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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072797
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】血管新生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/194 20060101AFI20230518BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 35/644 20150101ALI20230518BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20230518BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230518BHJP
【FI】
A61K31/194
A61P9/00
A61K35/644
A23L33/12
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185451
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(71)【出願人】
【識別番号】507307374
【氏名又は名称】学校法人神戸学院
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢章
(72)【発明者】
【氏名】水谷 健一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD10
4B018MD76
4B018ME14
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB22
4C087CA03
4C087CA37
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA36
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA36
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA36
(57)【要約】
【課題】新規な血管新生促進剤を提供すること。
【解決手段】デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する、血管新生促進剤。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する、血管新生促進剤。
【請求項2】
デセン二酸が2-デセン二酸である、請求項1に記載の血管新生促進剤。
【請求項3】
デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物が、ローヤルゼリー代謝物に由来するものである、請求項1又は2に記載の血管新生促進剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の血管新生促進剤を含む、血管新生を促進するための食品組成物。
【請求項5】
食品、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品からなる群より選択される、請求項4に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管新生促進剤及び血管新生を促進するための食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生促進剤としては、例えば、アセチルサリチル酸又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする血管新生促進剤(特許文献1)、及び特定の構造を有するシクロブチルプリン誘導体(特許文献2)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/252732号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/230659号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、新規な血管新生促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ローヤルゼリー代謝物に多く含まれる、デセン二酸及びセバシン酸が優れた血管新生促進作用を有することを新たに見出した。
【0006】
本発明は、デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する、血管新生促進剤を提供する。
【0007】
デセン二酸は、2-デセン二酸であってよく、trans-2-デセン二酸であってもよい。
【0008】
デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物は、ローヤルゼリー代謝物に由来するものであってもよい。
【0009】
さらに本発明は、上記血管新生促進剤を含む、血管新生を促進するための食品組成物を提供する。
【0010】
上記食品組成物は、食品、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品からなる群より選択されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、新規な血管新生促進剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】デセン二酸添加条件下でHUVECが形成したチューブを位相差顕微鏡により観察した写真である。DMSOはネガティブコントロールであり、各濃度は培養開始前の培地におけるデセン二酸の濃度を示す。
図2】セバシン酸添加条件下でHUVECが形成したチューブを位相差顕微鏡により観察した写真である。DMSOはネガティブコントロールであり、各濃度は培養開始前の培地におけるセバシン酸の濃度を示す。
図3】ImageJを使用した解析により、デセン二酸添加条件下でHUVECが形成したチューブの全長(a)、網目構造の数(b)、分岐点の数(c)を、それぞれ算出及び比較した結果を示すグラフである(n=6、*p<0.05;**p<0.01)。横軸の濃度は培養開始前の培地におけるデセン二酸の濃度を示す。
図4】ImageJを使用した解析により、セバシン酸添加条件下でHUVECが形成したチューブの全長(a)、網目構造の数(b)、分岐点の数(c)を、それぞれ算出及び比較した結果を示すグラフである(n=6、*p<0.05;**p<0.01)。横軸の濃度は培養開始前の培地におけるセバシン酸の濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明の一実施形態として、デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する血管新生促進剤が提供される。
