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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072861
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 3/00 20060101AFI20230518BHJP
   B43K 23/08 20060101ALI20230518BHJP
   B43K 24/04 20060101ALI20230518BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B43K3/00 Z
B43K23/08 130
B43K24/04
B43K24/08 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185553
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅也
(72)【発明者】
【氏名】井戸 幹也
(72)【発明者】
【氏名】木暮 正広
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA02
2C353HE01
2C353HE14
2C353HG04
(57)【要約】
【課題】繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる筆記具を提供する。
【解決手段】筆記具は、互いに摺動する摺動部を有する2つの部材を備え、前記部材の少なくとも一方の部材の摺動部が、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成される。摺動部を有する部材が円筒体であり、円筒体全体が含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに摺動する摺動部を有する2つの部材を備え、前記部材の少なくとも一方の部材の摺動部が、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記摺動部を有する部材が円筒体であり、前記円筒体全体が前記含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成される請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記円筒体が出没式筆記具の本体であり、
前記本体は、インキを内蔵した筆記体が前後方向に移動可能に収容され、該筆記体のペン先が前端より出没自在にする出没機構を備え、
前記出没機構が、前記本体内面に形成されたカム部と、該カム部と係合し前記筆記体の後端と当接する回転体と、該回転体に係合し外部に突出する操作体と、を備え、
前記本体が、前記回転体との前記摺動部及び前記操作体との前記摺動部を備える請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記本体の前端部に、前記筆記体のペン先が出没する前端孔を有する前軸が着脱自在に螺合
され、前記本体の前端部に、前記前軸と螺合摺動される前記摺動部を備える請求項3に記載の筆記具。
【請求項5】
インキが内蔵され、前端に前記インキが吐出可能なペン先を備えた軸筒と、該軸筒に着脱自在に装着されるキャップとを備え、
前記軸筒の外面に嵌合部を備え、前記キャップの内面に、前記軸筒の外面の嵌合部と着脱自在に嵌合可能な嵌合部を備え、
前記軸筒またはキャップの少なくとも一方が前記円筒体であり、前記軸筒の嵌合部または前記キャップの嵌合部が前記摺動部となる請求項2に記載の筆記具。
【請求項6】
前記軸筒が、円筒状の前軸と、該前軸と着脱自在に螺合される円筒状の後軸とからなり、前記前軸及び前記後軸が互いに螺合摺動される摺動部を備え、前記前軸または前記後軸の少なくとも一方の外面に前記キャップとの嵌合部を備えた前記円筒体である請求項5に記載の筆記具。
【請求項7】
軸筒内に複数の筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体を弾発体により後方に付勢し、前記各々の筆記体の後端に、各々の筆記体に対応した操作体を連結し、前記軸筒の側壁に前後方向に延びる複数の窓孔を径方向に貫設し、前記各々の窓孔から径方向外方に前記各々の操作体を突出させ、一つの操作体を窓孔に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体に連結された筆記体のペン先を前記軸筒の前端孔から突出させるとともに、先に突出状態にあった他の筆記体のペン先を前記軸筒内に没入させる多芯式の筆記具であって、
前記円筒体が前記多芯式筆記具の軸筒であり、
前記各々の窓孔に前記各々の操作体が摺動する前記摺動部を備える請求項2に記載の筆記具。
【請求項8】
前記軸筒が、円筒状の前軸と、該前軸と着脱自在に螺合される円筒状の後軸とからなり、前記後軸の前端部に、前記前軸と螺合摺動される前記摺動部を備え、前記後軸の側壁に前記複数の窓孔が形成される請求項7に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、軸筒と、該軸筒に着脱自在に装着されるキャップとが、ポリカーボネートからなることが開示されている。特許文献2には、回転カムからなる出没機構を有するノック式ボールペンにおいて、軸筒本体及びカム溝を有する頭冠が、ポリカーボネート樹脂で射出成形されることが開示されている。特許文献3には、外装体に摺動可能に取り付けられた操作体を摺動操作することにより、外装体内部に収納された先端にペン先を有する複数のリフィルを交互に外装体先端より出没させてなる多芯式筆記具において、外装体がポリカーボネートからなることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-72284号公報
【特許文献2】特開2003-54182号公報
【特許文献3】特開平9-207494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のように、キャップ及び軸筒をポリカーボネートにより形成した場合、キャップ内面の嵌合部及び軸筒外面の嵌合部が、繰り返しの装着により損耗するおそれがあり、それにより、キャップと軸筒との確実な嵌合及び円滑な着脱が維持できないおそれがある。そのため、従来では、キャップ内面の嵌合部及び軸筒外面の嵌合部に潤滑剤を塗布することが採用される。
【0005】
前記特許文献2のような回転カムを用いた出没式筆記具において、回転カムが係合摺動するカム溝を有する部材、螺合摺動する部分を有する部材、及びノック体が摺動する部材をポリカーボネートで形成した場合、繰り返しの出没操作や螺合部の着脱操作で、それぞれの部材の摺動部が損耗するおそれがある。特に、回転カムとの摺動部には、潤滑剤を塗布すること無しには、円滑な出没操作なしえないおそれがある。
【0006】
前記特許文献3のような多芯式筆記具の場合、操作体が摺動する外装体がポリカーボネートから形成される場合、繰り返しの出没操作で、外装体の、操作体との摺動部が損耗して、円滑な出没操作が維持できないおそれがある。
【0007】
本願発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる筆記具を提供しようとするものである。本発明において、「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、互いに摺動する摺動部を有する2つの部材を備え、前記部材の少なくとも一方の部材の摺動部が、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることを特徴とする筆記具である。
【0009】
前記第1の発明の筆記具は、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる。
【0010】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の筆記具において、前記摺動部を有する部材が円筒体であり、前記円筒体全体が前記含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されること特徴とする。
【0011】
前記第2の発明の筆記具は、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる円筒体からなる部材を得る。すなわち、筆記具の部材として最適な円筒体からなる部材を得る。
【0012】
