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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072646
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】玩具部品及び人形玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 3/46 20060101AFI20230517BHJP
   A63H 3/36 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A63H3/46 A
A63H3/36 D
A63H3/36 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117390
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2021185132の分割
【原出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150BC02
2C150CA01
2C150DC03
2C150EH07
2C150EH08
(57)【要約】
【課題】本発明は、取りうる姿勢・ポーズの自由度をより高くすることを可能にする可動構造を有する人形玩具の模型部品、及び、当該模型部品を用いた人形玩具を提供する。
【解決手段】人形玩具の玩具部品であって、人形玩具の上腕部と、上腕部を人形玩具の胴体部に接続する肩部と、上腕部と回動可能に接続された前腕部と、前腕部と回動可能に接続された手部とを備え、肩部は、胴体部と上腕部とを連結する連結部材を有し、連結部材は、胴体部と接続する側の第1の端部と、上腕部と接続する側の第2の端部を有し、第1の端部が第2の端部よりも上腕部側に位置する第1の状態と、第2の端部が第1の端部よりも上腕部側に位置する第2の状態を取り得るように構成され、連結部材が第2の状態を取る場合に、上腕部は、連結部材が第1の状態を取る場合よりも、肩部に対して遠位に位置する。


【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形玩具の玩具部品であって、
前記人形玩具の上腕部と、
前記上腕部を前記人形玩具の胴体部に接続する肩部と、
前記上腕部と回動可能に接続された前腕部と、
前記前腕部と回動可能に接続された手部と
を備え、
前記肩部は、前記胴体部と前記上腕部とを連結する連結部材を有し、
前記連結部材は、前記胴体部と接続する側の第1の端部と、前記上腕部と接続する側の第2の端部を有し、前記第1の端部が前記第2の端部よりも前記上腕部側に位置する第1の状態と、前記第2の端部が前記第1の端部よりも前記上腕部側に位置する第2の状態を取り得るように構成され、
前記連結部材が前記第2の状態を取る場合に、前記上腕部は、前記連結部材が前記第1の状態を取る場合よりも、前記肩部に対して遠位に位置する、
人形玩具の玩具部品。
【請求項2】
前記肩部は、第1の接続部材をさらに有し、
前記第1の接続部材を介して前記連結部材の前記第2の端部と前記上腕部とが接続され、
前記第1の接続部材は、前記第2の端部と接続する第1接続端部と、前記上腕部に接続する第2接続端部とを有し、
前記第1接続端部は、前記第2接続端部で定義される上腕部の軸線よりも外側に配置される、請求項1に記載の玩具部品。
【請求項3】
前記第1の接続部材は、前記第2の端部を回動軸として前記上腕部に回動可能に接続される、請求項2に記載の玩具部品。
【請求項4】
前記肩部は、第2の接続部材をさらに有し、
前記第2の接続部材を介して前記連結部材の前記第1の端部と前記胴体部とが接続され、
前記第2の接続部材は、前記第1の端部と接続する第3接続端部と、前記胴体部に接続する第4接続端部とを有する、請求項2又は3に記載の玩具部品。
【請求項5】
前記第2の接続部材は、前記第1の端部を回動軸として回動可能に接続され、
前記第4接続端部は球状部を含み、前記球状部を介して前記胴体部の挿入孔に対して回動可能に接続される、請求項4に記載の玩具部品。
