(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072718
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】ソレノイドコイルユニット及び非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20230518BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20230518BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20230518BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20230518BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/255
H01F27/24 E
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185322
(22)【出願日】2021-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】522355547
【氏名又は名称】Wireless Power Transfer 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165331
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幹根
(57)【要約】
【課題】位置ずれに対するロバスト性、高い給電効率、軽量化の全てを高い次元で成立させるソレノイドコイルユニットと非接触給電装置を提供する。
【解決手段】ソレノイドコイルユニットは、他のソレノイドコイルに対して、中心軸方向に直交する離間方向に所定の離間距離を隔てて並列に設置されるソレノイドコイルと、前記ソレノイドコイルが巻回された棒状コアと、を備える。前記棒状コアは、前記ソレノイドコイルが巻回された中央部と、前記棒状コアの両端に位置し、前記ソレノイドコイルの両端から延び出ている端部と、を有し、前記中央部の幅に対する長さの比率は2以上であり、前記棒状コアの中心軸に直交する断面は、矩形形状または円形形状の一部を欠損させた形状を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のソレノイドコイルユニットと非接触で電力の授受を行うソレノイドコイルユニットであって、
前記他のソレノイドコイルユニットが備える他のソレノイドコイルに対して、中心軸方向に直交する離間方向に所定の離間距離を隔てて並列に設置されるソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルが巻回され、前記ソレノイドコイルの前記中心軸方向の長さより長い棒状コアと、
を備え、
前記棒状コアは、前記ソレノイドコイルが巻回された中央部と、前記ソレノイドコイルの両端から延び出ている端部と、を有し、
前記中央部の幅に対する長さの比率は2以上であり、
前記ソレノイドコイルの前記中心軸方向の長さは、前記離間距離の略2倍であり、
前記棒状コアの中心軸に直交する断面は、矩形形状または円形形状の一部を欠損させた形状を有することを特徴とする、ソレノイドコイルユニット。
【請求項2】
前記棒状コアの前記断面は、矩形形状の少なくとも1つの角部または外周辺の一部を切り欠いた形状、または、円形形状の外周縁の一部を切り欠いた形状を有する、請求項1に記載のソレノイドコイルユニット。
【請求項3】
前記棒状コアの前記断面は、内部の一部を欠損させた孔部を有する矩形形状または円形形状を有する、請求項1または2に記載のソレノイドコイルユニット。
【請求項4】
前記棒状コアの前記断面は、幅方向または厚み方向に対称な形状、または、前記棒状コアの中心軸を中心とする点対称な形状を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のソレノイドコイルユニット。
【請求項5】
前記端部には、前記中央部よりも厚みが小さく、当該端部から張り出している板状の追加磁極部が設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のソレノイドコイルユニット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のソレノイドコイルユニットである第1のソレノイドコイルユニットと、
前記他のソレノイドコイルユニットである第2のソレノイドコイルユニットと、
を備え、
前記第1と第2のソレノイドコイルユニットの間において相互誘導を生じさせて電力を授受する、非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁界結合によって給電側から受電側に非接触で電力を伝送する非接触給電装置及び、非接触給電装置に用いるソレノイドコイルユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスや電動モビリティ等に対し、ケーブルを用いることなく電力を伝送する、非接触給電装置が注目されている。具体的には、受電側ユニットを搭載した電気自動車などに対し、駐車場に設置された給電側ユニットを用いて非接触で充電したり、或いは走行中に道路側に設置された給電側ユニットを用いて非接触で充電したりすることが可能となる技術である。
【0003】
非接触給電装置に用いられるコイルユニットの方式は、大きく、
図19(A)に示すサーキュラー型と、
図19(B)に示すソレノイド型に分けることができる。
図19(A)に示すように、サーキュラーコイルユニット100Aは円盤状のフェライトコア102Aの片面に同心円上にコイル101Aを巻いた構成を有しており、片側巻方式とも呼ばれる。
図19(B)に示すように、ソレノイドコイルユニット100Bは平板状のフェライトコア102Bにコイル101Bを巻回した構成を有しており、両側巻方式とも呼ばれる。
【0004】
いずれの方式においても、電力を伝送する効率の低下は損失が増えるのみでなく発熱の原因となることから、非接触給電装置としての伝送効率を上げることは極めて重要な課題となる。伝送効率を上げるためには、給電側ユニットと受電側ユニットの間の結合係数kを高くし、コイルのQ値を大きくすることが重要な事項であることが知られている。
【0005】
一般的には、サーキュラーコイルユニットは結合係数kが高い反面、給電側ユニットと受電側ユニットの位置ずれに対する許容量が小さい特性がある。一方、ソレノイドコイルユニットは背面に漏れ磁束があり結合係数が若干低くなるものの、位置ずれに対する許容量が大きい特性があるといわれている(特許文献1)。給電側ユニットと受電側ユニットの位置ずれに対する許容量は「ロバスト性」と呼ばれ、非接触給電の社会実装に向けた大きな課題となっている。
【0006】
ハイブリッドカーや電気自動車などの電動モビリティへの非接触給電技術に関しては、将来的には走行中の給電を可能とする技術が必要になると考えられている。走行中給電を想定した場合は、モビリティの前後の移動方向の位置ずれと前後の移動方向に直交する移動方向である横方向への位置ずれの両方に対して、ロバスト性を高く確保することが求められる。
【0007】
図20に、非特許文献1の
図4.2に基づく、H型コアを用いたソレノイド型とサーキュラー型の各コイルユニットにおけるロバスト性を示すグラフを示す。グラフHx,Hyはそれぞれ、ソレノイド型のコイルユニットについてのx方向およびy方向への位置ずれによる結合係数の変化を示しており、グラフCrは、サーキュラー型のコイルユニットの位置ずれによる結合係数の変化を示している。横軸に示す位置ずれ量が大きくなると、サーキュラーコイルユニットは急激に結合係数が減少して電力伝送ができない状態になる。H型コアを用いたソレノイドコイルユニットの場合は、ソレノイドコイルの特性により、サーキュラーコイルユニットよりも位置ずれに対するロバスト性は高い。しかしながら、H型コアの形状の特性上、位置ずれの方向や位置ずれ量によっては、結合係数が著しく低下する場合があり、依然として改良の余地があると言える。
