IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本クロージャー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-1ピースキャップ 図1
  • 特開-1ピースキャップ 図2
  • 特開-1ピースキャップ 図3
  • 特開-1ピースキャップ 図4
  • 特開-1ピースキャップ 図5-1
  • 特開-1ピースキャップ 図5-2
  • 特開-1ピースキャップ 図5-3
  • 特開-1ピースキャップ 図6
  • 特開-1ピースキャップ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072778
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】1ピースキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
B65D47/08 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185426
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
(72)【発明者】
【氏名】大田 剛
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA22
3E084AA24
3E084AA32
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA02
3E084FB01
3E084GA01
3E084GA06
3E084GB01
3E084GB06
3E084HB02
3E084HD04
3E084LA01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】装着壁4側に形成された係合手段74と上蓋8側に形成された被係合片76とが係合した開蓋状態から更に上蓋8が開蓋方向に旋回せしめられた場合であっても、ストラップバンド6が破断せしめられることが可及的に防止される、新規の1ピースキャップを提供すること。
【解決手段】天面壁48の外周縁部乃至スカート壁50の上端部における、周方向において被係合片76を含む所要角度領域に切り欠き78を形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口頸部に装着される筒状の装着壁と、該装着壁にストラップバンドによってヒンジ連結された上蓋とを備えた1ピースキャップにおいて、
該上蓋は、天面壁と、該天面壁の周縁から垂下するスカート壁とを有しており、
該装着壁と該上蓋との間には、該ストラップバンドによる旋回によって該上蓋を開蓋状態としたときに、該上蓋の開蓋方向及び閉蓋方向への旋回を抑止する係合機構が設けられており、
該係合機構は、該装着壁に形成された係合手段と、該上蓋の該スカート壁の外面から径方向外側に向かって延びた後に上方に延びる被係合片とからなり、
該天面壁の外周縁部乃至該スカート壁の上端部における、周方向において該被係合片を含む所要角度領域には切り欠きが形成されている、ことを特徴とする1ピースキャップ。
【請求項2】
該係合手段は該装着壁の上端から上方に延びる係合部であり、該係合部は該被係合片と対応する周方向角度領域に規定されており、該上蓋が開蓋方向へ旋回せしめられて、該被係合片が該係合部を乗り越え、該係合部が該被係合片と該スカート壁の外面との間の空間に入り込むことで該開蓋状態が成立し、該開蓋状態にあっては、該係合部の外面が該スカート壁の外面と当接する、請求項1に記載の1ピースキャップ。
【請求項3】
該係合手段は該装着壁の上端から上方に延びる係合部を含み、該係合部は該被係合片と対応する周方向角度領域に規定されており、該係合手段は更に該係合部の周方向両側において該装着壁の外面上を上下方向に延びる突条を含んでおり、該上蓋が開蓋方向へ旋回せしめられて、該被係合片が該係合部を乗り越え、該係合部が該被係合片と該スカート壁の外面との間の空間に入り込むことで該開蓋状態が成立し、該開蓋状態にあっては、該突条の外面が該スカート壁の外面と当接する、請求項1に記載の1ピースキャップ。
