(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072703
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】流路カセット、洗浄キット及び細胞洗浄システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/12 20060101AFI20230518BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C12M1/12
C12N1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114572
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507114521
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】10811 West Collins Avenue, Lakewood, Colorado 80215, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 政嗣
(72)【発明者】
【氏名】スタントン、ブリデン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ドッド、ジョン エー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG06
4B029DG08
4B029GB04
4B029GB05
4B065AA90X
4B065BD14
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】一対の可撓性シートの間に形成される流路の内圧の測定が可能な流路カセット、洗浄キット、及び細胞洗浄システムを提供する。
【解決手段】可撓性を有する第1、第2シート42a、42bを重ね合わせて第1、第2シート42a、42bの間に流路44を形成した流路カセット10において、流路44の途上に検出用流路部48を設ける。検出用流路部48は、流路44よりも幅広に面方向に広がって第1シート42a及び第2シート42bから厚さ方向に突出する第1膨出部49a1及び第2膨出部49a2と、第2膨出部49a2に設けられた板部材102と、第1シート42aよりも硬質の材料よりなり、第1膨出部49a1の外面に沿った形状をなし、第1膨出部49a1の外面に接合された変形防止部材90と、を有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート及び第2シートと、
前記第1シート及び前記第2シートの間に形成された流路と、
前記流路の途上に設けられた検出用流路部と、を備え、
前記検出用流路部は、
前記流路よりも幅広に面方向に広がって前記第1シートから厚さ方向に膨出した第1膨出部と、
前記第1膨出部に対向する部分の前記第2シートに形成され前記第2シートから厚さ方向に膨出した第2膨出部と、
前記第2シートの前記第2膨出部に設けられた板部材と、
前記第1シートよりも硬質の材料よりなり、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に沿った形状をなし、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に接合され前記第1膨出部の変形を防止する変形防止部材と、
を有する流路カセット。
【請求項2】
請求項1記載の流路カセットであって、前記第1シート及び前記第2シートを支持するフレームを備え、
前記フレームは、前記第1シートに対向して配置される板状の覆い部を有し、
前記変形防止部材は、前記流路に正圧が作用した際に、前記覆い部に当接することで前記第1シートの変位を阻止する、流路カセット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流路カセットであって、前記変形防止部材は前記第1膨出部の外面に沿ったドーム状に形成されている、流路カセット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の流路カセットであって、前記板部材は前記流路の内圧に応じた荷重をロードセルに作用させると共に、前記板部材は前記ロードセル側に設けられた磁石に吸着可能な磁性材料よりなる、流路カセット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の流路カセットであって、前記変形防止部材の外周部は、前記第1膨出部の周囲の前記第1シート及び前記第2シートの接合部分に当接している、流路カセット。
【請求項6】
流路を集約させた流路カセットと、
前記流路カセットに接続される複数のバッグと、
前記流路カセットに接続されるチューブと、を備えた洗浄キットであって、前記流路カセットは、
可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート及び第2シートと、
前記第1シート及び前記第2シートの間に形成された流路と、
前記流路の途上に設けられた検出用流路部と、を備え、
前記検出用流路部は、
前記流路よりも幅広に面方向に広がって前記第1シートから厚さ方向に膨出した第1膨出部と、
前記第1膨出部に対向する部分の前記第2シートに形成され前記第2シートから厚さ方向に膨出した第2膨出部と、
前記第2シートの前記第2膨出部に設けられた板部材と、
前記第1シートよりも硬質の材料よりなり、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に沿った形状をなし、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に接合され前記第1膨出部の変形を防止する変形防止部材と、
を有する洗浄キット。
【請求項7】
流路を集約させた流路カセットと、前記流路カセットに接続される複数のバッグと、前記流路カセットに接続されるチューブと、を備えた洗浄キットと、
前記洗浄キットがセットされる細胞洗浄装置と、
を有する細胞洗浄システムであって、前記流路カセットは、
可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート及び第2シートと、
前記第1シート及び前記第2シートの間に形成された流路と、
前記流路の途上に設けられた検出用流路部と、を備え、
前記検出用流路部は、
前記流路よりも幅広に面方向に広がって前記第1シートから厚さ方向に膨出した第1膨出部と、
前記第1膨出部に対向する部分の前記第2シートに形成され前記第2シートから厚さ方向に膨出した第2膨出部と、
前記第2シートの前記第2膨出部に設けられた板部材と、
