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特開2023-72758はんだ粒子、はんだ粒子の製造方法、及び導電性組成物
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  • 特開-はんだ粒子、はんだ粒子の製造方法、及び導電性組成物 図1
  • 特開-はんだ粒子、はんだ粒子の製造方法、及び導電性組成物 図2
  • 特開-はんだ粒子、はんだ粒子の製造方法、及び導電性組成物 図3A
  • 特開-はんだ粒子、はんだ粒子の製造方法、及び導電性組成物 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072758
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】はんだ粒子、はんだ粒子の製造方法、及び導電性組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/40 20060101AFI20230518BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20230518BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B23K35/40 340F
B23K35/26 310C
C22C12/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185389
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】波木 秀次
(72)【発明者】
【氏名】山口 沙梨
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健
(57)【要約】
【課題】ショートリスクを回避でき、絶縁性能が高いはんだ粒子、前記はんだ粒子の製造方法、及び前記はんだ粒子を含有する導電性組成物の提供。
【解決手段】複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下であるはんだ粒子である。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下となるように、はんだ粒子に衝撃力を印加する衝撃力印加工程を含むはんだ粒子の製造方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下となるように、はんだ粒子に衝撃力を印加する衝撃力印加工程を含むことを特徴とするはんだ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記衝撃力が重力よりも大きな力である、請求項1に記載のはんだ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記衝撃力が、はんだ粒子を壁面に衝突させること、及び、はんだ粒子どうしを衝突させることの少なくともいずれかにより、はんだ粒子に印加される、請求項1から2のいずれかに記載のはんだ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記はんだ粒子を壁面に衝突させること、及び、前記はんだ粒子どうしを衝突させることの少なくともいずれかが、気流及び遠心力の少なくともいずれかにより行われる、請求項1から3のいずれかに記載のはんだ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記衝撃力印加工程において、はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下となるように分級を行う、請求項1から4のいずれかに記載のはんだ粒子の製造方法。
【請求項6】
複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下であることを特徴とするはんだ粒子。
【請求項7】
はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下である、請求項6に記載のはんだ粒子。
【請求項8】
個数平均粒径X(μm)が1μm以上である、請求項7に記載のはんだ粒子。
【請求項9】
Snと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種と、を含む、請求項6から8のいずれかに記載のはんだ粒子。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載のはんだ粒子を含有することを特徴とする導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ粒子、はんだ粒子の製造方法、及び導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、パターン配線構造の微細化が急速に進んできており、従来の市販されているはんだ粒子をそのまま使用すると配線パターン間でショートが発生してしまうことがある。例えば、アトマイズ法などで生成される従来の市販のはんだ粒子は、図1に示すように、はんだ粒子表面に微小はんだ粒子が付着している複合粒子11を形成していることが多い。このような微小はんだ粒子が付着した複合はんだ粒子11を導電性組成物に使用した場合、図2に示すように、加熱圧着した際に溶融したバインダーの流れと共に、通常の主要粒径のはんだ粒子12が移動するが、微小はんだ粒子が付着した複合はんだ粒子11は配線パターン10間で停止しやすく、通常の主要粒径のはんだ粒子12を堰き止めてしまうため、配線パターン10間で電気的にショートが発生してしまうという問題がある。
【0003】
また、市販のはんだ粒子の粒度分布は広く、目的とする粒径のはんだ粒子以外にも小粒径はんだ粒子が多く含まれている。このような小粒径はんだ粒子を多く含むはんだ粒子を導電性組成物に使用して相対する基板電極パターン間を電気接続すると、通常の主要粒径のはんだ粒子12は電極間に挟まれて潰れることによって導通を実現するが、図3Aに示すように、小粒径はんだ粒子13は電極に届かず導通に関与しないので導通不良が生じる。そこで、導通性を確保するために、はんだ粒子の添加量を増加すると、図3Bに示すように、基板電極パターン間でショートが発生してしまう。更に、小粒径はんだ粒子が多く存在することによって、導電性組成物における重要なスペックである電極の接続面積及び導体間スペースの許容範囲を狭めてしまうという問題がある。
