(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072643
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】デジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 5/00 20060101AFI20230517BHJP
H04N 1/409 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
G06T5/00 705
H04N1/409
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096600
(22)【出願日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】110142127
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】509047591
【氏名又は名称】國立臺灣大學
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】孫 ▲啓▼光
(72)【発明者】
【氏名】バスカル・ジョティ・ボーラ
【テーマコード(参考)】
5B057
5C077
【Fターム(参考)】
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CD05
5B057CD07
5B057CE02
5B057CE04
5B057CE05
5B057CE06
5C077LL19
5C077PP02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デジタル画像における背景の高周波ノイズを迅速に抑制するデータ処理方法を提供する。
【解決手段】デジタル画像中の背景高周波ノイズを高速に抑圧するデータ処理方法を提供する。データ処理方法は、入力画像に対して第1の増幅処理、第1のピクセルビニング処理または第1のバイリニア補間処理、第1のガウスぼかし処理、第2のバイリニア補間処理、第1の減算処理、第2のガウスぼかし処理、第2の増幅処理および第2の減算処理を行って入力画像から減算マスクを引き、出力画像を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置において行うように、
複数のピクセル又は複数のデータ点を含みながら、第1の幅及び第1の高さを有する入力画像を取得し、
前記入力画像に対して第1の増幅率を乗じる第1の増幅処理を行い、第1の増幅画像を生成し、
縮小率によって、前記第1の増幅画像を前記第1の幅及び前記第1の高さよりも小さい前記縮小率に従った第2の幅及び第2の高さを有する第1のリサイズ画像に変換するように、前記第1の増幅画像に対して、第1のピクセルビニング(Bilinear Interpolation)処理または第1のバイリニア補間(Bilinear Interpolation)処理を行い、
前記第1のリサイズ画像に対して、第1のカーネルサイズを有するガウスカーネルによって畳み込み演算を行う第1のガウスぼかし処理(Gaussian Blur)を施すことによって、第1のぼかし画像を得て、
前記第1のぼかし画像を前記第2の幅及び前記第2の高さを有するものから前記第1の幅及び前記第1の高さを有する第2のリサイズ画像に変換するように、前記第1のぼかし画像に対して、第2のバイリニア補間処理を行い、
前記第2のリサイズ画像から前記第1の増幅画像を引く第1の減算処理を行うことによって、ノイズ関連画像を生成し、
前記ノイズ関連画像に対して、第2のカーネルサイズを有するガウスカーネルによって畳み込み演算を行う第2のガウスぼかし処理を施すことによって、第2のぼかし画像を得て、
前記第1の幅及び前記第1の高さを有する減算マスクを生成するように、前記第2のぼかし画像に対して前記第2のぼかし画像に第2の増幅率を乗じる第2の増幅処理を行い、
前記入力画像から前記減算マスクを引く第2の減算処理を行い、出力画像を生成する、
ことを特徴とする、デジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項2】
前記第1の増幅率は、
式g(r,c)=α×f(r,c)で表され、
前記f(r,c)は、前記入力画像を、前記g(r,c)は前記第1の増幅画像を、前記rは前記複数の複数のピクセル又は複数のデータ点の縦軸の位置を、前記cは前記複数の複数のピクセル又は複数のデータ点の横軸の位置を、前記αは前記第1の増幅率を表している、
請求項1に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項3】
前記αは、1.0<α≦5.0を満たす、請求項2に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項4】
前記第1のピクセルビニング処理または第1のバイリニア補間処理は
【数5】
で表され、
前記R、Cは、前記第1の幅及び前記第1の高さに関わる縦軸長さ及び横軸長さであり、前記R’、C’は前記第2の幅及び前記第2の高さに関わる縦軸長さ及び横軸長さであり、前記g
