(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072712
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】履物のソール構造及び履物
(51)【国際特許分類】
A43B 7/144 20220101AFI20230518BHJP
A43B 7/1445 20220101ALI20230518BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A43B7/144
A43B7/1445
A43B13/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185314
(22)【出願日】2021-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】521309112
【氏名又は名称】小平 天
(71)【出願人】
【識別番号】521309123
【氏名又は名称】中島 木延
(74)【代理人】
【識別番号】100181733
【弁理士】
【氏名又は名称】淺田 信二
(72)【発明者】
【氏名】小平 天
(72)【発明者】
【氏名】中島 木延
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA15
4F050BA33
4F050BD11
4F050HA11
4F050HA14
4F050HA53
(57)【要約】
【課題】しなやかな重心移動が可能となるソール構造を提供する。
【解決手段】ソール構造100は、足の裏から身体の体重を受けて身体を支える受け台10と、受け台10に下方に突出して設けられた第1の歯20及び第2の歯30と、を備え、受け台10は、JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータの硬度が20以上90以下の材料から形成されており、第1の歯20は、幅方向に延び、履物1を履いた足が平地面に着地した状態において距骨の下方であって距骨よりも踵側及び爪先側に出ない位置に配置されており、第2の歯30は、幅方向に延び、履物1を履いた足が平地面に着地した状態において中足骨の下方であって中足骨よりも踵側及び爪先側に出ない位置に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の足に装着される履物のソール構造であって、
前記足の裏から身体の体重を受けて前記身体を支える受け台と、
前記受け台に下方に突出して設けられた第1の歯及び第2の歯と、を備え、
前記受け台は、JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータの硬度が20以上90以下の材料から形成されており、
前記第1の歯は、幅方向に延び、前記履物を履いた前記足が平地面に着地した状態において距骨の下方であって距骨よりも踵側及び爪先側に出ない位置に配置されており、
前記第2の歯は、幅方向に延び、前記履物を履いた前記足が平地面に着地した状態において中足骨の下方であって中足骨よりも踵側及び爪先側に出ない位置に配置されている
ソール構造。
【請求項2】
前記第1の歯及び前記第2の歯を間に挟んで前記受け台に連結された接地台を更に備え、
前記接地台は、JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータの硬度が20以上90以下の材料から形成されている、
請求項1に記載のソール構造。
【請求項3】
請求項2に記載のソール構造と、
紐上に形成され幅方向に前記ソール構造に渡された横緒と、
前記横緒から前記ソール構造における爪先側に延びる前緒と、を備え、
前記横緒は、前記第1の歯と前記第2の歯との間を通って前記接地台に達しており、
前記前緒は、前記第2の歯よりも爪先側を通って前記接地台に達している、
履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物のソール構造、及び履物に関する。
【背景技術】
【0002】
