(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072708
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20230518BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230518BHJP
H05K 7/08 20060101ALI20230518BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20230518BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
H01L23/12 Z
H05K7/20 B
H05K7/08 C
H01L23/12 J
H01L23/36 C
H01L23/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185310
(22)【出願日】2021-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100172627
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】中川 政雄
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB01
5F136BA04
5F136BB01
5F136EA02
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】絶縁層の損傷を低減することができる半導体モジュールを提供する。
【解決手段】一の面10a側に絶縁層20を設けた基板10を筐体40で覆う半導体モジュール1であって、基板10を筐体40に取り付けるための取り付け具60を有するとともに、基板10及び筐体40には、取り付け穴12、43が設けられ、筐体40の取り付け穴12に管状の介在物50を挿通しつつ介在物50の下端50b側を基板10の一の面10a側に当接させた状態で、介在物50の内側の貫通穴60B1及び基板10の取り付け穴12に取り付け具60を挿通して締結することにより基板10に筐体40を取り付け、基板10を取り付け具60により取り付けることにより生じる介在物50の下端50b側の絶縁層20の損傷を防止する損傷防止部70を、基板10が筐体40に取り付けられる部分に設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面側に絶縁層を設けた基板を有する半導体モジュールであって、
前記基板を取り付けることにより生じる前記絶縁層の損傷を防止する損傷防止部を前記基板が取り付けられる部分に設定することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
一の面側に絶縁層を設けた基板を有する半導体モジュールであって、
前記基板を取り付けるための取り付け具を有するとともに、前記基板を前記取り付け具により取り付けることにより生じる前記絶縁層の損傷を防止する損傷防止部を前記基板が取り付けられる部分に設定することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項3】
一の面側に絶縁層を設けた基板を筐体で覆う半導体モジュールであって、
前記基板を前記筐体に取り付けるための取り付け具を有するとともに、前記基板を前記取り付け具により取り付けることにより生じる前記絶縁層の損傷を防止する損傷防止部を前記基板が前記筐体に取り付けられる部分に設けることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項4】
一の面側に絶縁層を設けた基板を筐体で覆う半導体モジュールであって、
前記基板を前記筐体に取り付けるための取り付け具を有するとともに、
前記基板および前記筐体には、取り付け穴が設けられ、前記筐体の取り付け穴に管状の介在物を挿通しつつ前記介在物の下端側を前記基板の一の面側に当接させた状態で、前記介在物の内側の貫通穴および前記基板の取り付け穴に前記取り付け具を挿通して締結することにより前記基板に前記筐体を取り付け、
前記基板を前記取り付け具により取り付けることにより生じる前記介在物の下端側における絶縁層の損傷を防止する損傷防止部を前記基板が前記筐体に取り付けられる部分に設定することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項5】
前記基板の一の面側における前記基板が取り付けられる部分を前記絶縁層がカットされるカット部とし、前記カット部を前記損傷防止部とすることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記基板の一の面側と前記絶縁層を介して当接する前記介在物の下端側を傾斜するテーパ面とし、前記傾斜するテーパ面を前記損傷防止部とすることを特徴とする請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記基板の一の面側と前記絶縁層を介して当接する前記介在物の下端側を湾曲面とし、前記湾曲面を前記損傷防止部とすることを特徴とする請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記湾曲面は、1/4円弧面とし、前記1/4円弧面の外側端側は、前記管状の介在物の側周の外周側と接するように、かつ、前記1/4円弧面の内側端側は、前記管状の介在物の側周の内周側と直交するように構成され、更に前記1/4円弧面の内側端側は、円弧状に面取りされる面取り部とすることを特徴とする請求項7に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記絶縁層を介して当接する前記介在物の下端側と前記基板の一の面側との間に弾力性のある弾力部材を設け、前記弾力部材を前記損傷防止部とすることを特徴とする請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記弾力部材は、前記介在物の下端側から前記基板の一の面側に行くにしたがって弾力性を漸次大きくすることを特徴とする請求項9に記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記弾力部材は、温度の上昇に応じて弾力性が大きくなる材料により構成されることを特徴とする請求項9に記載の半導体モジュール。