本願の第3の発明は、前記第2の発明の筆記具において、前記円筒体が出没式筆記具の本体であり、前記本体は、インキを内蔵した筆記体が前後方向に移動可能に収容され、該筆記体のペン先が前端より出没自在にする出没機構を備え、前記出没機構が、前記本体内面に形成されたカム部と、該カム部と係合し前記筆記体の後端と当接する回転体と、該回転体に係合し外部に突出する操作体と、を備え、前記本体が、前記回転体との前記摺動部及び前記操作体との前記摺動部を備えることを特徴とする。
【0013】
前記第3の発明の筆記具は、回転体との摺動部及び操作体との摺動部が、繰り返しの操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる本体を備えた出没式筆記具を得る。
【0014】
本願の第4の発明は、前記第3の発明の筆記具において、前記本体の前端部に、前記筆記体のペン先が出没する前端孔を有する前軸が着脱自在に螺合され、前記本体の前端部に、前記前軸と螺合摺動される前記摺動部を備えることを特徴とする。
【0015】
前記第4の発明の筆記具は、前軸と螺合摺動される前端部の摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる本体を備えた出没式筆記具を得る。
【0016】
本願の第5の発明は、前記第2の発明の筆記具において、インキが内蔵され、前端に前記インキが吐出可能なペン先を備えた軸筒と、該軸筒に着脱自在に装着されるキャップとを備え、前記軸筒の外面に嵌合部を備え、前記キャップの内面に、前記軸筒の外面の嵌合部と着脱自在に嵌合可能な嵌合部を備え、前記軸筒またはキャップの少なくとも一方が前記円筒体であり、前記軸筒の嵌合部または前記キャップの嵌合部が前記摺動部となることを特徴とする。
【0017】
前記第5の発明の筆記具は、摺動部となる軸筒の嵌合部またはキャップの嵌合部が、キャップと軸筒との繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できるキャップ式筆記具を得る。
【0018】
本願の第6の発明は、前記第5の発明の筆記具において、前記軸筒が、円筒状の前軸と、該前軸と着脱自在に螺合される円筒状の後軸とからなり、前記前軸及び前記後軸が互いに螺合摺動される摺動部を備え、前記前軸または前記後軸の少なくとも一方の外面に前記キャップとの嵌合部を備えた前記円筒体であることを特徴とする。
【0019】
前記第6の発明の筆記具は、互いに螺合摺動される軸筒の摺動部及びキャップとの嵌合部よりなる摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できるキャップ式筆記具の軸筒を得る。
【0020】
本願の第7の発明は、前記第2の発明の筆記具において、軸筒内に複数の筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体を弾発体により後方に付勢し、前記各々の筆記体の後端に、各々の筆記体に対応した操作体を連結し、前記軸筒の側壁に前後方向に延びる複数の窓孔を径方向に貫設し、前記各々の窓孔から径方向外方に前記各々の操作体を突出させ、一つの操作体を窓孔に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体に連結された筆記体のペン先を前記軸筒の前端孔から突出させるとともに、先に突出状態にあった他の筆記体のペン先を前記軸筒内に没入させる多芯式の筆記具であって、前記円筒体が前記多芯式筆記具の軸筒であり、前記各々の窓孔に前記各々の操作体が摺動する前記摺動部を備えることを特徴とする。
【0021】
前記第7の発明の筆記具は、各々の窓孔の、操作体との摺動部が、繰り返しの操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる多芯式筆記具を得る。
【0022】
前記第8の発明は、前記第7の発明の筆記具において、前記軸筒が、円筒状の前軸と、該前軸と着脱自在に螺合される円筒状の後軸とからなり、前記後軸の前端部に、前記前軸と螺合摺動される前記摺動部を備え、前記後軸の側壁に前記複数の窓孔が形成されることを特徴とする。
【0023】
前記第8の発明の筆記具は、前軸と螺合摺動される摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる後軸を備えた多芯式筆記具を得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の筆記具は、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施の形態のペン先没入状態を示す縦断面図である。
図2図1のペン先突出状態を示す縦断面図ある。
図3図1の前軸の縦断面図である。
図4図1の中間軸の縦断面図である。
図5図1の後軸の縦断面図である。
図6図1の回転体の縦断面図である。
図7図1のクリップ体の縦断面図である。
図8図1の部材を示す縦断面図である。
図9】本発明の第2の実施の形態のペン先没入状態を示す縦断面図である。
図10図9のペン先突出状態を示す縦断面図ある。
図11図9の出没機構を示す分解図である。
図12】本発明の第3の実施の形態のキャップと軸筒とが分離された状態を示す縦断面図である。
図13図12の筆記具においてキャップが軸筒に装着された状態を示す縦断面図である。
図14】本発明の第4の実施の形態の全てのペン先が没入された状態を示す縦断面図である。
図15図14の筆記具において一つのペン先が突出された状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態の筆記具を図1乃至図8に示す。
本実施の形態の筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体9と、該筆記体9のペン先91を軸筒2の前端孔31より出没自在にさせる出没機構と、を備える。
【0027】
・筆記体
筆記体9は、ペン先91と、該ペン先91が前端開口部に圧入固着されたインキ収容筒92と、該インキ収容筒92内に充填されるインキ93(熱変色性インキ)と、該インキ93の後端に充填され且つ該インキ93の消費に伴い前進する追従体94(例えば高粘度流体)とからなる。インキ収容筒92は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)または金属(ステンレス鋼)からなる円筒状の部材である。
【0028】
前記ペン先91は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容筒92の後端開口部に、インキ収容筒92と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓95が取り付けられる。前記ペン先91の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。前記スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0029】
・軸筒
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸3と、該前軸3の後端部に連結される円筒状の中間軸4(本体)と、該中間軸4の後端部に連結される円筒状の後軸5とからなる。
【0030】
図3に前軸3を示す。前記前軸3は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の成形体からなる先細円筒状の本体部3aと、該本体部3a外面に設けられる弾性材料からなる把持部3bとからなる。前記把持部3bは、2色成形または本体部3a外面への装着により設けられる。前記本体部3aの後端部は縮径され、その外面にはオネジ部32が一体に形成される。前記前軸3の前端には、前端孔31が前後方向に貫設される。ペン先SY津没時、前端孔31の内面とペン先91の外面とが摺動する。
【0031】
図4及び図8に中間軸4を示す。前記中間軸4は、円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の成形体からなる。前記中間軸4の前端部内面には、メネジ部46が一体に形成される。前記メネジ部46に前記前軸3のオネジ部32が螺合可能である。前記中間軸4の後端部には、縮径部43が一体に形成される。前記中間軸4の後端部側壁には、前端が閉鎖され且つ後端が開放された、前後方向に延びる第1の長孔44が形成される。さらに、前記縮径部43の外面には外向突起45が一体に形成される。前記縮径部43よりも前方の前記中間軸4の内面には、段部42が一体に形成される。前記段部42より前方の前記中間軸4の内面には、カム部41が一体に形成される。また、中間軸4の第1の長孔44に沿って軸方向前方に延びる仮想延長線上の外面に、前後方向に延びるガイド溝47が一体に形成される。クリップ体7のスライド操作時、ガイド溝47内をクリップ体7の玉部71aが前後方向に摺動可能ある。
