(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072670
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の管理装置およびリチウムイオン二次電池の状態推定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/382 20190101AFI20230517BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20230517BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20230517BHJP
G01R 31/378 20190101ALI20230517BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230517BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20230517BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
G01R31/382
G01R31/3835
G01R31/385
G01R31/378
H01M10/48 P
H02J7/10 E
H02J7/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175374
(22)【出願日】2022-11-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2021184849
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】712006374
【氏名又は名称】CONNEXX SYSTEMS株式会社
(72)【発明者】
【氏名】的場 智彦
(72)【発明者】
【氏名】塚本 壽
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA03
2G216BA41
2G216BA46
2G216CA01
2G216CA04
2G216CB44
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA18
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS20
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したまま、およびCCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することが可能なリチウムイオン二次電池の管理装置およびリチウムイオン二次電池の状態推定方法を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池の管理装置10は、CPU12と放電パルス発生部14と充電パルス発生部16とCCV測定部18とを備える。CCV測定部18は、リチウムイオン二次電池20の連続放電中または連続充電中に、電流値およびパルス幅が互いに同じ放電パルスおよび充電パルスを順にまたは逆順にリチウムイオン二次電池20に入力した時に変化するリチウムイオン二次電池20のCCVを連続的に測定する。また、CPU12は、CCV測定部18が連続的に測定したCCVからリチウムイオン二次電池20のOCV推定値を求め、OCV推定値を外部機器22に送信する機能を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池のOCV推定値を求めるCPUと、
前記CPUからの信号に基づいて、前記CPUが前記リチウムイオン二次電池に入力する放電パルスを発生させる放電パルス発生部と、
前記CPUからの信号に基づいて、前記CPUが前記リチウムイオン二次電池に入力する、電流値およびパルス幅が前記放電パルスと同じ充電パルスを発生させる充電パルス発生部と、
前記リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に前記放電パルスおよび前記充電パルスを順にまたは逆順に前記リチウムイオン二次電池に入力した時に変化する前記リチウムイオン二次電池のCCVを連続的に測定するCCV測定部と、を備え、
前記CPUは、外部機器からの入力信号に基づいて、前記CCV測定部が連続的に測定した前記CCVから前記OCV推定値を求め、前記OCV推定値を前記外部機器に送信する機能を有するリチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項2】
さらに、前記リチウムイオン二次電池のOCVの測定値とSOCの測定値との関係を示す表または式を記憶した記憶部を備え、
前記CPUは、前記表または式を使用して前記OCV推定値からSOC推定値を求める機能と、前記OCV推定値の代わりにまたは前記OCV推定値に加えて、前記SOC推定値を前記外部機器に送信する機能と、を有する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項3】
前記放電パルスおよび前記充電パルスの電流値は、前記リチウムイオン二次電池の最大電流の50~100%の範囲内の値である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項4】
前記放電パルスおよび前記充電パルスの容量は、前記リチウムイオン二次電池の充電容量の0.1~0.5%の範囲内の値である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項5】
前記CPUは、前記リチウムイオン二次電池に前記放電パルスを入力した時のCCVと前記充電パルスを入力した時のCCVとを比較して前記OCV推定値を求める請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項6】
前記CPUは、さらに、
前記リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に、大電流の放電パルスおよび大電流の充電パルスの内の一方のパルスを前記リチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、前記一方のパルスの入力前のCCV初期値を記憶させると共に、CCVの変化速度が速い第1a電圧変化量とCCVの変化速度が遅い第1b電圧変化量とを求める第1機能と、
前記一方のパルスを停止した後、電流値およびパルス幅が前記一方のパルスと同じ他方のパルスを前記リチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が遅い第2a電圧変化量を求める第2機能と、
前記他方のパルスを停止し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が速い第2b電圧変化量を求める第3機能と、
前記第1a電圧変化量および前記第1b電圧変化量から算出した第1電圧補正量と前記第2a電圧変化量および前記第2b電圧変化量から算出した第2電圧補正量とを比較し、その内の絶対値が小さい方の電圧補正量と前記CCV初期値とから前記OCV推定値を求める第4機能と、を有する請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項7】
リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に、電流値およびパルス幅が互いに同じ放電パルスおよび充電パルスを順にまたは逆順に前記リチウムイオン二次電池に入力し、その時に変化する前記リチウムイオン二次電池のCCVを連続的に測定し、前記CCVからOCV推定値を求めるリチウムイオン二次電池の状態推定方法。
【請求項8】
前記リチウムイオン二次電池に前記放電パルスを入力した時のCCVと前記充電パルスを入力した時のCCVとを比較して前記OCV推定値を求める請求項7に記載のリチウムイオン二次電池の状態推定方法。
【請求項9】
前記リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に、大電流の放電パルスおよび大電流の充電パルスの内の一方のパルスを前記リチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、前記一方のパルスの入力前のCCV初期値を記憶させると共に、CCVの変化速度が速い第1a電圧変化量とCCVの変化速度が遅い第1b電圧変化量とを求める第1工程と、
前記一方のパルスを停止した後、電流値およびパルス幅が前記一方のパルスと同じ他方のパルスを前記リチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が遅い第2a電圧変化量を求める第2工程と、
前記他方のパルスを停止し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が速い第2b電圧変化量を求める第3工程と、
前記第1a電圧変化量および前記第1b電圧変化量から算出した第1電圧補正量と前記第2a電圧変化量および前記第2b電圧変化量から算出した第2電圧補正量とを比較し、その内の絶対値が小さい方の電圧補正量と前記CCV初期値とからOCV推定値を求める第4工程と、を含む請求項7または8に記載のリチウムイオン二次電池の状態推定方法。
【請求項10】
さらに、あらかじめ記憶した表または式を使用して前記OCV推定値からSOC推定値を求める第5工程を含む請求項9に記載のリチウムイオン二次電池の状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の状態推定を行うリチウムイオン二次電池の管理装置およびリチウムイオン二次電池の状態推定方法に関し、特に、OCV推定を行うリチウムイオン二次電池の管理装置およびリチウムイオン二次電池の状態推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池をパルス放電させてその二次電池の分極電圧を求める方法が開示されている。例えば、特許文献1には、パルス放電の際またはその前後に測定された電圧値および電流値に基づいて二次電池の分極電圧を求める方法が開示されている。また、二次電池をパルス充電させてその二次電池の内部抵抗を求める方法が開示されている。例えば、特許文献2には、二次電池にパルス状の電流を印加してその二次電池の電圧波形から内部抵抗を求める方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-138673
【特許文献2】特開2010-066229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法ではパルス放電後に二次電池のSOCが低下し、特許文献2の方法ではパルス充電後に二次電池のSOCが上昇するので、リチウムイオン二次電池の状態推定が低精度になるという問題があった。また、特許文献1および2のようにパルス放電時およびパルス充電時の内の一方のCCVを使用する方法でOCV推定値を求めると、CCVが低い場合にリチウムイオン二次電池の状態推定が低精度になるという問題があった。
【0005】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したままその状態を高精度に推定することが可能なリチウムイオン二次電池の管理装置およびリチウムイオン二次電池の状態推定方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記目的に加え、CCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することが可能なリチウムイオン二次電池の管理装置およびリチウムイオン二次電池の状態推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、まず、パルス放電後にSOCが低下した二次電池をパルス充電してSOCを上昇させること、放電パルスと充電パルスとの間で電流値およびパルス幅をそれぞれ等しくしてSOCをパルス放電前の状態に戻すことによって、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したままその状態を高精度に推定できることを見出した。
【0007】
また、本発明者は、パルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用し、リチウムイオン二次電池に放電パルスを入力した時のCCVと充電パルスを入力した時のCCVとを比較してOCV推定値を求めることによって、CCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
即ち、本発明の第1実施形態は、リチウムイオン二次電池のOCV推定値を求めるCPUと、CPUからの信号に基づいて、CPUがリチウムイオン二次電池に入力する放電パルスを発生させる放電パルス発生部と、CPUからの信号に基づいて、CPUがリチウムイオン二次電池に入力する、電流値およびパルス幅が放電パルスと同じ充電パルスを発生させる充電パルス発生部と、リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に放電パルスおよび充電パルスを順にまたは逆順にリチウムイオン二次電池に入力した時に変化するリチウムイオン二次電池のCCVを連続的に測定するCCV測定部と、を備え、CPUは、外部機器からの入力信号に基づいて、CCV測定部が連続的に測定したCCVからOCV推定値を求め、OCV推定値を外部機器に送信する機能を有するリチウムイオン二次電池の管理装置を提供するものである。
【0009】
ここで、上記においては、さらに、リチウムイオン二次電池のOCVの測定値とSOCの測定値との関係を示す表または式を記憶した記憶部を備え、CPUは、表または式を使用してOCV推定値からSOC推定値を求める機能と、OCV推定値の代わりにまたはOCV推定値に加えて、SOC推定値を外部機器に送信する機能と、を有するのが好ましい。
放電パルスおよび充電パルスの電流値は、リチウムイオン二次電池の最大電流の50~100%の範囲内の値であるのが好ましい。
放電パルスおよび充電パルスの容量は、リチウムイオン二次電池の充電容量の0.1~0.5%の範囲内の値であるのが好ましい。
CPUは、リチウムイオン二次電池に放電パルスを入力した時のCCVと充電パルスを入力した時のCCVとを比較してOCV推定値を求めるのが好ましい。
