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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072731
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】移植装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 13/00 20060101AFI20230518BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A01C13/00
A01C11/02 303C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185340
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】大坪 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】林 幅帥
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA01
2B060AC01
2B060AD05
2B060AE03
2B060BA04
2B060BB02
2B060CC05
2B060EA06
(57)【要約】
【課題】マルチシートで覆われた圃場にポット苗を移植する移植装置において、条間領域においてマルチシートにかかる張力を抑制する技術を提供する。
【解決手段】この移植装置は、苗箱に保持された複数のポット苗を、進行方向に移動しつつ移植する移植装置であって、ポット苗を圃場へ植え付ける植え付け機構と、植え付け機構の進行方向後方に配置された鎮圧部34とを有する。鎮圧部34は、一対の鎮圧輪71,72を有する。一対の鎮圧輪71,72の間隔は、進行方向前方から後方へ向かって大きくなる。これにより、マルチシートが敷かれた圃場において、条間領域のマルチシートにかかる張力を抑制できる。したがって、マルチシートの破れを抑制できる。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱に保持された複数のポット苗を、進行方向に移動しつつ移植する移植装置であって、
前記ポット苗を圃場へ植え付ける植え付け機構と、
前記植え付け機構の進行方向後方に配置された鎮圧部と、
を有し、
前記鎮圧部は、一対の鎮圧輪を有し、
前記一対の鎮圧輪の間隔は、進行方向前方から後方へ向かって大きくなる、移植装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移植装置であって、
前記一対の鎮圧輪の向かい合う面同士の角度は、0°より大きく、かつ、25°以下である、移植装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移植装置であって、
前記一対の鎮圧輪の間隔は、下方から上方へ向かって大きくなる、移植装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の移植装置であって、
前記植え付け機構は、開閉可能な一対のカップ部材からなる植え付けカップを有し、
前記植え付けカップは、
閉状態において、内部に前記ポット苗を保持可能であり、下方へ向かうにつれて収束する錐体状であるとともに、
開状態において、下端部に前記ポット苗を排出可能な開口が形成される、移植装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の移植装置であって、
前記鎮圧輪はそれぞれ、下端部に、進行方向における断面において平らな接地面を有する、移植装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、稲や野菜などの苗を圃場に移植する移植機として、苗箱に育成されたポット苗を圃場に移植する移植機が知られている。従来のポット苗を圃場に移植する移植機については、例えば、特許文献1に記載されている。図12および図13は、特許文献1に記載された移植機の側面図および平面図である。
【0003】
