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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072911
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】建設計画システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230518BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20230518BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20230518BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20230518BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06F30/13
G06F30/20
G06F111:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185633
(22)【出願日】2021-11-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (公開日) 令和3年7月7日 (公開場所) 武蔵精密工業株式会社 本社/植田工場(愛知県豊橋市植田町字大膳39-5) (公開日) 令和3年7月15日 (公開場所) 株式会社フジタ主催のWEB会議 (公開日) 令和3年7月29日 (公開場所) 株式会社フクダアンドパートナーズ 本社(東京都中央区日本橋小網町7-2ぺんてるビル8F)
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】518424279
【氏名又は名称】株式会社ダイスネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋治
(72)【発明者】
【氏名】神田 信孝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久人
(72)【発明者】
【氏名】河村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】神原 将人
(72)【発明者】
【氏名】大田 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】植草 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】北條 秀夫
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DC01
5B146DC05
5B146DE03
5B146DE16
5B146DG02
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】より利便かつ汎用性の高い技術を提供する。
【解決手段】建設計画システム100は、ユーザ端末102,104を備える。ユーザ端末102,104は、建物の建設計画地に関する敷地情報の入力を受け付け、受け付けた敷地情報に基づいて、建設計画地での建設条件に関する建設情報を外部機関160から取得する。ユーザ端末102,104は、敷地情報及び建設情報を外部人員170に提示することで、建設計画地に建設する建物の基本的な計画情報の提供を受けることができる。その上でユーザ端末102,104は、敷地情報及び建設情報とともに計画情報をサーバ装置110に提供することで、一部に人的判断が反映された建物モデルをサーバ装置110内で生成させる。ユーザ端末102,104は、サーバ装置110で生成された建物モデルに基づいて、建物の計画図や費用、工期等の概要情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の建設計画地に関する敷地情報の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた前記敷地情報に基づいて、前記建設計画地での建設条件に関する建設情報を取得する取得手段と、
前記敷地情報及び前記建設情報を外部人員に提示することで、前記建設計画地に建設可能であり、かつ前記建設計画地での建設条件に適合した建物に関する基本的な計画情報の提供を前記外部人員から受けることが可能な受領手段と、
データ上で建物モデルを生成可能なプログラムを実行する外部コンピュータに前記敷地情報及び前記建設情報とともに前記計画情報を提供することで、前記計画情報に基づく建物モデルをデータ上で生成させる提供手段と、
前記外部コンピュータに生成させた建物モデルに基づいて、建物の計画図、建設に要する費用及び工期の少なくともいずれかに関する概要情報を出力する出力手段と
を備えた建設計画システム。
【請求項2】
請求項1に記載の建設計画システムにおいて、
前記受領手段は、
前記敷地情報及び前記建設情報に基づいてデータ上で生成した前記建設計画地の敷地モデルを前記外部人員に提示することで、前記外部人員による前記プログラムの実行を通じた前記計画情報の生成を可能にすることを特徴とする建設計画システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設計画システムにおいて、
前記受領手段は、
前記外部人員に宛てて前記計画情報の提供を依頼する旨の電子文書を送信し、前記外部人員により前記プログラムの実行を通じて生成された前記計画情報を外部サーバ機器を通じて受領することを特徴とする建設計画システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の建設計画システムにおいて、
前記外部人員から前記計画情報の提供を受けるか否かを判断する判断手段をさらに備え、
前記受領手段は、
前記判断手段により前記計画情報の提供を受けると判断された場合に前記外部人員に前記敷地情報及び前記建設情報を提示して前記計画情報の提供を受ける一方、前記判断手段により前記計画情報の提供を受けないと判断された場合は前記敷地情報及び前記建設情報を提示せず、
前記提供手段は、
前記判断手段により前記計画情報の提供を受けないと判断された場合、前記外部コンピュータに前記敷地情報及び前記建設情報だけを提供することで、前記建設計画地に建設可能であり、かつ前記建設計画地での建設条件に適合した建物モデルをデータ上で生成させることを特徴とする建設計画システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の建設計画システムにおいて、
前記入力手段は、
前記敷地情報として、前記建設計画地の敷地形状を表す地図座標データ、CADデータ又は画像データのいずれかの入力を受け付け可能であることを特徴とする建設計画システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の建設計画システムにおいて、
前記取得手段は、
前記建設情報として、前記建設計画地に適用される集団規定情報の他に、前記建設計画地を管轄する自治体の定める条例を取得可能であり、
前記提供手段は、
前記外部コンピュータに、前記建設情報として提供した前記集団規定情報及び条例に基づく建設条件に適合した建物モデルを生成させることを特徴とする建設計画システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の建設計画システムにおいて、
前記提供手段は、
前記外部コンピュータに提供した前記敷地情報、前記建設情報及び前記計画情報に基づいて、前記外部コンピュータに建物の存在可能空間を算出させた上で、当該存在可能空間内に複数の単位ブロックを立体的に配置させていく一方、前記建設計画地での建設条件の適合範囲を超えた単位ブロックのみ配置を変更させる処理を行った上で、前記存在可能空間内に複数の単位ブロックが互いに密集した集積体からなる建物モデルを生成させることを特徴とする建設計画システム。
【請求項8】
請求項7に記載の建設計画システムにおいて、