【0010】
さらに、上記においては、CPUは、さらに、リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に、大電流の放電パルスおよび大電流の充電パルスの内の一方のパルスをリチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、一方のパルスの入力前のCCV初期値を記憶させると共に、CCVの変化速度が速い第1a電圧変化量とCCVの変化速度が遅い第1b電圧変化量とを求める第1機能と、一方のパルスを停止した後、電流値およびパルス幅が一方のパルスと同じ他方のパルスをリチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が遅い第2a電圧変化量を求める第2機能と、他方のパルスを停止し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が速い第2b電圧変化量を求める第3機能と、第1a電圧変化量および第1b電圧変化量から算出した第1電圧補正量と第2a電圧変化量および第2b電圧変化量から算出した第2電圧補正量とを比較し、その内の絶対値が小さい方の電圧補正量とCCV初期値とからOCV推定値を求める第4機能と、を有するのが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2実施形態は、リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に、電流値およびパルス幅が互いに同じ放電パルスおよび充電パルスを順にまたは逆順にリチウムイオン二次電池に入力し、その時に変化するリチウムイオン二次電池のCCVを連続的に測定し、CCVからOCV推定値を求めるリチウムイオン二次電池の状態推定方法を提供するものである。
【0012】
ここで、上記においては、リチウムイオン二次電池に放電パルスを入力した時のCCVと充電パルスを入力した時のCCVとを比較してOCV推定値を求めるのが好ましい。
リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に、大電流の放電パルスおよび大電流の充電パルスの内の一方のパルスをリチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、一方のパルスの入力前のCCV初期値を記憶させると共に、CCVの変化速度が速い第1a電圧変化量とCCVの変化速度が遅い第1b電圧変化量とを求める第1工程と、一方のパルスを停止した後、電流値およびパルス幅が一方のパルスと同じ他方のパルスをリチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が遅い第2a電圧変化量を求める第2工程と、他方のパルスを停止し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が速い第2b電圧変化量を求める第3工程と、第1a電圧変化量および第1b電圧変化量から算出した第1電圧補正量と第2a電圧変化量および第2b電圧変化量から算出した第2電圧補正量とを比較し、その内の絶対値が小さい方の電圧補正量とCCV初期値とからOCV推定値を求める第4工程と、を含むのが好ましい。
さらに、あらかじめ記憶した表または式を使用してOCV推定値からSOC推定値を求める第5工程を含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置および本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法によれば、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したままその状態を高精度に推定することができる。
さらに、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置および本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法によれば、上記効果に加え、CCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置を示すブロック図である。
【
図2(a)】リチウムイオン二次電池の連続放電中に放電パルスおよび充電パルスを順に入力した時のCCVを示すグラフである。
【
図2(b)】リチウムイオン二次電池の連続充電中に充電パルスおよび放電パルスを順に入力した時のCCVを示すグラフである。
【
図3】リチウムイオン二次電池のOCVの測定値とSOCの測定値との関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池のOCV推定方法およびSOC推定方法を示すフローチャートである。
【
図5】リチウムイオン二次電池の連続放電中に放電充電複合パルスを間隔を開けて4回入力した時のCCVを示すグラフである。
【
図6(a)】
図5の1回目の放電充電複合パルスの入力時のCCVを示すグラフである。
【
図6(b)】
図5の2回目の放電充電複合パルスの入力時のCCVを示すグラフである。
【
図6(c)】
図5の3回目の放電充電複合パルスの入力時のCCVを示すグラフである。
【
図6(d)】
図5の4回目の放電充電複合パルスの入力時のCCVを示すグラフである。
【
図7】リチウムイオン二次電池の連続充電中に充電放電複合パルスを間隔を開けて4回入力した時のCCVを示すグラフである。
【
図8(a)】
図7の1回目の充電放電複合パルスの入力時のCCVを示すグラフである。
【
図8(b)】
図7の2回目の充電放電複合パルスの入力時のCCVを示すグラフである。
【
図8(c)】
図7の3回目の充電放電複合パルスの入力時のCCVを示すグラフである。
【
図8(d)】
図7の4回目の充電放電複合パルスの入力時のCCVを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を添付の図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。まず、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置を示すブロック図である。
【0016】
本発明のリチウムイオン二次電池の管理装置10は、CPU12と放電パルス発生部14と充電パルス発生部16とCCV測定部18とを備える。CPU12は、リチウムイオン二次電池20のOCV推定値を求める。放電パルス発生部14は、CPU12からの信号に基づいて、CPU12がリチウムイオン二次電池20に入力する放電パルスを発生させる。充電パルス発生部16は、CPU12からの信号に基づいて、CPU12がリチウムイオン二次電池20に入力する、電流値およびパルス幅が放電パルスと同じ充電パルスを発生させる。CCV測定部18は、リチウムイオン二次電池20の連続放電中または連続充電中に放電パルスおよび充電パルスを順にまたは逆順にリチウムイオン二次電池20に入力した時に変化するリチウムイオン二次電池20のCCVを連続的に測定する。また、CPU12は、外部機器22からの入力信号に基づいて、CCV測定部18が連続的に測定したCCVからOCV推定値を求め、OCV推定値を外部機器22に送信する機能を有する。
