(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072967
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】漏水検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/16 20060101AFI20230518BHJP
G01M 3/18 20060101ALI20230518BHJP
F17D 5/06 20060101ALI20230518BHJP
E01C 11/26 20060101ALI20230518BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G01M3/16 M
G01M3/18
F17D5/06
E01C11/26 B
G01V3/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185731
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241902
【氏名又は名称】北海道瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521500708
【氏名又は名称】越前屋試錐工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156362
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 健一
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】松井 昭
【テーマコード(参考)】
2D051
2G067
2G105
3J071
【Fターム(参考)】
2D051GB07
2D051GC04
2G067AA13
2G067BB26
2G067CC02
2G067DD27
2G067EE06
2G067EE08
2G067EE11
2G105AA02
2G105BB14
2G105CC01
2G105DD04
2G105EE02
2G105GG03
2G105LL01
3J071EE06
3J071EE16
3J071EE21
3J071EE33
3J071EE38
3J071FF16
(57)【要約】
【課題】管路廻りの地中の環境に左右されず、地中に埋設された管路の漏水箇所を精度良く特定することが可能な漏水検査方法の提供。
【解決手段】本発明に係る漏水検査方法は、アンテナ装置を管路に沿った探査経路上で移動させて第1の画像データを時系列的に取得すると共に、当該第1の画像データを記憶部に記憶させる第1画像データ取得工程S100と、管路内の圧力を上昇させる加圧工程S200と、加圧工程S200を行った後、アンテナ装置を探査経路上で移動させて第2の画像データを時系列的に取得すると共に、当該第2の画像データを記憶部に記憶させる第2画像データ取得工程S300と、記憶部に記憶される第1の画像データと第2の画像データとを時系列に沿って比較して管路の漏水位置を特定する漏水位置特定工程S400とを含んでいる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中探査装置を用いて地中に埋設された管路の漏水を検査する漏水検査方法であって、
前記地中探査装置は、
探査方向と交叉する交叉方向に沿って複数設けられ、電磁波を前記管路に向けて周波数を可変しながら発信する送信アンテナと、前記送信アンテナに対応して前記交叉方向に沿って複数設けられ、前記管路を含む地中から反射された前記電磁波の反射波を受信する受信アンテナとを有するアンテナ手段と、
前記受信アンテナから送信される反射波信号に基づいて3次元の画像データを生成する制御手段と、
前記画像データを記憶する記憶手段と、
を備え、
前記漏水検査方法は、
前記アンテナ手段を前記管路に沿った探査経路上で移動させて第1の前記画像データを時系列的に取得すると共に、当該第1の画像データを前記記憶手段に記憶させる第1画像データ取得工程と、
前記管路内の圧力を上昇させる加圧工程と、
前記加圧工程を行った後、前記アンテナ手段を前記探査経路上で移動させて第2の前記画像データを時系列的に取得すると共に、当該第2の画像データを前記記憶手段に記憶させる第2画像データ取得工程と、
前記記憶手段に記憶される前記第1の画像データと前記第2の画像データとを時系列に沿って比較して前記管路の漏水位置を特定する漏水位置特定工程と、
を含む、漏水検査方法。
【請求項2】
