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  • 特開-燃焼システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072816
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/00 20060101AFI20230518BHJP
   F23K 1/04 20060101ALI20230518BHJP
   F23C 1/04 20060101ALI20230518BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20230518BHJP
   B02C 19/18 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
F23G7/00 G
F23K1/04 ZAB
F23C1/04
F23J15/00 Z
B02C19/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185487
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上野 俊一朗
(72)【発明者】
【氏名】河西 英一
【テーマコード(参考)】
3K070
3K091
3K161
4D067
【Fターム(参考)】
3K070DA06
3K070DA52
3K091AA03
3K091BB02
3K091BB25
3K091CC07
3K091CC12
3K091CC23
3K091DD02
3K161AA12
3K161CA01
3K161DB32
3K161EA41
3K161FA28
3K161FA36
3K161FA39
3K161GA08
3K161GA17
3K161JA12
4D067CG06
4D067EE12
4D067EE27
4D067EE32
4D067EE39
4D067GA04
4D067GA20
4D067GB10
(57)【要約】
【課題】爆砕によって生じる排ガスの処理に要するコストを低減させる。
【解決手段】燃焼システム100は、バイオマスを大気圧超に加圧する反応器310と、反応器310を加熱する加熱部320と、反応器310から排出された、バイオマスを含む固気混合物を固気分離する固気分離器340と、固気分離器340によって分離されたバイオマスを燃焼させる燃焼器(ボイラ190)と、固気分離器340によって分離された排ガスを冷却する冷却器210と、冷却器210によって冷却された後の排ガスを燃焼器に供給する排ガス供給部230と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを大気圧超に加圧する反応器と、
前記反応器を加熱する加熱部と、
前記反応器から排出された、前記バイオマスを含む固気混合物を固気分離する固気分離器と、
前記固気分離器によって分離された前記バイオマスを燃焼させる燃焼器と、
前記固気分離器によって分離された排ガスを冷却する冷却器と、
前記冷却器によって冷却された後の排ガスを前記燃焼器に供給する排ガス供給部と、
を備える、燃焼システム。
【請求項2】
前記固気分離器によって分離された前記バイオマスを前記燃焼器に気流搬送する搬送路を備え、
前記排ガス供給部は、
前記排ガスを貯留するバッファタンクと、
前記バッファタンクと前記搬送路とを連通する連通路と、
前記連通路に設けられた弁と、
を備える、請求項1に記載の燃焼システム。
【請求項3】
前記燃焼器は、ボイラであり、
前記ボイラによって生成された水蒸気によって発電する発電装置と、
前記発電装置の発電効率に基づいて、前記弁の開度を制御する制御部と、
を備える、請求項2に記載の燃焼システム。
【請求項4】
前記加熱部は、前記反応器の外壁を加熱する、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を防止するために、CO(二酸化炭素)排出量の削減が求められている。このため、ボイラにおいて、石炭に加えてバイオマスを燃焼させる技術や、石炭に代えてバイオマスを燃焼させる技術が検討されている。バイオマスをボイラで燃焼させるために、バイオマスを粉砕する必要がある。
【0003】
