(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072747
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】掘削撹拌装置及び深層混合処理工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185364
(22)【出願日】2021-11-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年2月17日 「DGコラム工法 ―スラリー系機械攪拌式深層混合処理工法― 品質・施工管理指針」と題する刊行物発行 (2)令和3年3月6日「DGコラム工法 ―スラリー系機械攪拌式深層混合処理工法― GBRC性能証明(第22-20号)」と題する刊行物発行 (3)令和3年4月14日 ウェブサイト https://www.gbrc.or.jp/ https://www.gbrc.or.jp/building_confirm/ https://www.gbrc.or.jp/building_confirm/gijyutu_ninsho/ https://www.gbrc.or.jp/search/gijyutu.php?go_search=true&display_order=agent&display_sort=desc&page=9にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (4)令和3年7月30日「NEW TECHNOLOGY TO SUPPORT PEACE OF MIND DGコラム工法 スラリー系機械撹拌式深層混合処理工法 建築技術性能証明/GBRC性能証明 第20-22号」と題する刊行物発行 (5)令和3年5月24日 ウェブサイト https://www.daiwalantec.jp/indext.html https://www.daiwalantec.jp/reinforcement/にて公開 (6)令和3年8月16日 ウェブサイト https://www.gbrc.or.jp/ https://www.gbrc.or.jp/building_confirm/ https://www.gbrc.or.jp/building_confirm/gijyutu_ninsho/ https://www.gbrc.or.jp/search/gijyutu.php?go_search=true&display_order=agent&display_sort=desc&page=9にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (7)令和3年8月27日「DGハイブリッド工法 説明資料」と題する刊行物発行 (8)令和3年8月16日DGハイブリッド工法 性能証明のための説明資料」と題する刊行物及び「DG ハイブリッド工法 設計・施工指針」と題する刊行物発行 (9)令和3年10月25日「NEW TECHNOLOGY TO SUPPORT PEACE OF MIND DGハイブリッド工法 縞鋼板製鋼管を有する地盤改良体を用いた杭状地盤補強工法建築技術性能証明/GBRC性能証明 第21-06号」と題する刊行物発行
(71)【出願人】
【識別番号】510277143
【氏名又は名称】大和ランテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】田中 則臣
(72)【発明者】
【氏名】樽 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】戴 舒翼
(72)【発明者】
【氏名】清宮 悠理
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040BA08
2D040BD05
2D040CA01
2D040CB03
2D040EB01
(57)【要約】
【課題】最終的に築造されるコラムの全体にスラリーを拡散させることができ、且つ共回り現象を効果的に防止することができ、これにより、強度にばらつきがない高品質のコラムを築造することが可能な掘削撹拌装置を提供する。
【解決手段】スラリー吐出孔が先端部に形成された円筒状の回転軸10と、回転軸10の先端部に固定され、地盤を掘削するための掘削爪が取り付けられた掘削翼20と、回転軸10の先端部以外の部分に固定され、地盤を撹拌するための撹拌翼30と、回転軸10の先端部以外の部分の外側に回転可能に装着されたボス41に固定され、ボス41によって回転軸10の回転が伝達されない共回り防止翼40と、回転軸10のスラリー吐出孔に取り付けられ、入口から出口にかけて直径が小さくなるスラリーの流路が内部に設けられ、スラリーの流れを加速させて地盤中に噴射させるためのノズル60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系固化材を水と混合したスラリーを地盤中に注入しながら、前記スラリーと土とを機械的に混合撹拌することにより、前記地盤中にコラムを築造するための掘削撹拌装置であって、
前記スラリーを前記地盤中に供給するための導通路を内部に有し、前記導通路に連通するスラリー吐出孔が先端部に形成された円筒状の回転軸と、
前記回転軸の先端部に固定され、前記地盤を掘削するための掘削爪が取り付けられた掘削翼と、