D(r’,c’)は前記第1のリサイズ画像であり、前記r’、c’はそれぞれ、前記複数の画素又は前記複数のデータ点の縦軸の位置及び横軸の位置の一方を表す、
請求項2に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項5】
前記縮小率は3である、請求項4に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項6】
前記第1のガウスぼかし処理は
【数6】
で表され、
前記L(r’,c’)は前記第1のぼかし画像であり、前記g1×g2は前記第1のカーネルサイズである、
請求項4に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項7】
前記第1のカーネルサイズは29×29である、請求項6に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項8】
前記第2のバイリニア補間処理は
【数7】
で表され、
前記L
U(r,c)は前記第2のリサイズ画像である、
請求項4に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項9】
前記第1の減算処理、前記第2のガウスぼかし処理、前記第2の増幅処理、及び前記第2の減算処理は
【数8】
で表され、
前記F(r,c)は前記出力画像であり、前記βは前記第2の増幅率であり、前記M×Mは前記第2のカーネルサイズである、
請求項1に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【請求項10】
前記βは1.0<β≦10.0の関係を満たし、前記MはM≦7の関係を満たす、請求項9に記載のデジタル画像における背景高周波ノイズを抑制するデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理方法に関し、より詳細には、デジタル画像における背景の高周波ノイズを迅速に抑制するデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ信号をデジタル化する際、様々な機器や環境要因によって、デジタル化されたデータセットが高周波ノイズで汚染されることがある。信号品質を向上させるためのアナログフィルターがあるが、このような構成は通常、専用のハードウェアを必要とし、信号収集システムの有効帯域幅を制限する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記技術的不備に対して、デジタル画像に含まれる背景の高周波ノイズを迅速に抑制し、高周波ノイズにダメージされたターゲット信号を復元することができるデータ処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本実施形態において、本発明は、デジタル画像における背景高周波ノイズを迅速に抑制するデータ処理方法を提供し、データ処理方法は、処理装置にて、以下のステップを実行することを含む。第1の寸法を有し、複数のピクセル又は複数のデータ点を含む入力画像を取得し、前記入力画像に対して第1の増幅処理を行い、入力画像に第1の増幅率を乗じ、第1の増幅画像を生成し、第1の増幅画像に対してピクセルビニング処理行い、前記第1の増幅画像を縮小率によりリサイズして、第2の寸法を有する第1リサイズ画像を生成し、前記第1リサイズ画像に対して第1のカーネルサイズを有するガウスカーネルによってガウスぼかし(Gaussian Blur)を施し、第1のぼかし画像を取得し、第1のぼかし画像に対してバイリニア補間(Bilinear Interpolation)を行うことによって、第1のぼかし画像を第1の寸法を持ちる第2のリサイズ画像を得て、前記第2のリサイズ画像に対して第1の減算処理を行うことによって、前記第2のリサイズ画像から第1の増幅画像を減算してノイズ関連画像を生成し、ノイズ関連画像に対して、第2のカーネルサイズのガウスカーネルによって畳み込み演算を行うことにより第2のぼかし画像を取得し、前記第2のぼかし画像に対して第2の増幅処理を行い、第2の増幅率を乗じ、前記第1の寸法を持ちる減算マスクを生成し、前記入力画像に対して第2の減算処理を行い、入力画像から減算マスクを減算して出力画像を生成する。
【0005】
本発明が提供するデジタル化画像の背景高周波ノイズを高速に抑制するデータ処理方法は、以下の利点を有する。
【0006】
1.ハードウェアを追加することなく、超高速ノイズ抑制に活用することができる。
【0007】
2.従来のぼかしを用いたノイズ除去アルゴリズムとは異なり、原画の解像度に与える影響が少ない。
【0008】
3.ノイズ強度がターゲット信号強度と同等以上の場合、超高速処理でターゲット信号の情報を復元することができる。
【0009】