【0032】
図5及び図8に後軸5を示す。前記後軸5は、円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の成形体からなる。前記後軸5の前端部側壁には、前端が開放され且つ後端が閉鎖された、前後方向に延びる第2の長孔51が形成される。また、前記後軸5の後端には、取付孔52が前後方向に貫設される。前記取付孔52に弾性材料からなる摩擦部10が圧入嵌合される。それにより、前記後軸5の後端外面に摩擦部10が固定される。また、前記後軸5の内面には、内向突起53が一体に形成される。前記第2の長孔51の幅寸法は、前記第1の長孔44の幅寸法と等しく設定され、それにより、スライド孔21に沿ってクリップ体7の前後方向のスムーズな移動が可能となる。
【0033】
図7及び図8にクリップ体7を示す。前記クリップ体7は、前後方向に延びるクリップ本体71と、該クリップ本体71の後部の径方向内方に一体に連設される基部72と、該基部72と一体に連設され且つ基部72より前方に延びる軸部73とからなる主要部7aと、該軸部73に取り付けられる軸部筒体74とからなる。前記クリップ体7の主要部7aは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の成形体により得られる。前記クリップ本体71の裏面(内面)に板状の玉部71aが一体に突設される。
【0034】
前記軸部筒体74は、前記クリップ体7の軸部73の外面に取り付けられる。前記軸部筒体74の前端には、カム歯74aが一体に形成される。前記軸部筒体74の外面には、複数のガイド突起74bが一体に形成され、前記ガイド突起74bが、カム部41のカム溝41bに沿って前後方向に移動可能に係合し、それによって、軸筒2内での軸部筒体74の回転が阻止される。前記軸部筒体74は合成樹脂(例えば、ポリアセタール系樹脂)の成形体により得られる円筒状の部材である。
【0035】
図6及び図8に回転体6を示す。前記回転体6は、その外面に前後方向に延びる複数本(例えば4本)の突条61を備え、該突条61が、カム部41のカム歯41a及びカム部41のカム溝41bと係合される。前記回転体6の内部には前後方向に貫通する内孔が形成される。前記回転体6は合成樹脂(例えば、ポリアセタール系樹脂)の成形体により得られる円筒状の部材である。
【0036】
・クリップ体の組立
前記クリップ体7の組立について説明する。前記中間軸4の第1の長孔44の後端開放部より、該第1の長孔44内にクリップ体7の基部72を挿入するとともに、軸部筒体74を外面に備えたクリップ体7の軸部73を中間軸4内に挿入する。その後、中間軸4の第1の長孔44と後軸5の第2の長孔51とを径方向に連通させるように(径方向に重なるように)、前記後軸5の内面を前記中間軸4の縮径部43の外面に嵌合させるとともに、クリップ体7の基部72を、第2の長孔51の前端開放部より、該第2の長孔51内に挿入する。それにより、前記中間軸4と前記後軸5とが連結され、前記第1の長孔44と第2の長孔51とにより、前後方向に延びるスライド孔21が形成されるとともに、前記スライド孔21より径方向外方にクリップ体7(クリップ本体71及び基部72の一部)が突出され、前記クリップ体7がスライド孔21に沿って前後方向にスライド可能(前後方向に摺動可能)に構成される。尚、このとき、前記中間軸4の縮径部43外面の外向突起45と後軸5の内面の内向突起53が乗り越え係合される。
【0037】
前記摩擦部10が固定された後軸5を中間軸4の後端部に連結することによって、前記摩擦部10が本体2の後端に常時固定される。また、前軸3と中間軸4とが螺合により着脱自在に連結され、それにより、筆記体9を交換可能にできる。
【0038】
・出没機構
前記出没機構は、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構である。前記出没機構は、中間軸4内面に形成されたカム部41と、該カム部41に係合し且つ筆記体9の後端に当接する回転体6と、該回転体6に係合し且つスライド孔21より径方向外方に突出するクリップ体7と、軸筒2内に収容され且つ筆記体9を後方に付勢する弾発体8(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもがクリップ体7(操作体)を前方にスライド操作するダブルノック式である。
【0039】
前記カム部41は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯41aと、該カム歯41a間に形成される、前後方向に延びる複数のカム溝41bとを備える。前記回転体6は、その外面に長手方向に延びる複数本(例えば4本)の突条61を備え、該突条61が、カム部41のカム歯41a及びカム部41のカム溝41bと係合される。前記クリップ体7の軸部73の外面に取り付けられた軸部筒体74の前端には、回転体6の突条61の後端と係合するカム歯74aが一体に形成される。
【0040】
・ペン先の出没
ペン先没入状態からクリップ体7を前方に、弾発体8による後方付勢に抗してスライド操作すると、クリップ体7の軸部73に取り付けられた軸部筒体74によって回転体6が前方に押圧され、前記回転体6の突条61がカム溝41bに沿って前方に移動するに伴って、前記回転体6が筆記体9の後端を前方に押圧し、ペン先91が前端孔31より外部に突出される。このとき、前記軸部73に取り付けられた軸部筒体74のカム歯74aと前記回転体6の突条61との当接によって回転体6がカム部41に対して一定角度だけ回転する。それにより、前記回転体6の突条61がカム部41のカム歯41aに係合され、ペン先突出状態が維持される。
【0041】
ペン先突出状態からクリップ体7を前方にスライド操作すると、クリップ体7の軸部73に取り付けられた軸部筒体74が回転体6を前方に押圧し、前記軸部筒体74のカム歯74aと前記回転体6の突条61との当接によって回転体6がカム部41に対して一定角度だけ回転する。それによって、前記突条61とカム部41のカム歯41aとの係合状態が解除され、弾発体8による後方付勢により、前記突条61がカム部41のカム溝41bに沿って後方に移動する。前記回転体6が後方に移動することに伴って、筆記体9が後方に移動し、ペン先没入状態となる。
【0042】
本発明において、出没機構は、これ以外に、例えば、径方向外方に突出する操作体を径方向内方に押圧操作するサイドノック式、外部に形成された操作部を回転操作する回転式等、が挙げられる。本発明において、出没機構は、少なくとも摺動部を備えた部材から構成されていれば、回転体を備えないタイプであってもよい。
【0043】
・摩擦部
摩擦部10を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部10を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。摩擦部10を用いて、熱変色性インキによる被筆記面上の筆跡を摩擦し、その際に発生する摩擦熱により該筆跡を熱変色させることができる。
【0044】
・ポリカーボネート系樹脂
前記ポリカーボネート系樹脂は、含酸素脂環式骨格を有する熱可塑性の非芳香族ポリカーボネート系樹脂、または芳香族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0045】
・非芳香族ポリカーボネート系樹脂
前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂は、イソソルバイド(イソソルビド)を主原料として生成される熱可塑性のポリカーボネート系樹脂であり、具体的には、三菱ケミカル株式会社製の商品名「デュラビオ(DURABIO)」が挙げられる。本実施の形態では、「デュラビオ D5360R」が採用される。
【0046】
・芳香族ポリカーボネート系樹脂
前記芳香族ポリカーボネート系樹脂は、例えば、住化スタイロンポリカーボネート株式会社製の商品名「カリバー(CALIBRE)」、「SDポリカ(SD POLYCA)」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の商品名「ユーピロン(Iupilon)」、「ノバレックス(NOVAREX)」、帝人株式会社製の商品名「パンライト(Panlite)」などが例示できる。
【0047】
