(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072799
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】要介護者の自立支援車
(51)【国際特許分類】
A61G 5/14 20060101AFI20230518BHJP
A61G 7/14 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A61G5/14
A61G7/14
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185458
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】394015165
【氏名又は名称】徳機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】縄田 真一
(72)【発明者】
【氏名】淺田 純子
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040JJ08
(57)【要約】
【課題】
簡単な構造で要支援者の上半身を安定してスムーズに昇降でき、かつ製品価格も低減させ得る要介護者の自立支援車を提供する。
【解決手段】
要介護者の上半身部を支承するための上面視コ字型の支持部材と、前輪と後輪を備えた下部の台車と、前記台車と前記支持部材との間に立設された複数本の伸縮性支柱とで構成され、かつ前記伸縮性支柱の少なくとも1本には拡張方向に付勢されたガススプリングが内装され、さらに前記上部の支持部材上には左右2本の握持用短尺棒体が立設され、また前記支柱の伸縮位置を制御する操作ボタンが付設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の歩行や移乗のための自立支援車であって、
要介護者の上半身部を支承するための上面視コ字型の支持部材と、前輪と後輪を備えた下部の台車と、前記台車と前記支持部材との間に立設された複数本の伸縮性支柱とで構成されてなり、かつ前記伸縮性支柱には拡張方向に付勢されたガススプリングが内装され、さらに前記支持部材上に立設された左右2本の握持用短尺棒体と前記支柱の伸縮位置を制御する操作ボタンを備えてなることを特徴とする要介護者の自立支援車。
【請求項2】
要介護者の歩行や移乗のための自立支援車であって、
要介護者の上半身部を支承するための上面視コ字型の支持部材と、前輪と後輪を備えた下部の台車と、前記台車と前記支持部材との間に立設された複数本の伸縮性支柱とで構成されてなり、かつ前記複数の伸縮性支柱の少なくとも1本がロック機能付きガススプリングであり、
さらに前記上部の支持部材上に立設された左右2本の握持用短尺棒体を備え、そしてまた該ガススプリングの作動によって前記支持部材を上下所定位置(高さ)に移動させた後その位置に安定に保持する制御をするための操作ボタンを握持用短尺棒体に付設して備えてなることを特徴とする要介護者の自立支援車。
【請求項3】
コ字型の支持部材の左右上面に板状の肘受部を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の要介護者の自立支援車。
【請求項4】
操作ボタンが握持用短尺棒体の上端に取着されてなることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の要介護者の自立支援車。
【請求項5】
台車には、要介護者が立ち座り時に回動しないように固定する固定具を備えてなることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の要介護者の自立支援車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立ち座りや歩行の際に介助者の力を必要とする要介護者の屋内での自立歩行を安定して容易にできるようにする要介護者の自立支援車に関する。
【背景技術】
【0002】
要介護者の立ち上がり補助器具及び歩行支援装置の発明として、ガススプリングによって支持部を昇降させて要介護者の立ち上がりを補助する器具を備えたものが開示されている。(特許文献1、特許文献2)
特許文献1においては、この立ち上がり補助器具にあっては肘置部の支持機構が、肘置部の左右に設けられた第1の固定支点回りに回動するアームと、第2の固定支点回りに回動するガススプリングを備え、これらアーム及びガススプリングの各々の回動端部によって肘置部の使用者側及び反使用者側に設定した支持部を支持させるようにし、使用者側の支持部はアーム回動端部に設定した第1の回動固定視点回りに回動可能に取り付けられ,反使用者側の支持部はガスプリングの回動端部に設定した第2の固定支回動可能に取りつけられ,肘置部はガススプリングのロック状態で,第1の固定支点回りのアームの回動動作と第2の固定支点回りのガススプリングの回動動作とを伴いながら,歩行時には通常姿勢と前傾姿勢とを取り得るよう構成されているが、アーム及びガススプリングの端部が回動可能に構成されていることから、該回動部の製造と保守においての注意は欠かせないものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6542634号公報