バイオマスを粉砕する技術として、バイオマスおよび水蒸気を密閉容器に導入して加圧した後、急速に減圧することで、バイオマスを水蒸気爆砕する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-19895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記水蒸気爆砕する技術において、爆砕によって生じる排ガスには、一酸化炭素が含まれる。一酸化炭素は、毒性を有するため、排ガスを無害化する処理が必要となる。このため、爆砕によって生じる排ガスの処理に要するコストを低減させる技術の開発が希求されている。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑み、爆砕によって生じる排ガスの処理に要するコストを低減させることが可能な燃焼システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る燃焼システムは、バイオマスを大気圧超に加圧する反応器と、反応器を加熱する加熱部と、反応器から排出された、バイオマスを含む固気混合物を固気分離する固気分離器と、固気分離器によって分離されたバイオマスを燃焼させる燃焼器と、固気分離器によって分離された排ガスを冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された後の排ガスを燃焼器に供給する排ガス供給部と、を備える。
【0008】
また、上記燃焼システムは、固気分離器によって分離されたバイオマスを燃焼器に気流搬送する搬送路を備え、排ガス供給部は、排ガスを貯留するバッファタンクと、バッファタンクと搬送路とを連通する連通路と、連通路に設けられた弁と、を備えてもよい。
【0009】
また、燃焼器は、ボイラであり、上記燃焼システムは、ボイラによって生成された水蒸気によって発電する発電装置と、発電装置の発電効率に基づいて、弁の開度を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0010】
また、加熱部は、反応器の外壁を加熱してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、爆砕によって生じる排ガスの処理に要するコストを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態にかかる燃焼システムを説明する図である。
図2図2は、本実施形態に係る粉砕装置を説明する図である。
図3図3は、爆砕後の固気混合物の重量収支を示す図である。
図4図4は、排ガスの組成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
[燃焼システム100]
図1は、本実施形態にかかる燃焼システム100を説明する図である。なお、図1中、実線の矢印は、バイオマスおよび液体の流れを示す。図1中、破線の矢印は、気体の流れを示す。図1中、一点鎖線の矢印は、信号の流れを示す。
【0015】
図1に示すように、燃焼システム100は、供給装置110と、粉砕装置120と、第1搬送装置130と、乾燥機140と、分級機150と、第2搬送装置160と、乾燥後ホッパ170と、搬送路180と、ボイラ190と、発電装置200と、冷却器210と、蒸留装置220と、排ガス供給部230と、制御部240とを含む。
【0016】
燃焼システム100は、バイオマスを粉砕して、ボイラ190で燃焼させる。
【0017】
バイオマスは、木質系バイオマス、草本系バイオマスおよび、廃棄物系バイオマスのうちのいずれか1または複数である。木質系バイオマスは、例えば、木材チップ、おがくず、樹皮等である。また、草本系バイオマスは、例えば、麦わら、稲わら等である。廃棄物系バイオマスは、例えば、パーム椰子からパーム油を生産した結果生じる空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)、パーム椰子殻(PKS:Palm Kernel Shell)、穀物や果物の搾りかす等である。
【0018】
供給装置110は、バイオマスを粉砕装置120に供給する。供給装置110は、受入コンベヤ112と、受入ホッパ114と、計量フィーダ116とを含む。
【0019】
受入コンベヤ112は、バイオマスを受入ホッパ114に搬送する。受入ホッパ114は、バイオマスを一時的に貯留する。受入ホッパ114には、スクリューコンベア114aが設けられている。スクリューコンベア114aは、受入ホッパ114に貯留されたバイオマスを計量フィーダ116に搬送する。計量フィーダ116は、所定量のバイオマスを粉砕装置120に供給する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る粉砕装置120を説明する図である。なお、図2中、実線の矢印は、バイオマスおよび液体の流れを示す。図2中、破線の矢印は、気体の流れを示す。
【0021】
粉砕装置120は、バイオマスを水蒸気爆砕(蒸煮爆砕)する。図2に示すように、粉砕装置120は、反応器310と、加熱部320と、連通管330と、固気分離器340とを含む。
【0022】