【0008】
また、電動モビリティへの非接触給電を考えた場合、給電側コイルユニットと受電側コイルユニットとの間には車種に応じて100mm~250mm程度のギャップが存在することになる。このギャップに対応できるコイルユニットを具体的に設計すると、従来のサーキュラー型やソレノイド型のコイルユニットでは重くなりすぎる問題がある。この点、特許文献1には、コイルユニットの軽量化を目的として、平板状コアのうちコイルが巻回されている被コイル部の幅を、コイルが巻回されていない磁極部の幅より細くしたH型コアを採用したソレノイドコイルユニットが開示されている。
【0009】
特許文献1に開示されているH型コアを用いると、ソレノイドコイルユニットは、従来の平板状のものよりは軽量化することが可能である。しかしながら、非特許文献2に開示されている実験条件の詳細によると、コイル間のギャップは70mm~100mm程度で設計されている。これを、給電性能を維持したまま200mm程度のギャップに対応させるためには、ソレノイドコイルユニットが大型化する可能性があり、結果として、H型コアの実用化にはさらなる軽量化が必要となる可能性がある。実際、これまでの実証実験で用いられたコイルユニットの重量は、出力に応じて数十kgから100kgの重さになっており、モビリティに搭載することは現実的ではないことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】山田潤 学位論文「電気自動車用走行中非接触給電に適したコイル形状と共振回路方式の基礎的検討」2018年3月 埼玉大学大学院理工学研究科
【非特許文献2】千明、長塚、金子、阿部、保田、鈴木 「新コア構造による電気自動車用非接触給電トランスの小型軽量化」(SPC-11-048)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、特許文献1に開示されているH型コアを採用したソレノイドコイルユニットを用いることで、一定の軽量化とロバスト性を実現することができる。しかしながら、これから始まる非接触給電の本格的な社会実装と、走行中給電を見据えたコイル方式の選択を考慮すると、結合係数、ロバスト性、軽量化の全てを満たす状態には達しているとは言ない。
【0013】
本開示の目的は、非接触給電の本格的な社会実装に向けて、「結合係数」、「ロバスト性」、「軽量化」の全てを高い次元で成立させるソレノイドコイルユニットと当該ソレノイドコイルユニットを用いた非接触給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するための第1の形態は、他のソレノイドコイルユニットと非接触で電力の授受を行うソレノイドコイルユニットとして提供される。この形態のソレノイドコイルユニットは、前記他のソレノイドコイルユニットが備える他のソレノイドコイルに対して、中心軸方向に直交する離間方向に所定の離間距離を隔てて並列に設置されるソレノイドコイルと、前記ソレノイドコイルが巻回され、前記ソレノイドコイルの前記中心軸方向の長さより長い棒状コアと、を備える。前記棒状コアは、前記ソレノイドコイルが巻回された中央部と、前記ソレノイドコイルの両端から延び出ている端部と、を有し、前記中央部の幅に対する長さの比率は2以上であり、前記ソレノイドコイルの前記中心軸方向の長さは、前記離間距離の略2倍であり、前記棒状コアの中心軸に直交する断面は、矩形形状または円形形状の一部を欠損させた形状を有する。
【0015】
第2の形態においては、前記棒状コアの前記断面は、矩形形状の少なくとも1つの角部または外周辺の一部を切り欠いた形状、または、円形形状の外周縁の一部を切り欠いた形状を有してよい。
【0016】
第3の形態においては、内部の一部を欠損させた孔部を有する矩形形状または円形形状を有してよい。
【0017】
第4の形態においては、前記棒状コアの前記断面は、幅方向または厚み方向に対称な形状、または、前記棒状コアの中心軸を中心とする点対称な形状を有してよい。
【0018】
第5の形態においては、前記端部には、前記中央部よりも厚みが小さく、当該端部から張り出している板状の追加磁極部が設けられていてよい。
【0019】
第6の形態は、非接触給電装置として提供される。この形態の非接触給電装置は、上記のいずれかの形態のソレノイドコイルユニットである第1のソレノイドコイルユニットと、前記他のソレノイドコイルユニットである第2のソレノイドコイルユニットと、を備え、前記第1と第2のソレノイドコイルユニットの間において相互誘導を生じさせて電力を授受する。
【発明の効果】
【0020】
上記第1の形態のソレノイドコイルユニットによれば、他のソレノイドコイルユニットとの間の離間距離が増大しても、棒状コアを離間距離に応じた長さで細長く構成できるため、重量の増大を抑制しながら高い結合係数を得ることができる。また、そのような細長い棒状コアを備えているソレノイドコイルユニットであれば、従来の円盤状コア、平板状コア、H型コア等を用いた場合よりも位置ずれによる結合係数の低下を抑制でき、高いロバスト性を実現することができる。また、上記第1の形態のソレノイドコイルユニットによれば、棒状コアの一部に欠損させた部位を設けることにより、結合係数の低下を抑制しながら、棒状コアを軽量化でき、ソレノイドコイルユニットを軽量化することができる。よって、上記第1の形態のソレノイドコイルユニットによれば、結合係数、ロバスト性、軽量化の全てを高い次元で成立させることが可能である。
【0021】
上記第2の形態のソレノイドコイルユニットによれば、棒状コアの一部を切り欠くことにより、棒状コアの断面を矩形形状や円形形状で構成した場合に近い結合係数を得ながら、軽量化を実現することができる。
【0022】
上記第3の形態のソレノイドコイルユニットによれば、棒状コアの内部を中空な部位を形成することにより、棒状コアを内部が緻密な矩形柱状や円形柱状に構成した場合に近い結合係数を得ながら、軽量化を実現することができる。
【0023】
上記第4の形態のソレノイドコイルユニットによれば、棒状コアに一部を欠損させた部位を設けたことによる結合係数の低下をさらに抑制することができる。
【0024】
上記第5の形態のソレノイドコイルによれば、追加磁極部を設けることにより、棒状コアの中央部を小型化した場合でも、結合係数を高めることができる。また、追加磁極部は厚みを小さくすることにより軽量化が可能であるため、ソレノイドコイルの重量の増加を抑制しながら結合係数を効果的に高めることが可能である。また、追加磁極部が設けられていれば、他のソレノイドコイルユニットに対する位置ずれによる結合係数の低下を、さらに抑制することができる。よって、結合係数、ロバスト性、軽量化の全てを、より高い次元で成立させることが可能である。
【0025】
上記第6の形態の非接触給電装置によれば、上記形態のソレノイドコイルユニットを備えているため、結合係数、ロバスト性、軽量化の全てを高い次元で成立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係るソレノイドコイルユニットの概略正面図、概略平面図、および、概略側面図。
【
図2】棒状コアの中心軸に直交する断面を示す概略断面図。
【
図3】第1実施形態に係るソレノイドコイルユニットを用いた非接触給電装置の構成を示す模式図。
【
図4】一対のソレノイドコイルユニットで生じる磁束を説明するための模式図。
【
図5】ソレノイドコイルの長さと結合係数に関するグラフを示す説明図。