特許文献1に記載の移植機(X1)では、図12および図13に示すように、移植機(X1)の進行方向前方から後方へ向かうにつれて、植え付けカップ(植付カップX18)を有する移植機構と、鎮圧輪(覆土輪X13)とが順に配置されている。この移植機(X1)では、植え付けカップ(植付カップX18)が圃場に苗を植え付けた後に、鎮圧輪(覆土輪X13)が、苗が植え付けられた穴を埋め戻し、苗の根部を土で覆う。
【0004】
特許文献1に記載の鎮圧輪(覆土輪X13)は、左右一対の輪からなる。図13に示すように、その右輪と左輪とは、進行方向前方から後方へ向かうにつれて、その間隔が小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第2511414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような鎮圧輪を有する移植機をマルチシートで覆われた圃場において用いると、条間領域のマルチシートが苗に向かって引っ張られるため、条間領域のマルチシートに大きな張力がかかる。これにより、条間領域のマルチシートに破れが生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、マルチシートで覆われた圃場にポット苗を移植する移植装置において、条間領域においてマルチシートにかかる張力を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、苗箱に保持された複数のポット苗を、進行方向に移動しつつ移植する移植装置であって、前記ポット苗を圃場へ植え付ける植え付け機構と、前記植え付け機構の進行方向後方に配置された鎮圧部と、を有し、前記鎮圧部は、一対の鎮圧輪を有し、前記一対の鎮圧輪の間隔は、進行方向前方から後方へ向かって大きくなる。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の移植装置であって、前記一対の鎮圧輪の向かい合う面同士の角度は、0°より大きく、かつ、25°以下である。
【0010】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の移植装置であって、前記一対の鎮圧輪の間隔は、下方から上方へ向かって大きくなる。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの移植装置であって、前記植え付け機構は、開閉可能な一対のカップ部材からなる植え付けカップを有し、前記植え付けカップは、閉状態において、内部に前記ポット苗を保持可能であり、下方へ向かうにつれて収束する錐体状であるとともに、開状態において、下端部に前記ポット苗を排出可能な開口が形成される。
【0012】
本願の第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかの移植装置であって、前記鎮圧輪はそれぞれ、下端部に、進行方向における断面において平らな接地面を有する。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1発明から第5発明によれば、マルチシートが敷かれた圃場において、条間領域のマルチシートにかかる張力を抑制できる。したがって、マルチシートの破れを抑制できる。
【0014】
特に、本願の第3発明によれば、ポット苗の根部付近の土をポット苗の近くで押さえつつ、ポット苗の茎部や葉部に鎮圧輪が接触するのを抑制できる。
【0015】
特に、本願の第4発明によれば、マルチシートに穴を空けると同時にポット苗を植え付けることができる。このため、移植位置に穴を空けるための機構を別途設ける必要が無い。
【0016】
特に、本願の第5発明によれば、平らな接地面によってしっかりと土を押さえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る移植装置の側面図である。
図2】一実施形態に係る苗箱の上面図である。
図3】一実施形態に係る苗箱およびポット苗の断面図である。
図4】一実施形態に係る移植部の側面図である。
図5】一実施形態に係る移植部の背面図である。
図6】一実施形態に係る鎮圧部の斜視図である。
図7】一実施形態に係る鎮圧部の上面図である。
図8】一実施形態に係る鎮圧部の背面図である。
図9】従来の取り付け角度における鎮圧部の上面図である。
図10】従来の取り付け角度における鎮圧部の背面図である。
図11】実験結果を示した図である。
図12】特許文献1に係る従来の移植機の側面図である。