反応器310は、バイオマスを大気圧超の所定範囲の圧力に加圧する。反応器310は、密閉容器312と、攪拌部314とを含む。
【0023】
密閉容器312は、容器本体312aと、蓋312bと、開閉弁312cとを含む。容器本体312aは、上記供給装置110によって供給されたバイオマスを収容する。容器本体312aは、筒形状である。本実施形態において、容器本体312aの上部は、鉛直方向を中心軸とした円筒形状であり、下部は、鉛直方向を中心軸とした円錐形状である。容器本体312aの上部(円筒形状)の中心軸と、容器本体312aの下部(円錐形状)の中心軸とは、一致する。容器本体312aの上面および底面は、開放されている。バイオマスは、容器本体312aの上面に形成された上部口を通じて、容器本体312a内に供給される。
【0024】
蓋312bは、容器本体312aの上面に形成された上部口を開閉可能に設けられる。開閉弁312cは、容器本体312aの底面に形成された下部口を開閉可能に設けられる。
【0025】
蓋312bによって容器本体312aの上部口が閉じられ、開閉弁312cによって容器本体312aの下部口が閉じられることで、密閉容器312内が密閉される。
【0026】
攪拌部314は、密閉容器312内を攪拌する。本実施形態において、攪拌部314は、回転軸314aと、攪拌羽根314bと、モータ314cとを含む。回転軸314aは、蓋312bを貫通する。攪拌羽根314bは、回転軸314aの一端側に設けられる。攪拌羽根314bは、蓋312bが閉じられたときに、密閉容器312内に位置するように設けられる。モータ314cは、回転軸314aを介して、攪拌羽根314bを回転させる。モータ314cは、蓋312bが閉じられたときに、密閉容器312外に位置するように設けられる。攪拌部314は、後述する加熱部320によって供給される熱を密閉容器312内のバイオマス全体に効率よく行き渡らせることができる。
【0027】
加熱部320は、反応器310(密閉容器312)を加熱する。本実施形態において、加熱部320は、容器本体312aの外壁を加熱する。加熱部320は、例えば、トレースヒータで構成される。加熱部320は、囲繞部322と、第1排出管324と、第2排出管326と、吸引器328とを含む。
【0028】
囲繞部322は、密閉容器312の外部を螺旋状に囲繞する配管である。囲繞部322の一端には、加熱ガスHの供給源が接続される。加熱ガスHは、例えば、水蒸気、または、燃焼排ガスである。本実施形態において、加熱ガスHの供給源は、ボイラ190であり、加熱ガスHは、ボイラ190の補助蒸気である。補助蒸気は、例えば、280℃程度である。
【0029】
囲繞部322の他端には、第1排出管324が接続される。本実施形態において、ボイラ190は、囲繞部322の上端に接続される。また、第1排出管324は、囲繞部322の下端に接続される。
【0030】
第1排出管324は、囲繞部322と、乾燥機140とを接続する。第2排出管326は、乾燥機140と、吸引器328の吸入側とを接続する。吸引器328は、加熱ガスHを吸引する。吸引器328は、例えば、送風機(ファン、ブロワ)、圧縮機(コンプレッサ)、ポンプである。
【0031】
したがって、加熱ガスHは、囲繞部322、第1排出管324、乾燥機140を通過した後、第2排出管326を通じて、吸引器328に吸引されることになる。吸引器328によって吸引された加熱ガスHは、ボイラ190に返送される。
【0032】
加熱部320によって密閉容器312が加熱されることにより、密閉容器312内のバイオマスに含まれる水が水蒸気となる。これにより、密閉容器312内は、大気圧超の所定範囲の圧力(例えば、1.5MPa以上2.8MPa以下)となる。また、密閉容器312内は、200℃以上220℃以下となる。例えば、密閉容器312内は、220℃、2.3MPaとなる。
【0033】
連通管330は、開閉弁312cと固気分離器340とを接続する管である。
【0034】
固気分離器340は、反応器310から排出された、バイオマスを含む固気混合物を固気分離する。固気分離器340は、例えば、サイクロンである。本実施形態において、固気分離器340は、本体342と、排気管344とを含む。
【0035】
本体342は、筒形状の容器である。本体342の上面および底面は、封止されている。本実施形態において、本体342は、円筒形状である。本体342の側壁の上部には、受入口342aが形成される。上記連通管330は、本体342に設けられた受入口342aに接続される。また、本体342の底面には、固形物排出口342bが形成される。本体342は、加圧状態の密閉容器312よりも低圧(概ね、大気圧)である。また、本体342は、加圧状態の密閉容器312よりも低温(例えば、常温(25℃))である)。
【0036】
