、帯状の2組の積層体が重ね合わされて構成されている。センサ部材3が弾性芯材に巻き付けられた場合、内側積層体4が内側(弾性芯材側)に位置し、外側積層体5が外側に位置する。図4(a)に示すように、内側積層体4の短手方向(幅方向)の中心軸と、外側積層体5の短手方向(幅方向)の中心軸は一致するように重ね合わされている。なお、図4に示すセンサ部材3では、2組の積層体は、幅寸法を除いて、その他の構成(長手方向長さ、各層の材質および各層の厚さ)は同じとなっている。
【0034】
図4(b)に示すように、内側積層体4は、絶縁層4aと導電層4bが積層した2層構造を有する。絶縁層4aと導電層4bは接着されている。また、外側積層体5は、絶縁層5aと導電層5bが積層した2層構造を有する。絶縁層5aと導電層5bは接着されている。内側積層体4および外側積層体5は、それぞれエラストマーで形成されており、伸長性を有する。導電層4bには、電極7bが取り付けられており、導電層5bには、電極7aが取り付けられている。
【0035】
図4の形態では、内側積層体4の導電層4bと外側積層体5の導電層5bの間に、内側積層体4の絶縁層4aおよび外側積層体5の絶縁層5aが介在している。つまり、内側積層体4および外側積層体5は、各絶縁層4a、5aが対向するように配置されている。この場合、内側積層体4と外側積層体5は、互いに接着されていても、接着されていなくてもよい。各積層体の伸長性の低下を抑制する観点から、内側積層体4と外側積層体5はできるだけ接着されていない方が好ましい。例えば、周回方向の1箇所のみで、両面テープや接着剤などを用いて両者が接着されていてもよい。
【0036】
図4に示すセンサ部材3において、内側積層体4に対する外側積層体5の向きを反対にしてもよい。すなわち、内側積層体4の絶縁層4aと外側積層体5の導電層5bとが対向するように配置されてもよい。なお、各積層体が変形した場合であっても、内側積層体4の導電層4bと外側積層体5の導電層5bとがより接触にくくなることから、図4に示すように、絶縁層4aおよび絶縁層5aが対向するように配置することが好ましい。これにより、短絡を好適に防止できる。
【0037】
さらに、センサ部材3では、短絡防止の観点から各積層体の幅を異なるようにしている。図5には、図4のセンサ部材を備えるセンサ本体部の一形態の部分断面図を示す。図5に示すように、弾性芯材2の軸方向における内側積層体4の幅W(絶縁層4a、導電層4bの幅も同じ)は、外側積層体5の幅W(絶縁層5a、導電層5bの幅も同じ)よりも大きくなっている。この場合、センサ部材3の軸方向において、絶縁層4aの上端部と下端部が外側積層体5からはみ出るように配置されている。このように、2組の導電層の間に介在する少なくとも1つの絶縁層(図5では絶縁層4a)の幅を、該絶縁層の外側に位置する導電層(図5では導電層5b)の幅よりも大きくすることで、センサ部材が大きく変形した場合であっても、2組の導電層が接触しにくくなり、短絡を好適に防止できる。
【0038】
ここで、センサ部材の静電容量は、下記式(1)で算出される。
静電容量C = (S/D)× ε ・・・(1)
【0039】
式(1)中、εは誘電率、Sは検出部の表面積、Dは一対の導電層間の距離である。なお、検出部とは、積層方向において一対の導電層が重なる面積である。式(1)より、誘電率εが大きいほど、静電容量Cが大きくなる。また、表面積Sが大きいほど、静電容量Cが大きくなり、一対の導電層間の距離Dが小さいほど、静電容量Cが大きくなる。静電容量Cが大きくなることで、圧力に伴う静電容量の変化も大きくなるため、圧力センサの測定精度が高くなる。
【0040】
一対の導電層間の距離Dは、一対の導電層間に介在する絶縁層の厚さに相当する。そのため、静電容量Cを大きくするため、導電層間に介在する絶縁層の厚さを薄くすることが好ましい。絶縁層4aの厚さTは、例えば20μm~150μmであり、好ましくは20μm~100μmである。絶縁層4aの厚さTと導電層4bの厚さTとの大小関係は、特に限定されず、図5に示すように、導電層4bの厚さTを、絶縁層4aの厚さTよりも大きくしてもよい。導電層4bの厚さTは、例えば50μm~200μmであり、好ましくは50μm~150μmである。なお、各層の厚さの数値範囲は、例えば、3層構造のセンサ部材における導電層および絶縁層においても適宜採用できる。
【0041】