【0004】
関連する先行技術文献として、例えば、遠心噴霧法(回転ディスク法)によって、その粒子形が真球に近くしかも粒子表面に微粒子が付着していない、極めて微細で一定の粒径を持った金属微粉末の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-264116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1には、金属微粉末の粒子表面に微粒子が付着すると、はんだクリームの品質に悪い影響を与えることは記載されているが、微粒子が付着した複合はんだ粒子が配線パターン間で停止しやすく、通常の主要粒径のはんだ粒子を堰き止めてしまうため、配線パターン間で電気的にショートが発生してしまうことについては記載も示唆もされていない。更に、上記特許文献1には、遠心噴霧法(回転ディスク法)によって微粒子が付着していない真球に近い金属微粉末を製造する方法については記載されているが、微小はんだ粒子が付着した複合はんだ粒子を一定量含む市販のはんだ粒子から複合はんだ粒子の割合を減らす方法については記載も示唆もされていない。
【0007】
本発明は、従来にける前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ショートリスクを回避でき、絶縁性能が高いはんだ粒子、前記はんだ粒子の製造方法、及び前記はんだ粒子を含有する導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下となるように、はんだ粒子に衝撃力を印加する衝撃力印加工程を含むことを特徴とするはんだ粒子の製造方法である。
<2> 前記衝撃力が重力よりも大きな力である、前記<1>に記載のはんだ粒子の製造方法である。
<3> 前記衝撃力が、はんだ粒子を壁面に衝突させること、及び、はんだ粒子どうしを衝突させることの少なくともいずれかにより、はんだ粒子に印加される、前記<1>から<2>のいずれかに記載のはんだ粒子の製造方法である。
<4> 前記はんだ粒子を壁面に衝突させること、及び、前記はんだ粒子どうしを衝突させることの少なくともいずれかが、気流及び遠心力の少なくともいずれかにより行われる、前記<1>から<3>のいずれかに記載のはんだ粒子の製造方法である。
<5> 前記衝撃力印加工程において、はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下となるように分級を行う、前記<1>から<4>のいずれかに記載のはんだ粒子の製造方法である。
<6> 複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下であることを特徴とするはんだ粒子である。
<7> はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下である、前記<6>に記載のはんだ粒子である。
<8> 個数平均粒径X(μm)が1μm以上である、前記<7>に記載のはんだ粒子である。
<9> Snと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種と、を含む、前記<6>から<8>のいずれかに記載のはんだ粒子である。
<10> 前記<6>から<9>のいずれかに記載のはんだ粒子を含有することを特徴とする導電性組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ショートリスクを回避でき、絶縁性能が高いはんだ粒子、前記はんだ粒子の製造方法、及び前記はんだ粒子を含有する導電性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の一例を示す図である。
図2図2は、複合はんだ粒子を導電性組成物に使用し、配線パターン間の電気接続に用いた例を示す概略図である。
図3A図3Aは、小粒径はんだ粒子を含むはんだ粒子を導電性組成物に使用して、相対する基板電極を電気接続する方法を示し、小粒径はんだ粒子は電極に届かないため導通不良が生じる状態を示す模式図である。
図3B図3Bは、小粒径はんだ粒子を含むはんだ粒子を導電性組成物に使用して、相対する基板電極を電気接続する方法を示し、はんだ粒子の添加量を増加するとショートが発生する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(はんだ粒子の製造方法)
本発明のはんだ粒子の製造方法は、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下となるように、はんだ粒子に衝撃力を印加する衝撃力印加工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0012】
<衝撃力印加工程>
前記衝撃力印加工程は、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下となるように、はんだ粒子に衝撃力を印加する工程である。前記衝撃力印加工程においては、前記複合はんだ粒子の割合が1個数%以下となるように、はんだ粒子に衝撃力を印加することが好ましく、0.1個数%以下となるようにはんだ粒子に衝撃力を印加することがより好ましく、0.05個数%以下となるように、はんだ粒子に衝撃を印加することが更に好ましく、0.01個数%以下となるように、はんだ粒子に衝撃を印加することが特に好ましい。
【0013】
このような衝撃力印加工程を行うことにより、複合はんだ粒子から付着した微小はんだ粒子を切り離すことができ、配線パターン間で停止しやすく、通常の主要粒径のはんだ粒子を堰き止めてしまう複合はんだ粒子の割合を少なくできるので、配線パターン間で電気的にショートが発生することを回避できる。