【請求項6】
前記肩部の一部を覆うカバー部材を備え、
前記第2の接続部材は、前記カバー部材を接続する接続部を有し、前記カバー部材は前記接続部に対して回動可能に接続される、請求項4または5に記載の玩具部品。
【請求項7】
前記第1の接続部材、前記連結部材、及び、前記第2の接続部材が一体成形により構成された、請求項4から6のいずれか1項に記載の玩具部品。
【請求項8】
前記第1の接続部材の前記第2接続端部は、前記第2接続端部の側面の一部に接続特徴部を有し、前記上腕部の一方は前記第2接続端部が挿入される凹部と、前記凹部の内周上の一部に受入特徴部を有し、前記第2接続端部と前記上腕部の一方は前記接続特徴部と前記受入特徴部とが重なる位置で係合し、前記上腕部は前記第2接続端部を回動軸として回動可能に接続される、請求項2から7のいずれか1項に記載の玩具部品。
【請求項9】
前記前腕部は、前記上腕部と接続する側の第1の前腕部材と、前記手部と接続する側の第2の前腕部材とを有し、
前記第1の前腕部材は、前記第2の前腕部材に回動可能に接続された、請求項1から8のいずれか1項に記載の玩具部品。
【請求項10】
前記前腕部は、前記第1の前腕部材と前記第2の前腕部材とが一体成形により構成された、請求項9に記載の玩具部品。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の玩具部品を有する人形玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具部品及び人形玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人形玩具の胴体部及び腕部の各部位に関節構造を設けることが記載されている。ユーザは、このような人形玩具の腕部を動作させて自分の好みのポーズを取らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-140449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、取りうる姿勢・ポーズの自由度をより高くすることを可能にする可動構造を有する人形玩具の模型部品、及び、当該模型部品を用いた人形玩具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、人形玩具の玩具部品であって、
前記人形玩具の上腕部と、
前記上腕部を前記人形玩具の胴体部に接続する肩部と、
前記上腕部と回動可能に接続された前腕部と、
前記前腕部と回動可能に接続された手部と
を備え、
前記肩部は、前記胴体部と前記上腕部とを連結する連結部材を有し、
前記連結部材は、前記胴体部と接続する側の第1の端部と、前記上腕部と接続する側の第2の端部を有し、前記第1の端部が前記第2の端部よりも前記上腕部側に位置する第1の状態と、前記第2の端部が前記第1の端部よりも前記上腕部側に位置する第2の状態を取り得るように構成され、
前記連結部材が前記第2の状態を取る場合に、前記上腕部は、前記連結部材が前記第1の状態を取る場合よりも、前記肩部に対して遠位に位置する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、取りうる姿勢・ポーズの自由度をより高くすることを可能にする可動構造を有する人形玩具の模型部品、及び、当該模型部品を用いた人形玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】実施形態に対応する人形玩具の一例を示す図。
図1B】実施形態に対応する人形玩具の他の一例を示す図。
図2】実施形態に対応する人形玩具の姿勢の変化を説明する図。
図3】実施形態に対応する人形玩具の胴体部と肩部のパーツを示す図。
図4】実施形態に対応する人形玩具の上腕部のパーツを示す図。
図5】実施形態に対応する人形玩具の前腕部のパーツを示す図。
図6】実施形態に対応する人形玩具の手部のパーツを示す図。
図7】実施形態に対応する人形玩具の肩部の構造により得られる効果を説明する図。
