(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007284
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46D 1/00 20060101AFI20230111BHJP
A46B 9/04 20060101ALI20230111BHJP
A46D 1/05 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A46D1/00
A46B9/04
A46D1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021130976
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】506354711
【氏名又は名称】大杉 勝
(72)【発明者】
【氏名】大杉 勝
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA03
3B202AA06
3B202AB16
3B202AB30
3B202BA01
3B202BA15
3B202EB07
3B202EB13
3B202EB14
3B202EF10
(57)【要約】
【課題】現状の歯ブラシは2つの大きな課題を抱えている。第1の課題は、歯間や歯周ポケット内の歯垢除去が困難で、歯間ブラシや糸ようじに頼らざるを得ないことである。第2の課題は、歯ブラシ自体の清潔保持に問題があることで、毛束により毛材が密集、密着しているので、食べかす等の汚れが付着し易く、汚れが付着すると除去が困難で、密集、密着箇所は乾燥し難いから、黴や細菌が繁殖し易く不潔になりがちである。この2つの課題を一挙に解決して理想的な次世代型歯ブラシを提供する事を本発明は目的としている。
【解決手段】本発明は、毛材の清掃機能が存在するブラシ部の接歯面である先端付近のみに枝毛を設け、毛材は一本毎に独立して間隔を空けて植設してある。これにより、毛材の先端部の枝毛で効率良く歯垢除去ができ、不潔の原因である根本部の密集、密着を無くして、清掃効率が優れ衛生的な歯ブラシを実現した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹毛(5)の先端(8)に穂先部(10)を形成したブラシ用毛材(4)を植設した歯ブラシであって、穂先部(10)は幹毛(10)の先端(8)から幹毛(5)の全長の略20%~略50%までの範囲に形成されており、穂先部(10)は幹毛(5)の側面に枝毛(6)を複数設けた構成としてあり、幹毛(5)は先端(8)が細く根本(9)が太いテーパー状を成しており、ブラシ用毛材(4)は一本毎に独立して互いに間隔(14)を空けてヘッド部(3)の台座(13)に複数配設されたことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
枝毛(6)は、幹毛(5)の周囲に放射状に、幹毛(5)に略直交して設けたことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
枝毛(6)に代えて、突起(6a)としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
穂先部(10)は、幹毛(5)の側面が凹凸状を成した形状であることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するもので、次の2つの課題を解決することを目的としている。第1の課題は、歯間や歯周ポケット内の歯垢除去に関することで、第2の課題は、歯ブラシ自体の清潔保持に関することである。
【背景技術】
【0002】
まず、第1の課題の背景技術について述べる。歯間や歯周ポケット内の歯垢を効率よく除去する目的で、現在様々な形態の歯ブラシが市販されており、特許文献においても様々な形態の歯ブラシがアイデアとして多数存在する。市販品としては、ブラシ部の接歯面がフラットなもの、波形のもの、山形のもの、毛材の長短を混在させたもの等がある。また、個々の毛材の毛先の形状も多様なものがあり、例えば、斜めにカットしたもの、極細にしたもの、ラウンド状のものなどがある。
【0003】