中間軸4を、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成した。前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂を採用したことにより、回転体6と摺動するカム部41(カム歯41a及びカム溝41b)からなる摺動部、クリップ体7と摺動するスライド孔21(第1の長孔44)からなる摺動部、及び前軸3のオネジ部32と螺合摺動するメネジ部46からなる摺動部、クリップ体7の玉部71aが摺動するガイド溝47からなる摺動部のそれそれが、繰り返しの操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。すなわち、複数の摺動部を有する一つの部材(中間軸4)を、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成したことにより、それぞれの摺動部における損耗抑制効果を同時に得ることができる。本実施の形態では、カム部41と回転体6との間に潤滑剤を塗布しなくても円滑な出没作動が得られるが、カム部41と回転体との間に潤滑剤を塗布することにより、より一層、円滑な出没作動が得られる。
【0048】
また、中間軸4は、前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂に、白色顔料(例えば、酸化チタン)を添加した白色の非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成される。それにより、中間軸4の表面に、名入れ等の印刷が容易となり、ノベルティとして最適な筆記具の本体を得る。
【0049】
前軸3の本体部3a及び後軸5は、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成される。
【0050】
これ以外にも、前軸3の本体部3a及び後軸5を、中間軸4と同じ非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成してもよい。それにより、中間軸4のメネジ部46と螺合摺動する前軸3の本体部3aのオネジ部32からなる摺動部、
ペン先91の外面が摺動する前軸3の前端孔31からなる摺動部、及びクリップ体7と摺動する後軸5のスライド孔21(第2の長孔51)からなる摺動部が、一層、繰り返しの操作でもそれぞれの摺動部が損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0051】
また、回転体6、クリップ本体71、及び軸部筒体74を、中間軸4と同じ非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成してもよい。それにより、カム部41からなる摺動部、スライド孔21からなる摺動部、及び回転体6との摺動部が、一層、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0052】
本実施の形態の筆記具1は、互いに摺動する摺動部を有する2つの部材を備え、前記部材の少なくとも一方の部材の摺動部が、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることにより、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる。
【0053】
本実施の形態の筆記具1は、前記摺動部を有する部材が円筒体であり、前記円筒体全体が前記含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることにより、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる円筒体からなる部材を得る。すなわち、筆記具の部材として最適な円筒体からなる部材を得る。
【0054】
本実施の形態の筆記具1は、前記円筒体が出没式筆記具の本体4であり、前記本体4は、インキを内蔵した筆記体9が前後方向に移動可能に収容され、該筆記体9のペン先91が前端より出没自在にする出没機構を備え、前記出没機構が、前記本体9内面に形成されたカム部41と、該カム部41と係合し前記筆記体9の後端と当接する回転体6と、該回転体6に係合し外部に突出する操作体7と、を備え、前記本体4が、前記回転体6との前記摺動部及び前記操作体7との前記摺動部を備えることにより、回転体6との摺動部及び操作体7との摺動部が、繰り返しの操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる本体4を備えた出没式筆記具を得る。
【0055】
本実施の形態の筆記具1は、前記本体4の前端部に、前記筆記体9のペン先91が出没する前端孔31を有する前軸3が着脱自在に螺合され、前記本体4の前端部に、前記前軸3と螺合摺動される前記摺動部を備えることにより、前軸3と螺合摺動される前端部の摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる本体4を備えた出没式筆記具を得る。
【0056】
<第2の実施の形態>
本発明の実施の形態を図9乃至図11に示す。
本実施の形態の筆記具1Aは、軸筒2Aと、該軸筒2A内に収容される筆記体5A と、該筆記体5Aのペン先5を軸筒2Aの前端孔31Aより出没自在にさせる出没機構とを備える。
【0057】
・軸筒
前記軸筒2Aは、前軸3Aと、該前軸3Aの後端に螺合により着脱自在に連結される後軸4Aとからなる。
【0058】
・前軸
前記前軸3Aは、先細円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の成形体である。前記前軸3Aの前端には前端孔31Aが前後方向に貫設される。前記前軸3Aの後端開口部外面には、オネジ部32Aが一体に形成される。ペン先出没時、前端孔31Aの内面とペン先51Aの外面が摺動する。
【0059】
・後軸
前記後軸4Aは、円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の成形体である。前記後軸4Aの後端には、後端孔41Aが前後方向に貫設される。前記後軸4Aの後端部内面には段部42Aが一体に形成される。前記後軸4Aの後端孔41Aより前方の内面には、カム部43Aが一体に形成される。前記後軸4Aの外面には、クリップ45が固着される。クリップ45には環状取付部451Aが一体に形成され、環状取付部451Aが後軸4Aの外面に嵌合される。前記後軸4Aの前端開口部内面には、メネジ部44Aが一体に形成される。前記メネジ部44Aと前軸3Aのオネジ部32Aとが螺合可能である。
【0060】
・筆記体
前記筆記体5Aは、ペン先51Aと、該ペン先51Aが前端開口部に圧入固着されたインキ収容筒52Aと、該インキ収容筒52A内に充填されるインキ(例えば油性インキまたは水性インキ)と、該インキの後端に充填され且つ該インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。インキ収容筒52Aは、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)または金属(ステンレス鋼)からなる円筒状の部材である。
【0061】
前記ペン先51Aは、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容筒52Aの後端開口部に、インキ収容筒52Aと外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓を取り付けてもよい。
【0062】
・出没機構
前記出没機構は、回転カム機構を用いたノック式出没機構であり、後軸4Aの内面に形成されたカム部43Aに係合し且つ筆記体5Aの後端に当接する円筒状の回転体6Aと、該回転体6Aに係合し且つ軸筒2A(後軸4A)の後端孔41Aより後方に突出する円筒状のノック体7A(操作体)と、軸筒2A内に収容され且つ筆記体5Aを後方に付勢する弾発体8A(例えば、圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもがノック体7A(操作体)を前方に押圧操作するダブルノック式である。回転体6Aは、合成樹脂(例えば、ポリアセタール系樹脂)の成形体により得られる円筒状の部材である。ノック体7Aは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の成形体により得られる円筒状の部材である。
【0063】