【0017】
ここで、OCV(Open circuit voltage、開回路電圧、開放電圧ともいう)とは、電池に電流を流していない状態における端子間電圧である。また、CCV(Closed circuit voltage、閉回路電圧、閉路電圧ともいう)とは、電池に電流を流している状態における端子間電圧であり、放電時には放電電流値と電池の内部抵抗との積をOCVから引いた値になり、充電時には充電電流値と電池の内部抵抗との積をOCVに加えた値になる。
【0018】
すなわち、CPU12は、外部機器22からの入力信号を受信すると、放電パルス発生部14と充電パルス発生部16に信号を送信し、電流値およびパルス幅が互いに同じ放電パルスおよび充電パルスを順にまたは逆順に発生させる。次に、そのパルスがリチウムイオン二次電池20に入力した時に変化するリチウムイオン二次電池20のCCVをCCV測定部18が連続的に測定する。次に、CPU12は、そのCCVから求めたOCV推定値を外部機器22に送信する。
【0019】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置は、電流値およびパルス幅が互いに同じパルスでのパルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めるので、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したまま、およびCCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【0020】
CPU12は、リチウムイオン二次電池20に放電パルスを入力した時のCCVと充電パルスを入力した時のCCVとを比較してOCV推定値を求めるのが好ましい。ここで、パルスを入力した時のCCVとは、パルス入力を開始した瞬間のCCVを意味するのではなく、順にまたは逆順に入力する2つのパルスの内、前のパルスではそのパルス入力を開始した瞬間から次のパルス入力を開始する瞬間までのCCVを意味し、後のパルスではそのパルス入力を開始した瞬間からパルス入力を終了した直後の変化が終わるまでのCCVを意味する。
【0021】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置は、パルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めるので、CCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【0022】
次に、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置を構成するCPUの機能の内、リチウムイオン二次電池のOCV推定機能について説明する。
図2(a)は、リチウムイオン二次電池の連続放電中に放電パルスおよび充電パルスを順に入力した時のCCVを示すグラフであり、
図2(b)は、リチウムイオン二次電池の連続充電中に充電パルスおよび放電パルスを順に入力した時のCCVを示すグラフである。
【0023】
CPU12は、さらに、第1機能と第2機能と第3機能と第4機能とを有するのが好ましい。その場合には、第1機能は、リチウムイオン二次電池20の連続放電中または連続充電中に、大電流の放電パルスおよび大電流の充電パルスの内の一方のパルスをリチウムイオン二次電池20に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、一方のパルスの入力前のCCV初期値を記憶させると共に、CCVの変化速度が速い第1a電圧変化量とCCVの変化速度が遅い第1b電圧変化量とを求める。すなわち、先に観測されるCCVの変化速度が速い電圧波形から第1a電圧変化量を求め、その後に観測されるCCVの変化速度が遅い電圧波形から第1b電圧変化量を求める。
【0024】
第2機能は、一方のパルスを停止した後、電流値およびパルス幅が一方のパルスと同じ他方のパルスをリチウムイオン二次電池20に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が遅い第2a電圧変化量を求める。すなわち、先に観測されるCCVの変化速度が速い電圧波形(
図2(a)、(b)のP1部分)を除外し、その後に観測されるCCVの変化速度が遅い電圧波形から第2a電圧変化量を求める。第3機能は、他方のパルスを停止し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が速い第2b電圧変化量を求める。すなわち、先に観測されるCCVの変化速度が速い電圧波形から第2b電圧変化量を求め、その後に観測されるCCVの変化速度が遅い電圧波形(
図2(a)、(b)のP2部分)を除外する。第4機能は、第1a電圧変化量および第1b電圧変化量から算出した第1電圧補正量と第2a電圧変化量および第2b電圧変化量から算出した第2電圧補正量とを比較し、その内の絶対値が小さい方の電圧補正量とCCV初期値とからOCV推定値を求める。第1電圧補正量および第2電圧補正量を算出する数式、ならびにOCV推定値を求める数式を以下に示す。
【0025】
[数1] 第1電圧補正量=V1a×(B/A1)+V1b
[数2] 第2電圧補正量=V2a+V2b×(B/A2)
a)ここで、連続放電中に放電パルス、充電パルスの順に入力する場合
[数3(a)] A1=放電パルスの電流-連続放電中の電流
[数3(b)] A2=充電パルスの電流
[数3(c)] B=連続放電中の電流
[数4] OCV推定値=V0+絶対値が小さい方の値
b)また、連続充電中に充電パルス、放電パルスの順に入力する場合
[数5(a)] A1=充電パルスの電流-連続充電中の電流
[数5(b)] A2=放電パルスの電流
[数5(c)] B=連続充電中の電流
[数6] OCV推定値=V0-絶対値が小さい方の値
【0026】
c)また、連続放電中に充電パルス、放電パルスの順に入力する場合
[数7(a)] A1=充電パルスの電流+連続放電中の電流
[数7(b)] A2=放電パルスの電流
[数7(c)] B=連続放電中の電流
[数8] OCV推定値=V0+絶対値が小さい方の値
d)また、連続充電中に放電パルス、充電パルスの順に入力する場合
[数9(a)] A1=放電パルスの電流+連続充電中の電流
[数9(b)] A2=充電パルスの電流
[数9(c)] B=連続充電中の電流
[数10] OCV推定値=V0-絶対値が小さい方の値
【0027】
なお、CCVの変化速度が速い部分は、リチウムイオン二次電池20の直流抵抗および反応抵抗に起因するものであり、パルス入力を開始後の早い段階で観測される。また、CCVの変化速度が遅い部分は、リチウムイオン二次電池20の拡散抵抗に起因するものであり、CCVの変化速度が速い部分の後に観測される。また、第1~4機能は、CPU12の動作についてより詳細に説明したものなので、前述のCPU12の動作と重複した内容を含む。
