(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007289
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】建物浸水防止装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20230111BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20230111BHJP
E04B 1/68 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
E04B1/64 C
E04B1/684 Z
E04B1/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021131473
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】519021141
【氏名又は名称】丸山 芳之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 芳之
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA21
2E001FA35
2E001GA58
2E001GA59
2E001HB01
2E001HD11
2E001HE01
2E001HF01
2E001LA01
2E001LA09
2E001MA01
2E001ND01
(57)【要約】
【課題】洪水等の際、建物一階の土台水切り換気孔からの浸水防止装置、浸水防止装置を備えた建物及び浸水防止方法を提供する。
【解決手段】建物床下等の換気を図るための換気孔を設けた土台水切りが一般的に普及しているが、一般に土台水切りは地面から40ないし50センチメートルの高さに位置するため、しばしば浸水時の水位がその高さを超え、床上、床下浸水の被害をもたらしている。そこで、浸水発生予測時等に換気孔を防水部材で簡便かつ確実に塞ぎ、浸水被害を防止する土台水切りと、従来からの土台水切りに防水部材の固定用部材を予め取り付けておき、防水部材を固定して換気孔を塞ぎ浸水防止を図る建物浸水防止装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物への浸水を防止する装置であって、
土台水切りの換気孔から建物内への浸水を防止する防水部材を装入して固定する機能を備えた土台水切りと、
前記土台水切りに装入して前記換気孔を塞ぐ形状に成形した防水部材と、
からなる建物の土台水切り換気孔から建物内への浸水を防止する建物浸水防止装置。
【請求項2】
建物への浸水を防止する装置であって、
換気孔を有する従来からの土台水切りと、
前記換気孔を塞ぐための防水部材を装入して固定する機能を備え前記土台水切りに取り付ける形状に成形した固定用部材と、
当該固定用部材に装入して前記換気口を塞ぐ形状に成形した防水部材と、
からなる建物の土台水切り換気孔から建物内への浸水を防止する建物浸水防止装置。
【請求項3】
請求項1または2の何れか1項に記載の建物浸水防止装置を適用した建物。
【請求項4】
請求項1または2の何れか1項に記載の建物浸水防止装置を適用した建物浸水防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の土台水切り換気孔からの建物内への浸水を防止する装置、当該装置を備えた建物及び当該装置を適用した建物浸水防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洪水、高潮等による浸水想定区域内等の建物の床上、床下浸水被害が発生し、発生が危惧されている。その発生原因の一つに建物内への浸水量が多い土台水切りの換気孔からの浸水を防止する有効で設置しやすい浸水防止装置の開発、普及が進んでいないことがあげられる。
換気孔を有する従来からの土台水切りでは、その換気孔から建物内への浸水を防止する対策として、土台水切り内部に換気孔を塞ぐためのフロート式防水部材を備えたもの(特許文献1参照)、土台水切り内部に備えたパッキン部材を手動で移動させて換気孔を塞ぐもの(特許文献2参照)や、その他にも多くの技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2015-229898
