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特開2023-72679電気バッテリーにおける熱暴走の診断のための方法
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  • 特開-電気バッテリーにおける熱暴走の診断のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072679
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】電気バッテリーにおける熱暴走の診断のための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20230517BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022179186
(22)【出願日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】102021000028814
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ベトロ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ブノワ アッビアティ
(72)【発明者】
【氏名】イレーネ ドーナ
(72)【発明者】
【氏名】ウーゴ シッタ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス トロンコソ
(72)【発明者】
【氏名】エレナ リガブエ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ポッジョ
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB00
5G503CA11
5G503EA09
5H030AA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】互いに直列に接続された電気化学セル(3)の少なくとも1つのスタック(2)を有する電気バッテリー(1)における熱暴走の診断のための方法を提供すること。
【解決手段】診断方法は、各電気化学セル(3)の端部において第1の電圧(Vcell-i)を測定するステップと、電気化学セル(3)のスタック(2)全体の端部において第2の電圧(Vstack)を測定するステップと、第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差を算出するステップと、電気化学セル(3)の第1の電圧(Vcell-i)が第1の閾値(TH1)よりも小さい場合、および同時に、第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差が第2の閾値(TH2)よりも小さい場合、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップとを提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続された電気化学セル(3)の少なくとも1つのスタック(2)を備える電気バッテリー(1)における熱暴走を診断するための診断方法であって、
各電気化学セル(3)の端部において第1の電圧(Vcell-i)を測定するステップと、
電気化学セル(3)のスタック(2)全体の端部において第2の電圧(Vstack)を測定するステップと、
前記電気化学セル(3)の前記第1の電圧(Vcell-i)が第1の閾値(TH1)よりも小さい場合、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップとを含む診断方法において、
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差を算出するステップと、
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差が第2の閾値(TH2)よりも小さい場合にのみ、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップと、;
前記電気バッテリー(1)を構成する、互いに同一の電気化学セル(3)の前記複数のスタック(2)の各スタックの端部において全ての第2の電圧(Vstack)を測定するステップと、
電気化学セル(3)の前記複数のスタック(2)の各スタックの端部における全ての第2の電圧(Vstack)の中から、最大の第2の電圧(Vstackmax)および最小の第2の電圧(Vstackmin)を決定するステップと、
前記最大の第2の電圧(Vstackmax)と前記最小の第2の電圧(Vstackmin)との間の差を算出するステップと、
前記最大の第2の電圧(Vstackmax)と前記最小の第2の電圧(Vstackmin)との間の差が第3の閾値(TH3)よりも大きい場合にのみ、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップとをさらに含むことを特徴とする、診断方法。
