IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特開-車両用灯具 図1
  • 特開-車両用灯具 図2
  • 特開-車両用灯具 図3
  • 特開-車両用灯具 図4
  • 特開-車両用灯具 図5
  • 特開-車両用灯具 図6
  • 特開-車両用灯具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072710
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20230518BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20230518BHJP
   F21S 43/15 20180101ALI20230518BHJP
   F21S 43/50 20180101ALI20230518BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20230518BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20230518BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20230518BHJP
   F21W 103/10 20180101ALN20230518BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20230518BHJP
   F21W 103/55 20180101ALN20230518BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20230518BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20230518BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230518BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20230518BHJP
   F21Y 103/30 20160101ALN20230518BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21S43/15
F21S43/50
F21V5/04 350
F21V5/00 350
F21W103:00
F21W103:10
F21W103:35
F21W103:55
F21W104:00
F21W105:00
F21Y115:10
F21Y103:10
F21Y103:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185312
(22)【出願日】2021-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】設楽 悠
(72)【発明者】
【氏名】石原 裕士
(57)【要約】
【課題】光束の制御性を向上させて光の利用効率を高め、照射むらを抑制することが可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】複数の発光素子(30)と、複数の発光素子(30)の各々に対応して設けられた複数の光束制御部(40)と、を含み、複数の光束制御部(40)の前方に所定の形状の線状照射パターンを形成する車両用灯具であって、光束制御部(40)は中央部に配置された屈折部(40A)、および屈折部(40A)を囲む前方広がりの略すり鉢状の反射部(40B)を備え、屈折部(40A)は発光素子(30)からの光を屈折させて前方に直接出射させ、反射部(40B)は発光素子(30)からの光を反射させて拡散させつつ前方に出射させ、発光素子(30)から出射された光は光束制御部(40)を通過後、線状照射パターンの延伸方向の長さが延伸方向と交差する方向の長さより長い遠視野パターンを形成することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の各々に対応して設けられた複数の光束制御部と、を含み、前記複数の光束制御部の前方に所定の形状の線状照射パターンを形成する車両用灯具であって、
前記光束制御部は中央部に配置された屈折部、および前記屈折部を囲む前記前方広がりの略すり鉢状の反射部を備え、
前記屈折部は前記発光素子からの光を屈折させて前記前方に直接出射させ、
前記反射部は前記発光素子からの光を反射させて拡散させつつ前記前方に出射させ、
前記発光素子から出射された光は前記光束制御部を通過後、前記線状照射パターンの延伸方向の長さが前記延伸方向と交差する方向の長さより長い遠視野パターンを形成することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用灯具であって、
