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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072628
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】半導体光素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/028 20060101AFI20230517BHJP
   H01S 5/227 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01S5/028
H01S5/227
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020198
(22)【出願日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021185154
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
(72)【発明者】
【氏名】浜田 重剛
(72)【発明者】
【氏名】中島 良介
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 隆
(72)【発明者】
【氏名】横川 翔子
(72)【発明者】
【氏名】中原 宏治
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA26
5F173AL10
5F173AL13
5F173AL14
5F173AL21
5F173AR72
(57)【要約】
【課題】
放熱性と信頼性に優れた半導体光素子を提供することにある。
【解決手段】
半導体光素子であって、基板と、前記基板の上に形成され、発光する活性層を含む半導体多層と、前記半導体多層の上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜の上の一部に形成された電極と、を備え、前記絶縁膜は、前記半導体多層と前記電極とが電気的に接続される領域を除いて前記半導体多層を覆い、前記電極と重畳する領域の少なくとも一部が前記電極と重畳しない領域よりも薄い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成され、光機能層を含む半導体多層と、
前記半導体多層の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上の一部に形成された電極と、を備え、
前記絶縁膜は、前記半導体多層と前記電極とが電気的に接続される領域を除いて前記半導体多層を覆い、前記電極と重畳する領域の少なくとも一部が前記電極と重畳しない領域よりも薄い、
半導体光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記絶縁膜の厚い領域は、前記電極の端部の一部と重畳している、半導体光素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体光素子であって、
前記絶縁膜は、単一の材料で一体的に形成される、半導体光素子。
【請求項4】
請求項1または2に記載の半導体光素子であって、
前記絶縁膜は、前記薄い領域に形成された第1絶縁層と、厚い領域に前記第1絶縁層とは異なる材料で形成された第2絶縁層と、を含む半導体光素子。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体光素子であって、
前記第1絶縁層は前記電極と重畳しない領域に形成される、半導体光素子。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体光素子であって、
前記電極と重畳しない領域に配置されている前記第1絶縁層は、前記第2絶縁層の下に配置されている、半導体光素子。
【請求項7】
請求項5に記載の半導体光素子であって、
前記電極と重畳しない領域に配置されている前記第1絶縁層は、前記第2絶縁層の上に配置されている、半導体光素子。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体光素子であって、
前記電極の端部において、前記第1絶縁層は前記第2絶縁層の上に配置されている、半導体光素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記半導体多層はストライプ構造と前記ストライプ構造の両側に形成された埋め込み層を含む、半導体光素子。
