(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007290
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】変流器及び零相変流器
(51)【国際特許分類】
H01F 38/30 20060101AFI20230111BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01F38/30
H01F27/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021131474
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】595176098
【氏名又は名称】甲神電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 恭典
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
(72)【発明者】
【氏名】猪野 智明
【テーマコード(参考)】
5E059
5E081
【Fターム(参考)】
5E059CC07
5E081AA06
5E081BB08
5E081DD02
5E081DD03
5E081DD05
5E081FF06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイル封止用成形樹脂の剥離防止が図れる変流器及び零相変流器を提供する。
【解決手段】変流器及び零相変流器において、外ケースの外側円筒3に成形樹脂を外ケース外側に流動させるためのスリット部18aと貫通穴20aを有する返し部7aを備え、貫通穴20aから流出した成形樹脂の突出部10aを外ケースに引っ掛ける為の溝形状の引っ掛け部21を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い比透磁率特性を有する環状磁心に巻線を施したコイルを、底面及び二重略円筒状壁から成るコイル収容部を有するケースに収容し、加熱流動化した成形樹脂を天面側の成形金型注入口から前記ケースの前記コイル収容部内に注入し前記コイルと一体に加圧成形した変流器もしくは零相変流器であって、
前記コイル収容部から流出した前記成形樹脂の樹脂流出部を有し
前記ケースには、前記樹脂流出部の少なくとも一部の天面方向への移動を拘束する樹脂拘束部を有することを特徴とする変流器もしくは零相変流器。
【請求項2】
前記樹脂流出部は、前記コイル収容部から、前記ケースの天面側スリットを介して流出した前記成形樹脂から成り、
前記樹脂拘束部は、前記樹脂流出部と接触する前記ケースの凹部、又は外側から内側に掛けて天面方向に向かう傾斜部、又は天面方向にかけて穴径が徐々に小さくなる貫通部から成ることを特徴とする請求項1記載の変流器もしくは零相変流器。
【請求項3】
前記樹脂流出部は、前記コイル収容部から、前記ケースの底面側の貫通穴を介して流出した前記成形樹脂から成り、
前記樹脂拘束部は、前記樹脂流出部と接触する前記ケースの前記貫通穴周辺部から成ることを特徴とする請求項1記載の変流器もしくは零相変流器。
【請求項4】
前記樹脂流出部は、前記コイル収容部から、前記ケースの天面を超えて流出した前記成形樹脂から成り、
前記樹脂拘束部は、前記樹脂流出部と接触する前記ケースの天面側突出部から成ることを特徴とする請求項1記載の変流器もしくは零相変流器。
【請求項5】
高い比透磁率特性を有する環状磁心に巻線を施したコイルを、底面及び二重略円筒状壁から成るコイル収容部を有するケースに収容し、加熱流動化した成形樹脂を成形金型注入口から前記ケースの前記コイル収容部内に注ぎ込み前記コイルと一体に加圧成形した変流器もしくは零相変流器であって、
前記コイル収容部の外側略円筒に略均等間隔に複数の凹部を備えることを特徴とする変流器もしくは零相変流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電流または、直流が重畳した交流電流、例えば半波正弦波交流電流を計測するための変流器及び漏洩電流を計測するための零相変流器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変流器は、環状の磁心からなる閉磁路に2次巻線が巻回されており、計測対象の電流の流れる1次巻線が閉磁路の中央開口を貫通している。その動作は、1次巻線に1次電流が流れると、電磁誘導によって1次電流の大きさに対応した2次電流が2次巻線に発生する。このとき2次巻線に負担抵抗を接続することによって、電圧信号が出力され、その結果、1次巻線に流れる1次電流を電圧信号として計測することが可能になる。
【0003】
また、従来の変流器の製造方法としては、金属の型を用意し、少なくとも一つの巻線を備えた磁心すなわちコイルを外ケースに組み込んだ状態で型内に挿入し、型を閉鎖して、加熱流動化した成形樹脂を加圧下で、注入ゲートから型内に充填することにより、加圧成形し一体に封止成形する方法がある。(例えば特許文献1の
図7参照)
【0004】
この場合、注入ゲートから離れた箇所は成形樹脂の温度低下に伴う流動性の低下により充填性が低下し外ケース内部に空気溜まりが生じ、外ケースと接着性の高い成形樹脂では内部に生じる空気溜まりが高温雰囲気下において膨脹し、変流器の外形が変形することを防止するため、外ケースにベント用の構造(空気溜まり内の空気を外部に放出するために、外ケースの二重円筒状の壁に設けた切り欠き形状の溝、又はスリットを有する円筒状の通気孔)を設けている。(例えば特許文献1の