前記プログラムの実行に伴い、前記建設計画地内で建物モデルが最大面積となるように、前記建設計画地に内接する最大の四角形を基準として単位ブロックが配置されることを特徴とする建設計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建設計画を自動又は半自動で行う建設計画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、敷地情報に対応した建築物を自動設計するCADシステムの先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術は、敷地を規定する敷地情報及び建築物タイプ情報を取得すると、取得した敷地情報に適用される集団規定情報を記憶部から抽出し、敷地上に建築可能な建築物の存在可能空間を計算した上で、その存在可能空間内で建築物を自動でCAD設計するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-228825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術のシステムは、自動CAD設計に必要な個別ユニット情報を予め記憶部に格納しておき、記憶部から読み出した個別ユニットを存在可能空間内で組み合わせることにより建築物を自動設計している。このため、自動設計できる建築物のタイプは、自ずと記憶部に格納されている個別ユニット情報の範囲内だけに制約され、それ以外のバリエーションに展開することができず、利便性に乏しいという欠点がある。また、自動設計された建築物は、システムに固有の個別ユニット情報だけで構成されているため、出来上がったCADデータをシステム内でしか利用することができず、汎用性に欠けるという欠点もある。
【0005】
一方で、建築物を敷地内でどのように配置するかといった基本的な計画については、敷地形状が単純(例えば、整った矩形状等)である場合には自動設計に好適するものの、実際に建設計画の対象となる敷地形状は様々であり、常に整った形状であるとは限らず、特異な形状の敷地に対して自動設計のアルゴリズムはまだまだ完全といえない。また、建築主である顧客の要望による特異な建築計画を設計に反映させる場合、例えば、容積率の最大確保よりも建築計画を優先した設計にしたい場合には、自動設計のアルゴリズムだけでは顧客満足を得られ難い。このため、全てを一律に自動設計に委ねるのではなく、利便性や汎用性のためには一部に人的な(例えば専門家による)判断を反映させることが必要となる場合もあり得るところである。
【0006】
そこで本発明は、より利便かつ汎用性の高い技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の建設計画システムを提供する。この建設計画システムは、入力手段及び取得手段の構成を備える。このうち入力手段は、建物の建設計画地に関する敷地情報の入力を受け付けるものであり、取得手段は、入力手段で受け付けた敷地情報に基づいて、建設計画地での建設条件に関する建設情報(集団規定情報を含む各種法規制、自治体条例等のうち、取得可能な一部の情報)を取得する。
【0008】
また、本発明の建設計画システムは受領手段を備え、受領手段は、入力を受け付けた敷地情報及び取得した建設情報を外部人員に提示する。外部人員(システム外の専門家、設計者等)は、提示された敷地情報及び建設情報に基づき、建設計画地に建設可能であり、かつ建設計画地での建設条件に適合した建物に関する基本的な計画情報を策定する。計画情報の策定には、外部人員による人的判断が反映されており、建設計画システムは、そのような計画情報の提供を外部人員から受けることが可能である。
【0009】
さらに、本発明の建設計画システムは提供手段を備え、提供手段は、上記の敷地情報及び建設情報とともに、外部人員から提供を受けた計画情報を外部コンピュータに提供する。外部コンピュータは、建物モデルを生成可能なプログラムを実行する。これにより建設計画システムは、計画情報に基づく建物モデルを外部コンピュータに生成させることができるが、このとき計画情報には、上記のように外部人員による人的判断が反映されているため、プログラムの実行を通じて生成された建物モデルにも、外部人員による人的判断が反映されることになる。なお、外部コンピュータの構成を本発明の建設計画システムが備えていることとしてもよく、この場合は上記のプログラムをシステムにおいて実行する。
【0010】
そして、建設計画システムは出力手段を備える。出力手段は、外部コンピュータに生成させた建物モデルに基づいて、建物の計画図、建設に要する費用及び工期の少なくともいずれかに関する概要情報を出力する。
【0011】
このように、本発明の建設計画システムは、建設計画に必要な情報の入力と取得を経て、基本的な計画情報の策定を外部人員に依頼し、そこでの人的判断が反映された計画情報の提供を受けることができる。その上で建設計画システムは、提供手段から必要な情報とともに基本情報を提供し、そこから先の建物モデルについては、半自動的に汎用のプログラム(例えば、外部コンピュータで実行される態様)により生成させている。このため、以後は成果物としての建物モデルのデータを自由に取り出して活用することができ、利便性や汎用性を高めることができる。例えば、取り出した建物モデルの3次元データを中間ファイルとして出力し、他のプログラムによる用途(環境シミュレーション、コンピュータグラフィック作成、動画編集等)に転用することができる。
【0012】
建物モデルの生成について「半自動的」としているのは、以下の理由による。
すなわち、通常、敷地情報及び建設情報が提供されていれば、汎用のプログラムだけで全自動的に建物モデルを生成することができるが、この場合は人的判断が介在せず、プログラム内だけで演算処理が行われることになる。これに対し、本発明の建設計画システムでは、汎用のプログラムが行う自動設計のベースとなる部分(基本情報)に人的判断を介在させることで、そのような人的判断を加味した建物モデルの設計が半自動的に行われるためである。これにより、実際の建設計画地に固有の様々な敷地形状に合わせた建物の配置やその他の調整作業を手動で行い、プログラムの演算だけでは加味することができない諸条件を反映させた建物モデルの自動設計を実現可能とする。
【0013】
なお、本発明の建設計画システムで想定(期待)される人的判断は、例えば、固有の敷地形状に適した建物本体の位置や大きさの調整、建物の一部構造体の位置や大きさの設定、建物用途に応じた敷地内施設の位置や大きさの設定等の項目に対して反映される。これらの調整や設定は、敷地形状によっては自動設計の演算方法だけで適切にカバーしきれない場合があるため、そこに人的判断を反映させることで、外部人員の設計ノウハウや経験を活かした自動設計が可能となる。
【0014】
また、そのようにして生成させた建物モデルを出力手段が活用することで、概要情報の出力の利便性も向上させることができる。すなわち、生成させた建物モデルのデータが汎用の3次元データであれば、この3次元データを例えば別の設計プログラムに転用して建物の計画図(プラン図、パース図)を描き出させたり、別の工事費試算プログラムに転用して建設に要する費用を算出させたり、別の工期計算プログラムに転用して建設に要する工期を算出させたりすることが容易になるし、それら各種プログラムのモジュールを適宜に変更することで、出力手段で出力する概要情報の内容を自由にカスタマイズすることができる。
【0015】
本発明の建設計画システムは、敷地情報及び建設情報に基づいて建設計画地の敷地モデルをデータ上で生成し、そのような敷地モデルを受領手段により外部人員に提示することで、外部人員においても上記のプログラムの実行を通じた計画情報の生成を可能にする。これにより、外部人員側においても建設計画システムと共通のプログラム基盤上での情報の授受が可能となり、利便性や汎用性を高めることができる。
【0016】
また、本発明の建設計画システムは、外部人員に宛てて計画情報の提供を依頼する旨の電子文書を送信し、外部人員によりプログラムの実行を通じて生成された計画情報を外部サーバ機器を通じて受領することができる。これにより、情報のインプットからアウトプットに至るまでの円滑、かつ迅速な半自動設計の流れを実現することができる。
【0017】
本発明の建設計画システムは、建物モデルを自動設計で生成させるか、もしくは半自動設計で生成させるかを選択することができる。すなわち、建設計画システムは判断手段を備え、人的判断が反映された計画情報の提供を受けるか否かを判断手段により判断する。そして、判断手段により計画情報の提供を受けると判断された場合、上記のように受領手段により情報を提示して外部人員から計画情報の提供を受ける。一方、判断手段により計画情報の提供を受けないと判断された場合、受領手段による外部人員への情報の提示を行うことなく、代わりに提供手段から敷地情報及び建設情報だけを外部コンピュータに提供し、自動設計により建物モデルを生成させる。これにより、所望に応じて「半自動設計」又は「自動設計」を適宜選択することができ、利便性や汎用性を高めることができる。
【0018】