【請求項4】
該係合部の外面は上方に向かって径方向内側に傾斜している、請求項2又は3に記載の1ピースキャップ。
【請求項5】
該上蓋において該切り欠きが形成された部位の外面は、該天面壁の上面から径方向外側に向かって下方に漸次変位せしめられた後に該スカート壁の外面に接続される、請求項1乃至4のいずれかに記載の1ピースキャップ。
【請求項6】
該部位の外面は該天面壁の上面及び該スカート壁の外面に連続的に接続される、請求項5に記載の1ピースヒンジキャップ。
【請求項7】
該部位の外面は上方に凸な弧状である、請求項5又は6に記載の1ピースキャップ。
【請求項8】
該切り欠きの下端は、上下方向において、該被係合片の上端よりも下方に位置する、請求項5乃至7のいずれかに記載の1ピースキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口頸部に装着される1ピースキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
螺子係合や嵌め込み等により容器の口頸部に装着される中空筒状の装着壁と、この装着壁にヒンジ連結された上蓋とからなる1ピースキャップは、飲料や医薬品など、種々の内容物が収容される容器のキャップとして、広く使用されている。
【0003】
この種の1ピースキャップでは、上蓋が装着壁にヒンジ連結されているため、上蓋を旋回することにより、開け閉めが行われる。従って、上蓋を開蓋方向に旋回して内容物を取り出す際には、開けられた上蓋が閉じないように保持することが必要である。
【0004】
上蓋の開蓋状態を維持するために、特許文献1の1ピースキャップでは、上蓋のヒンジバンド3の近傍においてスカート壁の外面から下方に延びる係止片4が設けられている。上蓋をある程度開蓋すると、係止片4が装着壁の上端の周縁を弾性的に乗り越え、上蓋の閉蓋方向への旋回が抑止される。
【0005】
また、特許文献2にも1ピースキャップが開示されており、この1ピースキャップでは、上蓋のヒンジバンド13の近傍において上蓋のスカート壁の下端から下方に延びる係止片16が設けられている。それ故に、特許文献2では、上蓋をある程度開蓋すると、係止片16が反転して容器の口頸部の外面に当接し、上蓋の閉蓋方向への旋回が抑止される。
【0006】
特許文献1、2の何れにあっても、上蓋を開蓋して内容物の取出しを行うときに上蓋が閉蓋方向に旋回することがないので、上蓋が邪魔にならずに内容物の取出しを行うことができる。
【0007】
一方、特許文献3には、1ピースキャップではないが、容器の口頸部に装着される容器体10と、容器体10に着脱自在に螺着されるキャップ本体4とを備えた2ピースキャップが開示されており、このキャップ本体4は、容器体10の外部に回転可能に外篏されるリング体2に連結片3(ヒンジバンド)を介して旋回可能に設けられている。この2ピースキャップから内容物を取り出すには、キャップ本体4を容器体10に対して回転させて上昇させた後に、連結片(ヒンジバンド)を支点として旋回させて容器体10に形成された取出口を露呈せしめ、しかる後に容器の口頸部と共に容器体10を傾動させる。このような2ピースキャップにあっては、キャップ本体4の連結片3(ヒンジバンド)の近傍に下方に延びる係合片47が設けられており、キャップ本体4を開蓋したときに、係合片47が容器体10に設けられている螺子突起に係合し、この結果、キャップ本体4の閉蓋方向及び開蓋方向への旋回が抑止され、キャップ本体4が邪魔とならずに、内容物の取出しを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭57-39330号公報
【特許文献2】実公昭54-34843号公報
【特許文献3】特開2013-230823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2の1ピースキャップにあっては、何れも上蓋の閉蓋方向への旋回を抑止しているものの、開蓋方向への旋回は許容しており、上蓋を開けたときにクリック感を全く生じない。また、これらの1ピースキャップは、何れも開蓋された状態で成形されるという形態を有しているため、大面積の成形金型を使用しなければならず、敷地面積当たりの収率(ポットイールド)が低いという問題がある。