【
図6】透磁率と結合係数との関係を表すグラフを示す説明図。
【
図7】棒状コアの断面積と結合係数との関係を表すグラフを示す説明図。
【
図8】棒状コアの断面積に対する結合係数の割合と棒状コアの断面積との関係を表すグラフを示す説明図。
【
図9】棒状コアの幅と結合係数との関係を表すグラフを示す説明図。
【
図10】第2実施形態に係るソレノイドコイルユニットの概略正面図、概略平面図、および、概略側面図。
【
図11】第2実施形態に係るソレノイドコイルユニットを用いた非接触給電装置の構成を示す模式図。
【
図12】追加磁極部の寸法と結合係数との関係を表すグラフを示す説明図。
【
図13】追加磁極部の面積と結合係数との関係を表すグラフを示す説明図。
【
図14】離間距離と結合係数の関係を表すグラフを示す説明図。
【
図15】一対のソレノイドコイルユニットが幅方向に位置ずれしている状態を示す模式図。
【
図16】一対のソレノイドコイルユニットが中心軸方向に位置ずれしている状態を示す模式図。
【
図17】位置ずれ量と結合係数との関係を表すグラフを示す説明図。
【
図18】棒状コアの種々の構成例を説明するための説明図。
【
図19】従来の非接触給電装置に用いられるサーキュラー型とソレノイド型のコイルユニットの概略正面図と概略平面図。
【
図20】従来のコイルユニットにおけるロバスト性を表すグラフを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示のソレノイドコイルユニット及び非接触給電装置の実施形態を、図を参照して詳細に説明する。
【0028】
1.第1実施形態:
図1に第1実施形態に係るソレノイドコイルユニット50の概略正面図、概略平面図、および、概略側面図を示す。ソレノイドコイルユニット50は、ソレノイドコイル10を備える。
【0029】
図1には、ソレノイドコイル10の中心軸CXを一点鎖線で図示してある。以下、中心軸CXに沿った方向を単に「中心軸方向」とも呼ぶ。
図1には、中心軸方向に相当するy方向を示す矢印と、y方向に直交するx方向を示す矢印と、x方向およびy方向とに直交するz方向を示す矢印と、を図示してある。x方向は、中心軸方向と後述する離間方向とに直交する「幅方向」に相当し、z方向は後述する「離間方向」および棒状コア20の「厚み方向」に相当する。以下において、ソレノイドコイルユニットの寸法に関して、「長さ」と言うときは、y方向における寸法を意味し、「幅」と言うときは、x方向における寸法を意味し、「厚み」というときは、z方向における寸法を意味する。
【0030】
ソレノイドコイル10は絶縁被覆された電線を螺旋状に密に巻いたもので、電線に電流を流すことによって中心軸方向に磁場を発生させる。磁束の乱れや漏れを極力低減するため、電線は均一かつ規則的に巻回されていることが望ましい。ソレノイドコイル10の長さはLである。なお、図では、電線一本一本の表現は省略している。ソレノイドコイル10における電線の巻回方向は、x方向に沿った方向である。
【0031】
ソレノイドコイルユニット50は、さらに、ソレノイドコイル10が巻回されている棒状コア20を備える。棒状コア20の中心軸は、ソレノイドコイル10の中心軸CXに一致し、y方向は、棒状コア20の長手方向に相当する。以下、棒状コア20の中心軸についても「中心軸CX」と呼ぶ。棒状コア20は、例えば、フェライトなどの強磁性体によって構成される。詳細は後述するが、本実施形態では、棒状コア20の中心軸CXに直交する断面は、矩形形状の一部を欠損させた形状を有している。
【0032】
棒状コア20はソレノイドコイルの長さLより長く作られている。棒状コア20は、ソレノイドコイル10に巻回されている中央部21と、棒状コア20の両端に位置し、ソレノイドコイル10の両端から延び出ている端部22と、を有する。ソレノイドコイル10の長さはソレノイドコイルの長さLと一致する。以下、中央部21の長さについても「L」と表記する。棒状コア20の一対の端部22は、ソレノイドコイルユニット50の磁極として機能する。
【0033】
なお、
図1に示すように、棒状コア20の厚みtは、中央部21の長さL、および、棒状コア20の幅wよりも小さい。棒状コア20の厚みは、特に限定されることはなく、例えば、中央部21の幅以上であってもよい。
【0034】
図2は、
図1に示す2-2切断における棒状コア20の概略断面図であり、棒状コア20の中心軸CXに直交する断面を示している。以下、棒状コア20の断面と言うときは、棒状コア20の中心軸CXに直交する断面を意味する。本実施形態では、棒状コア20では、中央部21の任意の位置における断面はいずれも、
図2に示す断面形状を有している。本実施形態の棒状コア20の断面は、上記のように、矩形形状の一部を欠損させた形状を有している。
【0035】
ここで、「矩形形状」とは、直角四辺形形状に相当し、正方形形状と長方形形状とを含む概念である。また、ある図形形状の「一部を欠損させた形状」とは、少なくとも当該図形形状の全体の50%以下の領域を当該図形から削除または省略したのに相当する形状を意味する。
【0036】
本実施形態では、棒状コア20の断面は、矩形形状の少なくとも1つの角部を切り欠いた形状を有する。より具体的には、本実施形態の棒状コア20の断面は、幅方向を長手方向とする略長方形形状の幅方向に並ぶ2つの角部を切り欠いた略六角形形状を有している。
図2では、角部Cを破線で図示してある。
【0037】
棒状コア20は、第1面25aと、第2面25bと、第3面25cと、第4面25dと、2つの傾斜面26a,26bと、を有している。第1面25aと第2面25bは、x方向およびy方向に平行であり、中心軸CXを挟んでz方向に互いに対向する位置にある。第3面25cと第4面25dは、y方向およびz方向に平行であり、中心軸CXを挟んでx方向に互いに対向する位置にある。第3面25cと第4面25dとは、第2面25bに隣り合う位置にあり、第2面25bに直交している。
【0038】
第1傾斜面26aは、第2面25bと第3面25cとの間にあり、x方向およびz方向に対して傾斜している。第2傾斜面26bは、第2面25bと第4面25dとの間にあり、x方向およびz方向に対して傾斜している。2つの傾斜面26a,26bが形成されている部位は、略長方形形状の断面の角部Cを切り欠いて欠損させた部位に相当する。以下、棒状コア20において2つの傾斜面26a,26bが形成された部位を「切欠部28」とも呼ぶ。本実施形態の切欠部28は、角部を中心軸方向に沿って切り欠いた部位に相当する。
【0039】
本明細書において「切欠部」は、全体から一部を切り欠いたような形状を有している部位を意味しており、全体から一部を欠損させた「欠損部」に相当する。ただし、「切欠部」は、実際の切削加工によって形成される必要はない。「切欠部」には、角部や曲面を切り欠いたような平坦面や、平面や曲面の一部を凹ませたような溝部などの凹部が含まれる。平坦面には平面のみならず曲面も含まれる。棒状コア20に切欠部28を設けている理由については後述する。
【0040】
本実施形態の棒状コア20の断面は、幅方向に対称な形状を有している。また、本実施形態の棒状コア20の断面の断面積は、切欠部28を設けていない場合の長方形形状の断面積の0.7倍以下である。
【0041】
第1面25aの幅wは、上述した棒状コア20の幅wに相当する。第2面25bの幅waは、第1面25aの幅wよりも小さい。第1面25aの幅wは、2つの切欠部28の幅wbと第2面25bの幅waの合計に相当する(w=2×wb+wa)。第1面25aの幅waに対する幅wbの割合は0.1以上0.5未満であることが好ましい(0.1≦wb/wa<0.5)。本実施形態では、第1面25aの幅waに対する幅wbの割合は0.3未満である(wb/wa<0.3)。第1面25aの幅waに対する幅wbの割合は、0.2未満(wb/wa<0.2)、あるいは、0.1未満(wb/wa<0.1)であってもよい。他の実施形態では、第1面25aの幅waに対する幅wbの割合は、0.3以上であってもよい(wb/wa≧0.3)。