前記回転軸の先端部以外の部分に固定され、前記地盤を撹拌するための撹拌翼と、
前記回転軸の先端部以外の部分の外側に回転可能に取り付けられたボスに固定され、前記ボスによって前記回転軸の回転が伝達されない共回り防止翼と、
前記回転軸のスラリー吐出孔に取り付けられ、入口から出口にかけて直径が小さくなる前記スラリーの流路が内部に設けられ、前記スラリーの流れを加速させて前記地盤中に噴射させるためのノズルと、
を備えることを特徴とする掘削撹拌装置。
【請求項2】
前記回転軸の先端部に2つ以上の前記スラリー吐出孔が形成され、2つ以上の前記スラリー吐出孔のそれぞれに、前記ノズルが取り付けられる請求項1に記載の掘削撹拌装置。
【請求項3】
前記ノズルの出口の直径が5mm~25mmであり、前記ノズルが前記スラリー吐出孔に着脱自在に取り付けられる請求項1又は2に記載の掘削撹拌装置。
【請求項4】
前記回転軸を一方向に回転させたときに、前記地盤の土が前記ノズルに被ることを防止するためのノズルカバーが、前記回転軸の先端部に設けられる請求項1~3のいずれか1項に記載の掘削撹拌装置。
【請求項5】
2枚で1組の前記撹拌翼を3組又は4組備え、各組の前記撹拌翼が、前記回転軸の先端部以外の異なる部分における対称的な位置に固定される請求項1~4のいずれか1項に記載の掘削撹拌装置。
【請求項6】
前記共回り防止翼が固定された前記ボスに、垂直方向に延びる排土板が固定される請求項1~5のいずれか1項に記載の掘削撹拌装置。
【請求項7】
前記共回り防止翼が略コ字形又は略ヨ字形であり、前記共回り防止翼の2つ又は3つの端部をそれぞれ固定するための2つ又は3つの前記ボスを備え、少なくとも1つの前記ボスに前記排土板が固定される請求項6に記載の掘削撹拌装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の掘削翼撹拌装置を使用して、セメント系固化材を水と混合したスラリーを地盤中に注入しながら、前記スラリーと土とを機械的に混合撹拌することにより、前記地盤中にコラムを築造する深層混合処理工法であって、
前記掘削撹拌装置を一方向に回転させ、且つ前記ノズルから前記スラリーを噴射させながら、前記地盤中を進行させることによって、前記コラムの頭部が形成される位置から前記コラムの先端部が形成される位置に至るまでの前記地盤を掘削し、且つ前記スラリーと土とを混合撹拌する工程と、
前記ノズルから前記スラリーの噴射を停止させ、所定時間が経過するまでの間、前記掘削撹拌装置を前記コラムの先端部が形成される位置に保持する工程と、
前記所定時間が経過した後、前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、おおよそ前記掘削撹拌装置の高さ分だけ後退させる工程と、
前記掘削撹拌装置を一方向に回転させながら、前記コラムの先端部が形成される位置まで進行させる工程と、
前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、前記コラムの頭部が形成される位置まで後退させる工程と、
を含むことを特徴とする深層混合処理工法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の掘削翼撹拌装置を使用して、セメント系固化材を水と混合したスラリーを地盤中に注入しながら、前記スラリーと土とを機械的に混合撹拌することにより、前記地盤中にコラムを築造する深層混合処理工法であって、
前記掘削撹拌装置を一方向に回転させながら、前記地盤中を進行させることによって、前記コラムの頭部が形成される位置から前記コラムの先端部が形成される位置までの間における任意位置に至るまでの前記地盤を掘削する工程と、
前記掘削撹拌装置を一方向に回転させたまま、且つ前記ノズルから前記スラリーを噴射させながら、前記地盤中を進行させることによって、前記任意位置から前記コラムの先端部が形成される位置に至るまでの前記地盤を掘削し、且つ前記スラリーと土とを混合撹拌する工程と、
前記ノズルから前記スラリーの噴射を停止させ、所定時間が経過するまでの間、前記掘削撹拌装置を前記コラムの先端部が形成される位置に保持する工程と、
前記所定時間が経過した後、前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、おおよそ前記掘削撹拌装置の高さ分だけ後退させる工程と、
前記掘削撹拌装置を一方向に回転させながら、前記コラムの先端部が形成される位置まで進行させる工程と、
前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、前記コラムの頭部が形成される位置まで後退させる工程と、
前記掘削撹拌装置を一方向に回転させ、且つ前記ノズルから前記スラリーを噴射させながら、前記地盤中を進行させることによって、前記コラムの頭部が形成される位置から前記任意位置に至るまで、前記スラリーと土とを混合撹拌する工程と、
前記ノズルから前記スラリーの噴射を停止させ、前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、前記任意位置から前記コラムの頭部が形成される位置まで後退させる工程と、
を含むことを特徴とする深層混合処理工法。
【請求項10】