【請求項2】
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の前記差が前記第2の閾値(TH2)より大きい場合、前記第1の電圧(Vcell-i)の測定誤差を診断するさらなるステップを含む、請求項1に記載の診断方法。
【請求項3】
電気化学セル(3)の熱暴走の前記診断を最終化する前に、前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の前記差が前記第2の閾値(TH2)よりも着実に小さくならなければならない確認時間量(ΔT)の間待機するさらなるステップを含む、請求項1に記載の診断方法。
【請求項4】
前記最大の第2の電圧(Vstackmax)と前記最小の第2の電圧(Vstackmin)との間の前記差が前記第3の閾値(TH3)よりも小さい場合、前記第1の電圧(Vcell-i)の測定誤差を診断するさらなるステップを含む、請求項1に記載の診断方法。
【請求項5】
電気化学セル(3)の熱暴走の前記診断を最終化する前に、前記最大第2の電圧(Vstackmax)と前記最小第2の電圧(Vstackmin)との間の前記差が前記第3の閾値(TH3)よりも着実に小さくならなければならない確認時間量(ΔT)の間待機するさらなるステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の診断方法。
【請求項6】
前記第1の電圧(Vcell-i)および前記第2の電圧(Vstack)のみに基づいて、したがって熱情報を使用せずに、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するさらなるステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の診断方法。
【請求項7】
電気バッテリー(1)であって、
互いに直列に接続された電気化学セル(3)の少なくとも1つのスタック(2)と、
前記電気化学セル(3)の端部において第1の電圧(Vcell-i)を測定するように構成された、各電気化学セル(3)用の第1の測定器(6)と、
電気化学セル(3)のスタック(2)全体の端部において第2の電圧(Vstack)を測定するように構成された第2の測定器(7)と、
前記第1の電圧(Vcell-i)が第1の閾値(TH1)よりも小さい場合、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するように構成された制御ユニット(8)とを備える、電気バッテリー(1)において、前記制御ユニット(8)が、
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差を算出するステップと、
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差が第2の閾値(TH2)よりも小さい場合にのみ、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップと、
前記電気バッテリー(1)を構成する、互いに同一の電気化学セル(3)の前記複数のスタック(2)の各スタックの端部において全ての第2の電圧(Vstack)を測定するステップと、
電気化学セル(3)の前記複数のスタック(2)の各スタックの端部における全ての第2の電圧(Vstack)の中から、最大の第2の電圧(Vstackmax)および最小の第2の電圧(Vstackmin)を決定するステップと、
前記最大の第2の電圧(Vstackmax)と前記最小の第2の電圧(Vstackmin)との間の差を算出するステップと、
前記最大の第2の電圧(Vstackmax)と前記最小の第2の電圧(Vstackmin)との間の差が第3の閾値(TH3)よりも大きい場合にのみ、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップとを行うように構成されることを特徴とする、電気バッテリー。
【請求項8】
互いに直列に接続された電気化学セル(3)の少なくとも1つのスタック(2)を備える電気バッテリー(1)における熱暴走の診断のための方法であって、前記診断方法は、
各電気化学セル(3)の端部において第1の電圧(Vcell-i)を測定するステップと、
電気化学セル(3)のスタック(2)全体の端部において第2の電圧(Vstack)を測定するステップと、
電気化学セル(3)の前記第1の電圧(Vcell-i)が第1の閾値(TH1)よりも小さい場合、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップとを含む、診断のための方法において、
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差を算出するステップと、;
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の前記差が第2の閾値(TH2)よりも小さい場合にのみ、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップとを含むことを特徴とする、診断のための方法。