図8】実施形態に対応する人形玩具の前腕部の構造により得られる効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。また、各図において、紙面に対する上下左右表裏方向を、本実施形態における部品(またはパーツ)の上下左右表裏方向として、本文中の説明の際に用いることとする。
【0009】
まず、本実施形態に対応する人形玩具の外観の一例を説明する。図1Aは、実施形態に係る人形玩具100の外観を簡略化して示す模式図である。図1Bは、実施形態に係る人形玩具100の上半身の姿勢を変化させた外観を示す模式図である。人形玩具100は、頭部110、胴体部111、肩部112、上腕部113、前腕部114、手部115、脚部116、及び腰部117の各模型部品を有し、これらが結合されて構成されている。頭部110~脚部116の少なくとも一部は、隣接する部位に対して回動(或いは揺動)可能に支持される。例えば、頭部110は胴体部111に対して回動可能に支持され、肩部112は胴体部111に対して回動、前傾、後傾が可能に支持される。
【0010】
また、胴体部111は、腰部117に対して回動可能に支持される。このようにして人形玩具100の各部位には関節構造が設けられており、ユーザ(例えば、人形玩具100の所有者)は、このような人形玩具100を所望の姿勢として、例えば、図1Bに示す腕組み姿勢にすることができる。人形玩具100の姿勢は、腕組み姿勢に限られず、人間の関節の可動範囲で実現される様々な姿勢を含む。図1A及び図1Bでは、省略しているが、人形玩具100には1つ以上の装飾部品を取り付けることができる。装飾部品も本実施形態で説明する人形玩具の模型部品と同様に構成することができる。装飾部品には、例えば、剣や銃のような武器や、盾のような防具等がある。
【0011】
尚、本明細書においては、各部位の位置関係を説明するのに際して、前(前方)、後(後方)、左(左側方)、右(右側方)、上(上方)、下(下方)等と記載する場合があるが、これらの表現は人形玩具100を基準とした相対的なものである。例えば、前は人形玩具100の正面側に対応し、後は人形玩具100の背面側に対応し、左は人形玩具100の左側方に対応し、右は人形玩具100の右側方に対応する。
【0012】
本実施形態において、人形玩具100を構成する各模型部品は、ABS等の熱可塑性樹脂により構成することができる。また、ABS以外の他の材質(ポリエチレン、ポリスチレン、熱硬化性樹脂等)を用いてもよい。更には、各模型部品をABS等で構成した内部パーツと、当該内部パーツの外側を覆う金属材料で構成された外部パーツとで構成してもよい。外部パーツ同士は基本的には直接結合されず、内部パーツに対して外部パーツを結合することにより、同一の内部パーツを介して複数の外部パーツの相対的位置が決定される。外部パーツ同士を結合する場合には、焼結処理により予め結合されていてもよい。外部パーツは、例えば、チタニウム、アルミニウム、希土類イットリアを混合した合金で構成することができる。但し、これに限られるものではなく、組み合わせの少なくとも一部が異なる、或いは、全てが異なる他の種類の合金であってもよいし、或いは、アルミニウムのような単一金属であってもよい。
【0013】
次に図2を参照して、図1A及び図1Bの実施形態に対応する人形玩具の姿勢の変化を説明する。図2(A)は、人形玩具100の姿勢変化前後の胴体部111と左腕部の正面図を示す。図2(A)から(D)において、人形玩具の胴体部111と肩部112とは肩関節部201により回動可能に結合されている。肩部112と上腕部113とは、軸部202(図2(C)を参照)を介して接続されており、図2(A)の姿勢変化前の状態において、軸回りに左右の方向に回動可能である。上腕部113と前腕部114とは肘関節部203を介して接続されており、図2(A)の姿勢変化前の状態において、前腕部114を上腕部113に対して前方に回動可能である。前腕部114には軸部204が含まれており、前腕部114を上腕部113とは独立に、図2(A)の姿勢変化前の状態において軸部204周りに左右に回動させることができる。前腕部114と手部115とは手首関節部205により回動可能に接続されており、手首関節部205を介して前腕部114に対して手部115を任意の方向に回動させることができる。また、肩部112にはカバー部材206が付与されている。