図11の(a)に示すように、ノック体7Aの前端には、回転体6Aの突条61Aの後端と係合するカム歯71Aを備える。ノック体7Aの前端部外面には、カム部43Aのカム溝432A内を前後方向に摺動可能なガイド突条72Aを備え、それにより、カム部43Aに対するノック体7Aの回転が阻止される。図11(b)に示すように、回転体6Aの外面には、長手方向に延びる3本または4本の突条61Aを備える。前記突条61Aが、カム部43Aのカム歯431A及びカム溝432Aに係合される。図11(c)に示すように、カム部43Aは、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯431Aと、該カム歯431A間に形成されるカム溝432Aとを備える。
【0064】
・ペン先の出没
ペン先没入状態からノック体7Aを弾発体8Aによる後方付勢に抗して前方に押圧操作すると、ノック体8Aの前端が回転体6Aを前方に押圧し、前記回転体6Aの突条61Aがカム溝432Aに沿って前方に移動する。前記回転体6Aが前方に移動することに伴って、前記回転体6Aが筆記体5Aの後端を前方に押圧し、ペン先51Aが前端孔31Aより外部に突出される。このとき、前記ノック体7Aのカム歯71Aと前記回転体6Aの突条61Aとの当接によって回転体6Aがカム部43Aに対して一定角度だけ回転する。それにより、前記回転体6Aの突条61Aがカム部43Aのカム歯431Aに係合され、ペン先突出状態が維持される。
【0065】
ペン先突出状態からノック体7Aを前方に押圧操作すると、ノック体7Aの前端が回転体6Aを前方に押圧し、前記ノック体7Aのカム歯71Aと前記回転体6Aの突条61Aとの当接によって回転体6Aがカム部43Aに対して一定角度だけ回転する。それによって、前記突条61Aとカム部43Aのカム歯431Aとの係合状態が解除され、弾発体8Aによる後方付勢により、前記突条61Aがカム部43Aのカム溝432Aに沿って後方に移動する。前記回転体6Aが後方に移動することに伴って、筆記体5Aが後方に移動し、ペン先没入状態となる。前記ガイド突条72Aはカム部43Aの後方の段部42Aに係止し、ペン先没入状態が維持される。
【0066】
・ポリカーボネート系樹脂
前記ポリカーボネート系樹脂は、含酸素脂環式骨格を有する熱可塑性の非芳香族ポリカーボネート系樹脂、または芳香族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0067】
・非芳香族ポリカーボネート系樹脂
前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂は、イソソルバイド(イソソルビド)を主原料として生成される熱可塑性のポリカーボネート系樹脂であり、具体的には、三菱ケミカル株式会社製の商品名「デュラビオ(DURABIO)」が挙げられる。本実施の形態では、「デュラビオ D5360R」が採用される。
【0068】
・芳香族ポリカーボネート系樹脂
前記芳香族ポリカーボネート系樹脂は、例えば、住化スタイロンポリカーボネート株式会社製の商品名「カリバー(CALIBRE)」、「SDポリカ(SD POLYCA)」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の商品名「ユーピロン(Iupilon)」、「ノバレックス(NOVAREX)」、帝人株式会社製の商品名「パンライト(Panlite)」などが例示できる。
【0069】
後軸4A(本体)を、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成した。前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂を採用したことにより、回転体6Aと摺動するカム部43A(カム歯431A及びカム溝432A)からなる摺動部、ノック体7Aと摺動する後端孔41Aからなる摺動部、及び前軸3Aのオネジ部32Aと螺合摺動するメネジ部44Aからなる摺動部のそれそれが、繰り返しの操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。すなわち、複数の摺動部を有する一つの部材(後軸4A)を、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成したことにより、それぞれの摺動部における損耗抑制効果を同時に得ることができる。本実施の形態では、カム部43Aと回転体6Aとの間に潤滑剤を塗布しなくても円滑な出没作動が得られるが、カム部43Aと回転体6Aとの間に潤滑剤を塗布することも可能である。
【0070】
また、後軸4Aは、前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂に、白色顔料(例えば、酸化チタン)を添加した白色の非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成される。それにより、後軸4Aの表面に、名入れ等の印刷が容易となり、ノベルティとして最適な筆記具の本体を得る。
【0071】
前軸3Aは、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成される。
【0072】
これ以外にも、前軸3Aを、後軸4Aと同じ非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成してもよい。それにより、後軸4Aのメネジ部44Aと螺合摺動する前軸3Aの本体部のオネジ部32Aからなる摺動部が、一層、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0073】
また、回転体6A及びノック体7Aを、後軸4Aと同じ非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成してもよい。それにより、カム部43Aからなる摺動部及び後端孔41Aからなる摺動部が、一層、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0074】
本実施の形態の筆記具1Aは、互いに摺動する摺動部を有する2つの部材を備え、前記部材の少なくとも一方の部材の摺動部が、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることにより、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる。
【0075】
本実施の形態の筆記具1Aは、前記摺動部を有する部材が円筒体であり、前記円筒体全体が前記含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることにより、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる円筒体からなる部材を得る。すなわち、筆記具の部材として最適な円筒体からなる部材を得る。
【0076】
本実施の形態の筆記具1Aは、前記円筒体が出没式筆記具の本体4Aであり、前記本体4Aは、インキを内蔵した筆記体5Aが前後方向に移動可能に収容され、該筆記体5Aのペン先51Aが前端より出没自在にする出没機構を備え、前記出没機構が、前記本体4A内面に形成されたカム部43Aと、該カム部43Aと係合し前記筆記体5Aの後端と当接する回転体6Aと、該回転体6Aに係合し外部に突出する操作体7Aと、を備え、前記本体4Aが、前記回転体6Aとの前記摺動部及び前記操作体7Aとの前記摺動部を備えることにより、回転体6Aとの摺動部及び操作体7Aとの摺動部が、繰り返しの操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる本体4を備えた出没式筆記具を得る。
【0077】
本実施の形態の筆記具1Aは、前記本体4Aの前端部に、前記筆記体5Aのペン先51Aが出没する前端孔31Aを有する前軸3Aが着脱自在に螺合され、前記本体4Aの前端部に、前記前軸3Aと螺合摺動される前記摺動部を備えることにより、前軸3と螺合摺動される前端部の摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる本体4Aを備えた出没式筆記具を得る。
【0078】
<第3の実施の形態>
本発明の実施の形態を図12及び図13に示す。
本実施の形態の筆記具1Bは、軸筒2Bと、該軸筒2Bのペン先側の外面に着脱自在に装着されるキャップ6Bとからなる。軸筒2Bは、互いに螺合可能な前軸3Bと後軸4Bとからなり、軸筒2B内部に交換可能に筆記体5Bが収容される。
【0079】
・前軸