前記管路は、蛇行状に敷設されたロードヒーティング用の配管である、請求項1に記載の漏水検査方法。
【請求項3】
前記地中探査装置は、前記アンテナ手段の位置を検出する位置検出手段を更に備え、
前記記憶手段は、前記位置検出手段により検出された前記アンテナ手段の位置を示す位置データを前記第1画像データ及び前記第2画像データに紐付けて記憶し、
前記漏水位置特定工程は、前記記憶手段に記憶される前記位置データに基づいて前記漏水位置を特定する工程を含む、請求項1又は2に記載の漏水検査方法。
【請求項4】
前記位置検出手段は、GPS衛星を利用して前記アンテナ手段の緯度及び経度を検出する、請求項3に記載の漏水検査方法。
【請求項5】
前記漏水検査方法は、前記管路が埋設される埋設場所が表された図面に前記漏水位置を付記する図面作成工程を更に含む、請求項1~4の何れか1項に記載の漏水検査方法。
【請求項6】
前記アンテナ手段は、車両に搭載されている、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の漏水検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏水検査方法に関し、特に、地中に埋設された管路の漏水を検査する漏水検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、寒冷地方においては、車道等の道路に積もる雪を融雪したり、道路の凍結を防止する技術として、不凍液等の温水を流通(循環供給)させる管路(以下、「ロードヒーティング用配管」と称す)を地中に埋設して、路面を温める温水式のロードヒーティングシステムが知られている。
【0003】
ところで、このようなロードヒーティング用配管は、車両が走行した際に生じる振動や経年劣化等が原因で、管壁や接手部等が損傷し、その損傷した箇所から不凍液等の液体が漏れるケースがしばしばある。
【0004】
一般に、ロードヒーティング用配管は、路面への雪の堆積や路面の凍結を有効に防止する観点から、道路全体に亘って、一定の狭い間隔(例えば「20cm」)で平行かつ蛇行状に敷設されている。すなわち、水圧試験等を行った結果、ロードヒーティング用配管の管路中で漏水していることが判明した場合、その位置を路面上から特定することは事実上不可能なため、結局は、道路を通行止めにするなどして、道路全体を掘り起こす必要があった。斯かる場合、修理に要する工事が大掛かりになるばかりか、道路を利用する利用者に多大な迷惑を掛ける、といった問題が生じる。
【0005】
そこで、地面を掘り起こすことなく、地中に埋設された管路の漏水位置を特定することが可能な技術が各種提案されている。このような技術として、例えば、特許文献1に記載の漏水箇所検出装置がある。
【0006】
特許文献1に記載の漏水箇所検出装置は、超音波パルスを管路が埋設された地中へ向けて発信する超音波発信源と、超音波エコー信号(反射波)を受信する超音波センサと、超音波エコー信号の周波数スペクトルに関する値(例えば、中心周波数)を算出し、この算出結果と予め定めた閾値とを比較して地中に埋設された管路の異常箇所(漏水箇所)の有無を判定する信号処理部とを備えたものである。このような技術によれば、地面を掘り起こすことなく、地中に埋設された管路の漏水位置を特定することが可能なため、掘削範囲を最小限に抑えつつ、漏水箇所の修理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
具体的に、特許文献1に記載の漏水箇所検出装置は、管路の漏水箇所の有無の判定は、超音波エコー信号の周波数スペクトルに関する値(例えば、中心周波数)と、予め定めた閾値との大小関係の判定結果に基づいて行うように構成される。この閾値は、管路の漏水箇所の周囲(例えば、水分を含む地質の地中)から反射された超音波エコー信号の周波数スペクトルに関する統計データと、それ以外の地中(例えば、乾燥した地質の地中)から反射された超音波エコー信号の周波数スペクトルに関する統計データとに基づいて求められるようになっている。
【0009】
換言すれば、特許文献1に記載の漏水箇所検出装置は、例えば、水分量の比較的多い地中を介した超音波エコー信号を受信した場合、管路に漏水箇所が存在すると判定する一方、水分量が比較的少ない地中を介した超音波エコー信号を受信した場合、管路に漏水箇所が存在しないと判定するように構成されたものといえる。
【0010】
ところで、このような管路は、埋設される地域(例えば、寒冷地)や場所(例えば、国道や私道)、管種(例えば、樹脂管や鋼管)、及びその用途(例えば、ロードヒーティング)等に応じて、多種多様な材料(例えば、土砂やセメント)が適宜選択されて埋め戻されることが少なくない。また、管路が埋設される地中においては、例えば、水捌けが良く乾燥し易い地質や、水捌けが悪く常に水分量が多い地質が存在し、その種類も様々である。