【請求項10】
請求項4乃至8のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記半導体多層はストライプ構造を含み、
前記第1絶縁層は、前記ストライプ構造の側面に配置されている、半導体光素子。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体光素子であって、
前記ストライプ構造の側面の下方において、前記ストライプ構造の側面と前記第1絶縁層との間に前記第2絶縁層が配置されている、半導体光素子。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体光素子であって、
前記絶縁膜の薄い領域はシリコン窒化膜もしくは酸化アルミニウム膜を含む、半導体光素子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の半導体光素子であって、
前記絶縁膜の厚い領域はシリコン酸化膜を含む、半導体光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる半導体光素子は、電気を光、もしくは光を電気に変換する光機能層を有する。例えば、レーザや外部変調器では光機能層は多重量子井戸層を用いたものが知られている。また受光素子においては、光機能層は、半導体の吸収層で構成される。半導体光素子は、光機能層に電圧を印可するために、一般的に金属で構成された電極を備えている。電極の一部は半導体層と電気的・物理的に接続されている。また金属が配置されていない半導体層の表面には、保護のために絶縁膜が配置されている半導体光素子が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-118345公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体光素子の駆動時において、光機能層および他の半導体層、電極などは発熱をする。発生した熱は、半導体光素子の特性を低下させる一因となる。例えば、連続光を出力するCWレーザ(Continuous Waveレーザ)の主要特性として光出力特性がある。光出力は大きいほうが好ましいが、同じ駆動電流下においては、半導体光素子が低温のほうが光出力は大きくなる。外部温度が同一の環境下において、半導体光素子からの発熱がより多く外部に放出されることで、実効的な半導体光素子の温度は下がり、光出力は向上する。CWレーザに限らず、他の半導体光素子においても半導体光素子で発生した熱をより多く外部に放出することは重要である。
【0005】
上述の通り、半導体光素子は金属電極と絶縁膜(保護膜)を備えている。電極は金属であるため、熱伝導率が高く放熱性に優れている。一方、絶縁膜は酸化膜やシリコン窒化膜などが使われることが多い。これらの材料は半導体や金属と比較して、熱伝導率が低く、発生した熱を外部に放出する際の妨げとなる。
【0006】
また電極と半導体層との接続領域は、狭い領域に限定している場合がある。例えばストライプ構造を備えた半導体光素子において、電極と半導体層との接点はストライプの上面のみに限定されている。しかし、放熱性の観点から電極はストライプの幅より広い領域まで及んでいる。この時、ストライプ上以外の電極と半導体層との間を絶縁するために、上述した絶縁膜が配置されている。本構造は、特許文献1に開示されている。
【0007】
従って、半導体層の表面はごく一部の領域を除いて絶縁膜が広く配置されており、その上に電極が配置されている構造となっている。そのため、半導体層で発生した熱が外部に放出される経路には広い絶縁膜が配置されていることになる。その結果、放熱量が制限されており、半導体光素子の特性を劣化させる要因となっている。
【0008】
本発明は上記の課題に対して放熱性に優れた半導体光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体光素子は、基板と、前記基板の上に形成され、光機能層を含む半導体多層と、前記半導体多層の上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜の上の一部に形成された電極と、を備え、前記絶縁膜は、前記半導体多層と前記電極とが電気的に接続される領域を除いて前記半導体多層を覆い、前記電極と重畳する領域の少なくとも一部が前記電極と重畳しない領域よりも薄い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、放熱性に優れた半導体光素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態にかかる半導体光素子の上面図の例である。