前軸3Bは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の射出成形体により得られる円筒状の部材である。前記前軸3Bの外面には、先細状の前端部31Bと、該前端部31Bの後方に連設される把持部32Bと、該把持部32Bの後方に連設されるオネジ部33Bとが一体に形成される。先細状の前端部31Bの前端には前端孔36Bが軸方向に貫通され、前端孔36Bから外部に、軸筒2B内部に収容した筆記体5Bのペン先51Bが突出される。筆記体5Bの交換時、前端孔36Bの内面とペン先51Bの外面とが摺動する。前軸3Bの把持部32Bの後部外面には、外向突起35Bが一体に形成される。外向突起35Bは、環状突起、または複数個が周状に分散配置される点状突起からなる。把持部32B後方且つ前記オネジ部33B前方の前軸3Bの外面には、段部34Bが形成される。また、把持部32Bの外面には、滑り止め用の凹凸、または弾性材料(ゴムまたはエラストマー)よりなる外皮を設けてもよい。
【0080】
前軸3Bの内面には、筆記体5Bのペン先保持筒52Bの係止壁部が当接し且つ筆記体5Bの前方移動を阻止する当接壁部37Bが一体に形成される。前記当接壁部37Bは、軸方向に延びる複数の板状リブからなり、前記板状リブの相互間に軸方向の通気路が形成される。
【0081】
・後軸
後軸4Bは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の射出成形により得られる有底円筒状の部材である。後軸4Bの前端開口部の内面には、前記前軸3Bのオネジ部33Bと螺合可能なメネジ部41Bが形成される。後軸4Bの後端部内面には、軸方向に延びる複数本のリブよりなる支持壁部42Bが一体に形成される。
【0082】
・筆記体
筆記体5Bは、ペン先51Bと、該ペン先51Bの後部が圧入保持されるペン先保持筒52Bと、該ペン先保持筒52Bの後部が前端開口部に圧入固着されるインキ収容筒53Bと、該インキ収容筒53Bの後端開口部に圧入固着される尾栓54Bとからなる。前記インキ収容筒53B内部には、インキ(例えば、低粘度の水性インキ、水性ゲルインキ、または油性インキ)と、該インキの消費に伴って前進するグリス状の追従体が充填される。インキ収容筒53Bは、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)または金属(ステンレス鋼)からなる円筒状の部材である。
【0083】
・ペン先
ペン先51Bは、ボールペンチップであり、例えば、金属製筒体(例えば、ステンレス鋼製パイプ)の前端近傍を内方へ押圧変形させることにより、ボール受け座を形成したボールペンチップ、または、金属材料(例えば、ステンレス鋼)を切削加工することによりボール受け座、ボール抱持孔、インキ流通孔等を形成したボールペンチップが挙げられる。
【0084】
・ペン先保持筒
ペン先保持筒52Bは、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)の射出成形により得られる筒状体である。前記ペン先保持筒52Bは、ペン先51Bを保持する先細状の前部と、インキ収容筒53Bの前端開口部に圧入される後部と、該前部と該後部との間に形成され、インキ収容筒の前端面に当接する鍔部とが一体に連設されてなる。
【0085】
ペン先保持筒52Bの鍔部の前面は、筆記体5Bを軸筒2B内に収容した際、前軸2の内面の当接壁部37Bと前後方向に係止する係止する係止壁部となる。
【0086】
・尾栓
尾栓54Bは、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)の射出成形により得られる筒状体である。尾栓54Bの軸心には、インキ収容筒53B内と外気とを連通させる通気孔が貫設される。尾栓54Bの後端部の外周面は、後軸の内面の支持壁部43Bと当接され、筆記体5Bの前後方向の位置決めがなされる。
【0087】
・キャップ
キャップ6Bは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の射出成形により得られる有底の円筒状部材である。前記キャップ6Bの外面にクリップ61Bが一体に形成される。前記キャップ6B内には、弾性材料よりなるペン先シール部材62Bが圧入により固定配置される。前記ペン先シール部材62Bは、ペン先51Bが当接した際に弾性変形し、ペン先51Bを密封するものであり、ペン先シール部材62Bの形状は、球状、板状、凹状等、いずれであってもよい。
【0088】
ペン先シール部材62Bの後方のキャップ6B内面には、軸方向に延びるリブよりなる規制壁部63Bが一体に形成される。規制壁部63Bより後方のキャップ6B内面には、前軸3Bの外面と摺接嵌合する嵌合突部64Bが一体に形成される。さらに、嵌合突部64Bより後方のキャップ内面(即ちキャップの後端開口部内面)には、内向突起65Bが一体に形成される。キャップ6Bを軸筒2Bのペン先側に装着した際、前記キャップ6B内面の内向突起65Bが、前軸3B外面の外向突起35Bと乗り越え嵌合する。内向突起65Bは、外向突起35Bが周状に分散配置される複数個の点状突起の場合、環状突起であることが好ましい。逆に、外向突起35Bが環状突起の場合、内向突起35Bは、複数個が周状に分散配置される点状突起であることが好ましい。
【0089】
・ポリカーボネート系樹脂
前記ポリカーボネート系樹脂は、含酸素脂環式骨格を有する熱可塑性の非芳香族ポリカーボネート系樹脂、または芳香族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0090】
・非芳香族ポリカーボネート系樹脂
前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂は、イソソルバイド(イソソルビド)を主原料として生成される熱可塑性のポリカーボネート系樹脂である。具体的には、三菱ケミカル株式会社製の商品名「デュラビオ(DURABIO)」が挙げられる。本実施の形態では、「デュラビオ D5360R」を採用した。
【0091】
・芳香族ポリカーボネート系樹脂
前記芳香族ポリカーボネート系樹脂は、例えば、住化スタイロンポリカーボネート株式会社製の商品名「カリバー(CALIBRE)」、「SDポリカ(SD POLYCA)」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の商品名「ユーピロン(Iupilon)」、「ノバレックス(NOVAREX)」、帝人株式会社製の商品名「パンライト(Panlite)」などが例示できる。
【0092】
前軸3Bを、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成した。前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂を採用したことにより、キャップ6Bの内面の内向突起65B(即ち嵌合部)と着脱自在に嵌合可能な前軸の外面の外向突起35B(即ち嵌合部)からなる摺動部、後軸4Bのメネジ部41Bと螺合摺動するオネジ部33Bからなる摺動部、及びペン先外面が摺動する前端孔36B内面からなる摺動部が、繰り返しの操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。本実施の形態では、前軸3Bを前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成したことにより、キャップ6B内面の嵌合部と前軸3B外面の嵌合部との間に潤滑剤を塗布することなしに円滑な摺動が得られるが、キャップ6B内面の嵌合部と軸筒2B外面の嵌合部との間に潤滑剤を塗布することにより、より一層、円滑な摺動が得られる。
【0093】
後軸4Bを、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成した。前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂を採用したことにより、前軸3Bのオネジ部33Bと螺合摺動するメネジ部41Bからなる摺動部が、繰り返しの操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0094】
キャップ6Bを、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成した。前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂を採用したことにより、前軸3Bの外面の外向突起35B(即ち嵌合部)と着脱自在に嵌合可能なキャップ6B内面の内向突起65B(即ち嵌合部)からなる摺動部が、繰り返しのキャップ着脱操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。本実施の形態では、キャップ6Bを前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成したことにより、キャップ6B内面の嵌合部と軸筒2B外面の嵌合部との間に潤滑剤を塗布することなしに円滑な摺動が得られるが、キャップ6B内面の嵌合部と軸筒2B外面の嵌合部との間に潤滑剤を塗布することにより、より一層、円滑な摺動が得られる。