【0014】
説明を容易にするために、図2(A)~(C)では人形玩具100の左腕部のみを示しているが、右腕部は左腕部と同様の機能を有するものとする。まず、人形玩具100の姿勢変化前の姿勢は、上腕部113~手部115までを回動させない直線的な姿勢である。ここで、肩部112のカバー部材206の頂部と胴体部111の延長線(一点鎖線で図示)とがなす角度をθ1で表す。
【0015】
一方、人形玩具100の姿勢変化後の姿勢は、肩部112のカバー部材206を上方に回動した後(θ1→θ1'、但しθ1>θ1')、肩部112を肩関節部201を介して後方に更に回動し、上腕部113を前方に伸ばして軸部202回りに左に回動し、前腕部114を胴体部111に沿うように上腕部113に対して肘関節部203を介して左に回動させると共に、前腕部114を軸部204周りに後方に回動させた後、手部115を手首関節部205を介して斜め上方に回動した姿勢である。ここで、肩部112のカバー部材206の頂部と胴体部111の延長線(一点鎖線で図示)とがなす角度をθ1、上腕部113と前腕部114とがなす角度をθ3、前腕部114の延長線(一点鎖線で図示)と手部115とがなす角度をθ4で表す。なお、図2(A)の姿勢変化後の姿勢において、手部115は下方にも回動可能であるため、手部115が下方向にある際の手部115と前腕部114の延長線(一点鎖線で図示)とがなす角度がθ4であってもよい。
【0016】
図2(B)は、人形玩具100の姿勢変化前後の右側面図を示す。まず、人形玩具100の姿勢変化前の姿勢は、肩部112のカバー部材206の頂点部分を水平に保持し、左腕部を真下に下ろした姿勢である。一方、人形玩具100の姿勢変化後の姿勢は、図2(A)と同様に、肩部112、上腕部113、前腕部114、手部115をそれぞれ回動させた状態である。ここで、胴体部111と肩部112とがなす角度をθ5で表す。
【0017】
図2(C)は、人形玩具100の姿勢変化前後の斜視図を示す。肩部112が備えるパーツ211の状態の説明を容易にするために、肩部112のカバー部材206を取り外した形態で説明する。パーツ211は、胴体部111と回動可能に接続する第1の端部と、上腕部113と回動可能に接続する第2の端部とを有する連結部材を含むように構成される。まず、人形玩具100の姿勢変化前の姿勢は、パーツ211における連結部材の第1の端部が第2の端部よりも上腕部113の近くに位置する状態である。この状態において、連結部材の第1の端部よりも第2の端部が上側に位置している。
【0018】
一方、人形玩具100の姿勢変化後では、連結部材の第2の端部が第1の端部よりも上腕部113の近くに位置する状態である。この状態において、連結部材の第2の端部よりも第1の端部が上側に位置している。連結部材の第2の端部が下側に下がることで上腕部113が下側に移動し、その状態で肩部112を肩関節部201を介して前方に回動することで、上腕部113をより前方に位置させることができる。
【0019】
仮にパーツ211が無い場合を想定すると、前腕部114を回動させたときに前腕部114の長さが足りずに胴体部111が邪魔になり、前腕部114を肘関節部203を介して回動させても完全には曲がり切らず胴体部111の前側に斜めに位置することになってしまう。このときのθ3の大きさは、90度を大きく超えて、例えば120度程度になってしまう。これに対しパーツ211を利用することで、肩部112の回動時に前腕部114を前側に移動させられるので、胴体部111に邪魔されることなく胴体部111の前側において前腕部114を肘関節部203を介して自由に回動させることが可能となる。このときのθ3は90度、或いは、それよりも小さい角度とすることが可能となる。
【0020】