図2図2は、図1に示す半導体光素子のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体光素子の変形例1のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る半導体光素子のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体光素子の変形例1のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図6図6は、第3の実施形態に係る半導体光素子のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態に係る半導体光素子の変形例1のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図8図8は、第4の実施形態に係る半導体光素子のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図9図9は、本発明の第4の実施形態に係る半導体光素子の変形例1のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図10図10は、本発明の第4の実施形態に係る半導体光素子の変形例2のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図11図11は、第5の実施形態に係る半導体光素子のA-A‘線に沿う概略断面図である。
図12図12は、本発明の第5の実施形態に係る半導体光素子の変形例1のA-A‘線に沿う概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態にかかる半導体光素子1の上面図である。図2図1のA-A’線に沿う概略断面図を表す。ここでは半導体光素子1は端面出射型のCWレーザを示す。半導体光素子1はストライプ構造3を備えている。半導体光素子1の表面には表面電極20が配置されている。表面電極20は、絶縁膜26の上の一部に形成された電極であって、例えばAuを含む金属膜である。金属膜は複数の材料で構成されていても構わない。また、半導体光素子1の上面において、表面電極20以外の領域には、絶縁膜26が配置されている。絶縁膜26は、図2に示す通り表面電極20の下にも配置されている。絶縁膜26は、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、酸化アルミニウム膜である。なお、絶縁膜26の詳細は後述する。図1の左側の端面には、低反射端面コーティング膜11が、右側の端面には高反射端面コーティング膜12が配置されている。なおコーティング膜は一例に過ぎず、両端面ともに低反射端面コーティング膜としても構わない。
【0014】
図2に示すように、半導体光素子1は、第1導電型の基板21の上にストライプ構造3が形成されている。ストライプ構造3の両側には埋め込み層30が配置されている。埋め込み層30は半絶縁性の半導体層や、複数のp型とn型の半導体層を組み合わせた半導体層である。埋め込み層30の上面には、絶縁膜26が配置されている。ストライプ構造3は基板21の一部の上に、複数の半導体層を含んで構成されている。複数の半導体層は、下から、第1導電型の光閉じ込め層22、多重量子井戸層で構成される活性層23(光機能層)、第2導電型の光閉じ込め層24、第2導電型のクラッド層25、コンタクト層35、を含んで構成される。そして第2導電型のクラッド層25の途中に、回折格子層33が備わっている。なおストライプ構造3が基板21の一部を含んでいても含んでいなくても構わない。以下、第1導電型の光閉じ込め層22からコンタクト層35までを半導体多層と呼称する。また、本実施形態では、半導体多層はストライプ構造3とストライプ構造3の両側に形成された埋め込み層30を含む。基板21の裏側には裏面電極31が配置されている。本実施形態においては、半導体多層は1.3μmに対応したCWレーザである。ただし、これに限定されず半導体多層が出力するレーザ光の波長帯は他の波長帯であっても構わない。また基板21を絶縁基板としても構わない。この場合は、絶縁基板である基板21とストライプ構造3との間に第1導電型の半導体層を配置する必要がある。
【0015】