【特許文献2】特開2021-067158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術の場合、浸水時に土台水切り内部へ細かい浮遊物が入り込むなどして、土台水切り内部の防水部材の作動に支障をきたすことが考えられる。
また、特許文献2の土台水切りは、換気孔を塞ぐための土台水切り内部のパッキン部材を手動で移動させる際、建物に近接してウッドデッキやエアコン室外機等の動かしがたいものがあれば、それらが邪魔になってパッキン部材を移動させる作業が困難となる。
【0005】
さらに、特許文献1、2の発明ともに、既存建物の場合は、取り付けている従来からの土台水切りを発明品に取り換える取替工事が必要となり相当の経費等が必要となる。また、その他の発明技術にあっても土台水切り換気孔からの浸水防止構造等が複雑などで製造原価も相当になるものと考えられる。
【0006】
したがって、確実に換気孔を塞ぐことができ、既存建物であっても土台水切りの取替工事を行うことなく、また、比較的安価で設置できる、土台水切り換気孔からの浸水防止装置の普及が期待される。
【0007】
本発明は、浸水発生予測時等に土台水切りの換気孔を防水部材で塞ぐことで、浸水被害発生への不安を軽減し、土台水切り換気孔からの浸水を防止する浸水防止装置であって、設置経費は比較的安価で、防水部材で換気孔を塞ぐ作業は簡便で確実にできることを目標としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して上記目標を達成するため、本発明に係る建物浸水防止装置は、土台水切り換気孔を完全に塞ぐ形状に成形した防水部材を、建物の形状等によるが、少なければ数カ所から土台水切りに装入し、または防水部材固定用部材へ装入して、所定位置で固定し、換気孔を塞いで、換気孔からの浸水を防止することを特徴とする。
【0009】
本発明の概要を説明する。
本建物浸水防止装置は、土台水切りの換気孔を塞ぐ形状に成形した防水部材を土台水切りに固定する際、固定用具(工具、ネジ等)を使用しないで、土台水切り内に装入して固定するものとした。なお、耐水性粘着テープは水密性を高めるために必要な範囲で使用すれば足りることとした。
【0010】
また、防水部材の固定機能を備えていない従来からの土台水切りに、換気孔を塞ぐ防水部材を固定するための固定用部材を予め土台水切りにネジ止め等で取り付けておくことで、防水部材の固定機能を備えた土台水切りと同様に、固定用具を使用しないで防水部材を固定できるようにした。
【0011】
さらに、防水部材を固定する際は、防水部材を土台水切りの底壁部に沿って装入し、所定位置まで押し込むだけの簡便な方法により、換気孔を塞ぐことができるため、一人でも短時間で容易かつ確実に固定作業ができるようにした。
【0012】
防水部材を土台水切りに固定する際に、工具、ネジ等が不要で、耐水性粘着テープを多用する必要がないため、防水部材を取り外した際にネジ跡が残らず、粘着テープ痕の残留が少ない。
また、耐水性粘着テープを多用した場合は、浸水被害予測時に一度粘着テープを使用すれば、新たに粘着テープを用意しておく必要があるが、本発明では多量の粘着テープを準備しておく必要がないことから、コスト面において大変優位であり、浸水発生予測時には躊躇なく早めに防水部材を土台水切りに固定することができることを可能とした。
さらに、上述のとおり、従来からの土台水切りにも、防水部材の固定用部材をネジ止め等の簡便な方法で後付けして浸水を防止することを可能とした。
【0013】
なお、防水部材は、土台水切りに固定したままでも日常生活に何ら支障がないため、台風発生や大雨・洪水注意報等に至るまでの早い時点で、防水部材を固定して災害準備対策を行うことができ、また、自治会、自治体等が協力して地域全体の浸水防災対策の一つとすることが可能となる建物浸水防止方法である。
【0014】
本発明の概要について説明する。先ず、床下換気が必要な建物では基礎周りの換気孔(通風口等)は、法により設置することが規定されている。しかし、洪水等の際は、同換気孔からの浸水量が多いため、建物浸水防止対策では、通常時の換気と洪水等での浸水防止に折り合いをつけるのが最大の課題である。