図4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の変流器は接着性の高い成形樹脂を使用していたため、外ケースと成形樹脂の間に隙間がなく、内部に溜まった空気を外部に放出するためにベントを設けていたが、UL対応樹脂等の接着性が低い成形樹脂を使用した場合、外ケースと成形樹脂の間に微細な隙間が生じるので内部の空気は放出されるが、成形樹脂が外ケースから剥離しやすくなり、成形樹脂が外ケースから抜けやすいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における変流器及び零相変流器は、高い比透磁率特性を有する環状の磁心に巻線を施したコイルを底面及び二重略円筒状壁から成るコイル収容部を有する外ケースに収容し、加熱流動化した成形樹脂を天面側の成形金型注入口からケースに注ぎ込みコイルと一体に加圧成形するものであって、コイル収容部から流出した成形樹脂の樹脂流出部を有し、ケースには、樹脂流出部の少なくとも一部の天面方向への移動を拘束する樹脂拘束部を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は上記の通り、外ケース内部に充填された成形樹脂の剥離を防止する効果を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】 本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図2】 本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【
図3】 本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器の成形樹脂注入の際に金型へセットした状態を示す図である。
【
図4】 本発明の実施の形態2における変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図5】 本発明の実施の形態2における変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【
図6】 本発明の実施の形態3における変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図7】 本発明の実施の形態3における変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【
図8】 本発明の実施の形態4における変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図9】 本発明の実施の形態4における変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【
図10】 本発明の実施の形態5における変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図11】 本発明の実施の形態5における変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【
図12】 本発明の実施の形態6における変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図13】 本発明の実施の形態6における変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【
図14】 本発明の実施の形態6におけるシミュレーション条件を示す図である。
【
図15】 本発明の実施の形態6の別の変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図16】 本発明の実施の形態6の別の変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器100で、
図1(a)は平面図、
図1(b)は
図1(a)におけるA-A線断面図、
図1(c)は
図1(a)におけるB-B線断面図を示す。
【0011】
図1(a)において、1aはコイル12及びリード線11の一部を収容する外ケースで、10は加圧充填されコイル12を封止する成形樹脂であり、注入ゲート位置19から外ケース1a内に注入される。
【0012】
7aは成形樹脂固定用の返し部を示す。外ケース1aは例えばポリプロピレン、成形樹脂10は例えばウレタン系樹脂から成る。
【0013】
40は開口穴で、被測定電流が流れる導体(一次巻線、図示せず)を貫通させる。
【0014】
図1(b)において、15は被測定電流により発生する磁束を集磁するためのトロイダル形状の磁心、14は磁心15を収めるためのトロイダル形状のケース、13は磁心15を収めたケース14に巻き付けられた巻線(二次巻線)であり、磁心15とケース14と巻線13とを合わせてコイル12と称している。
【0015】
11はコイル12の巻線13両端部と電気的に接続された被覆を有した引き出し線用リード線である。
【0016】
磁心15は例えばパーマロイから成り、ケース14は例えばポリプロピレン、巻線13は例えばポリウレタン銅線、リード線11は例えばポリエチレン被覆で覆われた電線から成る。
【0017】
図1(c)に示すように、返し部7aの図示下側には、外ケース1aから外部に流出した成形樹脂10の突出部10aが有る。
【0018】
図2はこの発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器100に用いる外ケース1aで、
図2(a)は外ケース1aの平面図、
図2(b)は
図2(a)のC-C線断面図、
図2(c)は
図2(a)のD-D線断面図、
図2(d)は
図2(b)における返し部7a周辺の部分拡大図である。
【0019】
本発明においては、特に説明しない場合、
図2(b)の図示下面を底面、図示上面を天面とする。