発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るデータ処理方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る入力画像を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるノイズ関連画像を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態による減算マスクを示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る出力画像を示す模式図である。
【
図6】入力画像セットと、本発明の一実施形態に係るデータ処理方法によって処理される画像セットとの比較結果を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、i7-9800X CPU、Quadro P1000 GPU及びQuadro RTX 8000 GPUによる入力画像寸法の処理時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記より、具体的な実施例で本発明が開示する「デジタル画像に含まれる高周波の背景ノイズを高速に抑制するデータ処理方法」に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。
【0012】
以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るデータ処理方法を示すフローチャートである。
図1を参照すると、本発明の一実施形態は、デジタル画像における背景の高周波ノイズを迅速に抑制するためのデータ処理方法を提供するものである。データ処理方法は、1つ以上のプロセッサ(中央処理装置及びグラフィカルプロセッサなど)及び記憶装置を含むコンピューティングデバイスによって実施することができる。例えば、中央処理装置及びグラフィカルプロセッサは、記憶装置からコンピュータ可読命令にアクセスして、本発明によって提供されるデータ処理方法を実行するようにコンピューティング装置を制御するように構成され得る。
【0014】
記憶装置は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブなど、データを記憶するために使用できる任意の記憶装置とすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
演算装置は、例えば、データベース、汎用プロセッサ、画像処理装置、コンピュータ、サーバなど、プログラミングコードとプロセッサ・チップを統合した独自のハードウェアなど、特定の論理回路や特定の機能を有する装置によって実現することが可能である。より詳細には、本発明のデータ処理方法は、コンピュータプログラムを用いることにより実現することができる。コンピュータプログラムは、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、フラッシュドライブ、磁気テープ、ネットワークアクセス可能なデータベース、または同様の機能を有するコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することが当業者には容易に想到し得るものである。
【0016】
図1を参照すると、データ処理方法は、グラフィカル処理装置を構成して、以下のステップを実行することを含む。
【0017】
ステップS10:入力画像INPUTを取得する。
【0018】
入力画像INPUTは、第1の寸法として第1の幅と第1の高さを有し、複数のピクセルまたは複数のデータ点を含む。さらに、入力画像INPUTは、元の入力画像INPUTの高周波ノイズ強度が、後続のステップで有効な減算マスクを生成できない原因となるその暗い隣人に分配されないように、いかなるタイプのローパスフィルターによっても処理されていない画像でなければならないことに留意すべきである。
【0019】
本発明の一実施形態による入力画像の概略図である
図2が参照される。入力画像INPUTは、例えば、データ点に対応する10×10ピクセルを有する8ビットグレースケールデジタル化画像であり得、各データ点上の数字はその位置におけるグレースケール値を表す。
【0020】
ステップS11:入力画像INPUTに対して第1の増幅処理を行い、入力画像に第1の増幅率を乗算し、第1の増幅画像AMP1を生成する。このステップは、入力画像INPUTに含まれる弱い強度の情報を、好ましくは飽和に近い状態で増幅するものである。
【0021】
第1の増幅過程は、式g(r,c)=α×f(r,c)で表すことができる。
【0022】
ここでf(r,c)は入力画像INPUTである。g(r,c)は第1の増幅画像AMP1である。rは、縦軸の画素またはデータ点の位置のいずれかを表す。cは、横軸の画素またはデータ点の位置のいずれかを表す。αは第1の増幅率である。理想的には、第1の増幅率は、8ビットデータセットに対して255.0を乗じた最小関心強度の逆数として選択することができる。本発明の好ましい実施形態において、第1の増幅率αの範囲は、1.0<α≦5.0とすることができる。
【0023】
ステップS12:第1の増幅画像AMP1に対してピクセルビニング処理または第1のバイリニア補間処理を行い、第1の増幅画像AMP1を縮小率でリサイズして、第2の寸法とした第2の幅と第2の高さとを有する第1のリサイズ画像RESIZE1を生成する。つまり、ピクセルビニングは、対象となる対象画素の周囲の画素を結合して、対象画素の輝度を上げるために使われる。