そこで、浸水発生予測時等に、換気孔を有する土台水切りまたは固定用部材に、防水部材を少なければ数カ所から装入して所定の位置で固定し、一時的に換気孔を塞ぐことにより、建物内への土台水切り換気孔からの浸水を防止する建物浸水防止装置を提供するものである。
【0015】
以上のとおり、本発明は、当業者(建築・防災・行政関係)及び従来の技術では、提案されていない、少なければ数箇所から防水部材を土台水切りの固定機能部分へ装入して、工具等を使用せずに固定する技術により、土台水切り換気孔を簡便かつ確実に塞ぎ、建物への土台水切り換気孔からの浸水を防止する装置を実現した。また、既存建物にも後付けで取り付けることができる装置である。
さらに、各部材の構造、形状は複雑でなく、自動・可動部分がないことなどから、故障発生等のトラブルに比較的強く、維持管理がしやすい装置である。
【0016】
本発明について、請求項1から順に説明する。
請求項1に記載の発明は、土台水切りの底壁部に設けられている換気孔から建物内への浸水を防止するために必要な形状に成形した防水部材と、同防水部材を装入して換気孔に密着させて固定する機能を備えた土台水切りにより構成する。
【0017】
従来から、上述の特許文献のとおり、土台水切り内部に移動式の防水部材を設けた技術が提案されているが、土台水切りに近接してウッドデッキ、エアコン室外機等の動かしがたいものが設置されている場合は、それらが邪魔になり、手動で防水部材を固定することに長時間を要することや、さらには、換気孔が塞がれている状態を目視で確認することが困難であり、塞がれていないことを確認しても、それに緊急的に対処することが困難であることが課題であった。
【0018】
土台水切り換気孔からの浸水を防止するには、換気孔が部分的に一箇所でも塞がれていないと、浸水被害を防止することができない。
しかし、土台水切り換気孔は、建物のほぼ全周に設置されているものであり、また、ウッドデッキ等も多くの建物で設置されている。
よって、土台水切り換気孔にウッドデッキ等が近接して設置されていても、建物のほぼ全周に及ぶ換気孔を防水部材で簡便かつ確実に塞ぐことが、土台水切り換気孔からの浸水防止対策上、克服すべき課題であった。
【0019】
本発明は、このような従来の技術では、困難であったいくつかの課題を解決し、土台水切り換気孔全体を短時間で確実に塞ぐ建物浸水防止装置としたものである。また、以下のとおり、構造が単純であるなどから、製造費、運搬費、取付け費、維持管理費等を安価に抑えることができる。
【0020】
この発明の防水部材は、耐水性、耐久性を有する、金属、樹脂、ゴム等からなる成形品とする。材質は単一であってよいし、異種の材質を組み合わせたものでもよい。
例えば、金属とスポンジを貼り合わせるなどして組み合わせたものでもよい。この場合、スポンジ等の弾力性を有する材質の復元作用による押圧力で防水部材が換気孔に密着し、換気孔周囲の水密性を高めることができる。
また、水密性を高めるため、防水部材が土台水切り換気孔等と接する部分にパッキン、吸水性部材、水膨張性部材を貼り合わせるなどしてもよいし、土台水切り換気孔周囲に上記パッキン等を貼るなどしてもよい。
【0021】
本装置の土台水切りの機能は、従来からのものと同じであり、従来からのものに追加した主たる機能は、防水部材を工具なしで装入することができ、所定の位置で確実に固定して換気孔を塞ぐ機能である。従たる機能は、土台水切り自体が水圧、水流等に耐えられる強度と建物への固定度を高めることである。
【0022】
防水部材を装入して固定する機能部分は、土台水切り本体部分と一体のため、同一素材でよいし、土台水切り本体部分と固定機能部分が異種の材質を組み合わせて一体化したものでもよい。
【0023】
次に、請求項2の発明について説明する。この発明は、換気孔を塞ぐための防水部材を固定する機能を備えていない従来からの土台水切りに、防水部材を固定するための固定用部材を予め取り付けておき、固定用部材と土台水切りの間に防水部材を装入して所定位置まで押し入れ、換気孔を塞ぐように固定して、浸水を防止する建物浸水防止装置を提供する。
【0024】
請求項2における防水部材は、請求項1と同じく、耐水性、耐久性を有する、金属、樹脂、ゴム等からなる成形品とする。請求項1と同じく単一の材質であってもよいし、異種の材質を合わせて一体としたものでもよい。
