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  • 特開-スピーカ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072903
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
H04R1/02 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185613
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】森本 博幸
(72)【発明者】
【氏名】和泉 勇毅
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AG01
5D017AG18
(57)【要約】
【課題】容易に成形でき、仮止め孔に容易に引っ掛けることができる仮止めピンを備えたスピーカを提供する。
【解決手段】被取付部材200に取り付けられるスピーカ100であって、仮止め孔210に挿入されてスピーカ100を吊り下げ状態で一時的に支える仮止めピン120を備え、仮止めピン120は、フレーム110の後端面から後方に向かって突出する棒状部121と、棒状部121の周面の一部であって仮止め孔210の内周面に当接し、突出方向における基端側から先端側に向かうに従い棒状部121の中心軸129に近づくように傾斜する傾斜面部122と、棒状部121の先端部において傾斜面部122に隣接し、突出方向と交差する方向に張り出し、被取付部材200に引っかかる鍔部123と、を備えるスピーカ100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に取り付けられるスピーカであって、
前記被取付部材に設けられた仮止め孔に挿入されて前記スピーカを吊り下げ状態で一時的に支える仮止めピンを備え、
前記仮止めピンは、
前記スピーカのフレームの後端面から後方に向かって突出する棒状部と、
前記棒状部の周面の一部であって前記仮止め孔の内周面に当接し、突出方向における基端側から先端側に向かうに従い前記棒状部の中心軸に近づくように傾斜する傾斜面部と、
前記棒状部の先端部において前記傾斜面部に隣接し、突出方向と交差する方向に張り出し、前記被取付部材の裏面に引っかかる鍔部と、
を備えるスピーカ。
【請求項2】
前記棒状部は、円柱状であり、
前記傾斜面部は、前記棒状部の仮想的な外周面の内側に配置される
請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記鍔部は、
周方向において前記傾斜面部の両側に配置される
請求項1または2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記仮止めピンと面対称の仮止めピンを更に備える
請求項1から3のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項5】
複数の前記仮止めピンの対称面に対して対称に配置され、前記スピーカを前記被取付部材に締結するための複数の締結孔を備える
請求項4に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記仮止めピンは、
前記鍔部を底面の一部とし、突出方向に向かって細くなる錐形部を備え、
前記錐形部は、
前記傾斜面部に対応する切り欠き部を備える
請求項1から5のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記仮止めピンは
前記鍔部から基端部に向かうに従い前記棒状部に近づくテーパ部を備える
請求項1から6のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項8】
前記棒状部は、
基端部に向かって断面積が増加する補強部を備える
請求項1から7のいずれか一項に記載のスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材に取り付けられるスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカを垂直に起立した板面に取り付ける場合、作業者は、片手でスピーカを所定の位置に保持し、もう一方の手でビスの締め付け作業を行わなければならない。このような作業は非効率的であるため、特許文献1には、スピーカが板面から落下しないように板面に設けられた貫通孔にかえりのあるピンを挿入してスピーカを仮止めし、その後ビスによる締め付けを行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-251696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のスピーカの仮止めは、スナップフィット機構が用いられているため、仮止め作業に力が必要になるなど作業性が悪化する。また、仮止め用のピンが本止めにも用いられているため、被取付部材の寸法バラツキに対する許容度が低いなどの不具合が発生する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、被取付部材に容易に仮止めができるスピーカの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1つであるスピーカは、被取付部材に取り付けられるスピーカであって、前記被取付部材に設けられた仮止め孔に挿入されて前記スピーカを吊り下げ状態で一時的に支える仮止めピンを備え、前記仮止めピンは、前記スピーカのフレームの後端面から後方に向かって突出する棒状部と、前記棒状部の周面の一部であって前記仮止め孔の内周面に当接し、突出方向における基端側から先端側に向かうに従い前記棒状部の中心軸に近づくように傾斜する傾斜面部と、前記棒状部の先端部において前記傾斜面部に隣接し、突出方向と交差する方向に張り出し、前記被取付部材の裏面に引っかかる鍔部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、仮止めピンを被取付部材に設けられた仮止め孔に容易に挿入でき、かつ被取付部材に確実に引っかかる形状にできるため、被取付部材の寸法バラツキに対する許容度が高くなり、仮止め作業を容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係るスピーカと被取付部材の一部とを展開状態で示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る仮止めピンを示す斜視図である。