前記複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は、乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、約1万個のはんだ粒子を測定し、乾式撮像型粒度分布計により撮像した真球度値が0.85以上0.95以下のはんだ粒子の中で、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の数をカウントし、はんだ粒子全体に対する前記複合はんだ粒子の割合(個数頻度)を求めることができる。
前記衝撃力印加工程においては、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%を超えるはんだ粒子に衝撃を印加することが好ましい。即ち、衝撃を印加する前は複合はんだ粒子の割合が5個数%を超える従来の市販のはんだ粒子に衝撃を印加することによって、付着している微小はんだ粒子が切り離されることで、複合はんだ粒子の割合が5個数%以下となり、配線パターン間で電気的にショートが発生することを回避できる。
【0014】
前記衝撃力は、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子から付着した微小はんだ粒子を切り離すことができれば特に制限はなく、はんだ粒子の大きさ、付着した微小はんだ粒子の大きさ、組成などに応じて適宜選択することができるが、重力よりも大きな衝撃力であることが好ましい。なお、複合粒子における微小はんだ粒子の付着強度は強く、一般的に、はんだ粒子メーカーが行う篩分級では複合はんだ粒子から付着した微小はんだ粒子を切り離すことは困難である。
前記衝撃力は、はんだ粒子を壁面に衝突させること、及び、はんだ粒子どうしを衝突させることの少なくともいずれかにより、はんだ粒子に印加される。
前記はんだ粒子を壁面に衝突させること、及び、前記はんだ粒子どうしを衝突させることの少なくともいずれかが、気流及び遠心力の少なくともいずれかにより行われる。
前記気流を用いる方法としては、ブロアー吸引により気流を発生させてはんだ粒子を旋回させながら篩表面に衝突させて分級する旋回気流式篩分機であることが好ましい。旋回気流式篩分機としては、例えば、スピンエアシーブ(株式会社セイシン企業製)などが挙げられる。
前記ブロアー吸引圧力は、0.1MPa以上1.5MPa以下が好ましく、0.5MPa以上1.0MPa以下がより好ましい。
【0015】
前記遠心力及び気流を用いる方法としては、分級室内で空気渦がはんだ粒子とともに旋回し、ローターの回転によって生じる旋回遠心力とブロアー吸引によりローター中心方向へ流れる空気流のバランスにより分級する装置を使用する。このような分級装置としては、例えば、クラッシール(株式会社セイシン企業製)、ターボクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)などが挙げられる。
前記ローター回転数は500rpm以上2,000rpm以下が好ましく、900rpm以上1,800rpm以下がより好ましい。
ブロアー吸引風量は2.5m/min以上3.0m/min以下が好ましい。
【0016】
前記衝撃力印加工程において、はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下となるように分級を行うことが好ましい。
はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下となるように分級を行うことによって、小粒径はんだ粒子を除去できるので、導通不良又はショートの発生を防止することができる。
なお、小粒径はんだ粒子には、もともと市販のはんだ粒子に含まれていた小粒径はんだ粒子以外に、複合はんだ粒子から切り離された微小はんだ粒子も含まれる。
前記はんだ粒子の個数平均粒径及び個数粒度分布は、例えば、乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、約1万個の粒子を測定し、粒度分布は個数頻度で表すことができる。
【0017】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、洗浄工程、乾燥工程などが挙げられる。
【0018】
(はんだ粒子)
本発明のはんだ粒子は、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下であり、1個数%以下が好ましく、0.1個数%以下がより好ましく、0.05個数%以下が更に好ましく、0.01個数%以下が特に好ましく、0個数%であることが最も好ましい。
複合はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において5個数%以下である本発明のはんだ粒子を含有する導電性組成物を用いることにより、配線パターン間で電気的にショートが発生することを回避できる。
前記複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は、上記はんだ粒子の製造方法における複合粒子の割合と同様にして測定することができる。
【0019】
前記複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合が、全はんだ粒子において5個数%以下であると、加熱圧着した際に溶融したバインダーの流れとともにはんだ粒子の移動が円滑に行われ、配線パターン間で電気的にショートが発生することを回避できる。
【0020】
前記はんだ粒子の個数平均粒径は1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、15μm以上が特に好ましい。前記はんだ粒子の個数平均粒径の上限値は30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。
はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下が好ましく、0.5個数%以下がより好ましく、0.1個数%以下が更に好ましく、0.05個数%以下が特に好ましく、0.01個数%以下がより特に好ましく、0個数%が最も好ましい。
はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下である本発明のはんだ粒子を含有する導電性組成物を用いることにより、導通不良又はショートの発生を防止することができる。