前記遠視野パターンの前記延伸方向と交差する方向の長さは前記所定の形状の幅以内の長さとされることを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用灯具であって、
前記延伸方向に対応する前記反射部の傾斜が、前記延伸方向と交差する方向に対応する前記反射部の傾斜より緩やかにされていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の車両用灯具であって、
前記所定の形状は湾曲形状を含み、
前記複数の光束制御部は、前記湾曲形状に沿って配置されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載の車両用灯具であって、
前記光束制御部の光出射面には、前記線状照射パターンの延伸方向と交差する方向に延びる複数のシリンドリカルステップが形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載の車両用灯具であって、
前記光束制御部から照射された光を拡散させ前記線状照射パターンを形成する形成部をさらに含むことを特徴とする車両用灯具。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用灯具であって、
前記形成部の前記光束制御部側の面の少なくとも一部に、複数の魚眼レンズ、および前記延伸方向と交差する方向に形成された複数のシリンドリカルステップの少なくとも一方を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項8】
請求項6または7に記載の車両用灯具であって、
前記複数の発光素子を搭載する搭載面を有する基板をさら含み、
前記搭載面と前記形成部の面とが略平行であることを特徴とする車両用灯具。
【請求項9】
請求項6から8の何れか一つに記載の車両用灯具であって、
前記搭載面および前記形成部の面が前記車両用灯具を搭載する車両の進行方向に対して傾いていることを特徴とする車両用灯具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、意匠上の目新しさも加味した様々な形状の照射パターン(以下、「意匠照射パターン」)を備えた車両用灯具が検討されている。そのような車両用灯具においては、特に光利用効率を高め、発光むら等を抑制した意匠的な見映えのよさが求められている。このような光の利用効率を高め、見映えのよさを向上させた車両用灯具について開示した文献として、例えば特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された車両用灯具は、光源と、この光源からの出射光を後面から入射させて前面から出射させる導光体と、を備え、導光体の後面が光源からの光を前方側へ屈折させるようにして入射させる第1入射部と、第1入射部の両側において光源からの光を側方側へ屈折させるようにして入射させる第2入射部と、この第2入射部から入射した光源からの光を前方へ向けて内面反射させる反射部とを備え、第1入射部が、光源からの光を拡散光として入射させるように構成されており、反射部が、第2入射部から入射した光源からの光を拡散光として反射させるように構成されている。
【0004】
上記のように構成された特許文献1に係る車両用灯具では、導光体の前面に対して第1入射部からの入射光が到達する領域と反射部からの内面反射光が到達する領域とを広範囲にわたって重複させることができるので、第1入射部と反射部との間に暗部が発生するのを確実に防止することができ、これにより導光体に発光ムラが発生することを効果的に抑制することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-75331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に係る車両用灯具では、光源からの光を透光カバー近傍まで導く手段として導光体を用いている。導光体は透明なアクリル樹脂等を用いて成型され、光源からの光を確実に導くためには有効な部材である。しかしながら、空間利用の効率性、軽量化等を勘案した場合、導光体を用いず、レンズ等の光束を制御する部材(以下、「光束制御部」)から空間を介して直接光を伝搬できれば至便である。
【0007】
この際、意図する意匠照射パターンを確実に形成するために光源のFFP(Far Field Pattern、遠視野パターン)を該光束制御部によっていかに制御するかという点が課題となる。かかる課題について図7を参照して説明する。図7はテールランプ等車両の後端部に設けられる従来技術に係る車両用灯具を、車両の後部から見た状態の一部を示している。
【0008】
図7には意匠照射パターン26と、光束制御部で制御された後の発光素子(光源)からの光のFFP24Bを示している。ランプ領域50は、テールランプ等の本来の機能を有する灯具が配置される領域である。図7では図示を省略しているが、本従来技術に係る車両用灯具では、発光素子から照射された光をさらに見映えよくする意匠インナーとも呼ばれる意匠部材を備えている。当該意匠部材は拡散、あるいは偏向された照射光を形成する形成部を含んでいる。