【0028】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置は、電流値およびパルス幅が互いに同じパルスでのパルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めるので、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したまま、およびCCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置を構成するCPUの機能の内、リチウムイオン二次電池のSOC推定機能およびSOC送信機能について説明する。
図3は、リチウムイオン二次電池のOCVの測定値とSOCの測定値との関係を示すグラフである。
【0030】
本発明のリチウムイオン二次電池の管理装置10は、さらに、記憶部24を備えるのが好ましい。その場合には、記憶部24は、リチウムイオン二次電池20のOCVの測定値とSOCの測定値との関係を示す表または式を記憶する。CPU12は、表または式を使用してOCV推定値からSOC推定値を求める機能と、OCV推定値の代わりにまたはOCV推定値に加えて、SOC推定値を外部機器22に送信する機能と、を有する。
【0031】
ここで、SOC(States Of Charge、充電率ともいう)とは、充電状態を表す指標であり、電池が満充電された状態から放電した電気量を除いた残容量の満充電容量に対する比率であり、満充電状態では100%、完全放電状態では0%になる。
【0032】
すなわち、
図3のグラフの縦軸に示すリチウムイオン二次電池20のOCVの測定値と横軸に示すリチウムイオン二次電池20のSOCの測定値との関係を表または式としてあらかじめ記憶部24に記憶する。次に、CPU12は、その表または式を使用して、例えば、OCV推定値3.7VからSOC推定値60%を求める。ここで、その表とは、
図3のグラフに示された曲線の縦軸の読みと横軸の読みとを、横軸が0~100%の範囲で列記したものである。また、その式とは、
図3のグラフに示された曲線の上および両端に設けた複数の点の内、例えば、隣接する2点間を結ぶ線分の式である。
【0033】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置は、OCV推定値からSOCの推定値を換算するので、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したまま、およびCCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【0034】
次に、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置を構成する放電パルス発生部が発生させる放電パルス、および充電パルス発生部が発生させる充電パルスについて説明する。
【0035】
放電パルスおよび充電パルスの電流値は、リチウムイオン二次電池20の最大電流の50~100%の範囲内の値であるのが好ましい。放電パルスおよび充電パルスの電流値がリチウムイオン二次電池20の最大電流の50%未満の場合には、そのパルスがリチウムイオン二次電池20に入力した時のリチウムイオン二次電池20のCCVの変化量が小さすぎるので、ノイズなどによる誤差の影響が大きくなる。これに対して、放電パルスおよび充電パルスの電流値がリチウムイオン二次電池20の最大電流の50%以上の場合には、そのパルス入力時のリチウムイオン二次電池20のCCVの変化量が十分大きいので、ノイズなどによる誤差の影響が十分小さくなる。
【0036】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置は、比較的大きい電流の放電パルスおよび充電パルスを使用することによってCCVの変化が増幅されるので、リチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【0037】
放電パルスおよび充電パルスの容量は、リチウムイオン二次電池20の充電容量の0.1~0.5%の範囲内の値であるのが好ましい。放電パルスおよび充電パルスの容量がリチウムイオン二次電池20の充電容量の0.1%未満の値である場合には、そのパルス入力時のリチウムイオン二次電池20のCCVなどの変化量が小さすぎるので、ノイズなどによる誤差の影響が大きくなる。また、放電パルスおよび充電パルスの容量がリチウムイオン二次電池20の充電容量の0.5%超の値である場合には、そのパルスによるSOCの変化が大きくなりすぎるので、SOC変化による誤差の影響が大きくなる。これに対して、放電パルスおよび充電パルスの容量がリチウムイオン二次電池20の充電容量の0.1~0.5%の範囲内の値である場合には、上記2つの問題が生じないので、ノイズなどおよびSOC変化による誤差の影響が十分小さくなる。
【0038】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置は、比較的小さい容量の放電パルスおよび充電パルスを使用することによってリチウムイオン二次電池のSOCに対する影響が小さくなるので、リチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置は、基本的に以上のように構成される。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、リチウムイオン二次電池20の連続放電中または連続充電中に、電流値およびパルス幅が互いに同じ放電パルスおよび充電パルスを順にまたは逆順にリチウムイオン二次電池20に入力し、その時に変化するリチウムイオン二次電池20のCCVを連続的に測定し、CCVからOCV推定値を求める。
【0040】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、電流値およびパルス幅が互いに同じパルスでのパルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めるので、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したまま、およびCCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【0041】
本発明のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、リチウムイオン二次電池20に放電パルスを入力した時のCCVと充電パルスを入力した時のCCVとを比較してOCV推定値を求めるのが好ましい。
【0042】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、パルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めるので、CCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法の内、リチウムイオン二次電池のOCV推定方法について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池のOCV推定方法およびSOC推定方法を示すフローチャートである。
【0044】