本発明の建設計画システムは、敷地情報として、建設計画地の敷地形状を表す地図座標データ、CADデータ又は画像データのいずれかの入力を入力手段で受け付け可能である。これにより、予め地図座標が分かっている場合は座標データで入力することができるし、CADデータがある場合はそのデータファイルで入力することができるし、地図座標やCADのデータがなくても、敷地形状を表した画像データ(カメラによる撮像データでもよい)でも入力することができるため、さらに利便性や汎用性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の建設計画システムは、建設情報として、建設計画地に適用される集団規定情報の他に、建設計画地を管轄する自治体の定める条例を取得手段により取得可能である。この場合、提供手段は、建設情報として提供した集団規定情報及び条例に基づく建設条件に適合した建物モデルを生成させることができる。これにより、集団規定情報以外にも自治体の緑化条例・駐車場条例といったその他一部の条例を総合的に考慮することが可能となり、生成される建物モデルの実用性を高めることができる。
【0020】
本発明の建設計画システムは、提供手段により提供した敷地情報、建設情報及び計画情報に基づいて、外部コンピュータが実行するプログラムにより建物の存在可能空間を算出させた上で、存在可能空間内に複数の基準ボックスを立体的に配置させていく一方、建設計画地での建設条件の適合範囲を超えた基準ボックスのみ配置を変更させる処理を行った上で、当該基準ボックスを配置させた立体空間内に複数の単位ブロックの集積体からなる建物モデルを生成させる。
【0021】
この場合、建物モデルの生成は、例えば以下の要領で行われる。
(1)提供された情報に基づき、建設計画地内に建物の存在可能空間が算出される。このとき、建設計画地に適用される集団規定情報、各種条例の他にも、人的判断が反映された計画情報とともに、車路、トラック停車位置等も考慮した上で存在可能空間を求める。
(2)求めた存在可能空間を基準ボックスとして、この基準ボックス内に、複数の単位ブロックを立体的に配置していく。例えば、建設計画地(敷地)の中心から単位ブロックの配置を始め、敷地に内接する最大の四角形(共円四辺形)に沿って単位ブロックを配置していき、存在可能空間(基準ボックス)内に積み上げていく。
(3)このとき、建設計画地での建設条件の適合範囲を超えた場合、基準ボックスのマスを縮小したり、適合範囲を超えた単位ブロックのみ、配置を変更させたりする処理を行う。
(4)上記(1)~(3)の基準ボックス(存在可能空間)は、集団規定情報その他による建築制限の大きな枠組みとなる。
(5)そして、基準ボックス(存在可能空間)内に単位ブロックを積み上げていくことで、単位ブロックの集積体からなる建物モデルを生成する。
【0022】
なお、上記(1)の処理では、敷地の中心から基準ボックスの配置を始め、人的判断が反映された計画情報に基づく建物配置により、最大の四角形に沿って(共円四辺形の最大面積から)存在可能空間を算出し、基準ボックスを立体的に配置するが、集団規定情報、各種条例等の建設条件に適合しない場合、基準ボッスクの配置を変更して最終的な存在可能空間が算出される。
【0023】
本発明の建設計画システムは、複数の単位ブロックを立体的に集積させたデータ形式で生成された建物モデルに対し、個々の単位ブロックごとに建物内の用途に応じた属性を付与した上で、出力手段により概要情報を出力する。
【0024】
上記のように建設計画システムでは、単位ブロックが建物モデルを構成する単位となるが、積み上げの段階では個々の単位ブロックに用途は決められておらず、単位ブロックを集積させた後に、単位ブロックに柱、壁等といった建物モデルとしての属性を付与していき、次に柱、壁で囲まれた空間に「倉庫」や「事務室」等の部屋の属性を付与していく。このため、予め用途が決まっているユニットを組み合わせていく態様に比較して、建物モデル内部の間口や奥行きをより自由に設定することができ、それらの寸法調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、より利便で汎用性の高い建設計画システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】建設計画システム100の構成例を示すブロック図である。
図2】建設計画システム100の動作概要を示すフローチャートである。
図3】建設計画システム100の自動設計又は半自動設計を通じて得られる出力結果の概要例を示す図である。
図4】手動設計、全自動設計及び半自動設計による建物配置の比較を示す図である。
図5】建設計画システム100の各種処理を示すシーケンス図である。
図6】敷地形状入力処理の手順例を示すフローチャートである。
図7】敷地形状を手書きデータとして入力する場合の例を示す図である。
図8】サーバ装置110が実行する建物ボリューム生成モジュール処理の手順例を示すフローチャートである。
図9】建物モデルのボリューム生成イメージを示す図である。
図10】建物ボリュームの法規制チェックイメージを示す図である。
図11】サーバ装置110のコスト算出モジュール140が実行するコスト算出処理の手順例を示すフローチャートである。
図12】サーバ装置110の工程表作成モジュール150が実行する工程表算出処理の手順例を示すフローチャートである。
図13】ユーザ端末102の専用アプリケーションが実行する表示処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、建設計画システムの好適な一例を挙げているが、本発明の形態は例示のものに限らない。
【0028】
〔システムの構成例〕
図1は、建設計画システム100の構成例を示すブロック図である。図1には建設計画システム100で用いる電子機器とともに、建設計画システム100の運用に関係するブロック構成もまた、合わせて示されている。
【0029】
〔入出力デバイス〕
建設計画システム100は、例えばタブレットコンピュータ型のユーザ端末102、パーソナルコンピュータ型のユーザ端末104等の入出力デバイスを基本構成とする。建設計画システム100は、ユーザ端末102,104に実装されたユーザインタフェース(GUI)を用いてユーザからの入力操作を受け付けたり、それらのディスプレイに出力結果を表示したりする。これらユーザ端末102,104には、建設計画システム100の機能的要素を構成するアプリケーションソフトウェア、API(アプリケーションプログラムインターフェース)、コミュニケーションツール(メールアプリケーション、SNS(Social networking service)、チャットアプリ)等がインストールされており、ユーザ端末102,104等において、各種のアプリケーションソフトウェア、API等を動作させることで、建設計画システム100が機能する。なお、ユーザ端末102はスマートフォン等の形態でもよいし、ユーザ端末104がデスクトップ型パーソナルコンピュータであってもよい。また、ユーザ端末102,104は電子メールMLをメールアプリケーション上で送受信してもよいし、ウェブブラウザ上で送受信してもよい。
【0030】
〔情報通信環境〕
建設計画システム100の運用には、情報通信環境(情報通信網)が好適に用いられる。情報通信環境は、例えばインターネット等のワールドオープンなネットワーク105や、LAN、VPN等のプラベートなネットワーク106等を有する。図1の例では、ユーザ端末102,104がプライベートなネットワーク106だけに接続され、図示しないゲートウェイを通じてインターネット等のネットワーク105にアクセスする態様となっているが、特にこのような構成に限らず、例えば、ユーザ端末102,104が公衆回線を通じてインターネット等のネットワーク105にアクセス可能な態様であってもよい。また、情報通信環境は有線及び無線による回線接続を含む。
【0031】
〔外部コンピュータ〕
建設計画システム100の運用には、例えばプライベートなネットワーク106上に置かれたサーバ装置110を好適に利用することができる。サーバ装置110は、ユーザ端末102,104に対してはアプケーションサーバとして機能し、ユーザ端末102,104のリソース負荷を軽減する。なお、本実施形態ではサーバ装置110を建設計画システム100の外部に位置付けることで、建設計画システム100が利用可能な対象の外部コンピュータとしている。
【0032】
サーバ装置110は、複数のデータベースDB1~DB5を有する他、複数のプログラムモジュールを実装した制御モジュール部120を有している。制御モジュール部120には、BIM管理部130(図で「BIM」と示すブロック)が構築されている。BIM管理部130は、制御モジュール部120において建物ボリューム生成モジュール132及び法規制確認モジュール134といった、BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)に特化された専用のプログラムモジュールを実行するセクションである。この他に制御モジュール部120は、コスト算出モジュール140及び工程表作成モジュール150といった利用目的別に特化された専用のプログラムモジュールを実行する。
【0033】