本開示の特徴は、絶縁膜26が、半導体多層と表面電極20とが電気的に接続される領域を除いて半導体多層を覆い、表面電極20と重畳する領域の少なくとも一部が表面電極20と重畳しない領域よりも薄いことである。本実施形態では、図2に示すように表面電極20と埋め込み層30とが重畳している領域と重畳していない領域では、絶縁膜26の厚さが異なっている。絶縁膜26は、表面電極20と重畳している領域の方が、重畳していない領域より薄くなっている。
【0016】
半導体光素子1は、表面電極20と裏面電極31との間に電圧を印可(電流を注入)することで、活性層23が発光する。活性層23は発光と合わせて発熱もする。また他の半導体層も電流が流れるために発熱する。半導体多層で発生した熱は、基板21、埋め込み層30を介して外部に放出される。本実施形態の半導体光素子1では、ストライプ構造3が基板21の極表面側に形成されている。例えば、表面電極20から活性層23までの距離は、数μmであるのに対し、活性層23から裏面電極31までの距離は数十μm~100μmと厚い。そのため発生した熱は、裏面電極31側より表面電極20側で外部環境に多く放出される。また活性層23に近いほど発熱量が大きい。そのため、発熱した熱の多くは、表面電極20側から放出される。熱の一部はストライプ構造3の中を通って、直接表面電極20から放出される。しかし、放熱経路はそれ以外にも埋め込み層30を介して表面電極20に至る経路がある。
【0017】
表面電極20と埋め込み層30との間には、絶縁膜26が配置されている。絶縁膜26は、上述したように熱伝導率が半導体多層と比較して小さいシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、酸化アルミニウムなどである。そのため、表面電極20と埋め込み層30との間に配置された絶縁膜26は、放熱を妨げる。しかし本実施形態においては、表面電極20と重畳する領域の絶縁膜26を薄く形成している。当該領域の絶縁膜26は、例えば100nm以下である。そのため、放熱性を大きく低下させることなく外部に放熱させることが可能となる。
【0018】
一方、表面電極20と重畳していない領域の絶縁膜26は数百nmとしている。仮に、表面電極20と重畳しない領域の絶縁膜26の厚さを、表面電極20と重畳する領域の厚さと同じとした場合、表面電極20と重畳していない領域における絶縁膜26の保護膜としての機能が十分に得られなくなる恐れがあり、半導体光素子1の信頼性に影響を及ぼす恐れがある。また、表面電極20が配置されている領域は、表面電極20が保護膜として機能するため、絶縁膜26を薄くしても信頼性への影響は実質的にない。
【0019】
本構成とすることで、信頼性を確保しつつ、放熱性に優れることにより光特性に優れた半導体光素子を提供することができる。
【0020】
[変形例1]
図3は、半導体光素子1の変形例にかかるA-A’線に沿う概略断面図である。上記との違いは、絶縁膜26の形状である。本変形例では、表面電極20の端部付近の絶縁膜26の厚さが、ストライプ構造3の近くの厚さと比較して厚くなっている。すなわち、絶縁膜26の厚い領域の一部は、表面電極20の端部の一部と重畳している。本構造は製造性の観点で優れている。半導体光素子1の製造手順は、埋め込み層30や半導体多層を形成し、絶縁膜26を配置した後に、表面電極20を絶縁膜26の上に配置する。上記では、表面電極20の端部と絶縁膜26の厚さが変わる境界が一致しているが、製造ばらつきにより一致しないことがありうる。その際に、例えば絶縁膜26の薄い領域に表面電極20が重畳しない場合がある。上述したように、絶縁膜26が薄い場合は信頼性が低下する懸念がある。製造ばらつきにより、絶縁膜26の薄い領域が表面電極20で覆われない構造となることを避けるために、本変形例では意図的に表面電極20の端部付近の絶縁膜26の厚さを、表面電極20と重畳していない領域と同じ厚さにしている。本構成にすることで、絶縁膜26の薄い領域が表面電極20と重畳しない可能性を低減することが可能となる。なお、放熱性の観点では第1の実施形態に劣るものの、厚さが変わる境界がストライプ構造3から離れた領域であるため、影響は小さい。絶縁膜26の厚さが変わる境界の位置は、製造ばらつきを加味して決定しても良い。具体的には、薄い絶縁膜26と表面電極20とが重畳する領域が、表面電極20の面積の少なくとも50%以上となるようにすることが好ましい。また、薄い絶縁膜26と表面電極20が重畳する領域のA-A‘断面における長さは、ストライプ構造3から片側で10μm以上は確保することが好ましい。表面電極20と厚い絶縁膜26が重畳する領域のA-A‘断面における長さは例えば3μmでよい。