【特許文献2】特開9-327485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたもので、安心して使用し易すく、簡単な構造で保守点検が容易で、かつ製品価格も低減させ得るガススプリングを用いた要介護者の自立支援車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題を下記の手段により解決した。
(1)要介護者の歩行や移乗のための自立支援車であって、
要介護者の上半身部を支承するための上面視コ字型の支持部材と、前輪と後輪を備えた下部の台車と、前記台車と前記支持部材との間に立設された複数本の伸縮性支柱とで構成されてなり、かつ前記伸縮性支柱には拡張方向に付勢されたガススプリングが内装され、さらに前記上部の支持部材上に立設された左右2本の握持用短尺棒体と前記支柱の伸縮位置を制御する操作ボタンを備えてなることを特徴とする要介護者の自立支援車。
(2)要介護者の歩行や移乗のための自立支援車であって、
要介護者の上半身部を支承するための上面視コ字型の支持部材と、前輪と後輪を備えた下部の台車と、前記台車と前記支持部材との間に立設された複数本の伸縮性支柱とで構成されてなり、かつ前記複数の伸縮性支柱の少なくとも1本がロック機能付きガススプリングであり、
さらに前記上部の支持部材上に立設された左右2本の握持用短尺棒体を備え、そしてまた該ガススプリングの作動によって前記支持部材を上下所定位置(高さ)に移動させた後その位置に安定に保持する制御をするための操作ボタンを握持用短尺棒体に付設して備えてなることを特徴とする要介護者の自立支援車。
(3)コ字型の支持部材の左右上面に板状の肘受部を備えてなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の要介護者の自立支援車。
(4)操作ボタンが握持用短尺棒体の上端に取着されてなることを特徴とする(1)~(3)のいずれか1項に記載の要介護者の自立支援車。
(5)台車には、要介護者が立ち座り時に回動しないよう固定する固定具を備えてなることを特徴とする(1)~(4)のいずれか1項に記載の要介護者の自立支援車。
【発明の効果】
【0006】
本発明の自立支援車は、安心して使用し易すく、要介護者及び介助者のストレス及び労力の大幅な低減に寄与するものである。また、全体の構造が簡易なので、製造コストも低減できる。
本発明製品は、特に腰痛、膝痛などで、立ち座りや歩行の際に介助者の力を必要とする要介護者のベッドからトイレ間など屋内での自立移動を容易にする。
特に、支持部材上に立設された左右2本の握持用短尺棒体が備えられているので、要介護者が手指でしっかり握持して安定的に身体を支承できる。
また、コ字型の支持部材の左右上面に板状の肘受部を備えているので、
両方の肘を安定的に支承できて安心感が高まる。
さらに、車輪が要介護者が立ち座り時に回動しないよう固定する固定具を備えているので、本発明の要介護者の自立支援車を使用して立ち上がる際における要介護者の安全が確保される。
【0007】
要介護者が操作ボタンを操作すれば下部所定位置に保持された前記上面視コ字型の支持部材が拡張方向に付勢されたガススプリングの伸長によって上昇して要介護者を立ち上がらせた後、操作ボタンの操作によって前記支持部材を上昇位置に保持させ、また上部位置に保持された前記支持部材を操作ボタンによって解除すれば、前記支持部材上に要介護者の体重によってガススプリングが圧縮して支持部材がゆっくり降下して要介護者を座らせられることから、介助者の労力の大幅な節減が図られ、かつ要介護者の自立移動への意欲向上にも資する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明実施例の要介護者の自立支援車の斜視図
【
図2】本発明実施例の要介護者の自立支援車の構成図、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図
【
図3a】本発明の要介護者自立支援車の使用形態説明図(a)は自立前の状態図
【
図3b】本発明の要介護者自立支援車の使用形態説明図(b)は自立開始時の状態図
【
図3c】本発明の要介護者自立支援車の使用形態説明図(c)は自立途中の状態図
【
