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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072722
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】油脂含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230518BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20230518BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A23L7/109 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185328
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000244109
【氏名又は名称】明星食品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】高谷 力
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡史
(72)【発明者】
【氏名】達 るり子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B046
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DG09
4B026DG12
4B026DG20
4B026DH03
4B026DH05
4B026DK10
4B026DL01
4B026DL02
4B026DL03
4B026DL10
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX02
4B046LA04
4B046LA05
4B046LB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱を持つ食品の上部にトッピングされたとしても保形性を直ちに損なわず、それでいて攪拌等すると十分に混合可能な程度の硬さを有する油脂含有組成物を提供する。
【解決手段】固形油脂を含む油脂成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び他の成分を含む油脂含有組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステルを前記油脂含有組成物に対して1~3重量%含み、さらに、極度硬化油を前記油脂含有組成物に対して1~10重量%及び/又は乳化剤を前記油脂含有組成物に対して0.2~3重量%含むことを特徴とする油脂含有組成物、とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形油脂を含む油脂成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び他の成分を含む油脂含有組成物において、
ポリグリセリン脂肪酸エステルを前記油脂含有組成物に対して1~3重量%含み、
さらに、極度硬化油を前記油脂含有組成物に対して1~10重量%及び/又は乳化剤を前記油脂含有組成物に対して0.2~3重量%含むことを特徴とする油脂含有組成物。
【請求項2】
前記油脂成分における固形油脂が前記油脂含有組成物に対して75~98重量%含む請求項1に記載の油脂含有組成物。
【請求項3】
前記油脂含有組成物がさらに、香料、香辛料、色素、糖類、アミノ酸、エキス類、調味料類、無機塩類又は食品添加物を含む請求項1又は2に記載の油脂含有組成物。
【請求項4】
前記油脂含有組成物が、調理後の食品のトッピングに使用される油脂含有組成物である請求項1~3のいずれかに記載の油脂含有組成物。
【請求項5】
前記食品が即席食品である請求項4に記載の油脂含有組成物。
【請求項6】
前記即席食品がカップ焼そば、カップ油そば、カップまぜそば、即席焼そば、即席油そば及び即席まぜそばの中から選択されるいずれかの即席食品である請求項5に記載の油脂含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種調理後の食品に対してトッピングとして利用できる油脂含有組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調味料や加工食品の分野において、調味料としてペースト状の油脂含有組成物を利用する場合は多い。例えば、カレー調味料、パスタソース、中華料理用の調味料、鍋物用の調味料、スープ等の飲料用の調味料などの各種用途のペースト状の油脂含有組成物が利用されている。
これらの油脂含有組成物においては高温の湯等に当該油脂含有組成物を溶解させて使用することが多いため、その溶解性の程度については多少差があっても問題とならないことが多い。