図3図2に示すI-I線で仮止めピンを切断した断面を示す図である。
図4】被取付部材の仮止め孔に挿入された仮止めピンを被取付部材の裏側から示す図である。
図5】被取付部材の仮止め孔に挿入された別例の仮止めピンを被取付部材の裏側から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るスピーカの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0010】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0011】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0012】
図1は、実施の形態に係るスピーカと被取付部材の一部とを展開状態で示す斜視図である。被取付部材200は、スピーカ100が取り付けられる板状の部材であれば特に限定されるものではなく、材質なども限定されない。本実施形態の場合、被取付部材200は、車両のドアの内壁であり、板金製である。被取付部材200は、スピーカ100を仮止めするための貫通孔である仮止め孔210と、スピーカ100を締結するための締結孔130と、取り付けられたスピーカ100の一部が挿入される挿入孔230と、を備えている。
【0013】
スピーカ100は、被取付部材200に取り付けられるスピーカ100であって、フレーム110と、仮止めピン120と、を備えている。本実施形態の場合、スピーカ100は、起立した板状の被取付部材200に取り付けられるものであり、締結孔130と、シーリング部材140とを備えている。なお、スピーカ100は、音を発生させるための一般的な部品である磁気回路、ボイスコイル、振動板などを備えているが、これらの説明は省略する。なお、本明細書、および特許請求の範囲において、振動板が配置されている側(音を放出する側)を前方、磁気回路が配置されている側を後方と記載している。
【0014】
フレーム110は、磁気回路、および振動板を保持し、スピーカ100の構造的な基礎となる部材である。フレーム110の形状は、特に限定されるものではなく、円筒形、角筒形などを例示することができる。本実施形態の場合、フレーム110は、略円筒形状となっている。フレーム110の材質は、限定されるものではないが、本実施の形態の場合、樹脂が採用されている。またフレーム110は、射出成形で形成されている。
【0015】
仮止めピン120は、被取付部材200に設けられた仮止め孔210に挿入されてスピーカ100を吊り下げ状態で一時的に支える部分である。本実施形態の場合、仮止めピン120は、樹脂製でありフレーム110と一体に形成されている。
【0016】
図2は、仮止めピンを示す斜視図である。仮止めピン120は、棒状部121と、傾斜面部122と、鍔部123と、を備えている。本実施の形態の場合、仮止めピン120は、錐形部124と、切り欠き部125と、テーパ部126と、補強部127と、を備えている。
【0017】
棒状部121は、フレーム110の後端面から後方に向かって突出する、つまりスピーカ100を被取付部材200に取り付ける際に仮止め孔210に挿入できる方向に突出する棒状の部分であり、仮止めピン120の構造的基礎となる部分である。棒状部121の形状は、限定されるものではないが、本実施の形態の場合、棒状部121は、円柱状であり、基端部、すなわちフレームの後端面に接続される部分に向かって突出方向に直交する断面積が増加する補強部127を備えている。
【0018】
傾斜面部122は、棒状部121の周面の一部であって仮止め孔210の内周面に当接し、突出方向(図2中X+方向)における基端側(フレーム側)から先端側に向かうに従い棒状部121の中心軸129に近づくように傾斜する面である。
【0019】
図3は、図2に示すI-I線で仮止めピンを切断した断面を示す図である。本実施の形態の場合、傾斜面部122は、棒状部121の外周面を仮想的に延長した仮想外周面128の内側に配置される曲面で構成されている。傾斜面部122は、スピーカ100の内側に向き、仮止め時にスピーカ100を吊り下げた際に仮止め孔210の内周に当接する位置に配置されている。この状態は、少なくとも鍔部123から鍔部123の基端側近傍において成立している。これによれば、スピーカ100を被取付部材200に仮止めした際に被取付部材200に引っかかる鍔部123の領域を広くすることが可能となる。なお、傾斜面部122は、平面であってもかまわない。
【0020】
鍔部123は、棒状部121の先端部において傾斜面部122に隣接し、突出方向(図中X軸方向)と交差する方向に張り出し、被取付部材200の裏面に引っかかる部分である。本実施の形態の場合、鍔部123は、傾斜面部122に対応する部分が切り欠かれた断面矩形の円環状の部分の一部であり、周方向において傾斜面部122の両側に配置されている。なお、二つの鍔部123の間隔は、棒状部121の中心軸129を中心とした180度未満が好ましい。180度以上の場合、鍔部123が被取付部材200に引っかかる量が少なくなりすぎ、仮止めが困難になる。好ましくは60度以上、90度以下の範囲から選定する。60度未満であると、フレーム110、および仮止めピン120を一体に射出成形する際に用いる金型の構造が複雑になりすぎる。90度よりも鍔部123の間隔を広くすると被取付部材200への引っ掛かり代が小さく、仮止めの際に仮止めが解除される可能性が高くなる。