【0095】
また、後軸4Bは、前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂に白色顔料(例えば、酸化チタン)を添加した白色の非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成される。それにより、後軸4Bの表面に、名入れ等の印刷が容易となり、ノベルティとして最適な筆記具を得る。
【0096】
前軸3Bが前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂の場合、キャップ6Bは、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されてもよい。逆に、キャップ6Bが前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂の場合、前軸3Bは、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されてもよい。何れの場合も、嵌合部よりなる摺動部が、繰り返しのキャップ着脱操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0097】
前軸3Bが前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂の場合、後軸4Bは、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されてもよい。逆に、後軸4Bが前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂の場合、前軸3Bは、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されてもよい。何れの場合も、オネジ部33Bとメネジ部41Bよりなる摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0098】
本実施の形態の筆記具1Bは、互いに摺動する摺動部を有する2つの部材を備え、前記部材の少なくとも一方の部材の摺動部が、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることにより、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる。
【0099】
本実施の形態の筆記具1Bは、前記摺動部を有する部材が円筒体であり、前記円筒体全体が前記含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることにより、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる円筒体からなる部材を得る。すなわち、筆記具の部材として最適な円筒体からなる部材を得る。
【0100】
本実施の形態の筆記具1Bは、インキが内蔵され、前端に前記インキが吐出可能なペン先51Bを備えた軸筒2Bと、該軸筒2Bに着脱自在に装着されるキャップ6Bとを備え、前記軸筒2Bの外面に嵌合部35Bを備え、前記キャップ6Bの内面に、前記軸筒2Bの外面の嵌合部35Bと着脱自在に嵌合可能な嵌合部65Bを備え、前記軸筒2Bまたはキャップ6Bの少なくとも一方が前記円筒体であり、前記軸筒2Bの嵌合部35Bまたは前記キャップ6Bの嵌合部65Bが前記摺動部となることにより、摺動部となる軸筒2Bの嵌合部35Bまたはキャップ6Bの嵌合部65Bが、キャップ6Bと軸筒2Bとの繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できるキャップ式筆記具を得る。
【0101】
本実施の形態の筆記具1Bは、前記軸筒2Bが、円筒状の前軸3Bと、該前軸3Bと着脱自在に螺合される円筒状の後軸4Bとからなり、前記前軸3B及び前記後軸4Bが互いに螺合摺動される摺動部を備え、前記前軸3Bまたは前記後軸4Bの少なくとも一方の外面に前記キャップ6Bとの嵌合部35Bを備えた前記円筒体であることにより、互いに螺合摺動される軸筒の摺動部及びキャップとの嵌合部よりなる摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できるキャップ式筆記具の軸筒を得る。
【0102】
<第4の実施の形態>
本発明の実施の形態を図14及び図15に示す。
本実施の形態の筆記具1Cは、軸筒2C内に複数本(例えば2本~5本)の筆記体5Cが前後方向に移動可能に収容されている。各々の筆記体5Cは、弾発体7C(具体的には圧縮コイルスプリング)により、後方に付勢されている。
【0103】
・軸筒
軸筒2Cは、先細状の前軸3Cと、該前軸3Cの後端部に螺合により着脱自在に連結される後軸4Cとからなる。
【0104】
・前軸
前軸3Cの前端には、筆記体5Cのペン先51Cが出没可能な前端孔34Cが前後方向に貫設される。ペン先出没時、前端孔34Cの内面とペン先51Cの外面が摺動する。前軸3Cの後端部には、オネジ部33Cが形成される。前軸3Cは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の射出成形体により得られる円筒状の部材である。前記前軸3Cの外面には、先細状の前端部31Cと、該前端部31Cの後方に連設される把持部32Cと、該把持部32Cの後方に連設されるオネジ部33Cとが一体に形成される。先細状の前端部31Cの前端には前端孔34Cが開口され、前端孔34Cから外部に、軸筒2C内部に収容した筆記体5Cのペン先51Cが突出される。また、把持部32Cの外面には、滑り止め用の凹凸、または弾性材料(ゴムまたはエラストマー)よりなる外皮を設けてもよい。
【0105】
・後軸
後軸4Cは、円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)の成形体から得られる円筒状の部材である。前記後軸4Cの後部の側壁には、複数本(具体的には2~5本)の前後方向に延びる細長状の窓孔41Cが径方向に貫設される。前記後軸4Cの前端開口部内面には、メネジ部42Cが一体に形成される。前記メネジ部42Cと前軸3Cのオネジ部33Cとが螺合可能である。
【0106】
後軸4Cの窓孔41Cの相互間の側壁内面には、前後方向に延びるリブよりなる係止壁部44Cが一体に形成され、前記係止壁部44Cに、ペン先51Cが突出した際の筆記体9の操作体6Cの後端が係止される。後軸4Cの窓孔41Cの相互間の側壁外面には、クリップ(図示せず)が設けられる。後軸4Cの後端部には、当接壁部43Cが形成される。当接壁部43Cに、没入状態の筆記体5Cの後端に連結された各々の操作体6Cの後端が当接される。
【0107】
・筆記体
前記各々の筆記体5Cは、ボールペンレフィルであり、前端にボールが回転可能に抱持されたペン先51C(即ちボールペンチップ)と、該ペン先51Cを前端に備え且つ後端が開口されたインキ収容筒52Cとからなる。インキ収容筒52Cの内部には、インキ(例えば、水性インキまたは油性インキ)が収容される。インキ収容筒52C内のインキの後端には、インキの消費に伴い前進する高粘度流体からなる追従体が充填される。
【0108】
・操作体
各々の筆記体5Cの後端(即ちインキ収容筒の後端開口部)には、操作体6Cが取り付けられる。前記各々の操作体6Cは、後端部に形成され且つ後軸4Cの窓孔41Cから外部に突出する操作部61Cと、該操作部61Cの反対側に設けられる後側突出部62Cと、該操作部61Cの反対側の後側突出部62Cの前方に設けられる前側突出部63Cと、前端部に形成され且つインキ収容筒52Cの後端開口部に嵌入される嵌入部64Cと、該嵌入部64Cの後方に形成される鍔部65Cとを備える。前記鍔部65Cの前面には、弾発体7Cの後端が係止される。
【0109】
・弾発体支持体
後軸4Cの内面には弾発体支持体8Cが固着される。弾発体支持体8Cは、各々の筆記体5Cが貫通する前後方向の貫通孔を備える。弾発体支持体8Cの後面に各々の弾発体7Cの前端部が支持される。
【0110】
筆記体5Cのペン先51Cが没入状態のとき、その筆記体5Cに取り付けられた操作体6Cの後端部は、当接壁部43Cに当接される。一方、筆記体5Cのペン先51Cが突出状態のとき、その筆記体5Cに取り付けられた操作体6Cの後端部は、後軸4Cの内壁に形成された係止壁部44Cに係止される。