本発明のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、第1工程と第2工程と第3工程と第4工程とを含むのが好ましい。その場合には、第1工程は、ステップS10に示すように、リチウムイオン二次電池20の連続放電中または連続充電中に、大電流の放電パルスおよび大電流の充電パルスの内の一方のパルスをリチウムイオン二次電池20に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、一方のパルスの入力前のCCV初期値を記憶させると共に、CCVの変化速度が速い第1a電圧変化量とCCVの変化速度が遅い第1b電圧変化量とを求める。第2工程は、ステップS12に示すように、一方のパルスを停止した後、電流値およびパルス幅が一方のパルスと同じ他方のパルスをリチウムイオン二次電池20に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が遅い第2a電圧変化量を求める。
【0045】
第3工程は、ステップS14に示すように、他方のパルスを停止し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が速い第2b電圧変化量を求める。第4工程は、ステップS16に示すように、第1a電圧変化量および第1b電圧変化量から算出した第1電圧補正量と第2a電圧変化量および第2b電圧変化量から算出した第2電圧補正量とを比較し、その内の絶対値が小さい方の電圧補正量とCCV初期値とからOCV推定値を求める。なお、第1~4工程は、本発明のリチウムイオン二次電池の状態推定方法についてより詳細に説明したものなので、前述の本発明のリチウムイオン二次電池の状態推定方法と重複した内容を含む。
【0046】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、電流値およびパルス幅が互いに同じパルスでのパルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めるので、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したまま、およびCCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法の内、リチウムイオン二次電池のSOC推定方法について説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、さらに、第5工程を含むのが好ましい。その場合には、第5工程は、ステップS18に示すように、あらかじめ記憶した表または式を使用してOCV推定値からSOC推定値を求める。
【0048】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、OCV推定値からSOCの推定値を換算するので、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したまま、およびCCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができる。
本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、基本的に以上のように構成される。
【実施例0049】
次に、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明する。まず、実施例1として、パルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めた。
図5は、リチウムイオン二次電池の連続放電中に放電充電複合パルスを間隔を開けて4回入力した時のCCVを示すグラフであり、
図6(a)~(d)は、
図5の1~4回目の放電充電複合パルスの入力時のそれぞれのCCVを示すグラフである。ここで、放電充電複合パルスとは、放電パルスおよび充電パルスを間隔を開けずに順に連続させた複合パルスである。また、表1に25℃の環境での測定結果および計算結果を示す。
【0050】
(工程1)まず、実施例1の1回目として、25℃の環境で、最大電流が100A、充電容量が8.3Ahの三元系(NCM系)のリチウムイオン二次電池(CONNEXX SYSTEMS製HYPER Cell)を10Aで連続放電中に100Aの放電パルスを1秒間入力し、間隔を開けずに100Aの充電パルスを1秒間入力し、その時に連続的に測定したCCVから次の5つの値を得た。すなわち、V0が3.780V、V1aが0.083V、V1bが0.013V、V2aが0.020V、V2bが0.089Vであった。次に、第1電圧補正量および第2電圧補正量を次式で算出した。
【0051】
ここで、三元系のリチウムイオン二次電池とは、正極材料として三元系、すなわちLiNiO2、LiNiCoMnO2などの内のいずれか1つのリチウム金属酸化物を使用し、負極材料としてグラファイトなどの黒鉛系炭素材料を使用したリチウムイオン二次電池である。また、充電容量が8.3Ahに対する100A、1秒間の放電パルスまたは充電パルスの容量比率は、0.33%である。
【0052】
[数11] 第1電圧補正量=V1a×(10/90)+V1b
[数12] 第2電圧補正量=V2a+V2b×(10/100)
【0053】
その結果、第1電圧補正量が0.0222V、第2電圧補正量が0.0289Vであった。次に、第1電圧補正量と第2電圧補正量とを比較し、絶対値が小さい方の値0.0222VとV0の値3.780Vとを加算してOCV推定値3.8022Vを得た。次に、OCV推定値を充電パルスの入力終了から約30分後の実際のOCV測定値3.7990Vで除算して推定誤差0.08%を得た。最後に、推定誤差を推定誤差の目標値-0.5%以上0.5%以下と比較し、判定を「○」とした。
【0054】
(工程2)次に、実施例1の2回目として、1回目と同様に放電パルスおよび充電パルスを入力し、次の5つの値、すなわち、V0が3.652V、V1aが0.093V、V1bが0.015V、V2aが0.019V、V2bが0.098Vを得た。次に、1回目と同様に計算して得たOCV推定値3.6773Vを約30分後の実際のOCV測定値3.6800Vで除算して推定誤差-0.07%を得た。最後に、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較し、判定を「○」とした。
【0055】
(工程3)次に、実施例1の3回目として、1回目と同様に放電パルスおよび充電パルスを入力し、次の5つの値、すなわち、V0が3.547V、V1aが0.110V、V1bが0.019V、V2aが0.022V、V2bが0.079Vを得た。次に、1回目と同様に計算して得たOCV推定値3.5769Vを約30分後の実際のOCV測定値3.5750Vで除算して推定誤差0.05%を得た。最後に、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較し、判定を「○」とした。
【0056】
(工程4)次に、実施例1の4回目として、1回目と同様に放電パルスおよび充電パルスを入力し、次の5つの値、すなわち、V0が3.410V、V1aが0.180V、V1bが0.134V、V2aが0.049V、V2bが0.138Vを得た。次に、1回目と同様に計算して得たOCV推定値3.4728Vを約30分後の実際のOCV測定値3.4700Vで除算して推定誤差0.08%を得た。最後に、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較し、判定を「○」とした。