【0009】
一方、図7に示すように、従来技術に係る車両用灯具においては、光量確保等の観点から光束制御部によって発光素子からの光を平行光とし、FFP24Bの形状を円形状としていた。そして発光素子の個数の制約から個々のFFP24Bは所定値以上の直径とし、FFP24B同士が重複せず隣接するように配置していた。
【0010】
しかしながら、上記のように配置された個々のFFP24Bの一部は、図7に示すように意匠照射パターン26からはみ出し、はみ出し部27を形成してしまう場合があった。
また、FFP24Bの直径が比較的大きいため、形成部周辺の形成部以外の意匠部材の領域に発光素子からの光が照射され、意図しない散乱光等が発生する場合があった。さらに、意匠照射パターン上において、FFP24B同士が重ならない領域である暗部25が発生する場合があった。散乱光や暗部25は、意匠照射パターンにおける照射むらとなってしまうため、極力発生させないようにする必要がある。散乱光や暗部25を発生させないためにはFFP24Bの直径を意匠照射パターンの幅と同程度にし、FFP24Bの数を増やして緻密に配列すればよいが、このような構成では上述したように発光素子の個数が増えてしまう。すなわち従来技術においては、光の利用効率を高めるために、発光素子から発光された光束の制御性向上が求められていた。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、光束の制御性を向上させて光の利用効率を高め、照射むらを抑制することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の車両用灯具は、複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各々に対応して設けられた複数の光束制御部と、を含み、前記複数の光束制御部の前方に所定の形状の線状照射パターンを形成する車両用灯具であって、前記光束制御部は中央部に配置された屈折部、および前記屈折部を囲む前記前方広がりの略すり鉢状の反射部を備え、前記屈折部は前記発光素子からの光を屈折させて前記前方に直接出射させ、前記反射部は前記発光素子からの光を反射させて拡散させつつ前記前方に出射させ、前記発光素子から出射された光は前記光束制御部を通過後、前記線状照射パターンの延伸方向の長さが前記延伸方向と交差する方向の長さより長い遠視野パターンを形成することを特徴とする。
【0013】
このような本発明の車両用灯具では、発光素子から出射された光は光束制御部によって、長軸と短軸とを有するやや細長い形状の遠視野パターンを形成する。そのため、長軸を所定の形状の延伸方向に沿うように配列することにより、所定の形状の線状照射パターンを形成しやすくなる。その結果暗部の形成を抑制することができる。また、短軸を所定の形状の幅に合わせやすくなるので、車両用灯具内の意図しない部位に光が照射されることを回避しやすくなる。その結果意図しない散乱光等を抑制することができる。以上のことから、発光素子から出射された光束の制御性が向上するので光の利用効率が高まり、照射むらの抑制された見映えのよい車両用灯具を提供することができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記遠視野パターンの前記延伸方向と交差する方向の長さは前記所定の形状の幅以内の長さとされることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記延伸方向に対応する前記反射部の傾斜が、前記延伸方向と交差する方向に対応する前記反射部の傾斜より緩やかにされていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記所定の形状は湾曲形状を含み、前記複数の光束制御部は、前記湾曲形状に沿って配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記光束制御部の光出射面には、前記線状照射パターンの延伸方向と交差する方向に延びる複数のシリンドリカルステップが形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記光束制御部から照射された光を拡散させ前記線状照射パターンを形成する形成部をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記形成部の前記光束制御部側の面の少なくとも一部に、複数の魚眼レンズ、および前記延伸方向と交差する方向に形成された複数のシリンドリカルステップの少なくとも一方を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記複数の発光素子を搭載する搭載面を有する基板をさらに含み、前記搭載面と前記形成部の面とが略平行であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の一態様では、前記搭載面および前記形成部の面が前記車両用灯具を搭載する車両の進行方向に対して傾いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、光束の制御性を向上させて光の利用効率を高め、照射むらを抑制することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る車両用灯具を発光素子とともに示す、正面平面図である。