図13】特許文献1に係る従来の移植機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、移植装置の進行方向を「前方向」、移植装置の進行方向と逆の方向を「後方向」とそれぞれ称する。また、前後方向および上下方向と直交する方向を左右方向と称する。なお、本願では、移植装置の使用時の姿勢に従って上下方向を定義する。
【0019】
<1.第1実施形態>
<1-1.移植装置全体の構成について>
図1は、移植装置1の側面図である。この移植装置1は、苗箱において育成された複数の野菜のポット苗を、苗箱から取り出して圃場100へ移植する装置である。本実施形態の移植装置1は、いわゆる歩行型の移植装置である。この移植装置1は、搭載したエンジン111の駆動力により自走しながら、ポット苗を順次に圃場100へ移植する。作業者は、移植装置1に伴って歩行しながら、空になった苗箱の取り出し、新たな苗箱の供給、および移植装置1の操作を行う。
【0020】
図1に示すように、移植装置1は、走行部10と、移植部20とを有する。図1には、移植部20が圃場100に接触しないように、移植部20を上方に持ち上げて保持している状態が示されている。走行部10は、移植部20を支持しつつ、前方へ向かって走行することができる。移植部20は、ポット苗を苗箱から取り出して圃場100へと移植する。移植装置1は、走行部10を有することにより、苗箱に保持された複数のポット苗を、進行方向に移動しつつ移植することができる。
【0021】
走行部10は、本体部11と、車輪12と、操作部13と、苗箱載置台14とを有する。本体部11は、エンジン111と、エンジン111から出力される動力をPTO軸を介して移植部20へと伝達する動力伝達機構とを有する。車輪12は、走行部10のその他の部位と、移植部20とを走行自在に支持する。車輪12は、エンジン111の出力した動力によって回転し、移植装置1を走行させる。操作部13は、作業者が把持しつつ移植装置1の操作を行うための部位である。苗箱載置台14は、移植前または移植後の苗箱を載置可能である。
【0022】
<1-2.移植部の構成について>
次に、移植部20の詳細な構成について説明する。図2は、この移植装置1で移植されるポット苗Nを育成するための苗箱9の上面図である。図3は、苗箱9と、苗箱9内で育成されたポット苗Nとの断面図を概念的に示した図である。図2および図3に示すように、苗箱9は、表側の面から裏側に向かって窪むカップ状の苗室91を複数有する。すなわち、苗室91は、苗箱9の表側に開口を有し、苗箱9の裏側に底部を有する。複数の苗室91は、2次元的に配置される。また、苗箱9は、苗箱9の両端部に沿って配置される複数の把持孔92を有する。
【0023】
各苗室91に土を入れた後、各苗室91内に播種し、育苗することで、図3に示すように、複数のポット苗Nが得られる。図3に示すポット苗Nは、ブロッコリーやキャベツ等の双子葉植物の苗の特徴を有している。このため、ポット苗Nは、苗室91において土と根とにより構成される根部N1と、根部N1から延びる茎部N2と、茎部N2の先端において拡がる葉部N3とから成る。育成したポット苗Nは、苗箱9に収容されたまま苗箱9ごと移植装置1へ載置される。
【0024】
図2に示すように、各苗室91の底には、底面孔911が設けられている。本実施形態では、底面孔911は、Y字形状をしている。なお、底面孔911は、単なる円形や四角形等の貫通孔であってもよく、Y字形状や十文字形状等の切り込みであってもよい。
【0025】
図4は、移植部20の側面図である。図5は、移植部20の背面図である。図4および図5に示すように、移植部20は、苗取り出し部31と、2つの苗搬送部32と、2つの苗植え付け部33と、2つの鎮圧部34とを有する。この移植装置1は、2条用の移植装置である。このため、移植装置1は、左右に2つずつ、苗搬送部32、苗植え付け部33および鎮圧部34を有する。
【0026】
苗取り出し部31は、苗箱搬送部41と、苗押し出し部42と、苗反転部43とを有する。
【0027】
苗箱搬送部41は、苗箱載置面411と、苗箱送り出し部412とを有する。移植処理を行う場合には、作業者が、ポット苗Nが育成された苗箱9を、苗箱載置面411に苗室91の底部が沿うように配置する。苗箱送り出し部412は、苗箱9の把持孔92に搬送爪(図示せず)を引っかけて送り出す。これにより、苗箱9が、図4中破線矢印で示す搬送経路に沿って搬送される。
【0028】