【0057】
【0058】
次に、比較例1として、実施例1においてパルス放電時およびパルス充電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めるのではなく、パルス放電時のみのCCVを使用する方法でOCV推定値を求めた。また、表2に25℃の環境での測定結果および計算結果を示す。
【0059】
(工程5)まず、比較例1の1回目として、実施例1の1回目に算出した第1電圧補正量0.0222VとV0の値3.780Vとを加算してOCV推定値3.8022Vを得た。このOCV推定値は、実施例1の1回目と同じであり、実施例1の1回目と同様に計算して同じ推定誤差0.08%を得たので、判定を「○」とした。
【0060】
(工程6)次に、比較例1の2回目として、実施例1の2回目に算出した第1電圧補正量0.0253VとV0の値3.652Vとを加算してOCV推定値3.6773Vを得た。このOCV推定値は、実施例1の2回目と同じであり、実施例1の1回目と同様に計算して同じ推定誤差-0.07%を得たので、判定を「○」とした。
【0061】
(工程7)次に、比較例1の3回目として、実施例1の3回目に算出した第1電圧補正量0.0312VとV0の値3.547Vとを加算してOCV推定値3.5782Vを得た。このOCV推定値は、実施例1の3回目と異なり、実施例1の1回目と同様に計算して異なる推定誤差0.09%を得たものの、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較して判定を「○」とした。
【0062】
(工程8)次に、比較例1の4回目として、実施例1の4回目に算出した第1電圧補正量0.1540VとV0の値3.410Vとを加算してOCV推定値3.5640Vを得た。このOCV推定値は、実施例1の4回目と異なり、実施例1の1回目と同様に計算して異なる推定誤差2.71%を得たので、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較して判定を「×」とした。
【0063】
【0064】
次に、実施例2として、パルス充電時およびパルス放電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めた。
図7は、リチウムイオン二次電池の連続充電中に充電放電複合パルスを間隔を開けて4回入力した時のCCVを示すグラフであり、
図8(a)~(d)は、
図7の1~4回目の充電放電複合パルスの入力時のそれぞれのCCVを示すグラフである。ここで、充電放電複合パルスとは、充電パルスおよび放電パルスを間隔を開けずに順に連続させた複合パルスである。また、表3に25℃の環境での測定結果および計算結果を示す。
【0065】
(工程9)まず、実施例2の1回目として、25℃の環境で、実施例1と同じリチウムイオン二次電池を10Aで連続充電中に100Aの充電パルスを1秒間入力し、間隔を開けずに100Aの放電パルスを1秒間入力し、その時に連続的に測定したCCVから次の5つの値を得た。すなわち、V0が3.569V、V1aが0.109V、V1bが0.012V、V2aが0.038V、V2bが0.134Vであった。次に、上記数式1および2で第1電圧補正量0.0241Vおよび第2電圧補正量0.0514Vを算出した。次に、第1電圧補正量と第2電圧補正量とを比較し、絶対値が小さい方の値0.0241VをV0の値3.569Vから減算してOCV推定値3.5449Vを得た。次に、OCV推定値を放電パルスの入力終了から約30分後の実際のOCV測定値3.5400Vで除算して推定誤差0.14%を得た。最後に、推定誤差を推定誤差の目標値-0.5%以上0.5%以下と比較し、判定を「○」とした。
【0066】
(工程10)次に、実施例2の2回目として、1回目と同様に充電パルスおよび放電パルスを入力し、次の5つの値、すなわち、V0が3.685V、V1aが0.093V、V1bが0.011V、V2aが0.027V、V2bが0.108Vを得た。次に、1回目と同様に計算して得たOCV推定値3.6637Vを約30分後の実際のOCV測定値3.6560Vで除算して推定誤差0.21%を得た。最後に、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較し、判定を「○」とした。
【0067】
(工程11)次に、実施例2の3回目として、1回目と同様に充電パルスおよび放電パルスを入力し、次の5つの値、すなわち、V0が3.772V、V1aが0.082V、V1bが0.012V、V2aが0.023V、V2bが0.093Vを得た。次に、1回目と同様に計算して得たOCV推定値3.7509Vを約30分後の実際のOCV測定値3.7460Vで除算して推定誤差0.13%を得た。最後に、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較し、判定を「○」とした。
【0068】
(工程12)次に、実施例2の4回目として、1回目と同様に充電パルスおよび放電パルスを入力し、次の5つの値、すなわち、V0が3.933V、V1aが0.063V、V1bが0.027V、V2aが0.023V、V2bが0.079Vを得た。次に、1回目と同様に計算して得たOCV推定値3.9021Vを約30分後の実際のOCV測定値3.9060Vで除算して推定誤差-0.10%を得た。最後に、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較し、判定を「○」とした。
【0069】
【0070】
次に、比較例2として、実施例2においてパルス充電時およびパルス放電時の両方のCCVを使用してOCV推定値を求めるのではなく、パルス放電時のみのCCVを使用する方法でOCV推定値を求めた。また、表4に25℃の環境での測定結果および計算結果を示す。
【0071】
(工程13)まず、比較例2の1回目として、実施例2の1回目に算出した第2電圧補正量0.0514VをV0の値3.569Vから減算してOCV推定値3.5176Vを得た。このOCV推定値は、実施例2の1回目と異なり、実施例2の1回目と同様に計算して異なる推定誤差-0.63%を得たので、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較して判定を「×」とした。
【0072】
(工程14)次に、比較例2の2回目として、実施例2の2回目に算出した第2電圧補正量0.0378VをV0の値3.685Vから減算してOCV推定値3.6472Vを得た。このOCV推定値は、実施例2の2回目と異なり、実施例2の1回目と同様に計算して異なる推定誤差-0.24%を得たものの、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較して判定を「○」とした。
【0073】
(工程15)次に、比較例2の3回目として、実施例2の3回目に算出した第2電圧補正量0.0323VをV0の値3.772Vから減算してOCV推定値3.7397Vを得た。このOCV推定値は、実施例2の3回目と異なり、実施例2の1回目と同様に計算して異なる推定誤差-0.17%を得たものの、推定誤差を推定誤差の上記目標値と比較して判定を「○」とした。
【0074】