【請求項12】
前記基板の一の面に絶縁層を介して金属箔が設けられるとともに、前記基板の他の面に前記基板の熱を放出するためのヒートシンクが設けられ、設計温度を前記絶縁層および前記金属箔における回路の耐熱温度以下であって、前記介在物の絶縁層に対する応力の緩和に必要な前記弾力部材の弾力性に対応して設定するとともに、前記ヒートシンクの表面積を前記設計温度に対応した放熱量となるように設定することを特徴とする請求項9に記載の半導体モジュール。
【請求項13】
前記筐体の縁部の内側に前記絶縁層が入り込む空間を設けることを特徴とする請求項1~請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項14】
前記介在物は、前記筐体の縁部の取り付け穴に挿通されつつ所定の挿通位置で固定して設けられ、
更に、前記介在物は、前記取り付け穴に固定して設けられた状態で、前記下端側が、前記筐体の縁部の下端側から所定に突出するとともに、前記筐体の縁部の下端側からの前記介在物の下端側の突出高さが、前記絶縁層の厚みよりも大きく設定され、前記カット部を形成しつつ前記介在物の下端側を前記基板の一の面側に当接させた状態で、前記基板の一の面側と前記筐体の縁部の下端側との間に前記絶縁層が入り込む空間が形成され、前記絶縁層が、前記空間に入り込むように前記基板の一の面側に設けられることを特徴とする請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項15】
前記介在物は、前記筐体の縁部の取り付け穴に挿通されつつ所定の挿通位置で固定して設けられ、
更に、前記介在物は、前記取り付け穴に固定して設けられた状態で、前記下端側が、前記筐体の縁部の下端側から所定に突出するとともに、前記筐体の縁部の下端側からの前記介在物の下端側の突出高さが、前記金属箔の厚みよりも大きく設定され、前記介在物の下端側を前記絶縁層を介して前記基板の一の面側に当接させた状態で、前記基板の一の面側と前記筐体の縁部の下端側との間に前記金属箔が入り込む空間が形成され、前記金属箔が、前記空間に入り込むように前記基板の一の面側に設けられることを特徴とする請求項4に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属基板を利用した半導体基板は、金属基板の筐体への固定を接地部材を介してネジ止め等により行っている。このような技術は、例えば、特許文献1に開示された技術を参照することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属基板の固定を単にネジ止め等で行うと、金属基板に設けられた絶縁層がネジと金属基板との間に挟まれて損傷し絶縁性能が低下することがあった。また、絶縁層が損傷した結果ネジに緩みが生じることもあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、絶縁層の損傷を防止することができる半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の半導体モジュールは、一の面側に絶縁層を設けた基板を有する半導体モジュールであって、基板を取り付けることにより生じる絶縁層の損傷を防止する損傷防止部を基板が取り付けられる部分に設定することを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の半導体モジュールは、一の面側に絶縁層を設けた基板を有する半導体モジュールであって、基板を取り付けるための取り付け具を有するとともに、基板を取り付け具により取り付けることにより生じる絶縁層の損傷を防止する損傷防止部を基板が取り付けられる部分に設定することを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の半導体モジュールは、一の面側に絶縁層を設けた基板を筐体で覆う半導体モジュールであって、基板を筐体に取り付けるための取り付け具を有するとともに、基板を取り付け具により取り付けることにより生じる絶縁層の損傷を防止する損傷防止部を基板が筐体に取り付けられる部分に設定することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の半導体モジュールは、一の面側に絶縁層を設けた基板を筐体で覆う半導体モジュールであって、基板を筐体に取り付けるための取り付け具を有するとともに、基板および筐体には、取り付け穴が設けられ、筐体の取り付け穴に管状の介在物を挿通しつつ介在物の下端側を基板の一の面側に当接させた状態で、介在物の内側の貫通穴および基板の取り付け穴に取り付け具を挿通して締結することにより基板に筐体を取り付け、基板を取り付け具により取り付けることにより生じる介在物の下端側における絶縁層の損傷を防止する損傷防止部を基板が筐体に取り付けられる部分に設定することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、上記の構成により、絶縁層の損傷を防止することができる。
【0011】
基板の一の面側における基板が取り付けられる部分を絶縁層がカットされるカット部とし、カット部を損傷防止部とすることにより、絶縁層の損傷を防止することができる。すなわち、損傷防止部を絶縁層が存在しない領域とすることができ、絶縁層の損傷があり得ない領域とすることができる。
【0012】
基板の一の面側と絶縁層を介して当接する介在物の下端側を傾斜するテーパ面とし、傾斜するテーパ面を損傷防止部とすることにより、または、基板の一の面側と絶縁層を介して当接する介在物の下端側を湾曲面とし、湾曲面を損傷防止部とすることにより応力が分散されて介在物の下端側の絶縁層に対する応力が緩和され、絶縁層の損傷を更に防止することができる。
【0013】
湾曲面は、1/4円弧面とし、1/4円弧面の外側端側は、管状の介在物の側周の外周側と接するように、かつ、1/4円弧面の内側端側は、管状の介在物の側周の内周側と直交するように構成され、更に1/4円弧面の内側端側は、円弧状に面取りされる面取り部とすることにより応力が分散されて、介在物の下端側の絶縁層に対する応力を更に緩和することができる。
【0014】
絶縁層を介して当接する介在物の下端側と基板の一の面側との間に弾力性のある弾力部材を設け、弾力部材を損傷防止部とすることにより、介在物の下端側の絶縁層に対する応力が弾力により緩和され絶縁層の損傷を更に防止することができる。