また、上述のとおり、水密性を高めるため、土台水切り、固定用部材と接する部分にスポンジ、パッキン、吸水性部材、水膨張性部材を貼り合わせるなどしてもよい。
【0025】
続いて、請求項2の特徴である固定用部材について説明する。
固定用部材は、防水部材の固定機能を備えていない従来からの土台水切りへ取り付けるものである。この部材を取り付けることで、防水部材を装入して換気孔に密着した固定状態を維持することができる。
【0026】
材質は、耐水性、耐久性を有する金属、樹脂等で、土台水切りと同種であっても異種であってもよい。
【0027】
長さは、土台水切りと同程度のものが、運搬、取付け時の作業性がよい。
なお、防水部材が金属等の硬質性であれば、要所で部分的に固定すれば土台水切り換気孔へ密着させることができるため、固定用部材は土台水切り全体に取り付けなくても、数センチメートル程度か、それ以上の長さのものを要所に取り付ける方法でもよい。
ただし、樹脂等の軟質性の防水部材であれば、土台水切りのほぼ全体に取り付けて、防水部材をほぼ全体的に固定して土台水切り換気孔へ密着させる必要がある。
すなわち、防水部材の硬度等により、防水部材を全体的に固定するか、または部分的な固定で足りるかで、固定用部材の長さを決定することになる。
【0028】
土台水切りへの取り付けは、ネジ止め、半田付け、溶接付け、接着等の従来の固定方法によって取り付ければよい。
取付けの際は、固定度等を高めるため接着材、シーリング材等を使用するのがよい。
【0029】
この発明は、固定用部材を既存建物に設置している土台水切りへネジ止め等で取り付ける「後付け」の場合と、新築の場合等で、従来からの土台水切りへネジ止め等で取り付けて一体とした上で建物へ取り付ける場合とがある。
特に、既存建物へ後付けができるこのような装置は、これまでのところ、少なくとも普及していないと考える。
【0030】
請求項1、2を実施するについて、土台水切り自体の強度と建物への固定方法の強度を確保することが重要である。
具体的には、土台水切りが鋼板製であれば鋼板を厚くするか、要所部分にアルミ等の金属、樹脂等のプレート部材等を貼り合わせて強度補強をするなどして土台水切り自体の強度を確保し、また、建物へ取り付ける際は、要所において基礎部分または土台へネジ止めするなどして、水圧で基礎との隙間が生じないよう固定の強度を図ることが重要である。
【0031】
次に、請求項3の発明は、請求項1または2の何れか1項に記載の建物浸水防止装置を適用した建物を提供する。
【0032】
土台水切りは一般的に地面から40ないし50センチメートル程度の低い位置にあるため、氾濫流や漂流物が直撃するおそれが多分にある。そのため土台水切りが氾濫流等で破損等しないことが、土台水切り換気孔からの建物浸水防止の実効を確保するには重要である。
土台水切り周辺への氾濫流や漂流物の直撃を防ぐには、できるだけ建物敷地全体をブロック塀等で囲み、門扉も水流を通し難いものとするのがよい。
【0033】
防水部材を固定する機能を備えていない従来からの土台水切りでは、その下部の固定状態において、基礎部分と隙間が生じた状態で固定しているものもある。この場合は、土台水切りと基礎部分を金属製等のL字型部材で双方にネジ止め等で連結固定して隙間を塞ぐとともに、土台水切りの固定度を強化しておく必要がある。
【0034】
防水部材の保管は、屋外に収納ロッカー等を設けて保管することがよい。さらに防水部材を保管している旨を収納庫外側に明示しておけば、浸水発生予測時に高齢者世帯や家人が不在であっても、近隣住民等で防水部材を固定することができる。
【0035】
なお、本装置で土台水切り換気孔からの浸水を防止しても、玄関、窓等の隙間や外壁継ぎ目、排水管等からの浸水、逆流を防止しないと建物内への浸水は防止できないため、全般的な浸水対策が必要である。
また、本装置等で浸水を防止しても、床上約1メートル程度の浸水水位以上になれば静止水流であっても建物が浮上することが考えられる。浮上を防ぐには限界があるが基礎と建物の連結を強化するなどの対策が必要である。
【0036】
請求項4の発明は、本装置が比較的安価であり、導入、設置後は、維持コストが比較的安価であるため、既存建物及び新築時等に本装置の適用(導入設置)について公的補助金制度等を適用すれば、地域全体への設置の推進を図ることができる。