【0024】
ここで、第1のバイリニア補間処理は、第1の増幅画像AMP1のサイズを縮小し、縮小の際に、連続したブロックのつなぎ目に現れるアーチファクト(Artifact)を最小化することができる。
【0025】
ピクセルビニング処理または第1のバイリニア補間処理は、以下の式で表される。
【0026】
【0027】
ここでは、R、Cはそれぞれ第1の高さと第1の幅を表す。R’、C’はそれぞれ、第二の高さと第二の幅を表し、gD(r’,c’)は第1のリサイズ画像であり、r’、c’はそれぞれ、前記第1のリサイズ画像の複数の画素又は複数のデータ点の縦軸の位置及び横軸の位置の一方を表す。
【0028】
例えば、第1の増幅画像AMP1に縮小率を3にしてピクセルビニング処理又は第1のバイリニア補間処理を施し、得られた第1のリサイズ画像RESIZE1は、実質的に第1の増幅画像AMP1の平滑層である。
【0029】
ステップS13:第1のリサイズ画像RESIZE1に対して、第1のカーネルサイズのガウスカーネルを用いながら畳み込み演算を行うことにより、第1のガウスぼかし処理を行い、第1のぼかし画像BLUR1を取得する。
【0030】
第1のガウスぼかし処理は、以下の式で表すことができる。
【0031】
【0032】
ここでL(r’,c’)は,第1のぼかし画像BLUR1を表す。g1×g2は第1のカーネルサイズを表す。
【0033】
ガウスぼかしは、実は画像処理の分野で広く使われているローパスフィルターの一種で、画像ノイズの低減やディテールレベルの低減によく使われる。ガウスぼかしは、コンピュータビジョンアルゴリズムの前処理段階でも、異なるスケールサイズでの画像強調に使用されている。
【0034】
なお、第1の増幅画像AMP1の平滑層を得るためには、まず第1の増幅画像AMP1を3倍縮小し、第1のカーネルサイズが例えば29×29のガウスカーネルを用いて、第1のガウスぼかし処理を実行する。ピクセルビニング処理やバイリニア補間処理を行わずに同様の平滑層を得るためには、より大きなガウスカーネルが必要であるが、中~大サイズのデータセットでは、より大きなガウスカーネルは比較的高価である。本発明の実施形態において、平滑層のサイズ低減では、いくつかのアプリケーションにおいて有用な高周波情報をよりよく保存するのに役立ち得る。
【0035】
ステップS14:第1のぼかし画像BLUR1に対して第2のバイリニア補間処理を行い、第1のぼかし画像BLUR1を、第2の幅および第2の高さ(R’×C’)を有するものから第1の幅および第1の高さ(R×C)を有する第2のリサイズ画像RESIZE2に変換させた。
【0036】
第2のバイリニア補間処理は、以下の式で表される。
【0037】
【0038】
ここで、LU(r,c)は第2のリサイズ画像RESIZE2となる。
【0039】
同様に、第2のバイリニア補間処理は、第1のぼかし画像BLUR1のサイズを拡大するために用いる。拡大する際に、連続したブロックのつなぎ目に現れるアーチファクト(Artifact)を最小限に抑えられる。
【0040】
ステップS15:第2のリサイズ画像RESIZE2および第1の増幅画像AMP1に対して第1減算処理を行い、第2のリサイズ画像RESIZE2から第1の増幅画像AMP1を減算して、ノイズ関連画像を生成する。
【0041】
本発明の一実施形態によるノイズ関連画像SUB1の模式図である
図3をさらに参照する。
図3に示すように、ステップS15の目的は、ノイズ及び低周波構造に対応する位置にゼロ強度をもたらし、ノイズの近傍に非ゼロ強度を残すことである。
図2に示すように、選択されたフレームの位置f(9,2)は値127の高周波ノイズ画素であるが、
図3の選択枠の同じ位置は0であり、選択枠の近傍ブロックは非0の強度を獲得している。また、
図2の中央部の低周波の構造は、
図3ではゼロで埋められている。なお、最初の減算処理で発生する負の値を持つ画素またはデータ点は、すべてゼロに置き換えられる。
【0042】
ステップS16:第1の減算画像SUB1に対して、第2のカーネルサイズのガウスカーネルを用いながら畳み込み演算を行うことにより、第2のガウスぼかし処理を行い、第2のぼかし画像BLUR2が得られる。
【0043】
例えば、第2カーネルサイズがM×M(Mは例えば3でもよい)のガウスカーネルを用いて、ノイズ関連画像に対してガウスぼかしを行って非ゼロの強度を再分配し、ノイズ関連画像中のノイズに対応する位置を(その近傍はまだ非ゼロであるので)非ゼロの値に変化させることが目的であると考えられる。
【0044】
ステップS17:第2のぼかし画像BLUR2に対して第2の増幅処理を行い、第2のぼかし画像BLUR2に第2の増幅率を乗じ、第1の幅および第1の高さを有する減算マスクMASKを生成する。例えば、第2の増幅率は、ノイジーバックグラウンド領域に対応する十分に強い画素(データポイント)を得るように、非ゼロ値を強化するために、2.0とすることができる。
【0045】
さらに、本発明の一実施形態による減算マスクの模式図である
図4を参照することができる。