【0020】
図2(a)において、2は内側円筒、3は外側円筒、4はリード線挿入部、5はリード線引き出し部、6は巻線引き出し部であり、外ケース1aの底部8と内側円筒2と外側円筒3により、コイル12を収容するコイル収容領域41を構成する。
【0021】
収容されたコイル12は、その巻線13端部をリード線11に接続されており、リード線11はリード線挿入部4に収納され、引き出し部5の溝に固定されて外部に引き出される。
【0022】
また、コイル12とリード線11の間の巻線13の余長線は巻線引き出し部6へ収納される。外側円筒3には、任意の数(例えば4個)の成形樹脂固定用の返し部7aがある。
【0023】
図2(b)において、返し部7aは外側円筒3の内壁から例えば2mm×2mm×3mmの略直方体形状で外側に突出している。返し部7aの略中央には、
図2(b)図示上下方向に貫通した例えばφ1mmの貫通穴20aがあり、貫通穴20aとコイル収容領域41とはスリット部18aで連通しており、スリット部18aは成形樹脂10を流動させるための例えばT1a長1mm、T2a長2mmのスリットを有する。
【0024】
図2(d)に示すように返し部7a底部(図示下端)には、貫通穴20aの周囲に溝形状の引っ掛け部21を有する。
【0025】
ここでは、成形樹脂充填方法について説明する。
図3はこの発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器100を成形樹脂充填の際に金型へセットした状態を示し、
図3(a)は平面図、
図3(b)は
図3(a)におけるE-E線断面図、
図3(c)はアイソメ図、
図3(d)は
図3(c)の展開図である。
【0026】
図3(d)において、金型(上型)16は成形樹脂注入用のゲート9を有し、金型(下型)17は外ケース1aの外側円筒3部分を収容する外側円筒収容領域50と、リード線11部分を収容するリード線収容領域51と、返し部7a部分を収容する返し部収容領域52aを有す。
【0027】
まず、コイル12とリード線11を収容した外ケース1aを金型(下型)17に収容し、金型(上型)16を勘合する。
【0028】
次に、加熱流動化した成形樹脂10を加圧下でゲート9から充填する。
【0029】
充填された成形樹脂10は、外ケース1a内のコイル収容領域41に充填され、リード線挿入部4等と返し部7aに流動する。
【0030】
返し部7aでは、スリット部18aを介し貫通穴20aに流動し、金型(下型)17の返し部収容領域52aで成形される。
この時、成形樹脂10は、溝形状の引っ掛け部21内にも充填される。
【0031】
このように構成された変流器においては、外ケース1aから流出した成形樹脂10の突出部10aは返し部収容領域52aにおいて押し固められるため、返し部7a底部と密着させることができ、成形樹脂10の天面方向への移動を拘束し成形樹脂10が外ケース1aから抜けることを防止できる。
【0032】
また、返し部7a底部は溝形状の引っ掛け部21を有しており、成形樹脂10は引っ掛け部21に対して強固に掛かるため、外ケース1a底面から天面方向の力に対して容易に外ケース1aから抜けないようにすることができる。
【0033】
実施の形態2.
本実施の形態では、実施の形態1と異なる部分について説明する。
図4はこの発明の実施の形態2における変流器及び零相変流器101で、
図4(a)は平面図、
図4(b)は
図4(a)におけるF-F線断面図を示す。
【0034】
図4(a)において、7bは成形樹脂固定用の返し部であり、外ケース1bの返し部7bの形状が、実施の形態1と異なる。
【0035】
図4(b)に示すように、返し部7bの図示下側には、外ケース1bから外部に流出した成形樹脂10の突出部10bが有る。
【0036】
図5はこの発明の実施の形態2における変流器及び零相変流器101の外ケース1bで、
図5(a)は平面図、
図5(b)は
図5(a)におけるG-G線断面図、
図5(c)は
図5(b)における返し部7b周辺の部分拡大図である。
【0037】
図5(a)において、7bは成形樹脂固定用の返し部で、外側円筒3に任意の数(例えば4個)有する。
【0038】
図5(b)において、返し部7bは、外側円筒3の内壁から例えば1.5mm×2mm×3mmの略直方体形状で外側に突出している。
【0039】
返し部7bの略中央には、
図2(b)図示上下方向に貫通した例えばφ1mmの貫通穴20bがあり、貫通穴20bとコイル収容領域41とはスリット部18bで連通しており、スリット部18bは成形樹脂10を流動させるため、例えばT1b長1mm、T2b長2mmのスリットを有する。貫通穴20bは、その外側が解放(外側の壁がない)している。
【0040】
また、返し部7b底部(図示下端)には、内側に向けて例えば30度の傾斜形状を有する返し構造底部22を備える。
【0041】
成形樹脂充填方法については、
図3に示す金型(下型)17の返し部収容領域52aが返し部7b部分を収容する形状52b(図示せず)に変わる点以外は、実施の形態1と同様である。
【0042】
以上のことから、外ケース1bから流出した成形樹脂10の突出部10bは金型(下型)17の返し部収容領域52bにおいて押し固められるため、返し部7b底部と密着させることができる。
【0043】
また、外ケース1bの返し構造底部22に外側から内側に掛けて底面から天面方向の傾斜を設けることで、成形樹脂10の突出部10bは返し構造底部22に強固に掛かるため、外ケース1b底面から天面方向の力に対して成形樹脂10が容易に抜けないようにすることができる。
【0044】
また、返し部7bの貫通穴20bは外ケース1b外周側の側壁を有さないため、実施の形態1の場合と比較して、外ケース1bの外形を小さくできる。
【0045】
実施の形態3.