上記の各種プログラムモジュールには、それぞれ専用の記憶領域が割り当てられている。すなわち、BIM管理部130の建物ボリューム生成モジュール132にはデータベースDB2が割り当てられ、法規制確認モジュール134にはデータベースDB3が割り当てられる。また、コスト算出モジュール140にはデータベースDB4が割り当てられ、工程表作成モジュール150にはデータベースDB5が割り当てられる。なお、データベースDB1は、建設計画システム100内の情報保存領域として割り当てられている。なお、データベースDB1~DB5は、物理的に同一な記憶媒体内でセクタを分けられている構成でもよい。
【0034】
〔外部機関〕
建設計画システム100の運用には、所定の外部機関160もまた好適に利用される。外部機関160は、例えば一般に公開されているGISデータベース162を保有しており、このGISデータベース162には、ネットワーク105を通じて建設計画システム100からアクセスすることができる。GISデータベース162には、例えば地図情報、都市計画情報といった地理的情報が膨大に蓄積されている他、各種災害のハザードマップ、地盤情報等のデータが蓄積されている。
【0035】
〔外部人員〕
また本実施形態では、建設計画システム100の運用に外部人員170を活用することができる。外部人員170は、例えば建設企業等の設計部門が擁する人的資源(ヒューマンリソース)であり、ここでは複数の設計者AC1,AC2,AC3・・・を挙げることができる。設計者AC1,AC2,AC3・・・等は、建築設計について固有の又は共有のスキルやノウハウ、経験を有している。このような外部人員170もまた、各設計者AC1,AC2,AC3・・・が使用するコンピュータ機器(デスクトップ型、ラップトップ型)を通じてプライベートなネットワーク106やインターネット等のネットワーク105にアクセスすることができる。
【0036】
〔動作概要〕
図2は、建設計画システム100の動作概要を示すフローチャートである。本実施形態の建設計画システム100による動作は、所望の建設計画地における建物の半自動設計を柱とするが、自動設計の選択も可能である。
【0037】
〔半自動設計動作〕
すなわち、建設計画システム100は、ユーザ端末102,104に実装されたユーザインタフェース(GUI)を用いてユーザからのデータ入力を受け付けると(ステップS100)、外部機関160からGISデータを取得(ステップS102)した後、半自動設計の指定があると判断した場合(ステップS120=Yes)、外部人員170への情報提示及び半自動設計の依頼(ステップS122,S124)を行う。そして、外部人員170から計画情報の提供を受けると(ステップS126=Yes)、建設計画システム100は、サーバ装置110において主要な各種処理(ステップS104,S106,S108)を実行させた上で、その結果をユーザ端末102,104に出力して表示する(ステップS110)。
【0038】
〔自動設計動作〕
一方、半自動設計の指定がない場合(ステップS120=No)は、データ入力の受け付け(ステップS100)とGISデータの取得(ステップS102)後、サーバ装置110側の処理(ステップS104,S106,S108)を実行させた上で、出力表示(ステップS110)を行う。
以下、動作概要についてさらに説明する。
【0039】
〔半自動設計・自動設計の流れ〕
ステップS100:ユーザ端末102,104において、建物の建設を計画する建設計画地に関する敷地情報の入力を受け付ける。
ステップS102:データ入力時には、合わせて敷地情報に関するGISデータを外部機関160から取得する。GISデータから建設計画地の正確な地図座標、地形、方位といった敷地情報が得られる他、建設計画地に適用される集団規定情報、各種条例といった建設条件に関する建設情報が得られる。ここまでは、半自動設計及び自動設計の両方に共通である。
【0040】
〔選択動作〕
ステップS120:ユーザ端末102,104において、ここで半自動設計の指定の有無を判断する。この判断は、例えばユーザに対して「半自動設計」又は「(全)自動設計」の選択肢を提示し、ユーザからの選択入力操作に応じて行うことができる。ユーザの選択入力操作が「半自動設計」であった場合、半自動指定あり(Yes)と判断してステップS122に進む。一方、ユーザの選択入力操作が「(全)自動設計」であった場合、半自動指定がない(No)と判断し、ここまでにデータ入力された敷地情報及び建設情報をサーバ装置110に提供し、ステップS104~S108の処理を走らせる。
【0041】
〔半自動設計時〕
ステップS122:ユーザ端末102,104においてBIMプログラムを実行し、データ入力された敷地情報及び取得した建設情報に基づいて、今回の建設予定地に該当する敷地のBIMモデルを生成する。
ステップS124:ユーザ端末102,104において、コミュニケーションツールを実行し、外部人員170宛てに半自動設計(計画情報の提供)を依頼する電子メールMLを送信する。例えば、設計部門の職長宛に、今回の案件概要とともに基本的な建物の計画策定を依頼する旨を電子メールMLで送信する。これを受け、設計部門長により適切な設計者AC1,AC2,AC3・・・のいずれかが担当者に指名され、当該担当者により基本計画の策定が人的に行われる。策定された基本計画は、計画情報として外部人員170のコンピュータ機器から例えばデータベースDB1にアップロードされる。
ステップS126:ユーザ端末102,104において、外部人員170から計画情報を受領したかを確認する。
ステップS128:計画情報を未受領である間(ステップS126=No)、ユーザ端末102,104は待機処理中となる。
そして、計画情報を受領すると(ステップS126=Yes)、これまでにデータ入力された敷地情報及び建設情報とともに受領した計画情報をサーバ装置110に提供し、以下の処理を走らせる。
【0042】
ステップS104:計画情報に基づき、建設計画地で建設可能な建物のボリュームを生成(建物モデルを半自動設計)する。建物モデルの生成には、外部人員170から提供された計画情報に基づく人的判断が反映されることになる。
ステップS106:半自動設計した建物モデルから、建設に必要なコストを算出する(建築概算見積)。
ステップS108:また、半自動設計した建物モデルから、工事工程表を作成する(自動工程作成)。
以上の処理の結果がサーバ装置110からユーザ端末102,104に返される。
【0043】
ステップS110:ユーザ端末102,104において、半自動設計の結果(建物概要、コスト概要、工期概要等)を表示する。
ここまでが半自動設計の流れであるが、(全)自動設計の場合は以下の流れとなる。
【0044】
〔(全)自動設計時〕
ステップS104:敷地情報及び建設情報のみに基づき、建設計画地で建設可能な建物のボリュームを生成(建物モデルを自動設計)する。したがって、建物モデルには人的判断が加味されない。
ステップS106:自動設計した建物モデルから、建設に必要なコストを算出する(建築概算見積)。
ステップS108:また、自動設計した建物モデルから、工事工程表を作成する(自動工程作成)。
以上の処理の結果がサーバ装置110からユーザ端末102,104に返される。
【0045】
ステップS110:ユーザ端末102,104において、自動設計の結果(建物概要、コスト概要、工期概要等)を表示する。
【0046】
〔出力結果概要〕
図3は、建設計画システム100の半自動設計又は自動設計を通じて得られる出力結果の概要例を示す図である。
例えば、タブレット型のユーザ端末102を使用して半自動設計又は自動設計の処理を実行させた場合、出力結果としてユーザ端末102の画面に建物プラン図BP、建物パース図PS、コスト工期表CTといった建設計画に関する概要情報が表示される。これらの概要情報は、ユーザ端末102でのGUI操作によって適宜に表示・非表示・画面切替が可能であり、閲覧の利便性に供することができる。また、半自動設計又は自動設計の結果をユーザ端末102から第三者(例えば顧客等)に電子メール等でデータ送信することもできる。
【0047】
〔建物配置の比較〕
図4は、手動設計、全自動設計及び半自動設計による建物配置の比較を示す図である。ここでは、所謂「旗竿地」に近い形状の敷地である場合において、同じ敷地内で(A)設計者が実際に検討した場合の建物配置の例、(B)本システム100の全自動設計による建物配置の例、(C)本システム100で半自動設計を用いた建物配置の例をそれぞれ挙げている。なお、建設計画地の敷地境界線及び隣地境界線BDを太線により示すとともに、計画された建物BLの配置をハッチング領域で示している。また、建物BLを物流倉庫とした場合に、建物BLに付属するランプLPの配置を太線の円環で示している。これらの建物配置の違いは、例えば図3の建物プラン図BPに反映される。
【0048】
〔設計者による実際の建物配置〕
図4中(A):最初に、建設計画システム100を使用せず、設計者が人手で実際に検討した建物BLの配置の例である。この例では、敷地形状に合わせて容積率が最大となる建物BLの配置や、そのために最適なランプLPの配置が設計者の経験やノウハウに基づいて検討されている。特に、敷地内で建物BLの配置を偏らせることなく、旗竿部分と旗部分に配置を広げることで延べ床面積を大きく確保している点に設計者の人的判断が反映されている。