図4に示すように、第2増幅率によって増幅された減算マスクMASKにおいて、上述した選択フレームの位置の値は156であり、選択フレームの位置の127よりも大幅に高い値であるf(9,2)を
図2に示す。
【0046】
ステップS18:入力画像INPUTと減算マスクMASKに対して第2の減算処理を行い、入力画像INPUTから減算マスクMASKを減算して、出力画像SUB2を生成するステップ。
【0047】
第1の減算処理、第2のガウスぼかし処理、第2の増幅処理、および第2の減算処理は、以下の式で表される。
【0048】
【0049】
ここで、F(r,c)は出力画像SUB2を表す。βは第2の増幅率である。M×Mは第2のカーネルサイズである。本発明の好ましい実施形態において、第2の増幅率の範囲は、1.0<β≦10.0であり、第2のカーネルサイズの範囲は、Mで定義される。また、M ≦ 7である。
【0050】
ここで、Mは1より大きい奇数でなければならず、計算情報に関係するため、できるだけ小さい数でなければならないことに注意する必要がある。高周波ノイズの影響が大きい場合、Mを高くすることで高周波ノイズを抑制できる場合がある。また、高周波ノイズの混入の程度によっては、より高い第2増幅率(β)を用いることも可能である。
【0051】
本発明の一実施形態による出力画像の模式図である
図5をさらに参照することができる。
図5に示すように、入力画像INPUTから減算マスクMASKを減算した後、
図2にて選択されたフレームf(9,2)ではゼロにされながら、F(9,2)中心部の低周波構造をほぼ保存しつつある。
【0052】
さらに、本発明の実施形態に従って描画された入力画像セットと、本発明のデータ処理方法を適用した画像セットとの比較を示す
図6を参照することができる。
【0053】
ノイズ密度が低く、信号強度がノイズ混入レベルと同程度、あるいは信号強度がノイズ混入レベルより高く、ターゲット信号があまりダメージを受けていない場合、ハイパスフィルターを直接適用してノイズを分離し、元の入力画像から減算してターゲット信号を回復することができる。しかし、ノイズの密度や強度が高くなると、特に信号強度が比較的弱い場合、この方法ではノイズに汚された低周波情報を識別できないことがある。
【0054】
例えば、
図6の左側のA、B、Cと書かれた3つの画像を分離するためにハイパスフィルタを適用した場合、画像Aのノイズのみを効果的に処理することができる。しかし、本発明のデータ処理方法を適用すると、J、K、Lとラベル付けされた3つの画像は、効果的にノイズを抑制し、対象信号の情報を復元できることがわかる。
【0055】
また、処理速度を評価するために、本発明の一実施形態は、さらに、i7-9800X CPUと、CUDAコア数がそれぞれ640と4608であるQuadro P1000とQuadro RTX 8000である2つのCUDA対応GPUで本発明のデータ処理方法を行っている。
【0056】
図7は、本発明の一実施形態によるi7-9800X CPU、Quadro P1000GPU、およびQuadro RTX 8000 GPUについて描かれた入力画像サイズの処理時間を示すグラフである。小さな画像サイズでは、9800X、P1000、RTX 8000の処理速度は同一である。しかし、画像サイズが大きくなると、CPUの処理時間は、i7-9800X CPUの曲線で描かれるように、指数関数的に増加する傾向がある。CPUと比較して、Quadro P1000やQuadroRTX 8000などのGPUは処理速度が大きく向上していることがわかる。
【0057】
さらに、
図7から、1万×1万の画像サイズ(8bit)の場合、i7-9800XのCPU処理時間が250μs以上であるのに対し、RTX 8000では20μs以下と、少なくとも12倍以上の性能向上を実現していることが分かる。また、1000×1000サイズの8bit画像を処理した場合、RTX8000では300μs以下となる。つまり、本発明が提供するデジタル画像の背景高周波ノイズを高速に抑圧するデータ処理方法が、サブ1/2ミリ秒の処理速度を実現できることを証明することができる。
[実施形態の有益な効果]
【0058】
以上より、本発明によって提供されるデジタル化画像の背景高周波ノイズを高速に抑制するデータ処理方法は、以下の利点を有する。
【0059】
1.ハードウェアを追加することなく、サブミリセカンド(sub-half-millisecond)レベルまでの超高速ノイズ対策に利用できる。
【0060】
2.従来のぼかしを用いたノイズ除去アルゴリズムとは異なり、原画の解像度に与える影響が少ない。
【0061】
3.ノイズ強度がターゲット信号強度と同等以上の場合、超高速処理でターゲット信号の情報を復元することができる。
【0062】
以上に発明された内容は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そのため、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0063】
NPUT:入力画像
AMP1:第1の増幅画像
RESIZE1:第1のリサイズ画像
BLUR1:第1のぼかし画像
RESIZE2:第2のリサイズ画像
SUB1:ノイズ関連画像
BLUR2:第2のぼかし画像
MASK:減算マスク
SUB2:出力画像