一方、特許文献においては、次のように市販品よりもさらに多様なものが存在する。
(ア)毛先を二股にしたもの
(イ)毛先を曲げたもの
(ウ)毛材をループ状にしたもの
(エ)毛材を波形に屈曲させたもの
(オ)毛先を球状にしたもの
(カ)毛材に凹凸を設けたもの
(キ)毛材に扁平部を形成したもの
(ク)毛材に切り込みを入れて枝毛を形成したもの
(ケ)幹毛に枝毛を設けたもの
数ある特許文献を分類すると上記のようになる。
【0004】
市販品の類も、特許文献の類も歯間や歯周ポケット内の歯垢を効率よく除去するという目的は同じであるが、これらの類には特有の傾向がうかがえる。その傾向というのは、市販品の類は殆んどが直毛であるのに対して、特許文献の類は殆んどが直毛でないことである。そして、数ある特許文献の内、直毛でないものが商品化され普及したものが殆んど無いことである。
【0005】
直毛よりも直毛でない変化に富んだ形状の毛材の方が、歯間などの隙間の歯垢除去には有利に働くのは事実であるが、しかし、これら特許文献の殆んどが商品化に至っていないのである。その理由として次の3つが考えられる。
(い)毛材に枝毛を備えたら、歯ブラシ自体に汚れが付着し易く、清掃も困難となる
(ろ)直毛以外でも、枝毛の無いものは、歯垢除去効果は特段顕著でなく限定的である
(は)直毛以外にしたら、歯ブラシの製造コストが上がる
商品化を阻んでいるこの3つの理由に本発明は着眼した。
【0006】
次に、第2の課題の背景技術について述べる。現在普及している市販品において、歯ブラシ自体の清潔保持に特別配慮した商品はあまり見かけない。特許文献においても、歯ブラシの保管容器や支持器具に関するものや、歯ブラシの清掃用具に関するものは多数あるが、歯ブラシ自体の構成に関するものは少なく、上記の[特許文献20][特許文献21][特許文献22]の3件の特許文献しか目に付かなかった。
【0007】
これら3件の特許文献の内容は概ね次のようなものである。
・ブラシ毛を植毛している台座に孔部を設けて、汚れを流し落し易いようにしたもの
・毛束同士の間隔を広げて、汚れが付着し難いようにしたもの
・ブラシ部を円筒形にして、放射状の毛材を回転させて水分を除去するようにしたもの
これらは従来品より清潔保持効果が有るかも知れないが、いずれも毛材が密集している箇所が存在するので、汚れの絡みつき易さや、乾燥し難さは避けられないから効果は限定的である。
【0008】
ここで、本明細書において使用する下記の「」内の語句について定義しておく。
「歯面」は、歯肉の面を含む
「毛材」は、ブラシ用毛材のことで、本発明品では幹毛と穂先部から成る
「穂先部」は、幹毛の先端に位置し、幹毛の側面に枝毛を設けた構成である
「幹毛」は、毛材の構成要素で、枝毛を除いた幹の部分の毛材のこと
「枝毛」は、幹毛の側面から派生した枝状の短い毛材で突起状のものを含む
「毛丈」は、毛材の長さのこと
「直毛」は、一直線状のプレーンな毛材のこと
「圧力」は、歯垢除去に必要な圧力
「軸線」は、毛材の長手方向に沿った線のこと
「歯面と毛材の角度」は、
図25、
図26における歯面の接線21と毛材の軸線22の角度23のこと
「毛材と歯面が垂直」は、
図25における毛材の軸線22と歯面の接線21の角度23が90度のこと
「毛材と歯面が平行」は、
図26における毛材の軸線22と歯面の接線21の角度23が0度のこと
「垂直に近い角度」は、
図25における角度23が略70度~90度のこと
「平行に近い角度」は、
図26における角度23が略0度~20度のこと
【先行技術文献】
【0009】
本発明に関連する先行の特許文献を下記に示す。この内、[特許文献1]~[特許文献19]は第1の課題で、歯間や歯周ポケット内の歯垢除去に関するものであり、[特許文献20]~[特許文献22]は第2の課題で、歯ブラシ自体の清潔保持に関するものである。
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09-140450号公報
【特許文献2】特開2000-139964号公報
【特許文献3】特開2000-189252号公報
【特許文献4】特開2002-355121号公報
【特許文献5】特開2003-225123号公報
【特許文献6】特開2007-097850号公報
【特許文献7】特開2009-172344号公報