図2(D)は、人形玩具100の右腕部の姿勢変化前後の正面図を示す。まず、人形玩具100の姿勢変化前の姿勢は、上腕部113~手部115までを回動させない直線的な姿勢である。一方、人形玩具100の姿勢変化後の姿勢は、肩部112のカバー部材206を上方に回動した後、肩部112を肩関節部201を介して後方に更に回動し、上腕部113を前方に伸ばして右に軸部202回りに回動し、前腕部114を胴体部111に沿うように上腕部113に対して肘関節部203を介して右に回動し、手部115を手首関節部205を介して下方向に回動した姿勢である。ここで、前腕部114と図中の一点鎖線とがなす角度をθ6で、前腕部114の延長線(一点鎖線で図示)と手部115とがなす角度をθ7で表す。なお、手部115は上方向にも回動可能であるため、手部115が上方向に回動された際の手部115と前腕部114の延長線(一点鎖線で図示)とがなす角度がθ7であってもよい。また、図8に示すように、手首関節部205の上方に位置する前腕部114のブロック207を上下方向に回動することにより、角度θ8を形成することができる。このようにして人形玩具100の左腕部と右腕部とを折り曲げることにより、人形玩具100は図1Bに示すような手を脇に差し込むような腕組み姿勢の他、任意の姿勢を取ることができる。
【0021】
次に図3を参照して、実施形態に対応する人形玩具の胴体部111と肩部112を構成する各パーツについて説明する。図3(A)は、胴体部111と肩部112の斜視図を示す。胴体部111は右側面に左の肩部112のパーツ311を挿入する挿入孔308を1つ有し、左側面に右の肩部112のパーツ311を挿入する挿入孔308を1つ有する。肩部112は複数の部材から構成されており、以下では本実施形態の構成に関わる部材について説明する。まず、パーツ311は、インサート(一体成形品)と呼ばれ、パーツ311の一部はカバー310によって覆われる。カバー310は、後述のカバー316とカバー320とを含む。なお、ここでインサート成形(一体成形)とは、前工程の射出成形工程で作成された部品に対して異なる部品を後続する射出成形工程にて一体的に成形する(例えば、第1樹脂材料による1回目の射出成形で作られた部品に対して、第2樹脂材料による2回目の射出成形で作られる部品を一体的に成形する)成形工程であり、インサート(一体成形品)のパーツとは、インサート成形(一体成形)により成形されたパーツのことをいう。
【0022】
図3(B)は、図3(A)のAA'線で肩部112を分解した分解図を示す。パーツ311は、支持部312(第2の接続部材に当たる)、突起部313(接続部に当たる)、図2と関連して説明した連結部材に相当する連結部314、及びパーツ315を一体成形させて得られるが、各パーツをそれぞれ組み合わせて得てもよい。インサートタイプ(一体成形品)のパーツ311は、非インサートタイプのパーツ311よりも、回動時に各構成部品が外れにくくなる効果を有する。支持部312は、胴体部111が備える挿入孔308に係合する凸部又は球状部として、例えばボールジョイントを有する。人形玩具100の右腕部又は左腕部は、支持部312を支点として回動する。突起部313は、テーパー形状の先端を有しており、後述の開口部319及び開口部321に挿入される。連結部314は、第1の接続部材に当たるパーツ315と嵌合しており、後述の円筒部326を回動軸として上下方向に回動する。カバー316及びカバー320は、突起部313を支点として上下方向に回動する。
【0023】
カバー316は、突起部317、突起部318、及び開口部319を含む。突起部317及び突起部318は、カバー320が備える各開口部に挿入される。これにより、カバー316とカバー320とが係合される。開口部319は、突起部313を挿入する孔を有し、その直径はカバー316の回動を妨げない範囲で、突起部313の直径よりも大きくてもよい。また、開口部319の孔の深さは、突起部313がカバー316よりも外側に突出しない深さであればよい。カバー320は、開口部321を含む。開口部321は、開口部319と同様の機能を有するので、説明を省略する。
【0024】
図3(C)は、カバー316とカバー320の平面図を示す。カバー320は、カバー316と係合する面を示している。カバー320は、開口部321及び開口部322を有する。ここで、カバー316の突起部317及び突起部318は、カバー320の開口部322及び開口部323にそれぞれ係合する。
【0025】