【0003】
一方、このようなペースト状の油脂含有組成物の利用範囲は広がっており、出来上がった加工食品等の上部にトッピングとして、当該油脂含有組成物を利用する場合も増えてきている。
例えば、即席食品のカップ焼そばの分野においては、トッピングとして植物油脂を含有組成物の一種であるマヨネーズを線状に押し出して利用する場合があるが、当該マヨネーズの場合、調理後の焼そばの上にトッピングしたマヨネーズが直ちに溶解してしまうと、食感上好ましくない。
すなわち、熱をもつ食品上に線状に押し出してトッピングした際でも、ある程度の保形性を有しその形状を溶解することなく保持できることが望まれる。
【0004】
本発明者らはこのような調理後の食品(加工食品)に対してその上部に調味料として油脂含有組成物トッピングした場合において直ちに溶解することなく、それでいて攪拌すると十分に混合でき、良好な食感を呈する程度の保形性を有するタイプの油脂含有組成物を開発することを課題とした。
本分野の先行技術として例えば、以下の特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-171807号
【0006】
一方、上記の先行技術は、上述のような、ある程度の熱に対しても保形性を有する点を考慮したものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らはこの点を回避するため、ある程度の熱を持つ食品の上部にトッピングされたとしても保形性を直ちに損なわず、それでいて攪拌等すると十分に混合可能な程度の硬さを有する油脂含有組成物を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの鋭意研究の結果、固形油脂を含む油脂成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び他の成分を含む油脂含有組成物において、当該油脂含有組成物中にポリグリセリン脂肪酸エステルを油脂含有組成物に対して1~3重量%含むとともに、さらに、a)極度硬化油を前記油脂含有組成物に対して1~10重量%含むか、又はb)乳化剤を前記油脂含有組成物に対して0.2~3重量%含むか、のいずれかであるか、若しくは、前記a)とb)の両方ともを満たす場合において、ある程度の熱を持つ食品の上部にトッピングされたとして保形性を直ちに損なわず、それでいて攪拌等すると十分に混合可能な程度の硬さを有する油脂含有組成物とすることができることを見出して本発明を完成させたのである。
【0009】
すなわち、本願第一の発明は、
“固形油脂を含む油脂成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び他の成分を含む油脂含有組成物において、
ポリグリセリン脂肪酸エステルを前記油脂含有組成物に対して1~3重量%含み、さらに極度硬化油を前記油脂含有組成物に対して1~10重量%及び/又は乳化剤を前記油脂含有組成物に対して0.2~3重量%含むことを特徴とする油脂含有組成物。”、である。
【0010】
次に、本願発明においては、前記固形油脂が前記油脂含有組成物に対して75~98重量%含むことが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
“前記油脂成分における固形油脂が前記油脂含有組成物に対して75~98重量%含む請求項1に記載の油脂含有組成物。”、である。
【0011】
次に、本願発明においては、前記油脂含有組成物が他の成分として、香料、香辛料、色素、糖類、アミノ酸、エキス類、調味料類、無機塩類又は食品添加物を含むことも可能である。
すなわち、本願第三の発明は、
“前記油脂含有組成物がさらに、香料、香辛料、色素、糖類、アミノ酸、エキス類、調味料類、無機塩類又は食品添加物を含む請求項1又は2に記載の油脂含有組成物。”、である。
【0012】
次に、本願発明の油脂組成物は、調理後の食品のトッピングに好適に使用することができる。
すなわち、本願第四の発明は
“前記油脂含有組成物が、調理後の食品のトッピングに使用される油脂含有組成物である請求項1~3のいずれかに記載の油脂含有組成物。”、である。
【0013】
次に、本願発明の油脂組成物は即席食品に好適に利用することができる。
すなわち、本願第五の発明は
“前記食品が即席食品である請求項4に記載の油脂含有組成物。”、である。
【0014】
次に、前記即席食品としては、カップ焼そば等に利用することが好適である。
すなわち、本願第六の発明は
“前記即席食品がカップ焼そば、カップ油そば、カップまぜそば、即席焼そば、即席油そば及び即席まぜそばの中から選択されるいずれかの即席食品である請求項5に記載の油脂含有組成物。”
【発明の効果】
【0015】
本発明の油脂組成物を利用することによって即席カップ焼そば等の湯戻し後の麺の上にかけても、麺表面の熱で形が崩れにくい保形性を有する油脂含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の概要について実施例を交えて説明する。但し、本発明は、以下の実施態様に限定されるものではない。