図2】(a)は図1に示す車両用灯具のA-A断面図、(b)はB-B断面図である。
図3】実施形態に係る光束制御部を発光素子側から見た斜視図である。
図4】実施形態に係る光束制御部の光路を示す(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図5】実施形態に係る車両用灯具の意匠照射パターンとFFPとの関係を示す正面平面図の一部である。
図6】実施形態に係る意匠部材における形成部の、(a)は正面平面図、(b)は背面の部分拡大図である。
図7】従来技術に係る車両用灯具の意匠照射パターンとFFPとの関係を示す正面平面図の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。以下の説明では、本発明に係る車両用灯具を、車両の後端部に設けられるテールランプに適用した形態を例示して説明する。しかしながらこれに限らず、ストップランプ、リアコンビネーションランプ、デイタイムランニングランプ、クリアランスランプ等の他の車両用灯具に適用してもよい。本発明に係る車両用灯具は、装飾的な機能を有する線状の照射光である意匠照射パターンを発生させる構成を備えている。なお、以下の説明においては、「意匠照射パターン」は車両用灯具の設計において意図する照射パターンを意味する。これに対し実際に形成される照射パターンを「線状照射パターン」と呼び、両者を区別している。なお、「意匠照射パターン」は本発明における「所定の形状」に対応する。
【0025】
図1から6を参照して、本実施形態に係る車両用灯具10について説明する。図1に示すように、車両用灯具10は、形成部20A、発光素子30、およびランプ領域50を含んでいる。図1は車両用灯具10を車両の後部側から見た平面図であるが、以下ではこの方向から見た車両用灯具10の面の側を正面、その反対側を背面という。つまり図1における-Z方向が車両の前進方向、+Z方向が車両の後進方向である。
【0026】
複数個(図1では15個の場合が例示されている)配置された発光素子30は、線状照射パターン(配光パターン)の形成元となる光源である。形成部20Aは意匠部材20(図2(a)参照)の一部であり、照射むらの抑制された、つまり均一な光度分布の見映えのよい線状照射パターンを形成するための構成の一部となっている。意匠部材20および形成部20Aの詳細については後述する。ランプ領域50は、必要に応じテールランプ等の本来の機能を有する灯具が配置される領域である。むろん車両用灯具の形態に応じてランプ領域50に灯具を配置しない形態もある。なお、本実施形態では略C字状の意匠照射パターンを例示して説明するが、これに限らず、直線形状、リング形状、矩形形状等線状であれば任意の形状の意匠照射パターンを採用してよい。また、本実施形態では、線状の意匠照射パターンに沿う方向を「延伸方向」といい、意匠照射パターンの中心線と交差する方向を「延伸方向と交差する方向」という。意匠照射パターンが曲線の場合は、中心線に対する接線の方向が延伸方向となる。
【0027】
図2は線状照射パターンを形成するための光学系を示す図であり、図2(a)は図1に示すA-A線に沿って切断した断面図を、図2(b)はB-B線に沿って切断した断面図を各々示している。図2(a)に示すように、上記の光学系は、発光素子30、光束制御部40、意匠部材20、および支持部材21を含んでいる。図2(a)では示していないが、発光素子30および光束制御部40は各々複数個配置されている。発光素子30は基板31の図示しない搭載面に搭載されている。本実施形態では発光素子30の発光面は基板31の搭載面と平行にされているが、光学的設計等を考慮して傾けてもよい。意匠部材20の一部には、光束制御部40から照射された光を拡散、偏向等させてより見映えのよい照射光を形成する形成部20Aが含まれている。支持部材21は意匠部材20を支持、固定する部材である。
【0028】
本実施形態に係る発光素子30は一例として、赤色発光のLED(Light Emitting Diode)である。しかしながらこれに限らず、白色やアンバ色等のLEDを使用してもよい。基板31の材料は、通常のガラスエポキシ基板等を、特に制限なく用いることができる。
【0029】