図3(D)は、パーツ311を分解した分解図を示す。支持部312は、突起部313、突起部324(第4接続端部に当たる)及び開口部325(第3接続端部に当たる)を含む。突起部324は、胴体部111が備える凹部に係合する凸部又は球状部であり、例えばボールジョイントを含む。開口部325に後述の摺動面327が嵌合することで、連結部314が回動する。なお、開口部325の直径は、摺動面327が嵌合可能な大きさであればよく、連結部314の回動を妨げない大きさであればよい。上述の連結部材に相当する連結部314は、円筒部326(第1の端部に当たる)、支持体328、及び、円筒部329(第2の端部に当たる)を含む。円筒部326又は円筒部329は、円筒の両端部にフランジを設けたパーツであり、円筒の中心部分は平らな面として摺動面327又は摺動面330をそれぞれ含む。円筒部326と円筒部329は、支持体328によって接続される。円筒部326は開口部325の位置で回動可能に支持され、連結部314は円筒部326を回動軸として上下方向に回動する。パーツ315は、第1接続端部に当たる貫通孔331を含む。貫通孔331に摺動面330が嵌合することでパーツ315は連結部314と連動して上下方向に回動する。
【0026】
次に図4を参照して、実施形態に対応する人形玩具の上腕部のパーツについて説明する。図4(A)は、上腕部113の斜視図を示す。上腕部113は複数の部材から構成されており、以下では本実施形態の構成に関わる部材について説明する。肩部112(不図示)は、上記のパーツ315を介して、上腕部113と回動可能に係合する。上腕部113は、パーツ412、パーツ413、及びパーツ414を含む。パーツ413は上述の肘関節部203として機能する。
【0027】
パーツ315とパーツ412との係合関係を説明するために、図4(B)は、パーツ315の正面図及び底面図を示す。図4(B)の上に示す正面図においてパーツ315は、第2接続端部に当たる突起部418及び接続特徴部に当たる特徴部419を含む。突起部418の下端の側面の一部に特徴部419が設けられている。ここで、突起部418は貫通孔331から下方向へ延びる軸線から左にずらした位置(すなわち、胴体部111に近い位置)に設けられる。一方、貫通孔331は突起部418から上方向へ延びる軸線から右にずらした位置(すなわち、胴体部111から遠い位置)に設けられる。つまり、貫通孔331の位置と突起部418の位置は互いに離隔する対角の位置関係にある。この位置関係は、肩部112の連結部314の長さ分だけ上腕部113が胴体部111から遠くなること(すなわち、回動時に前腕部114のリーチが短くなること)を相殺する効果を有する。仮に突起部418が貫通孔331の下方の延長上の位置にある場合、上腕部113と接続される突起部418の位置が胴体部111から遠ざかることで、回動時に前腕部114のリーチが短くなり、前腕部114を胴体部111と平行な位置まで回動させることができなくなる(例えば、図2(C)においてθ3が120度となる)。胴体部111から離れた位置にある貫通孔331と胴体部111寄りの位置にある突起部418の位置関係が形成されることによって、前腕部114を前方に回動させた際に胴体部111の胸側面部に接触することを防止できる。図4(B)の上に示す底面図において、突起部418の側面に特徴部419が設けられることにより、略円形が形成される。これにより、パーツ315は、特徴部419を備えた突起部418を介して、後述のパーツ412に対して回動し、所定の位置で固定することが可能なロック機構を有する。
【0028】
図4(C)は、パーツ412の斜視図及び底面図を示す。図4(C)の上に示す斜視図において、パーツ412は、凹部420及び開口部421を含む。凹部420は、突起部418を受け入れることで、それと嵌合し、上述の軸部202として機能する。なお、凹部420の直径は、突起部418が嵌合可能な大きさであればよく、パーツ315の回動を妨げない大きさであればよい。図4(C)の下に示す底面図において、凹部420はその内周上の上下2ヶ所に受入特徴部に当たる特徴部422を設けている。突起部418を凹部420に嵌合させて左又は右方向に回動させた際に、特徴部419と特徴部422が重なる位置で、パーツ315とパーツ412は係合する。これにより、上腕部113は肩部112に対して左右方向に回動可能に接続される。
【0029】