【請求項9】
電気バッテリー(1)であって、
互いに直列に接続された電気化学セル(3)の少なくとも1つのスタック(2)と、
前記電気化学セル(3)の端部において第1の電圧(Vcell-i)を測定するように構成された、各電気化学セル(3)用の第1の測定器(6)と、
電気化学セル(3)のスタック(2)全体の端部において第2の電圧(Vstack)を測定するように構成された第2の測定器(7)と、
前記第1の電圧(Vcell-i)が第1の閾値(TH1)よりも小さい場合、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するように構成された制御ユニット(8)とを備える、電気バッテリー(1)において、前記制御ユニット(8)が、
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差を算出するステップと、
前記第2の電圧(Vstack)と全ての第1の電圧(Vcell-i)の合計との間の差が第2の閾値(TH2)よりも小さい場合にのみ、電気化学セル(3)の熱暴走を診断するステップを行うように構成されることを特徴とする、電気バッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気バッテリーにおける熱暴走のための診断方法に関する。
【0002】
本発明は、リチウムイオン電気化学セルで構成された、自動車向けの電気バッテリーにおける熱暴走の診断に有利に適用され、以下の開示は、一般性を失うことなく明示的に言及する。
【0003】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2021年11月12日に出願されたイタリア特許出願第102,021,000,028,814号明細書の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
中国特許出願公開第112564240号明細書は、電気化学セルにおける熱暴走の発生を検出し、したがって熱暴走している電気化学セルに含まれる電気エネルギーを散逸させる保護装置を作動させる車両のバッテリの制御を記載している。
【0005】
中国特許出願公開第111913114号明細書は、電気化学セルの電圧および温度をそれぞれの情報閾値と比較することによって、バッテリーの電気化学セルにおける熱暴走を検出するための方法を記載している。
【0006】
特定の状況のリチウムイオン電気化学セルで構成された電気バッテリーは、「熱暴走」と呼ばれる現象を起こす可能性があり、潜在的に非常に危険になる可能性がある。熱暴走現象は、リチウムイオン電気化学セル内の温度の初期上昇が温度のさらなる上昇を引き起こし、それによってシステムの平衡条件からの制御されない逸脱が生成される特定の正のフィードバックの場合を引き起こす状態を作り出すときに発生する。熱暴走中、電気化学セルは、高温(500~800℃を超える)で過熱された流体(いわゆる「通気」)を放出する可能性がある。熱暴走によって発生した過熱流体の圧力下での電気化学セルの容器の爆発を防止するために、電気化学セルには較正された空気弁が設けられ、この空気弁は、熱暴走によって発生した過熱流体を容器の爆発に到達することなく外部に向かって流出させるように圧力下で開く。しかし、電気化学セルからの熱暴走によって発生した過熱流体の流出は、隣接する電気化学セルに衝突し、隣接する電気化学セルにおいても熱暴走を引き起こす可能性があり、したがって、制御不能な連鎖反応(「熱伝播」)を開始させ、通常はバッテリー全体の発火につながる。
【0007】
これらの理由から、承認された中国規格GB38031-2020(01/01/2021で発効)は、とりわけ、バッテリーパック内の電気化学セルの熱不安定性の後、電気化学セルが少なくとも5分間バッテリーパックの発火または爆発を引き起こさないことを検証するように設計された「熱伝播試験」を必要とする。これにより、火災または爆発の危険がある場合に乗客が車両から離れることが可能になる。言い換えれば、承認された中国規格GB38031-2020は、「熱伝播」現象を、それが車両の乗客にとって危険になり得る(少なくとも)5分前に診断し、それによって乗客が安全に車両を乗り捨てるのを可能にすることを必要としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電気バッテリーにおける熱暴走の診断のための方法であって、電気バッテリーの電気化学セルの熱暴走を効果的に(すなわち、偽陰性なしに)および効率的に(すなわち、偽陽性なしに)診断することを可能にし、同時に、実施するのが容易で費用効果が高い方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載の方法に従って、電気バッテリーの熱暴走の診断のための方法が提供される。
【0010】
特許請求の範囲には、本明細書の不可欠な部分を形成する、本発明の好ましい実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