排気管344は、本体342の上面を貫通する管である。排気管344の上端344aは、後述する冷却器210に接続される。排気管344の下端は、受入口342aよりも下方に位置する。
【0037】
スクリューコンベア346は、本体342内の下部に設けられる。スクリューコンベア346は、固気分離器340内で落下したバイオマスを固形物排出口342bに搬送して集約する。
【0038】
バイオマスを水蒸気爆砕する場合、まず、開閉弁312cによって容器本体312aの下部口が閉じられる。続いて、供給装置110によって、密閉容器312(容器本体312a)内にバイオマスが供給された後、蓋312bによって、容器本体312aの上部口が閉じられる。そして、加熱部320によって、密閉容器312が加熱されることにより、密閉容器312内のバイオマスに含まれる水が水蒸気となり、密閉容器312内が加圧状態となる。
【0039】
その後、開閉弁312cによって、容器本体312aの下部口が開かれる。そうすると、密閉容器312内のバイオマスが固気分離器340に導かれるとともに脱圧され、断熱膨張により、バイオマスに含まれる水蒸気が爆発する。これにより、バイオマスが爆砕される。こうして、爆砕(粉砕)されたバイオマスと、水蒸気等の排ガスとを含む固気混合物が生成される。
【0040】
図3は、爆砕後の固気混合物の重量収支を示す図である。図3中、縦軸は、重量比[wt%]を示す。図3中、白色は、固気混合物に含まれる固体の重量比を示す。図3中、ハッチングは、固気混合物に含まれる液体の重量比を示す。図3中、黒色は、固気混合物に含まれる気体の重量比を示す。なお、重量比は、粉砕装置120に供給されたバイオマス(乾燥原料)を基準(100wt%)とした比率である。
【0041】
図3に示すように、爆砕後の固気混合物には、約72.6wt%の固体(バイオマス)が含まれる。また、爆砕後の固気混合物には、約18.4wt%の液体(例えば、水、フルフラール)が含まれる。また、爆砕後の固気混合物には、約9wt%の気体(例えば、水蒸気、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)が含まれる。
【0042】
図2に戻って説明すると、固気分離器340において上記固気混合物が固気分離される。固気分離器340において分離されたバイオマス(固体、例えば、約72.6wt%)は、本体342の下部に堆積する。堆積されたバイオマスは、スクリューコンベア346によって、固形物排出口342bを通じて、第1搬送装置130に導かれる。一方、固気分離器340において分離された排ガスには、上記した気体(例えば、約9wt%)および霧状の液体(例えば、約18.4wt%)が含まれる。そして、固気分離器340において分離された排ガスは、排気管344を通じて冷却器210に排気される。
【0043】
図1に戻って説明すると、第1搬送装置130は、粉砕装置120によって粉砕されたバイオマスを乾燥機140に搬送する。第1搬送装置130は、例えば、コンベヤで構成される。
【0044】
乾燥機140は、粉砕されたバイオマスを乾燥させる。本実施形態において、乾燥機140は、バイオマスと、加熱ガスHとを熱交換させる熱交換器である。上記したように、乾燥機140には、加熱部320を構成する囲繞部322を通過した後の加熱ガスHが導かれる。
【0045】
分級機150は、乾燥されたバイオマスを分級する。分級機150は、例えば、2mm以上の粒径のバイオマスと、2mm未満の粒径のバイオマスとに分級する。2mm以上の粒径のバイオマスは、受入コンベヤ112に返送される。2mm未満の粒径のバイオマスは、第2搬送装置160によって、乾燥後ホッパ170に搬送される。
【0046】
第2搬送装置160は、例えば、コンベヤで構成される。乾燥後ホッパ170は、乾燥された、2mm未満の粒径のバイオマスを一時的に貯留する。乾燥後ホッパ170に貯留されたバイオマスは、計量フィーダ172、スラットバルブ174を通じて、搬送路180に搬送される。
【0047】
搬送路180は、スラットバルブ174から供給されたバイオマスをボイラ190に気流搬送する。搬送路180は、乾燥空気の供給源と、ボイラ190のバーナとを接続する。
【0048】
ボイラ190(燃焼器)は、搬送路180によって気流搬送されたバイオマスを燃焼させて、水蒸気を生成する。
【0049】
発電装置200は、ボイラ190によって生成された水蒸気によって発電する。発電装置200は、例えば、蒸気タービンと、発電機とを含む。
【0050】
冷却器210は、固気分離器340から、排気管344を通じて排気された排ガスを冷却する。冷却器210は、例えば、排気ガスと冷媒とを熱交換する熱交換器である。冷媒は、例えば、工業用水である。
【0051】