【0010】
一方、特許文献3の2ピースキャップにあっては、キャップ本体4を開蓋して内容物の取出しを行う際に係合片47が容器体10の螺子突起に係合することに起因して、キャップ本体4は閉蓋方向への旋回と共に開蓋方向への旋回も抑止され、ある程度のクリック感を生じ得る。然しながら、係合片47が係合するのは螺子突起であり、キャップ本体4の旋回を阻止するための係合機構として形成されている部材ではないため、突起高さがさほど高くないばかりか、突起間間隔(ピッチ)が「遊び」となり、係合片47との係合力が十分ではなく、このため、さほどのクリック感を得ることができない。また、このキャップ本体4は、容器体10とは別個に形成されるばかり、リング体2に対してキャップ本体4を開けた状態で成形されるため、やはり、大面積の成形金型が必要となってしまう。
【0011】
上記事実に鑑み、本発明者は、先に、特願2020-196010の明細書及び図面において、上述したとおりの課題を解決する1ピースキャップとして、装着壁と上蓋との間には、ストラップバンドによる旋回によって上蓋を開蓋状態としたときに、上蓋の開蓋方向及び閉蓋方向への旋回を抑止する係合機構が設けられており、かかる係合機構は、装着壁の上端部に形成された係合手段と、上蓋のスカート壁の外面から径方向外側に向かって延びた後に上方に延びる被係合片とからなる1ピースキャップを提案した(以下「先行1ピースキャップ」という)。
【0012】
而して、上記先行1ピースキャップも充分に満足し得るものではなく、次のとおりの解決すべき課題を有する。即ち、本発明者の経験によれば、開蓋状態、つまり装着壁側に形成された係合手段と上蓋側に形成された被係合片とが係合した状態から更に上蓋が開蓋方向に旋回せしめられると、天面壁の上面の外周縁部乃至スカート壁の基端部が装着壁の上端部を乗り越える際にストラップバンドが過剰に引き伸ばされて破断し、上蓋が装着壁から分離してしまうことがある。
【0013】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、装着壁側に形成された係合手段と上蓋側に形成された被係合片とが係合した開蓋状態から更に上蓋が開蓋方向に旋回せしめられた場合であっても、ストラップバンドが破断せしめられることが可及的に防止される、新規且つ改良された1ピースキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、鋭意検討の結果、天面壁の外周縁部乃至スカート壁の上端部における、周方向において被係合片を含む所要角度領域に切り欠きを形成することで、上記主たる技術的課題を解決できることを見出した。
【0015】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する1ピースキャップとして、容器の口頸部に装着される筒状の装着壁と、該装着壁にストラップバンドによってヒンジ連結された上蓋とを備えた1ピースキャップにおいて、
該上蓋は、天面壁と、該天面壁の周縁から垂下するスカート壁とを有しており、
該装着壁と該上蓋との間には、該ストラップバンドによる旋回によって該上蓋を開蓋状態としたときに、該上蓋の開蓋方向及び閉蓋方向への旋回を抑止する係合機構が設けられており、
該係合機構は、該装着壁に形成された係合手段と、該上蓋の該スカート壁の外面から径方向外側に向かって延びた後に上方に延びる被係合片とからなり、
該天面壁の外周縁部乃至該スカート壁の上端部における、周方向において該被係合片を含む所要角度領域には切り欠きが形成されている、ことを特徴とする1ピースキャップが提供される。
【0016】