光束制御部40は、発光素子30から受けた光の光路を変えて光束を制御し、形成部20Aに向けて照射する部位である。つまり、線状照射パターンの配光を制御する部位である。図2(a)に示すように、光束制御部40は、屈折部40Aおよび反射部40Bを備えている。屈折部40Aおよび反射部40Bは、各々異なる原理で光束を制御することにより、意匠照射パターンに即した線状照射パターンを形成する機能を有している。光束制御部40は例えば合成樹脂成型品である。光束制御部40を成型する材料としては、例えば透明なアクリル樹脂等特に制限なく用いることができる。屈折部40Aおよび反射部40Bの詳細については後述する。
【0030】
図2(b)は見る方向を変えた光学系の断面図である。従って図示された部材は基本的に図2(a)と同様である。図2(b)に示すように、本実施形態では、複数の発光素子30が1枚の基板31に搭載されている。複数の発光素子30は基板31の搭載面に略C字状に配置されている。基板31には発光素子30の駆動回路やランプ(図示省略)等他の部品が搭載される場合もあり、基板31はそれら他の部品も搭載可能な適宜な形状とされる。むろん基板31は他の部品の配置等を勘案して、意匠照射パターンに沿った略C字状の形状としてもよい。なお基板31は必ずしも1枚の基板である必要はなく、発光素子30ごとに、あるいは所定個数のグループごとに基板を配置する形態としてもよい。
【0031】
また、図2(b)に示すように、本実施形態では、複数の光束制御部40は一体的に成型され、光束制御部アレイ42となっている。そして光束制御部アレイ42は意匠照射パターンに沿って略C字状の形状となっている。なお光束制御部40は必ずしも一体的に成型する必要はなく、単体の光束制御部40を複数配置させる形態としてもよいし、あるいは所定個数のグループごとにアレイ化してもよい。
【0032】
ここで、本実施形態に係る光学系の配置について説明する。図2(a)に示すように本実施形態では、基板31と形成部20Aとが略平行とされている。なお、「基板31と形成部20Aとが略平行」とは、基板31が発光素子30を搭載する図示しない搭載面を備え、該搭載面と形成部20Aの面とが略平行であるという意味である。さらに、基板31と形成部20Aは、Z軸方向に対して傾いている。車両の前進方向が-Z方向なので、基板31と形成部20Aは車両の進行方向(前進および後進方向)に対して傾いているとも言える。基板31と形成部20Aとは互いに平行関係を保ったまま配置されている。すなわち、基板31と形成部20Aとの距離は発光素子30の位置にかかわらず常に一定の距離とされている。このことによっても、車両用灯具10の線状照射パターンにおける照射むらが抑制される。また、基板31を傾けることによって光学系をよりコンパクトに配置できるという効果がある。
【0033】
一方光束制御部40の主照射方向(光軸)は、車両の進行方向(Z軸方向)と平行になっている。換言すれば、基板31の搭載面、および形成部20Aの面は束制御部40の主照射方向に対して傾いている。
【0034】
次に、図3を参照して、光束制御部40についてより詳細に説明する。図3は光束制御部40を背面側(発光素子30側)から見た図であり、一例として図1に示すPの位置に配置される向きの光束制御部40を示している。光束制御部40は、屈折部40A、反射部40B、および凸部43を備えている。屈折部40Aおよび反射部40Bは、発光素子30から照射された光を受け、意匠照射パターンの延伸方向に長く延伸方向に交差する方向に短い、例えば長円形状のFFPに変換して形成部20Aに向けて出射する。図3の例ではY軸方向が延伸方向、X軸方向が延伸方向と交差する方向となっている。本実施形態ではFFPの形状を長円形状としているが、これに限られず意匠照射パターンに応じて適切な形状としてよい。本実施形態では長円形状のFFPの長軸方向が延伸方向となるように複数の光束制御部40の向き(Z軸に対する回転位置)が設定されている。すなわち、光束制御部40の向きは意匠照射パターン上の位置によって異なっている。なお、本実施形態では、「長円」を長軸と短軸を有するやや細長い形状、例えば特定の方向にいびつな円形状という意味で用いている。
【0035】
屈折部40Aは-Z方向に凸状とされた平面視略円形状のレンズ部材で構成されている。屈折部40Aは発光素子30から受けた光を屈折させ、レンズの主照射方向と直交する平面内で略円形状の光束として形成部20Aに照射する。なお、屈折部40Aの形状は円形状に限らず、例えば延伸方向に長軸、延伸方向と交差する方向に短軸を有する長円形状としてもよい。
【0036】
反射部40Bは+Z方向において外側(屈折部40Aの主照射方向から離れる方向)に広がる略すり鉢状の形状(凸曲面状の回転曲面的な形状)をなしており、すり鉢の底に相当する部分に屈折部40Aを囲む凸部43を備えている。凸部43は反射部40Bのうち屈折部40Aとの境界近傍から-Z方向に突出した部分である。反射部40Bは発光素子30からの光を凸部43の内側(屈折部40A側)で受け、侵入した光を反射部40Bの内面で全反射させ、屈折部40Aによる光束の周囲にリング状に拡散した光束を形成する。このリング状の光束は、延伸方向の幅が延伸方向と交差する方向の幅より大きくされており、このことによって発光素子30からの光は、屈折部40Aによる光束と相まって延伸方向に長軸、延伸方向と交差する方向に短軸を有する長円形状のFFPに変換される。