図3d】本発明の要介護者自立支援車の使用形態説明図(d)は自立後の状態図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の要介護者の自立支援車の実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明実施例の要介護者の自立支援車の斜視図であり,
図2は本発明実施例の要介護者の自立支援車の正面図(a)と側面図(b)及び上面図(c)、
図3は本発明の要介護者自立支援車の使用形態説明図で(a)は自立前の状態図、(b)は自立開始時の状態図、(c)は自立途中の状態図、(d)は自立後の状態図である。
図において1は上面視コ字型の支持部材、1aは側部杆体、1bは前部杆体、2は台車、3は伸縮性支柱、3’はガススプリングを備えた伸縮性支柱、3’aは伸縮性支柱の内管、3’bは伸縮性支柱の外管、4は車輪、5は握持用短尺棒体、6は操作ボタン、7は肘置板、8はストッパを示す。
【0010】
本発明の要介護者の自立支援車は
図1に示すように、支持部材1に要介護者の立ち座り時や歩行時に手指で掴まり体重を支えるための上部の握持用短尺棒体5を立設して備えている。
また、自立移動を援助する車輪4をそれぞれ2個ずつ備えた下部の台車2と、前記台車2と支持部材1間に立設され、要介護者の立ち座りの際に前記支持部材1を上下させる伸縮性支柱3とを備えている。
そしてまた、前記支持部材1の左右側部杆体1a、1aにはその上面に要介護者の肘を安置して体重を預ける肘置板7を付設して備えている。
【0011】
本願発明では、
図2に示すごとく、前記台車2と支持部材1間に立設され、要介護者の立ち座りの際に前記支持部材を上下させる伸縮性支柱3のうちの少なくとも1本が、前記支持部材1に垂設された内管3bが外管3aに摺動可能に挿入されるとともに、その内部に拡張方向に付勢されたガススプリングを備え、該ガススプリングの作動によって前記支持部材1を上下所定位置(高さ)にスムーズに移動させた後、その位置に安定に固定するロック機構を有しており、配線6’を経由する操作ボタン6を指で押すことにより、伸縮性支柱3をスムーズに伸縮させ、また適宜位置に停止することができる。
なお、操作ボタンは握持用短尺棒体5の近傍に設けることが好ましい。
また、要介護者が立ち座りする時の安全を確保するために台車2の前部にストッパ8が付設されている。
【0012】
次に本発明の自立支援車の使用方法を
図3に基づいて説明する。
a.ベッドBに仰臥した要介護者Aを起き上がらせてベッドBに腰掛けさせる。要介護者Aが自力で行えない場合は介助者が手助けして行う。
b.介助者は自立支援車10をベッドBに腰掛けている要介護者Aの前に運ぶ前に、支持部材1が下方所定位置に下降し固定されているか否かを確認し,下降していない場合は前記支持部材1を下方所定位置まで押し下げ、操作ボタン6を操作して前記支持部材1を下方所定位置に固定した後、
図3(a)に示すように、自立支援車10をベッドBの側に位置させ、支持部材1の握持用短尺棒体5を手指でしっかり掴めて肘置板7が要介護者の手が届く位置に配設し、ストッパ8を操作して自立支援車10をその位置に固定する。
c.次に、
図3(b)、(c)に示すように、要介護者Aが固定した自立支援車10の支持部材1の握持用短尺棒体5を手指でしっかり掴み、かつ両肘を肘置板7、7に乗せてから握持用短尺棒体5上端の操作ボタン6を指で押して支持部材1を上昇させ、同時に要介護者Aの上半身をゆっくり立ち上げる。
介護者は、要介護者Aが立ち上がったのを確認した後、ストッパ8を解除する。
d.その後、
図3(d)に示すように、立ち上がった要介護者は歩行してリハビリ動作を行い、又は目的場所に移動する。
e.歩行を終えてベッドBに戻る動作は、ベッドBの側に移動したら、介護者がストッパ8を操作して、その位置に自立支援車10を停止・固定する。
要介護者Aは、操作ボタン6を押して、支持体1を下降させ、そこで再度操作ボタンを押してその位置でストップして固定させてから、臀部をベッドBに当接させ、次いで肘置板7及び握持用短尺棒体5から肘及びを手指を離して、自立支援車10から離脱しベッドBに移動する。
最後に介助者は、要介護者離脱後、ストッパ8を解除して保管場所に移動させて一連の支援作業が終了する。
【0013】
上記のように本発明の要介護者の自立支援車の使用によって、従来要介護者を抱え上げて車椅子へ移乗させるなどしていた介助者の労力が激減され、同居家族によっての支援も可能となり、また要介護者の介助者への援助依頼時の遠慮も軽減できる。
【符号の説明】
【0014】
1:上面視コ字型の支持部材
1a:側部杆体
1b:前部杆体
2:台車
3:伸縮性支柱
3’:ガススプリングを備えた伸縮性支柱
3’a:伸縮性支柱の内管
3’b:伸縮性支柱の外管
4:車輪
5:握持用短尺棒体
6:操作ボタン
6’配線
7:肘置板
8:ストッパ
10:自立支援車
A:要介護者
B:ベッド