【特許文献8】特開2010-194071号公報
【特許文献9】実登3110225号公報
【特許文献10】実登3129736号公報
【特許文献11】実開平05-080324号公報
【特許文献12】実開平07-023435号公報
【特許文献13】実全昭51-076768号公報
【特許文献14】実全昭56-132938号公報
【特許文献15】実全昭61-097923号公報
【特許文献16】実全平01-097729号公報
【特許文献17】実全平02-045025号公報
【特許文献18】実公昭42-021925号公報
【特許文献19】実公平05-031942号公報
【特許文献20】特開2011-015816号公報
【特許文献21】実登3104452号公報
【特許文献22】実開平06-052550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述のように、次の2つの課題の解決が目的である。第1の課題は、歯間などの歯垢除去に関する課題で、第2の課題は、歯ブラシ自体の清潔保持に関する課題である。以下に、解決しようとする課題を詳細を述べる。
【0012】
まず、第1の課題について述べる。歯列辺りには凹凸があり、溝があり、歯間や歯周ポケットなどの隙間があり、極めて複雑な形状を成しているから、このような箇所を隅から隅まで効率よく歯垢を除去することは困難なことである。特に困難を極める箇所は歯間や歯周ポケットである。つまり、この歯間や歯周ポケットという箇所は狭くて深みのある隙間となっているから、この側壁である歯面の歯垢除去は、直毛を採用している従来型の歯ブラシにとって永年の課題となっている。歯間ブラシや糸ようじに頼らざるを得ないことからもこの箇所の歯垢除去の困難さがうかがえる。
【0013】
一般に、歯ブラシで歯垢除去を効率よく行うためには、次の(A)(B)の2つの条件が充たされる必要がある。
(A)毛材と歯面が略垂直な角度で、毛先が歯面に当接すること
(B)当接した時、毛先に歯面を押す圧力が加わること
この(A)の条件によって、
(a)毛材の軸剛性は、曲げ剛性よりも格段に高いから、圧力が歯面に効率良く加わる
(b)圧力は加圧面積に反比例するから、毛先の接歯面積は極小ゆえに圧力は大となる
(c)毛先は歯面の微細な凹部にも入り込めるから、隈なく清掃できる
という3つの作用が働き、歯垢除去に著しい効果が発揮される。
【0014】
ところが、直毛を採用している歯ブラシでは、歯間などの狭くて深みのある隙間に対して、上記の2つの条件(A)(B)が充たされることは略不可能である。なぜならば、
図20、
図22、
図24に示すように、隙間に入った直毛の毛材は側壁の歯面に対して略平行にならざるを得ないからである。歯面に平行になってしまった毛材は、曲げ剛性が極めて低いから歯面を押す圧力を得ることができない。つまり、直毛では毛先が側壁の歯面に接触しても歯面を撫でるような作用しか得られず、加圧して擦るような作用が得られないから、歯垢除去効果は期待できない。
【0015】
そこで、発案されたと思われるのが直毛でない上記先行特許文献の数々で、たしかに、曲げたり、二股にしたり、枝毛を設けたりして、形状に変化を持たせた毛材の方が直毛よりも歯垢除去に有利に働くことは事実であるが、しかし、これら文献のものは次に述べる課題を抱えている。
【0016】
前記分類(ア)(イ)の文献では毛材の先端を二股にしたり、曲げたりしているので、隙間に入った毛材の先端が側壁の歯面に接触するようになり直毛よりは有利に働くが、しかし、毛材の曲げ剛性は低いから歯面を押す圧力が確保できるか疑問である。
【0017】
前記分類(ウ)(エ)(オ)(カ)(キ)の文献では毛材をループ状にしたり、波形にしたり、毛先を球状にしたりしているので、隙間に入った毛材の曲出部や球部が側壁の歯面に接触するようになるから、直毛のプレーンな毛材よりは有効であるが、また、隙間の広さに応じた本数の毛材が隙間に入り込むことにより側壁の歯面が加圧されるが、しかし、毛材の曲出部や球部よりもっと微細な歯面の凹部は無数に存在するから、側壁の歯面の凹部を隈なく清掃できるか疑問である。
【0018】