前記はんだ粒子の個数平均粒径及び個数粒度分布は、上記はんだ粒子の製造方法における個数平均粒径及び個数粒度分布と同様にして測定することができる。
【0021】
前記はんだ粒子は、例えば、JIS Z3282-1999に規定されている、Sn-Pb系はんだ粒子、Pb-Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Pb-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Bi-Cu系はんだ粒子、Sn-Cu系はんだ粒子、Sn-Pb-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子、Sn-Ag系はんだ粒子、Sn-Pb-Ag系はんだ粒子、Pb-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、Snと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種と、を含むはんだ粒子が好ましく、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Bi-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子がより好ましい。
前記はんだ粒子の融点は、110℃以上240℃以下が好ましく、120℃以上200℃以下がより好ましい。
【0022】
(導電性組成物)
本発明の導電性組成物は、本発明のはんだ粒子を含有し、バインダー、単官能の重合性モノマー、エラストマー、硬化剤、及びシランカップリング剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0023】
前記導電性組成物は、フィルム状の導電性フィルム、又はペースト状の導電性ペーストのいずれであってもよい。取り扱いのし易さの点では導電性フィルムが好ましく、コストの点では導電性ペーストが好ましい。なお、導電性組成物が導電性フィルムである場合、前記はんだ粒子を含む導電性フィルムに、はんだ粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。
【0024】
-はんだ粒子-
はんだ粒子としては、上述した本発明のはんだ粒子が用いられる。
前記はんだ粒子の前記導電性組成物における含有量としては、特に制限はなく、接続構造体の配線ピッチや、接続面積などによって適宜調整することができる。
【0025】
-バインダー-
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製膜性、加工性、及び接続信頼性の点から、フェノキシ樹脂が特に好ましい。
前記フェノキシ樹脂とは、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成される樹脂であって、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば商品名:YP-50(東都化成株式会社製)、YP-70(東都化成株式会社製)、EP1256(ジャパンエポキシレジン株式会社製)などが挙げられる。
前記バインダーの導電性組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、20質量%~70質量%が好ましく、35質量%~55質量%がより好ましい。
【0026】
-単官能の重合性モノマー-
前記単官能の重合性モノマーとしては、分子内に重合性基を1つ有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能の(メタ)アクリルモノマー、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、その他2重結合を有するオレフィン系モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着強度及び接続信頼性の点から、単官能(メタ)アクリルモノマーが特に好ましい。
前記単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-ドデシル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記単官能の重合性モノマーの導電性組成物における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0028】
-硬化剤-
前記硬化剤としては、バインダーを硬化できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、有機過酸化物などが好適である。
前記有機過酸化物としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化剤の導電性組成物における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0029】
-エラストマー-
エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン系エラストマー、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
-シランカップリング剤-
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などが挙げられる。
前記シランカップリング剤の導電性組成物における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0031】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、イオンキャッチャー剤などが挙げられる。前記その他の成分の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
<用途>
本発明のはんだ粒子及び導電性組成物は、ショートリスクの発生を回避できるので、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))などの様々な接続対象部材の電極間を電気的に接続するために用いることができる。