【0042】
棒状コア20の厚みtは、第3面25cおよび第4面25dのz方向における寸法taと切欠部28のz方向における寸法tbとの合計に相当する(t=ta+tb)。棒状コア20の厚みtに対する寸法tbの割合は、0.1以上0.9以下であることが好ましい(0.1≦tb/ta≦0.9)。本実施形態では、棒状コア20の厚みtに対する寸法tbの割合は、0.5以上である(tb/ta≧0.5)。他の実施形態では、棒状コア20の厚みtに対する寸法tbの割合は、0.5未満であってもよい(tb/ta<0.5)。
【0043】
本実施形態では、棒状コア20の切欠部28は、矩形断面を有する四角柱の直角な角部を中心軸方向に沿って切り欠いて形成された部位に相当する。切欠部28は、製造誤差により棒状コア20の角部が丸められて生じる部位とは異なる。よって、切欠部28の幅wbは、少なくとも、幅wの1%より大きく、切欠部28の寸法tbは棒状コア20の厚みtの1%より大きいとしてよい。
【0044】
図2および
図3は、一対のソレノイドコイルユニット50,50aを所定の離間距離Gの間隔を設けて並列に配置した状態を示す模式図である。
図3には、磁束MFを一点鎖線で図示してある。また、
図3では、ソレノイドコイル10を構成する電線を模式的に図示してある。
【0045】
一対のソレノイドコイルユニット50,50aは、非接触給電装置55を構成しており、ソレノイドコイルユニット50は、離間して配置されている他のソレノイドコイルユニット50aと非接触で電力の授受を行う。以下、本実施形態のソレノイドコイルユニット50を「第1のソレノイドコイルユニット50」とも呼び、他のソレノイドコイルユニット50aを「第2のソレノイドコイルユニット50a」とも呼ぶ。
【0046】
本実施形態では、第2のソレノイドコイルユニット50aは、第1のソレノイドコイルユニット50と同じ構成を有している。第2のソレノイドコイルユニット50aは、第1のソレノイドコイルユニット50が備えているのと同じ構成のソレノイドコイル10、および、棒状コア20を備え、第1のソレノイドコイルユニット50と自己インダクタンスが同じである。
【0047】
非接触給電装置55では、2つのソレノイドコイルユニット50,50aは、離間方向に離間して並列に設置されている。ここでの「離間方向」は、x方向とy方向とに直交するz方向に相当し、棒状コア20の厚み方向に相当する。また、本明細書において「並列」とは、一の直線が他の直線に沿っている状態を意味しており、2つの直線が数学的に厳密に「平行」に配置されている状態と、一の直線が他の直線に対して数°程度の傾斜角を有している状態と、を含む概念である。
【0048】
本実施形態では、
図3に示すように、2つのソレノイドコイルユニット50,50aは、棒状コア20の第1面25a同士がz方向に向き合う姿勢で配置される。なお、2つのソレノイドコイルユニット50,50aの配置姿勢はこれに限定されず、2つのソレノイドコイルユニット50,50aは、棒状コア20の第1面25aと第2面25bとがz方向に向き合う姿勢で配置されてもよい。
【0049】
非接触給電装置55では、第2のソレノイドコイルユニット50aは、離間距離Gを隔てて位置ずれなく設置される。つまり、非接触給電装置55では、離間方向に見たときに、第1のソレノイドコイルユニット50は、第2のソレノイドコイルユニット50aと重なり合う位置に設置される。このような配置にすることで、
図4に示すように、一対のソレノイドコイルユニット50,50aのうち、電流が流された一方のソレノイドコイルユニットで生じた磁束MFの一部が、他方のソレノイドコイルユニットを構成するソレノイドコイル10の棒状コア20を通り、前記一方のソレノイドコイルユニットに戻ることで、相互誘導を生じさせて電力を授受することが可能となる。なお、本明細書において、「結合係数」と言うときは、特に断らない限り、
図3および
図4に示すように、離間方向に離間して並列に配置されている同じ構成の2つのコイルを位置ずれなく設置したときの値である。
【0050】
図5は、2つの同じ構成のソレノイドコイルを、離間距離Gを隔てて並列に配置したときの、離間距離Gに対するソレノイドコイルの長さLと、当該長さLに対する結合係数kと、の関係を示すグラフである。本願発明の発明者は最も効率よく高い結合係数kを得るため、一対のソレノイドコイル間の離間距離Gとソレノイドコイルの長さLとの関係を実験とシミュレーションを用いて精査した。離間距離Gは、非接触給電装置55の用途に応じて決まってくるものであり、ここでは電動モビリティへの非接触給電を想定して200mmを一例として採用している。この場合、
図5に示すように、最も効率よく高い結合係数kを得ることができるソレノイドコイルの長さLは、離間距離Gの略2倍、つまり、L≒2Gであることが明らかとなった。本願発明の発明者の実験例では、G=200mmで、L=400mmとしたときの結合係数kの値は0.088となった。
【0051】
ソレノイドコイルユニットをL<2Gの範囲で設計すると、十分な結合係数kを得ることが難しくなり、L>2Gの範囲で設計すると、ソレノイドコイルユニットが必要以上に大型化して軽量化することが困難となる。なお、
図5に示された関係は、離間距離Gが200mmであるときには限定されない。離間距離Gを、例えば、150mm以上250mm以下の範囲内の任意の値で設定した場合や、180mm以上220mm以下の範囲内の任意の値で設定した場合でも同様の関係が得られる。また、Lの値は2Gの一点に限定されるものではなく、用途や設計に応じた所定の幅が許容されるものであり、一例として10%程度の誤差を許容する。よって、離間距離Gの略2倍であるソレノイドコイルの長さLは、1.8G以上2.2G以下の範囲内で設定されることが許容される。本明細書において、「L≒2G」との表記は、Lが1.8G以上2.2G以下の範囲内の任意の値であることを意味している。
【0052】
本実施形態では、ソレノイドコイル10の長さLがL≒2Gの条件を満たすように構成されている。これにより、結合係数kを高く維持しながら、棒状コア20を、軽量化が可能な形状に設計することが可能となる。また、本実施形態のソレノイドコイルユニット50は、棒状コア20の中央部21の長さLは、幅wの2倍以上、つまり、L≧2wに設計される。このようにすれば、棒状コア20を、幅wが小さい細長い形状とできるため、ソレノイドコイルユニット50の重量の増大を抑制しながら結合係数kが所望の高い値になるように、ソレノイドコイル10の長さLを大きくすることができる。
【0053】
ソレノイドコイルユニット50では、棒状コア20の中心軸方向における中央部21の長さLは、中央部21の幅wに対する比率が3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。また、中央部21の長さLは、中央部21の幅wに対する比率が8以上、つまり、L≧8wとすることも可能である。このようにすれば、ソレノイドコイルユニット50をより細長い棒状の形状とすることができ、ソレノイドコイルユニット50の重量の増大を抑制しながら、その結合係数kをさらに高めることができる。
【0054】
なお、軽量化のみの観点では棒状コアは細いほど効果があるが、実際には、機械的強度や巻回する絶縁電線の仕様、磁束密度の飽和を回避できる程度の断面積の確保などを踏まえてL/wの最大値が決定されることが好ましい。
【0055】
図6に、非接触給電装置55において棒状コア20の透磁率を変更したときの結合係数kを示すグラフを示す。高い結合係数kを得るためには、棒状コア20は、透磁率が1500H/m以上の材料で構成されることが好ましく、透磁率が2000H/m以上の材料で構成されることがより好ましい。棒状コア20は、透磁率が2500H/m以上の材料で構成されることがさらに好ましい。また、棒状コア20は、透磁率が3000H/mより大きい材料で構成されたとしても結合係数kが著しく高くなることは期待できない。よって、棒状コア20は、透磁率が、3000H/m以下の材料で構成されていることが好ましい。