前記第1シートよりも硬質の材料よりなり、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に沿った形状をなし、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に接合され前記第1膨出部の変形を防止する変形防止部材と、
を有する細胞洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路カセット、洗浄キット及び細胞洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療では、ES細胞、iPS細胞及び間葉系幹細胞等の治療用の細胞を大量に培養して患者に投与する処置が行われる。
【0003】
治療用の細胞を効率よく培養する細胞培養システムとして、例えば特許文献1のように、中空糸を用いたバイオリアクターで細胞培養を行う細胞培養システムが提案されている。上記の細胞培養システムでは、例えば、播種する細胞を収容した細胞バッグ、培地を収容した培地バッグ、廃液を回収する廃液バッグ、及び細胞収穫の際に細胞を流路から剥離させる剥離液バッグ等の複数のバッグが接続される。そのため、これらのバッグを繋ぐ複数のチューブによって複雑な回路が構成される。
【0004】
また、培養された細胞は、患者に投与する前に、培地(培養液)及びその他の異物を除去して細胞の濃度を高める洗浄処理が行われる。洗浄処理では、例えば特許文献2のような細胞洗浄装置が用いられる。細胞洗浄装置においては、培養物バッグ、洗浄液バッグ、及び製品バッグ等の複数のバッグが接続される。そのため、これらのバッグを繋ぐ複数のチューブによって複雑な回路が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-143775号公報
【特許文献2】特開2015-188315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のチューブを接続して複雑な回路を構成する作業は煩雑であり、作業者に負担となる。そこで、流路の構成を簡略化する観点から、一対の可撓性シートの間に複数の流路を形成して集約させた使い捨ての流路カセットを用いることが考えられる。
【0007】
本発明の一観点は、上記の流路カセットに関連してなされたものであり、一対の可撓性シートの間に形成される流路の内圧の測定が可能な流路カセット、洗浄キット、及び細胞洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点は、可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート及び第2シートと、前記第1シート及び前記第2シートの間に形成された流路と、前記流路の途上に設けられた検出用流路部と、を備え、前記検出用流路部は、前記流路よりも幅広に面方向に広がって前記第1シートから厚さ方向に膨出した第1膨出部と、前記第1膨出部に対向する部分の前記第2シートに形成され前記第2シートから厚さ方向に膨出した第2膨出部と、前記第2シートの前記第2膨出部に設けられた板部材と、前記第1シートよりも硬質の材料よりなり、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に沿った形状をなし、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に接合され前記第1膨出部の変形を防止する変形防止部材と、を有する流路カセットにある。
【0009】
本発明の別の一観点は、流路を集約させた流路カセットと、前記流路カセットに接続される複数のバッグと、前記流路カセットに接続されるチューブと、を備えた洗浄キットであって、前記流路カセットは、可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート及び第2シートと、前記第1シート及び前記第2シートの間に形成された流路と、前記流路の途上に設けられた検出用流路部と、を備え、前記検出用流路部は、前記流路よりも幅広に面方向に広がって前記第1シートから厚さ方向に膨出した第1膨出部と、前記第1膨出部に対向する部分の前記第2シートに形成され前記第2シートから厚さ方向に膨出した第2膨出部と、前記第2シートの前記第2膨出部に設けられた板部材と、前記第1シートよりも硬質の材料よりなり、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に沿った形状をなし、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に接合され前記第1膨出部の変形を防止する変形防止部材と、を有する洗浄キットにある。
【0010】
本発明のさらに別の一観点は、流路を集約させた流路カセットと、前記流路カセットに接続される複数のバッグと、前記流路カセットに接続されるチューブと、を備えた洗浄キットと、前記洗浄キットがセットされる細胞洗浄装置と、を有する細胞洗浄システムであって、前記流路カセットは、可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート及び第2シートと、前記第1シート及び前記第2シートの間に形成された流路と、前記流路の途上に設けられた検出用流路部と、を備え、前記検出用流路部は、前記流路よりも幅広に面方向に広がって前記第1シートから厚さ方向に膨出した第1膨出部と、前記第1膨出部に対向する部分の前記第2シートに形成され前記第2シートから厚さ方向に膨出した第2膨出部と、前記第2シートの前記第2膨出部に設けられた板部材と、前記第1シートよりも硬質の材料よりなり、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に沿った形状をなし、前記第1シートの前記第1膨出部の外面に接合され前記第1膨出部の変形を防止する変形防止部材と、を有する細胞洗浄システムにある。
【発明の効果】
【0011】
上記観点の、流路カセット、洗浄キット及び細胞洗浄システムによれば、変形防止部材が検出用流路部の変位や潰れを阻止するため、流路に作用する正圧及び負圧の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流路カセット及び洗浄キットを適用した細胞洗浄システムを示す斜視図である。
【
図3】カセット本体及びフレームの部分拡大斜視図である。
【
図4】洗浄キットの液体の経路及びカセット本体の流路を示す説明図である。
【
図5】細胞洗浄システムの圧力検出手段を示す部分断面図である。
【
図8】細胞洗浄システムの動作を示す第1動作図である。
【
図9】細胞洗浄システムの動作を示す第2動作図である。
【
図10】細胞洗浄システムの動作を示す第3動作図である。
【
図11】細胞洗浄システムの動作を示す第4動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施形態に係る流路カセット10は、