このようにして地域単位で設置されれば、防水部材の固定方法等が共通のため、近隣住民、行政等の支援によって、高齢者世帯、家人不在世帯等であっても防水部材を固定することができ、地域全体での防災方法の一つとして、大雨、台風等に備えることができ、在宅避難、減災効果につながることが期待される。
さらに、本装置を適用(導入設置)した場合に、火災(水災)保険の保険料を引き下げることでさらに設置の普及が図られ、社会全体の防災・減災の実現につながる。
【0037】
以上のとおり、本発明は、建物への浸水量が多い土台水切り換気孔からの浸水を防止する課題の根本である、「平時の換気の確保」と「浸水の防止」の折り合いをつけるにおいて、浸水発生予測時に、建物の形状や防水部材の材質等によっては少なければ数カ所から防水部材を装入して固定することができ、粘着テープを多用することなく固定が可能であり、さらに、固定したままでも建物の外観を損なわず、日常生活に支障がなく、防水部材の着脱が容易であること、さらに、土台水切りに防水部材の固定機能部分を追加しても製造原価は大きく高騰しないこと、防水部材、固定用部材は、材質、形状等から製造原価を比較的安価に抑えられ、設置後の維持管理がしやすいことなどを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0038】
請求項1に記載の発明は、防水部材を装入して換気孔を塞ぐ土台水切りにより、換気孔からの建物内への浸水を防止することができる。
請求項2の発明は、後付けを含め、従来からの土台水切りに防水部材を固定するための固定用部材を予め取り付けておくことで土台水切り換気孔からの建物内への浸水を防止することができる。
請求項3記載の発明は、建物浸水防止装置を氾濫流等から保護し、屋外に防水部材を保管しておくことなどで、浸水防止装置の効果を最大限発揮させることができる。
請求項4記載の発明は、装置の設置を補助金制度、保険料引き下げの対象として、設置の普及を図り、地域、行政等が協力して、高齢者世帯等を含めた地域、社会全体での浸水防止、減災対策を推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】 請求項1の実施例1の土台水切りの傾斜概略図である。
【
図3】 請求項1の実施例1の防水部材の傾斜概略図である。
【
図5】 請求項2の固定用部材の傾斜概略図、請求項1の実施例2の参考図である。
【
図6】 請求項2、請求項1の実施例2の防水部材の傾斜概略図である。
【
図7】 請求項1の実施例1の土台水切りの傾斜概略図である。
【
図8】 請求項1の実施例1の防水部材の傾斜概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態、本発明の技術的範囲については、以下の実施形態及び図示に限定されるものではない。
まず、請求項1に記載の発明について、実施例1を説明する。
【0041】
建物外周は、基礎、土台、柱、外壁等からなる。土台水切りは上部を胴縁または土台に釘(ネジ)止めする。一方、下部は基礎に接するがネジ止め等しないのが一般的な取付け方法である。また、下部先端部は基礎、または化粧モルタルで支えられているのが一般的である。
【0042】
図1、2、3、7、8は、実施例1の概略図である。
図1、2、3は概略図であるため防水部材2を装入する土台水切り1の台形状、及び防水部材2の台形状を分かりやすくするため傾斜角度を大きく図示している。しかし、実施では、防水部材2を装入する土台水切り1の台形部分及び防水部材2の形状は、同部材が落下しないように、台形状の下辺を上辺よりやや狭くすればよく、傾斜角度(台形度)は小さくてよい。
また、横辺は
図1、2、3のように両方を斜めにしてもよいし、
図7、8のように一方を斜めにし、どちらか一方をほぼ垂直(底壁部とほぼ直角)にしてもよい。
なお、鋼板製であれば、塑性加工等で製造すればよい。
【0043】
図1では、防水部材2が、土台水切り1の底壁部より外側(下方)に出ているが、実施では、底壁部と面一か、底壁部より内部にあってもよい。ただし、防水部材2は、固定時、取り外し時に移動させやすいよう土台水切り1の底壁部より外側(下方)へ凸部を設けておくのが固定作業時等の操作性がよい。
【0044】
実施例2について、
図5、6で説明する。
土台水切1の防水部材を固定する底壁部として、その形状を