【0049】
〔全自動設計による建物配置〕
図4中(B):次に、建設計画システム100を使用して全自動設計した建物BLの配置の例である。この場合、プログラム上のアルゴリズムによって建物BLの配置が算出されることになるが、(A)の例と比較すると、全体的に建物BLの配置が旗竿部分に偏っており、ランプLPの配置も設計者によるものとは違っている。その結果、建物BLの延べ床面積が小さくなっているため、敷地の容積率を最大に活用するまでには至っていない。このように、人手を介さず全てを自動設計した場合、基本的な計画において人的判断と同等にならず、ある程度の限界があることが分かる。
【0050】
図4中(C):最後に、建設計画システム100を使用しつつ、半自動設計により得られた建物BLの配置の例である。この場合、建物BLのBIMモデルは自動設計で行うが、基本的な計画において設計者による人的判断が反映されることになるため、得られた建物BLの配置は、(A)の設計者による配置と同等(≒)のものとなる。したがって、建設計画システム100を使用しつつ、半自動設計によって実際の敷地形状に合わせた最適な建物BLの配置とすることができる。
【0051】
〔処理シーケンス〕
図5は、建設計画システム100の各種処理を示すシーケンス図である。図2の動作概要では、建設計画システム100全体の処理フローとして俯瞰的に示していたが、ここでは各動作主体別に行われる処理シーケンスが示されている。以下の説明では、図2の動作概要のうち、特に「半自動設計」が行われる場合の処理シーケンスを挙げている。
【0052】
〔ユーザ端末処理〕
ステップS1:ユーザ端末102(104)において、データ入力を開始する。ここでは運用上のセキュリティ対策として、ユーザ認証(サインイン)の手順が設けられている。したがって、先ずユーザID及びパスワードの入力が求められる。
ステップS2:入力したユーザID及びパスワードをユーザ端末102からサーバ装置110に送信し、認証要求を発行する。
【0053】
〔サーバ装置処理〕
ステップS3:サーバ装置110において、認証要求に対するユーザ認証を行う。ここでのユーザ認証のため、例えば上記のデータベースDB1には登録ユーザのリストが保存されている。
ステップS4:ユーザ認証が正常に行われると、サーバ装置110からユーザ端末102に認証通知を行う。これにより、ユーザ端末102とサーバ装置110との間で半自動設計又は自動設計のためのセッションが確立される。
【0054】
〔ユーザ端末処理〕
ステップS5:ユーザ端末102において、建設計画地に関する敷地情報を入力する。図2の動作概要では、データ入力(ステップS100)に対応した処理の開始に該当する。敷地情報の入力は、例えば敷地形状の座標データ、CADデータ、PDFデータ、画像データ等により行われるが、詳細についてはさらに後述する。
ステップS6:ユーザ端末102から外部機関160に、敷地情報の入力データを送信する。
【0055】
〔外部機関処理〕
ステップS7:外部機関160において、送信された敷地情報に基づいてGISデータベース162から地図情報を検索する。
ステップS8:外部機関160から地図情報(GISデータ)をユーザ端末102に提供する。
【0056】
〔ユーザ端末処理〕
ステップS9:地図情報(GISデータ)を参照し、ユーザ端末102において詳細な敷地情報を入力する。なお、敷地形状の入力についてはさらに後述する。
ステップS10:入力(確定)した敷地情報をユーザ端末102からサーバ装置110に送信する。
【0057】
〔サーバ処理〕
ステップS11:サーバ装置110において、送信された敷地情報に基づいて法規制確認モジュール134がデータベースDB3から建設条件(建設情報)を検索する。建設条件には、上記のように建設計画地に適用される集団規定情報、管轄する自治体の定める各種条例等が含まれる。なお、ここでの処理を外部機関160で行うこととしてもよい。
ステップS12:建設条件に関する検索結果をサーバ装置110からユーザ端末102に通知する。外部機関160で建設条件を取得した場合は、外部機関160からユーザ端末102に検索結果を通知する。
【0058】
〔ユーザ端末処理〕
ステップS13:ユーザ端末102において、通知された建設条件のうち、考慮すべき対象を選択して入力する。例えば、入力データの建設計画地に適用される法規制情報として建蔽率、容積率、斜線規制、高さ制限、日影規制、緑化条例、自治体(本実施形態の採用時において東京都)駐車場条例、その他地域ごとに設定された条例が一覧で通知されると、そこから考慮すべき項目をユーザ操作によって選択し、選択データとして入力する。また、ここでは駐車場、トラック停留場(バース)等の指定した台数を選択データとして入力することができる。指定した台数は、建設計画地での建物の容積率に支障がない範囲内で確保されることになる。
ステップS14:入力した選択データをユーザ端末102からサーバ装置110に送信する。
【0059】
〔サーバ処理〕
ステップS15:サーバ装置110において、これまでのデータをデータベースDB1に保存する。
ステップS16:データ保存の完了後、その旨をサーバ装置110からユーザ端末102に通知する。
【0060】
〔ユーザ端末処理〕
ステップS17:ユーザ端末102において、ユーザから「半自動設計」の選択入力操作があったことを受け、今回の建設予定地に該当する敷地のBIMモデルを生成する。ここでは、例えばユーザ端末102においてBIM対応のプログラムを実行し、先のステップS9で入力した敷地情報から敷地のBIMモデルを生成する。
ステップS18:ユーザ端末102において、メールアプケーションを起動し、外部人員170宛てに半自動設計を依頼する旨の電子メールを送信する。なお、半自動設計に必要な情報(敷地情報及び建築情報)は、適宜暗号化して電子メールに添付してもよいし、ユーザ端末102からデータベースDB1にアップロードし、そこから外部人員170にてダウンロードすることとしてもよい。
【0061】
〔外部人員処理〕
ステップS19:外部人員170において、半自動設計の依頼を受け付ける。ここでは、例えば設計部門の職長により担当の設計者が指名される。
ステップS20:外部人員170において、担当の設計者により基本的な計画情報が策定される。担当する設計者は、今回の建設予定地に対応する敷地情報及び建設情報に基づき、敷地のBIMモデルを用いてプログラム上で以下の計画情報を手動(人的判断)で策定する。ここでは、建設予定の建築物を物流倉庫とした場合に、BIMモデルを用いて設計者による手動の建物配置を計画する例を挙げる。
(1)敷地内での建物本体の位置や大きさの調整
(2)バースの位置や大きさの設定
(3)ランプの位置や大きさの設定
(4)敷地又は建物への出入口の位置設定
(5)敷地内における構内道路の位置や大きさの設定
(6)駐車場の位置や大きさの設定
【0062】
上記(1)~(6)に例示した項目は、汎用のプログラムを用いた自動設計においても計算上で策定することは可能である。ただし、敷地形状が単純でなく特異な形状であったり、特殊な法規制が適用される地域に該当していたりする場合には、先の図4中(B)の建物配置の例で示したように、自動設計のアルゴリズムだけでは十分に対応しきれないケースもあり得る。例えば、全てを自動設計に委ねた場合、上記(1)~(6)に関するアルゴリズムの限界から、敷地面積に対して容積率を大きく下回るような延べ床面積の建物モデルが生成されてしまうことがあるが、これでは建設予定地に物流倉庫を建設することへのインセンティブが低く、建設計画を具体的に案件化する際の妨げとなる。
【0063】
そこで本実施形態では、上記(1)~(6)に例示したような項目については、設計者のスキルやノウハウ、経験等を活かした人的判断により手動で策定し、これを基本的な計画情報としてプログラムに提供してやることで、その後の自動設計で建物モデルを生成する際にも人的判断を反映させ、個別の敷地に応じた最適な建物モデルが得られるように自動設計のアルゴリズムを補助している。これにより、先の図4中(C)の建物配置の例で示したように、敷地面積に対して容積率を最大限に活用した延べ床面積の建物モデルが自動設計でも生成されることとなり、建設計画の案件化に対する障害を取り除きやすくすることができる。
【0064】
ステップS21:外部人員170において、設計者により策定した計画情報をサーバ装置110のデータベースDB1にアップロードする。
【0065】
〔サーバ装置処理〕
ステップS22:サーバ装置110において、アップロードされた計画情報を保存する。
ステップS23:半自動設計の開始をサーバ装置110からユーザ端末102に通知する。
ステップS24:サーバ装置110において半自動設計(人的判断が反映された計画情報に基づく自動設計)を開始し、建物モデルを生成する。なお、建物モデルの生成についてはさらに後述する。