【0037】
リング状の光束は、延伸方向のリング幅を延伸方向と交差する方向のリング幅より大きくするために、反射部40Bのすり鉢状の側面の主照射方向(光軸)から測った傾斜角度を場所によって変えている。すなわち、反射部40Bの側面は相対的に傾斜角度の大きい第1傾斜部41A、および相対的に傾斜角度の小さい第2傾斜部41Bを備えている。換言すると、側面の傾斜としては第1傾斜部41Aの方が第2傾斜部41Bより緩やかとも表現され得る。第1傾斜部41Aは上下(Y軸方向)に1対、第2傾斜部41Bは左右(X軸方向)に1対設けられている。従って光束制御部40は、X軸およびY軸に対して対称である。反射部40Bの傾斜角度は最大傾斜角度部S1から最小傾斜角度部S2まで連続的に変化している。このことにより、主照射方向に直交する面内で外形が長円のリング状の光束が形成される。
【0038】
本実施形態に係る光束制御部40は、光出射面(図3で見えている側と反対側のX-Y平面内の面)に線状照射パターンの延伸方向と交差する方向に延びる複数のシリンドリカルステップ44が形成されている(図4(a)参照)。シリンドリカルステップ44は、より効果的に光を拡散させる機能を有する。ここで、シリンドリカルステップとは円柱を軸方向に切った形状のステップをいう(図6(b)参照)。複数のシリンドリカルステップ44はこの軸が延伸方向と交差する方向に平行となるように配置されている。シリンドリカルステップ44は照射された光を半円柱の周方向に拡散させるので、光束制御部40からシリンドリカルステップ44に照射された光は延伸方向に拡散される。このことにより、シリンドリカルステップ44は、光束制御部40を透過した光のFFPを延伸方向に伸ばす効果を奏する。その結果、後述するように、隣接するFFP24A(図5参照)同士がより効果的に重畳され、照射むらの低減に寄与する。なお、光路制御部40に設けるステップはシリンドリカル形状に限らず、要求される拡散状態等に応じて適切な形状のステップとしてよい。
【0039】
次に図4(a)を参照して、上述した光束制御部40の作用についてより詳細に説明する。図4(a)は、発光素子30から出射した光が光束制御部40によってどのように光束制御されるかについて光路を用いて説明した図である。
【0040】
図4(a)に示すように、発光素子30から出射した光のうち屈折部40Aから入射した光は集光するように光路を変更され、光束L1を形成する。一方凸部43から入射した光は反射部40Bの内面で全反射され、光束L1の周囲に主照射方向に直交する断面視でリング状の光束L2を形成する。この光束L2のリング幅が延伸方向で長く、延伸方向と交差する方向で短くされることにより、発光素子30からの光のFFPは長円形状に整形される。換言すれば、光束制御部40において、屈折部40Aによる光束L1は主として集光効率を高め輝度を確保する機能を担い、反射部40Bによる光束L2は主としてFFPの形状を整形する機能を担っている。
【0041】
図4(b)に示すように、複数の光束制御部40から出射された光は、隣接する光束制御部40同士の光束が重なるように配置される。このことにより、本実施形態に係る車両用灯具10では暗部25が極力形成されないようにしている。
【0042】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る車両用灯具10の作用、効果についてより詳細に説明する。図5は車両用灯具10を正面(車両の後部側)から見た図の一部を示しており、意匠照射パターン26と、発光素子30から出射された光が光束制御部40で光束制御された後のFFP24Aを示している。
【0043】
図5に示すように本実施形態に係るFFP24Aは長円形であり、その長軸が意匠照射パターン26の延伸方向に沿うように配列されている。そして、隣接するFFP24A同士は重複領域29において重なるように位置決めされている。このことによって、図7に示す従来技術のような暗部25の発生が効果的に抑制されている。また、FFP24Aの短軸の長さは意匠照射パターンの幅と略等しくなるように設定されているので、FFP24Aが形成部20Aからはみ出すことによる散乱光の発生や照射むら等が抑制されている。これらの効果が相乗することにより、車両用灯具10の線状照射パターンは見映えのよいものとなっている。
【0044】
次に図6を参照して、本実施形態に係る形成部20Aについてより詳細に説明する。図6(a)は、略C字状の形成部20Aを正面(車両の後部側)から見た図である。図6(a)では、補強部28と一体化された形成部20Aの例を示しているが、補強部28は必須のものではなく省略してもよい。図2(a)に示すように、形成部20Aは意匠部材20の一部であるが、図6(a)では形成部20A以外の部分は図示を省略している。形成部20Aは光束制御部40から照射された光を精密に拡散させて照射むらを抑制し、さらに見映えを向上させる機能を有する。そのため形成部20Aには、要求される拡散特性等に応じて適切な拡散手段が設けられている。以下図6(b)を参照して、該拡散手段について説明する。