好ましくは、該係合手段は該装着壁の上端から上方に延びる係合部であり、該係合部は該被係合片と対応する周方向角度領域に規定されており、該上蓋が開蓋方向へ旋回せしめられて、該被係合片が該係合部を乗り越え、該係合部が該被係合片と該スカート壁の外面との間の空間に入り込むことで該開蓋状態が成立し、該開蓋状態にあっては、該係合部の外面が該スカート壁の外面と当接する。また、該係合手段は該装着壁の上端から上方に延びる係合部を含み、該係合部は該被係合片と対応する周方向角度領域に規定されており、該係合手段は更に該係合部の周方向両側において該装着壁の外面上を上下方向に延びる突条を含んでおり、該上蓋が開蓋方向へ旋回せしめられて、該被係合片が該係合部を乗り越え、該係合部が該被係合片と該スカート壁の外面との間の空間に入り込むことで該開蓋状態が成立し、該開蓋状態にあっては、該突条の外面が該スカート壁の外面と当接するようにしてもよい。これらの場合には、該係合部の外面は上方に向かって径方向内側に傾斜するのが好ましい。好適には、該上蓋において該切り欠きが形成された部位の外面は、該天面壁の上面から径方向外側に向かって下方に漸次変位せしめられた後に該スカート壁の外面に接続される。この場合には、該部位の外面は該天面壁の上面及び該スカート壁の外面に連続的に接続されるのが好ましい。更に、該部位の外面は上方に凸な弧状であるのが良い。そしてまた、該切り欠きの下端は、上下方向において、該被係合片の上端よりも下方に位置するのが好都合である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従って構成された1ピースキャップにあっては、装着壁側に形成された係合手段と上蓋側に形成された被係合片とが係合した開蓋状態から更に上蓋が開蓋方向に旋回せしめられた場合であっても、天面壁の外周縁部乃至スカート壁の上端部における、周方向において被係合片を含む所要角度領域には切り欠きが形成されていることに起因して、上蓋と装着壁の上端部との間の距離は低減し、これにより上蓋全体が装着壁から過剰に離隔せしめられること、即ちストラップバンドが過剰に引き伸ばされることは回避され、かくしてストラップバンドが破断することは可及的に防止される。本発明に従って構成された1ピースキャップにあっては更に、上蓋が装着壁の上端部を乗り越える際、上蓋はストラップバンドによって装着壁に接近する方向に引き寄せられて装着壁の上端部は切り欠きに沿って相対的に移動するため、上蓋には開蓋状態に戻ろうとする復元力が作用する。かような復元力によって、上蓋は開蓋状態に安定的に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に従って構成された1ピースキャップの好適実施形態が容器の口頸部に装着された状態の斜視図。
図2図1に示す状態の右側面図。
図3図1に示す状態の背面図。
図4図1に示す状態のA-A線断面図。
図5-1】図1に示す1ピースキャップの開封工程を説明するための断面図。
図5-2】図1に示す1ピースキャップの開封工程を説明するための断面図。
図5-3】図1に示す1ピースキャップにおいて上蓋が開封状態に到達したときの断面図。
図6図1に示す1ピースキャップにおいて上蓋が開蓋状態から更に開蓋方向へ旋回せしめられた状態を示す断面図。
図7】本発明に従って構成された1ピースキャップの他の実施形態において上蓋が開蓋状態にある状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に従って構成された1ピースキャップの好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0020】
図1乃至図4を参照して説明すると、全体を番号2で示す1ピースキャップは適宜の合成樹脂材料を射出成形することによって一体的に成形され、後述する容器の口部に装着される筒状の装着壁4と、この装着壁4にストラップバンド6によってヒンジ連結された上蓋8とを備えている。
【0021】
装着壁4は円筒形状であって上下方向略中間部には周方向に延びる破断可能ライン10が形成されており、装着壁4は破断可能ライン10よりも上方の主部12と破断可能ライン10より下方のタンパーエビデント裾部14とに区画されている。図示の実施形態においては、破断可能ライン10は周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリット(切り溝)16とスリット16間に残留せしめられている複数個の橋絡部18とから構成されており、タンパーエビデント裾部14は複数個の橋絡部18を介して主部12に接続されている。後に言及するとおり、破断可能ライン10は実質上水平ではなく、周方向の所要部位において適宜上下方向に偏倚せしめられている。
【0022】