【0015】
弾力部材は、介在物の下端側から基板の一の面側に行くにしたがって弾力性を漸次大きくすることにより、介在物の絶縁層に対する応力が基板の一の面側に行くにしたがって漸次緩和され絶縁層の損傷を更に一層防止することができる。
【0016】
弾力部材は、温度の上昇に応じて弾力性が大きくなる材料により構成されることにより、基板が発する熱を利用しながら弾力部材の弾力性を大きくすることができる。
【0017】
基板の一の面に絶縁層を介して金属箔が設けられるとともに、基板の他の面に基板の熱を放熱するためのヒートシンクが設けられ、設計温度を絶縁層および金属箔における回路の耐熱温度以下であって、介在物の絶縁層に対する応力の緩和に必要な弾力部材の弾力性に対応して設定するとともに、ヒートシンクの表面積を設計温度に対応した放熱量となるように設定することにより、介在物の絶縁層に対する応力が緩和されるように弾力部材の弾力性を設定することができる。
筐体の縁部の内側に絶縁層が入り込む空間を設けることにより、基板に損傷防止部としてのカット部を形成しながらも基板における絶縁層の設置面積を所定に設定することができる。
【0018】
介在物は、筐体の縁部の取り付け穴に挿通されつつ所定の挿通位置で固定して設けられ、更に、介在物は、取り付け穴に固定して設けられた状態で、下端側が、筐体の縁部の下端側から所定に突出するとともに、筐体の縁部の下端側からの介在物の下端側の突出高さが、絶縁層の厚みよりも大きく設定され、カット部を形成しつつ介在物の下端側を基板の一の面側に当接させた状態で、基板の一の面側と筐体の縁部の下端側との間に絶縁層が入り込む空間が形成され、絶縁層が、空間に入り込むように基板の一の面側に設けられることにより、基板に損傷防止部としてのカット部を形成しながらも基板における絶縁層の設置面積を所定に設定することができる。
【0019】
介在物は、筐体の縁部の取り付け穴に挿通されつつ所定の挿通位置で固定して設けられ、更に、介在物は、取り付け穴に固定して設けられた状態で、下端側が、筐体の縁部の下端側から所定に突出するとともに、筐体の縁部の下端側からの介在物の下端側の突出高さが、金属箔の厚みよりも大きく設定され、介在物の下端側を絶縁層を介して基板の一の面側に当接させた状態で、基板の一の面側と筐体の縁部の下端側との間に金属箔が入り込む空間が形成され、金属箔が、空間に入り込むように基板の一の面側に設けられることにより、基板に損傷防止部を形成しながらも基板における金属箔の設置面積を所定に設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁層の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体モジュールの全体構成を示す平面図である。
【
図2】半導体モジュールの全体構成を示す正面図である。
【
図3】半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図4】半導体モジュールの基板の平面側の構成を示す斜視図である。
【
図5】半導体モジュールの基板の底面側の構成を示す斜視図である。
【
図6】半導体モジュールの形成方法を説明するための図である。
【
図7】半導体モジュールの形成方法を説明するための
図6に続く図である。
【
図8】半導体モジュールの形成方法を説明するための
図7に続く図である。
【
図9】半導体モジュールの形成方法を説明するための
図8に続く図である。
【
図10】半導体モジュールの形成方法を説明するための
図9に続く図である。
【
図11】半導体モジュールの形成方法を説明するための
図10に続く図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る半導体モジュールの基板の構成を示す図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る半導体モジュールの変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係る半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図18】本発明の第4実施形態に係る半導体モジュールの変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図20】本発明の第5実施形態に係る半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図21】本発明の第5実施形態に係る別の半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る半導体モジュールの別の変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図23】本発明の第3実施形態に係る半導体モジュールの更に別の変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図24】本発明の第4実施形態に係る半導体モジュールの別の変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図25】本発明の第4実施形態に係る半導体モジュールの更に別の変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図26】本発明の第5実施形態に係る半導体モジュールの変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図27】本発明の第6実施形態の半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図28】本発明の第6実施形態の半導体モジュールの絶縁層の構成を示す平面図である。
【
図29】本発明の第6実施形態の半導体モジュールの基板の構成を示す平面図である。
【
図30】本発明の第6実施形態の半導体モジュールの変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【
図31】本発明の第6実施形態の半導体モジュールの別の変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態乃至第6実施形態について説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を