図4(D)は、上述の肘関節部203として機能するパーツ413を分解した分解図を示す。パーツ423は、突起部424、突起部425、及び突起部426を含む。パーツ427は、パーツ423と係合する面を示す。パーツ427は、凹部428、凹部429、及び開口部430を含む。ここで、突起部424と凹部428が嵌合し、突起部425と凹部429が嵌合し、突起部426と開口部430が嵌合する。
【0030】
図4(E)は、パーツ414の斜視図及び底面図を示す。図4(D)の上に示す斜視図において、パーツ414は、凹部431及び開口部432を含む。図4(D)の下に示す斜視図において、パーツ414は、開口部432の内周上の左右2ヶ所に特徴部433を含む。パーツ414は、パーツ412と同様の機能を有するので、説明を省略する。なお、パーツ412は、開口部421と突起部424との嵌合により、突起部424を回動軸として上下方向に回動可能である。また、パーツ414は、開口部432と突起部425との嵌合により、突起部425を回動軸として上下方向に回動可能である。
【0031】
次に図5を参照して、実施形態に対応する人形玩具の前腕部のパーツについて説明する。図5(A)は、前腕部114の斜視図を示す。前腕部114は複数の部材から構成されており、以下では本実施形態の構成に関わる部材について説明する。まず、前腕部114は、インサート(一体成形品)と呼ばれ、3つのパーツで構成される。インサート(一体成形品)の定義は、上記で説明した通りである。前腕部114は、第1の前腕部材に当たるパーツ511、第2の前腕部材に当たるパーツ512及びパーツ513を一体成形させて得られるが、各パーツをそれぞれ組み合わせて得てもよい。インサートタイプ(一体成形品)の前腕部114は、非インサートタイプの前腕部114よりも、回動時に各構成部品が外れにくくなる効果を有する。
【0032】
図5(B)は、パーツ511の正面図、右側面図及び左側面図を左から順番に示す。図5(B)の左に示す正面図において、パーツ511は、突起部514、突起部514の右端の側面の一部に設けられる特徴部515、円筒部516、及び円筒部517を含む。図5(B)の中央に示す右側面図において、突起部514の外周において突出した特徴部515が設けられることにより、略円形の形状が形成される。突起部514は図4(E)に示したパーツ414の凹部431と嵌合し、上述の軸部204として機能する。図5(B)の右に示す左側面図において、円筒部516及び円筒部517はそれぞれ、中央部分にくびれを有する円筒の両端部にフランジを備え、くびれを有する面として摺動面518及び摺動面519を備える。
【0033】
図5(C)は、パーツ512の斜視図及び左側面図を示す。図5(C)の左に示す斜視図において、パーツ512は、突起部520及び開口部521を含む。図5(C)の右に示す左側面図において、突起部520は略十字形であり、突起部520の下端が後述のパーツ513の開口部522に嵌合する。開口部521は、摺動面518を受け入れて嵌合し、パーツ512及びパーツ513のアセンブリが開口部521を回動軸として上下方向に回動する。なお、摺動面519は不図示の装飾パーツが有する開口部に嵌合する。
【0034】
図5(D)は、パーツ513の斜視図及び底面図を示す。図5(D)の左に示す斜視図において、パーツ513は、開口部522及び凹部523を含む。凹部523は、後述の手部115の突起部613と係合し、手首関節部205を構成する。図5(D)の右に示す底面図において、パーツ513は、略矩形状の開口部522を有する。開口部522には、突起部520の下端が挿入され、パーツ512とパーツ513は嵌合する。
【0035】
次に図6を参照して、実施形態に対応する人形玩具の手部のパーツについて説明する。図6(A)は、手部115の斜視図を示す。手部115は複数の部材から構成されており、以下では本実施形態の構成に関わる部材について説明する。手部115は、指部611、支持体612、及び突起部613を含む。手部115は、人間の手を模擬したパーツであるが、図のように全ての指を伸ばした形態に限られず、握りこぶしの状態であってもよい。
【0036】