装着壁4の主部12の正面及び背面には夫々、上端縁が所要角度範囲に亘って周方向に連続して下方に偏倚せしめられて第一の凹所22及び第二の凹所24が形成されている。図2を参照することによって理解されるとおり、第一の凹所22及び第二の凹所24は夫々直径方向の反対側に位置し、第一の凹所22の方が第二の凹所24よりも小さく下方に偏倚せしめられている。そして、図3に示すとおり、第一の凹所22が形成された主部12の上端面にはストラップバンド6の片端が接続されている。主部12の外面には、周方向に見て交互に存在する凹凸形状から構成された滑り止めローレット26が形成されている。かような滑り止めローレット26は、第一の凹所22が形成された背面の角度領域の周方向中央部(図3)、及び第一の凹所22と第二の凹所24との間の側面の周方向中央部(図2)には形成されておらず、滑り止めローレット26が形成されていない部分をローレット非形成領域として番号28で示す。必ずしも明確には図示されていないが、第一の凹所22と第二の凹所24との間の周方向中央部に位置するローレット非形成領域28は直径方向の反対側にも設けられている。図4に示すとおり、主部12の内周面には雌螺条30が形成されている。装着壁4のタンパーエビデント裾部14の内周面には係止突条32が配設されている。
【0023】
図3を参照して説明すると、同図(つまり背面)において番号34で示す特定角度領域の装着壁4の主部12にあっては、下端が上方に偏倚された2つの凹部36が周方向に間隔をおいて形成されている。2つの凹部36はいずれも、周方向片側は実質上鉛直であるが、周方向他側は周方向片側に向かって上方に緩やかに傾斜している。これにより、主部12の下端部には凹部36の周方向片側に位置して実質上鉛直に延びる係止面38と凹部36の周方向他側に位置する上側傾斜面40とが夫々設けられている。一方、特定角度領域34のタンパーエビデント裾部14にあっては、上端が上方に偏倚された2つの凸部42が周方向に間隔をおいて形成されている。2つの凸部42はいずれも、周方向片側は実質上鉛直であるが、周方向他側は周方向片側に向かって上方に緩やかに傾斜している。これにより、タンパーエビデント裾部14の上端部には凸部42の周方向片側に位置して実質上鉛直に延びる被係止面44と凸部42の周方向他側に位置する下側傾斜面46とが設けられている。かような凸部42は主部12の下端部に形成された凹部36と対応し、図3に示す状態にあっては、凸部42は凹部36に受容されている。また、図3と共に図1を参照することによって理解されるとおり、かような特定角度領域34は1ピースキャップ2の正面にも設けられている。
【0024】
上蓋8は円形の天面壁48と、この天面壁48の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁50とを有している。背面の所定角度部位において、スカート壁50の外面の下端部にはストラップバンド6の他端が接続されており、上蓋8は装着壁4の上端面を覆う閉蓋状態(図1乃至図5-1に示す状態)と装着壁4の上端面を露呈せしめる開蓋状態(図5-3に示す状態)との間を旋回自在である。図示の実施形態においては、上蓋8は閉蓋状態から開蓋方向(図5-1乃至図5-3にあっては紙面において時計方向)に略120度旋回することで開蓋状態となる。図4に示すとおり、天面壁48の内面外周縁部には、下方に垂下する円筒形状のシール片52、及びシール片52とスカート壁50との間に位置する比較的小さい環状突出部54が形成されている。上蓋8の外周面には径方向外側に向かって突出する上側鍔部56が形成されている。上側鍔部56は天面壁48の上面から径方向外側に向かって下方に弧状に延出した後に、実質上水平に径方向内側に延出してスカート壁50の外面上端部に接続されている。図1乃至図3を参照することによって理解されるとおり、かような上側鍔部56は凡そ装着壁4の第一の凹所22が形成された角度領域を除く角度領域において周方向に連続して設けられている。
【0025】