図1~
図11を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体モジュールの全体構成を示す平面図、
図2は、半導体モジュールの全体構成を示す正面図、
図3は、半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図、
図4は、半導体モジュールの基板の平面側の構成を示す斜視図、
図5は、半導体モジュールの基板の底面側の構成を示す斜視図、
図6~
図11は、半導体モジュールの形成方法を説明するための図である。なお、以下の説明においては、半導体モジュール1の筐体40側を上方、基板10側を下方、平面視が略矩形状(略長方形状)の半導体モジュール1の長尺側の一方を正面側、その反対側を背面側、半導体モジュール1の短尺側を側方とし、各方向を図において明示するものとする。
【0023】
図1~
図5を参照して本発明の半導体モジュール1の概要を説明すると、半導体モジュール1は、基板10、絶縁層20、金属箔30、筐体40、介在物50、取り付け具60、および損傷防止部70を有している。
【0024】
すなわち、半導体モジュール1は、一の面10a側(上面10a側)に絶縁層20を介して金属箔30を設けた基板10を筐体40で覆う構成となっている。半導体モジュール1は、取り付け具60を介して基板10の一の面10a側の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けてられている。半導体モジュール1は、基板10の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けたときには、介在物50の下端50b側が基板10の一の面10a側の縁部11に当接する構成となっている。半導体モジュール1は、損傷防止部70により、取り付け具60を介して基板10の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けることにより生じる絶縁層20の損傷を防止することができる。損傷防止部70は、基板10の縁部11が筐体40の縁部42に取り付けられる部分に設定されている。
【0025】
基板10は、板状で略矩形状(略長方形状)をなしている。基板10は、例えば、アルミニウムや銅等の金属またはセラミックス等で形成することができる。基板10の一の面10aは、絶縁層20、金属箔30、および筐体40の設置面となっている。基板10の他の面10b(下面10b)には、ヒートシンク13が設けられている。ヒートシンク13は、例えば、アルミニウムや銅等の金属で形成することができる。ヒートシンク13は、基板10に設けられた金属箔30が発する熱を外部に放出することができる。ヒートシンク13は、基板10の他の面10bから下方に延びる四角柱状をなしており、基板10の他の面10に多数(複数)設けられている。ヒートシンク13の表面積は、半導体モジュール1の設計温度に対応した放熱量となるように設定することができる。半導体モジュール1の設計温度は絶縁層20および金属箔30における回路の耐熱温度以下とすることができる。
【0026】
基板10の縁部11には、取り付け穴12が設けられている。取り付け穴12を介して取り付け具50を挿通することにより基板10の縁部11を筐体40の縁部42に所定に取り付けることができる。取り付け穴12は、円形であり、基板10の縁部11の一の面10aから他の面10bに貫通するように設けられている。
【0027】
絶縁層20は、例えば、樹脂等の絶縁体により形成することができ、略矩形状(略長方形状)をなしている。絶縁層20は、基板10の一の面10aと金属箔30とを電気的に絶縁することができる。金属箔30は、例えば、銅箔とすることができる。金属箔30上には回路パターンが設けられ、所定の配線や回路を実装することができる。基板10の一の面10aにおける金属箔30の設置面積は、絶縁層20の設置面積よりも小さく、金属箔30の端部30aの位置は、絶縁層20の端部20aの位置よりも内側となるように設定されている。すなわち、絶縁層20の端部20aから金属箔30の端部30aまでの距離は絶縁距離として所定に設定されている。
【0028】
ここで、基板10の一の面10a側における取り付け穴12の周囲は、基板10の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けるときに介在物50の下端50b側と当接する当接部分であり、基板10の縁部11が筐体40の縁部42に取り付けられる部分である。この取り付け穴12の周囲は、絶縁層20がカット(切断)されるカット部80(切断部80)であり、絶縁層20が設けられておらず基板の一の面10aが露出している。カット部80は、取り付け穴12の円形に沿った丸みを帯びた形状となっており、取り付け穴12の周囲を取り囲むように形成されている。このカット部80は介在物50の下端50b側における絶縁層20の損傷を防止する損傷防止部70とすることができる。
【0029】
すなわち、カット部80においては、介在物50の下端50b側が基板10の一の面10a側と直接当接するため、介在物50の下端50b側と絶縁層20とが当接することはなく、介在物50の下端50b側における絶縁層20の損傷が発生することのない領域となる。
【0030】
基板10の一の面10a側における絶縁層20の設置領域は、基板10の一の面10a側における介在物50の下端50b側との当接部分の近傍位置つまりカット部80の近傍位置まで達している。
【0031】
筐体40は、例えば、 ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂で形成することができる。筐体40は、本体部41と縁部42を有しており、本体部41は、立ち上がり部41aと天井部41bを有している。立ち上がり部41aは、平面視が環状で上方に立ち上がるように形成されている。天井部41bは、環状の立ち上がり部41aの上端側を塞ぐように設けられている。筐体40において、立ち上がり部41aと天井部41bとの間に囲まれた内側の空間41cは、基板10を筐体40により覆ったときに、基板10上に実装された回路を囲う空間とすることができる。
【0032】