前記分類(ク)(ケ)の文献は毛材に枝毛を設けることにより、著しい歯垢除去効果を発揮する。本発明の技術的思想と一部共通するものである。前記[特許文献2][特許文献7][特許文献12][特許文献17]の4件がこれに該当する特許文献である。これらは、歯垢除去効果を得るための上記の2つの条件(A)(B)を充たしており、歯垢除去効果が大いに期待できるが、しかし、歯ブラシにとって致命的とも言える欠陥を抱えている。つまり、大きなメリットとデメリットを併せ持っているのである。
【0019】
前記(ク)(ケ)の4件の文献の致命的な欠陥と言うのは、歯ブラシ自体に食べかすや汚れが付着し易く、しかも、一旦付着すると除去することが極めて困難なことである。従来型の直毛の歯ブラシでも毛材の根本付近に食い込み、絡みつくように付着した汚れを除去するのが難しい時がある。直毛でさえ毛材の根本付近の汚れ除去は困難であるのに、まして、根本付近まで枝毛の備わった毛材の汚れ除去は至難の技と言える。前記4件の文献はこの欠陥については全く考慮や言及がなされておらず、これらの文献のものは食べかすや汚れが絡みつき、清掃が困難で使用に耐えないと考えられる。この問題は、次に述べる本発明が解決しようとする第2の課題、歯ブラシ自体の清潔保持とも関連している。
【0020】
次に、第2の課題、歯ブラシ自体の清潔保持について述べる。歯ブラシと言うものは、使用時は常に汚れにさらされ、磨き剤も付着するので使用後は必ず洗浄するが、簡単な洗浄では汚れが充分に除去できないことがある。そして、洗浄後は濡れた状態になり、黴や細菌が繁殖し易いので、歯ブラシ自体の清潔保持は極めて重要事項である。衛生的な清潔保持に優れた歯ブラシと言うものは、簡単な洗浄で汚れが充分に除去でき、短時間で乾燥することが必須要件である。
【0021】
一般に、
図15、
図16のような従来型歯ブラシにおいて、ブラシ部の接歯面である毛材の先端付近は、清掃し易く比較的簡単な洗浄で汚れを除去できるが、根本付近は簡単な洗浄では汚れを除去できないことがある。つまり、従来型歯ブラシの毛材は束ねられて毛束を形成して、毛束の根本は台座の穴に押し込まれて植毛されているから、根本付近は毛材が強固に密着し密集状態である。このような箇所に絡みつき食い込むように付着した汚れは簡単な洗浄では除去できない場合がある。
【0022】
また、従来型歯ブラシの毛束の根本付近や台座の穴の中では毛材が密集、密着しており微細な隙間が無数にある。洗浄で見た目には綺麗になったとしても、実際には、目に見えない汚れや細菌が隙間に残っているのである。毛束の根本付近は湿りがちで乾燥し難い箇所であるから、黴や細菌の巣となり得る箇所である。少し古くなった歯ブラシの毛材の根本付近が変色しているのは、汚れが蓄積し、黴が発生し、細菌が繁殖して目に見える状態に顕在化したのである。毛束を形成して植毛する従来型歯ブラシにおいて、毛束の根本付近の不潔、不衛生は、構造上の宿命とも言える課題である。本発明は、以上述べた全ての課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
次に述べる解決手段によって、本発明の2つの課題を一挙に解決するから、解決手段については本発明の課題第1と第2の2つに分けずに述べる。
【0024】
一般に、歯ブラシにおいて清掃機能が存在する箇所は、
図1に示す本発明品においても、
図16に示す従来品においても、ブラシ部の接歯面である毛材の先端付近だけに存在するのであって、根本付近には殆んど存在しないのである。従って、歯垢除去に作用する枝毛は先端付近のみであっても、清掃機能を全く損ねることはないのである。即ち、歯垢除去に作用する枝毛は毛材の先端付近のみに有ればよいのであって、先端付近以外には不要と言うより、むしろ、有れば汚れが付着し易く、除去が極めて困難と言う多大な弊害をもたらすのである。そこで、本発明の歯ブラシの枝毛は、毛材の先端付近のみに設け、先端付近以外には設けない構成としてある。
【0025】
そして、上記の構成とした毛材は、毛束を形成しないで独立して一本毎に間隔を空けて植設することにより、不潔、不衛生の原因である毛材の密集、密着状態を回避した。ところが、毛材を束ねないで独立して植設すれば毛腰の確保が難しくなる。
図15、