図5で示した請求項2の固定用部材4の4b、4eと同様の形状にしてもよい。この底壁部を換気孔部分の下方に設ける形とする。この場合は、防水部材は
図6のほぼ長方形の断面を有する防水部材5とする。以上のとおり、防水部材を装入して固定する部分の形状が実施例1、2で相違する。なお、この部分の図示はあくまで参考例である。この防水部材固定機能部分の形状は、防水部材を装入し、所定位置まで移動させて固定し、換気孔の水密性を確保できる形状であれば、実施例1、2で示した形状にとらわれない。
【0045】
なお、実施例1、2ともに、土台水切り1に防水部材2、5を装入する箇所を設けておく必要がある。実施例1の場合の
図1、2で説明すれば、土台水切り1の台形部分の下辺を上辺と同じ幅に加工し、防水部材2を装入できるようにしておくものとする。
ただし、土台水切りの出隅部分等を部分的に着脱可能にしておけば、同部分から防水部材を装入することが可能であるから、上記の装入箇所を設けなくてもよい。さらに、図示していないが、この場合は、防水部材を換気孔の上方の土台水切り内部に装入して換気孔を上方(内部)から塞いで固定することができる(実施例3)。
【0046】
実施例2の場合を説明すれば、固定用部材4の形状に該当する土台水切り1の底壁部(換気孔部分の下方に位置する壁部)となる部分の4eのくり抜き部分を4a、4cとの交点部分まで広げてくり抜いておき、同箇所から防水部材5を装入できるように加工しておくものとする。
【0047】
また、実施例1、2とも、上記の防水部材の装入箇所の加工を施す長さは、防水部材2、5の材質、厚みによる。すなわち、柔軟性を有す、または厚みが薄いため、装入時に上下方向に曲げられる防水部材であれば、加工する長さが短くても防水部材2、5を装入し、同部材を所定位置まで押し込むことができる。逆に防水部材2、5の柔軟性が乏しい、または厚みがあるため上下方向に曲げにくいものであれば、同部材を装入し、所定位置まで押し込むことが可能となる長さ分について、上記加工を施しておく必要がある。
【0048】
次に、請求項2に記載の発明について、
図4、5、6により説明する。
図4は、請求項2の実施例の断面概略図である。
従来からの土台水切り3には、底壁部に設けた換気孔を塞ぐための防水部材を固定する機能は備わっていない。
よって、
図4のとおり、防水部材を固定するための、固定用部材4を従来からの土台水切り3に密着させ、4b、4d部分でネジ止め等で取り付ける。
図4は概略図であり、従来からの土台水切り3と固定用部材4を密着させた状態で図示していないが、実施では、密着させ水密性を高めるものとする。
固定方法は図示ではネジ止めとしているが、半田付け、接着等の従来からの固定方法によるものでもよい。また、接着材、シーリング材等を用いて固定度等を高めておくのがよい。
【0049】
次に、防水部材5(
図6)について、材質は、金属、樹脂、ゴム等からなるもので、上述のとおり、単一の材質でよいし、異なる材質を組み合わせてもよい。
【0050】
図4では、上述のとおり、防水部材5と土台水切り3の接する部分(換気孔部分)を隙間として図示しているが、実施では、換気孔を塞ぐために隙間なく密着するように成形した防水部材5を用いるものとする。また、換気孔周囲の水密性を高めるため、スポンジ、パッキン、吸水性部材、水膨張性部材を貼り合わせるなどしてもよい。
【0051】
図5は、固定用部材4を図示している。
4aは、従来からの土台水切り3の垂直壁外部と密着する部分である。この部分で土台水切り3と固定する。
4bは、防水部材5が落下しないよう支える部分である。
4cは、防水部材5の厚みを確保するための高さとする。また、土台水切り3で垂直壁が底壁部より下方に延びている場合は、その延びている長さ分を確保する必要がある。ただし、長さ分を確保しない場合は、防水部材5を装入できる形に成形(変形)したものを用いればよい。
4dは、土台水切り3の換気孔部分以外の底壁部と固定する部分である。
4eは、土台水切り3の換気孔の直下に位置し、防水部材5を固定しない際は、換気を確保するためにくり抜いた部分である。なお、4eのくり抜く長さは、固定用部材4及び防水部材5の材質・強度等による。すなわち、固定用部材4の材質等による強度が強く、防水部材5の変形度が小さい場合は、くり抜く長さを長くとれるが、逆に強度が十分でなく変形度が大きい場合は、くり抜く部分4eの要所において、4bに該当する底壁部を橋渡しとして確保し、くり抜く部分の連続する長さを短くして、固定用部材4の強度と防水部材5の換気孔への密着度の向上を図る。