【実施例0033】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
<粒度分布測定>
乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、約1万個の粒子を測定し、粒度分布は個数頻度で表示した。
【0035】
<複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合>
乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、約1万個のはんだ粒子を測定し、乾式撮像型粒度分布計により撮像した真球度値が0.85以上0.95以下のはんだ粒子の中で、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の数をカウントし、はんだ粒子全体に対する前記複合はんだ粒子の割合(個数頻度)を求めた。
【0036】
(実施例1)
<はんだ粒子の分級>
はんだ粒子としてSn42Bi58-Type5(三井金属鉱業株式会社製)を用意した。Sn42Bi58-Type5を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、粒度分布15μm~25μm、累積50%個数粒径(D50)20μm、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は8個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して8個数%であった。
スピンエアシーブ(株式会社セイシン企業製)に直径φ200mm-目開き16μmの綾織金網篩(東京スクリーン株式会社製)をセットし、ブロアーで0.5MPaの吸引圧力となるよう吸引した。原料供給口からはんだ粒子50gを投入した。原料投入から分級終了まで5分間稼働させ、分級回数1回の強制気流式分級処理により篩下に残った粗粉側の粒子を回収して、小粒径はんだ粒子を除去する分級を行い、実施例1の分級はんだ粒子を得た。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は0.10個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して1.5個数%であった。
【0037】
<導電性フィルムの作製>
作製した実施例1のはんだ粒子5質量部と、下記の絶縁性バインダー95質量部とを遊星式撹拌装置に投入し、1分間撹拌して導電性組成物を作製した。
次に、導電性組成物を厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンで5分間乾燥させ、導電性組成物からなる厚さ25μmの粘着層をPETフィルム上に形成し、幅2.0mmの導電性フィルムを作製した。
【0038】
-絶縁性バインダー-
絶縁性バインダーは、フェノキシ樹脂(商品名:YP-50、新日化エポキシ製造株式会社製)47質量部、単官能モノマー(商品名:M-5300、東亞合成株式会社製)3質量部、ウレタン樹脂(商品名:UR-1400、東洋紡績株式会社製)25質量部、ゴム成分(商品名:SG80H、ナガセケムテックス株式会社製)15質量部、シランカップリング剤(商品名:A-187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)2質量部、及び有機過酸化物(商品名:ナイパーBW、日油株式会社製)3質量部を、固形分が50質量%となるように含有する、酢酸エチルとトルエンとの混合溶液とした。
【0039】
<接続構造体の作製>
上記導電性フィルムを介して、評価用基板(ガラスエポキシ基板(FR4)、50μmピッチ、スペース30μm、端子厚み10μm、Cu(下地)/Ni/Auメッキ)と、FPC(ポリイミドフィルム、50μmピッチ、スペース30μm、端子厚み12μm、Cu(下地)/Ni/Auメッキ)とを熱圧着し、接続構造体を作製した。
熱圧着は、常時加熱ヘッド圧着ボンダーを用いてFPC上の厚み200μmのシリコンラバーを介してツールを押し下げ、温度:150℃、圧力:2MPa、時間:20secの条件で行った。
【0040】
<導通特性の評価>
作製した接続構造体について、デジタルマルチメータ(横河電機株式会社製)を用い、4端子法にて電流1mAを流したときの初期導通抵抗(初期導通性)と、作製した接続構造体を85℃85%RHのオーブンで500時間保存した後の導通抵抗(導通信頼性)と、それぞれ測定し、下記の基準で評価した。
[評価基準]
〇:導通抵抗が1Ω以下の場合
△:導通抵抗が1Ωを超えた場合
×:導通抵抗がOPEN
【0041】
<初期絶縁性の評価>
作製した接続構造体のパターン間に電圧を印加し、初期絶縁抵抗を測定し、ショートの有無を確認した。なお、初期絶縁抵抗が1×10Ω以下をショート発生NGとして評価した。
【0042】
(実施例2)
<はんだ粒子の分級>
実施例1において、分級条件におけるスピンエアシーブによる分級回数を1回から3回に変更した以外は、実施例1と同様にして、強制気流式分級処理を行い、実施例2の分級はんだ粒子を作製した。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は0.01個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して0.2個数%であった。
【0043】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例2のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0044】
(実施例3)
<はんだ粒子の分級>
実施例1において、分級条件における吸引圧力を1MPaに変更した以外は、実施例1と同様にして、強制気流式分級処理を行い、実施例3の分級はんだ粒子を作製した。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は0.05個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して0.7個数%であった。