図1に示すように、洗浄キット12の一部を構成し、細胞洗浄装置14にセットされる。この流路カセット10は、洗浄キット12の複数の流路(以下、経路とも呼ぶ)を集約しており、細胞培養に用いる培地等の液体や、培養した細胞を処理するための洗浄液等の液体を流通可能な構造体として使用される。
【0015】
洗浄キット12は、流路カセット10の他に、複数の経路を構成する部材として複数のチューブ16、複数のバッグ18(医療用バッグ)、及び細胞洗浄装置14に処理される処理部20を備える。洗浄キット12は、細胞洗浄装置14の動作下に、流路カセット10及び各チューブ16を経由して、各バッグ18に収容される複数種類の液体を流通させて、処理部20において液体を処理することで目的の製品を得るように構成される。
【0016】
本実施形態に係る洗浄キット12は、使い捨て式のキットとして構成され、内部を流通する液体として生体の細胞と培地又は保存液を有する培養物、及び細胞を洗浄する洗浄液を有する。すなわち、洗浄キット12及び細胞洗浄装置14は、再生医療の一工程である洗浄処理に適用される細胞洗浄システム22となっている。細胞洗浄システム22は、培養された細胞を有する培養物から洗浄液により培地等を除去して、細胞の濃度を高める洗浄処理を行う。
【0017】
生体の細胞は、特に限定されるものではないが、例えば、血液に含まれる細胞(T細胞等)、幹細胞(ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞等)があげられる。洗浄液も、生体の細胞に応じて適切なものが選択されればよく、例えば、PBS(Phosphate Buffered Salts)、TBS(Tris-Buffered Saline)等の緩衝液、又は生理食塩水を適用することができる。
【0018】
複数のバッグ18には、培養物を収容した培養物バッグ18Aと、洗浄液を収容した2つの洗浄液バッグ18B(第1洗浄液バッグ18B1、第2洗浄液バッグ18B2)と、洗浄した細胞を収容するための製品バッグ18Cとが含まれる。
【0019】
培養物バッグ18Aは、再生医療の培養工程において、培地に培養された細胞を適宜の手段で内部に貯留することで培養物を有した状態となる。一方、洗浄液バッグ18Bは、洗浄液を貯留及び封止した状態で洗浄キット12に無菌接合装置等を用いて組み込まれる。或いは、洗浄液バッグ18Bは、洗浄液を貯留及び封止した状態で洗浄キット12に予め組み込まれて、セット時に封止を解除してもよい。製品バッグ18Cは、洗浄処理の実施前に空の状態で接続されており、洗浄処理に伴い濃縮された細胞(洗浄液を含む)が貯留され製品となる。なお製品バッグ18Cには、保存液等が予め貯留されていてもよい。
【0020】
洗浄キット12の複数のチューブ16は、培養物バッグ18Aと流路カセット10間をつなぐ培養物チューブ16A、第1洗浄液バッグ18B1と流路カセット10間をつなぐ第1洗浄液チューブ16B1、第2洗浄液バッグ18B2と流路カセット10間をつなぐ第2洗浄液チューブ16B2、製品バッグ18Cと流路カセット10間をつなぐ製品チューブ16C、処理部20と流路カセット10間をつなぐ2つのチューブ16(第1処理チューブ16D1、第2処理チューブ16D2)を有する。また複数のチューブ16には、流路カセット10から突出すると共に、折り返して流路カセット10に再び接続される閉じたチューブ16が含まれる。このチューブ16としては、細胞洗浄装置14の複数(3つ)のポンプ24にセットされる複数(3つ)のポンプ用チューブ16Eと、洗浄キット12の経路を開閉するクランプ26にセットされる複数(3つ)のクランプ用チューブ16Fとがある。さらに複数のチューブ16には、処理部20から流路カセット10を介さずに洗浄キット12の外部(例えば、細胞洗浄装置14の図示しない廃棄部)に連通する廃棄用チューブ16Gが含まれる。
【0021】
培養物チューブ16Aと培養物バッグ18A、第1洗浄液チューブ16B1と第1洗浄液バッグ18B1、第2洗浄液チューブ16B2と第2洗浄液バッグ18B2には、相互に接続可能な接続構造(不図示)が設けられている。培養物バッグ18A、第1洗浄液バッグ18B1、第2洗浄液バッグ18B2は、洗浄処理の実施前に接続構造を介して培養物チューブ16A、第1洗浄液チューブ16B1、第2洗浄液チューブ16B2に接続される。これにより、培養物チューブ16Aの流路に培養物が、第1洗浄液チューブ16B1、第2洗浄液チューブ16B2に洗浄液が流出可能となる。
【0022】
洗浄キット12の処理部20は、培養物及び洗浄液を一時的に収容する処理ケース28に構成され、細胞洗浄装置14から遠心力が付与されることで、内部空間28aに収容した培養物を、細胞、培地等に遠心分離する。処理ケース28は、円錐部30と円筒部32とを軸方向に連ねることで、内部が中空の立体形状に形成されている。この処理ケース28は、細胞洗浄装置14のセット状態で、円錐部30の頂部が遠心中心から遠い側に配置され、円筒部32の底部が遠心中心に近い側に配置される。
【0023】
処理ケース28は、遠心力が付与された際に、テーパ状の内部空間28aにおいて比重が重い細胞を遠心方向外側に寄せる一方で、比重が軽い培地を遠心方向内側に寄せる。処理ケース28の円筒部32の側部には第1処理チューブ16D1が接続される一方で、円錐部30の頂部には第2処理チューブ16D2が接続される。また、処理ケース28の底部には、遠心分離により分離された培地を廃棄するために廃棄用チューブ16Gが接続される。
【0024】
そして、流路カセット10は、上記の複数のチューブ16が予め接合されることで、各バッグ18の培養物や洗浄液を別のバッグ18又は処理部20に流通させる洗浄キット12の中継部となっている。この流路カセット10は、細胞洗浄装置14に洗浄キット12をセットする際に、細胞洗浄装置14のカセット配置部34に取り付けられ、洗浄処理におけるチューブ16の配線作業を簡略化させる。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る流路カセット10は、複数のチューブ16が直接接続される軟質なカセット本体40と、このカセット本体40を保持して細胞洗浄装置14に固定される硬質なフレーム50とで構成されている。
【0026】
カセット本体40は、略長方形を呈すると共に、可撓性を有する薄肉のシート状に形成されている。カセット本体40は、樹脂材料からなる2つの樹脂シート42を厚さ方向に重ねて接合することで形成される。この樹脂シート42を構成する樹脂材料は、液体の圧力によって変形可能な柔軟性を有していれば、特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂等を適用するとよい。
【0027】
カセット本体40は、隆起している流路壁の周囲の樹脂シート42同士が溶着されることにより、複数の流路44を内側に有している。カセット本体40の表面にはエンボス加工が施されていてもよい。カセット本体40の外縁41には、複数のチューブ16を接続する複数のコネクタ60が設けられている。
【0028】