前記コラムの頭部が形成される位置から前記コラムの先端部が形成される位置に至るまで前記スラリーと土とを混合撹拌し、前記掘削撹拌装置を前記地盤中から引き上げた後、混合撹拌された前記スラリーと土との中に縞鋼管を挿入することにより、前記縞鋼管が一体となった前記コラムを前記地盤中に築造する請求項8又は9に記載の深層混合処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系固化材を水と混合したスラリー(セメントミルク)を地盤中に注入しながら、スラリーと土とを機械的に混合撹拌することにより、地盤中にコラムを築造するための掘削撹拌装置及び深層混合処理工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から掘削撹拌装置を用いた深層混合処理工法が実施されている。深層混合処理工法は、建築物、工作物、擁壁などの構造物の地盤を改良するための工法であり、セメント系固化材を水と混合したスラリーを地盤中に注入しながら、スラリーと土とを機械的に混合撹拌することにより、地盤中にコラム(柱状改良体)を築造する。コラムは、地盤を補強し、構造物を支持する。なお、本明細書における「セメント系固化材」とは、土を固化させることを目的としたセメントを主成分とする固化材及びセメントをいい、一般では「固化材」と呼ばれることもある。また、本明細書における「スラリー」とは、セメント系固化材を水と混合して液状にしたものをいい、一般では「セメントミルク」と呼ばれることもある。
【0003】
例えば、特開2019-214911号公報(特許文献1)、特開2017-048616号公報(特許文献2)、及び実用新案登録第3215453号公報(特許文献3)に開示されているように、従来の掘削撹拌装置は、円筒状の回転軸に、掘削翼、撹拌翼及び共回り防止翼を設けた構成となっている。円筒状の回転軸の内部には、スラリーを供給するための導通路が形成されており、スラリーは、回転軸の先端部に形成されたスラリー吐出孔から地盤中に吐出される。掘削翼によって地盤が掘削され、掘削された土とスラリーとが、撹拌翼によって混合撹拌される。また、掘削撹拌装置が地盤を掘削及び混合撹拌する際に、共回り防止翼は、掘削穴の壁面に当接して停止状態を保つ。停止状態の共回り防止翼は、混合撹拌される土とスラリーとの共回り現象を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-214911号公報
【特許文献2】特開2017-048616号公報
【特許文献3】実用新案登録第3215453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の掘削撹拌装置では、地盤を掘削及び混合撹拌する際に、圧送ポンプの圧力のみによってスラリーを地盤中に吐出させている。このため、最終的に築造されるコラムの全体にスラリーが拡散されず、コラムに未固化の土塊が混入してしまい、コラムの強度にばらつきが生じてしまう。
【0006】
また、従来の掘削撹拌装置には、共回り防止翼が設けられていたが、撹拌翼に付着した土塊を取り除くことができなかった。すなわち、掘削撹拌装置によって地盤の掘削及び混合撹拌を進めるに従い、土が撹拌翼に経時的に付着して塊となり、撹拌翼と土塊とが一体となって回転する共回り現象が生じる。この共回り現象によって、撹拌翼によるスラリーと土との混合撹拌が不十分となり、最終的に築造されるコラムの強度が不足してしまう。
【0007】
さらに、従来の掘削撹拌装置においては、スラリーが十分に拡散されない問題と、共回り現象の問題とが同時に起こる場合もあり、常に、所定の品質を有するコラムを築造することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、最終的に築造されるコラムの全体にスラリーを拡散させることができ、且つ共回り現象を効果的に防止することができ、これにより、強度にばらつきがない高品質のコラムを築造することが可能な掘削撹拌装置及び深層混合処理工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明の掘削撹拌装置は、セメント系固化材を水と混合したスラリーを地盤中に注入しながら、前記スラリーと土とを機械的に混合撹拌することにより、前記地盤中にコラムを築造するための掘削撹拌装置であって、前記スラリーを前記地盤中に供給するための導通路を内部に有し、前記導通路に連通するスラリー吐出孔が先端部に形成された円筒状の回転軸と、前記回転軸の先端部に固定され、前記地盤を掘削するための掘削爪が取り付けられた掘削翼と、前記回転軸の先端部以外の部分に固定され、前記地盤を撹拌するための撹拌翼と、前記回転軸の先端部以外の部分の外側に回転可能に取り付けられたボスに固定され、前記ボスによって前記回転軸の回転が伝達されない共回り防止翼と、前記回転軸のスラリー吐出孔に取り付けられ、入口から出口にかけて直径が小さくなる前記スラリーの流路が内部に設けられ、前記スラリーの流れを加速させて前記地盤中に噴射させるためのノズルと、を備える。
【0010】
(2)好ましくは、上記(1)の掘削撹拌装置において、前記回転軸の先端部に2つ以上の前記スラリー吐出孔が形成され、2つ以上の前記スラリー吐出孔のそれぞれに、前記ノズルが取り付けられる。
【0011】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)の掘削撹拌装置において、前記ノズルの出口の直径が5mm~25mmであり、前記ノズルが前記スラリー吐出孔に着脱自在に取り付けられる。