冷却器210は、排ガスに含まれる水蒸気およびフルフラールが凝縮する温度に排ガスを冷却する。冷却器210は、例えば、冷却後の排ガスに含まれる水蒸気の濃度が、搬送路180を流れる乾燥空気に含まれる水蒸気の濃度と実質的に等しくなるように、排ガスを冷却する。冷却器210は、例えば、1℃以上10℃以下に排ガスを冷却する。
【0052】
冷却器210によって凝縮された凝縮液は、蒸留装置220に供給される。また、冷却器210によって凝縮液が取り除かれた排ガスEXは、排ガス供給部230に供給される。
【0053】
蒸留装置220は、凝縮液を蒸留して、フルフラールを回収する。ボイラ190および発電装置200が、500MW級の25cal%バイオマス混焼ボイラである場合、例えば、年間2800トンのフルフラールを回収することができる。
【0054】
排ガス供給部230は、冷却器によって冷却された後の排ガスEXをボイラ190に供給する。本実施形態において、排ガス供給部230は、バッファタンク232と、連通路234と、弁236とを含む。
【0055】
バッファタンク232は、排ガスEXを貯留するタンクである。連通路234は、バッファタンク232と搬送路180とを連通する流路である。弁236は、搬送路180に設けられる。弁236は、搬送路180を開閉する。
【0056】
図4は、排ガスEXの組成を示す図である。図4中、縦軸は、重量比[wt%]を示す。図4中、白色は、排ガスEXに含まれる一酸化炭素(CO)の重量比を示す。図4中、ハッチングは、排ガスEXに含まれる二酸化炭素(CO)の重量比を示す。図4中、黒色は、排ガスEXに含まれる、一酸化炭素および二酸化炭素以外の気体の重量比を示す。
【0057】
図4に示すように、排ガスEXには、約3wt%(30000ppm)の一酸化炭素が含まれる。また、排ガスEXには、約31.3wt%の二酸化炭素が含まれる。また、排ガスEXには、約65.7wt%のその他の気体が含まれる。
【0058】
排ガスEXに含まれる一酸化炭素は、毒性を有するため、排ガスEXを無害化する処理が必要となる。一方、一酸化炭素は、可燃性を有するため、燃料として利用することができる。
【0059】
そこで、搬送路180が、排ガスEXをボイラ190に供給することにより、一酸化炭素をボイラ190で燃焼させることができる。これにより、一酸化炭素(排ガスEX)の処理に要するコストを低減することが可能となる。また、一酸化炭素を燃料として利用できるため、ボイラ190において同一の出力を確保するために必要なバイオマス(燃料)の量を低減することができる。
【0060】
制御部240は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。制御部240は、ROMからCPUを動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。制御部240は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して燃焼システム100全体を管理および制御する。
【0061】
本実施形態において、制御部240は、発電装置200の発電効率に基づいて、弁236の開度を制御する。具体的に説明すると、制御部240は、発電装置200の発電効率が所定値よりも低い場合、弁236を開く。また、制御部240は、発電装置200の発電効率が所定値よりも高い場合、弁236を閉じる。
【0062】
これにより、発電装置200の発電効率を所定値に維持することが可能となる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る燃焼システム100は、ボイラ190、冷却器210、および、排ガス供給部230を備える。これにより、燃焼システム100は、爆砕によって生じる排ガスEXに含まれる一酸化炭素を燃焼させることができる。したがって、燃焼システム100は、排ガスEXの処理に要するコストを低減することが可能となる。
【0064】
また、燃焼システム100は、冷却器210および蒸留装置220を備える。これにより、燃焼システム100は、従来廃棄されていた凝縮液からフルフラールを回収することができる。
【0065】
また、燃焼システム100は、搬送路180、バッファタンク232、連通路234、および、弁236を備える。これにより、燃焼システム100は、排ガスEXを安定してボイラ190に供給することができる。
【0066】
また、上記したように、粉砕装置120の加熱部320は、反応器310の外壁を加熱する。これにより、粉砕装置120は、水蒸気を反応器310内に供給することなく、反応器310内のバイオマスを蒸煮することができる。したがって、粉砕装置120は、爆砕後の固気混合物を構成する液体に含まれるフルフラールの濃度を増加させることが可能となる。このため、発電装置200の処理負荷を低減することができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