【0015】
本明細書において、「血管新生促進」とは、新しい血管構造の形成を促進することを意味する。血管新生の促進は、例えば、血管新生促進剤を投与して一定時間経過後の血管構造形成の程度により評価することができる。血管構造形成の程度は、例えば、血管の長さ、網目構造の数、血管の分岐点の数等により評価することができ、血管の長さの増加、網目構造の数の増加、及び血管の分岐点の数の増加から選択される1以上、2以上又は3つが確認された場合に、血管新生が促進されているとすることができる。例えば、血管新生促進剤を投与して一定時間経過後の血管の長さの平均が、基準値と比較して増加している場合に、血管新生が促進されているとすることができる。
【0016】
例えば、血管新生促進剤を投与して一定時間経過後の血管の長さの平均が、基準値と比較して増加している場合に、血管新生が促進されているとすることができる。例えば、血管新生促進剤を投与して一定時間経過後の血管の長さの平均が、基準値と比較して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、又は90%増加している場合に、血管新生が促進されているとすることができる。
【0017】
また、例えば、血管新生促進剤を投与して一定時間経過後の網目構造の数の平均が、基準値と比較して増加している場合に、血管新生が促進されているとすることができる。例えば、血管新生促進剤を投与して一定時間経過後の網目構造の数の平均が、基準値と比較して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、又は90%増加している場合に、血管新生が促進されているとすることができる。
【0018】
また、例えば、血管新生促進剤を投与して一定時間経過後の血管の分岐点の数の平均が、基準値と比較して増加している場合に、血管新生が促進されているとすることができる。例えば、血管新生促進剤を投与して一定時間経過後の血管の分岐点の平均が、基準値と比較して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、又は90%増加している場合に、血管新生が促進されているとすることができる。
【0019】
血管新生の促進は、例えば、血管新生促進剤を投与してから基準を満たす血管が形成されるまでの時間により評価することもできる。基準となる血管は、例えば、血管の長さ、網目構造の数、血管の分岐点の数等により設定することができる。血管の長さ、網目構造の数、及び血管の分岐点の数から選択される1以上、2以上又は3以上が基準値に達するまでの時間が、血管新生促進剤を投与していない場合と比較して短い場合に、血管新生が促進されているとすることができる。
【0020】
例えば、血管新生促進剤を投与してから血管の長さの平均が基準値(長さ)に達するまでの時間が、基準値(時間)と比較して短い場合に、血管新生が促進されているとすることができる。例えば、血管の長さの平均が基準値(長さ)に達するまでの時間が、基準値(時間)と比較して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、又は90%短縮されている場合に、血管新生が促進されているとすることができる。
【0021】
また、例えば、血管新生促進剤を投与してから網目構造の数の平均が基準値(長さ)に達するまでの時間が、基準値(時間)と比較して短い場合に、血管新生が促進されているとすることができる。例えば、網目構造の数の平均が基準値(長さ)に達するまでの時間が、基準値(時間)と比較して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、又は90%短縮されている場合に、血管新生が促進されているとすることができる。
【0022】
また、例えば、血管新生促進剤を投与してから血管の分岐点の数の平均が基準値(長さ)に達するまでの時間が、基準値(時間)と比較して短い場合に、血管新生が促進されているとすることができる。例えば、血管の分岐点の数の平均が基準値(長さ)に達するまでの時間が、基準値(時間)と比較して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、又は90%短縮されている場合に、血管新生が促進されているとすることができる。
【0023】
基準又は基準値は、血管新生促進剤を投与していない場合又はその場合の値、血管新生促進剤を投与する直前又はその場合の値、血管新生促進剤を投与した直後又はその時の値、生体組織における血管又はそれに基づく値等から評価の方法にあわせて適切なものを用いることができる。
【0024】
生体組織において血管新生の促進を評価する場合には、例えば、血管可視化マウスを用いた評価系により、判断することができる。血管内皮細胞、血管に分化する幹細胞等の細胞の培養における血管新生の促進を評価する場合には、例えば、培養により製造された細胞塊又は組織体を用いて、判断することができる。血管構造形成の程度、例えば、血管の長さ、網目構造の数、血管の分岐点の数等は、位相差顕微鏡等により観察でき、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて解析することができる。
【0025】
血管新生促進剤を投与する対象は、齧歯類、有蹄類、食肉類、有袋類、及び霊長類であってよく、これらに由来する組織又は細胞であってもよい。対象は、カニクイザル及びヒト等の哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。細胞は、例えば、血管内皮細胞及び血管に分化する幹細胞であってよい。
【0026】
ローヤルゼリーは投与対象の体内で代謝されることにより、ローヤルゼリー代謝物となる。デセン二酸及びセバシン酸は、ローヤルゼリー代謝物の主要構成成分であり、例えば、ローヤルゼリー投与後のヒト対象の血漿において多く見受けられることが報告されている(Yamagata et al.,RSC Advances (2019),9,15392-15401)。今回、ローヤルゼリー代謝物の主要構成成分であるデセン二酸及びセバシン酸は、血管新生を促進させる作用を有することが新たに見出された。したがって、本実施形態の血管新生促進剤は、デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有することにより、血管新生を促進する作用を有する。
【0027】
デセン二酸及びセバシン酸の塩は、食品用途又は医薬用途に許容される塩であってよい。デセン二酸及びセバシン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、その他の金属、アンモニウム等との塩が挙げられる。デセン二酸及びセバシン酸の塩より具体的な例として、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。
【0028】