縁部42は、平面視が環状をなしており、所定の幅寸法を持った帯状である。縁部42は、本体部41の立ち上がり部41aの下端から正面側、背面側、および側方に短尺に延びるように鍔部の如く形成されている。縁部42には、取り付け穴43が設けられており、取り付け穴43を介して取り付け具50を挿通し基板10の縁部11を筐体40の縁部42に所定に取り付けることができる。取り付け穴43は、基板10の取り付け穴12と同形・同寸法の円形であり、縁部42の上端42a側から下端42b側に貫通するように設けられている。基板10の縁部11の筐体40の縁部42への取り付けは、それぞれの取り付け穴12,43の位置を一致させて行われる。
【0033】
介在物50は、例えば、真鍮等の金属で形成されており、短尺な円管状をなしている。介在物50は、筐体40の縁部42の取り付け穴43に挿通しつつ所定の挿通位置に固定して設けられている。介在物50の筐体40の取り付け穴43への固定は、粘着または圧着等により行うことができる。
【0034】
介在物50は、筐体40の取り付け穴43に固定して設けられた状態で、下端50b側が、筐体40の縁部42の下端42b側から所定に突出した状態となっている。介在物50の下端50b側は、フラットな平坦面50b1となっている。介在物50の下端50b側の突出部分は、基板10の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けたときに、基板10の一の面10a側のカット部80に当接する部分となる。カット部80は、円管状の介在物50の下端50b側の外径寸法に対応する寸法となるように(介在物50の下端50b側の外径寸法に対し若干大きい寸法となるように)絶縁層20をカットして形成される。筐体40の縁部42の下端42b側からの介在物50の下端50b側の突出高さ(突出量)m1は、絶縁層20の厚みm2よりも大きく設定されている。
【0035】
すなわち、筐体40の縁部42の取り付け穴43に円管状の介在物50を挿通しつつ所定の挿通位置で固定して設けた状態では、筐体40の縁部42と介在物50の下端50b側との間で段差が形成される。つまり、介在物50の下端50b側を基板10の一の面10a側のカット部80に当接させた状態としたときには、基板10の一の面10a側と筐体40の縁部42の下端42b側との間に絶縁層20が入り込むことが可能な段差状の空間90が形成される。上記の如く、絶縁層20の設置領域は、基板10の一の面10a側におけるカット部80の近傍位置まで達しており、絶縁層20は、空間90に入り込むように基板10の一の面10a側に設けることができる。
【0036】
取り付け具60は、例えば、鉄等の金属で形成されており、ボルト部60Aとナット部60Bを有している。ボルト部60Aは、側方に突出する頭部60A1と、頭部60A1の下面60A2側から下方に軸状に延びる軸部60A3と、を有している。軸部60A3の側周面には、雄ネジ溝60A4が設けられている。ナット部60Bは、貫通穴60B1が設けられており、貫通穴60B1の内面側には、雌ネジ溝60B2が設けられ、雌ネジ溝60B2は、ボルト部60Aの軸部60A3の雄ネジ溝60A4と螺合する。
【0037】
すなわち、介在物50の下端50b側を基板10の一の面10a側に当接させた状態で、介在物50の内側の貫通穴50aおよび基板10の取り付け穴12に取り付け具60の軸部60A3を挿通することができる。
【0038】
以上のように構成された半導体モジュール1は次のように形成することができる。
すなわち、まず
図6に示すように、矩形状の絶縁層20を用意する。次に、
図7に示すように、略矩形状の絶縁層20の縁部20b側を基板10の取り付け穴12の円形に沿った丸みを帯びた形状にカットする。この絶縁層20のカットは、円管状の介在物50の下端50b側の外径寸法に対応する寸法となるように行う(介在物50の下端50b側の外径寸法に対し若干大きい寸法となるように行う)。
【0039】
そして、
図8に示すように、縁部20bを所定にカットした絶縁層20を、カット部分が取り付け穴12の位置と対応するように基板10の一の面10aに設ける。これにより、基板10の一の面10a側の縁部11に絶縁層20がカットされたカット部80が形成される。なお、絶縁層20の上面には、金属箔30を更に設ける。
【0040】
次いで、
図9に示すように、筐体40の縁部42の取り付け穴43に円管状の介在物50を挿通しつつ所定の挿通位置で固定して設ける。この固定は、介在物50の下端50b側が、筐体40の縁部42の下端42b側から突出するように行う。筐体40の縁部42の下端42b側からの介在物50の下端50b側の突出高さ(突出量)m1は、絶縁層20の厚みm2よりも大きくなるように行う。
【0041】
続いて、
図10に示すように、介在物50の下端50b側を基板10の一の面10a側の縁部11のカット部80に当接させた状態つまり損傷防止部70に当接させた状態とする。これにより、絶縁層20の損傷を防止するとともに、基板10の一の面10a側と筐体40の縁部42の下端42b側との間に絶縁層20が入り込むことが可能な段差状の空間90を形成する。絶縁層20は、空間90に入り込むように基板10の一の面10a側に設けられる。これにより、基板10に損傷防止部70としてのカット部80を形成しながらも基板10における絶縁層20の設置面積を所定に設定することができる。
【0042】
次に、
図11に示すように、介在物50の下端60b側を基板10の一の面10a側のカット部80に当接させた状態つまり損傷防止部70に当接させた状態で、介在物50の内側の貫通穴50aおよび基板10の取り付け穴12に取り付け具50の軸部60A3を挿通する。これにより、介在物50の上端50c側が取り付け具60におけるボルト部60Aの頭部60A1の下面60A2側に当接した状態となり、軸部60A3の下端60A5側が基板10の他の面10bから突出した状態となる。
【0043】
次いで、
図3に示すように、突出する軸部60A3の下端60A5側をナット60Bにより締結する。この締結は、軸部60A3の側周面の雄ネジ溝60A4とナット部60Bの雌ネジ溝60B2とを螺合させて行う。これによりボル部ト60Aの頭部60A1とナット部60Bとの間に基板10の縁部11と筐体40の縁部42とを挟み込むようにして基板10の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けることができる。