【0012】
(4)好ましくは、上記(1)~(3)のいずれかの掘削撹拌装置において、前記回転軸を一方向に回転させたときに、前記地盤の土が前記ノズルに被ることを防止するためのノズルカバーが、前記回転軸の先端部に設けられる。
【0013】
(5)好ましくは、上記(1)~(4)のいずれかの掘削撹拌装置において、2枚で1組の前記撹拌翼を3組又は4組備え、各組の前記撹拌翼が、前記回転軸の先端部以外の異なる部分における対称的な位置に固定される。
【0014】
(6)好ましくは、上記(1)~(5)のいずれかの掘削撹拌装置において、前記共回り防止翼が固定された前記ボスに、垂直方向に延びる排土板が固定される。
【0015】
(7)好ましくは、上記(6)の掘削撹拌装置において、前記共回り防止翼が略コ字形又は略ヨ字形であり、前記共回り防止翼の2つ又は3つの端部をそれぞれ固定するための2つ又は3つの前記ボスを備え、少なくとも1つの前記ボスに前記排土板が固定される。
【0016】
(8)上記目的を達成するために、本発明の深層混合処理工法は、上記(1)~(7)のいずれかの掘削撹拌装置を使用して、セメント系固化材を水と混合したスラリーを地盤中に注入しながら、前記スラリーと土とを機械的に混合撹拌することにより、前記地盤中にコラムを築造する深層混合処理工法であって、前記掘削撹拌装置を一方向に回転させ、且つ前記ノズルから前記スラリーを噴射させながら、前記地盤中を進行させることによって、前記コラムの頭部が形成される位置から前記コラムの先端部が形成される位置に至るまでの前記地盤を掘削し、且つ前記スラリーと土とを混合撹拌する工程と、前記ノズルから前記スラリーの噴射を停止させ、所定時間が経過するまでの間、前記掘削撹拌装置を前記コラムの先端部が形成される位置に保持する工程と、前記所定時間が経過した後、前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、おおよそ前記掘削撹拌装置の高さ分だけ後退させる工程と、前記掘削撹拌装置を一方向に回転させながら、前記コラムの先端部が形成される位置まで進行させる工程と、前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、前記コラムの頭部が形成される位置まで後退させる工程と、を含む。
【0017】
(9)上記目的を達成するために、本発明の深層混合処理工法は、上記(1)~(7)のいずれかの掘削撹拌装置を使用して、セメント系固化材を水と混合したスラリーを地盤中に注入しながら、前記スラリーと土とを機械的に混合撹拌することにより、前記地盤中にコラムを築造する深層混合処理工法であって、前記掘削撹拌装置を一方向に回転させながら、前記地盤中を進行させることによって、前記コラムの頭部が形成される位置から前記コラムの先端部が形成される位置までの間における任意位置に至るまでの前記地盤を掘削する工程と、前記掘削撹拌装置を一方向に回転させたまま、且つ前記ノズルから前記スラリーを噴射させながら、前記地盤中を進行させることによって、前記任意位置から前記コラムの先端部が形成される位置に至るまでの前記地盤を掘削し、且つ前記スラリーと土とを混合撹拌する工程と、前記ノズルから前記スラリーの噴射を停止させ、所定時間が経過するまでの間、前記掘削撹拌装置を前記コラムの先端部が形成される位置に保持する工程と、前記所定時間が経過した後、前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、おおよそ前記掘削撹拌装置の高さ分だけ後退させる工程と、前記掘削撹拌装置を一方向に回転させながら、前記コラムの先端部が形成される位置まで進行させる工程と、前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、前記コラムの頭部が形成される位置まで後退させる工程と、前記掘削撹拌装置を一方向に回転させ、且つ前記ノズルから前記スラリーを噴射させながら、前記地盤中を進行させることによって、前記コラムの頭部が形成される位置から前記任意位置に至るまで、前記スラリーと土とを混合撹拌する工程と、前記ノズルから前記スラリーの噴射を停止させ、前記掘削撹拌装置を逆方向に回転させながら、前記任意位置から前記コラムの頭部が形成される位置まで後退させる工程と、を含む。
【0018】
(10)好ましくは、上記(8)又は(9)の深層混合処理工法において、前記コラムの頭部が形成される位置から前記コラムの先端部が形成される位置に至るまで前記スラリーと土とを混合撹拌し、前記掘削撹拌装置を前記地盤中から引き上げた後、混合撹拌された前記スラリーと土との中に縞鋼管を挿入することにより、前記縞鋼管が一体となった前記コラムを前記地盤中に築造する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の掘削撹拌装置及び深層混合処理工法では、スラリー吐出孔に取り付けられたノズルによって、通常よりも高い圧力でスラリーが地盤中に噴射される。これにより、最終的に築造されるコラムの全体にスラリーを拡散させることができる。また、共回り防止翼のボスに固定された排土板によって、撹拌翼に付着した土塊を取り除くことができ、共回り現象を効果的に防止することができる。これらの相乗効果により、強度にばらつきがない高品質のコラムを築造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る掘削撹拌装置を示す正面図である。