(工程16)次に、比較例2の4回目として、実施例2の4回目に算出した第2電圧補正量0.0309VをV0の値3.933Vから減算してOCV推定値3.9021Vを得た。このOCV推定値は、実施例2の4回目と同じであり、実施例2の1回目と同様に計算して同じ推定誤差-0.10%を得たので、判定を「○」とした。
【0075】
【0076】
したがって、比較例1および2のリチウムイオン二次電池の状態推定方法では、1~4回目の複合パルスの入力の内、CCVが低い場合において、OCV推定値の推定誤差が目標値-0.5%以上0.5%以下の範囲外になった。これに対して、実施例1および2のリチウムイオン二次電池の状態推定方法では、1~4回目のすべての複合パルスの入力において、OCV推定値の推定誤差が目標値-0.5%以上0.5%以下の範囲内になったので、CCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができた。
この結果から、実施例1および実施例2のリチウムイオン二次電池の状態推定方法、およびその機能を有するリチウムイオン二次電池の管理装置は、CCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができるのは明らかである。
【0077】
以上、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置および本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法について実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記記載に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしても良いのはもちろんである。
本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の管理装置および本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池の状態推定方法は、リチウムイオン二次電池の状態を変化させずに保持したままその状態を高精度に推定することができるという効果に加え、CCVが低い場合でもリチウムイオン二次電池の状態を高精度に推定することができるという効果もあるので、産業上有用である。
前記放電パルスおよび前記充電パルスの電流値は、前記リチウムイオン二次電池の最大電流の50~100%の範囲内の値である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の管理装置。
前記放電パルスおよび前記充電パルスの容量は、前記リチウムイオン二次電池の充電容量の0.1~0.5%の範囲内の値である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の管理装置。
前記リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に、大電流の放電パルスおよび大電流の充電パルスの内の一方のパルスを前記リチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、前記一方のパルスの入力前のCCV初期値を記憶させると共に、CCVの変化速度が速い第1a電圧変化量とCCVの変化速度が遅い第1b電圧変化量とを求める第1工程と、
前記一方のパルスを停止した後、電流値の大きさおよびパルス幅が前記一方のパルスと同じ他方のパルスを前記リチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が遅い第2a電圧変化量を求める第2工程と、
前記他方のパルスを停止し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が速い第2b電圧変化量を求める第3工程と、
前記第1a電圧変化量および前記第1b電圧変化量から算出した第1電圧補正量と前記第2a電圧変化量および前記第2b電圧変化量から算出した第2電圧補正量とを比較し、その内の絶対値が小さい方の電圧補正量と前記CCV初期値とからOCV推定値を求める第4工程と、を含む請求項6または7に記載のリチウムイオン二次電池の状態推定方法。
さらに、あらかじめ記憶した表または式を使用して前記OCV推定値からSOC推定値を求める第5工程を含む請求項9に記載のリチウムイオン二次電池の状態推定方法。
即ち、本発明の第1実施形態は、リチウムイオン二次電池のOCV推定値を求めるCPUと、CPUからの信号に基づいて、CPUがリチウムイオン二次電池に入力する放電パルスを発生させる放電パルス発生部と、CPUからの信号に基づいて、CPUがリチウムイオン二次電池に入力する、電流値の大きさおよびパルス幅が放電パルスと同じ充電パルスを発生させる充電パルス発生部と、リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に放電パルスおよび充電パルスを順にまたは逆順にリチウムイオン二次電池に入力した時に変化するリチウムイオン二次電池のCCVを連続的に測定するCCV測定部と、を備え、CPUは、外部機器からの入力信号に基づいて、CCV測定部が連続的に測定したCCVからOCV推定値を求め、OCV推定値を外部機器に送信する機能を有するものであり、CPUは、リチウムイオン二次電池に放電パルスを入力した時のCCVと充電パルスを入力した時のCCVとを比較し、その内の一方のCCVからOCV推定値を求めるリチウムイオン二次電池の管理装置を提供するものである。
ここで、上記においては、さらに、リチウムイオン二次電池のOCVの測定値とSOCの測定値との関係を示す表または式を記憶した記憶部を備え、CPUは、表または式を使用してOCV推定値からSOC推定値を求める機能と、OCV推定値の代わりにまたはOCV推定値に加えて、SOC推定値を外部機器に送信する機能と、を有するのが好ましい。
放電パルスおよび充電パルスの電流値は、リチウムイオン二次電池の最大電流の50~100%の範囲内の値であるのが好ましい。
放電パルスおよび充電パルスの容量は、リチウムイオン二次電池の充電容量の0.1~0.5%の範囲内の値であるのが好ましい。
さらに、上記においては、CPUは、さらに、リチウムイオン二次電池の連続放電中または連続充電中に、大電流の放電パルスおよび大電流の充電パルスの内の一方のパルスをリチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、一方のパルスの入力前のCCV初期値を記憶させると共に、CCVの変化速度が速い第1a電圧変化量とCCVの変化速度が遅い第1b電圧変化量とを求める第1機能と、一方のパルスを停止した後、電流値の大きさおよびパルス幅が一方のパルスと同じ他方のパルスをリチウムイオン二次電池に入力し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が遅い第2a電圧変化量を求める第2機能と、他方のパルスを停止し、その時に連続的に測定したCCVから、CCVの変化速度が速い第2b電圧変化量を求める第3機能と、第1a電圧変化量および第1b電圧変化量から算出した第1電圧補正量と第2a電圧変化量および第2b電圧変化量から算出した第2電圧補正量とを比較し、その内の絶対値が小さい方の電圧補正量とCCV初期値とからOCV推定値を求める第4機能と、を有するのが好ましい。