【0044】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、基板10の一の面10a側における介在物50の下端50b側との当接部分であって基板10の縁部11が筐体40の縁部42に取り付けられる部分において絶縁層20がカットされるカット部80が形成され、カット部80を損傷防止部70とすることにより、絶縁層20の損傷を防止することができる。すなわち、カット部80を損傷防止部70とすることにより、損傷防止部80を絶縁層20が存在しない領域とすることができ、絶縁層20の損傷があり得ない領域とすることができる。
【0045】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を
図12を参照して詳細に説明する。
図12は、本発明の第2実施形態に係る半導体モジュール2の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。なお、以下の説明および
図12において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明を省略することがあるものとする。
【0046】
本第2実施形態の半導体モジュール2は、上記の第1実施形態と同様に介在物50は、筐体40の取り付け穴43に固定して設けられた状態で、下端50b側が 、筐体40の縁部42の下端42b側から所定に突出する構成となっている。本第2実施形態では、筐体40の縁部42の下端42b側からの介在物50の下端50b側の突出高さ(突出量)n1が、絶縁層20の厚みn2と金属箔の厚みn3を加えた厚みよりも大きく設定されている。
【0047】
すなわち、基板10の一の面10aにカット部80を形成しつつ介在物50の下端50b側を基板10の一の面10a側に当接させた状態で、基板10の一の面10a側と筐体40の縁部42の下端42b側との間に積層した絶縁層20と金属箔30が入り込むことが可能な段差状の空間90´が形成される。これにより、積層した絶縁層20と金属箔30が、空間90´に入り込むように基板10の一の面10aに設けることができ、基板10に損傷防止部70としてのカット部80を形成しながらも絶縁層20のみならず基板10における金属箔30の設置面積も所定に設定することができる。
【0048】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を
図13~
図16を参照して詳細に説明する。
図13は、本発明の第3実施形態に係る半導体モジュールの基板の構成を示す図、
図14は、本発明の第3実施形態に係る半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図、
図15は、本発明の第3実施形態に係る半導体モジュールの変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図、
図16は、
図15の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。なお、以下の説明および
図13~
図16において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明を省略することがあるものとする。
【0049】
本第3実施形態の半導体モジュール3は、基板10にカット部80を設けずに損傷防止部70を形成する構成を示している。
【0050】
すなわち、
図13および
図14に示すように、基板10の一の面10a側において取り付け穴12以外の箇所の全てに絶縁層20を設けており、上記の第1実施形態および第2の実施形態では取り付け穴12の周囲のカット80が設けられる箇所にも本第3実施形態では絶縁層20を設ける構成となっている。これにより、基板10の一の面10a側の縁部11に筐体40の縁部42を取り付けたときに、介在物50の下端50b側が絶縁層20に直接当接することとなる。
【0051】
本第3実施形態の半導体モジュール3においては、基板10の一の面10a側と絶縁層20を介して当接する介在物50の下端50b側を、傾斜するテーパ面50b2とし、傾斜するテーパ面50b2を損傷防止部70とする。すなわち、基板10の一の面10a側の縁部11に筐体40の縁部42を取り付けたときには、テーパ面50b2により介在物50の下端50b側の絶縁層20に対する応力が分散され、介在物50の下端50b側の絶縁層20に対する応力を緩和することができる。これにより、絶縁層20の損傷を防止することができる。
【0052】
なお、
図15および
図16に示すように、更にテーパ面50b2の外側端50b21側および内側端50b22側を、円弧状(外側に突出する円弧状)に面取りされた面取り部50b21´,50b22´とすることとしてもよい。これにより、基板10の一の面10a側の縁部11に筐体40の縁部42を取り付けたときに、面取りされた外側端50b21側および内側端50b22側の絶縁層20に対する応力を更に緩和することができる。面取りは、テーパ面50b2の外側端50b21側および内側端50b22側のいずれか一方のみとしてもよい。
【0053】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態を
図17~
図19を参照して詳細に説明する。
図17は、本発明の第4実施形態に係る半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図、
図18は、本発明の第4実施形態に係る半導体モジュールの変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図、
図19は、
図18の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。なお、以下の説明および
図17~
図19において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明を省略することがあるものとする。
【0054】
本第4実施形態の半導体モジュール4は、基板10にカット部80を設けずに損傷防止部70を形成する構成を示している。
【0055】
すなわち、基板10の一の面10a側において取り付け穴12以外の箇所の全てに絶縁層20を設けており、上記の第1実施形態および第2実施形態では取り付け穴12の周囲のカット80が設けられる箇所にも本第4実施形態では絶縁層20を設ける構成となっている(
図13)。これにより、基板10の一の面10a側の縁部11に筐体40の縁部42を取り付けたときに、介在物50の下端50b側が絶縁層20に直接当接することとなる。