本実施の形態では、実施の形態1と異なる部分について説明する。
図6はこの発明の実施の形態3における変流器及び零相変流器102で、
図6(a)は平面図、
図6(b)は
図6(a)におけるH-H線断面図を示す。
【0046】
図6(a)において、7cは成形樹脂固定用の返し部であり、外ケース1cの返し部7cの形状が、実施の形態1と異なる。
【0047】
図6(b)に示すように、返し部7cの図示下側には、外ケース1cのコイル収容領域41から外部に流出した成形樹脂10の突出部10cが有る。
【0048】
図7はこの発明の実施の形態3における変流器及び零相変流器102の外ケース1cで、
図7(a)は平面図、
図7(b)は
図7(a)におけるI-I線断面図を示す。
【0049】
図7(b)において、返し部7cは外側円筒3の内壁から例えば3mm×3mm×7mmの略直方体形状で外側に突出している。
【0050】
返し部7cの略中央には、
図7(b)図示上下方向に貫通した例えば天面側がΦ1、底面側がΦ2の略円錐台形状の貫通穴20cがあり、貫通穴20cとコイル収容領域41とはスリット部18cで連通しており、スリット部18cは成形樹脂10を流動させるための例えばT1c長1mm、T2c長2mmのスリットを有する。
【0051】
成形樹脂充填方法については、
図3に示す金型(下型)17の返し部収容領域52aが返し部7c部分を収容する形状52c(図示せず)に変わる点以外は、実施の形態1と同様である。
【0052】
貫通穴20cの直径を底面から天面方向にかけて小さくすることで、成形樹脂10の突出部10cは返し部7cに強固に掛かるため、外ケース1c底面から天面方向の力に対して成形樹脂が容易に抜けないようにすることができる。
【0053】
実施の形態4.
本実施の形態では、実施の形態1と異なる部分について説明する。
図8はこの発明の実施の形態4における変流器及び零相変流器103で、
図8(a)は平面図、
図8(b)は8(a)におけるJ-J線断面図を示す。
【0054】
図8(b)において、7dは成形樹脂固定用の返し部であり、外ケース1dの返し部7dの形状が、実施の形態1と異なる。
【0055】
図8(b)に示すように、返し部7dの図示下側には、外ケース1dのコイル収容領域41から外部に突出した成形樹脂10の突出部10dが有る。
【0056】
図9はこの発明の実施の形態4における変流器及び零相変流器103の外ケース1dで、
図9(a)は平面図、
図9(b)は
図9(a)におけるK-K線断面図を示す。
【0057】
図9(b)において、返し部7dは底部8から例えばT1d長2mm、T2d長φ3mmの略円柱形状で外側に突出している。
【0058】
返し部7dの略中央には、コイル収容領域41と返し部7dを貫通した例えばT3d長φ1mmの貫通穴20dがある。
【0059】
成形樹脂充填方法については、
図3に示す金型(下型)17の返し部収容領域52aが返し部7d部分を収容する形状52d(図示せず)に変わる点以外は、実施の形態1と同様である。
【0060】
外ケース1dのコイル収容領域41から流出した成形樹脂10の突出部10dは金型(下型)17の返し部収容領域52dにおいて押し固められるため、返し部7d内壁面及び底部8と密着させることができる。
【0061】
貫通穴20dの径T3dを返し部7d内径T2dより小さくすることで、成形樹脂10の突出部10dは底部8に強固に掛かるため、外ケース1d底面から天面方向の力に対して成形樹脂10が容易に抜けないようにすることができる。
【0062】
貫通穴20d径T3dはφ1.0mm以上、返し部7d内径T2dは貫通穴20d径T3dの2倍以上が望ましい。
【0063】
また、この形態では円柱形状の実施例について説明したが、円柱形状以外の形状でも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0064】
実施の形態5.