スカート壁50の外面下端部には、周方向に連続して延在する円弧形状の補助突条58が形成されている。補助突条58はスカート壁50の剛性を高めるのに寄与する。補助突条58は、装着壁4の第一の凹所22と第二の凹所24との間の周方向中央部に規定されたローレット非形成領域28に対応して配置されており、図3に示すとおり、補助突条58は直径方向の両側に1つずつ配置されている。図4に示すとおり、スカート壁50の内周面の下端部には周方向に連続して延びる円環形状の上側突条60が形成されている。スカート壁50の正面の周方向所要部位には、スカート壁50の下面から連続して下方に垂下する円弧形状の垂下壁62が設けられている。垂下壁62は上蓋8が後述する閉蓋状態にあるときに第二の凹所24に位置し、これにより上蓋8を閉蓋状態に安定的に保持することができる。垂下壁62の外面の下端部には径方向外側に向かって突出する円弧形状の下側鍔部64が形成されている。垂下壁62の外面の周方向両側縁部には上下方向に延びる補強突出部66も形成されている。図4に示すとおり、垂下壁62の内面の上端部には周方向に延在する第一の下側突条68が形成されている。ここで、第一の下側突条68が形成された部位とは直径方向反対側つまりスカート壁50の背面にも、第一の下側突条68と同一の上下方向位置に突条が形成されている。かかる突条を第二の下側突条として番号70で示すと、第二の下側突条70も第一の下側突条68と同様に上側突条60よりも下方に位置する。図4と共に図3を参照することによって理解されるとおり、第二の下側突条70は垂下壁62とは直径方向反対側においてスカート壁50の下面から連続して下方に垂下する円弧形状の垂下小壁72の内面上端部に形成されている。
【0026】
図3を参照して説明すると、ストラップバンド6は可撓性を有する紐状であって周方向に間隔をおいて2つ設けられている。2つのストラップバンド6は夫々、装着壁4の上端面から上方に延出した後に相互に近接する方向に実質上水平に延出し、次いで上方に向かってU字状に屈曲せしめられた後に相互に離隔する方向に実質上水平に延出し、その後に上方に延出してスカート壁50の外周面下端部に接続されている。従って、2つのストラップバンド6は両者の中間において軸線方向に延びる直線に対して線対称の位置関係にある。
【0027】
図2乃至図4を参照して説明を続けると、装着壁4と上蓋8との間には、ストラップバンド6による旋回によって上蓋8を開蓋状態としたときに、上蓋8の開蓋方向及び閉蓋方向への旋回を抑止する係合機構が設けられている。かかる係合機構は、装着壁4の上端部に形成された係合手段74と、上蓋8のスカート壁50の外面から径方向外側に向かって延びた後に上方に延びる被係合片76とからなる。図示の実施形態においては、係合手段74は装着壁4において被係合片76と対応する周方向角度領域に規定された係合部74aであり、係合部74aの外面は上方に向かって径方向内側に傾斜している。係合機構の作用については後に言及する。
【0028】
本発明に従って構成された1ピースキャップにあっては、天面壁48の外周縁部乃至スカート壁50の基端部における、周方向において被係合片76を含む所要角度領域には切り欠き78が形成されていることが重要である。図4を参照することによって理解されるとおり、図示の実施形態においては、上蓋8において切り欠き78が形成された部位の外面は、天面壁48の上面から径方向外側に向かって下方に漸次変位せしめられた後にスカート壁50の外面に接続されている。そして、上記部位の外面は上方に凸な弧状であって、天面壁48の上面及びスカート壁50の外面に連続的且つ滑らかに接続されている。また、切り欠き78の下端は、上下方向において、被係合片76の上端よりも下方に位置する。所望ならば、上記部位の外面は直線状、階段状、又は下方に凸な弧状であってもよい。また、切り欠き78が形成される上記所要角度領域は、上蓋8の強度に支障をきたさない範囲において適宜に設定することができる。
【0029】
上述した1ピースキャップ2では、装着壁4の外面を囲繞する部材及び上蓋8のスカート壁50の外面を囲繞する部材が存在しない、つまり型抜きが困難となるような部材が存在しないため、適宜の成形金型によって上蓋8を閉じた状態で成形することができる。それ故に、1ピースキャップ2では、これを成形するための成形金型が要する面積を小さくすることができ、良好な効率で製造することができる。
【0030】