【0056】
本第4実施形態の半導体モジュール4においては、
図17に示すように、基板10の一の面10a側と絶縁層20を介して当接する介在物50の下端50b側を湾曲面50b3とし、湾曲面50b3を損傷防止部70とする。この湾曲面50b3は、下方に突出する円弧面より詳しくは1/4円弧面とすることができ、1/4円弧面の外側端50b32側は、管状の介在物50の側周の外周50´側と接するように、かつ、1/4円弧面の内側端50b31側は、管状の介在物50の側周の内周50´´側と直交するように形成することができる。すなわち、基板10の一の面10a側の縁部11に筐体40の縁部42を取り付けたときに、円弧面が作用して介在物50の下端50b側の絶縁層20に対する応力が分散され、介在物50の下端50b側の絶縁層20に対する応力を緩和することができる。これにより、絶縁層20の損傷を防止することができる。
【0057】
なお、
図18および
図19に示すように、更に1/4円弧面の内側端50b31側は、円弧状(外側に突出する円弧状)に面取りされる面取り部50b31´とすることとしてもよい。これにより、基板10の一の面10a側の縁部11に筐体40の縁部42を取り付けたときに、内側端50b31側の絶縁層20に対する応力を更に緩和することができる(1/4円弧面の外側端50b32側は、管状の介在物50の側周の外周50´側と接するように形成することで円弧状に面取りされたときの応力の緩和効果と同様の効果を発揮する)。
【0058】
本第4実施形態においては、湾曲面50b3を円弧面以外の湾曲面とすることとしたり、半円弧面や2/3円弧面、3/4円弧面とする等他の円弧面とすることとしても所要の効果を奏することができる。
【0059】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態を
図20および
図21を参照して詳細に説明する。
図20は、本発明の第5実施形態に係る半導体モジュールの構成を示す一部を拡大して示す拡大正面断面図、
図21は、本発明の第5実施形態に係る別の半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図である。なお、以下の説明および
図20において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明省略することがあるものとする。
【0060】
本第5実施形態の半導体モジュール5は、基板10にカット部80を設けずに損傷防止部70を形成する構成を示している。
【0061】
すなわち、基板10の一の面10a側において取り付け穴12以外の箇所の全てに絶縁層20を設け、上記の第1実施形態および第2実施形態では取り付け穴12の周囲のカット80が設けられる箇所にも本第5実施形態では絶縁層20を設ける構成となっている(
図13)。これにより、基板10の一の面10a側の縁部11に筐体40の縁部42を取り付けたときに、介在物50の下端50b側が絶縁層20に直接当接することとなる。
【0062】
本第5実施形態の半導体モジュール5においては、絶縁層20を介して当接する介在物50の下端50b側と基板10の一の面10a側との間に所定の弾力を有する弾力部材95を設け、弾力部材95を損傷防止部70とすることができる。つまり、介在物50の下端50b側と基板10の一の面10a側に設けられた絶縁層20とが弾力部材95を介して当接することにより、介在物50の絶縁層20に対する応力を弾力部材95の弾力により緩和することができる。これにより、絶縁層20の損傷を防止することができる。弾力部材95は、例えばシリコン系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系の材料で形成することができる。
【0063】
ここで、弾力部材95は、
図21に示すように、上下方向に弾力性の異なる複数の弾力部材95を積層して設けることとしてもよい。例えば、積層された複数の弾力部材95において、介在物50の下端50b側から基板10の一の面10a側に設けられた絶縁層20側に行くにしたがって弾力性を漸次大きくする(絶縁層20側に行くにしたがって漸次柔らかくする)こととすると、介在物50の絶縁層20に対する応力を絶縁層20に行くにしたがって漸次緩和することができる。
【0064】
また、弾力部材95は、温度の上昇に応じて弾力性が大きくなる(温度の上昇に応じて柔らかくなる)材料により構成することとしてもよい。このような構成とすることで、基板10が発する熱を利用しながら弾力部材95の弾力性を大きくする(熱を利用しながら柔らかくする)ことができる。
【0065】
すなわち、基板10の一の面10aには絶縁層20を介して金属箔30が設けられている。金属箔30に実装された回路からは所定の熱が発せられ、基板10の他の面10bに基板10の熱を放出するためのヒートシンク13が設けられている。
【0066】
つまり、半導体モジュール5の設計温度を、絶縁層20および金属箔30における回路の耐熱温度以下であって、介在物50の絶縁層20に対する応力の緩和に必要な弾力部材95の弾力性に対応して設定する(弾力部材95の材質を絶縁層20や金属箔30における回路の耐熱温度以下の範囲で介在物50の絶縁層20に対する応力の緩和に必要な弾力性を発揮する材質とするように選定する)。
【0067】
そして、ヒートシンク13の表面積や配置を半導体モジュール5の設計温度に対応した放熱量となるように設定する。このようにヒートシンク13の表面積や配置を設定することで、介在物50の絶縁層20に対する応力が緩和されるように弾力部材95の弾力性を設定することができる(本第5実施形態の弾力部材95を用いた構成は介在物50の下端50bを平坦面50b1とする場合のみならず第3実施形態および第4実施形態の如くテーパ面50b2や湾曲面50b3とする場合にも適用可能であることは勿論であり、テーパ面50b2や湾曲面50b3と弾力部材95とを組み合わせることで相乗的な応力の緩和効果が得られる)。
【0068】
温度の上昇に応じて弾力性が大きくなる(温度の上昇に応じて柔らかくなる)弾力部材95の材質としては、例えば熱可塑性樹脂系の材料がある。
【0069】
なお、上記した第3実施形態~第5実施形態の半導体モジュール3,4,5において、
図22~