【
図2】上記の第1実施形態に係る掘削撹拌装置を示す右側面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1の掘削撹拌装置の先端部の拡大図である。
図3(b)は、
図3(a)のA-A線断面図である。
図3(c)は、掘削撹拌装置の先端部に設けられたノズルを示す正面図である。
図3(d)は、上記のノズルを示す右側面図である。
図3(e)は、上記ノズルを示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る掘削撹拌装置を示す正面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る深層混合処理工法を示す概略図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る深層混合処理工法の前半を示す概略図である。
【
図7】上記の第2実施形態に係る深層混合処理工法の後半を示す概略図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る深層混合処理工法を示す概略図である。
【
図9】本発明の掘削撹拌装置の変更例の主要部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.第1実施形態の掘削撹拌装置
本発明の第1実施形態の掘削撹拌装置について、
図1~
図3を参照しつつ説明する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、掘削撹拌装置1は、主として、回転軸10、掘削翼20、撹拌翼30、共回り防止翼40及び排土板50で構成される。
【0023】
1.1 回転軸
図1、
図2及び
図3(b)に示すように、回転軸10は、円筒状の部材であり、導通路10aを内部に有する。この導通路10aには、セメント系固化材を水と混合したスラリー100(
図5~
図7を参照)が供給される。スラリー100の供給には、図示しないグラウトポンプが使用される。例えば、回転軸10の直径は139mm、全長は883mmである。
【0024】
回転軸10の先端部には、導通路10aに連通する2つのスラリー吐出孔10bが形成されている。2つのスラリー吐出孔10bは、回転軸10の先端部における対称的な位置に配置されている。スラリー吐出孔10bは円形であり、内周面には、雌ねじ部が形成されている。例えば、スラリー吐出孔10bの内径は36mmである。2つのスラリー吐出孔10bには、後述するノズル60が、ねじによって交換可能に取り付けられる。
【0025】
ここで、本実施形態の掘削撹拌装置1は、地盤改良に必要なスラリーの吐出量に応じて、スラリー100を吐出させるスラリー吐出孔10bの数を、2つ又は1つのいずれかに選択することが可能である。2つのスラリー吐出孔10bを使用する場合は、2つのスラリー吐出孔10bのそれぞれにノズル60を取り付ける。一方、1つのスラリー吐出孔10bを使用する場合は、一のスラリー吐出孔10bにノズル60を取り付けるとともに、他のスラリー吐出孔10bに図示しないボルトを螺合させて、他のスラリー吐出孔10bを閉鎖させる。
【0026】
回転軸10の後端部には、
図1及び
図2に示すジョイント11が固定される。ジョイント11の内部には、図示しない導通路が形成されており、この導通路から回転軸10の導通路10aにスラリー100が供給される。回転軸10は、ジョイント11を介して、図示しない施工機械のロッド80(
図5~
図7を参照)に結合される。例えば、ロッド80の最大径は、回転軸10とほぼ同径であり、全長は3~6mである。
【0027】
1.2 掘削翼
図2に示すように、掘削撹拌装置1は、2枚の掘削翼20を備える。2枚の掘削翼20は、回転軸10の先端部における互いに対称的な位置に固定されている。それぞれの掘削翼20の長手方向の内側には、2つの第1掘削爪21が取り付けられている。また、それぞれの掘削翼20の長手方向の外側には、1つの切削爪23が取り付けられている。さらに、回転軸10の先端面には、2つの第2掘削爪22が垂直に固定されている。例えば、1枚の掘削翼20の全長は330mmである。2枚の掘削翼20と回転軸10の直径とを合計して、地盤に約800mmの直径の掘削穴が形成される。
【0028】
1.3 撹拌翼
図2及び
図3に示すように、掘削撹拌装置1は、2枚で1組の撹拌翼30を3組、合計6枚の撹拌翼30を備える。6枚の撹拌翼30は、いずれも回転軸10における掘削翼20よりも後端側に固定されている。2枚で1組の撹拌翼30は、回転軸10における互いに対称的な位置に配置されている。回転軸10の上、中、下の位置に配置された3組の撹拌翼30のうち、中間の1組の撹拌翼30は、上下の2組の撹拌翼30に対して、90°シフトして配置されている。回転軸10の上に配置された1組の撹拌翼30には、それぞれ1つの引き上げ用爪31が取り付けられている。引き上げ用爪31は、撹拌翼30の長手方向の外側に配置されている。例えば、1枚の撹拌翼30の全長は、掘削翼20と同じ330mmである。
【0029】
1.4 共回り防止翼