本願請求項1に記載の発明は、
“固形油脂を含む油脂成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び他の成分を含む油脂含有組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステルを前記油脂含有組成物に対して1~3重量%含み、さらに極度硬化油を前記油脂含有組成物に対して1~10重量%及び/又は乳化剤を前記油脂含有組成物に対して0.2~3重量%含むことを特徴とする油脂含有組成物。”、である。以下、この内容を説明する。
【0017】
─油脂成分─
・固形油脂
本発明でいう固形油脂とは、常温で固体である油脂であるものを指し、本発明において常温とは、融点が25℃以上、好ましくは30℃以上である。具体的にはラード、ヘット、バター、マーガリン、パーム油、カカオバター、水素添加硬化油脂等が使用できる。
【0018】
・極度硬化油脂
本発明においては、固形油脂について極度硬化油脂を利用することもできる。ここで極度硬化油脂とは、食用の動植物油脂に対して水素添加することによって概ねヨウ素価を5以下とした水素添加油脂をいう。また、好ましくは3以下、最も好ましくは1以下となる程度まで水素添加することが好ましい。
この水素添加処理により融点は50℃~70℃程度の高い固形油脂となることを特徴とする。このような極度硬化油脂のベースとなる油脂としては、種々の植物油脂、動物油脂を利用することができる。
特に本願発明においては、55℃以上の融点を有する極度硬化油脂を利用することが好ましい。
【0019】
・液体油脂
本発明においては、油脂成分として固形油脂に加えて、必要に応じて液体油脂を含有することができる。
本発明にいう液体油脂とは、常温で液体である油脂をいい、例えば、大豆油、綿実油、コーン油、菜種油、胡麻油、オリーブ油、ひまわり油、サラダ油等が挙げられる。
尚、サラダ油とは、菜種、綿実、大豆、ごま、サフラワー(紅花)、ひまわり、とうもろこし、米(米糠)等にサラダ油の規格が存在する。また、二種類以上の植物油を混合して作られたサラダ油は調合サラダ油と呼ばれる。
【0020】
─ポリグリセリン脂肪酸エステル─
ポリグリセリン脂肪酸エステルとは乳化剤であり、グリセリンを脱水縮合して高分子化したポリグリセリンに対して、その一部の水酸基を脂肪酸とのエステルとしたものである。
本発明に利用できるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、油脂の固形化能(ゲル化能)を有するタイプが好ましい。特に以下の組成を有することが好ましい。
【0021】
(1)ポリグリセリンの平均重合度
ポリグリセリンには水酸基価から算出した平均重合度が10量体以上のものが用いられる。これよりも平均重合度が低いポリグリセリンを用いた場合、十分なゲル強度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない。ポリグリセリンの平均重合度は高い程、ゲル強度が高く、低添加量で固化を達成するため透明性に優れる。そのため、ポリグリセリンの平均重合度は20以上、更に30以上、さらに多く40以上とするとより強固なゲルを得ることができる。
【0022】
但し、一般には、平均重合度が11~20であり、13~20が好ましい。平均重合度が11より低いポリグリセリンを用いた場合、十分なゲル強度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない。ポリグリセリンの平均重合度は高い程、ゲル強度が高く、低添加量で固化を達成する。平均重合度が20より高いポリグリセリンを用いた場合、強固なゲルが得られるものの、食品に添加した際の食感が低下する場合がある。
【0023】
尚、上記のポリグリセリンの平均重合度とは、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度である。より詳細には、先行技術(特開2018-42550)及び社団法人日本油化学会編「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(I)1996年度版」を参考とすることができる。
【0024】
(2)構成脂肪酸について
構成脂肪酸として1)炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸を少なくとも1種以上、2)炭素数8~14の直鎖飽和脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種以上が挙げられる。構成脂肪酸の比率として1):2)のモル比が、0.91:0.09~0.99:0.01のとき、低添加量で油脂を増粘又は固化できゲル強度が高く、透明性に優れ、長期間油脂の分離を抑えることが可能となり好ましい。
【0025】