また、図5では、弾性芯材2とセンサ部材3との間に樹脂フィルム9が配置されている。これにより、センサ部材3の動きがスムーズになりやすく、より変形しやすくなる。樹脂フィルム9は、弾性芯材2に対して接着されていることが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えばPEフィルムなどを用いることができる。
【0042】
本発明の圧力センサの構成は、上記図1図5の構成に限定されない。例えば、図1では弾性芯材2を略円柱状としたが、これに限定されず、略楕円柱状や略多角柱状であってもよい。また、圧力センサは、静電容量型の圧力センサに限らず、受圧面に荷重が加わることに伴うセンサ部材の変形によって圧力を検出可能な構成であればよい。
【0043】
また、図6(a)に示すように、弾性芯材2Aが外周面の一部が縮径するように凹んだ形状(例えばボビン形状)であってもよい。この場合、外周面の一部である凹部にセンサ部材3Aが配置されてもよい。また、荷重を受けることから弾性芯材は中実体であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない程度に、内部などに中空部を設けてもよい。例えば、図6(b)に示すように弾性芯材2Bが軸方向に貫通した中空部を有していてもよい。
【0044】
以下には、センサ部材における絶縁層および導電層について説明する。
【0045】
絶縁層は、エラストマーで形成されることが好ましく、この場合、例えばシリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどのゴム成分をベースとするゴム組成物が用いられる。上記ゴム成分は単独で使用してもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
上記ゴム成分の中でも、伸び率に優れることからシリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0047】
導電層は、ゴム成分に導電性充填剤を配合したゴム組成物からなり、導電性充填剤が層中に分散することで、導電性を有する。導電層に用いられるゴム成分としては、例えば、シリコーンゴム、EPDM、NBR、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが用いられる。上記ゴム成分は単独で使用してもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。絶縁層と導電層は、それぞれベースとなるゴム成分が同じ種類であることが好ましい。
【0048】
導電性充填剤としては、黒鉛粉末、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの固体炭素材料や、銅粉、銀粉、鉄粉などの金属粉末、導電性酸化錫、導電性酸化チタンなどの導電性金属酸化物などが用いられる。これら導電性充填剤は、単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、固体炭素材料が好ましく、黒鉛粉末、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブがより好ましい。
【0049】
導電性充填剤の配合量(2種以上用いる場合は合計の配合量)としては、ゴム成分100質量部に対して20質量部~70質量部含むことが好ましく、20質量部~50質量部含むことがより好ましい。
【0050】
導電層の具体的な組成として、例えば、導電性シリコーンゴム70質量部、シリコーンゴム30質量部、カーボンナノチューブマスターバッチ5質量部を加えたゴム組成物を用いることができる。
【0051】
絶縁層および導電層に用いるゴム成分は架橋されていることが好ましい。架橋方法としては、放射線架橋やプレス加硫などの化学架橋を行うことができる。プレス加硫に用いる加硫剤には、2,5-ジメチル-2,5ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物を用いることができる。
【0052】
放射線架橋には、電子線、γ線、X線などを用いることができる。本発明においては放射線遮蔽層の効果を制御しやすいという観点で電子線照射が好ましい。電子線照射はセンサ部材の両面のうち、いずれから照射してもよく、厚さや材料組成などに応じて、片面照射、両面照射、照射回数を適宜調整できる。電子線照射条件としては、加速電圧が50kV~1000kV、好ましくは200kV~500kVであり、照射線量(複数回照射の場合は合計の照射線量)が50kGy~400kGy、好ましくは50kGy~200kGyである。