図1等には、1ピースキャップ2と共に容器の口頸部100が二点鎖線で図示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂、ガラス或いは金属薄板から形成することができる容器の口頸部100は全体として円筒形状であり、図4に示すとおり、その頂面は開放されている。口頸部100の外周面の上端部には径方向外側に突出した環状係止突条102が形成されている。口頸部100の外周面には更に、雄螺条104と、雄螺条104の下方に位置する係止あご部106と、係止あご部106の下方に位置するサポートリング108(かかるサポートリング108は当業者には周知の如く容器の搬送に利用される)とが形成されている。
【0031】
容器内に内容物を充填した後に口頸部100に1ピースキャップ2を装着して口頸部100を密封する際には、口頸部100に閉蓋状態にある1ピースキャップ2を被嵌してこれを閉回転方向、図2乃至図4において上方から見て時計方向、に回転せしめ、1ピースキャップ2の雌螺条30を口頸部100の雄螺条104に螺合せしめる。図4に示す状態まで雌螺条30を雄螺条104に螺合せしめると、1ピースキャップ2のシール片52が口頸部100内に進入して口頸部100の内周面に密接され、第一の下側突条68及び第二の下側突条70に続き上側突条60が順次環状係止突条102を弾性的に乗り越えて環状突出部54が口頸部100の頂面に密接せしめられ、かくして口頸部100が密封される。タンパーエビデント裾部14の内周面に配設されている係止突条32は口頸部100の係止あご部106を弾性的に(即ちタンパーエビデント裾部14の弾性変形乃至変位によって)乗り越えて係止あご部106の下方に位置する。係止突条32が係止あご部106を弾性的に乗り越える際には、係止突条32と係止あご部106とが密着することでタンパーエビデント裾部14にのみ制動力が付加されるものの、図示の実施形態においては、図3に示すとおり、主部12には係止面38がタンパーエビデント裾部14には被係止面44が夫々形成されており、係止面38が被係止面44と周方向に係止して主部12がタンパーエビデント裾部14を閉回転方向(周方向)に押すことで、主部12がタンパーエビデント裾部14に対して閉回転方向に回転することが阻止され、これにより口頸部100に1ピースキャップ2を装着する際に破断可能ライン10の橋絡部18が破断することが防止される。
【0032】
内容物を消費するために口頸部100を開封する際には、閉蓋状態にある1ピースキャップ2を開方向、即ち図4において上方から見て反時計方向、に回転せしめる。かくすると、雄螺条104と雌螺条30の螺合が漸次解除され、装着壁4の主部12及び上蓋8は回転と共に軸線方向上方に移動せしめられる。一方、タンパーエビデント裾部14は係止突条32が口頸部100の係止あご部106に係止せしめられる故に軸線方向上方への移動が阻止され、かくして破断可能ライン10の橋絡部18に応力が生成されて橋絡部18が破断され、タンパーエビデント裾部14が装着壁4の主部12から切り離される。このとき、図示の実施形態においては、図3に示すとおり、主部12には上側傾斜面40がタンパーエビデント裾部14には下側傾斜面46が夫々形成されており、1ピースキャップ2が開方向に回転せしめられると、上側傾斜面40と下側傾斜面46との協働によって主部12がタンパーエビデント裾部14に対して上方へ移動するよう案内されるため、橋絡部18は容易に破断される。そして、橋絡部18が破断されると同時に、図5-1に示すとおり、上蓋8の上側突条60が口頸部100の環状係止突条102を弾性的に乗り越え、環状係止突条102が上側突条60と第一の下側突条68及び第二の下側突条70との間に位置せしめられる。
【0033】
続いて、上蓋8の垂下壁62の外面に指の平を添えると共に上側鍔部56の下面に指を掛けて上蓋8を上方に強制することで、上蓋8の第一の下側突条68及び第二の下側突条70が口頸部100の環状係止突条102を弾性的に乗り越える。その後に、図5-2に示すとおり上蓋8がストラップバンド6を旋回中心として開蓋方向へ所要旋回角度だけ旋回せしめられると、被係合片76が係合部74aを弾性的に乗り越える。このとき、装着壁4と上蓋8とを連結するストラップバンド6は可撓性を有する紐状であることに起因して上蓋8は装着壁4に対して僅かに移動することが可能であり、それ故に被係合片76は容易に係合部74aを乗り越えることができる。