【0056】
図7に、本実施形態の非接触給電装置55と同様な構成を有する非接触給電装置における棒状コアの断面積Sと結合係数kとの関係を表すグラフを示す。
図8に、棒状コアの断面積Sに対する結合係数kの割合k/Sと断面積Sとの関係を表すグラフを示す。
図7および
図8のグラフは、本願発明者が研究を重ねて独自に得たものである。
図7および
図8のグラフでの結合係数kは、非接触給電装置を構成する2つのソレノイドコイルユニットの間の離間距離Gを200mmとしたときの値である。
【0057】
図7および
図8のグラフを得るために、本願発明者は、種々の寸法の断面形状を有する棒状コアについて結合係数kを測定した。測定対象とした棒状コアには、切欠部28に相当する部位を有していない略長方形形状の断面を有する構成のものと、本実施形態の棒状コア20と同様に切欠部28に相当する部位を有するものとが含まれる。棒状コアの断面積Sは、中心軸方向に直交する断面における中央部の断面積に相当する。
図7に示すように、棒状コアの断面積Sが大きいほど結合係数kを高めることができる。ただし、結合係数kが0.17以上となる断面積s1以上の領域では、断面積Sに対する結合係数kの増加率は次第に小さくなっていく。結合係数kが0.18以上となる断面積s2以上の領域では、結合係数kの増加率はさらに小さくなる。また、結合係数kが0.19以上となる断面積s3以上の領域では、結合係数kの増加率はさらに小さくなり、ほぼ一定となる。このように、0.17以上の高い結合係数kが得られる領域では、断面積Sを大きくしたとしても、結合係数kが増加しにくい。こうした領域では、棒状コアの断面積Sを小さくして、ソレノイドコイルユニットを軽量化したときの結合係数kの低下がわずかで済む。よって、ソレノイドコイルユニットを軽量化しながら高い結合係数を得ることが可能である。
【0058】
図9に、棒状コア20の幅に対する結合係数kの変化を示すグラフを示す。
図9のグラフには、切欠部28を有する棒状コア20を用いた場合の実施例のグラフG1と、切欠部28を有していない棒状コアを用いた場合の比較例のグラフG2とが示されている。実施例と比較例のいずれにおいても、非接触給電装置は、
図3に示したのと同様に構成し、離間距離Gを200mmとした。実施例のグラフG1は、切欠部28の寸法wb,tbを一定とし、幅wを変更したときの結合係数kの変化を示している。一方、比較例のグラフG2は、切欠部28を設けない略長方形形状の断面を有する棒状コアの幅を変更したときの結合係数kの変化を示している。
【0059】
図9のグラフG1,G2に示すように、切欠部28を有していても、有していなくても、結合係数kに著しく大きな差は生じていない。特に、結合係数kが0.18以上のときに、その差は小さく、結合係数kが0.19以上のときに、その差はさらに小さくなる。このように、切欠部28を有する棒状コア20を備えている本実施形態のソレノイドコイルユニット50によれば、結合係数kの低下を抑制しながら軽量化することが可能である。非接触給電装置55をモビリティ等へ搭載することを考慮した場合、切欠部28を設けて棒状コア20を軽量化したことによって得られる効果は非常に大きい。
【0060】
図9のグラフG1が得られた実施例の棒状コア20では、切欠部28の寸法wb,tbは一定であるため、幅wが大きくなるほど、切欠部28を設けていない場合の断面積SBに対する切欠部28を設けた場合の断面積SAの割合SA/SBが大きくなる。SA/SBは、0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。SA/SBは、0.9以上であることがさらに好ましい。SA/SBは、0.95未満であることが好ましい。SA/SBをこうした範囲で設定することにより、高い結合係数kを得ることが容易にできる。
【0061】
図2を参照する。上述したように、本実施形態の棒状コア20の断面形状は、矩形形状の角部Cを切り欠いた形状に相当する。こうした矩形柱形状の角部を削いだ簡素な構成の棒状コア20であれば、製造が容易であり、ソレノイドコイルユニット50の製造コストの低減が可能である。
【0062】
本実施形態の棒状コア20は、幅方向に並ぶ2つの角部Cを切り欠いた構成を有しており、幅方向に対称な形状、つまり、中心軸CXに直交する幅方向の中心線を挟んで対称な形状を有している。本願発明の発明者の知見によれば、棒状コア20は、その断面が幅方向または厚み方向に対称な形状、または、中心軸CXを中心として点対称な形状を有している構成の方が、高い結合係数kを得ることが可能である。よって、幅方向に対称な形状の断面を有する本実施形態の棒状コア20によれば、切欠部28を設けて断面積が低下したことによる結合係数kの低下が、さらに抑制される。
【0063】
なお、他の実施形態では、棒状コア20の断面が厚み方向に対称な形状となるように、厚み方向に並ぶ2つの角部Cを同じ寸法で切り欠いて2つの切欠部28を形成してもよいし、4つの全ての角部Cを同じ寸法で切り欠いて4つの切欠部28を形成してもよい。また、他の実施形態では、棒状コア20の断面が中心軸CXを中心とする点対称な形状となるように、中心軸CXを挟んで対角に位置する2つの角部Cを同じ寸法で切り欠いて、2つの切欠部28を形成していてもよいし、4つの角部Cを同じ寸法で切り欠いて、4つの切欠部28を形成していてもよい。
【0064】
また、他の実施形態では、棒状コア20の断面は、幅方向または厚み方向に対称な形状を有していなくてもよいし、中心軸CXを中心とする点対称な形状を有していなくてもよい。棒状コア20は、任意の3つの角部Cを切り欠いた3つの切欠部28を有する構成であってもよいし、寸法や形状が異なる2以上の切欠部28を有する構成であってもよい。
【0065】
再び、
図7および
図8を参照する。本願発明の発明者は、
図7および
図8のグラフから、棒状コア20では、中央部21の幅wに対する長さLの割合L/wが、2≦L/w≦16の関係を満たしていることが好ましいとの知見を導き出した。この関係が満たされていれば、棒状コア20の断面積Sが小さくなりすぎて、結合係数kが著しく低い値となることを抑制できる。また、棒状コア20の断面積Sが大きくなりすぎて、ソレノイドコイルユニット50の重量が著しく大きい値となることを抑制できる。
【0066】
本実施形態では、ソレノイドコイルユニット50のソレノイドコイル10は、ソレノイド型であるため、
図19(A)に示されているような従来のサーキュラー型のコイルユニットよりも、非接触給電の際のロバスト性が高い。また、ソレノイドコイルユニット50は、従来のソレノイド型のコイルユニットよりも、中心軸方向の長さが大きいため、従来のソレノイド型のコイルユニットよりも、非接触給電の際の中心軸方向への位置ずれに対するロバスト性が高められている。
【0067】
以上のように、本実施形態のソレノイドコイルユニット50、および、非接触給電装置55によれば、結合係数、ロバスト性、軽量化の全てを高い次元で成立させることが可能である。特に、本実施形態のソレノイドコイルユニット50、および、非接触給電装置55によれば、棒状コア20に設けられた欠損部である切欠部28を有することにより、結合係数kの低下を抑制しながら軽量化を実現することが可能である。
【0068】
2.第2実施形態:
図10に第2実施形態にかかるソレノイドコイルユニット50Aの概略正面図、概略平面図、および、概略側面図を示す。第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aの構成は、棒状コア20の2つの端部22のそれぞれに追加磁極部30が設けられている点以外は、第1実施形態で説明したソレノイドコイルユニット50とほぼ同じである。