[第2の実施形態]
【0021】
図4は、第2の実施形態にかかる半導体光素子201の図1のA-A’線に沿う概略断面図である。第1の実施形態との違いは、第1の実施形態における絶縁膜が単一の材料で一体的に形成されているのに対して、第2の実施形態では、絶縁膜26の薄い領域に形成された第1絶縁層と、厚い領域に第1絶縁層とは異なる材料で形成された第2絶縁層と、を含む点である。図4に示すように、第2の実施形態にかかる半導体光素子201は、表面電極20と重畳する第1絶縁層27と表面電極20と重畳しない領域に配置された第2絶縁層28を含む。ここで第1絶縁層27と第2絶縁層28は異なる材料である。例えば、第1絶縁層27はシリコン窒化膜であり、第2絶縁層28はシリコン酸化膜である。なお、これは逆であっても構わないしどちらか一方を酸化アルミニウムとしても構わない。
【0022】
第1の実施形態では、一つの材料の絶縁膜26において、厚さが異なる二つの領域を形成する必要がある。厚さが異なる二つの領域を形成する製造方法はいくつかあるが、例えば厚く形成した絶縁膜26を表面電極20と重畳する領域だけをエッチングで薄くする方法がある。この製造方法の場合、エッチングする量はエッチング時間に依存するため、安定した膜厚制御ができない懸念がある。一方、第2の実施形態においては、絶縁膜26の表面電極20と重畳する領域と重畳しない領域は異なる材料である。そのため、第1絶縁層27と第2絶縁層28はそれぞれ個別に形成できるため、それぞれ所望の厚さとなるように形成することが可能となる。そのため、安定した膜厚制御が可能となる。第2の実施形態においても、第1の実施形態で説明した効果が得られることは言うまでもない。特に、シリコン窒化膜はシリコン酸化膜より熱伝導性に優れているため、第1絶縁層27をシリコン窒化膜、第2絶縁層28をシリコン酸化膜とすることで、より放熱性に優れた半導体光素子を提供することが可能となる。同様に、酸化アルミニウムはシリコン酸化膜より熱伝導性に優れるため、第1絶縁層27を酸化アルミニウムとしてもよい。
【0023】
[変形例1]
図5は、半導体光素子201の変形例にかかるA-A’線に沿う概略断面図である。上記との違いは、第2絶縁層28の一部が表面電極20の端部と重畳している点である。図3で説明した通り、表面電極20と重畳しない薄い第1絶縁層27が露出することは信頼性の観点で好ましくない。本変形例によれば製造性に優れた半導体光素子201を提供することができる。
【0024】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態にかかる半導体光素子301の図1のA-A’線に沿う概略断面図である。第2の実施形態との違いは、第1絶縁層27が表面電極20と重畳しない領域まで配置されている点である。図6に示すように、表面電極20と重畳しない領域に配置されている第1絶縁層27は、第2絶縁層28の下に配置されている。第2絶縁層28は、表面電極20と重畳しない領域に配置されている。第2の実施形態において、第1絶縁層27と第2絶縁層28との境界の位置は製造ばらつきの影響を受ける。図5に示す構造の製造手順としては、例えば第1絶縁層27を所望の領域に形成後、第1絶縁層27が形成された領域をマスクする。そして、マスクされていない領域に第2絶縁層28を形成する。しかしマスクの位置合わせ精度の関係で、マスクされる領域の境界と第1絶縁層27の端部の位置がずれる場合がある。ずれた場合は、第2絶縁層28が形成されず半導体層(この場合、埋め込み層30)が露出したままとなる恐れがある。しかし、本構造においては半導体光素子301の表面は第1絶縁層27で覆われているために、第2絶縁層28の形成位置がずれたとしても半導体層が露出することはない。そのため信頼性に優れた半導体光素子を提供することができる。また第1絶縁層27と第2絶縁層28を連続して成膜したのちに、第2絶縁層28のみを除去する方法として、ウェットエッチングのレートの差を利用することができる。第2絶縁層28に対してのみエッチレートが速いエッチャントを用いれば、表面電極20の部分を開口したマスクにより、表面電極20の下部の第2絶縁層28のみを除去することが可能である。つまり、第2絶縁層28と表面電極20の形状を決定するマスクは同じものが利用可能であり、製造性に優れる。
【0025】
[変形例1]