一方、フレーム50は、カセット本体40よりも硬質な樹脂材料により構成され、カセット本体40を収容する収容空間52を有する薄い凹形状に形成されている。このフレーム50を構成する材料も、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。
【0029】
フレーム50は、カセット本体40よりも一回り大きな略長方形状の覆い部54と、覆い部54の外周から覆い部54の直交方向に短く突出するサイド部56とを有する。サイド部56は、覆い部54の外周を全周にわたって周回している。このフレーム50は、覆い部54と反対側でサイド部56に囲われた開口52aを介して収容空間52を開放しており、カセット本体40の一方の面を露出させる。つまり、収容空間52は、サイド部56と、当該収容空間52の底部52bとで形成された凹形状によって規定され、カセット本体40の他方の面は、収容空間52の底部52bで覆われていると言い換えることができる。収容空間52は、覆い部54により底部52bが構成されてもよく、覆い部54がないフレームにより底部52bが開放されていてもよい。
【0030】
サイド部56においてカセット本体40の各コネクタ60に対応する箇所には、各コネクタ60を配置及び保持する係止部70が設けられている。コネクタ60及び係止部70は、カセット本体40を係止する係止機構68を構成している。
【0031】
図3に示すように、カセット本体40のコネクタ60は、カセット本体40にシールされる第1筒部62と、チューブ16に連結される第2筒部64と、第1筒部62と第2筒部64の間で径方向外側に突出するフランジ部66とを有する。また、コネクタ60の軸心には、第1筒部62、第2筒部64及びフランジ部66を貫通する連通孔60aが形成されている。
【0032】
第1筒部62は、カセット本体40の2つの樹脂シート42のシール時に合わせてシールされることで、連通孔60aが流路カセット10の流路44に連通した状態でカセット本体40に溶着される。第1筒部62の外周面は、流路カセット10の流路44に対応するために、第2筒部64よりも小径に形成されている。また、第2筒部64は、チューブ16の内側に挿入されると共に、適宜の固着手段によりチューブ16に強固に固定される。フランジ部66は、コネクタ60の軸方向に所定の厚みを有し、且つコネクタ60の外周面を全周にわたって周回するリング状に形成されている。
【0033】
一方、フレーム50の係止部70は、サイド部56を切り欠いた係止凹部72と、係止凹部72近傍のサイド部56からフレーム50の内側に突出する移動規制部74とを有する。係止凹部72は、フレーム50の開口52aと同方向に開放され、またコネクタ60(第2筒部64)に連結されたチューブ16を収容可能な円弧状(C字状)に形成されている。この係止凹部72は、収容されたチューブ16及びコネクタ60に対し強固に嵌合するサイズに設定されている。
【0034】
移動規制部74は、サイド部56の内面から内側に短く突出して、直交方向且つ相互に近接する方向に屈曲した一対のフック部76により構成されている。そして、移動規制部74は、サイド部56との間に形成される固定空間74aにコネクタ60のフランジ部66を収容させる。
【0035】
コネクタ60は、フランジ部66を固定空間74aに配置されることで軸方向に沿った移動が規制される。またコネクタ60は、係止凹部72にチューブ16と共に収容されることで、係止部70(サイド部56)に適宜の係止力で係止されてフレーム50からのコネクタ60の抜けが抑止される。カセット本体40の各コネクタ60がフレーム50の各係止部70に保持されることで、流路カセット10は、カセット本体40とフレーム50が一体化した状態(まとまって取り扱い可能な状態)となる。
【0036】
図2に戻り、以上の係止機構68は、略長方形状の流路カセット10の四辺にそれぞれ設けられる。つまり、カセット本体40は、四方の外縁41の各々にコネクタ60を備える一方で、フレーム50も、四方のサイド部56の各々に係止部70を備える。これによりフレーム50は、シート状のカセット本体40を張った状態で保持して、面方向に沿って流路44を良好に延在させることができる。
【0037】
そして、流路カセット10は、カセット本体40及びフレーム50が一体化され、且つ図示面とその反対面を逆にした状態で細胞洗浄装置14に取り付けられる。従って、取付状態では、フレーム50の開口52aから臨むカセット本体40の一方面が細胞洗浄装置14の上面に対面し、覆い部54がカセット本体40全体を覆う。換言すれば、取付状態において
図2のカセット本体40の上下が逆転している。
【0038】
次に、
図4を参照して、洗浄キット12が有する液体の経路と共に、流路カセット10に設けられる流路44について詳述していく。流路カセット10は、細胞洗浄装置14に取り付けた状態における平面図を描いており、説明の便宜のためにフレーム50の覆い部54を省いた状態で図示している。カセット本体40の外縁41は、第1短辺41a(図中の左辺)、第2短辺41b(図中の右辺)、第1長辺41c(図中の上辺)、第2長辺41d(図中の下辺)とで構成される。
【0039】
培養物バッグ18Aにつながる培養物チューブ16Aは、第1長辺41cに接続されている。第1洗浄液バッグ18B1につながる第1洗浄液チューブ16B1、第2洗浄液バッグ18B2につながる第2洗浄液チューブ16B2、及び製品バッグ18Cにつながる製品チューブ16Cは、第2短辺41bに接続されている。処理部20につながる第1及び第2処理チューブ16D1、16D2は、第2長辺41dに接続されている。
【0040】
また、細胞洗浄システム22は、細胞洗浄装置14と洗浄キット12のセット状態で、流路カセット10の側方近傍位置に3つのポンプ24を配置する。具体的に、カセット配置部34は、セット状態で、第1短辺41aの近傍に配置される第1ポンプ24aと、第1長辺41cの近傍に配置される第2ポンプ24bと、第2長辺41dの近傍に配置される第3ポンプ24cとを有する。このため、洗浄キット12の各ポンプ用チューブ16Eも、第1短辺41aに連結される第1ポンプ用チューブ16E1、第1長辺41cに連結される第2ポンプ用チューブ16E2、及び第2長辺41dに連結される第3ポンプ用チューブ16E3により構成される。
【0041】
第1~第3ポンプ用チューブ16E1~16E3は、円弧状に折り返す部分が第1~第3ポンプ24a~24cの円形状の被巻掛部に回り込むように配置される。例えば、第1~第3ポンプ24a~24cは、回り込んでいる各ポンプ用チューブ16Eをしごくように回転することで、各ポンプ用チューブ16E内の液体に流動力を付与する。
【0042】
さらに、細胞洗浄システム22は、細胞洗浄装置14に対する洗浄キット12のセット状態で、流路カセット10の側方近傍位置に複数のクランプ26を配置する。具体的には、カセット配置部34は、セット状態で、第1長辺41c近傍に配置される第1及び第2クランプ26a、26bと、第2短辺41b近傍に配置される第3~第6クランプ26c~26fと、第2長辺41d近傍に配置される第7クランプ26gとを有する。