【0069】
追加磁極部30は、棒状コア20の端部22から張り出し、中央部21よりも厚みが小さい板状の部位として構成されている。第2実施形態では、各端部22の追加磁極部30は同じ形状を有している。第2実施形態では、追加磁極部30は、厚み方向に見たときに略四角形状を有しており、端部22からx方向およびy方向に沿って張り出している。
図10に示すように、第2実施形態では、端部22は、追加磁極部30のx方向における中央に位置しており、中央部21から離れるほどその厚みが小さくなるように構成されている。
【0070】
追加磁極部30の厚みcは一定である。ソレノイドコイルユニット50Aをより軽量に構成する軽量化の観点からは、追加磁極部30の厚みcは、小さいほど好ましい。追加磁極部30の厚みcは、中央部21の厚みtの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることが、より好ましい。追加磁極部30の厚みcは、中央部21の厚みtの1/5以下であることが、さらに好ましい。なお、他の実施形態では、追加磁極部30の厚みcは一定でなくてもよい。追加磁極部30は、例えば、幅方向や長さ方向に連続的に厚みが変化する構成を有していてもよい。この場合には、前述の厚みcは、追加磁極部30の厚みの最大値であるとしてもよい。
【0071】
第2実施形態では、追加磁極部30は、棒状コア20と同じ磁性体材料によって構成され、棒状コア20と一体的に作製される。他の実施形態では、追加磁極部30は、棒状コア20とは別体として構成され、端部22に接合により後付けされてもよい。また、追加磁極部30は、棒状コア20とは異なる種類の磁性体によって構成されてもよい。
【0072】
後述するように、ソレノイドコイルユニット50Aは、追加磁極部30を有していることによって、重量の増加を抑制しながら結合係数kを高め、且つ、位置ずれに対するロバスト性を高める効果を得ることが可能となっている。
【0073】
なお、追加磁極部30の板面の形状は、略四角形状に限定されることはない。他の実施形態では、追加磁極部30の板面の形状は、例えば、三角形形状や、多角形形状、正円形状、楕円形状であってもよい。また、追加磁極部30の板面の形状は、一方の端部22と他方の端部22とで異なっていてもよい。第2実施形態では、追加磁極部30は、端部22から幅方向に張り出しており、追加磁極部30の幅bは、棒状コア20の端部22の幅wより大きい。これに対して、他の実施形態では、追加磁極部30は、端部22から幅方向に張り出すことなく、中心軸方向にのみ張り出していてもよい。また、追加磁極部30は、端部22から中心軸方向に張り出していなくてもよく、幅方向にのみ張り出していてもよい。
【0074】
図11は、第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aを用いた非接触給電装置55Aを示す模式図である。非接触給電装置55Aは、第1のソレノイドコイルユニット50Aと、第2のソレノイドコイルユニット50Aaと、を備える。第2のソレノイドコイルユニット50Aaは、第1のソレノイドコイルユニット50Aと同じ構成を有しており、ソレノイドコイル10と、追加磁極部30が設けられた棒状コア20とを備える。第2のソレノイドコイルユニット50Aaは、第1のソレノイドコイルユニット50Aと自己インダクタンスが同じである。また、追加磁極部30の寸法も同じである。
【0075】
非接触給電装置55Aでは、第1のソレノイドコイルユニット50Aは、相互誘導による非接触給電を行う他のソレノイドコイルユニットである第2のソレノイドコイルユニット50Aaに対して、離間方向に所定の離間距離Gを隔てて並列に設置される。離間方向は、第1実施形態と同様に、z方向に沿った方向である。非接触給電装置55Aでは、第1実施形態の非接触給電装置55と同様に、一対のソレノイドコイルユニット50A,50Aaは、互いに位置ずれすることなく設置されている。この配置では、第1のソレノイドコイルユニット50Aの追加磁極部30と、第2のソレノイドコイルユニット50Aaの追加磁極部30とは、互いの板面が離間方向に面し合うように並列に配置される。
【0076】
図12に、追加磁極部30の寸法と結合係数kとの関係を表すグラフを示す。
図13に、追加磁極部30の面積PSと結合係数kとの関係を表すグラフを示す。
図12および
図13は、本願発明の発明者の実験により得られたものである。
【0077】
この実験での結合係数kは、
図11に示す同じ構成を有する一対のソレノイドコイルユニット50A,50Aaの間において得られた値である。この実験では、追加磁極部30は、長さaと幅bとが等しい略正方形形状の板面を有する構成とした。
図12における追加磁極部30の寸法は、追加磁極部30の幅bに相当する。
図13における追加磁極部30の面積PSは、端部22の側面の面積も含む値であり、追加磁極部30の長さaと幅bとを乗じた値に相当する。つまり、PS=a×bである。
【0078】
図12のグラフは、実線部分が示すように、追加磁極部30が、端部22から張り出しているほど、結合係数kが大きくなることを示している。また、
図13のグラフは、追加磁極部30の面積が大きいほど、結合係数kが大きくなることを示している。
【0079】
ここで、2つのソレノイドコイルユニット50A,50Aaからなる磁気回路における磁気抵抗Rは下記の数式1で表される。数式1が示すように、追加磁極部30の面積PSが大きいほど、磁気抵抗Rは小さくなり、それだけ磁束が大きくなる。これより、追加磁極部30の寸法a,bを大きくし、その面積PSを大きくすれば、結合係数kが大きくなることは明らかである。
【0080】
【0081】
追加磁極部30であれば、その寸法を大きくすることにより、棒状コア20の中央部21の長さLや断面積Sを大きくする場合よりも、結合係数kを高めやすい。また、追加磁極部30は、板状であるため、厚みcを調整することにより軽量に構成することが容易である。よって、第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aであれば、棒状コア20の中央部21の長さLや断面積Sを小さくして軽量化した場合でも、追加磁極部30を設けることにより、結合係数kを高めることが可能になる。つまり、第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aであれば、重量の増大を抑制しながら結合係数kを高めることが、より一層容易にできる。
【0082】
図14に、従来のコイルユニットを用いた非接触給電装置におけるコイルユニット間の離間距離Gと結合係数kとの関係の一例を示すグラフを示す。一点鎖線で示す第1のグラフGPは、
図19(A)に示す従来のサーキュラーコイルユニット100Aにおいて得られる離間距離Gと結合係数kとの関係の一例を示している。二点点鎖線で示す第2のグラフGSは、
図19(B)に示す平板状のフェライトコア102Bを有する従来のソレノイドコイルユニット100Bにおいて得られる離間距離Gと結合係数kとの関係の一例を示している。従来のコイルユニット100A,100Bを用いて非接触給電を行う場合、離間距離Gと結合係数kとは、一般的に、いわゆるトレードオフの関係にあり、離間距離Gを大きくすると、結合係数kが低下する関係にある。
【0083】
ここで、2つのグラフGP,GSの周辺における網点のハッチングが付された領域RAは、従来技術で達成されている給電性能のおおよその範囲を示している。以下、領域RAを「基準領域RA」とも呼ぶ。
図14において、基準領域RAより右上の領域に結合係数kがプロットされる場合には、その非接触給電装置は、従来よりも高い高効率の給電性能を示す構成を有していると言える。逆に、基準領域RAより左下の領域に結合係数kがプロットされる場合には、その非接触給電装置は、従来よりも低効率の給電性能を示す構成を有していると言える。