ステップS25:サーバ装置110において、生成した建物モデルから建設コストの算出及び工事工程表の作成を行う。コスト算出及び工程表作成についてもさらに後述する。
ステップS26:サーバ装置110において、ここまでのデータをデータベースDB1に保存する。
ステップS27:そして、サーバ装置110からユーザ端末102に半自動設計の結果をデータ送信する。
【0066】
〔ユーザ端末処理〕
ステップS28:ユーザ端末102において、サーバ装置110から送信されたデータを表示する。図2の動作概要では、表示(ステップS110)に対応した処理に該当する。
【0067】
〔オプション処理〕
処理シーケンスには、以下のオプション処理を好適に追加することができる。
ステップS29:ステップS16で生成した建物モデルをサーバ装置110からユーザ端末102に適宜送信する。
ステップS30:ユーザ端末102において建物モデルを確認し、所望の内容でなかった場合はユーザが再出力要求を入力する。
ステップS31:ユーザ端末102からサーバ装置110に再出力要求を送信する。再出力要求があった場合、サーバ装置110において再度ステップS24を実行する。
【0068】
以上が半自動設計の処理シーケンスであるが、人的判断が反映されない完全自動設計の場合は以下の処理シーケンスとなる。
先ず、図5のステップS1~S15までの処理が同様に実行される。
次に、サーバ装置110においてステップS24以降の処理が実行される。この場合、ステップS15で保存された敷地情報及び建設情報のデータに基づいて建物モデルが生成されることになる。
そして、ステップS28の処理が実行され、ユーザ端末102においてデータを表示する。この場合、完全自動設計で生成された建物モデルに関するデータが表示されることになる。
【0069】
次に、処理シーケンス中に挙げられる個別の処理の詳細について説明する。
【0070】
〔敷地形状入力〕
図6は、敷地形状入力処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、図5の処理シーケンス中でユーザ端末102が実行するステップS5,S9に対応している。敷地形状入力処理は、ユーザ端末102に専用のアプリケーションソフトウェアとして実装されている。以下、手順例に沿って説明する。
【0071】
ステップS200:ユーザ端末102のアプリケーションは、ユーザ操作によって入力されたデータが敷地形状を表す座標データであるかを確認する。座標データであることを確認した場合(Yes)、次にステップS202に進むが、座標データ以外(No)の場合はステップS204に進む。
【0072】
〔座標データの場合〕
ステップS202:ユーザ端末102のアプリケーションは、敷地形状の入力データが座標データである場合、その座標に示されたGISデータの土地情報から敷地範囲を取得する。なお、GISデータは先の処理シーケンスにおいて外部機関160から提供されている。
【0073】
〔座標データ以外の場合〕
ステップS204:ユーザ端末102のアプリケーションは、ユーザ操作によって入力されたデータが敷地形状を表すCADデータ(例えばdxf形式)であるかを確認する。CADデータであることを確認した場合(Yes)、次にステップS206に進むが、CADデータ以外(No)の場合はステップS208に進む。なお、CADデータは、dxf形式以外であってもよい。
【0074】
〔CADデータの場合〕
ステップS206:ユーザ端末102のアプリケーションは、敷地形状の入力データがCADデータである場合、CADデータと重なり合うGISデータから敷地範囲を取得する。
【0075】
〔CADデータ以外の場合〕
ステップS208:ユーザ端末102のアプリケーションは、ユーザ操作によって入力されたデータが敷地形状を表す画像データ(例えば、PDF形式の画像データ)であるかを確認する。画像データであることを確認した場合(Yes)、次にステップS210に進むが、画像データ以外(No)の場合はステップS212に進む。
【0076】
〔PDFデータの場合〕
ステップS210:ユーザ端末102のアプリケーションは、敷地形状の入力データがPDF等の画像データである場合、取得した画像とGISデータとの重ね合わせを行って敷地形状を取得する。例えば、画面102aに表示した画像データを背景として、敷地形状をトレースした線図データを生成する処理を行う。なお、ここでは適宜、ユーザの手動入力操作を要求してもよい。
【0077】
〔PDFデータ以外の場合〕
ステップS212:ユーザ端末102のアプリケーションは、敷地形状を手書きデータとして入力する。ここでは、例えば敷地形状を印刷した紙や、プリンタで出力した紙をユーザ端末102に内蔵されたカメラ等で撮像し、画像データとして入力する。
ステップS214:ユーザ端末102のアプリケーションは、カメラによる取得画像とGISデータとの重ね合わせから敷地形状を取得する。ここでは適宜、必要なユーザ操作として、カメラによる取得画像を下書きとしてユーザ端末102のGUI上で敷地形状を表す線をなぞる(トレースする)操作入力が行われる。また、アプリケーションがカメラによる取得画像から画像認識(解析)処理を行い、敷地形状を自動算出することとしてもよい。
【0078】
ステップS216:そして、ユーザ端末102のアプリケーションは、最終的な取得画像の位置合わせ及び補正(歪み補正、解像度補正、二値化補正等)を行う。
以上の手順を実行すると、ユーザ端末102は処理シーケンスを継続する。
【0079】
〔手書きデータ入力例〕
図7は、敷地形状を手書きデータとして入力する場合の例を示す図である。
図7中(A):ユーザ端末102のアプリケーションが内蔵のカメラ102bを起動する。ユーザは、画面102aを見ながら敷地形状STが印刷等された紙CPをカメラ102bの撮像範囲に位置合わせし、適切なタイミングで撮像ボタン102cをタップする。
図7中(B):ユーザ端末102のアプリケーションは、カメラ102bによる取得画像IMに基づき、上記のようにユーザ操作等を通じて敷地形状の手書きデータDTを入力する。なお、データDTが画像認識によって自動変換されてもよい。
【0080】
〔建物ボリューム生成モジュール処理〕
図8は、サーバ装置110が実行する建物ボリューム生成モジュール処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、図5の処理シーケンス中でサーバ装置110が実行するステップS24(建物モデル生成)に対応している。また、図8の処理は、BIM管理部130の建物ボリューム生成モジュール132及び法規制確認モジュール134によって実行される。以下、手順例に沿って説明する。
【0081】
ステップS300:建物ボリューム生成モジュール132は、データベースDB1に保存した入力データをロードする。ロードする入力データは、図5の処理シーケンスのステップS15でデータ保存したものである。
【0082】
ステップS302:次に建物ボリューム生成モジュール132は、建物の存在可能空間を算出する。存在可能空間の算出には、例えば以下の法則(アルゴリズム)が用いられる。
(1)建物の存在可能空間は、建設計画地(建物敷地)内で建物モデルが最大面積となるように、建設計画地に内接する最大の四角形(共円四辺形)の最大面積から算出されるが、法規制、および車路や緑地、駐車場、トラック停車位置等も考慮したうえで存在可能空間が算出されるものとする。なお、上記のように駐車場、トラック停留場(バース)の台数は、容積率に支障がない範囲内で指定の台数が確保される。また、半自動設計の場合は、外部人員170で設計者が策定した計画情報に基づいて建物配置を決定した上で、建物の存在可能空間を算出する。これにより、自動設計のアルゴリズムに対して人的判断を反映させることができる。
(2)敷地内に用地地域などが複数混在するときは、一旦ユーザ端末102にその旨を返し、ユーザ端末102側で領域を分割する操作を行って、分割領域をサーバ装置110に再度アップロードすることを要求する。その際、アップロードされた分割領域ごとに建蔽率や容積率が異なる場合もあるので、その際は建物ボリューム生成モジュール132において領域面積に応じた按分計算を自動で行うものとする。
(3)領域分割において、さらに日影に関しては、敷地外において規制が異なる場合は敷地外の領域の分割も可能であるものとする。
【0083】
ステップS304:建物ボリューム生成モジュール132は、先のステップS302で算出した存在可能空間内に建物モデルのボリューム(容量)を生成する。
ステップS306:また、生成した建物モデルのボリュームが法規制をクリアしているか否かを法規制確認モジュール134がチェックする。法規制をクリアしていれば(Yes)、次にステップS308に進むが、法規制をクリアしていなければ(No)、ステップS304に戻ってループ処理を行う。