図7は、第3の実施形態の半導体光素子301の変形例にかかるA-A’線に沿う概略断面図である。上記との違いは、第2絶縁層28の一部が表面電極20の端部と重畳している点である。上記構造においても、製造ばらつきにより薄い第1絶縁層27が、表面電極20及び第2絶縁層28のいずれとも重畳しない領域が発生しうる懸念がある。本変形例は、上述した効果と同様に、表面電極20で覆われない領域は厚い第2絶縁層28が配置されることとなり、信頼性に優れた半導体光素子を提供することができる。
【0026】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態にかかる半導体光素子401の図1のA-A’線に沿う概略断面図である。第3の実施形態との違いは、絶縁膜26が表面電極20と重畳しない領域において、第2絶縁層28の上に第1絶縁層27が形成されている点である。具体的には、図8に示すように、表面電極20と重畳しない領域に配置されている第1絶縁層27は、第2絶縁層28の上に配置されている。本構造によれば、第3の実施形態同様に半導体層(本実施形態では埋め込み層30)が絶縁膜26で覆われない領域が形成されることを防止することができる。
【0027】
[変形例1]
図9は、第4の実施形態における半導体光素子401の変形例1にかかるA-A’線に沿う概略断面図である。図8との違いは、第2絶縁層28の一部が表面電極20の端部と重畳している点である。第4の実施形態の構造においても、製造ばらつきにより薄い第1絶縁層27が表面電極20及び第2絶縁層28のいずれとも重畳しない領域が発生する懸念がある。本変形例は、上述した効果と同様に、薄い第1絶縁層27が表面電極20で覆われない領域には、厚い第2絶縁層28が配置されることとなり、信頼性に優れた半導体光素子を提供することができる。
【0028】
[変形例2]
図10は、第4の実施形態における半導体光素子401の変形例2にかかるA-A’線に沿う概略断面図である。図9との違いは、絶縁層26と表面電極20とが重畳していない領域には第2絶縁層28のみが形成されている点である。つまり、表面電極20の下方は、端部付近を除いて、第1絶縁層27のみが形成されている。一方、表面電極20の端部において、第1絶縁層27と第2絶縁層28の両方が形成されており、第1絶縁層207が前記第2絶縁層の上に配置されている。そして、表面電極20と重畳していない領域は、第2絶縁層28のみが形成されている。本構成のメリットは二つある。一つは応力の観点で有利となる。絶縁膜26は半導体層に対して応力要因となりうる。一般的に応力は膜が厚いほうが大きい。本変形例2では表面電極20と重畳していない領域の絶縁膜26の厚さは、図6~9と比較して薄い。そのため、確実に半導体層の表面が絶縁膜26で覆われる構造を提供するというメリットを残しつつ、応力の発生を極力抑えることが可能となる。
【0029】
二つ目のメリットは、表面電極20の形状形成の安定化である。表面電極20の製造方法の一つとして、全体に電極を形成し、その後所望の形状となるように余計な領域を除去する方法がある。本変形例の製造手順は以下となる。まず半導体層まで(すなわち埋め込み層30及びコンタクト層35までの各層)を形成する。次に第2絶縁層28を所望の領域に形成する。次に、全面に第1絶縁層27を形成する。この時点では、後の表面電極26と重畳しない領域においても、第1絶縁層27は第2絶縁層28の上に形成されている(図9の表面電極20がない状態と同じ)。次に、第1絶縁層27の表面全体に電極を形成する。電極形成の方法は例えば蒸着法である。次に、最終的に表面電極20となる領域にマスクをし、マスクされていない領域の電極を除去する。電極の除去はミリング法などが使われる。この時、電極だけを除去し第1絶縁層27を残すように除去することも可能であるが、ウエハ面内のばらつきにおいて、十分に電極を除去し切れない領域が発生する恐れがある。その結果、ウエハ全体で見た時に表面電極20の形状が安定しないおそれがある。そこで、電極除去と同時に、第1絶縁層27も除去する程度まで多めに除去することで確実に電極が残る可能性を排除することが可能となる。この時、第2絶縁層28の一部も除去されることもあるが、第2絶縁層28も最終的に保護膜として機能する厚さが残るように厚めに形成しておけば問題とはならない。そして第2絶縁層28はストライプ構造3から離れた領域であるため、少々厚くても放熱性への影響は小さい。従って本変形例の構造によれば、以下の利点が得られる。まず、表面電極20と重畳する領域の絶縁膜26の大部分が薄い第1絶縁層27のみを含む構成とすることで放熱性を向上させ、半導体光素子401の特性を向上させることができる。さらに、表面電極20と重畳していない領域の絶縁膜26は第1絶縁層27より厚い第2絶縁層28のみを含む構成とすることで、信頼性を向上できる。また、第2絶縁層28の端部において、第1絶縁層27と第2絶縁層28が重畳しているため、製造ばらつきの影響で半導体層(ここでは埋め込み層30)が絶縁膜26に覆われない領域が形成されることを防止することができる。さらに、表面電極20の形状形成の安定化を図ることが可能となる。