脂肪酸1)にはパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸(ベヘニン酸)が挙げられ、脂肪酸2)にはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エルカ酸、イソステアリン酸等が挙げられる。但し、これに限定するものではない。
【0026】
さらに、効果の点より、構成脂肪酸1)はベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸が好ましく、ベヘン酸がより好ましい。さらに、構成脂肪酸中のベヘン酸の割合が60%以上有することが好ましい。
構成脂肪酸2)はオレイン酸、カプリル酸が好ましい。1):2) のモル比の1)の部分が下限を外れる場合、ゲル強度は低下し、低添加量で固化を達成できなくなる場合がある。
【0027】
(3)エステル化率
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は70%以上とする。これよりもエステル化率が低い場合、十分なゲル強度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない。エステル化率は、高いほどゲル強度が高く、低添加量で固化を達成するため透明性に優れる。そのため、エステル化率は80%以上、好ましくは90%以上である。
ここで言うエステル化率とは、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加している脂肪酸のモル数(M)としたとき、エステル化率(%)=(M/(n+2))×100、で算出される値である。
【0028】
(4)その他
前記(1)~(3)を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルをナタネ白絞油に添加しB型粘度計を用いて測定した時の粘度が、20℃で1000-4000mPa・sとなる増粘油について、波長349.5nmにおける透過率が10%以上であることが好ましい。より好ましくは15%~20%、さらに好ましくは30%以上である。
【0029】
(5)製法等
ポリグリセリン脂肪酸エステルはその製造方法として、例えば、上記の各成分の上記条件を満たすような組成で仕込み、水酸化ナトリウム等の触媒を加え、常圧もしくは減圧下においてエステル化反応を行うことで製造することが可能である。
具体的な市販のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、TAISET AD(太陽化学株式会社)、TAISET(登録商標)(太陽化学株式会社)、リョートー(登録商標)ポリグリエステルB-100D、B-70D等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0030】
─その他の成分─
・乳化剤
本発明においては、前述の極度硬化油脂に代えて又は当該極度硬化油脂とともに乳化剤を利用することが好ましい。当該乳化剤は組成物の融点向上に寄与させることができればよく。融点が75℃~85℃程度のタイプを利用することが好適である。当該乳化剤の構造については種々のタイプを利用することができ、特に限定されるものではない。
【0031】
・香料
本発明においては、他に香料を添加することができる。香料を利用することで特定の風味を付与したり、特定の風味を増強することもできる。本発明については合成香料、天然香料のいずれも利用することができる。
【0032】
・香辛料
本発明においては、種々の香辛料を利用することができる。具体的には、コショウ、サンショウ、シナモン、セージ、唐辛子等が挙げられる。
【0033】
・色素
本発明においては、種々の天然色素、合成色素を添加することができる。種々のタイプを選択することができる。
【0034】
・糖類
本発明においては、種々の糖類を含有させることができる。例えば、単糖類としては例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等、二糖類としては、ショ糖、果糖、乳糖等、多糖類としては、デキストリンや各種ガム類、増粘剤等が挙げられる。
また、グルコースや乳糖、デキストリンについては、植物油脂粉末の賦形剤として利用することもできる。すなわち、これらの糖類は、上述の植物油脂粉末等の一つの成分として含まれている場合があり、このような形態で含有されるものでもよいことは勿論である。
【0035】
・アミノ酸、タンパク質
本発明においては、種々のアミノ酸を含有させることができる。また、各種タンパク質を含有させることができる。例えば、カゼインや蛋白分解物を利用することができる。
【0036】
・エキス類
本発明においては、野菜エキス、畜肉エキス等の種々のエキスを含有させることができる。
【0037】
・調味料類
本発明においては、ケチャップ、マヨネーズ、ソース等の種々の調味料類を添加することができる。
【0038】
・無機塩類
本発明においては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、各種リン酸塩等の各種無機塩類を含有させることができる