デセン二酸は、2-デセン二酸であってよい。また、2-デセン二酸は、cisであってもtransであってもよく、trans-2-デセン二酸であることが好ましい。
【0029】
デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩は、化学合成品であってもよく、例えば、ローヤルゼリー等の天然由来のものであってもよい。デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩は、ローヤルゼリーの代謝物に多く含まれるため、例えば、デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩は、ローヤルゼリー代謝物由来のものであってもよい。
【0030】
本実施形態の血管新生促進剤は、デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩を1種単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。2種以上の混合物を含有する場合、2種以上の化合物を単に混合してもよく、2種以上の化合物を単に混合してもよく、例えば上記化合物の含有濃度が高くなるように、天然ローヤルゼリー又はその代謝物を処理(例えば、濃縮)することによって得られた混合物であってもよい。
【0031】
本実施形態に係る血管新生促進剤におけるデセン二酸又はその塩の含有量は、血管新生促進剤全量に対して乾燥固形分換算で0.1質量以上99質量%以下であってよく、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、93質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は100質量%であってもよい。また、本実施形態に係る血管新生促進剤におけるデセン二酸又はその塩の含有量は、血管新生促進剤全量に対して固形分で100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
【0032】
本実施形態に係る血管新生促進剤におけるセバシン酸又はその塩の含有量は、血管新生促進剤全量に対して乾燥固形分換算で0.1質量以上99質量%以下であってよく、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、93質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は100質量%であってもよい。また、本実施形態に係る血管新生促進剤におけるセバシン酸又はその塩の含有量は、血管新生促進剤全量に対して固形分で100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
【0033】
ヒトへの投与の場合の血管新生促進剤の用量は、化合物の種類、摂取する人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、適宜設定することができる。
【0034】
本実施形態の血管新生促進剤は、有効成分量換算で、体重60kgの成人に一日当たり1mg以上10g以下の用量で用いることができ、5mg以上8g以下の用量で用いることが好ましく、10mg以上3g以下の用量で用いることがより好ましく、15mg以上1.5g以下の用量で用いることが更に好ましく、20mg以上1g以下の用量で用いることが更により好ましく、22mg以上500mg以下の用量で用いることが更によりまた好ましく、24mg以上250mg以下の用量で用いることが特に好ましい。本発明の血管新生促進剤を小児に用いる場合の用量は、例えば、6歳から13歳未満では成人の3/5用量、1歳から6歳未満では成人の2/5用量、1歳未満では1/5用量としてもよい。当該用量は、摂取する人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0035】
本実施形態の血管新生促進剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与(例えば、鼻腔内投与)されてもよい。本発明の血管新生促進剤は、一日当たりの有効成分量が上述した範囲内にあれば、一日一回投与されてもよいし、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。また、本発明の血管新生促進剤は、継続的に投与されるのが好ましい。継続的に投与されることにより、血管新生活性化効果がより一層顕著に発揮される。
【0036】
本実施形態に係る血管新生促進剤は、上記有効成分のみを含有するものであってもよく、本発明による効果を妨げない限り、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、薬学的に許容される成分(例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤)、食品として許容される成分(例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤)を挙げることができる。
【0037】
本実施形態の血管新生促進剤は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよい。本発明の血管新生促進剤の形態は、例えば、素錠、糖衣錠、顆粒、粉末、タブレット、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、シームレスカプセル)であってもよい。本発明の血管新生促進剤は、例えば、有効成分である本発明に係る化合物又はその塩と、必要に応じて他の成分とを混合して上記剤形に成形することによって調製することができる。
【0038】
本実施形態の血管新生促進剤は、医薬品、医薬部外品及び食品組成物そのものとして、並びに医薬品、医薬部外品及び食品組成物に添加して使用することができる。食品組成物としては、食品の3次機能(体調調節機能)が強調された食品であることが好ましい。食品の3次機能が強調された食品としては、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品を挙げることができる。
【0039】
本実施形態の血管新生促進剤からなる医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物、又は本実施形態の血管新生促進剤を含む医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物は、血管新生促進用であってよく、例えば、血管新生促進作用を通じて、血管の新生を促進することで、血管損傷又は異常の修復、皮膚の治癒又は再構築(例えば、創傷・熱傷治癒又は改善)、血管新生促進により改善し得る血管新生関連疾患の予防又は治療等に用いることができる。
【0040】