【0030】
[第5の実施形態]
図11は、第5の実施形態にかかる半導体光素子501の図1のA-A’線に沿う概略断面図である。本実施形態の特徴は、第1絶縁層27は、ストライプ構造3の側面に配置されている点である。半導体光素子501は、リッジ型の半導体光素子である。メサストライプ構造3は回折格子層33を含む第2導電型のクラッド層25とコンタクト層35で形成されている。また同様の半導体多層がストライプ構造3の両側に配置されている。第1導電型の光閉じ込め層22、活性層23、そして第2導電型の光閉じ込め層24は基板21の上に広く配置されている。他の実施形態と同様にストライプ構造3の近傍においては、表面電極20に重畳する絶縁膜26は、第1絶縁層27のみを含む。またストライプ構造3の側面も第1絶縁層27で覆われている。表面電極20と重畳しない領域は、絶縁膜26は第2絶縁層28のみを含む。表面電極20の端部近傍においては、絶縁膜26は第1絶縁層27と第2絶縁層28を含む。ストライプ構造3に近い領域において、絶縁膜26は薄い第1絶縁層27のみを含んでおり放熱性に優れた半導体光素子501を提供することができる。また、表面電極20の端部および表面電極20で覆われていない領域の絶縁膜26の構成は、上述した他の実施例および変形例の構造を適用しても構わない。
【0031】
[変形例1]
図12は、第5の実施形態の半導体光素子501の変形例にかかるA-A’線に沿う概略断面図である。図11との違いは、ストライプ構造3の側面の一部にも第2絶縁層28が配置されている点である。本変形例の特徴は、ストライプ構造3の側面の下方において、ストライプ構造3の側面と第1絶縁層27との間に第2絶縁層28が配置されている点である。従来のリッジ型半導体光素子の場合、ストライプ構造3の側面を覆う絶縁膜26は、表面電極20と重畳する領域と重畳しない領域とで同じ厚さである。そのためストライプ構造3の側面の絶縁膜26は、保護層として機能する程度の厚さがある。そのため、導波モードの損失を考慮したとき、絶縁膜26への導波モードの染み出しが絶縁膜26と表面電極20の境界部分で十分に小さい。しかし第5の実施形態においては、放熱性を向上させるために絶縁膜26を保護層より薄い層としている。そのため、導波モードの表面電極20部分への染み出しが大きくなり、導波モードの損失が増加する恐れがある。そこで本変形例では、光の中心となる活性層23側の方だけストライプ構造3を覆う絶縁膜26を厚くしている。具体的には、ストライプ構造3の側面は、下部が第1絶縁層27と第2絶縁層28の両方で覆われ、上部は第1絶縁層27のみで覆われる構造となっている。第2絶縁層28は保護層として機能する厚さとしているために、導波モードの表面電極20部分への染み出しを抑制することができる。放熱性の観点では図11の方が優れるが、光学特性も加味すると本変形例のほうが優れる場合がある。どちらを選択するかは、使用温度や必要な特性に応じて選択すればよい。なおストライプ構造3の側面において、第2絶縁層28が覆う幅は必要な特性に応じて決定すればよいが、例えばストライプ構造3の高さの半分以上を覆うことで導波モードの損失を低減することができる。またストライプ構造3の側面全体を第2絶縁層28で覆っても構わない。この構造であっても、ストライプ構造3から少し離れた領域は第1絶縁層27のみで覆われているために、放熱性の向上効果は得られる。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、半導体光素子は上記例に限定されず、電界吸収型変調器、MZ変調器、増幅器、受光素子であっても構わない。これらの半導体光素子の場合、光機能層は吸収層として機能する。
【符号の説明】
【0033】
1 半導体光素子、3 ストライプ構造、11 低反射端面コーティング膜、12 高反射端面コーティング膜、20 表面電極、21 基板、22 第1導電型の光閉じ込め層、23 活性層、24 第2導電型の光閉じ込め層、25 第2導電型のクラッド層、26 絶縁膜、27 第1絶縁層、28 第2絶縁層、30 埋め込み層、31 裏面電極、33 回折格子層、35 コンタクト層、201 半導体光素子、301 半導体光素子、401 半導体光素子、501 半導体光素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12