また、図示の実施形態においては、係合部74aの外面は上方に向かって径方向内側に傾斜しているため、これによっても被係合片76は充分容易に係合部74aを乗り越えることができる。その後に、係合部74aが被係合片76とスカート壁50の外面との間の空間に入り込み、かくして図5-3に示すとおりの開蓋状態が成立する。開蓋状態にあっては、係合部74aの外面がスカート壁50の外面と当接することで上蓋8の開蓋方向への旋回が、係合部74aの内面が被係合片76の内面と当接することで上蓋8の閉蓋方向(図5-1乃至図5-3にあっては紙面において反時計方向)への旋回が夫々抑止され、かくして本発明の1ピースキャップ2にあっては充分なクリック感が得られる。開蓋状態にあっては容器の口頸部100の頂面が露呈されるため、容器を適宜に傾斜せしめれば、容器内の内容物が口頸部100の頂面から排出される。このとき、上蓋8は係合部74a及び被係合片76からなる係合機構によって閉蓋方向への旋回が抑止されていることから、容器を傾斜せしめた際に上蓋8が閉蓋方向に旋回することはなく、使用者は容易に内容物を排出することができる。
【0034】
本発明に従って構成された1ピースキャップにあっては、装着壁4側に形成された係合手段74と上蓋8側に形成された被係合片76とが係合した開蓋状態(図5-3に示す状態)から更に上蓋8が開蓋方向に旋回せしめられた場合であっても、天面壁48の外周縁部乃至スカート壁の基端部における、周方向において被係合片76を含む所要角度領域には切り欠き78が形成されていることに起因して、図6に示すとおり、上蓋8と装着壁4の係合部74a(上端部)との間の距離は低減し、これにより上蓋8全体が装着壁4から過剰に離隔せしめられること、即ちストラップバンド6が過剰に引き伸ばされることは回避され、かくしてストラップバンド6が破断することは可及的に防止される。本発明に従って構成された1ピースキャップにあっては更に、上蓋8が装着壁4の係合部74a(上端部)を乗り越える際、上蓋8はストラップバンド6によって装着壁4に接近する方向に引き寄せられて装着壁4の係合部74a(上端部)は切り欠き78に沿って相対的に移動するため、上蓋8には開蓋状態に戻ろうとする復元力が作用する。かような復元力によって、上蓋8は開蓋状態に安定的に維持される。
【0035】
内容物を所定量排出した後には、ストラップバンド6を旋回中心として上蓋8を開蓋状態から閉蓋状態まで閉蓋方向へ旋回せしめる。この際、被係合片76が係合部74aを再び弾性的に乗り越えることで上記係合は解除される。そして、図5-1に示すとおり、上蓋8のシール片52が口頸部100の内側に進入することで、上蓋8が口頸部100の頂面を仮密封する。さらに、上蓋8の第一の下側突条68及び第二の下側突条70が容器の口頸部100に形成された環状係止突条102を弾性的に乗り越えてこれの下方に位置することで、上蓋8は閉蓋状態に保持される。
【0036】
上述した実施形態においては、係合手段74は係合部74aのみから構成され、上蓋8が開蓋状態にあるときには、係合部74aの外面がスカート壁50の外面と当接することで上蓋8の開蓋方向への旋回が、係合部74aの内面が被係合片76の内面と当接することで上蓋8の閉蓋方向への旋回が夫々抑止されていたが、所望ならば、係合手段74を係合部74aと共に係合部74aの周方向両側において装着壁4の外面上を上下方向に延びる突条74bとによって構成し(図3を参照されたい)、上蓋8が開蓋状態にあるときには、突条74bの外面がスカート壁50の外面と当接することで上蓋8の開蓋方向への旋回が、係合部74aの内面が被係合片76の内面と当接することで上蓋8の閉蓋方向への旋回が夫々抑止されるように構成することもできる。この場合には、図7に示されるとおり、開蓋状態において係合部74aの外面はスカート壁50の外面から離隔する。上記突条74bは図3に示すとおり、装着壁4の主部12の外周面に形成された滑り止めローレット26の一部により構成される。
【符号の説明】
【0037】
2:1ピースキャップ
4:装着壁
6:ストラップバンド
8:上蓋
48:天面壁
50:スカート壁
74:係合手段
76:被係合片
78:切り欠き
100:(容器の)口頸部
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7