本実施形態の血管新生促進剤からなる医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物、又は本発明の血管新生促進剤を含む医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物は、また、血管新生促進作用を通じて、血流の改善又は復活を促進することができる。
【0041】
本実施形態の血管新生促進剤からなる医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物、又は本実施形態の血管新生促進剤を含む医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物は、さらに、加齢に伴う毛細血管の減少に伴う疾患若しくは症状の改善又は治療に用いることができる。
【0042】
医薬品、医薬部外品及び食品組成物における本実施形態の血管新生促進剤の含有量は、一日当たり摂取する有効成分量が上述した範囲内となるように、医薬品、医薬部外品及び食品組成物の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
本発明に係る血管新生促進剤を含む食品組成物は、上記血管新生促進剤を例えば0.005~10.0質量%含んでいてよい。化合物が2-デセン二酸である場合、0.1mg~20mg/1gの乾燥質量の食品組成物であってよく、1mg~10mg/1gの乾燥質量の食品組成物であることが好ましい。化合物がセバシン酸である場合、例えば、0.05mg~10mg/1gの乾燥質量の食品組成物であってよく、0.5mg~5mg/1gの乾燥質量の食品組成物であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の血管新生促進剤を食品組成物そのものとして、又は食品組成物に添加して使用する場合、食品組成物の形態は特に限定されず、例えば、飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料等の清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)であってもよい。
【0045】
本実施形態の血管新生促進剤を食品の3次機能が強調された食品(例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品)そのものとして、又は食品の3次機能が強調された食品に添加して使用する場合、食品の3次機能が強調された食品の形態は、上述した食品の形態に加えて、例えば、素錠、糖衣錠、顆粒、粉末、タブレット、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、シームレスカプセル)であってもよい。
【0046】
本実施形態の血管新生促進剤を医薬品若しくは医薬部外品そのものとして、又は医薬品若しくは医薬部外品に添加して使用する場合、医薬品又は医薬部外品の形態は特に限定されず、例えば、素錠、糖衣錠、顆粒、粉末、タブレット、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、シームレスカプセル)であってもよい。
【0047】
本実施形態の血管新生促進剤を添加した医薬品、医薬部外品又は食品組成物の製法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、医薬品、医薬部外品又は食品組成物の製造工程における中間製品又は最終製品に、本実施形態の血管新生促進剤を混合等して、上記の用途に用いられる医薬品、医薬部外品又は食品組成物を得ることができる。
【0048】
上述した本実施形態は、血管新生促進に使用するための、デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物と捉えることもできる。本実施形態は、血管新生促進剤の製造における、デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物の応用と捉えることもできる。
【0049】
上述した本実施形態は、デセン二酸、セバシン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含有する血管新生促進剤の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、血管新生を促進する方法と捉えることもできる。対象は、齧歯類、有蹄類、食肉類、有袋類、及び霊長類であってよい。対象は、カニクイザル及びヒト等の哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【実施例0050】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
以下の方法にしたがって2-デセン二酸(Sundia MediTech社、以下「デセン二酸」という)及びセバシン酸(Nacalai tesque社)による血管新生促進効果を検討した。
【0052】
1.実験方法
1-1.Tube Formationアッセイ(in vitro血管新生能の評価)
150μLのマトリゲル(Corning社)を48ウェルプレート中に滴下し、37℃インキュベータ中で30分以上加温した後、HUVEC(Lonza社、ヒト臍帯静脈内皮細胞)を播種し(実験には継代数が5のものを使用)、種々濃度のデセン二酸及びセバシン酸を添加したEBM-2培地(Lonza社)中で8時間培養した。培養前の細胞密度は4.0×10cells/mLであり、培養条件は37℃であった。チューブ形成が良好であった培養後6時間の培養物を血管新生能の評価に用いた。
【0053】
評価は、位相差顕微鏡を用い、HUVECがゲル上に形成するチューブの形成過程を記録し、1ウェル当たり最低4か所を撮影した。培養後6時間に位相差顕微鏡により撮影した写真を図1及び図2に示した(n=6、*p<0.05;**p<0.01)。図1はデセン二酸、図2はセバシン酸の結果を示す。
【0054】
また、ImageJを使用した解析により、画像中のチューブの全長、網目構造の数、分岐点の数を、それぞれ算出した結果を図3及び図4に示した。図3はデセン二酸、図4はセバシン酸の結果を示す。
【0055】
2.実験結果
2-1.RJ 代謝物のin vitro 血管新生能への効果
デセン二酸添加条件下及びセバシン酸添加条件下でHUVECが形成するチューブをコントロール(DMSO添加)とそれぞれ比較したところ、デセン二酸及びセバシン酸の添加により、血管新生が促進されていることが分かった(図1及び図3)。特に、図1及び図3における点線枠(コントロール)と実線枠部分を比較するとその違いが顕著である。
【0056】
デセン二酸の添加条件下及びセバシン酸の添加条件下でHUVECが形成するチューブの全長、網目構造の数、分岐点の数を比較したところ、デセン二酸の添加により、チューブの全長、網目構造の数、分岐点の数が有意に増加することが確認された(図2)。また、デセン二酸ほどではないものの、セバシン酸の添加によっても、チューブの全長、網目構造の数、分岐点の数が増加する傾向が観察された(図4)。
図1
図2
図3
図4