ステップS308:法規制をクリアした建物モデルのボリューム内において、今度は別の三次元データからなる単位ブロックを隙間なく集積していき、単位ブロックの集積体からなる建物モデルを生成する。さらに、個々の単位ブロックに「柱」、「壁」、「床」、「天井」等の属性を付与していき、「柱」、「壁」、「床」、「天井」で囲まれた領域に「倉庫」や「事務室」、「通路」等の室内空間(部屋)としての属性を付与していって最終的な建物モデルのアウトプット(自動設計の結果物)を生成する。生成した建物モデルは、データベースDB2に一時保存する。また、一時保存した建物モデルは、本処理外でサーバ装置110からユーザ端末102,104等に適時送信することができる。
【0084】
これにより、建設計画システム100により自動設計される建物モデルは、例えば以下に示すアルゴリズムを用いて生成されることになる。
(1)データ化された存在可能空間内に、基準となる大きさの3次元データからなる基準ボックスを配置し、建物モデルの法規制チェック用に大きなボリュームを生成する(ステップS304)。
(2)生成された建物モデルのボリュームを法規制チェックし、法規に適さない部分があれば、法規制に適合するように基準ブロックのマスを縮小する、あるいは、それらの位置を移動させるという手法でボリュームの調整を行う(ステップS308)。ここで基準ボックスを配置したデータ上の立体空間は、集団規定情報その他による建築制限の大きな枠組みとなる。
(3)その後、生成したボリュームを超えないように単位ブロックを密集状態で集積し、建物モデルを生成する。
(4)個々の単位ブロックに属性を付与し、建物モデルの完成形を得る。
【0085】
ステップS310:建物ボリューム生成モジュール132は、再出力要求を受けたか否か確認する。再出力要求は、図5の処理シーケンスのオプション処理(ステップS31)でユーザ端末102から送信される。再出力要求があった場合(Yes)、ステップS304に戻って処理をやり直す。再出力要求がない場合(No)、ステップS312に進む。
【0086】
ステップS312:建物ボリューム生成モジュール132は、成果物としての建物モデルをデータベースDB1に保存する。
以上の手順を実行すると、建物ボリューム生成モジュール132は処理シーケンスを継続する。
【0087】
〔建物モデル生成イメージ〕
図9は、建物モデルの生成イメージを示す図である。
図9中(A):建設計画地(敷地)STの中心から単位ブロックBXを配置する。このとき、建設計画地ST内には、例えば駐車場PKや法規制を考慮した上で、最大面積となる共円四角形SQが定義されるとともに、上記の基準ボックス(建物ボリューム)が定義されている。
図9中(B):共円四角形SQに沿って単位ブロックBXを水平方向に配置していく。なお、建物モデルの1階部分を形成するときには、建設計画地STの境界線からの法規制チェックを実施しているものとする。
図9中(C):単位ブロックBXを垂直方向にも配置していき、立体的なモデルを生成していく。最初に基準ボックスを用いたマスモデルで上記のように法規制のチェックを行い、このとき、法規制チェックに引っかかる配置があれば、法規制に適合するようにマスモデルの縮小、もしくは、法規制に適合するように基準ボックスの配置を変更し、(C)→(B)→(C)のループ処理を実行する。なお、図9(C)において最初に法規制をクリアする建築可能空間を設定し、当該建築可能空間内で単位ボックスBXを配置し、(C)→(B)→(C)のループ処理が実行されてもよい。
【0088】
〔法規制チェックイメージ〕
図10は、建物ボリュームの法規制チェックイメージを示す図である。なお、図10の敷地形状は図9とは異なっている。
【0089】
上記のように(図9参照)、建設計画地(敷地)ST内に定義された共円四角形SQに沿って単位ブロックBXが集積され、立体的な建物モデルが生成される。このとき、大枠の基準ボックスBBに何らかの法規制に適合しない部分NGBがあったとすると、そのような不適合な部分NGBの配置を変更する(基準ボックス全体を縮小してもよいし、配置をずらしてもよい。)。
【0090】
〔単位ブロック詳細〕
上記のように、基準ボックスによる法規制チェックを行いつつ、最終的に単位ブロックを用いた建物モデルの生成が行われる。単位ブロックもまた、データ空間内において3次元データからなる立方体であり、単位ブロックを集積していくイメージは、図9に示したとおりである。または、基準ボックスによる法規制チェックを最初に行うことで基準ボックスの範囲を確定し、基準ボックス内で単位ブロックを用いた建物モデルの生成が行われてもよい。
【0091】
ただし、単位ブロックは、個々のデータ上の寸法が建物モデルにおいて各種の構成要素としての属性が個々に付与される大きさとなっている。具体的には、建物モデルの1フロア(同一平面)内に等間隔で柱としての属性が付与される配置の単位ブロックがあるとき、4本の柱に囲まれた1区画(グリッド)の面積が125m未満となるように条件を設定した上で、単位ブロックの1辺あたりの寸法が決定される。また、1フロア(同一平面)内に壁又は防火シャッターとしての属性が付与される配置の単位ブロックがあるとき、壁又は防火シャッターにより囲まれたエリアの面積が1500m以下となるようにも条件を設定した上で、単位ブロックの寸法が決定されている。
【0092】
〔グリッドイメージ〕
4本の柱に囲まれた1区画のイメージは、例えば図3の建物プラン図BPにおいて、等間隔に配列された個々の点を1本の柱とすると、4本の柱で囲まれた区画となる。したがって、単位ブロックは、ある平面内の水平方向でみた集積体によって1本の「柱」を構成できる大きさであり、かつ、そのような「柱」の4本を正方配置して形成される区画の床面積が125m未満となるように個々の寸法が決定されることになる。
【0093】
〔コスト算出処理〕
図11は、サーバ装置110のコスト算出モジュール140が実行するコスト算出処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、図5の処理シーケンス中でサーバ装置110が実行するステップS25(コスト算出)に対応している。以下、手順例に沿って説明する。
【0094】
ステップS400:コスト算出モジュール140は、データベースDB2又はDB1に保存された建物モデル(ボリュームデータ)を取り込む。
ステップS402:次に、データベースDB4のコストテーブルを適宜参照してコスト算出モジュール処理を実行する。ここでの処理には、例えばサードパーティが提供するコスト算出プログラム(市販品)を好適に利用することができる。このようなプログラムは、自動設計した建物モデルに、内外装の仕上げを想定した上で見積書を自動で作成してくれる。
ステップS404:そして、算出結果をデータベースDB1に保存するとともに、ユーザ端末102に対して出力する。
以上の手順を実行すると、コスト算出モジュール140は処理シーケンスを継続する。
【0095】
〔工程表算出処理〕
図12は、サーバ装置110の工程表作成モジュール150が実行する工程表算出処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、図5の処理シーケンス中でサーバ装置110が実行するステップS25(工事工程表作成)に対応している。以下、手順例に沿って説明する。
【0096】
ステップS500:工程表作成モジュール150は、データベースDB2又はDB1に保存された建物モデル(ボリュームデータ)を取り込む。
ステップS502:次に、データベースDB5の工程テーブルを適宜参照して工程表算出モジュール処理を実行する。ここでの処理にも、例えばサードパーティが提供する適正工期算定プログラム(市販品)を好適に利用することができる。このようなプログラムは、適正工期の算出、及び工程表の作成を自動で行ってくれる。
ステップS504:そして、算出結果をデータベースDB1に保存するとともに、ユーザ端末102に対して出力する。
以上の手順を実行すると、工程表作成モジュール150は処理シーケンスを継続する。
【0097】
〔表示処理〕
図13は、ユーザ端末102の専用アプリケーションが実行する表示処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、図5の処理シーケンス中でユーザ端末102が実行するステップS28(データ表示)に対応している。以下、手順例に沿って説明する。
【0098】
ステップS600:ユーザ端末102のアプリケーションは、アウトプットデータの読み出しを行う。具体的には、処理シーケンス中のステップS19でサーバ装置110から送信された結果をメモリ等に読み出す。なお、ここではデータベースDB1に保存されているデータを読み出してもよい。
【0099】
ステップS602:ユーザ操作により、建物プラン・建物パースの表示が選択された場合(Yes)、次にステップS604に進むが、それ以外(No)の場合はステップS606に進む。