【0011】
すなわち、地中に埋設される管路廻りの環境は、そこに敷き詰められる材料や地質に応じて変化することが一般的であるため、特許文献1に記載のように、管路の漏水箇所の有無の判定に用いる閾値を、予め一義的に定めておくことは極めて困難である。この点、特許文献1に記載の漏水箇所検出装置は、管路廻りの地中の環境によっては、管路の漏水箇所の有無について誤った判定を行う虞があるものといえる。
【0012】
特に、特許文献1に記載の漏水箇所検出装置では、道路全体に敷き詰められるロードヒーティング用配管について漏水検査を行った場合、管路廻りの地中の環境によっては、広範囲に亘って漏水箇所が存在しているかのような判定がなされる虞が多分にあり、斯かる場合、漏水位置を特定することができないといった問題が生じる。
【0013】
このように、特許文献1に記載の漏水箇所検出装置は、管路の漏水位置を精度良く特定しているとは言い難く、未だ改善の余地があるものといえる。
【0014】
本発明は、このような課題を解消するためになされたものであり、管路廻りの地中の環境に左右されず、地中に埋設された管路の漏水位置を精度よく特定することが可能な漏水検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、本発明にかかる漏水検査方法によれば、地中探査装置を用いて地中に埋設された管路の漏水を検査する漏水検査方法であって、前記地中探査装置は、探査方向と交叉する交叉方向に沿って複数設けられ、電磁波を前記管路に向けて周波数を可変しながら発信する送信アンテナと、前記送信アンテナに対応して前記交叉方向に沿って複数設けられ、前記管路を含む地中から反射された前記電磁波の反射波を受信する受信アンテナとを有するアンテナ手段と、前記受信アンテナから送信される反射波信号に基づいて3次元の画像データを生成する制御手段と、前記画像データを記憶する記憶手段と、を備え、前記漏水検査方法は、前記アンテナ手段を前記管路に沿った探査経路上で移動させて第1の前記画像データを時系列的に取得すると共に、当該第1の画像データを前記記憶手段に記憶させる第1画像データ取得工程と、前記管路内の圧力を上昇させる加圧工程と、前記加圧工程を行った後、前記アンテナ手段を前記探査経路上で移動させて第2の前記画像データを時系列的に取得すると共に、当該第2の画像データを前記記憶手段に記憶させる第2画像データ取得工程と、前記記憶手段に記憶される前記第1の画像データと前記第2の画像データとを時系列に沿って比較して前記管路の漏水位置を特定する漏水位置特定工程と、を含む、ことにより解決される。
【0016】
なお、上記漏水検査方法に係る発明においては、前記管路は、蛇行状に敷設されたロードヒーティング用の配管である、と好適である。
【0017】
また、上記漏水検査方法に係る発明においては、前記地中探査装置は、前記アンテナ手段の位置を検出する位置検出手段を更に備え、前記記憶手段は、前記位置検出手段により検出された前記アンテナ手段の位置を示す位置データを前記第1画像データ及び前記第2画像データに紐付けて記憶し、前記漏水位置特定工程は、前記記憶手段に記憶される前記位置データに基づいて前記漏水位置を特定する工程を含む、と好適である。
【0018】
さらに、上記漏水検査方法に係る発明においては、前記位置検出手段は、GPS衛星を利用して前記アンテナ手段の緯度及び経度を検出する、と好適である。
【0019】
また、上記漏水検査方法に係る発明においては、前記漏水検査方法は、前記管路が埋設される埋設場所が表された図面に前記漏水位置を付記する図面作成工程を更に含む、と好適である。
【0020】
さらに、上記漏水検査方法に係る発明においては、前記アンテナ手段は、車両に搭載されている、と好適である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る漏水検査方法によれば、比較的簡易な構成でありながらも、管路廻りの地中の環境に左右されず、地中に埋設された管路の漏水位置を精度良く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る地中探査装置の概要を説明するための概略図である。
【
図3】地中探査装置による地中探査の概要を説明するための説明図である。
【
図4】地中探査装置を構成するアンテナ装置の配列構造を模式的に示した平面模式図である。
【
図5】地中探査装置(3次元地中レーダ)の原理を説明するためのグラフである。