【0084】
下記の表1を参照する。本願発明の発明者は、第2実施形態の実施例として、
図10のソレノイドコイルユニット50Aの構成において、L=420mm、w=50mm、t=15mm、a=150mm、b=150mm、c=3mmとした、ソレノイドコイルユニット50Aの製造例Eを作製した。
【0085】
【0086】
本願発明の発明者は、その製造例Eを用いて、
図11に示す非接触給電装置55Aを構成し、離間距離G=200mmとしたときの結合係数kを求めた。その結果を、
図14において点PIとしてプロットしてある。この実施例では、結合係数kの値は0.175であり、従来よりも高効率の高い給電性能を有していることがわかる。
【0087】
このように、第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aの構成であれば、追加磁極部30を設けることにより、重量の増加を抑制しながら結合係数kをさらに高くすることが可能である。第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aによれば、離間距離Gが200mmであるときに限らず、離間距離Gを、例えば、150mm以上250mm以下の範囲内の任意の値で設定した場合や、180mm以上220mm以下の範囲内の任意の値で設定した場合でも、結合係数kを0.18以上や、0.2以上にすることができる。
【0088】
次に、上記の製造例Eの重量を、従来の平板状コアとH型コアを用いたソレノイドコイルユニットと比較した。その結果を下記の表2に示す。比較例のソレノイドコイルユニットは、離間距離Gが70mm~100mmと短いときに、製造例Eと同等の結合係数kを示した。つまり、製造例Eは、比較例よりも軽量であり、かつ、比較例よりも高い給電性能を示した。なお、比較例のソレノイドコイルユニットにおいて、離間距離Gを200mmとして同等の結合係数kを実現しようとすると、コイルやコアの長さは2倍、面積としては4倍程度が必要になる可能性があり、その分だけ重量が増加することになる。
【0089】
【0090】
表2から読み取れるように、従来の平板状コアやH型コアを用いたソレノイドコイルユニットに比べ、第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aによれば、給電性能を高めながら、大幅に軽量化することが可能であり、これにより電動モビリティ等への搭載を現実的なものとすることができる。
【0091】
図15および
図16を参照して、ソレノイドコイルユニット50Aのロバスト性について説明する。
図15は、非接触給電装置55Aを構成する一対のソレノイドコイルユニット50A,50Aaがx方向に距離Dxだけ位置ずれした配置状態を模式的に示している。
図16は、一対のソレノイドコイルユニット50A,50Aaがy方向に距離Dyだけ位置ずれした配置状態を模式的に示している。
【0092】
第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aを用いた非接触給電装置55Aであれば、位置ずれが生じた場合であっても、追加磁極部30を有している分だけ、位置ずれによる結合係数kの低下が抑制される。よって、一対のソレノイドコイルユニット50A,50Aaの間の位置ずれに対する高いロバスト性を得ることができる。
【0093】
なお、ソレノイドコイルユニット50Aでは、追加磁極部30の幅bは、中央部21の幅wよりも大きいことが好ましい。これによって、追加磁極部30が幅方向に張り出している分だけ、幅方向の位置ずれに対するロバスト性を高めることができる。また、ソレノイドコイルユニット50Aでは、追加磁極部30は、長さaと幅bとが等しいことが望ましい。これによって、中心軸方向と幅方向の両方の位置ずれに対するロバスト性を高めることができる。
【0094】
以下に、本願発明の発明者が行った、非接触給電装置55Aの位置ずれに対するロバスト性についての実験結果を説明する。この実験では、上述した製造例Eを用いて、離間距離Gを200mmとした非接触給電装置55Aを構成し、x方向およびy方向のそれぞれに、150mmずらして非接触給電を行った。
【0095】
ここで、一般に、インダクタンスLは数式2によって表現される。
図15や
図16のように位置ずれが生じた場合は、磁極同士が離間方向に重なる面積Sの減少と磁路長lの増加により、インダクタンスLは減少することになる。この実験例では電気回路に用いたコンデンサの静電容量Cは一定であることから、数式3に基づいてインダクタンスLが減少した分、共振周波数fを増加させることで共振が維持されることになる。
【0096】
【0097】
表3に実験の結果を示す。幅方向へ150mmの位置ずれが生じた場合は、92.5%の効率が85.0%にまで低下するが、上述の通り供給周波数を調整することによって91.6%まで効率を上げることが可能であることがわかった。また、中心軸方向へ150mmの位置ずれが生じた場合は、92.2%の効率が81.9%まで低下するが、同様に供給周波数を調整することで91.0%まで効率を上げることが可能であることがわかった。
【0098】
【0099】
図17に、幅方向であるx方向と中心軸方向であるy方向のそれぞれに位置ずれさせた場合の結合係数kの変化を示すグラフを図示してある。
図17の横軸は位置ずれ量[mm]を示し、縦軸は位置ずれがない状態で1.0となるように正規化した結合係数k/k
0を示している。
【0100】
グラフGx,Gyは、上記の製造例Eを用いた非接触給電装置55Aにおいて得られたものである。グラフGxは、x方向に位置ずれさせたときのものであり、グラフGyは、y方向に位置ずれさせたときのものである。
【0101】
比較例のグラフC1~C3は非特許文献1に開示されている結合係数を基にグラフ化したものである。比較例のグラフC1はH型コアを用いた構成においてx方向の位置ずれを生じさせたときのものである。比較例のグラフC2はH型コアを用いた構成においてy方向の位置ずれを生じさせたときのものである。比較例のグラフC3は、サーキュラー型のコイルユニットを用いた構成において位置ずれを生じさせたときのものである。なお、サーキュラー型の位置ずれについては、x方向、および、y方向の方向依存性は無い。
【0102】
図17によると、ソレノイドコイルユニット50Aの製造例Eを用いた場合、位置ずれ量が300mmに達した場合であっても、x方向の位置ずれに対しては45%以上、y方向の位置ずれに対しては20%以上、結合係数kが維持された状態で電力の授受が可能であることを示している。一方、比較例のグラフC1~C3ではいずれも、結合係数kは、位置ずれ量が大きくなるにつれ、急激に低下していることが読み取れる。比較例のグラフC1では、位置ずれ量300mmでは結合係数kはほぼゼロとなり、比較例のグラフC2およびC3では、位置ずれ量が100mmに達した段階で既に、結合係数kがゼロより小さくなり、電力の授受ができないデッドスポットが存在している。
【0103】
このように電力の伝送効率におよぼす位置ずれの影響を評価した結果、x方向、y方向共に高いロバスト性を有していることが確認された。これにより非接触給電技術のアプリケーションはより広がることとなり、電動モビリティへの走行中給電もより現実的なものとなる。
【0104】
以上のように、第2実施形態のソレノイドコイルユニット50Aおよびそれを用いた非接触給電装置55Aによれば、棒状コア20が切欠部28を有していることにより、第1実施形態で説明したのと同様な作用効果を得ることができる。また、追加磁極部30が設けられていることにより、より一層、高い次元で、結合係数、ロバスト性、軽量化の全てを成立させることができる。
【0105】
3.他の構成例:
図18を参照して、一部を欠損させた欠損部が設けられた断面形状を有する棒状コアの種々の構成例を説明する。
図18には、
図2と同様な棒状コア20a~20oの断面形状をまとめた表を図示してある。
【0106】
第1構成例の棒状コア20aの断面は、欠損部として、矩形形状の4つの角部を切り欠いた傾斜面である4つの切欠部28を有しており、八角形形状を有している。第2構成例の棒状コア20bの断面は、欠損部として、4つの角部を矩形状に切り欠いた溝状の4つの切欠部28を有している。第3構成例の棒状コア20cの断面は、x方向に対向する位置にある二辺のそれぞれに矩形溝状の切欠部28が形成された形状を有している。
【0107】
第4構成例の棒状コア20dの断面は、欠損部として、z方向に向く側面の1つに1つの溝状の切欠部28が形成された形状を有している。第4構成例の切欠部28のx方向の幅は、棒状コア20dのx方向の幅の0.5倍より大きい。ただし、第4構成例の棒状コア20dの断面積は、切欠部28を有していない場合の矩形形状の断面積の0.5倍より大きい。第5構成例の棒状コア20eの断面は、矩形形状のz方向に対向する2つの辺のそれぞれに2つずつ溝状の切欠部28が形成された形状を有している。このように、棒状コアの断面は、矩形形状の1つ又は複数の外周辺に複数の切欠部28が形成された形状を有していてもよい。
【0108】
第6構成例の棒状コア20fの断面は、矩形形状の内部に孔部29を形成した形状を有している。孔部29は、矩形形状の内部の一部を欠損させた欠損部に相当する。このように、棒状コアの軽量化のために設ける欠損部は、外部に形成される切欠部28に限定されず、内部に形成される孔部29としても構成できる。なお、棒状コア20fでは、孔部29の断面形状は矩形形状を有している。
【0109】
第7構成例の棒状コア20gの断面は、六角形形状を有している。棒状コア20gの断面形状は、矩形形状から4つの角部とx方向に対向する位置にある2つの側面とを切り欠いた形状に相当する。第8構成例の棒状コア20hの断面は、台形形状を有している。棒状コア20hの断面形状は、矩形形状からx方向に並ぶ2つの角部とx方向に対向する位置にある2つの側面とを切り欠いた形状に相当する。第9構成例の棒状コア20iの断面は、三角形形状を有している。棒状コア20iの断面形状は、矩形形状からx方向に並ぶ2つの角部と、x方向に対向する位置にある2つの側面と、切り欠かれた2つの角部の間にある側面と、を切り欠いた形状に相当する。
【0110】
第10構成例の棒状コア20jは、平坦面によって構成された切欠部28を有し、その断面は、円形形状の外周縁の一部を切り欠いて欠損させた形状を有している。ここで、本明細書において「円形形状」には、正円形状、楕円形状、および、長円形状が含まれる。第11構成例の棒状コア20kは、平坦面によって構成された2つの切欠部28を有している。棒状コア20kの断面は、円形形状の外周縁の一部を切り欠いた形状を有している。第12構成例の棒状コア20lは、平坦面によって構成された2つの切欠部28を有している。棒状コア20lの断面は、楕円形状の外周縁のうち、長径方向における端部部分を切り欠いた形状を有している。第13構成例の棒状コア20mは、側面に溝状の4つの切欠部28を有している。棒状コア20mの断面は、円形形状の外周縁の一部を切り欠いて欠損させた形状を有している。第14構成例の棒状コア20nの断面は、円形形状の内部に孔部29を形成した形状を有している。孔部29は、円形形状の内部の一部を欠損させた部位に相当する。棒状コア20nでは、孔部29の断面形状は円形形状を有している。第15構成例の棒状コア20oの断面は、円形形状の半分を切り欠いた半円形状を有している。
【0111】
4.その他:
上記の各実施形態や他の構成例において、切欠部28を構成する傾斜面は、平坦な平面によって構成されてなくてもよく、曲面状に構成されてもよい。また、切欠部28を構成する溝部は、例えば、三角形状の断面を有していてもよいし、半円形状の断面を有していてもよい。切欠部28を構成する溝部は、中心軸CXに平行に形成されていなくてもよい。また、一直線状に形成されていなくてもよく、曲線状に形成されていてもよい。また、切欠部28を構成する溝部の断面形状は、一定でなくてもよく、中心軸方向における位置ごとに変化してもよい。棒状コアの断面には、孔部29が複数、形成されていてもよい。また、孔部29の断面形状は、円形形状や矩形形状には限定されない。
【0112】
上記の各実施形態や他の構成例において、切欠部28や孔部29などの欠損部が形成された棒状コアの断面積をSとし、欠損部が設けられていない場合の棒状コアの断面積をSaと定義する。このとき、S/Saは、0.5以上0.98以下であることが好ましく、0.7以上0.95以下であることがより好ましい。S/Saは、0.8以上0.90以下であることがさらに好ましい。S/Saが前記の数値範囲内にあれば、欠損部を有している分だけ棒状コアを軽量化することができる一方で、欠損部を形成したことによる断面積の低下に起因して結合係数kが著しく低下することを抑制することができる。
【0113】
5.まとめ:
表4に示すように、従来のサーキュラー型のコイルユニットや、平板状コアを有するソレノイド型のコイルユニット、H型コアを有するソレノイド型のコイルユニットでは、結合係数、ロバスト性、軽量化のいずれの基準をも満たす状態ではない。これに対して、第1実施形態や第2実施形態のソレノイドコイルユニット50,50Aによれば、上述したように、結合係数、ロバスト性、軽量化の全てを高い次元で成立させることができる。特に、棒状コア20に切欠部28が設けられていることによって、結合係数を著しく低下させることなく、軽量化されている。また、従来のサーキュラー型のコイルユニットや、平板状コアを有するソレノイド型のコイルユニットでは、位置ずれが大きくなったときにデッドスポットが生じてしまう。H型コアを有するソレノイド型のコイルユニットでは、位置ずれの方向によってはデッドスポットが生じてしまう場合がある。これに対して、第1実施形態や第2実施形態のソレノイドコイルユニット50,50Aによれば、そうした従来のソレノイドコイルユニットよりも、位置ずれによるデッドスポットの発生を抑制することができる。また、従来のサーキュラー型のコイルユニットや、平板状コアを有するソレノイド型のコイルユニットでは、位置ずれが大きくなったときにデッドスポットが生じてしまう。H型コアを有するソレノイド型のコイルユニットでは、位置ずれの方向によってはデッドスポットが生じてしまう場合がある。これに対して、第1実施形態や第2実施形態のソレノイドコイルユニット50,50Aによれば、そうした従来のソレノイドコイルユニットよりも、位置ずれによるデッドスポットの発生を抑制することができる。
【0114】
【0115】
以上、本願発明の好ましい実施形態および実施例について説明したが、本願発明はかかる実施形態や実施例に限定されるものではない。本願で開示した構成は、本願発明の技術的思想の範囲において、様々な変更や修正を加えることができる。例えば、上記の第1実施形態や第2実施形態のソレノイドコイルユニット50,50Aを、構成の異なる他のコイルユニットとの間の非接触給電に用いてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10 ソレノイドコイル
20,20a~20f 棒状コア
21 中央部
22 端部
25a 第1面
25b 第2面
25c 第3面
25d 第4面
26a 第1傾斜面
26b 第2傾斜面
28 切欠部(欠損部)
29 孔部(欠損部)
30 追加磁極部
50,50a,50A,50Aa ソレノイドコイルユニット
55,55A 非接触給電装置
100A,100B コイルユニット
101A サーキュラー型コイル
101B ソレノイド型コイル
102A 円盤状のフェライトコア
102B 平板状のフェライトコア
CX 中心軸
MF 磁束