例えば、上述した実施形態において、燃焼システム100が、燃焼器としてボイラ190を備える場合を例に挙げた。しかし、燃焼器は、固気分離器340によって分離されたバイオマスおよび排ガスEXを燃焼させることができれば、構成に限定はない。燃焼器は、例えば、高炉、湯沸かし器等であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態において、連通路234が搬送路180に接続される場合を例に挙げた。しかし、連通路234は、搬送路180に接続されなくてもよい。例えば、連通路234は、ボイラ190のバーナに直接接続されていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、燃焼システム100が、搬送路180、バッファタンク232、連通路234、および、弁236を備える場合を例に挙げた。しかし、搬送路180、バッファタンク232、連通路234、および、弁236は、必須の構成ではない。燃焼システム100は、冷却器210によって冷却された後の排ガスEXを燃焼器に供給する排ガス供給部230を少なくとも備えていればよい。例えば、排ガス供給部230は、冷却器210とボイラ190とを連通する流路を備えていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、バッファタンク232が、冷却器210によって冷却された後の排ガスEXを貯留する場合を例に挙げた。しかし、バッファタンク232は、固気分離器340によって分離された排ガスを貯留すればよい。例えば、バッファタンク232は、冷却器210によって冷却される前の排ガスEXを貯留してもよい。また、ボイラ190がバッファタンクとして機能してもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、制御部240が、弁236を開閉制御する場合を例に挙げた。しかし、制御部240は、弁236の開度を制御してもよい。例えば、制御部240は、発電装置200の発電効率が所定値になるように、弁236の開度を制御してもよい。これにより、制御部240は、発電装置200の発電効率を、安定して所定値に維持することができる。
【0073】
また、上記実施形態において、燃焼システム100が、発電装置200および制御部240を備える場合を例に挙げた。しかし、発電装置200および制御部240は必須の構成ではない。
【0074】
また、上記実施形態において、加熱部320を構成する囲繞部322にボイラ190の補助蒸気が供給される場合を例に挙げた。これにより、加熱部320は、発電装置200の発電効率を低下させることなく、反応器310を加熱することができる。しかし、囲繞部322に供給される水蒸気に限定はない。例えば、補助蒸気に代えて、または、補助蒸気に加えて、ボイラ190の主蒸気(例えば、450℃程度)、および、抽気(例えば、350℃程度)のいずれか一方または両方が囲繞部322に供給されてもよい。
【0075】
また、上記実施形態において、加熱部320がトレースヒータである場合を例に挙げた。しかし、加熱部320は、密閉容器312を外部から加熱することができれば構成に限定はない。例えば、加熱部320は、電気ヒータであってもよい。
【0076】
また、上記実施形態において、攪拌部314が、回転軸314a、攪拌羽根314b、モータ314cを備える場合を例に挙げた。しかし、攪拌部314は、密閉容器312内を攪拌することができれば構成に限定はない。攪拌部314は、例えば、密閉容器312自体を往復動させる機構であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、粉砕装置120が攪拌部314を備える構成を例に挙げた。しかし、攪拌部314は、必須の構成ではない。
【0078】
また、上記実施形態において、燃焼システム100が蒸留装置220を備える構成を例に挙げた。しかし、蒸留装置220は、必須の構成ではない。
【0079】
本開示は、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」および目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0080】
100 燃焼システム
180 搬送路
190 ボイラ(燃焼器)
200 発電装置
210 冷却器
230 排ガス供給部
232 バッファタンク
234 連通路
236 弁
240 制御部
310 反応器
320 加熱部
340 固気分離器
図1
図2
図3
図4