【0043】
培養物チューブ16Aは第1クランプ26aに配置され、第1洗浄液チューブ16B1は第3クランプ26cに配置され、第2洗浄液チューブ16B2は第4クランプ26dに配置され、製品チューブ16Cは第6クランプ26fに配置される。またクランプ用チューブ16Fは、第1長辺41cに連結されて第2クランプ26bに配置される第1クランプ用チューブ16F1と、第2短辺41bに連結されて第5クランプ26eに配置される第2クランプ用チューブ16F2と、第2長辺41dに連結されて第7クランプ26gに配置される第3クランプ用チューブ16F3とを含む。
【0044】
流路カセット10のフレーム50は、各クランプ26によるチューブ16の流路44の開閉を確実に行うために、サイド部56から延出してチューブ16を保持する保持フレーム58を複数有する。各保持フレーム58は、第1及び第2長辺41c、41d、第2短辺41bに対応するサイド部56に設けられ、サイド部56から所定間隔離れたチューブ16の外周を保持している。
【0045】
カセット本体40の流路44は、各コネクタ60を介して各チューブ16に連通している。この流路44は、培養物チューブ16Aと第1ポンプ用チューブ16E1の一端を連通する第1路44a、第1ポンプ用チューブ16E1の他端と第1処理チューブ16D1を連通する第2路44b、第1クランプ用チューブ16F1の一端と第1路44aの連結点αを連通する第3路44c、第3クランプ用チューブ16F3の一端と第2路44bの連結点βを連通する第4路44d、第1クランプ用チューブ16F1の他端と第3クランプ用チューブ16F3の他端を連通する第5路44e、第2ポンプ用チューブ16E2の一端と第5路44eの連結点γを連通する第6路44f、第2ポンプ用チューブ16E2の他端と第2短辺41b側に設けられた第1流路切替部46aを連通する第7路44g、第1洗浄液チューブ16B1と第1流路切替部46aを連通する第8路44h、第2洗浄液チューブ16B2と第1流路切替部46aを連通する第9路44i、第2クランプ用チューブ16F2の一端と第1流路切替部46aを連通する第10路44j、第2クランプ用チューブ16F2の他端と第2短辺41b側に設けられた第2流路切替部46bを連通する第11路44k、製品チューブ16Cと第2流路切替部46bを連通する第12路44l、第3ポンプ用チューブ16E3の他端と第2流路切替部46bを連通する第13路44m、及び第3ポンプ用チューブ16E3の一端と第2処理チューブ16D2を連通する第14路44nを含む。
【0046】
連結点α、β、γ、第1流路切替部46a、第2流路切替部46bでは、連結される流路44同士が連通して、一の流路44の液体を他の流路44へ淀みなく流通させる。なお第1流路切替部46aは、第7路44g~第10路44jを連結するために2箇所の連結点を有しているが、説明の便宜のために一纏りにしている。
【0047】
また、カセット本体40は、流路44の圧力を検出するための検出用流路部48を有する。各検出用流路部48は、フレーム50に設けられた後記の変形防止部材90(支持部)と、細胞洗浄装置14のロードセル100にグリップされることで、内部を流れる液体の圧力を検出可能とする。検出用流路部48の構成については後に詳述する。
【0048】
一方、
図1に戻り、洗浄キット12が取り付けられる細胞洗浄装置14は、箱状の装置本体80と、装置本体80内に回転自在に収容されるロータ82と、洗浄キット12の各バッグ18を保持するスタンド84とを備える。また、装置本体80の外面には、洗浄処理を行う際の操作や表示を行う表示操作部86及び上記のカセット配置部34が設けられる。さらに装置本体80には細胞洗浄システム22の動作を制御する制御部88が設けられている。
【0049】
ロータ82は、円筒状に形成され、カセット配置部34の下方に設けられ、装置本体80内に設けられた図示しない回転駆動源により軸回りに回転する。ロータ82は、洗浄キット12の処理部20(処理ケース28)を収容した状態で回転することで、処理部20に流入された液体に遠心力を付与する。
【0050】
また、カセット配置部34は、装置本体80の上側の傾斜面に形成された枠構造を呈しており、枠構造の内側に流路カセット10を嵌め込むと、図示しないフックによりフレーム50をロックするように構成される。
【0051】
カセット配置部34は、上記したように第1~第3ポンプ24a~24c及び第1~第7クランプ26a~26gを枠構造の外周側に備えると共に、流路カセット10の保持フレーム58を配置可能としている。カセット配置部34への流路カセット10の取り付けに伴って、ユーザの作業下に、複数のポンプ24、クランプ26が洗浄キット12の適宜のチューブ16に配置される。
【0052】
また、本実施形態に係る細胞洗浄システム22は、流路カセット10内の所定の流路44において流通する液体の圧力(状態)を検出する。具体的には、細胞洗浄システム22は、流路カセット10内の第1路44a、第2路44b、第6路44f、第7路44g、第13路44m及び第14路44nの各々に圧力検出手段36を備える。つまり各圧力検出手段36は、第1~第3ポンプ24a~24cの上流側と下流側にそれぞれ設けられている。そして、細胞洗浄装置14の制御部88は、第1~第3ポンプ24a~24cの駆動時の流量を各圧力検出手段36の圧力(差圧)に基づき算出して、第1~第3ポンプ24a~24cの制御にフィードバックする。
【0053】
図5に示すように、各圧力検出手段36は、流路カセット10と細胞洗浄装置14のセット状態で、流路カセット10の検出用流路部48と変形防止部材90、及び細胞洗浄装置14のロードセル100により構成される。各圧力検出手段36は、変形防止部材90とロードセル100により検出用流路部48を挟み込んで(グリップして)、検出用流路部48に液体が流動した際の検出用流路部48の荷重(圧力)を検出する。
【0054】
検出用流路部48は、カセット本体40の平面視で、連設される流路44よりも幅広に面方向に広がって形成されている。特に限定されるものではないが、略正円形状に広がって形成されていてもよい。検出用流路部48は、断面形状が図示のように第1シート42a及び第2シート42bから厚さ方向に膨出した第1膨出部49a1及び第2膨出部49a2を備えている。第1シート42aの第1膨出部49a1は、中央部が最も高くなるように外側に向けて山なりに膨出している。また、第2シート42bの第2膨出部49a2は、その中央部に平坦部49bが形成されている。平坦部49bは、板部材102を接合して形成された部分であり、平坦部49bの周縁に連なる部分には、平坦部49bよりも膨出した隆起部49cが形成されている。
【0055】
第1膨出部49a1及び第2膨出部49a2の間には、検出用流路部48において液体が流れる流通室48aが形成される。流通室48aは流路44に連通している。
【0056】