図1に示すように、掘削撹拌装置1は、2枚で1組の共回り防止翼(自由翼)40を備える。1枚の共回り防止翼40は、2つの水平部分を1つの垂直部分で連続させた略コ字形である。共回り防止翼40の2つの水平部分の端部は、2つのボス41にそれぞれ固定されている。2つのボス41のそれぞれは、回転軸10の外側に装着された2つのカラー42に回転可能に取り付けられている。ボス41は、カラー42の外周面に接触しながら自由に回転することが可能な構成となっている。これにより、共回り防止翼40には、回転軸10及びカラー42の回転が伝達されない。カラー42を耐摩耗鋼板で構成することによって、共回り防止翼40との接触による摩耗が低減される。
【0030】
1枚の共回り防止翼40は、水平方向に延びる上下2つの水平部分と、これら2つの水平部分に連続する1つの垂直部分とで構成される。例えば、1枚の共回り防止翼40について、回転軸10から垂直部分までの水平方向の突出長は430mmであり、掘削翼20及び撹拌翼30の全長を超える。共回り防止翼40の垂直部分は、掘削撹拌装置1が地盤を掘削及び混合撹拌する際に、掘削穴の壁面に当接する。これにより、共回り防止翼40が停止状態に保たれる。撹拌翼30によって混合撹拌された土とスラリー100とが、停止状態の共回り防止翼40の水平部分に接触することにより、土とスラリー100と共回り現象が防止される。
【0031】
1.5 排土板
図2に示すように、掘削撹拌装置1は、2枚の排土板50を備える。2枚の排土板50は、共回り防止翼40が取り付けられた2つのボス41のそれぞれに固定されている。排土板50は、垂直方向に延びる板面を有しており、この板面を、撹拌翼30に付着した土塊に接触させて取り除くことが可能である。
【0032】
1.6 ノズル
図3(a)、(b)に示すように、回転軸10の先端部に設けられた2つのスラリー吐出孔10bには、それぞれノズル60が交換可能に取り付けられている。本発明は、従来のセメント系固化材のスラリー100を用いた機械攪拌式の深層混合処理工法をベースにしており、スラリー吐出口10bに取り付けられたノズル60によって、通常よりも高い圧力を掛けてスラリー100を噴射させることを特徴としている。ノズル60からスラリー100を噴射させることは、土とスラリー100との混合攪拌を促進させ、最終的に築造されるコラムの全体にスラリー100が十分に拡散される。これにより、強度のばらつきが少ない高品質のコラムを築造することが可能となる。
【0033】
図3(c)~(e)に示すように、本実施形態におけるノズル60は、六角形状の頭部61と、スラリー吐出口10bの雌ねじ部に螺合するための雄ねじ部62と、スラリー100の流れを加速させるテーパー状の流路63とで構成される。ノズル60の出口63bは、入口63aよりも小さい直径を有する。
【0034】
ノズル60の出口63bの直径は、使用するノズル60の個数と、単位時間あたりのスラリー100の吐出量とによって決定され、例えば、5mm~25mmの範囲内である。1分間に50リットル~500リットルのスラリー100を吐出させる場合において、ノズル60の出口63bの直径、ノズル60の個数、及び掘削撹拌翼径の具体例を、下記の表1に示す。なお、掘削撹拌翼径は、1組の掘削翼20又は撹拌翼30の全長と、回転軸10の直径とを合計した長さである。例えば、本実施形態の掘削撹拌翼径は、330mm+330mm+139mm≒800mmである。
【0035】
【0036】
図3(a)、(b)に示すように、回転軸10の先端部には、2つのノズル60のそれぞれに対応するノズルカバー70が設けられている。ノズルカバー70は、ノズル60を覆う直径を有する半円形の壁であり、
図3(b)に示す回転軸10の正転方向に配置されている。回転軸10を正転させて地盤の掘削及び混合撹拌をしたときに、土がノズル60に被ることを防止する。このようなノズルカバー70によって、ノズル60の破損、及び回転軸10内への土の逆流が防止され、スラリー100の円滑な噴射が維持される。
【0037】
2.第2実施形態の掘削撹拌装置
上述した第1実施形態の掘削撹拌装置1は、回転軸10に3組6枚の撹拌翼30を設けた構成となっていたが、撹拌翼30の数は6枚に限定されるものではない。
図4に示す第2実施形態の掘削撹拌装置2のように、回転軸10に4組8枚の撹拌翼30を設けた構成としてもよい。この場合、共回り防止翼40は、3つの水平部分を1つの垂直部分で連続させた略ヨ字形にすることが好ましい。このような略ヨ字形の共回り防止翼40は、3つのボス41に固定される。3つのボス41のそれぞれは、回転軸10の上、中、下の位置に装着された3つのカラー42に回転可能に取り付けられる。3つのボス41のそれぞれに、排土板50が固定される。なお、中間の排土板50は、上下の排土板50とは180°反対側に位置しており、
図4中には示されていない。
【0038】
3.第1実施形態の深層混合処理工法
本発明の第1実施形態の深層混合処理工法について、
図5を参照しつつ説明する。
【0039】
図5に示すように、第1実施形態の深層混合処理工法は、上述した第1実施形態の掘削撹拌装置1を使用して、スラリー100を地盤中に注入しながら、スラリー100と土とを機械的に混合撹拌することにより、地盤中にコラムを築造するものである。第1実施形態の深層混合処理工法は、掘削撹拌装置1を1往復させること(1サイクル)によって、地盤中に1本のコラムを築造する。