【0053】
絶縁層および導電層には、発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤を配合することも可能である。例えば、加硫剤、加硫促進剤、補強剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤などを配合できる。
【0054】
以下には、2組の積層体からなるセンサ部材を有するセンサ本体部の製造の一例について説明する。
【0055】
絶縁層を構成するゴム組成物を溶剤に溶解し、濾過、脱泡することで絶縁層用塗料を得る。溶剤としては、ゴム成分を溶解可能であればよく、例えば、トルエンなどを用いることができる。得られた塗料を、塗工フィルム(例えば、50μm厚のPETフィルム)に帯状に塗工する。塗工方法としては、コンマバー法や、スプレー法、ディッピング法、刷毛塗り法など被膜を形成できるものであれば使用できる。塗工後、絶縁層用塗料を乾燥する。乾燥は、例えば90℃の恒温槽内で10分間程度行う。
【0056】
導電層を構成するゴム組成物を溶剤に溶解し、濾過、脱泡することで導電層用塗料を得る。溶剤としては、絶縁層用塗料と同様の溶剤を用いることができる。得られた導電層用塗料を、絶縁層用塗料の場合と同様の条件で、塗工フィルムに塗工して乾燥する。
【0057】
乾燥後の絶縁層および導電層を重ね合わせて貼り合せる。貼り合せは圧着ロールなどによって行う。貼り合せた後、電子線照射を上述の照射条件にて行い、各層を架橋させるとともに、絶縁層および導電層を接着させる。電子線照射は絶縁層側、導電層側のいずれから照射してもよく、膜厚に応じて、片面照射、両面照射、照射回数を適宜調整する。各層を架橋および接着させることで、内側積層体および外側積層体をそれぞれ得る。
【0058】
内側積層体および外側積層体を、互いの絶縁層同士を重ね合わせてセンサ部材とする。この際、必要に応じて、両面テープなどを用いて、周回方向の1箇所で内側積層体および外側積層体を接着してもよい。その後、センサ部材の各導電層に、電極としての導電テープをそれぞれ貼り合わせる。そして、略柱状の弾性芯材の側面を略周回するようにセンサ部材にテンション(例えば、伸長率(%)(={(伸長後の長さ-伸長前の長さ)/伸長前の長さ}×100)が20~40)をかけながら巻き付けた後、センサ部材の一対の端部を覆うように固定部材を貼り付けることで、センサ本体部が得られる。なお、センサ部材を弾性芯材に巻き付ける際に、必要に応じて樹脂フィルムを介在させてもよい。
【0059】
なお、センサ本体部の製造は、上記の方法に限定されない。例えば、塗工による成形に代えて、金型成形や押出成形、分出し成形によって各ゴム組成物を帯状に成形してもよく、この場合プレス加硫が適する。塗工による成形の場合、薄膜の長尺化や厚さ精度も良いという点で好ましい。また、乾燥した絶縁層用塗料の上に直接、導電層用塗料を塗布して乾燥することで、各層を接着させる方法も採用できる。
【0060】
本発明の圧力センサユニットの一形態を図7に示す。図7に示すように、圧力センサユニット11は、上述した圧力センサ1が略平面上に複数配列されて構成されている。具体的には、基盤12に対して、圧力センサ1の受圧面とは反対側の面で固定されている。このような構成とすることで、圧力センサユニット11は、複数の圧力センサ1における静電容量などを検出することで、複雑な形状の対象物の圧力分布を測定できる。そのため、体圧や座圧などを測定する着座センサや、面センサとして利用することができる。また、圧力センサユニットの各検出部を構成する圧力センサ1は、耐荷重性に優れるため、長期間の耐久性に優れた圧力センサユニットになる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の圧力センサは、簡易な構造としながら、耐荷重性に優れるので、圧力センサとして、様々な用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 圧力センサ
2、2A、2B 弾性芯材
2a 受圧面
3、3A、3B センサ部材
4 内側積層体
4a 絶縁層
4b 導電層
5 外側積層体
5a 絶縁層
5b 導電層
6 固定部材
7a、7b 電極
8 検出器
9 樹脂フィルム
11 圧力センサユニット
12 基盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7