そして、フレーム50(覆い部54)側の第1膨出部49a1には、変形防止部材90が予め取り付けられる。その一方で、第2膨出部49a2の中央の平坦部49bには、板部材102が接合されている。板部材102は、例えば、鉄やフェライト系ステンレス鋼等の磁石に吸着可能な強磁性材料よりなり、融着又は接着剤によって第2シート42bに接合されている。板部材102は、平坦部49bに略一致する形状(円形状)に形成されており、検出用流路部48に液体が流動しておらず荷重を殆ど受けていない場合に、変形防止部材90と協働して第1膨出部49a1及び第2膨出部49a2の間隔を一定とする。セット状態において、板部材102に隣接してロードセル100が配置される。板部材102は、検出用流路部48の内圧に応じて変位し、ロードセル100の磁石104に作用する吸着力を変化させる。
【0057】
図6A及び
図6Bに示すように、変形防止部材90は、平面視で円形に形成されており、外周部98から、中央の頂部94に向けて膨出するように滑らかに湾曲したドーム状に形成されている。変形防止部材90の、内側には第1シート42aの第1膨出部49a1に沿うように湾曲した凹部92が形成されている。凹部92には、第1膨出部49a1の全域が隙間なく密着して接合されている。また、
図6Aに示すように、変形防止部材90の一端及び他端には、流路44を通すための切欠部96が形成されている。
【0058】
変形防止部材90は、第1シート42aよりも硬質に構成され、適宜の固着手段により検出用流路部48に固着される。変形防止部材90を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、フレーム50で挙げた樹脂材料を適用してもよく、金属材料を適用してもよい。
【0059】
変形防止部材90は、
図5に示すように、流通室48aに正圧が作用した際には、頂部94が覆い部54に当接することで、第1シート42aの変位(逃げ)を阻止する。これにより、ロードセル100と検出用流路部48との距離を適切な距離に保つことができ、正確な圧力測定が可能となる。
【0060】
また、変形防止部材90は、流通室48aに負圧が作用した際には、外周部98が、第1、第2シート42a、42bを介してカセット配置部34に当接する。そして、凹部92に接合された第1膨出部49a1の潰れを阻止することで、負圧の測定を可能とする。
【0061】
流路カセット10の製造において、検出用流路部48は以下の方法で形成される。まず、
図7Aに示す工程において、第1シート42a、第2シート42bを用意する。次に、第2シート42bをキャビティを有する金型に押し付けながら加熱して第2膨出部49a2を形成する。その後、第2膨出部49a2の中央部に板部材102を配置しさらにその外周側から被覆シート103で覆って被覆シート103を第2膨出部49a2に溶着又は接着等の手法で第2シート42bに接合する。
【0062】
次に、
図7Bに示す工程において、第1シート42aに変形防止部材90を接合する。第1シート42aに圧縮エア等で変形防止部材90に押し付けるようにして、第1シート42aと変形防止部材90とを接合する。これにより、第1シート42aの一部が、変形防止部材90に沿うように膨出して第1膨出部49a1が形成される。そして、変形防止部材90と第1膨出部49a1とが接合される。第1シート42aと変形防止部材90との接合は、高周波融着、熱溶着又は接着等の方法で行われる。
【0063】
その後、
図7Cに示す工程において、第1シート42aと第2シート42bとを接合する。本工程において、流路44の形成及びコネクタ60の接合が同時に行われる。以上の工程により、検出用流路部48を有するカセット本体40が完成する。
【0064】
次に、細胞洗浄装置14のロードセル100について説明する。
図5に示すロードセル100は、例えば、荷重測定方式が適用される。この場合、ロードセル100は、カセット配置部34に設けられる磁石104と、磁石104を上部に取り付けた荷重検出部106とを備える。磁石104は、第2シート42bの板部材102に吸着した状態に保たれる。磁石104は、検出用流路部48に負圧が作用して板部材102が上方に変位した場合にも、これに追従して、負圧に応じたマイナス荷重を荷重検出部106に作用させる。
【0065】
板部材102は、カセット本体40の検出用流路部48の内圧が変化した際に変位して、磁石104に荷重変化を生じさせる。荷重検出部106は、板部材102の変位に応じた磁石104の荷重変化を検出し、検出用流路部48の荷重検出信号を細胞洗浄装置14の制御部88に送信する。
【0066】
次に、細胞洗浄システム22の洗浄処理におけるチューブ16、流路カセット10の流路44の動作について
図8~
図11を参照して説明する。
【0067】
細胞洗浄システム22の洗浄処理では、作業者が細胞洗浄装置14に流路カセット10を含む洗浄キット12をセットし、細胞洗浄装置14のポンプ24、クランプ26に対し洗浄キット12を
図4に示す配置とする。このセット後に、洗浄処理では、まずプライミング工程を実施する。プライミング工程において、細胞洗浄装置14は、第1~第3ポンプ24a~24cを適宜動作させて、第1又は第2洗浄液バッグ18B1、18B2の洗浄液を流路カセット10の流路44及び処理ケース28の内部空間28aに供給する。これにより流路44や内部空間28aの空気が抜けて洗浄液で満たされる。
【0068】
プライミング工程後、
図8に示すように、洗浄処理では、培養物バッグ18Aの培養物を処理ケース28に供給する1度目の培養物供給工程(第1回培養物供給工程)を行う。培養物供給工程において、細胞洗浄装置14は、第1ポンプ24aを駆動すると共に、培養物バッグ18Aから処理部20までの経路を連通して処理部20に培養物を移送する。そのため細胞洗浄装置14は、第1クランプ26aを開放すると共に、第2クランプ26b及び第7クランプ26gを閉塞する。これにより、培養物バッグ18Aの培養物は、培養物チューブ16A、第1路44a、第1ポンプ用チューブ16E1、第2路44bを通って第1処理チューブ16D1に流れ、処理ケース28の側部から内部空間28aに流入する。また培養物の移送時に、細胞洗浄装置14は、ロータ82を適宜の回転速度(例えば3000rpm)で回転させて処理ケース28に遠心力を付与する。
【0069】
さらに、本実施形態に係る細胞洗浄システム22は、培養物供給工程において、処理ケース28への培養物の供給と合わせて、処理ケース28に洗浄液を供給する。このため、細胞洗浄装置14は、第3クランプ26c及び第5クランプ26eを開放する一方で、第4クランプ26d及び第6クランプ26fを閉塞し、さらに第3ポンプ24cを駆動する。これにより第1洗浄液バッグ18B1の洗浄液は、第1洗浄液チューブ16B1、第8路44h、第10路44j、第2クランプ用チューブ16F2、第11路44k、第13路44m、第3ポンプ用チューブ16E3、第14路44nを通って第2処理チューブ16D2に流れ、処理ケース28の頂部から内部空間28aに流入する。
【0070】