本実施の形態では、実施の形態1と異なる部分について説明する。
図10はこの発明の実施の形態5における変流器及び零相変流器104で、
図10(a)は平面図、
図10(b)は
図10(a)におけるL-L線断面図を示す。
【0065】
図10(b)において、7eは成形樹脂固定用の返し部であり、外ケース1eの返し部7eの形状が、実施の形態1と異なる。
【0066】
図10(b)に示すように、返し部7eの図示下側には、返し部7e外周側から流出し回り込んだ成形樹脂10の突出部10e1が有り、返し部7eの図示上側には、外ケース1e天面から例えば1mm厚の成形樹脂10の突出部10e2が有る。
【0067】
図11はこの発明の実施の形態5における変流器及び零相変流器104の外ケース1eで、
図11(a)は平面図、
図11(b)は
図11(a)におけるM-M線断面図、
図11(c)は
図11(b)における返し部7e周辺の部分拡大図である。
【0068】
図11(c)において、返し部7eは外側円筒3の天面円周上の外周側に例えばT1e長2mm、T2e長1mm突出している。
【0069】
成形樹脂充填方法については、
図3に示す金型(下型)17の返し部収容領域52aが返し部7eの成形樹脂突出部10e1に対応した形状52e(図示せず)に変わり、金型(上型)16に、返し部7eの成形樹脂突出部10e2に対応した第2返し部収容領域53(図示せず)を有する点以外は、実施の形態1と同様である。
【0070】
天面側の成形樹脂突出部10e2は金型(上型)の第2返し部収容領域53において押し固められ、返し部7eの下側に回り込んだ成形樹脂突出部10e1は金型(下型)17の返し部収容領域52eにおいて押し固められるため、返し部7eと密着させることができる。
【0071】
返し部7e図示下側に回り込んだ成形樹脂突出部10e1は返し部7eに強固に掛かるため、外ケース1e底面から天面方向の力に対して成形樹脂10が容易に抜けないようにすることができる。
【0072】
実施の形態6.
本実施の形態では、実施の形態1と異なる部分について説明する。
図12はこの発明の実施の形態6における変流器及び零相変流器105で、
図12(a)は平面図、
図12(b)は
図12(a)におけるN-N線断面図を示す。
【0073】
図12(a)において、外側円筒3に返し部7aの代わりに、外側円筒凹部30を有していることが、実施の形態1と異なる。
【0074】
図13はこの発明の実施の形態6における変流器及び零相変流器105の外ケース1fで、
図13(a)は平面図、
図13(b)は
図13(a)におけるO-O線断面図、
図13(c)は
図13(a)における外側円筒凹部30周辺の部分拡大図である。
【0075】
図13(a)において、外側円筒凹部30は成形樹脂固定用の溝で、外側円筒3に略均等間隔に任意の数(例えば11個)有する。
【0076】
図13(c)に示すように、外側円筒凹部30は例えばT1f長1.0mm、T2f長1.0mmの溝形状で内側に突出している。
【0077】
成形樹脂充填方法については、
図3に示す金型(下型)17の返し部収容領域52aを有しない代わりに、外側円筒凹部30を含めた外側円筒3の外周側の形状に所定(例えば0.8mm)のクリアランスを持たせて沿わせた形状を有する点以外は、実施の形態1と同様である。
【0078】
このように構成された変流器においては、加熱流動化した成形樹脂10がゲート9から充填された時の圧力により外側円筒凹部30を外側に押すことで凹部が開きT1fの寸法が伸び、外側円筒3の外周は金型(下型)17とのクリアランス分大きくなる。
【0079】
金型(上型)16と金型(下型)17が離型した後、ケース1fの温度が低下していくに従い、T1fはケースの収縮により元の形状に戻ろうとする復元力が働くので、外側円筒3が成形樹脂10を内側に抑え込み、外ケース1f底面から天面方向の力に対して成形樹脂が容易に抜けないようにすることができる。
【0080】
以下有限要素法解析ソフトを用いたシミュレーションにより復元力F1について検証する。
【0081】
図14はシミュレーション条件を示し、外ケース1の外形寸法T10を35.8mm、内径寸法T11を14.2mm、ケース高さT12を16.3mm、肉厚T13を0.5mm、天面からコイルまでの高さT14を1.5mm、T1fを1mm、T2fを1.12mmとし、成形樹脂10充填時は、金型(下型)17により外ケース1fの底面、内側円筒2、リード挿入部4は固定され、外側円筒3に対して矢印1に示すような内側から垂直に成形樹脂10による圧力Pが加わるとする。