【0021】
錐形部124は、鍔部123を底面の一部とし、突出方向に向かって細くなり、傾斜面部122に対応する切り欠き部125を備える部分である。本実施の形態の場合、鍔部123は、一部が切り欠かれた円環状であり、錐形部124は円錐台形状である。錐形部124によって、仮止め作業の際に仮止めピン120を仮止め孔210に容易に挿入することができる。また、錐形部124に傾斜面部122に対応する切り欠き部125を設けることで、突出方向における傾斜面部122の連続性を確保し、射出成形時の金型の離型性を向上させることが可能となる。
【0022】
テーパ部126は、鍔部123から基端部に向かうに従い棒状部121に近づく部分であり、傾斜面部122に対応する切り欠きを備えている。これにより、スピーカ100を被取付部材200から取り外す際において、鍔部123の被取付部材200に対する引っ掛かりによる仮止めピン120や、被取付部材200の破損を防止することができる。これにより、被取付部材200からのスピーカ100の取り外しを容易にし、スピーカ100の再仮止めを可能にしている。
【0023】
本実施の形態の場合、スピーカ100は、面対称に配置された複数(本実施形態の場合二本)の仮止めピン120を備えている。これにより、例えば一つのスピーカ100を左右いずれか車両のドアに仮止めする際に、一方の仮止めピン120を用いて仮止めすることが可能となる。また、複数の仮止めピン120が対応する仮止め孔210にそれぞれ挿入されることにより、被取付部材200に設けられた取付孔220に対する締結孔130の位置決め機能を発揮することが出来、スピーカ100の取付作業を容易に行うことが出来る。なお、複数の仮止めピン120の対称面は、ボイスコイルの巻軸を通過することが望ましい。これによれば左右のドアにいずれかに仮止めする際の重量バランスを左右である程度同じにすることができる。また、左右のドアに取り付けられたスピーカ100から対称に音を放出することが可能となる。
【0024】
締結孔130は、スピーカ100を被取付部材200に締結部材240などを刺し通して本止めする際に用いる貫通孔である。本実施形態の場合、複数の仮止めピン120の対称面に対して複数の締結孔130が対称に配置されている。これにより左右いずれのドアにも同一形状のスピーカ100を取り付ける事ができる。
【0025】
シーリング部材140は、本止め後のスピーカ100と被取付部材200との間に配置され、フレーム110の後端面と被取付部材200との間を密封する環状の部材である。シーリング部材140は、締結部材240による締め付け力により圧縮された状態で密封機能を発揮する。非圧縮状態においてシーリング部材140の厚みは、フレームの後端面から鍔部123までの距離と同程度、または薄く設定されている。これにより、仮止めの際においてシーリング部材140の弾性力により仮止めピン120が仮止め孔210から外れることを防止することができる。
【0026】
本実施の形態のスピーカ100によれば、仮止め作業において仮止めピン120を仮止め孔210に押し込むことなく被取付部材200の仮止め孔210に挿入することができるため、作業性を向上させる事がでる。また、仮止めピン120と仮止め孔210とが干渉して本止めにおける締結力に悪影響を及ぼすことがない。これにより、被取付部材200からフレーム110の浮きあがり、シーリング部材140に圧縮不足による水漏れを防止することができる。
【0027】
また、傾斜面部122に対応する部分には、棒状部121から張り出した鍔部123が存在しないため、フレーム110を射出成形するための金型を単純化することができ、図4に示すように、仮止めピン120が仮止め孔210に挿入され、スピーカ100を吊り下げた状態において、鍔部123は被取付部材200に十分に引っかかる事ができる。
【0028】
また、仮止め孔210に対し仮止めピン120は隙間嵌めとなる大きさであるため、被取付部材200に発生する寸法バラツキを広く許容することができる。さらに、従来の仮止めピン120を圧入することにより位置決めを行っていた仮止め孔210を流用することができ、既存の被取付部材200の構造を変更せずにスピーカ100を取り付けることが可能となる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0030】
例えば、実施の形態では、仮止めピン120を二本備えるスピーカ100を例示したが、仮止めピン120は、一本でも良く、三本以上でもかまわない。
【0031】
また、鍔部123は、傾斜面部122に対応する切り欠きを備える環状ばかりでなく、仮止め状態において被取付部材200に引っかからない部分が存在しない形状、例えば、図5に示すような中心軸129に対し傾斜面部122の回転対称の領域を少なくとも一部に含む切り欠きを鍔部123は、備えていてもかまわない。
【0032】
また、垂直面内に配置される被取付部材200にスピーカ100を取り付ける場合を示したが、スピーカ100は、傾いた状態で起立した被取付部材200に取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、板状の被取付部材200に取り付けられるスピーカに利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 スピーカ
110 フレーム
120 仮止めピン
121 棒状部
122 傾斜面部
123 鍔部
124 錐形部
125 切り欠き部
126 テーパ部
127 補強部
128 仮想外周面
129 中心軸
130 締結孔
140 シーリング部材
200 被取付部材
210 仮止め孔
220 取付孔
230 挿入孔
240 締結部材
図1
図2
図3
図4
図5