図6(B)は、手部115の分解図を示す。指部611は、柱状の突起部615を含み、突起部615は、後述の開口部621と嵌合する。支持体612は、開口部616、開口部617、及び凹部618を含む。凹部618は、矩形状の凹部を有しており、突起部613を収容する。突起部613は、1つのテーパー形状の特徴部619及び突起部620を含む。特徴部619は、開口部617に嵌合する。指部611及び支持体612は、開口部617を回動軸として、上下方向に回動する。突起部620は、前腕部114の凹部523と係合する凸部又は球状部であり、例えば、ボールジョイントを含む。これにより、手部115は、突起部620を介して、前腕部114に対して上下方向に回動する。図6(C)は、支持体612の上面図を示す。支持体612は開口部621を含み、開口部621は突起部615と嵌合する。
【0037】
図7は、実施形態に対応する人形玩具の肩部の構造により得られる効果を説明するための図である。肩部112と上腕部113の一部(パーツ412)とが接続された状態を用いて説明する。図7(A)は、肩部112を回動せず、上腕部113を軸に対して左方向に回動した第1の状態を示す。図7(B)は、肩部112を下方に回動し、上腕部113を軸に対して左方向に回動した第2の状態を示す。
【0038】
第1の状態では、円筒部326の外周部の一部とパーツ411の切り欠き部711が接する。また、円筒部326は上腕部113に近い位置(上腕部側)にあるが、円筒部329は円筒部326よりも上腕部113から遠い位置にある。一方、第2の状態では、円筒部326の外周部の一部とパーツ411の切り欠き部711は接することなく離れた状態である。また、円筒部326は上腕部113から離れた位置にあるが、円筒部329は円筒部326よりも上腕部113に近い位置(上腕部側)にある。すなわち、第2の状態は第1の状態よりも、上腕部113が肩部112に対して遠位な位置に位置する。肩部112が下方に回動して第1の状態から第2の状態に遷移することにより、上腕部113を円筒部326から円筒部329の長さ分だけ肩部112から遠位な位置に移動させることができる。
【0039】
図8は、実施形態に対応する人形玩具の前腕部の構造により得られる効果を説明するための図である。説明を容易にするために、前腕部114と手部115とが接続された状態で、手部115は回動させない状態とする。図8(A)は、前腕部114を回動しない第3の状態を示す。図8(B)は、前腕部114が円筒部516を回動軸として上方向に回動する第4の状態を示す。第3の状態と第4の状態における円筒部516の位置は同一であるものとする。
【0040】
第3の状態では、パーツ511とパーツ512と嵌合済みのパーツ513は同一線上に並ぶ状態である。一方、第4の状態では、パーツ512と嵌合済みのパーツ513が円筒部516を回動軸として上方向に回動する。ここで、パーツ511とパーツ513とがなす角度をθ8で表す。なお、パーツ513は円筒部516を回動軸として下方向にも回動可能であるから、パーツ511と、下方向に回動済みのパーツ513とがなす角度をθ8としてもよい。前腕部114が上方向に回動して第3の状態から第4の状態に遷移することにより、人形玩具100の腕組み姿勢時における前腕部114の上下方向の位置の調整が可能となる。なお、前腕部114の下方向の外側に不図示の装飾パーツを備えることが可能であるが、パーツ513の回動範囲(すなわち、θ8の角度)はその外部装飾パーツ(不図示)に接触しない範囲であってよい。
【0041】
以上の通り、パーツ211を利用することで、肩部112の下方向への回動時に前腕部114を胴体部111の前側に移動させることができる。そのため、前腕部114が胴体部111に邪魔されることなく胴体部111の前側に胴体部111とほぼ平行に位置させることが可能となる。また、パーツ511とパーツ512と嵌合済みのパーツ513を利用することで、前腕部114を回動させたときに胴体部111の前で腕組みの上下方向の位置を調整できる。以上の左腕宇及び右腕部の玩具部品を人形玩具100に適用すると、人形玩具100の取りうる姿勢・ポーズの自由度をより高くすることを可能にする。
【0042】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8