【0040】
図5中の符号「A」~「F」は、第1実施形態の深層混合処理工法に含まれる複数の工程を示している。掘削撹拌装置1は、図示しない施工機械のロッド80に結合され、正転又は逆転しながら地盤中を進行又は後退する。「正転」とは、
図3(b)に示す時計回りの方向を意味し、「逆転」とは、
図3(b)に示す反時計回りの方向を意味する。第1実施形態の深層混合処理工法には、現場及び施工条件に応じて、例えば、クローラー式三点支持機、バックホウ、小型クローラー式、ラフタークレーン式、建柱車などの様々な施工機械を用いることが可能である。なお、第1実施形態の掘削撹拌装置1は、単なる例示であり、第2実施形態の掘削撹拌装置2を使用してもよい。
【0041】
3.1 掘削、混合撹拌及びスラリー吐出
まず、
図5中のA~Cに示すように、掘削撹拌装置1を正転させ、且つノズル60からスラリー100を噴射させながら、地盤中を進行させることによって、コラムの頭部が形成される位置からコラムの先端部が形成される位置に至るまでの地盤を掘削し、且つ土とスラリー100とを混合撹拌させる。
【0042】
3.2 コラムの先端処理
次いで、
図5中のC、Dに示すように、ノズル60からスラリー100の噴射を停止させ、所定時間が経過するまでの間、掘削撹拌装置1をコラムの先端部が形成される位置に保持する。次いで、
図5中のEに示すように、所定時間が経過した後、掘削撹拌装置1を逆転させながら、おおよそ掘削撹拌装置1の高さ分だけ後退させる。次いで、
図5中のFに示すように、掘削撹拌装置1を正転させながら、コラムの先端部が形成される位置まで進行させる。以上の工程によって、コラムの先端部の土とスラリー100とが十分に撹拌混合される。
【0043】
3.3 掘削撹拌装置の引き上げ撹拌
その後、
図5中のF、G、Hに示すように、掘削撹拌装置1を逆転させて土とスラリー100とを混合撹拌させながら、コラムの先端部が形成される位置からコラムの頭部が形成される位置まで、掘削撹拌装置1を後退させる。以上の工程によって、第1実施形態の深層混合処理工法は完了する。
【0044】
4.第2実施形態の深層混合処理工法
本発明の第2実施形態の深層混合処理工法について、
図6及び
図7を参照しつつ説明する。
【0045】
図6及び
図7に示すように、第2実施形態の深層混合処理工法は、コラムの先端部が形成される位置からコラムの頭部が形成される位置までを上部区間と下部区間とに分割し、コラムの下部区間を先に施工し、コラムの上部区間を後に施工することによって、地盤中に1本のコラムを築造する。
【0046】
以下に説明する第2実施形態の深層混合処理工法は、コラムの全長(地盤の改良長)が長く、掘削撹拌装置1の引き上げが困難な場合に有効である。また、先に施工されたコラム下部区間の土及びスラリー100が、後に施工される上部区間の土の加重を受ける。これにより、先に施工されたコラム下部区間の土及びスラリー100が、後に施工されるコラム上部区間に溢れることを抑制できる。
【0047】
図6及び
図7中の符号「A」~「N」は、第2実施形態の深層混合処理工法に含まれる複数の工程を示している。上述した第1実施形態の深層混合処理工法と同様に、掘削撹拌装置1は、図示しない施工機械のロッド80に結合され、正転又は逆転しながら地盤中を進行又は後退する。第2実施形態の深層混合処理工法も、現場及び施工条件に応じて、様々な施工機械を用いることが可能である。なお、第1実施形態の掘削撹拌装置1は、単なる例示であり、第2実施形態の掘削撹拌装置2を使用してもよい。
【0048】
4.1 コラム下部区間の施工
まず、
図6中のA、Bに示すように、掘削撹拌装置1を正転させながら、地盤中を進行させることによって、コラムの頭部から先端部が形成される位置までのおおよそ中間位置に至るまでの地盤を掘削する。つまり、コラムの頭部から中間位置に至るまで、スラリー100を吐出させないで地盤を空堀する。
【0049】
次いで、
図6中のC、Dに示すように、掘削撹拌装置1を正転させたまま、且つノズル60からスラリー100を噴射させながら、地盤中を進行させることによって、コラムの中間位置から先端部が形成される位置に至るまでの地盤を掘削し、且つ土とスラリー100とを混合撹拌する。
【0050】
次いで、
図6中のD、Eに示すように、ノズル60からスラリーの噴射を停止させ、所定時間が経過するまでの間、掘削撹拌装置1をコラムの先端部が形成される位置に保持する。次いで、
図6中のFに示すように、所定時間が経過した後、掘削撹拌装置1を逆転させながら、おおよそ掘削撹拌装置1の高さ分だけ後退させる。次いで、
図6中のGに示すように、掘削撹拌装置1を正転させながら、コラムの先端部が形成される位置まで進行させる。以上の工程によって、コラムの先端部の土とスラリー100とが十分に撹拌混合される。
【0051】
その後、
図6中のG、Hに示すように、掘削撹拌装置1を逆方向に回転させながら、コラムの頭部が形成される位置まで後退させる。以上の工程によって、第2実施形態の深層混合処理工法におけるコラム下部区間の施工は完了する。
【0052】
4.2 コラム上部区間の施工
次いで、
図7中のI、J、Kに示すように、掘削撹拌装置1を正転させ、且つノズルからスラリーを噴射させながら、地盤中を進行させることによって、コラムの頭部が形成される位置から中間位置に至るまで、土とスラリー100とを混合撹拌する。