【0082】
外側円筒3の外周と金型(下型)17間のクリアランスT15(図示せず)を0.8mmとした場合、成形樹脂10充填により広がった内側円筒2から外側円筒3までの幅T16(図示せず)は
幅T16=(外形寸法T10-内径寸法T11)/2-肉厚T13×2+クリアランスT15
より10.6mmであることから、成形樹脂10の収縮率Kを0.3%とすると、成形樹脂10の収縮寸法T17(図示せず)は
収縮寸法T17=幅T16×収縮率K
よりおよそ0.032mmとなり、成形樹脂10冷却後の拡大幅T18(図示せず)は
拡大幅T18=クリアランスT15-収縮寸法T17
よりおよそ0.768mmとなる。
【0083】
シミュレーションによると、外側円筒3の天面を拡大幅T18の0.768mm広げるための圧力Fは0.65MPa程であり、これが成形樹脂10冷却後に外ケース1から成形樹脂10に対して垂直に加わる復元力F1と同様となる。
【0084】
コイルの保持にかかわる成形樹脂10は外ケース1天面からコイルまでの部分とすると厚みはT14の1.5mmであり、外ケース1との接触面積Sは
接触面積S=外側円筒内側の円周長さ×T14
=(T10+T18×2-T13×2)×3.14×1.5
より、およそ171.1mm2となる。
【0085】
底面から天面方向の摩擦力F2は静止摩擦係数μをポリプロピレン材の一般的な値である0.4とすると、
摩擦力F2=摩擦係数μ×垂直抗力N
=摩擦係数μ×(圧力F×接触面積S)
=0.4×0.65×171.1
より44.49Nとなる。
【0086】
コイル12および成形樹脂10の自重は合計100gほどであるため、重力Wは
重力W=質量m×重力加速度g
=0.1×0.98
より0.98Nとなり、重力Wに対して成形樹脂10と外ケース1間の摩擦力F2が大きいため、コイルの自重による抜けを防ぐことができる。
【0087】
図15は本発明の実施の形態6の別の変流器及び零相変流器106を示す図で、
図15(a)は平面図、
図15(b)は
図15(a)におけるP-P線断面図を示す。
【0088】
図16はこの発明の実施の形態6の別の変流器及び零相変流器106の外ケース1gで、
図16(a)は平面図、
図16(b)は
図16(a)におけるQ-Q線断面図、
図16(c)は
図16(b)における外ケース底凸部31周辺の部分拡大図である。
【0089】
図16(b)において、内側円筒2が底部8から外部(図示下方向)に突出しており、
図16(c)に示すように例えば、T1g長2mm、T2g長1mmの凸部が内側円筒2の底部から外部(図示下方向)に突出しているため、外ケース1gの底部8は射出成形の際に金型(下型)17に収めた場合、金型(下型)17との間にT2gだけクリアランスが生じる。
【0090】
このように構成された変流器においては、加熱流動化した成形樹脂10がゲート9から充填され、外ケース1g外側円筒3に内部から圧力が加わると外側円筒凹部30の伸長による外形の拡大に加え、外ケース1g底部8の外周部に外ケース1g天面から底面方向の力のモーメントが生じ、最大でT2g分だけ撓み、外ケース1g外側円筒3を外側に傾斜させるため、外形をより大きく拡げることができ、外ケース1gの収縮により元の形状に戻ろうとする復元力が働くので、外側円筒3が成形樹脂10を内側に抑え込み、外ケース1g底面から天面方向の力に対して成形樹脂が容易に抜けないようにすることができる。
【符号の説明】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g 外ケース
2 内側円筒
3 外側円筒
4 リード線挿入部
5 リード線引き出し部
6 巻線引き出し部
7a、7b、7c、7d、7e 返し部
8 底部
9 ゲート
10 成型樹脂
10a、10b、10c、10d、10e 成形樹脂突出部
11 リード線
12 コイル
13 巻線
14 ケース
15 磁心
16 金型(上型)
17 金型(下型)
18a、18b、18c スリット部
19 ゲート位置
20a、20b、20c、20d 貫通穴
21 引っ掛け部
22 返し構造底部傾斜
30 外側円筒凹部
31 外ケース底凸部
40 開口穴
41 コイル収容領域
50 外側円筒収容領域
51 リード線収容領域
52a、52b、52c、52d、52e 返し部収容領域
53 第2返し部収容領域
100、101、102、103、104、105、106 変流器及び零相変流器