【0045】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例3のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0046】
(実施例4)
実施例2において、はんだ粒子に直径100μmのジルコニアボールを加えて一緒に分級した以外は、実施例2と同様にして、強制気流式分級処理を行い、実施例4の分級はんだ粒子を作製した。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は0.00個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して0個数%であった。
【0047】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例4のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表2に示した。
【0048】
(実施例5)
<はんだ粒子の分級>
実施例1において、Sn42Bi58-Type5を、Sn42Bi58Ag-Type5(千住金属株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、強制気流式分級処理を行い、実施例5の分級はんだ粒子を作製した。
Sn42Bi58Ag-Type5を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、粒度分布15μm~25μm、累積50%個数粒径(D50)20μm、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合が6個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して10個数%であった。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は0.04個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して0.7個数%であった。
【0049】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例5のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表2に示した。
【0050】
(実施例6)
<はんだ粒子の分級>
はんだ粒子としてSn42Bi58-Type5(三井金属鉱業株式会社製)を用い、Sn42Bi58-Type5をターボクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)に付帯したローターを1,300rpmで回転させ、更にブロアーで2.6m/minの強度で吸引した。原料供給口からはんだ粒子200gを投入した。原料投入から分級終了まで約4分間稼働させ、分級回数1回の強制気流式分級処理により微粉側の粒子を回収して、実施例6の分級はんだ粒子を得た。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は0.20個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して2.0個数%であった。
【0051】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例6のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表2に示した。
【0052】
(実施例7)
<はんだ粒子の分級>
実施例6において、分級条件におけるローター回転数を1,600rpm、吸引風量を2.8m/minに変更した以外は、実施例6と同様にして、強制気流式分級処理を行い、実施例7の分級はんだ粒子を作製した。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合が0.05個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して1.0個数%であった。
【0053】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例7のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表3に示した。
【0054】
(実施例8)
<はんだ粒子の分級>
はんだ粒子としてSn42Bi58-Type5(三井金属鉱業株式会社製)を用い、ターボクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)に付帯したローターを1,200rpmで回転させ、更にブロアーで2.8m/minの強度で吸引した。原料供給口からはんだ粒子200gを投入し、粒径25μmより大きい粗大粒子を分級カットした。
実施例7において、上記粒径25μmより大きい粗大粒子を分級カットしたはんだ粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、強制気流式分級処理を行い、実施例8の分級はんだ粒子を作製した。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm未満の小粒径はんだ粒子の割合は0.05個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して0.5個数%であった。
【0055】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例8のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表3に示した。
【0056】
(比較例1)
はんだ粒子としてSn42Bi58-Type5(三井金属鉱業株式会社製)を分級せずにそのまま用いた。
比較例1のはんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は8個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して8.0個数%であった。