【0052】
上記の各部分の参考的なサイズ等は、4aの垂直部分の高さは、従来からの土台水切り3の垂直壁よりも低くし(ただし、高くして土台水切りの傾斜と同じ傾斜を付けてカバー状にして土台水切りへ固定してもよい。逆に短くして、土台水切りの垂直壁の下方に延びた部分の内側へ固定してもよい。)、4bの水平部分の長さは換気孔を塞ぐに必要な長さを確保し、4cの高さは5ミリメートル程度、またはそれ以下とし、4dの水平部分は基礎の化粧モルタルまでの長さを考慮して取付ける際に収まる長さ以下とする。
なお、上記高さ、長さはあくまで参考値であり、取り付ける従来からの土台水切り3、及び建物施工状態等に合わせて、各高さ、各長さ、取付け位置、取付け方法等を設定するものとする。
【0053】
また、上述のとおり、固定用部材4は、防水部材5が金属等で上下方向への変形度が小さい場合等で従来からの土台水切り3への密着度が確保できれば、長さを数センチメートル程度、またはそれ以上の長さの部材として、防水部材5の長さ、変形度に合わせて、土台水切り3の要所で部分的に取り付けてもよい。
【0054】
請求項1、2に共通することとして、防水部材2、5を、弾性を有する樹脂、ゴム等で成形すれば巻き取ることができる。巻き取って保管できれば、固定する際にウッドデッキ等が設置されていない装入箇所で先端を土台水切り1または固定用部材4へ装入し、そのまま所定位置まで押し込めば、土台水切り1、固定用部材4が直線である部分は、連続性を有した一本の状態で固定することが可能である。このように防水部材2、5が柔軟性を有し、巻き取ることができるものであれば、運搬・保管時、固定作業時の効率化等を図ることができ、長い一本状態で固定できるため水密性を高めることができる。
【0055】
鋼板製の従来からの土台水切り3では、強度が不十分で換気孔を塞いだ場合に浸水時の水圧で底壁部が上方に押し上げられ、下部先端部と基礎との間に隙間が生じるおそれがある。このような隙間が生じないよう、L字型金属プレート等で土台水切り3と基礎をネジ止め等で連結固定しておくのがよい。
また、土台水切り1の場合、下部に基礎へ沿わせる部分を設けるか、土台に接する部分を設けて、同部分で基礎または土台とネジ止めなどで固定すれば固定の強化が図られる。
ただし、土台水切りに耐水圧強度があり、基礎との間に隙間が生じない場合では、下部先端部を従来どおり、基礎または化粧モルタルで支える方法でよい。
【0056】
なお、防水部材は固定したままでも日常生活に支障がなく、景観を損なわないため、床下等の蓄熱暖房を目的として期間限定で土台水切りへ固定しておくことも可能である。
また、高潮対策、潮風による塩害対策等としても使用可能である。
【0057】
本発明の建物浸水防止装置については、上述した実施形態に限定されず、各部材の材質、形状、長さ、固定方法等などは特許請求の範囲に記載の範囲で種々の変更ができる。
本発明の基本は、土台水切り1の換気孔を確実に塞ぐことのできる形状に成形した防水部材2、5を土台水切り1の固定機能部分に装入し、所定位置まで押し入れて固定し、換気孔からの浸水を防止することにある。また、防水部材を固定する機能を備えていない従来からの土台水切りには、予め、固定用部材を取り付けておくことで防水部材を装入して固定し換気孔からの浸水を防止することにある。
本発明は、特許請求の範囲において、洪水ハザードマップ等を参考にし、当該建物の立地条件、周囲の環境、建物自体の状態、土台水切りの取付け状態等を総合して、本発明の土台水切り、防水部材等と従来の固定方法等を適宜組み合わせるなどともに、設置普及方策を適用して、土台水切り換気孔からの浸水に強い建物及び防災・減災対策を確立するのがよい。
【符号の説明】
【0058】
1 土台水切り
2 防水部材(断面が台形)
3 従来からの土台水切り
4 固定用部材
4a 固定用部材の垂直壁(従来からの土台水切り3と固定する部分)
4b 固定用部材の底壁部(防水部材5を支える部分)
4c 固定用部材の垂直壁(防水部材5を収納する高さを確保する部分)
4d 固定用部材の底壁部(従来からの土台水切り3と固定する部分)
4e 固定用部材のくり抜き部(換気孔の直下で換気を確保するための部分)
5 防水部材(断面がほぼ長方形)