靴及び草履等の履物において、履物を履いた際の動作のパフォーマンスを向上させる、又は足のトラブルを軽減させるなどの種々の機能向上をソールに持たせることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、靴用のインソールの一部を構成するインソール用パーツが開示されている。インソール用パーツは、足裏の一部に対向する底面部と、底面部の外縁から足側面に向けて立ち上がった立ち上がり部と、を有している。底面部と立ち上がり部には、ショパール関節を下支えする肉厚部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スポーツ競技や身体表現などのパフォーマンスの向上には、体幹をしなやかに保つと共に無理に重力に逆らわずして重力を効果的に利用するしなやかな重心移動が重要であるとされている。特許文献1に開示されたインソールでは、ショパール関節が肉厚部により支えられるものの、しなやかな重心移動が肉厚部によって遮られるおそれがある。
【0006】
本発明は、しなやかな重心移動が可能となるソール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、人間の足に装着される履物のソール構造であって、前記足の裏から身体の体重を受けて前記身体を支える受け台と、前記受け台10に下方に突出して設けられた第1の歯及び第2の歯と、を備え、前記第1の歯及び前記第2の歯は、幅方向に延び、長さ方向に互いに間隔を空けて配置されており、前記受け台は、JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータの硬度が20以上90以下の材料から形成されており、前記第1の歯は、前記履物を履いた前記足が平地面に着地した状態において距骨の下方であって距骨よりも踵側及び爪先側に出ない位置に配置されており、前記第2の歯は、前記履物を履いた前記足が平地面に着地した状態において中足骨の下方であって中足骨よりも踵側及び爪先側に出ない位置に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、しなやかな重心移動が可能となるソールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は、人間の右足の骨の側面図であり、(b)は、人間の右足の骨の上面図である。
【
図2】(a)は、本発明の実施形態に係るソール構造を備える履物の側面図であり、(b)は、
図2(a)に示す履物の上面図である。
【
図3】本発明における実施形態の変形例に係るソール構造を備える履物の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るソール構造100について、図面を参照して説明する。
【0011】
まず、
図1を参照して、人間の足の骨について説明する。
図1(a)は、人間の右足の骨の側面図であり、
図1(b)は、人間の右足の骨の上面図である。
【0012】
以下において、踵と第二趾(足の人差指)の爪先とを結ぶ方向を「長さ方向」とし、長さ方向に直交しかつ足裏に沿う方向を「幅方向」とする。幅方向における第一趾(足の親指)が位置する側を「内側」とし、第五趾(足の小指)が位置する側を「外側」とする。
図1(a)は、人間の右足の骨を外側から見た図である。
【0013】
図1に示すように、人間の足には、爪先側から踵側に向かって順に、末節骨、中節骨(第二趾、第三趾、第四趾及び第五趾のみ)、及び基節骨があり、これらはまとめて趾骨と呼ばれる。趾骨より踵側には中足骨があり、中足骨より踵側には、内側から外側に向かって第一楔状骨、第二楔状骨、第三楔状骨、立方骨が並んでいる。第一楔状骨、第二楔状骨、第三楔状骨の踵側であって立方骨の内側には、舟状骨が存在し、舟状骨の踵側に距骨があり、立方骨の踵側であって距骨の下方に踵骨が存在する。踵骨は、距骨よりも踵側に突出している。
【0014】
中足骨と、第一楔状骨、第二楔状骨、第三楔状骨及び立方骨と、の間の関節はリスフラン関節と呼ばれ、舟状骨と距骨の間の関節、及び立方骨と踵骨との間の関節は、ショパール関節と呼ばれる。中足骨と基節骨との間の関節は、中足趾節関節と呼ばれる。
【0015】
第一趾の中足骨における爪先側の端部近傍には拇趾球があり、第五趾の中足骨における爪先側の端部近傍には小趾球がある。拇趾球と小趾球との間には、横アーチが形成される。つまり、横アーチは、中足趾節関節に沿って形成される。拇指球と踵骨縦との間には内側縦アーチが形成され、小指球と踵骨縦との間には外側縦アーチが形成される。つまり、内側縦アーチ及び外側縦アーチは、ショパール関節及びリスフラン関節を経て形成される。
【0016】
横アーチ、内側縦アーチ及び外側縦アーチは、クッションのように作用し着地したときの衝撃を吸収分散すると共に、ばねのように作用し人体の重心の移動をスムーズにして地面の蹴り出しをサポートする。
【0017】