苗押し出し部42は、苗箱9の搬送経路の途中において、苗箱9に収容されたポット苗Nの根部N1を苗室91から押し出して、ポット苗Nを取り出す。苗押し出し部42は、略水平に並ぶ複数の押出棒421を有する。押出棒421は、苗箱9において配列された苗室91の底面孔911に挿入されることにより、搬送経路上を搬送される苗箱9内に保持されたポット苗Nの根部N1を、苗室91から押し出す。これにより、左右方向に並ぶ複数のポット苗Nが、複数の押出棒421によって同時に押し出され、苗箱9から取り出される。このとき、ポット苗Nは、苗箱9から前方へと押し出される。
【0029】
苗反転部43は、苗押し出し部42によって苗箱9から押し出された複数のポット苗Nを受け取り、ポット苗Nの前後方向を反転させて苗搬送部32の後述する2つの横送りベルト51上に載置する。これにより、ポット苗Nは、前方に根部N1、後方に葉部N3が配置された状態で横送りベルト51上に載置される。
【0030】
本実施形態では、苗押し出し部42が苗箱9の一列分である10個のポット苗Nを同時に押し出し、苗反転部43が当該10個のポット苗Nを同時に反転して横送りベルト51上に載置する。
【0031】
2つの苗搬送部32は、左右に並んで配置される。2つの苗搬送部32は、それぞれ、横送りベルト51と、縦送り部52とを有する。
【0032】
横送りベルト51は、ポット苗Nを左右方向に搬送する。苗箱9から同時に押し出され、反転された10個のポット苗Nのうち、5個が右側の横送りベルト51上に載置され、他の5個が左側の横送りベルト51に載置される。右側の横送りベルト51は、苗反転部43から受け取ったポット苗Nを右方向へ搬送する。また、左側の横送りベルト51は、苗反転部43から受け取ったポット苗Nを左方向へ輸送する。
【0033】
縦送り部52は、横送りベルト51の下流側において、ポット苗Nを下方へと搬送し、苗植え付け部33へとポット苗Nを受け渡す。縦送り部52は、一対の縦送りベルト520により構成される。横送りベルト51の下流側端部まで搬送されたポット苗Nは、苗送り爪53によって一対の縦送りベルト520の間に押し込まれる。これにより、ポット苗Nは、一対の縦送りベルト520の間に挟持されて、下方へと搬送される。
【0034】
苗植え付け部33は、苗搬送部32から受け取ったポット苗Nを圃場100へと植え付ける。苗植え付け部33は、アーム61と、植え付けカップ62とを有する。
【0035】
アーム61は、植え付けカップ62を、苗受け取り位置P1と移植位置P2との間で移動させる移動機構である。アーム61の一端には、駆動力出力軸を介して回転動力が入力される。アーム61の他端には、植え付けカップ62が水平姿勢を維持しつつ支持される。
【0036】
植え付けカップ62は、縦送り部52の下流側において、ポット苗Nを受け取り、受け取ったポット苗Nを圃場100へと植え付ける植え付け機構である。植え付けカップ62は、一対のカップ部材621からなる。一対のカップ部材621は、上端部において互いに接続されている。また、各カップ部材621は、その接続部を中心として回動することにより、植え付けカップ62の下端部を開閉可能となっている。
【0037】
一対のカップ部材621は、前後方向に配列される。植え付けカップ62は、閉状態において、全体として、下方へ向かうにつれて収束する錐体状のカップを形成する。このため、植え付けカップ62は、閉状態において、内部にポット苗を保持可能である。また、植え付けカップ62は、開状態において、下端部にポット苗Nを排出可能な開口が形成される。
【0038】
植え付けカップ62の下端部の開閉動作は、アーム61の動きに連動して行われる。具体的には、植え付けカップ62が苗受け取り位置P1に配置されたときには、植え付けカップ62の下端部が閉鎖される。そして、植え付けカップ62が移植位置P2に配置されたとき、植え付けカップ62の下端部が開放される。
【0039】
植え付けカップ62は、苗受け取り位置P1では、縦送り部52の直下に配置される。そして、この苗受け取り位置P1において、縦送り部52が下方へ送り出したポット苗Nを、上部の開口から受け取る。このとき、植え付けカップ62の下端部は閉鎖されているので、ポット苗Nは、植え付けカップ62に保持される。
【0040】
続いて、植え付けカップ62が、下方へ移動すると、移植位置P2において、植え付けカップ62の下端部が、圃場100に接触し、突き刺さる。これにより、圃場100と、圃場100を覆うマルチシートとに、植え付け孔が形成される。その後、移植位置P2において、植え付けカップ62の下端部が開放されるので、植え付けカップ62から植え付け孔へ、ポット苗Nが落下する。その後、植え付けカップ62が再び上昇することにより、植え付け孔にポット苗Nが残される。これにより、ポット苗Nが圃場100へと植え付けられる。