図16における従来型の歯ブラシでは、毛材を束ねた毛束という構成が毛腰を確保する機能を担っている。つまり、毛腰の弱い細い毛材であっても、束ねることによって剛性が高まるから毛腰が確保できる。この毛束というものは従来型の歯ブラシにとって製作上の好都合もあるが、毛腰の確保に大いに役立っているのである。毛材には適度な毛腰が必要で、毛腰が弱いと歯面を擦る圧力を加えることができないし、歯間や歯周ポケットへの挿入が難しくなる。そこで、本発明の毛材は、毛束を形成しないで独立して植設しても毛腰が確保できるように、先端は細く根本が太いテーパー状にしてある。以上は本発明の解決手段の基本的な構想を述べたが、具体的な構成を図に基づいて次に述べる。
【0026】
本発明に係る歯ブラシ1は、
図1~
図6に示すような外観である。
図7~
図8に示すようにブラシ用毛材4は、幹毛5の先端8の部分に穂先部10を設けた構成である。
図9、
図10に示すように、穂先部10は、幹毛5の側面に枝毛6を複数設けた構成である。
図8に示すように、幹毛5の先端から幹毛5の全長の20%~50%までの範囲が穂先部10である。幹毛5は適度な毛腰を確保するため、先端8は細く根本9は太いテーパー状にしてある。ブラシ用毛材4は密集、密着状態を避けるため、
図2、
図5、
図6の拡大図に示すように一本毎に独立して夫々互いに間隔14を空けて、歯ブラシ1のヘッド部3の台座13に複数配設してある。本発明は、以上の構成を特徴とする歯ブラシ1である。
【0027】
図9、
図10に示すように穂先部10の枝毛6は、より一層清掃効率を高めるため幹毛5の周囲に放射状に、幹毛5に略直交して設けてある。
図11、
図12に示すように枝毛6は、より短くした突起6aとしてもよく、また、
図13、
図14に示すように突起6aは、さらに短くした凸部6bとしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の歯ブラシは上述のような構成とすることで、前述の2つの課題を一挙に解決した。つまり、枝毛は清掃機能を有する先端部のみに設け、汚れの除去が困難な根本付近には設けない毛材の構成と、不潔、不衛生の根源である密集、密着を回避するため、毛束を形成しないで一本毎に独立して間隔を空けて毛材を植設したブラシ部の構成と、毛腰を確保するため根本に向けて太くしたテーパー状の幹毛の形状は、本発明の最も重要な構成部で、これにより、毛腰が強く、優れた歯垢除去効果と清潔保持効果を兼ね備えた歯ブラシが実現した。その効果の詳細を次に述べる。
【0029】
まず、第1の課題、歯垢除去の課題の解決手段による効果について述べる。本発明の毛材は
図8のように、枝毛が幹毛に直交して備わっているから、
図18、
図21、
図23のように歯間や歯周ポケットに入った毛材が歯面に平行になってしまっても、枝毛は歯面に対して垂直になる。そして
図21に示すように、隙間の広さに相応した本数の毛材が入り込むから、対面する双方の歯面には作用反作用のような互いに押し合う圧力が生じる。あたかも、歯間ブラシの大小を、歯間の広狭に応じて使い分けて使用するのと同様の機能が果たされる。つまり、歯間の側壁を軽く撫でるのではなく、加圧して擦るような作用が働く。毛材に備わった枝毛により前述の(A)(B)2つの条件が充たされるから、歯間ブラシや糸ようじを併用しなくても、歯間などの隙間の歯垢除去に絶大な効果を発揮する歯ブラシが実現した。
【0030】
上述の様子を解り易くするために、
図18、
図21、
図23に本発明歯ブラシの毛材が歯間に入った状態を示している。従来型歯ブラシの毛材が歯間に入った状態を示した
図20、
図22、
図24と比較参照すればその違いがより一層よく解る。もちろん、本発明の歯ブラシは
図17に示すように、歯間や歯周ポケットの歯垢除去だけでなく、歯列全体の歯磨きや歯茎のマッサージも従来型歯ブラシと同様に行える。
【0031】
次に、第2の課題、歯ブラシ自体の清潔保持の課題の解決手段による効果について述べる。従来型の歯ブラシの毛束が、歯ブラシの製作上と毛腰を確保する上で必要な反面、毛材の密集、密着状態を招き不潔、不衛生の根源となっていたが、本発明では、毛材は毛束を形成しないで、一本毎に互いに間隔を開けて独立して植設してある。幹毛をテーパー状とすることで、毛束を形成しなくても毛腰の確保が可能となった。毛束を無くすことで、毛材の根本付近の密集、密着状態を排除することができ、根本付近に汚れが絡み付き難く、簡単な洗浄で汚れが充分に除去でき、短時間で乾燥し、黴の発生や細菌が繁殖し難い極めて衛生的な歯ブラシが実現した。
【0032】