【0111】
ペン先没入状態にある筆記体5Cの後端に連結された操作体6Cの前側突出部63Cは、その操作体6Cの操作部61Cを前方にスライド操作した際、先にペン先突出状態にある他の筆記体5Cの後端に連結された操作体6Cの後側突出部62Cと当接され、他の筆記体5Cのペン先突出状態が解除される。
【0112】
・ポリカーボネート系樹脂
前記ポリカーボネート系樹脂は、含酸素脂環式骨格を有する熱可塑性の非芳香族ポリカーボネート系樹脂、または芳香族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0113】
・非芳香族ポリカーボネート系樹脂
前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂は、イソソルバイド(イソソルビド)を主原料として生成される熱可塑性のポリカーボネート系樹脂である。具体的には、三菱ケミカル株式会社製の商品名「デュラビオ(DURABIO)」が挙げられる。本実施の形態では、「デュラビオ D5360R」を採用した。
【0114】
・芳香族ポリカーボネート系樹脂
前記芳香族ポリカーボネート系樹脂は、例えば、住化スタイロンポリカーボネート株式会社製の商品名「カリバー(CALIBRE)」、「SDポリカ(SD POLYCA)」、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の商品名「ユーピロン(Iupilon)」、「ノバレックス(NOVAREX)」、帝人株式会社製の商品名「パンライト(Panlite)」などが例示できる。
【0115】
前軸3Cを、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成した。前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂を採用したことにより、後軸4Cのメネジ部42Cと螺合摺動するオネジ部33Cからなる摺動部、及びペン先51外面が摺動する前端孔34Cの内面からなる摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0116】
後軸4Cを、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成した。前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂を採用したことにより、各々の窓孔41Cの、操作体6Cとの摺動部、及び前軸3Cのオネジ部33Cと螺合摺動するメネジ部42Cからなる摺動部が、繰り返しの操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0117】
前軸3Cが前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂の場合、後軸4Cは、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されてもよい。逆に、後軸4Cが前記非芳香族ポリカーボネート系樹脂の場合、前軸3Cは、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されてもよい。何れの場合も、オネジ部33Cとメネジ部42Cよりなる摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0118】
また、操作体6C及び弾発体支持体8Cを、後軸4Cと同じ非芳香族ポリカーボネート系樹脂(デュラビオ D5360R)により形成してもよい。それにより、窓孔41Cからなる摺動部及び弾発体支持体8Cの貫通孔からなる摺動部が、一層、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することを回避でき、長期にわたりそれぞれの摺動部の円滑な摺動が維持される。
【0119】
本実施の形態の筆記具1Cは、互いに摺動する摺動部を有する2つの部材を備え、前記部材の少なくとも一方の部材の摺動部が、含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることにより、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる。
【0120】
本実施の形態の筆記具1Cは、前記摺動部を有する部材が円筒体であり、前記円筒体全体が前記含酸素脂環式骨格を有する非芳香族ポリカーボネート系樹脂により形成されることにより、繰り返しの操作でも摺動部が損耗することがなく、摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる円筒体からなる部材を得る。すなわち、筆記具の部材として最適な円筒体からなる部材を得る。
【0121】
本実施の形態の筆記具1Cは、軸筒2C内に複数の筆記体5Cを前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体5Cを弾発体7Cにより後方に付勢し、前記各々の筆記体5Cの後端に、各々の筆記体5Cに対応した操作体7Cを連結し、前記軸筒2Cの側壁に前後方向に延びる複数の窓孔41Cを径方向に貫設し、前記各々の窓孔41Cから径方向外方に前記各々の操作体6Cを突出させ、一つの操作体6Cを窓孔41Cに沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体6Cに連結された筆記体5Cのペン先51Cを前記軸筒2Cの前端孔34Cから突出させるとともに、先に突出状態にあった他の筆記体5Cのペン先51Cを前記軸筒2C内に没入させる多芯式の筆記具であって、前記円筒体が前記多芯式筆記具の軸筒2Cであり、前記各々の窓孔41Cに前記各々の操作体6Cが摺動する前記摺動部を備えることにより、各々の窓孔41Cの、操作体6Cとの摺動部が、繰り返しの操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる多芯式筆記具を得る。
【0122】
本実施の形態の筆記具1Cは、軸筒2Cが、円筒状の前軸3Cと、該前軸3Cと着脱自在に螺合される円筒状の後軸4Cとからなり、前記後軸4Cの前端部に、前記前軸3Cと螺合摺動される前記摺動部を備え、前記後軸4Cの側壁に前記複数の窓孔41Cが形成されることにより、前軸3Cと螺合摺動される摺動部が、繰り返しの着脱操作でも損耗することがなく、前記摺動部の円滑な摺動が長期にわたり維持できる後軸4Cを備えた多芯式筆記具を得る。
【符号の説明】
【0123】
1 筆記具
2 軸筒
21 スライド孔
3 前軸
31 前端孔
32 オネジ部
3a 本体部
3b 把持部
4 中間軸(本体)
41 カム部
41a カム歯
41b カム溝
42 段部
43 縮径部
44 第1の長孔
45 外向突起
46 メネジ部
47 ガイド溝
5 後軸
51 第2の長孔
52 取付孔
53 内向突起
6 回転体
61 突条
7 クリップ体
71 クリップ本体
71a 玉部
72 基部
73 軸部
74 軸部筒体
74a カム歯
74b ガイド突起
7a 主要部
8 弾発体
9 筆記体
91 ペン先
92 インキ収容筒
93 インキ
94 追従体
95 尾栓
10 摩擦部
1A 筆記具
2A 軸筒
3A 前軸
31A 前端孔
32A オネジ部
4A 後軸(本体)
41A 後端孔
42A 段部
43A カム部
431A カム歯
432A カム溝
44A メネジ部
45A クリップ
451A 環状取付部
5A 筆記体
51A ペン先
52A インキ収容筒
6A 回転体
61A 突条
7A ノック体
71A カム歯
72A ガイド突条
8A 弾発体
1B 筆記具
2B 軸筒
3B 前軸
31B 先細状の前端部
32B 把持部
33B オネジ部
34B 段部
35B 外向突起
36B 前端孔
37B 当接壁部
4B 後軸
41B メネジ部
42B 支持壁部
5B 筆記体
51B ペン先
52B ペン先保持筒
53B インキ収容筒
54B 尾栓
6B キャップ
61B クリップ
62B ペン先シール部材
63B 規制壁部
64B 嵌合突部
65B 内向突起
1C 筆記具
2C 軸筒
3C 前軸
31C 先細状の前端部
32C 把持部
33C オネジ部
34C 前端孔
4C 後軸
41C 窓孔
42C メネジ部
43C 当接壁部
44C 係止壁部
5C 筆記体
51C ペン先
52C インキ収容筒
6C 操作体
61C 操作部
62C 後側突出部
63C 前側突出部
64C 嵌入部
65C 鍔部
7C 弾発体
8C 弾発体支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15