【
図6】地中に浸透した道路用不凍液、家庭用不凍液及び水道水の時間経過に伴う水分残存率の遷移を示すグラフである。
【
図7】ロードヒーティング用配管が埋設される地中の一例を示す断面図である。
【
図8】本実施形態に係る漏水検査方法の内容を示すフローチャートである。
【
図9】漏水検査を行った検査場所の一例を示す地図である。
【
図10】
図9の検査場所で第1画像データ取得工程を行うことにより取得された画像の一例を示す画像図である。
【
図11】
図9の検査場所で第2画像データ取得工程を行うことにより取得された画像の一例を示す画像図である。
【
図13】
図12の検査場所で漏水検査を行うことにより取得された画像の一例を示す画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る地中探査装置の概要を説明するための概略図、
図2は
図1の地中探査装置のブロック図、
図3は地中探査装置による地中探査の概要を説明するための説明図、
図4は地中探査装置を構成するアンテナ装置の配列構造を模式的に示した平面模式図、
図5は地中探査装置(3次元地中レーダ)の原理を説明するためのグラフ、
図6は地中に浸透した道路用不凍液、家庭用不凍液及び水道水の時間経過に伴う水分残存率の遷移を示すグラフ、
図7はロードヒーティング用配管が埋設される地中の一例を示す断面図、
図8は本実施形態に係る漏水検査方法の内容を示すフローチャートである。
【0024】
図1は、本実施形態に係る地中探査装置1を用いて、地中に埋設される管路P(本実施形態では、ロードヒーティング用配管、
図7及び
図9参照)の漏水検査を行っている様子を示したものである。なお、上記「地中探査装置1」と、「管路P」とが、それぞれ特許請求の範囲に記載の地中探査装置と、管路とに該当する。
【0025】
(地中探査装置1の構成)
本実施形態に係る地中探査装置1について
図1~
図5を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に示すように、地中探査装置1は、電磁波を利用して路面下(地中)の3次元情報を生成する、所謂3次元地中レーダであり、アンテナ装置10と、制御装置20とを備えている。詳しくは後述するが、本実施形態に係る地中探査装置1は、電磁波を地中に埋設された管路P(
図7及び
図9参照)に向けて発信することで、道路を掘り起こすことなく、管路Pの漏水位置を特定することができるように構成されている。
【0026】
(アンテナ装置10の構成)
先ず、地中探査装置1を構成するアンテナ装置10について説明する。
図1~
図3に示すように、アンテナ装置10は、車両Cに取り付けられる本体部11と、本体部11に内蔵される送受信部12と、本体部11に取り付けられるGPSアンテナ15(GPS:Global Positioning System)とを有している。なお、上記「車両C」と、「送受信部12」と、「GPSアンテナ15」とが、それぞれ特許請求の範囲に記載の車両と、アンテナ手段と、位置検出手段とに該当する。
【0027】
(本体部11)
本体部11は、断面L字形状を有し、上方に開口する向きで、支持金物を介して車両Cの後部に取り付けられる。本体部11は、例えば、硬質な樹脂からなり、車両Cに取り付けた状態で、車両Cの移動方向と交叉する交叉方向に延設されると共に、地面から所定間隔(例えば「20cm」)を空けた高さ位置に配置される。車両Cは、道路(例えば、
図7の「道路30」)を走行可能な車両であり、ライトバンやトラックなどの燃焼機関や電動機等を駆動源とする自動車により構成される。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、車両Cが移動する方向(原則、前進する方向)を「探査方向」と称することとする。
【0028】
以下においては、駆動源を有する車両Cにアンテナ装置10を取り付けた場合を例にとって説明するが、車両Cに代えて、例えば、人力で移動可能な台車や自転車などであってもよい。また、本実施形態では、本体部11を、地面から所定間隔を空けた高さ位置に配置したが、例えば、低速で移動可能な台車に取り付けた場合にあっては、地面に接するように配置することも可能である。
【0029】
(送受信部12)
送受信部12は、複数(
図4に示す例では「13個」)の送信アンテナ13と、複数(
図4に示す例では「13個」)の受信アンテナ14とを有し、送信アンテナ13及び受信アンテナ14は、それぞれ本体部11の延設方向に並設して対向配置されている(