図26に示すように、筐体40の縁部42の下端42b側からの介在物50の下端50b側の突出高さ(突出量)o1,p1,q1,r1,s1(正確には絶縁層20の厚みを考慮し、筐体40の縁部42の下端42b側から絶縁層20の上面20cまでの高さo1,p1,q1,r1,s1)を、金属箔の厚みo3,p3,q3,r3,s3よりも大きく設定し、介在物50の下端50b側を基板10の一の面10a側に設けられた絶縁層20に直接当接させた状態で、基板10の一の面10a側に設けられた絶縁層20と筐体40の縁部42の下端42b側との間に積層した金属箔30が入り込む段差状の空間90´´を形成することとしてもよい。これにより、積層した金属箔30が、空間90´´に入り込むように基板10の一の面10aに設けられ、基板10に損傷防止部70を形成しながらも基板10における金属箔30の設置面積を所定に設定することができる。
【0070】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態を
図27~
図31を参照して詳細に説明する。
図27は、本発明の第6実施形態の半導体モジュールの一部を拡大して示す拡大正面断面図、
図28は、本発明の第6実施形態の半導体モジュールの絶縁層の構成を示す平面図、
図29は、本発明の第6実施形態の半導体モジュールの基板の構成を示す平面図、
図30は、本発明の第6実施形態の半導体モジュールの変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図、
図31は、本発明の第6実施形態の半導体モジュールの別の変形例の一部を拡大して示す拡大正面断面図である。なお、以下の説明および
図27~
図31において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明を省略することがあるものとする。
【0071】
本第6実施形態の半導体モジュール6は、
図27に示すように、介在物50の下端50bと筐体40の下端42bとの高さ方向の位置を同一すなわち介在物50の下端50bと筐体40の下端42bを面一とした構成を示している。
【0072】
つまり、本第6実施形態の半導体モジュール6にあっては、
図28に示すように、絶縁層20´の端部20a´側を所定の幅寸法をもって帯状かつ環状にカットし、
図29に示すように、絶縁層20´を基板10に設けたときに、基板10の縁部11側の全てを絶縁層20´がカット(切断)されるカット部80´(切断部80´)つまり損傷防止部70とすることとしている。
【0073】
このように構成することで、取り付け具60を介して基板10の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けたときに、空間90を形成することなく、筐体40の縁部42の下端42b側が基板10の一の面10a側のカット部80´と直接当接することとなり、取り付け具60を介して基板10の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けることにより生じる絶縁層20の損傷を防止することができる。
【0074】
また、
図30に示すように、介在物50を省略し、取り付け具60を介して基板10の縁部11を筐体40の縁部42に取り付けたときに、空間90を形成することなく、筐体40の縁部42の下端42b側が基板10の一の面10a側のカット部80´と直接当接することとしてもよい。
【0075】
ただし、本第6実施形態においては、筐体40の縁部42の下端42b側が基板10の一の面10a側のカット部80´と空間90を形成することなく直接当接するため、絶縁層20および金属箔30の設置面積が第1実施形態~第5実施形態よりも制限されることとなり、絶縁層20および金属箔30の設置面積の観点からは第1実施形態乃至第5実施形態の方がより好ましい実施形態となる。
【0076】
更に、本第6実施形態において、
図31に示すように、筐体40の縁部42の下端42b側の内側を段差状とすることとしてもよい。すなわち、筐体40の縁部42の下端42b側を基板10の一の面10a側の縁部11に直接当接させた状態で、基板10の一の面10a側と筐体40の縁部42の下端42b側の内側との間に絶縁層20が入り込む段差状の空間90´´´が形成され、絶縁層20が、空間90´´´に入り込むように基板10の一の面10a側に設けることとしてもよい。
【0077】
この場合にあっては、更に空間90´´´の高さを大きく設定し絶縁層20および金属箔30のいずれも入り込むようにすることとしてもよい。
【0078】
ただし、本第6実施形態においては、筐体40の強度の観点から空間90´´´の大きさが制限されるのに対し、筐体40の縁部42の下端42b側からの介在物50の下端50b側を突出させて空間90,90´,90´´を形成する上記の第1実施形態~第5実施形態の方が筐体40の強度に影響を与えることが少なく空間90,90´,90´´の大きさの制限も少ないことから、筐体40の強度の観点からは第1実施形態乃至第5実施形態の方がより好ましい実施形態となる。
【0079】
なお、本発明は、上述した第1実施形態乃至第6実施形態に限定されることなく特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
m1:突出高さ
n1:突出高さ
m2:厚み
n2:厚み
o1:突出高さ
o3:厚み
p1:突出高さ
p3:厚み
q1:突出高さ
q3:厚み
r1:突出高さ
r3:厚み
s1:突出高さ
s3:厚み
1,2,3,4,5,6:半導体モジュール
10:基板
10a:一の面(上面)
10b:他の面(下面)
11:縁部
12:取り付け穴
13:ヒートシンク
20:絶縁層
20´:絶縁層
20a:端部
20b:縁部
20a´:端部
30:金属箔
30a:端部
40:筐体
41:本体部
41a:立ち上がり部
41b:天井
41c:空間
42:縁部
42a:上端
42b:下端
43:取り付け穴
50:介在物
50´:外周
50´´:内周
50a:貫通穴
50b:下端
50c:上端
50b1:平坦面
50b2:テーパ面
50b21:外側端
50b21´:面取り部
50b22:内側端
50b22´:面取り部
50b3:湾曲面
50b31:内側端
50b31´:面取り部
50b32:外側端
60:取り付け具
60A:ボルト部
60A1:頭部
60A2:下面
60A3:軸部
64A4:雄ネジ溝
60A5:下端
60B:ナット部
60B1:貫通穴
60B2:雌ネジ溝
70:損傷防止部
80:カット部(切断部)
80´:カット部(切断部)
90:空間
90´:空間
90´´:空間
95:弾力部材