ただし、毛材の先端付近は枝毛が密集状態になっているので、汚れが付着し易い懸念がある。しかし、この箇所の枝毛の密集状態は、毛束の根本付近のような強固な密着状態とは違って、枝毛同士は互いに軽く触れ合っているだけで、軽く扱けば容易に離すことができる。しかも、毛材の先端付近は清掃が容易となっているから、
図27に示すようにブラシ部の接歯面を指先で軽く扱き払うようにすれば容易に洗浄でき、簡単な清掃で汚れは充分に除去できる。
【0033】
本発明により、従来の歯ブラシが永年抱えていた大きな2つの課題を解決し、理想的とも言える歯ブラシが実現したが、しかし、唯一課題を残すこととなった。前述の段落番号[0005]で述べた商品化を阻んでいる3つの理由(い)(ろ)(は)の内(は)だけが解消できなかったのである。その課題と言うのはコストアップで、本発明品は毛束が存在しない構成となっているから、歯ブラシの製造工程における従来の植毛機械が使用できないのである。あえて、本発明のコストアップというデメリットについて述べたが、本発明がもたらすメリットとの取捨選択は、メーカーやユーザーの価値観による判断を仰ぐしかない。このコストアップというデメリットは技術革新によって解消可能でもある。
【0034】
毛束を形成して植毛する従来型歯ブラシの基本的構成が生まれて百年以上、それ以来、製造技術や製造機械や素材開発などは目覚ましい進歩、発展を遂げてきたが、歯ブラシ自体の基本的な構成は何ら変わっていないのである。従来型の歯ブラシの構成要素である毛束は、製作上においても機能上においても極めて重要な存在であったから、不潔、不衛生の原因となっていたにもかかわらず未だに手付かずで存在しているのである。超微細加工技術が進歩し、高性能3Dプリンターが開発実用化され、物造り技術が飛躍的な進歩、発展を遂げ、また、素材研究も飛躍的な進歩、発展を遂げ、毛材は豚毛や馬毛などの天然素材から、ナイロンやポリエステルなどの優れた人工素材へ、さらに、セルロースナノファイバーなどの夢のような新素材が開発されている。様々な分野において、従来の常識や既成概念を打破したブレークスルーによる飛躍的な進歩発展を遂げてきた現代、不可能と思われていたことが可能となった。歯ブラシも例外ではないと思われる。
【0035】
本発明は、歯ブラシに本来求められる清掃機能と清潔保持を最優先に徹底追求した結果生まれたもので、従来型とは構成が全く異なる新しい次世代型の歯ブラシと言っても過言でない。時代と共に価値観やニーズは変化する。将来、この毛束の無い構成が常態化することも考えられる。この毛束が衛生上極めて悪影響を及ぼしている事実に、生産者も消費者も認識を深めなければならない。つまり、潜在的であるが衛生上の必要性は極めて高いのである。本発明の手段に限らず毛束を無くすことができれば、それによってもたらせられる衛生上の利点は計り知れない。
【0036】
さらに、本発明は上述の効果以外に、もう一つ大きな効果をもたらす。つまり、本発明の歯ブラシは使い心地において、直毛を採用している従来型の歯ブラシでは味わえない異次元の感触が味わえる。つまり、枝毛を備えた毛材が歯間に入り込み歯垢を掻き出す感触が味わえる。また、本発明の毛材の幹毛は、先端から根本までの各部分で太さを微妙に変化させることができるから、毛腰設定の自由度は高くなっている。従来型歯ブラシの、ふつう、かため、やわらかめ、と言う単純な設定だけでなく、より多彩なバリエーションに富んだ設定が可能である。例えば、柔らかくソフトな感触でありながら腰が強いと言う歯ブラシの製作も難しくない。本発明により、機能面、衛生面、感触面に優れた三拍子揃った歯ブラシが実現した。歯ブラシにおいて、使い心地や感触面も重要な要素である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2】本発明の実施形態のヘッド部の概略拡大斜視図
【
図5】本発明の実施形態のヘッド部の概略拡大平面図
【
図6】本発明の実施形態のヘッド部の概略拡大側面図
【
図9】本発明の実施形態の毛材の穂先部の概略拡大平面図
【
図10】本発明の実施形態の毛材の穂先部の概略拡大側面図
【
図11】本発明の実施形態の枝毛が突起部である穂先部の概略拡大平面図
【
図12】本発明の実施形態の枝毛が突起部である穂先部の概略拡大側面図
【
図13】本発明の実施形態の枝毛が凸部である穂先部の概略拡大平面図