次に、添付の図面を参照して、本発明を説明する。これらの図面は、本発明の非限定的な例示的実施形態を示す。
【0012】
図1】互いに接続された複数のスタックから構成され、本発明によって提供される診断方法が実施される電気バッテリーの概略図である。
図2図1の電気バッテリーのスタックの概略図である。
図3】本発明によって提供される診断方法を要約するフロー図である。
図4】電気化学セルの熱暴走の場合の図2のスタックのいくつかの量の時間的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、符号1は、全体として自動車用電気バッテリー(すなわち、車両に搭載されるように定められている)を示す。
【0014】
バッテリー1は、互いに電気的に接続されたリチウムイオン電気化学セル3(図2に示す)の複数のスタック(アセンブリ)2を備える。スタック2は全て互いに同一であり、すなわち、全て同じ数で、同じタイプの直列に接続された電気化学セル3によって形成される。図1に示す実施形態では、バッテリー1は、全てが互いに電気的に直列に接続された7つのスタック2を備えるが、スタック2の数は異なっていてもよく、スタック2は全て互いに電気的に並列に接続されていてもよく、または部分的に直列および部分的に並列に互いに電気的に接続されてもよい。
【0015】
図2に示すものによれば、各スタック2(アセンブリ)は、複数のリチウムイオン電気化学セル3を備え、これらのリチウムイオン電気化学セルは、互いに直列に接続され、スタック2の2つの端子5がそこから出る単一の容器4内に配置される。図2に示す実施形態では、各スタック2は、互いに直列に接続された12個のリチウムイオン電気化学セル3を備えるが、電気化学セル3の数は異なっていてもよい。
【0016】
各スタック2は、複数の測定器6を備え、これらの測定器は、各電気化学セル3の端部における電圧Vcell-iを測定するように構成され、それらの電圧に基づいてリチウムイオン電気化学セル3の状態を監視する制御ユニットである、いわゆる「BMU」(「バッテリ管理システム」と呼ばれることもある「バッテリ管理ユニット」)の一部である。特に、「BMU」は、(電気化学セル3間の電圧の慎重な平衡化による)安全動作領域、すなわちスタック2が最良の技術的およびエネルギー性能をその内部において保証する安全領域を画定するリチウムイオン電気化学セル3の各スタック2を管理する。
【0017】
さらに、各スタック2は、これも「BMU」の一部である測定器7を備え、この測定器は、スタック2を構成し、互いに直列に接続された全ての電気化学セル3の電圧Vcell-iの合計によって与えられる、電気化学セル3のスタック2全体の端部の(すなわち、スタック2の端子5間の)電圧Vstackを測定するように構成される。
【0018】
バッテリー1は、全てのスタック2に共通の単一の制御ユニット8を備え、この制御ユニットは、全てのスタック2の測定器6および7によって実施された測定値を読み取る。
【0019】
図3のフロー図に概略的に示されているものによれば、制御ユニット8は、測定器6および7によって提供される電気情報(電圧Vcell-iおよびVstack)を組み合わせることによって、電気化学セル3の熱暴走の可能性の発生を診断するように構成される。
【0020】
特に、制御ユニット8は、電気化学セル3の電圧Vcell-iを閾値TH1と比較することによって、各スタック2の各電気化学セル3の電圧Vcell-iを周期的に検証する。電気化学セル3の電圧Vcell-iが閾値TH1よりも小さい場合、制御ユニット8は、電気化学セル3の熱暴走の可能性を診断する(以下に記載する以下の検証によってまだ確認されていないため、まだ確定していない)。
【0021】
制御ユニット8は、電気化学セル3の熱暴走の可能性(潜在性)を確認するために、測定器7で測定された(潜在的に熱暴走している電気化学セル3が見出される)電気化学セル3のスタック2全体の端部における電気電圧Vstackと、測定器6で測定されたスタック2を構成する全ての電気化学セル3の電圧Vcell-iの合計とを比較する。電気化学セル3のスタック2全体の端部における電圧Vstackと、スタック2を構成する全ての電気化学セル3の電圧Vcell-iの合計との間の差(絶対値)が閾値TH2よりも大きければ、制御ユニット8は、測定器6の1つの破損(故障)を診断するが、電気化学セル3の熱暴走の可能性は診断しない。
【0022】
明らかに、測定器6の1つの破損(故障)もまた、電気バッテリー1の正常な動作を妨げ、したがって、迅速に報告および管理されなければならないが、(電気化学セル3における熱暴走とは異なり)電気バッテリー1が設置された車両の乗客に直ちに危険を引き起こさない。
【0023】
その一方で、電気化学セル3のスタック2全体の端部における電圧Vstackと、スタック2を構成する全ての電気化学セル3の電圧Vcell-iの合計との間の差(絶対値)が、閾値TH2未満であれば、制御ユニット8は、電気化学セル3における潜在的な熱暴走を診断する(以下に記載されるさらなる検証によってまだ確認されていないため、まだ確定していない)。
【0024】