図4参照)。送信アンテナ13及び受信アンテナ14の配列構造については後述する。なお、上記「送信アンテナ13」と、「受信アンテナ14」とが、それぞれ特許請求の範囲に記載の送信アンテナと、受信アンテナとに該当する。
【0030】
送信アンテナ13は、所定周波数の電磁波を、地中に向けて発信する装置である。送信アンテナ13それ自体は、既に公知であるため、詳しい説明を省略するが、本実施形態においても、振動子を所定周波数で振動させることで、電磁波が外部に発信される構成となっている。詳しくは後述するが、送信アンテナ13は、制御装置20(周波数可変部23)による制御により、周波数を段階的に高めながら、電磁波が発信されるように構成されている(
図5(a)左図参照)。
【0031】
受信アンテナ14は、送信アンテナ13から発信された電磁波の反射波(地中からの反射波)を受信する装置である。受信アンテナ14それ自体は、送信アンテナ13と同様、既に公知であるため、詳しい説明を省略するが、本実施形態においても、地中から反射された反射波を受信すると、電気信号(以下、「反射波信号」と称す)を生成し、この反射波信号を外部(本実施形態では「制御装置20」)に送信する構成となっている。なお、上記「反射波信号」が特許請求の範囲に記載の反射波信号に該当する。
【0032】
ここで、送信アンテナ13及び受信アンテナ14の配列構造について
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る送信アンテナ13及び受信アンテナ14は、それぞれ設置個数が同数であり、一定の間隔tを空けてジグザグ状に対向配置されている。本実施形態では、このような配列構造において、原則、1個の送信アンテナ13に対して、2個の受信アンテナ14で反射波を受信する構成となっている。例えば、送信アンテナ13及び受信アンテナ14の設置個数が、共に「13個」である場合(
図4の場合)、アンテナ装置10(車両C)を探査方向に移動させることで、探査方向(縦断面方向)に「25断面」の画像データ(縦断面画像、横断面画像及び水平断面画像の各画像データ)を取得することができるようになっている(
図4の「channel」参照)。
【0033】
このような配列構造によれば、例えば、(a)送信アンテナ13及び受信アンテナ14の設置個数が共に「13個」、(b)「間隔t:150mm」(「間隔t/2:75mm」)である場合、(c)アンテナ装置10を位置P1から位置P2に移動させると、横断面方向に「75mm」の間隔で、長さ「(位置P2-位置P1)」の「縦断面画像」(及び「水平断面画像」)の画像データを、「25断面」分、同時に取得することが可能である。この場合、受信アンテナ14の反射波を受信するタイミングが、例えば、(d)縦断面方向に「30mm」の間隔であったとすると、「横断面画像」の画像データを、(「位置P2」-「位置P1」)/「30mm」の断面×「25断面」の数分、取得することができるようになっている。
【0034】
(GPSアンテナ15)
次に、GPSアンテナ15について
図1~
図3を参照しつつ説明する。
図1~
図3に示すように、GPSアンテナ15は、本体部11に対して、上面から突出するように取り付けられている。GPSアンテナ15それ自体は、既に公知であるため、詳しい説明を省略するが、本実施形態においても、GPS衛星Sから送信される電波を受信して電気信号に変換し、この電気信号(以下、「GPS信号」と称す)を外部(本実施形態では、制御装置20)に送信する構成となっている。詳しくは後述するが、制御装置20は、GPS信号を受信すると、この信号に基づいて、アンテナ装置10の位置(緯度及び経度)を測位すると共に、この測位したデータ(以下、「位置データ」と称す)を、上記した「縦断面画像」等の各画像データに紐付けて記憶部27に記憶させる制御を行う。これにより、「縦断面画像」等の画像の画像データが、実際にどの位置で取得されたものであるのかを、事後的に特定することが可能になる。なお、上記「GPS衛星S」が特許請求の範囲に記載のGPS衛星に該当する。
【0035】
なお、アンテナ装置10の位置を検出する手法としては、上記したGPS衛星Sを利用した手法に加えて、又はこれに代えて、距離センサ16(
図2及び
図3参照)を用いた手法を採用することができる。このような距離センサ16としては、例えば、アンテナ装置10の移動に伴って路面に接触しながら回転し、この回転を読み取るようなホイール型のセンサを用いることが可能である。この場合、例えば、ユーザーが適宜設定した位置(例えば、地中探査を開始した位置や、マンホール(