【0041】
鎮圧部34は、植え付け機構である植え付けカップ62の進行方向後方に配置される。鎮圧部34は、植え付けカップ62が形成した植え付け孔の周囲に押し出された土を押さえて、植え付けられたポット苗Nを安定させる。鎮圧部34はそれぞれ、左右一対の鎮圧輪71,72を有する。一対の鎮圧輪71,72が圃場100に植え付けられたポット苗Nの近傍を左右から押さえることにより、植え付け孔の周囲に押し出された土が押さえられ、ポット苗Nが圃場に定着しやすくなる。鎮圧部34の詳細な構成については、後述する。
【0042】
<1-3.鎮圧輪について>
図6は、移植装置1の2つの鎮圧部34の斜視図である。図7は、移植装置1の2つの鎮圧部34の上面図である。図8は、移植装置1の2つの鎮圧部34の背面図である。図6図8に示すように、鎮圧部34は、2つの鎮圧部34に共通する取り付け軸70と、右鎮圧輪71と、左鎮圧輪72と、右取り付け具73と、左取り付け具74とを有する。
【0043】
取り付け軸70は、左右方向かつ水平に延びる棒状の部位である。取り付け軸70は、取り付け具73,74を介して2対4つの鎮圧輪71,72を支持する。右鎮圧輪71は、取り付け軸70に対してやや傾いた回転軸を中心として回転する車輪である。左鎮圧輪72は、取り付け軸70に対してやや傾いた回転軸を中心として回転する車輪である。右鎮圧輪71の回転軸の傾きと、左鎮圧輪72の回転軸の傾きとは、互いに左右方向に対称である。
【0044】
右取り付け具73は、取り付け軸70に固定されるとともに、右鎮圧輪71を回転可能に支持する。左取り付け具74は、取り付け軸70に固定されるとともに、左鎮圧輪72を回転可能に支持する。
【0045】
ここで、右鎮圧輪71の左側の面を第1内側面711、右側の面を第1外側面712、第1内側面711と第1外側面712とを繋ぐ環状の面を第1接地面713と称する。第1接地面713は、第1内側面711から第1外側面712へ向かって円錐台状に拡がる。なお、第1内側面711および第1接地面713と、第1外側面712および第1接地面713とは、それぞれ、曲面状に接続される。
【0046】
同様に、左鎮圧輪72の右側の面を第2内側面721、左側の面を第2外側面722、第2内側面721と第2外側面722とを繋ぐ環状の面を第2接地面723と称する。第2接地面723は、第2内側面721から第2外側面722へ向かって円錐台上に拡がる。なお、第2内側面721および第2接地面723と、第2外側面722および第2接地面723とは、それぞれ、曲面状に接続される。
【0047】
第1内側面711と、第2内側面721とは、左右方向に対向する。ポット苗の移植時には、右鎮圧輪71と左鎮圧輪72とが、植え付けカップ62によって植え付けられたポット苗Nを挟んで進行方向へと進む。このとき、第1内側面711と第2内側面721との間を、ポット苗Nの茎部N2および葉部N3が通過する。
【0048】
移植装置1の進行方向に沿ってポット苗Nが植えられる領域を「条」、隣合う条領域の間の領域を「条間」と一般的に称されている。作業者は、苗植え付け部33が「条」領域にポット苗Nを植え付けるように移植装置1を走行させる。以下では、一対の鎮圧輪71,72の走行軌跡の間の領域であり、一般的に「条」と呼ばれる領域を「植付領域」、それ以外の領域を「条間領域」として説明を行う。
【0049】
図7に示すように、一対の鎮圧輪71,72の間隔は、進行方向前方から後方へ向かって大きくなる。すなわち、第1内側面711と第2内側面721との間隔は、進行方向前方から後方へ向かって大きくなる。このような、鎮圧輪の進行方向に対する傾きの効果については、後述する。
【0050】
また、図8に示すように、一対の鎮圧輪71,72の間隔は、下方から上方へ向かって大きくなる。このようにすることによって、鎮圧輪71,72の下端面においてポット苗Nの根部N1付近の土を押さえるとともに、茎部N2や葉部N3に鎮圧輪71,72が接触するのを抑制できる。
【0051】
また、第1接地面713および第2接地面723はそれぞれ、進行方向における断面において平らである。すなわち、鎮圧輪71,72はそれぞれ、下端部に、進行方向における断面において平らな接地面713,723を有する。このため、圃場100の土をしっかりと押さえることができる。