スポーツ競技や身体表現などのパフォーマンスの向上には、体幹をしなやかに保つと共に無理に重力に逆らわずして重力を効果的に利用するしなやかな重心移動が重要であるとされている。本発明者らは、しなやかな重心移動には、内側縦アーチ及び外側縦アーチを最適に活かすことが重要なポイントであることを見出した。本実施形態に係るソール構造100では、以下に示す構成により、内側縦アーチ及び外側縦アーチを最適に活かすことが可能になる。これにより、身体の重心をしなやかに移動させることができる。
【0018】
図2(a)は、ソール構造100を備える履物1の側面図であり、
図2(b)は、履物1の上面図である。本実施形態では、履物1が草履である場合について説明するが、履物1は、靴であってもよい。
【0019】
なお、
図2では、右足用の履物1のみを図示しているが、実際には、右足用の履物1と左足用の履物とが存在する。左足用の履物の構成は
図2に示される右足用の履物1の構成と略同一であるため、ここでは左足用の履物の図示を省略する。また、
図2(a)において、足の骨とソール構造100との位置関係を明確にするために、足の骨を併記している。
【0020】
図2に示すように、履物1は、ソール構造100と、紐上に形成され幅方向にソール構造100に渡された横緒2と、横緒2からソール構造100における爪先側に延びる前緒3と、を有している。前緒3を第一趾と第二趾との間に通し横緒2を足の甲にかけることにより、履物1が足に装着される。
【0021】
ソール構造100は、足の裏から身体の体重を受けて身体を支える受け台10と、受け台10に下方に突出して設けられた第1の歯20と、第1の歯20よりも爪先側に設けられた第2の歯30と、を備えている。第1の歯20及び第2の歯30は、幅方向に延び、長さ方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0022】
受け台10は、JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータの硬度が20以上90以下の材料から形成されている。例えば、受け台10は、ゴム材又はコルク材からなる。そのため、体重が受け台10に作用した状態において、受け台10は、第1の歯20及び第2の歯30によって上方に隆起する。受け台10は、単一の材料に形成されている形態に限られず、例えば、ゴム材からなる第1層と、コルク材からなる第2層と、を有していてもよい。
【0023】
第1の歯20及び第2の歯30には、例えば木片を用いることができる。第1の歯20及び第2の歯30は、例えば接着剤を用いて受け台10に固定されている。
【0024】
第1の歯20は、履物1を履いた足が平地面に着地した状態において距骨の下方であって距骨よりも踵側に出ない位置に配置されている。そのため、受け台10は、足裏をショパール関節から踵側に向かうにつれ平地面に近づくように平地面に対して傾斜させる。したがって、外側縦アーチと内側縦アーチにおける踵側の立ち上がりを受け台10によって維持することができる。
【0025】
第2の歯30は、履物1を履いた足が平地面に着地した状態において中足骨の下方であって中足骨(より具体的には第五趾の中足骨)よりも爪先側に出ない位置に配置されている。そのため、受け台10は、足裏をリスフラン関節から爪先側に向かうにつれ平地面に近づくように平地面に対して傾斜させる。したがって、外側縦アーチと内側縦アーチにおける爪先側の立ち上がりを受け台10によって維持することができる。
【0026】
また、第1の歯20は、距骨の下方であって距骨よりも爪先側に出ない位置に配置されており、第2の歯30は、中足骨の下方であって中足骨(より具体的には第一趾の中足骨)よりも踵側に出ない位置に配置されている。そのため、受け台10は、第1の歯20と第2の歯30との間で平坦になるか、自重により下がる。したがって、ショパール関節及びリスフラン関節における骨の可動が受け台10によって妨げられることを防止することができ、内側縦アーチ及び外側縦アーチを最適に活かすことが可能になる。これにより、身体の重心をしなやかに移動させることができる。
【0027】
なお、発明者らは、複数人における距骨の位置を調査した。その結果、距骨の位置は個人差により若干異なるが、踵から爪先までの長さを100とすると、調査対象の95%において、踵から爪先側に12.3だけ離れた位置と、踵から爪先側に31.5だけ離れた位置と、の間の範囲に距骨が存在していた。この結果によれば、受け台10における踵側端部から爪先側に12.3だけ離れた位置と、受け台10における踵側端部から爪先側に31.5だけ離れた位置と、の間の範囲に第1の歯20を配置することにより、第1の歯20を距骨の下方であって距骨よりも踵側及び爪先側に出ない位置に第1の歯20を配置することができる。
【0028】