好ましい実施形態によれば、電気化学セル3における熱暴走を診断する前に、制御ユニット8は、電気化学セル3のスタック2全体の端部における電圧Vstackと、スタック2を構成する全ての電気化学セル3の電圧Vcell-iの合計との比較後に、さらなる制御を実施する。特に、制御ユニット8は、全てのスタック2の電圧Vstackのうちの最大電圧Vstackmaxを決定し、全てのスタック2の電圧Vstackのうちの最小電圧Vstackminを決定する。続いて、制御ユニット8は、(全スタック2間の)最大電圧Vstackmaxと(全スタック2間の)最小電圧Vstackminとを比較し、それらの絶対値の差が閾値TH3よりも大きい場合にのみ、制御ユニット8は、電気化学セル3における実際の熱暴走を診断する。すなわち、(全スタック2間の)最大電圧Vstackmaxと(全スタック2間の)最小電圧Vstackminとの間の差(絶対値)が閾値TH3より小さい場合、制御ユニット8は、電気化学セル3における熱暴走を診断しない。その一方で、(全スタック2間の)最大電圧Vstackmaxと(全スタック2間の)最小電圧Vstackminとの間の差(絶対値)が閾値TH3よりも大きい場合にのみ、制御ユニット8は、電気化学セル3における熱暴走を診断する。
【0025】
好ましくは、電気化学セル3における熱暴走を「公表」する(すなわち、対応するシグナリングおよび対応する回復手順を送出することによって最終化する)前に、制御ユニット8は、電気的異常が存在し、安定したままでなければならない時間量ΔT(1~5秒程度)の確認の間待機する(このようにして、電圧測定値における一時的な外乱の影響によって電気化学セル3における熱暴走を誤って通知することが防止される)。
【0026】
前述のものの一例が図4に示されるグラフに示されており、この図は、ある特定の瞬間に閾値TH1よりも小さい、測定器6によって測定された電気化学セル3の電圧Vcell-iの時間的変化、測定器7によって測定された電気化学セル3のスタック2全体の端部における電圧Vstackの時間的変化、および熱暴走の診断の時間的変化を示す。図4には、電圧VstackおよびVcell-iから導出される証拠に対する熱暴走の診断の「公表」を遅延させる確認時間量ΔTの効果が示されている。
【0027】
異なる実施形態によれば、電気化学セル3の熱暴走を診断する前に、(全スタック2間の)最大電圧Vstackmaxと(全スタック2間の)最小電圧Vstackminとの比較は実施されない。すなわち、電気化学セル3の熱暴走は、電気化学セル3の電圧Vcell-iを閾値TH1と比較し、続いて、(潜在的に熱暴走している電気化学セル3が見出される)電気化学セル3のスタック2全体の端部における電圧Vstackを、スタック2を構成する全ての電気化学セル3の電圧Vcell-iの合計と比較することによってのみ診断される。
【0028】
図示されていないさらなる実施形態によれば、バッテリー1は、単一のスタック2を備えることができる。明らかに、この実施形態では、電気化学セル3の熱暴走を診断する前に、単一のスタック2だけが存在するため、(全スタック2間の)最大電圧Vstackmaxと(全スタック2間の)最小電圧Vstackminとの間の比較を進めることは不可能である。
【0029】
電気化学セル3の1つにおける熱暴走の発生の可能性の診断は、測定器6によって測定された電圧Vcell-iおよび測定器7によって測定された電圧Vstackのみに専ら基づいて、したがって熱情報を使用せずに(すなわち、温度測定を使用せずに)行われることに気づくことが重要である。
【0030】
本明細書に記載された実施形態は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく一緒に組み合わせることができる。
【0031】
上述の制御方法には、多くの利点がある。
【0032】
第1に、上述の診断方法は、電気化学セル3のうちの1つにおける熱暴走の発生の可能性を効果的に(すなわち、偽陰性なしに)診断することを可能にする。実際、上述の診断方法は、熱暴走が、内部で熱暴走が発生する電気化学セル3の電圧Vcell-iの崩壊を必然的に引き起こすため、電気化学セル3のうちの1つにおける熱暴走の発生の可能性を常に認識することを可能にする。
【0033】
さらに、上述の診断方法は、電気化学セル3の1つにおける熱暴走の発生の可能性を効率的に(すなわち、偽陽性なしに)診断することを可能にする。実際、上述の診断方法は、測定器における問題と、電気化学セル3の1つにおける実際の熱暴走とを常に区別することを可能にする。
【0034】
最後に、上述の診断方法は、一般的に既に利用可能である情報を使用し、大きな計算能力を必要としないため、実施が容易で費用対効果が高い。
【符号の説明】
【0035】
1 電気バッテリー
2 スタック
3 電気化学セル
4 容器
5 端子
6 測定器
7 測定器
8 制御ユニット
stack 電圧
cell-i 電圧
stackmax 電圧
stackmin 電圧
TH1 閾値
TH2 閾値
TH3 閾値
ΔT 確認時間量
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】