【0052】
さて、鎮圧輪71,72の取り付け角度について、従来の鎮圧輪の角度と比較しつつ、説明する。図9は、従来の取り付け角度で取り付けられた鎮圧輪71A,72Aの上面図である。図10は、従来の取り付け角度で取り付けられた鎮圧輪71A,72Aの背面図である。以下では、図9および図10の例を「従来例」と称する。
【0053】
図7および図9を比較して参照すると、本実施形態と従来例とにおいて、鎮圧輪71,72の進行方向に対する傾きが逆方向であることがわかる。なお、図7中には、第1内側面711上において中心(回転軸)を通り、かつ、水平な直線L1が破線で示されている。また、第2内側面721上において中心(回転軸)を通り、かつ、水平な直線L2が、破線で示されている。同様に、図9中にも、鎮圧輪71A,72Aの内側の面上の直線L1A,L2Aが示されている。
【0054】
図8および図10に示すように、本実施形態の鎮圧輪71,72の上下方向に対する傾きと、従来例の鎮圧輪71A,72Aの上下方向に対する傾きとは、いずれも約10°である。これにより、上述の通り、移植されたポット苗Nの茎部N2や葉部N3に鎮圧輪71,72または鎮圧輪71A,72Aが接触するのを抑制する。
【0055】
従来例では、図9に示すように、進行方向前方から後方へ向かって鎮圧輪71A,72Aが互いに近づく方向に傾いている。具体的には、従来例の鎮圧輪71A,72Aは、進行方向に対して約5°傾いている。このため、マルチシートが敷かれた圃場100においては、鎮圧輪71A,72Aに接触したマルチシートが外側から内側へ(条間領域側から植付領域側へ)と引っ張られやすい。図10には、圃場100に敷かれたマルチシートにかかる力を、実線矢印で概念的に示している。このように、条間領域において、マルチシートを左右に伸ばす方向に張力がかかり、マルチシートに破れが生じる原因となる。
【0056】
特に、複数条用の移植装置においては、左右に隣接する鎮圧部によって、左右両側へと条間領域のマルチシートが引っ張られることにより、条間領域においてマルチシートにかかる張力が大きくなる。これにより、マルチシートに破れがより生じやすくなる。
【0057】
これに対し、本実施形態では、図7に示すように、進行方向前方から後方へ向かって鎮圧輪71,72が互いに離れる方向に傾いている。このため、マルチシートが敷かれた圃場100においては、鎮圧輪71,72に接触したマルチシートが内側から外側へ(植付領域側から条間領域側へ)と引っ張られやすい。図8には、圃場100に敷かれたマルチシートにかかる力を、実線矢印で概念的に示している。これにより、鎮圧輪71,72の間において、マルチシートを左右に伸ばす方向に張力がかかる。このとき、張力のかかる領域である植付領域には、マルチシートに、植え付けカップ62によってポット苗Nが植え付けられる植え付け孔が形成されている。このため、孔がない場合と比べて、マルチシートに張力がかかった際にマルチシートが伸びやすい。すなわち、マルチシートが張力によって破れにくい。
【0058】
本実施形態では、鎮圧輪71,72は、進行方向に対して約5°傾いている。このため、一対の鎮圧輪71,72の向かい合う面同士の角度は、約10°である。すなわち、第1内側面711と第2内側面721との角度は、約10°である。
【0059】
鎮圧輪71,72の進行方向に対する角度は、0°より大きく、かつ、12.5°以下であることが好ましい。すなわち、一対の鎮圧輪71,72の向かい合う面同士の角度は、0°より大きく、かつ、25°以下であることが好ましい。このような範囲であれば、条間領域におけるマルチシートの破れを抑制しつつ、マルチシートの植付領域にかかる張力が大きくなりすぎない。
【0060】
<2.鎮圧輪の取り付け角度についての実験>
鎮圧部における鎮圧輪の取り付け角度について、以下の通り実験を行った。この実験では、上記の実施形態の移植装置1において鎮圧輪71,72の取り付け角度を(A)~(C)の3種類に変えたものを使用して、マルチシートを敷いた圃場においてポット苗を移植した。図11は、実験の結果を示す図である。図11中に示す数値は、3.5メートルあたりのマルチシートの破れ量(ミリメートル)の総和を示したものである。なお、5ミリメートル未満の破れは積算していない。
【0061】