【0053】
次いで、ノズルからスラリーの噴射を停止させ、
図7中のLに示すように、掘削撹拌装置1を正転させながら、おおよそ掘削撹拌装置1の高さ分だけ進行させる。その後、
図7中のM、Nに示すように、掘削撹拌装置1を逆方向に回転させながら、コラムの中間位置から頭部が形成される位置まで後退させる。以上の工程によって、コラム上部区間の施工は完了する。これで第2実施形態の深層混合処理工法は完了であり、地盤中に1本のコラムが築造される。
【0054】
5.第3実施形態の深層混合処理工法
本発明の第3実施形態の深層混合処理工法について、
図8を参照しつつ説明する。
【0055】
上述した第1及び第2実施形態の深層混合処理工法によって地盤中に形成されたコラムに、
図8に示す縞鋼管90を一体化してもよい。すなわち、
図5中のH及び
図7中のNに示すように、コラムの頭部が形成される位置からコラムの先端部が形成される位置に至るまでスラリー100と土とを混合撹拌し、掘削撹拌装置1を地盤中から引き上げた後、混合撹拌されたスラリー100と土との中に縞鋼管90を挿入する。これにより、縞鋼管90が一体となった合成コラムを地盤中に築造することができる。
【0056】
図8に示すように、縞鋼管90の全長は、コラム全長Lからコラム径Dを減算した長さにすることが好ましい。この場合、縞鋼管90は、コラム径Dと同じ高さを有するコラムの先端改良部に達しない長さとなる。なお、縞鋼管90の全長は、コラム全長Lと同じ長さであってもよい。つまり、縞鋼管90の全長は、コラム全長Lから0以上D以下の値を減算した長さとすること好ましい。
【0057】
図8に示す第3実施形態の深層混合処理工法によれば、表面に多数の凹凸を有する縞鋼管90は、コラムの中心部との付着力が大きい。このような縞鋼管90をコラムに埋設して一体化することにより、コラムの耐性を増加させることができ、地盤の支持力を有効に発揮させることが可能となる。
【0058】
6.作用効果
上述した本実施形態の掘削撹拌装置1、2及びこれらを用いた深層混合処理工法では、スラリー吐出孔10bに取り付けられたノズル60によって、通常よりも高い圧力でスラリーが地盤中に噴射される。これにより、最終的に築造されるコラムの全体にスラリー100を拡散させることができる。また、共回り防止翼40のボス41に固定された排土板50によって、撹拌翼30に付着した土塊を取り除くことができ、共回り現象を効果的に防止することができる。これらの相乗効果により、強度にばらつきがない高品質のコラムを築造することが可能となる。
【0059】
さらに、縞鋼管90が一体となったコラムを地盤中に築造する場合は、付着力の大きい縞鋼管90をコラムに埋設して一体化することにより、コラムの耐性を増加させることができ、地盤の支持力を有効に発揮させることが可能となる。
【0060】
7.その他
本発明の掘削撹拌装置及びこれらを用いた深層混合処理工法は、上述した各実施形態の構成や工程に限定されるものではない。例えば、下記のような変更が可能である。
【0061】
図3(c)、(d)に示すノズル60の外形は、六角形に限定されるものではない。ノズル60の外形は、例えば、三角形、四角形、円形などの様々な形状とすることが可能である。また、ノズル60は、2つに限定されるものではなく、回転軸10に交換可能に取り付けられていなくてもよい。例えば、ノズル60の数は、1つ又は3つ以上であってもよい。掘削撹拌翼径が300~600mmの小口径である場合は、
図9に示すように、回転軸10の1つの吐出孔10bに1つのノズル60が溶接された構成であってもよい。さらに、
図3(a)、(b)に示すノズルカバー70の外形は、半円形に限定されるものではない。
図9に示すように、ノズルカバー70の外形は、例えば、ノズル60を360°の方向から覆う円形であってもよい。
【0062】
図2において、回転軸10の先端に設けられる2つの第2掘削爪22は、例えば、
図9に示すような1つのフィッシュテール型であってもよい。また、
図2に示す掘削翼20には、小さな第1掘削爪21と、大きな切削爪23とを設けた構成となってる。これは、掘削翼20の外側の爪ほど摩耗が激しいため、外側の爪を大きな切削爪23とした。しかし、
図9に示すように、掘削翼20に設けられる爪を全て同じ大きさの第1掘削爪21としてもよい。さらに、掘削撹拌翼径が300~600mmの小口径である場合は、
図2に示す引き上げ爪31を省略してもよい。
【0063】
第2実施形態の深層混合処理工法では、
図6中のBにおけるスラリーの吐出開始位置を、コラムの頭部から先端部が形成される位置までのおおよそ中間位置とした。しかし、スラリーの吐出開始位置は、中間位置に限定されるものではなく、コラムの頭部が形成される位置から前記コラムの先端部が形成される位置までの間における任意位置とすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1、2 掘削撹拌装置
10 回転軸
10a 導通路
10b スラリー吐出孔
11 ジョイント
20 掘削翼
21 第1掘削爪
22 第2掘削爪
23 切削爪
30 撹拌翼
31 引き上げ用爪
40 共回り防止翼(自由翼)
41 ボス
42 カラー
50 排土板
60 ノズル
61 頭部
62 雄ねじ部
63 流路
63a 入口
63b 出口
70 ノズルカバー
80 ロッド
90 縞鋼管
100 スラリー