【0057】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
比較例1のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表4に示した。
【0058】
(比較例2)
<はんだ粒子の分級>
はんだ粒子としてSn42Bi58-Type5(三井金属鉱業株式会社製)を用い、Sn42Bi58-Type5を篩振とう機(VUD-80、筒井理化学器機株式会社製)で#16μm目開き篩を使用して小粒径のはんだ粒子を除去する分級を行い、比較例2の分級はんだ粒子を作製した。
得られた分級はんだ粒子を乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)で測定した結果、個数粒径10μm以下の小粒径はんだ粒子の割合は1個数%であった。複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子の割合は全はんだ粒子に対して7.0個数%であった。
【0059】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した比較例2のはんだ粒子を用い、実施例1と同様にして、導電性フィルム及び接続構造体を作製し、評価を行った。結果を表4に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
表1~表4の結果から、実施例1~8は、いずれも初期導通抵抗、85℃85%-500時間後の導通抵抗、及び初期絶縁抵抗が良好な値が得られることがわかった。
比較例1は、初期導通抵抗は良好であったが、85C85%-500時間後の導通抵抗は1.5Ωまで上昇した。走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM-6510A、日本電子株式会社製)を用いて圧着サンプルの粒子/基板電極部の断面SEM観察を行った結果、電極に接触していない小粒径はんだ粒子が多数存在していることを確認した。また、初期絶縁抵抗はショートが発生した。ショートが発生した電極パターン間を観察すると、はんだ粒子がせき止められ電極パターン間にはんだ粒子が密集しているのを確認した。
また、比較例2は、初期導通抵抗、85C85%-500時間後の導通抵抗ともに良好であった。しかし、初期絶縁抵抗はショートが発生した。ショートが発生した電極パターン間をSEM観察すると、はんだ粒子がせき止められ電極パターン間にはんだ粒子が密集しているのを確認した。
【0065】
以上の結果から、複数のはんだ粒子が付着してなる複合はんだ粒子に衝撃力を印加しながら分級することにより、はんだ粒子に付着している微小はんだ粒子を切り離すと同時に、切り離された微小はんだ粒子及びもともと存在する小粒径はんだ粒子を取り除いたはんだ粒子を製造することができた。得られたはんだ粒子を用いることによって、配線パターン間のショートリスクを回避できる導電性組成物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のはんだ粒子の製造方法により得られるはんだ粒子及び導電性組成物は、ショートリスクを回避できるので、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)、ICチップの端子とLCDパネルのガラス基板上に形成されたITO(Indium Tin Oxide)電極との接続、COFとPWBの接続、TCPとPWBの接続、COFとガラス基板の接続、COFとCOFの接続、IC基板とガラス基板の接続、IC基板とPWBの接続などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0067】
10 配線パターン
11 複合はんだ粒子
12 通常の主要粒径のはんだ粒子
13 小粒径はんだ粒子

図1
図2
図3A
図3B
【手続補正書】
【提出日】2021-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
前記衝撃力印加工程において、はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下となるように分級を行うことが好ましい。
はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下となるように分級を行うことによって、小粒径はんだ粒子を除去できるので、導通不良又はショートの発生を防止することができる。
なお、小粒径はんだ粒子には、もともと市販のはんだ粒子に含まれていた小粒径はんだ粒子以外に、複合はんだ粒子から切り離された微小はんだ粒子も含まれる。
前記はんだ粒子の個数平均粒径及び個数粒度分布は、例えば、乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、約1万個の粒子を測定し、粒度分布は個数頻度で表すことができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
前記はんだ粒子の個数平均粒径は1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、15μm以上が特に好ましい。前記はんだ粒子の個数平均粒径の上限値は30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。
はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下が好ましく、0.5個数%以下がより好ましく、0.1個数%以下が更に好ましく、0.05個数%以下が特に好ましく、0.01個数%以下がより特に好ましく、0個数%が最も好ましい。
はんだ粒子の個数平均粒径をX(μm)としたとき、0.5X(μm)以下の個数粒径を有する小粒径はんだ粒子の割合が全はんだ粒子において1個数%以下である本発明のはんだ粒子を含有する導電性組成物を用いることにより、導通不良又はショートの発生を防止することができる。
前記はんだ粒子の個数平均粒径及び個数粒度分布は、上記はんだ粒子の製造方法における個数平均粒径及び個数粒度分布と同様にして測定することができる。