培養物供給工程において、処理ケース28への培養物の供給量は、例えば5~50mL/minに設定され、また処理ケース28への洗浄液の供給量は、例えば2.5mL/minに設定される。これにより細胞洗浄システム22は、処理ケース28内で培養物の細胞が遠心方向外側に強く押圧することを洗浄液により抑制して、細胞を保護することができる。処理ケース28内で洗浄液、及び培養物に含まれる培地は、細胞よりも比重が軽いため、遠心力によって処理ケース28の底部に移動して廃棄用チューブ16Gに流出する。
【0071】
次に洗浄処理では、
図9に示すように、培養物バッグ18Aに洗浄液を供給して、培養物バッグ18Aに付着した細胞を剥離する剥離工程を行う。剥離工程において、細胞洗浄装置14は、第1洗浄液バッグ18B1から培養物バッグ18Aまでの経路を連通する。具体的には、細胞洗浄装置14は、第1クランプ26a、第2クランプ26b、第3クランプ26cを開放すると共に、第4クランプ26d及び第7クランプ26gを閉塞する。これにより、第1洗浄液バッグ18B1の洗浄液は、第1洗浄液チューブ16B1、第8路44h、第7路44g、第2ポンプ用チューブ16E2、第6路44f、第5路44e、第1クランプ用チューブ16F1、第3路44c、第1路44aを通って培養物チューブ16Aに流れて、培養物バッグ18Aに流入する。
【0072】
なお、剥離工程時でも、処理ケース28には洗浄液を供給し、またロータ82を回転させて処理ケース28に遠心力を付与する。すなわち、細胞洗浄装置14は、第3クランプ26c及び第5クランプ26eを開放する一方で、第4クランプ26d及び第6クランプ26fを閉塞し、さらに第3ポンプ24cを駆動する。これにより、処理ケース28内では、培養物の遠心分離、培地及び洗浄液の廃棄が進行する。
【0073】
そして、細胞洗浄システム22は、剥離工程後に2度目の培養物供給工程(第2回培養物供給工程)を行う。細胞洗浄装置14は、この第2回培養物供給工程も第1培養物供給工程と同じ動作を行うことで、剥離工程により剥離した細胞を処理ケース28に供給する(
図8参照)。そして、細胞洗浄装置14は、処理ケース28において剥離した培養物を遠心分離し、また供給された洗浄液と共に培地を処理ケース28から廃棄する。これにより、培養物バッグ18A内の細胞を残さず処理することができる。
【0074】
第2回培養物供給工程後、細胞洗浄システム22は、
図10に示すように、処理ケース28にさらに洗浄液を供給して細胞を洗浄する(培地を除去する)洗浄工程を行う。洗浄工程において、細胞洗浄装置14は、第1及び第2洗浄液バッグ18B1、18B2から処理ケース28までの経路を連通する。具体的には、第3クランプ26c、第4クランプ26d、第5クランプ26e、第7クランプ26gを開放する一方で、第1クランプ26a、第2クランプ26b及び第6クランプ26fを閉塞する。また細胞洗浄装置14は、第2及び第3ポンプ24b、24cを駆動することで、2つの経路(第1及び第2処理チューブ16D1、16D2)を通して、第1及び第2洗浄液バッグ18B1、18B2の洗浄液を処理ケース28に供給する。さらに洗浄工程でも、細胞洗浄装置14は、ロータ82を回転させて処理ケース28に遠心力を付与する。
【0075】
この場合、第1及び第2洗浄液バッグ18B1、18B2の洗浄液は、第1及び第2洗浄液チューブ16B1、16B2の各々を介して流路カセット10の流路44(第8路44h、第9路44i)に流入し第1流路切替部46aに流通する。そして一の経路として、洗浄液は、第7路44g、第2ポンプ用チューブ16E2、第6路44f、第5路44e、第3クランプ用チューブ16F3、第4路44d、第2路44bを通って第1処理チューブ16D1に流れて、処理ケース28の側部から内部空間28aに流入する。また他の経路として、洗浄液は、第10路44j、第2クランプ用チューブ16F2、第11路44k、第13路44m、第3ポンプ用チューブ16E3、第14路44nを通って第2処理チューブ16D2に流れ、処理ケース28の頂部から内部空間28aに流入する。これにより処理ケース28内では、遠心分離された培地の除去がさらに進行して、細胞の濃度が高められる。
【0076】
洗浄工程後、細胞処理では、
図11に示すように、洗浄した処理ケース28内の細胞を製品バッグ18Cに移送する製品移送工程を実施する。製品移送工程において、細胞洗浄装置14は、処理ケース28から製品バッグ18Cまでの経路を連通すると共に、第1洗浄液バッグ18B1から処理ケース28までの経路を連通する。そのため細胞洗浄装置14は、第3クランプ26c、第6クランプ26f、第7クランプ26gを開放する一方で、第1クランプ26a、第2クランプ26b、第4クランプ26d、第5クランプ26eを閉塞する。また細胞洗浄装置14は、第2及び第3ポンプ24b、24cを駆動すると共に、洗浄工程等よりも低い回転速度(例えば2400rpm)でロータ82を回転させる。
【0077】
これにより、第1洗浄液バッグ18B1の洗浄液は、第1洗浄液チューブ16B1、第8路44h、第7路44g、第2ポンプ用チューブ16E2、第6路44f、第5路44e、第3クランプ用チューブ16F3、第4路44d、第2路44bを通って第1処理チューブ16D1に流れて、処理ケース28の側部から内部空間28aに流入する。また処理ケース28内の細胞(洗浄液を含む)は、第2処理チューブ16D2、第14路44n、第3ポンプ用チューブ16E3、第13路44m、第12路44lを通って製品チューブ16Cに流れて、製品チューブ16Cから製品バッグ18Cに流入する。この製品移送工程において、第2ポンプ24bによる洗浄液の流動量と第3ポンプ24cによる製品(細胞)の流動量とは、同一(例えば、40mL/min)に設定される。
【0078】
上記の処理により、製品バッグ18Cには、洗浄された細胞(高濃度の細胞)が貯留されることになり、細胞洗浄システム22の洗浄処理が終了する。洗浄処理の終了後、作業者は、洗浄キット12の製品チューブ16Cを切断及びシールして、製品バッグ18Cを洗浄キット12から分離する。流路カセット10を含む洗浄キット12は細胞洗浄装置14から取り外されて廃棄される。
【0079】
以上の洗浄処理では、細胞洗浄システム22の各流路44(第1路44a、第2路44b、第6路44f、第7路44g、第13路44m及び第14路44n)の各圧力検出手段36において圧力を検出する。
図5に示すように、圧力検出手段36では、変形防止部材90が第1シート42aの第1膨出部49a1の変位防止及び負圧による潰れを防ぐ。そして、第2シート42bの平坦部49bに設けられた板部材102がロードセル100に対向している。
【0080】
従って、検出用流路部48の流通室48aに液体が流れていない場合には、流通室48a内から第2膨出部49a2に圧力がかかっておらず、平坦部49bは殆ど変位していない。このため荷重検出部106は、弱い圧力を検出する。その一方で、検出用流路部48の流通室48aに液体が流れている場合には、流通室48aの液体から第2膨出部49a2に圧力が作用することで、板部材102が磁石104に近接する方向に変位する。これにより荷重検出部106は、板部材102の変位に応じた磁石104の荷重を検出して細胞洗浄装置14の制御部88に送信する。