【
図14】本発明の実施形態の枝毛が凸部である穂先部の概略拡大平側図
【
図18】本発明の実施形態の使用状況で毛材が歯間に挿入した様子の概略図
【
図20】従来品の使用状況で毛材が歯間に挿入した様子の概略図
【
図21】本発明の実施形態の毛材が歯間に挿入した様子の概略拡大図
【
図22】従来品の毛材が歯間に挿入した様子の概略拡大図
【
図23】本発明の実施形態の毛材が歯周ポケットに挿入した様子の概略拡大図
【
図24】従来品の毛材が歯周ポケットに挿入した様子の概略拡大図
【
図25】一般的な毛材が歯面に略垂直に当接している拡大説明図
【
図26】一般的な毛材が歯面に略平行に接している拡大説明図
【
図27】本発明の実施形態のブラシ部を指先で扱き払っている説明図
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の歯ブラシ1の実施形態は
図1~
図6に示すような外観を成しており、全体の大きさや材質は一般の従来型歯ブラシ1aと変わらない。変わるところは、個々の毛材4の構成と毛材4の植設状態である。
【0039】
図7、
図8に示すように、本発明のブラシ用毛材4は、幹毛5の先端8に穂先部10を設けた構成としてあり、
図9、
図10に示すように、穂先部10は、幹毛5の周囲に放射状に、幹毛5に略直交する枝毛6を複数配設した構成としている。
図8に示すように、幹毛5の先端8から幹毛5の全長の略20%~略50%までの範囲が穂先部10である。汚れの付着を防ぐため毛材4は、穂先部10以外はプレーンな形状としてある。つまり、個々の毛材4は小さな歯間ブラシに似た形状である。
【0040】
そして、
図2、
図5、
図6の拡大図に示すように、上記の構成としたブラシ用毛材4は、密集、密着状態を避けるため、束ねないで、独立して一本毎に夫々互いに間隔14をあけて歯ブラシ1のヘッド部3の台座13に複数植設してある。ブラシ用毛材4は独立して植設することによる毛腰の喪失を補うため、
図8に示すように、幹毛5は先端8が細く根本9が太いテーパー状にしてある。
【0041】
枝毛6の長さは、短くして突起6aのような形状とすることもできる。その形態の平面図を
図11に、側面図を
図12に示してある。さらに、突起6aの高さを低くして凸部6bのような形状とすることもできる。その形態の平面図を
図13に、側面図を
図14に示してある。また、幹毛5のテーパー状は、太さが直線的に変化する線形テーパ状、或いは、曲線的に変化する指数関数テーパ状、放物線テーパ状とすることもでき様々な形状が選択できる。太さが直線的に変化する線形テーパー状よりも、曲線的に変化するテーパー状の方が多彩な毛腰の設定が可能である。
【0042】
本発明の毛材のように、先端部のみに枝毛を配設した毛材の構成は、歯ブラシに限らず他の清掃用具、つまり、箒や、一般の清掃、洗浄用ブラシの毛材に適用できる。特に、深い窪み、穴、溝、隙間、網状、格子状の物を清掃や洗浄する用具に最適であり、それらの側壁面の汚れ除去に著しい効果を発揮し、用具自体に汚れが付着し難い清潔で高機能の清掃用具を提供することができる。
【実施例0043】
本発明の歯ブラシ1の実施例の斜視図を
図1に、ヘッド部3を拡大した斜視図を
図2に示してある。外形寸法は一般の従来型歯ブラシ1aと同様で、毛材4の長さは12mmとしてある。穂先部10の長さは3.5mmとし、太さは1.6mmとし先端に向けて徐々に細くしてある。枝毛6の太さは0.1mmとし、長さは0.7mmとし先端に向けて徐々に短くしてある。幹毛5の先端8の太さは0.2mmとし、根本9の太さは0.7mmとしたテーパー状としてある。植設する毛材4の間隔14は1mmとし、植設する毛材4の本数は、縦8列、横20列とし、全体で160本としてある。
【0044】
穂先部10に設ける枝毛6の本数や太さや長さ、幹毛5の先端の太さや根本の太さ、毛材4を植設する間隔14の広さ、さらに素材の硬度を様々に設定することができ、多彩なバリエーションが生み出せ、ユーザーの好みにきめ細かく対応可能である。前記の数値は適当と考えられる例として記したが、採用する毛材の材質の硬度に応じて、毛材の太さ、毛材の間隔、毛材の本数をより最適に選定する必要がある。以上記した数値は、図面も同様、本発明の技術的範囲を限定するものではない。