【0100】
〔建物プラン・建物パース表示選択時〕
ステップS604:ユーザ端末102の画面102aに図面・概要書・パース・モデル等を表示する。表示のイメージは、ユーザ端末102がタブレット端末等のデバイスである場合は、図3の建物パース図PSであり、パーソナルコンピュータ(ユーザ端末104)の場合は、建物パース図PSの他に建物プラン図BP等も表示可能である。
【0101】
〔上記非選択時〕
ステップS606:また、ユーザ操作により、コスト表示が選択された場合(Yes)は次にステップS608に進むが、それ以外(No)の場合はステップS610に進む。
【0102】
〔コスト表示選択時〕
ステップS608:ユーザ端末102の画面102aにコスト一覧を表示する。表示のイメージは、図3のコスト工期表CTにおいて、特にコストの部分にフォーカスしたものとなる。
【0103】
〔上記非選択時〕
ステップS610:ユーザ操作により、工程表表示が選択された場合(Yes)は次にステップS612に進むが、それ以外(No)の場合はステップS602に戻る。
【0104】
〔工程表表示選択時〕
ステップS612:ユーザ端末102の画面102aに工程表を表示する。表示のイメージは、図3のコスト工期表CTにおいて、特に工程表の部分にフォーカスしたものとなる。
以上の手順を実行すると、ユーザ端末102は処理シーケンスに復帰して継続する。
【0105】
上述した実施形態の建設計画システム100は、例えば以下のような利用形態に供することができる。
すなわち、建設事業者の営業担当者が、モバイル機器(タブレット等)やパソコン等のユーザ端末102から入力条件と選択条件(敷地状況、道路状況、法規制、顧客要望等)を設定することで、サーバ装置110において対象の敷地に建築できる建築物モデルを形成し、平面・立面・断面図、パース、設計概要表、3Dモデル、さらに3Dモデルから抽出されるファイルに基づいて建物の概算の費用、工事工期を算出し、それらの結果をユーザ端末102で表示することができる。
これにより、対象の敷地にどのような建物を建設できるか検討するために専門家に建物の設計を依頼する必要がなく、また、設計に要する時間や費用の発生を抑えることができ、営業担当者から顧客への情報提供や提案を迅速に行うことができる。
【0106】
また、半自動設計の仕組みを取り入れたことにより、以下のような利用形態にも供することができる。
すなわち、個別の敷地形状等の事情から、自動設計だけでは対応しきれないと営業担当者が判断した場合、もしくは、顧客要望を反映したい場合には、半自動設計を依頼することで、専門家の人的判断を自動設計の結果に対して反映させることができる。これにより、特異な敷地形状を持つ建設計画地であっても、事業化へのインセンティブを十分に満たした建物モデルを生成させることができ、また、顧客要望の建築計画を優先した建物モデルを生成させることができるので、営業担当者から顧客へ提供する情報の完成度を高めることができる。
【0107】
また、本実施形態の建設計画システム100によれば、以下のような有用性が得られる。
(1)ユーザ端末102,104では敷地情報及び建設情報の入力を受け付けるだけで、後はこれらの情報をサーバ装置110に提供し、建物モデルのボリューム生成や建物モデルの生成をリモート処理で実行させているため、処理負荷を分散することができる。
(2)自動設計や法規制チェックの中核部分を外部の専用プログラム(例えば、Revit、ADS-BT)に委ねており、建設計画システム100はこれら外部プログラムに対するAPIとして動作しているだけであるため、建設計画システム100が得られる建物モデルの汎用性が高い。
(3)専用プログラムによって生成された建物モデルは、3Dデータとして取り出すことで他のアプリケーションへの転用が容易であり、コスト算出モジュール140や工程表作成モジュール150への展開もスムーズに行うことができる。
(4)また、取り出した建物モデルの3次元データを中間ファイルとして出力し、その他のプログラムによる用途(環境シミュレーション、コンピュータグラフィック作成、動画編集等)にも転用することができる。
【0108】
(5)また、サーバ装置110内の各種モジュール(建物ボリューム生成モジュール132、法規制確認モジュール134、コスト算出モジュール140、工程表作成モジュール150)は適宜アップデートやモディファイされることで、建設計画システム100で出力する情報の内容を自由にカスタマイズすることができる。
(6)敷地形状を手書きデータからも入力可能であるため、実際の営業の現場で紙ベースの敷地情報が用意できない場合であっても、これを画像データに変換して建設計画システム100を稼働させることができる。これにより、迅速性や利便性をさらに向上することができる。
【0109】
(7)外部機関160との連携により、建設計画地に適用される集団規定情報の他に、建設計画地を管轄する自治体の定める条例を取得可能であるため、これらの情報をサーバ装置110に提供し、集団規定情報及び条例に基づく建設条件に適合した建物モデルを生成させることができる。これにより、集団規定情報以外にも自治体の緑化条例・駐車場条例といったその他一部の条例を総合的に考慮することが可能となり、生成される建物モデルの実用性をさらに高めることができる。
【0110】
(8)建物モデルは、当初には単なる立方体データである単位ブロックの集積体により生成されるため、単位ブロックを積み上げていく段階では特に個々の単位ブロックの用途が決められておらず、単位ブロックを集積させた後に、単位ブロックに柱、壁等といった建物モデルとしての属性を付与していき、そこから柱、壁に囲われた空間に「倉庫」や「事務室」等の部屋の属性を付与していくことができる。したがって、予め所定の用途が与えられたユニットを組み合わせて3Dモデルを生成していく態様に比較して、建物モデル内部の間口や奥行きをより自由に設定することができ、それらの寸法調整を容易に行うことができる。
(9)さらには、建物モデルの1フロア内において、所定間隔で柱としての属性が付与される配置の単位ブロックがあるとき、単位ブロックの寸法は、4本の柱に囲まれた1区画の面積が125m未満となる条件を満たすように決定される。このため、実際に建設を計画する建物(例えば、物流倉庫)に対して構造上の制約があり、防火区画が1500m以下(=12×125m)であるように定められている場合でも、その条件を満たすように単位ブロックの寸法が決定されれば、容易に構造上の制約に適合させた建物モデルを生成させることができる。
【0111】
(10)建設計画システム100において半自動設計を依頼することにより、敷地面積から建物面積を自動で抽出しつつ、専門家等の人的判断による建物面積の修正、ランプの位置及び連絡道路、パースの位置等をカスタマイズすることができる。さらに、ユーザが駐車場スペースを設定すると、トラック、乗用車の最適なスペースが自動で設定される。また、敷地内を好適にトラックが通行できるように、センターライン、道路幅が自動で最小値として設定される。ユーザは、最小値以上の道路幅を自由に設定することができる。
【0112】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
一実施形態では、建設計画システム100を分散処理型の構成としているが、サーバ装置110の機能をユーザ端末102,104に全て組み込んだ構成としてもよい。この場合、建設計画システム100は、敷地情報及び建設情報をサーバ装置110(外部コンピュータ)に提供するのではなく、ユーザ端末102,104に実装された専用プログラムに提供することで、同様の処理を通じて自動設計の結果や概算コスト、工程表等の結果を得ることができる。
【0113】
サーバ装置110は、インターネット等のネットワーク105(クラウド)上に置かれていてもよい。あるいは逆に、サーバ装置110がユーザ端末102,104と同一拠点に置かれていてもよい。
【0114】
ユーザ端末102,104には、サーバ装置110から提供された建物モデルの3Dデータをアニメーション表示する機能が実装されていてもよい。この場合、自動設計された建物の外観だけでなく、建物の内部に視点カメラを移動させていくことで、建設される予定の建物を擬似的に内覧することもできる。
【0115】
一実施形態では、建物モデルとして物流倉庫を想定していたが、本発明はどのようなタイプの建物にも適用することができる。したがって、オフィスビル、集合住宅、立体駐車場等の建設を計画する場合にも本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0116】
100 建設計画システム
102,104 ユーザ端末
105,106 ネットワーク
110 サーバ装置
120 制御モジュール部
130 BIM実行部
160 外部機関
170 外部人員
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