【0045】
図6(b)は、形成部20Aの背面のうち図6(a)に符号Sで示す領域の部分拡大図である。図6(b)に示すように、形成部20Aの背面側には、意匠照射パターンに沿って格子状に配列された複数の魚眼レンズ22が設けられている。魚眼レンズ22によって光路制御部40から照射された光は精密に拡散され、照射むらが抑制される。なお魚眼レンズの配列は格子状に限らず、千鳥状等要求される意匠照射パターンの拡散状態、配光状態等を勘案して適切な配列としてよい。
【0046】
また、形成部20Aの背面においては、図6(b)に示すように、複数の魚眼レンズ22の内側にシリンドリカルステップ23A、外側にシリンドリカルステップ23Bが形成されている。シリンドリカルステップ23A、23Bは、各々円柱を軸方向に切った形状の凸部を、意匠照射パターンの延伸方向と交差する方向(X軸方向)に該軸の向きをそろえて配置することにより形成している。本実施形態のように、意匠照射パターンが円弧である場合は、シリンドリカル状の凸部を、該円弧の中心を起点とする放射線の一部として形成してもよい。
【0047】
シリンドリカルステップ23A、23Bも、光束制御部40から照射された光を拡散させる機能を有する。本実施形態では、シリンドリカルステップ23A、23Bは光の透過を抑え、車両用灯具10を正面から見た場合の車両用灯具10の内部構造の非視認性を確保する機能を有する。そのため、形成部20Aの正面側のシリンドリカルステップ23A、23Bと対向する位置にシボ加工が施されている。シリンドリカルステップ23A、23Bを配置することにより、車両用灯具10の見映えが向上する。
【0048】
なお、本実施の形態では魚眼レンズおよびシリンドリカルステップの双方を設ける形態を例示して説明したがこれに限らず、いずれか一方を設ける形態としてもよい。また、本実施形態では2系統のシリンドリカルステップを形成する形態を例示して説明したがこれに限らず、内側か外側かいずれか1系統のシリンドリカルステップを形成する形態としてもよい。また、本実施形態ではシリンドリカルステップ23A、23Bと対向する形成部20Aの正面側にシボ加工を施す形態を例示して説明したがこれに限らず、シボ加工を省略してもよい。さらに形成部20Aに設けるステップはシリンドリカル形状に限らず、要求される拡散状態等に応じて適切な形状のステップとしてよい。
【0049】
以上詳述したように、本実施形態に係る車両用灯具10によれば、発光素子30から出射された光は光束制御部40によって、長軸と短軸とを有するやや細長い形状(例えば長円形状)のFFPを形成する。そのため、長軸を意匠照射パターン26の延伸方向に沿うように、かつ重複領域29を有するように配列することにより、所定の意匠照射パターン26に即した線状照射パターンを形成しやすくなる。その結果暗部25の形成を抑制することができる。また、短軸を意匠照射パターン26の幅に合わせやすくなるので、車両用灯具10内の意図しない部位に光が照射されることを回避しやすくなる。その結果意図しない散乱光を抑制することができる。すなわち、車両用灯具10では発光素子30から出射された光束の制御性を高めたことにより光の利用効率が向上し、照射むらの抑制された、つまり均一な光度分布の見映えのよい車両用灯具を提供することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では光束制御部40の反射部の外形形状を、凸曲面状の回転曲面的な形状を例示して説明したがこれに限らず、それ以外の曲面形状あるいは複数の平面で構成された形状としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では基板31および形成部20Aを車両の進行方向に対して傾ける形態を例示して説明したがこれに限らず、少なくとも一方を車両の進行方向に対して平行とする形態としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…車両用灯具
20…意匠部材
20A…形成部
21…支持部材
22…魚眼レンズ
23A、23B…シリンドリカルステップ
24A、24B…FFP
25…暗部
26…意匠照射パターン
27…はみ出し部
28…補強部
29…重複領域
30…発光素子
31…基板
40…光束制御部
40A…屈折部
40B…反射部
41A…第1傾斜部
41B…第2傾斜部
42…光束制御部アレイ
43…凸部
44…シリンドリカルステップ
50…ランプ領域
L1、L2…光束
S1…最大傾斜角度部
S2…最小傾斜角度部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7