【0039】
・食品添加物
本発明においては、甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、酸味料、調味料、強化剤等の種々の食品添加物を含有させることができる。
【0040】
・その他
その他各種の素材を添加することができる。その種類は特に限定されない。但し、脂溶性であることが好ましい。
【0041】
─本発明の利用方法─
本発明の油脂組成物は種々の食品に対してトッピング等の調味料として好適に利用することができる。特に即席食品に対して好適に利用することができる。具体的には、即席カップ麺、即席袋麺に好適に利用することができる。これらのうち、いわゆる汁無しものタイプに好適に利用することができる。具体的には、カップ焼そば、カップ油そば、カップまぜそば、即席焼そば、即席油そば及び即席まぜそば等が挙げられる。
さらに、具体的な利用形態として、本発明の油脂含有組成物を利用することで、アンプルカット仕様またはボトルネック仕様の個食包装に当該油脂含有組成物を充填することで、線状に押し出すことが可能な物性であって、即席食品であるカップ焼そば等の湯戻し後の麺の上にかけても、麺表面の熱で形が崩れにくい保形性を有する油脂含有組成物を提供することができる。
【実施例0042】
以下に本願発明の実施例を記載する。但し、本願発明には実施例に限定されるものではない。
[試験例1](各種配合を利用した場合の保形性の検討)
─パック詰め油脂含有組成物の調製─
本試験例1においては、油脂含有組成物の調製のための原料として、固形油脂としてはラード、極度硬化油を利用した。また、液体油脂としてはラー油、菜種白絞油、胡麻油を利用した。
【0043】
ポリグリセリン脂肪酸エステルAとしては、TAISET AD(太陽化学株式会社)、ポリグリセリン脂肪酸エステルBとしては、TAISET AD-R(太陽化学株式会社)を利用した。
また、その他の成分として他の乳化剤、香料、色素を必要に応じて使用した。
他の乳化剤としては、サンソフトNo.8100(太陽化学株式会社)を利用した。香料としては、天然香料を利用した。色素としては、パプリカ色素を利用した。
【0044】
各試験区については、表1に記載のように各種配合の原料を用いた。次に製造条件としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、極度硬化油脂及び乳化剤を除く原料を予備溶解後、混合・投入して、均一混合しながら70℃まで加熱した。
次に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、極度硬化油脂及び乳化剤を添加して、均一混合しながら80℃まで加熱した。
【0045】
加熱後、異物除去のためのマグネット通し、篩の通し処理した後、計量・充填した後、5.0g/食となるようにアンプルカット仕様の個食包装にパック詰めし、パック品の油脂含有組成物を完成させた。
当該各試験区の配合を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
─保形性及び官能評価─
上述のように完成させたパック詰めの油脂含有組成物を利用して、即席食品としてのカップ焼そばに対する押し出しトッピング材として当該油脂含有組成物を使用し、その状態を確認した。
カップ焼そばはフライ処理した乾燥麺塊130gを含むタイプを利用した。当該カップ焼そばに対して熱湯770mlを注加した後、5分間保持した後、湯切りしたのち、添付の液体ソースを添加して箸で攪拌し、調理済み焼そばを準備した。なお、調理済み焼そばの表面温度は約65℃であった(測定機器:HIOKI社製 放射温度計FT3701)。
【0048】
次に、上述の各試験区のパック詰めのトッピング用の油脂含有組成物(ラー油風味)のアンプルカット仕様のパック詰め油脂含有組成物のアンプル部を開封して、油脂含有組成物を押し出しながらカップ内の麺の上にトッピングした。
当該トッピング後の保形性及び食感を調べた。官能評価は熟練の技術者7人によって行い、評価は保形性と食感の2点から行った。
【0049】
保形性については、〇:麺の上で形を保持、△:トッピング後すぐは形を保持しているが、徐々に溶けていく、×:トッピング後の数秒で溶ける、の三段階とした。
食感については、〇:食感良好、△:やや柔らかい又は硬い、×:柔らかすぎる(溶けてしまう)又は硬すぎる、の三段階とした。
結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
評価の結果として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用しない場合(試験区1)の場合、トッピングした油脂含有組成物はすぐに溶けてしましいよくなかった。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを利用した場合であっても極度硬化油脂又は乳化剤を使用しないとやや柔らかく食感にもやや問題が生じた(試験区2)。