図11において、上段は(A)の結果、中段は(B)の結果、下段は(C)の結果が示されている。ここで、(A)は、従来例と同様に、一対の鎮圧輪の間隔が進行方向前方から後方へ向かって小さくなり、進行方向に対する鎮圧輪の傾きの角度が5°の場合を示している。(B)は、上記の実施形態と同様に、一対の鎮圧輪の間隔が進行方向前方から後方へ向かって大きくなり、進行方向に対する鎮圧輪の傾きの角度が10°の場合を示している。(C)は、鎮圧輪がそれぞれ進行方向と平行であり、一対の鎮圧輪の間隔が進行方向において変化しない場合を示している。
【0062】
また、図11において、「左条」は2条用の移植装置において左右に並ぶ2つの鎮圧部のうち左側の鎮圧部、「右条」は2つの鎮圧部のうち右側の鎮圧部を示している。「左輪」は一対の鎮圧輪のうち左側の鎮圧輪(左鎮圧輪)、「右輪」は一対の鎮圧輪のうち右側の鎮圧輪(右鎮圧輪)を示している。また、「内側」は各鎮圧輪の植付領域側、「外側」は各鎮圧輪の植付領域側とは左右方向に反対側を示している。
【0063】
図11に示すように、従来の一対の鎮圧輪の間隔が進行方向前方から後方へ向かって小さくなる(A)では、左条右輪の外側および右条左輪の外側で破れが多く見られる。これにより、2つの鎮圧部の間において、条間領域における破れが大きいことがわかる。また、左条左輪の外側においても破れが見られる。すなわち、他の鎮圧部が隣接しない箇所においても、条間領域側で破れが生じることがわかる。
【0064】
また、一対の鎮圧輪を平行とした(B)においても、左条右輪の外側および右条左輪の外側で破れが生じている。このため、平行な鎮圧輪であっても、複数条の鎮圧輪が同時に通過すると、隣り合う鎮圧部の間では、条間領域においてマルチシートに張力がかかって破れが生じることがわかる。
【0065】
これに対し、一対の鎮圧輪の間隔が進行方向前方から後方へ向かって大きくなる(C)では、いずれの箇所においてもマルチシートの5ミリメートル以上の破れが生じていないことがわかる。これにより、一対の鎮圧輪の間隔を進行方向前方から後方へ向かって大きくすることによって、複数条の鎮圧輪を有する移植装置であっても、隣り合う鎮圧部の間においても、条間領域のマルチシートにかかる張力を低減し、マルチシートに破れが生じるのを抑制している。
【0066】
なお、張力のかかる領域である植付領域には、マルチシートに、植え付けカップによって植え付け孔が形成されているため、マルチシートに張力がかかった際にマルチシートが伸びやすい。このため、(A)~(C)のいずれにおいても、マルチシートに5ミリメートル以上の破れが生じていない。
【0067】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0068】
上記の実施形態の移植装置は、ブロッコリー等の双子葉植物の苗を対象とした移植装置であったが、本発明はこれに限られない。本発明の移植装置は、双子葉植物以外の植物の苗を圃場に移植する移植装置であってもよい。本発明の移植装置は、例えば、長ネギなどの単子葉類の野菜にも用いることができる。
【0069】
また、上記の実施形態の移植装置は、左右2条分のポット苗を同時に移植できる、いわゆる2条植の移植装置であったが、本発明の移植装置は、2条植には限られない。例えば、1条植、4条植、6条植、および8条植の移植装置に、本発明を適用してもよい。
【0070】
また、上記の実施形態の移植装置に使用した苗箱は、横10列、縦22列に苗室が並ぶものであったが、本発明に使用する苗箱の苗室の数は、これに限られない。
【0071】
また、上記の実施形態の移植装置は、歩行型の移植装置であったが、本発明はこれに限られない。本発明の移植装置は、トラクターによって牽引されるものであってもよい。その場合、トラクターのエンジンからPTO軸を介して駆動力入力軸に、回転駆動力を入力してもよい。
【0072】
また、移植装置の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 移植装置
33 苗植え付け部
34 鎮圧部
62 植え付けカップ
71,71A 右鎮圧輪
72,72A 左鎮圧輪
621 カップ部材
711 第1内側面
712 第1外側面
713 第1接地面
721 第2内側面
722 第2外側面
723 第2接地面
図1
図2
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図10
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図13