また、発明者らは、距骨と同様に、複数人における中足骨の位置を調査した。その結果、個人差にもよるが、踵から爪先までの長さを100とすると、調査対象の95%において、中足骨は、爪先から踵側に27.6だけ離れた位置と、爪先から踵側に49.5だけ離れた位置と、の間の範囲に位置していた。この結果によれば、受け台10における爪先側の端部から踵側に27.6だけ離れた位置と、受け台10における爪先側の端部から踵側に49.5だけ離れた位置と、の間の範囲に第2の歯30を配置することにより、第2の歯30を中足骨の下方であって中足骨よりも踵側及び爪先側に出ない位置に第2の歯30を配置することができる。
【0029】
ソール構造100は、第1の歯20及び第2の歯30を間に挟んで受け台10に連結される接地台40を更に備えている。接地台40は、履物1を装着した足が平地面に着地した状態において地面に接触する。接地台40は、例えば接着剤を用いて第1の歯20及び第2の歯30に固定されている。
【0030】
接地台40は、受け台10と同様に、JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータの硬度が20以上90以下の材料から形成されている。例えば、接地台40は、ゴム材又はコルク材からなる。接地台40は、単一の材料に形成されている形態に限られず、例えば、ゴム材からなる第1層と、コルク材からなる第2層と、を有していてもよい。
【0031】
人間の足は、歩く又は走るときには、踵から着地し、爪先に向かって着地面を拡大して足裏の全体が着地する(着地動作)。その後、踵から離地し、爪先に向かって着地面を縮小して爪先で地面を蹴る(離地動作)。
【0032】
ソール構造100では、受け台10及び接地台40の硬度が20度以上90度以下であるため、着地動作及び離地動作において、受け台10及び接地台40は、地面に向かって凸となるように湾曲する。その結果、接地台40は、復元力を発揮し、着地動作において足裏の全体が着地するまでの足の挙動をサポートすると共に、離地動作において爪先で地面を蹴るまでの足の挙動をサポートする。したがって、身体の重心をよりしなやかに移動させることができる。
【0033】
横緒2は、第1の歯20と第2の歯30との間を通って接地台40に達しており、前緒3は、第2の歯30よりも爪先側を通って接地台40に達している。そのため、着地動作及び離地動作において、接地台40における第1の歯20と第2の歯30との間の領域が横緒2により引っ張られ、接地台40における第2の歯30よりも爪先側の領域が前緒3により引っ張られる。したがって、接地台40を、着地動作及び離地動作における足の挙動に合わせて湾曲させることができ、身体の重心をよりしなやかに移動させることができる。
【0034】
横緒2には例えば結び目が形成されており、横緒2が接地台40から抜けないようになっている。
【0035】
なお、
図2に示す例では、第1の歯20と第2の歯30は、断面が半円に形成され、地面に向かって凸となるように配置されているが、
図3に示すように、第1の歯20と第2の歯30は、地面とは反対側(足側)に向かって凸となるように配置されていてもよい。また、第1の歯20と第2の歯30は、断面が半円に形成された形態に限られず、断面が四角又は三角等の形状であってもよい。
【0036】
また、
図2及び
図3に示す例では、ソール構造100,101は、接地台40を備えているが、本発明は、接地台40を備えておらず第1の歯20と第2の歯30が地面に接地する形態であってもよい。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0038】
1・・・履物
2・・・横緒
3・・・前緒
100,101・・・ソール構造
10・・・受け台
20・・・第1の歯
30・・・第2の歯
40・・・接地第
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
請求項2に記載のソール構造と、
紐状に形成され幅方向に前記ソール構造に渡された横緒と、
前記横緒から前記ソール構造における爪先側に延びる前緒と、を備え、
前記横緒は、前記第1の歯と前記第2の歯との間を通って前記接地台に達しており、
前記前緒は、前記第2の歯よりも爪先側を通って前記接地台に達している、
履物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図2に示すように、履物1は、ソール構造100と、紐
状に形成され幅方向にソール構造100に渡された横緒2と、横緒2からソール構造100における爪先側に延びる前緒3と、を有している。前緒3を第一趾と第二趾との間に通し横緒2を足の甲にかけることにより、履物1が足に装着される。