【0081】
流通室48aに正圧が作用した場合には、第1シート42aは変形防止部材90と流路カセット10に接触することで支えられているので、検出用流路部48の第1シート42aの第1膨出部49a1は変位しない。その結果、第2シート42bの平坦部49bは、確実且つ大きく変位することになり、ロードセル100での圧力検出を良好に実施できる。
【0082】
また、流通室48aに負圧が作用した場合には、第1シート42aは変形防止部材90と外周部98が接触することで潰れないように支えられるため、第1シート42aの第1膨出部49a1は変位しない。その結果、第2シート42bの平坦部49bが負圧の作用によって変位することになり、ロードセル100で負圧の検出を行える。
【0083】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、流路カセット10(カセット本体40)の各流路44の形状は、自由に設計してよいことは勿論である。また、流路カセット10は、バイオリアクターを有する細胞培養装置に適用されてもよい。
【0084】
また、流路カセット10は、細胞培養システムで培養された細胞の処理に用いるものには限定されず、血球成分、リンパ球成分等を抽出する採血バッグシステムに用いられてもよい。
【0085】
上記の実施形態から把握し得る技術的思想及び効果について、以下に記載する。
【0086】
上記実施形態の一態様は、可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート42a及び第2シート42bと、第1シート42a及び第2シート42bの間に形成された流路44と、流路44の途上に設けられた検出用流路部48と、を備え、検出用流路部48は、流路44よりも幅広に面方向に広がって第1シート42aから厚さ方向に膨出した第1膨出部49a1と、第1膨出部49a1に対向する部分の第2シート42bに形成され第2シート42bから厚さ方向に膨出した第2膨出部49a2と、第2シート42bの第2膨出部49a2に設けられた板部材102と、第1シート42aよりも硬質の材料よりなり、第1シート42aの第1膨出部49a1の外面に沿った形状をなし、第1シート42aの第1膨出部49a1の外面に接合され前記第1膨出部49a1の変形を防止する変形防止部材90と、を有する流路カセット10にある。
【0087】
上記態様の流路カセット10によれば、変形防止部材90が検出用流路部48の変位や潰れを阻止するため、検出用流路部48の近傍に設けたロードセル100で流路44に作用する正圧及び負圧の測定を行うことができる。
【0088】
上記の流路カセット10において、第1シート42a及び第2シート42bを支持するフレーム50を設け、フレーム50は、第1シート42aに対向して配置される板状の覆い部54を有し、変形防止部材90は、流路44に正圧が作用した際に、覆い部54に当接することで第1シート42aの変位を阻止するように構成してもよい。このように構成することで、第2シート42bの平坦部49bが、流路44の内圧に応じて確実且つ大きく変位することになり、ロードセル100での圧力検出を良好に実施できる。
【0089】
上記の流路カセット10において、変形防止部材90は第1膨出部49a1の外面に沿ったドーム状に形成されていてもよい。このように構成することにより、変形防止部材90の肉厚を薄くでき、軽量化できる。
【0090】
上記の流路カセット10において、板部材102は流路44の内圧に応じた荷重をロードセル100に作用させると共に、板部材102はロードセル100に設けられた磁石104に吸着可能な磁性材料としてもよい。このように構成することで、正圧だけでなく負圧によってもロードセル100に荷重変化を生じさせることができる。
【0091】
上記の流路カセット10において、変形防止部材90の外周部98は、第1膨出部49a1の周囲の第1シート42a及び第2シート42bの接合部分に当接してもよい。このように構成することで、流路44が負圧となった場合であっても、第1シート42aの第1膨出部49a1の潰れによる変形を防ぐことができ、負圧を確実に測定できる。
【0092】
上記実施形態の別の一態様は、流路44を集約させた流路カセット10と、流路カセット10に接続される複数のバッグ18と、流路カセット10に接続されるチューブ16と、を備えた洗浄キット12であって、流路カセット10は、可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート42a及び第2シート42bと、第1シート42a及び第2シート42bの間に形成された流路44と、流路44の途上に設けられた検出用流路部48と、を備え、検出用流路部48は、流路44よりも幅広に面方向に広がって第1シート42a及び第2シート42bの厚さ方向に突出する第1、第2膨出部49a1、49a2と、第2シート42bの第2膨出部49a2に設けられた板部材102と、第1シート42aよりも硬質の材料よりなり、第1シート42aの第1膨出部49a1の外面に沿った形状をなし、第1シート42aの第1膨出部49a1の外面に接合された変形防止部材90と、を有する洗浄キット12にある。
【0093】
上記の洗浄キット12によれば、流路カセット10の流路44の内圧を測定することができる。
【0094】
上記実施形態のさらに別の一態様は、流路44を集約させた流路カセット10と、流路カセット10に接続される複数のバッグ18と、流路カセット10に接続されるチューブ16と、を備えた洗浄キット12と、洗浄キット12がセットされる細胞洗浄装置14と、を有する細胞洗浄システム22であって、流路カセット10は、可撓性を有する材料よりなり、重ね合わされて接合された第1シート42a及び第2シート42bと、第1シート42a及び第2シート42bの間に形成された流路44と、流路44の途上に設けられた検出用流路部48と、を備え、検出用流路部48は、流路44よりも幅広に面方向に広がって第1シート42aから厚さ方向に膨出した第1膨出部49a1と、第1膨出部49a1に対向する部分の第2シート42bに形成され第2シート42bから厚さ方向に膨出した第2膨出部49a2と、第2シート42bの第2膨出部49a2に設けられた板部材102と、第1シート42aよりも硬質の材料よりなり、第1シート42aの第1膨出部49a1の外面に沿った形状をなし、第1シート42aの第1膨出部49a1の外面に接合され第1膨出部49a1の変形を防止する変形防止部材90と、を有する細胞洗浄システム22にある。
【0095】
上記の細胞洗浄システム22によれば、流路カセット10の流路44の内圧を測定することができる。
【符号の説明】
【0096】
10…流路カセット 12…洗浄キット
14…細胞洗浄装置 16…チューブ
22…細胞洗浄システム 36…圧力検出手段
42…樹脂シート 42a…第1シート
42b…第2シート 44…流路
48…検出用流路部 90…変形防止部材
100…ロードセル