図9の「マンホールMH1」等参照))からの距離を計測すると共に、この計測した位置データを「縦断面画像」等の各画像データに紐付けて記憶部27に記憶させればよい。これにより、GPS衛星Sを利用した場合と同様に、「縦断面画像」等の画像が、実際にどの位置で取得されたものであるのかを、事後的に特定することが可能になる。なお、上記「距離センサ16」が特許請求の範囲に記載の位置検出手段に該当する。
【0036】
(制御装置20の構成)
次に、地中探査装置1を構成する制御装置20について
図2、
図4及び
図5を参照しつつ説明する。
図2に示すように、制御装置20は、車両C(
図1参照)の車内等に配置され、中央処理部22(CPU:Central Processing Unit)及び記憶部27を有する制御部21と、通信部28とを備えている。なお、上記「中央処理部22」と、「記憶部27」とが、それぞれ特許請求の範囲に記載の制御手段及び位置検出手段と、記憶手段とに該当する。
【0037】
(中央処理部22)
中央処理部22は、記憶部27に記憶された各種プログラムを読み込み、所定の演算処理を行って、各種制御を実行する装置であり、周波数可変部23と、算出部24と、画像生成部25と、位置検出部26とを有している。
【0038】
(周波数可変部23)
図2及び
図5に示すように、周波数可変部23は、送信アンテナ13から発信される電磁波の周波数を可変する制御を行う。具体的に、周波数可変部23は、送信アンテナ13から発信される電磁波の周波数を、例えば、200MHz、220MHz、・・・、3,000MHzといった順で段階的に高めていく制御を実行する(
図5(a)左図参照)。なお、周波数可変部23は、送信アンテナ13から発信される、各周波数の電磁波の発信時間(Dwel Time)を、予め定めた時間(例えば「0.6~10μsec」)にするための制御も行う。
【0039】
(算出部24)
算出部24は、受信アンテナ14から送信された反射波信号に基づいて、所定の波形データを求める処理を行う。
【0040】
ここで、本実施形態に係る地中探査装置1(3次元地中レーダ)の原理について
図5を参照しつつ説明する。
図5(a)左図は、送信アンテナ13から発信される電磁波の周波数の推移を示したグラフ、
図5(a)右図は、受信アンテナ14から出力される反射波信号の内容を示すグラフである。
【0041】
図2及び
図5(a)左図に示すように、送信アンテナ13は、周波数可変部25からの指令信号に従って、周波数を段階的に高めながら、電磁波を発信するように構成される。受信アンテナ14では、電磁波の反射波を受信すると、反射波信号を中央処理部22に送信し、中央処理部22では、周波数毎に、反射波信号から位相及び振幅等を検出する構成となっている。なお、
図5(a)右図に示すグラフは、中央処理部22で検出した検出データ(周波数領域のデータ)の内容を示したものである。
【0042】
中央処理部22は、
図5(a)右図に示す検出データ(周波数領域のデータ)に基づいて、時間領域の波形データ(時間領域のデータ)を算出する処理(フーリエ逆変換処理)を行う。これにより、パルス式の地中レーダ(汎用の地中レーダ)で地中探査を行った際に得られる反射波の波形データ(時間領域のデータ)と同等なデータを取得することが可能になる。なお、本実施形態では、時間領域の波形データを算出する処理(フーリエ逆変換処理)を、算出部24で行うように構成されている。
【0043】
図5(b)は、地中探査装置1によりカバーされる周波数帯域の内容を示すグラフである。なお、図中の点線(凸条の湾曲線)は、パルス式の地中レーダによりカバーされる周波数帯域の内容を示している。
図2及び
図5(b)に示すように、本実施形態に係る地中探査装置1では、1台のアンテナ装置10で、広範囲の周波数帯域(例えば、200MHz~3,000MHzの範囲)を隈なくカバーすることができるように構成される。一方、パルス式の地中レーダでは、周波数の異なるパルスレーダアンテナを用いることによって初めて、広範囲の周波数帯域をカバーすることができるようになっている。
【0044】
ここで、一般的なパルス式の地中レーダの特性について説明すると、パルス式の地中レーダは、高周波の電磁波(例えば、2,000MHz)であれば、高解像度であるものの、探査深度が得られず、低周波の電磁波(例えば、200MHz)であれば、探査深度は得られるものの、低解像度になる、といった特性を有するものである。
【0045】
すなわち、パルス式の地中レーダでは、探査深度を得つつ、高解像度のデータを取得するため、周波数の異なるパルスレーダアンテナを複数用いる(地中探査を複数行う)必要があるが、地中探査装置1では、1台のアンテナ装置10だけで(1回の地中探査だけで)、広範囲の周波数帯域を十分にカバーすることが可能である。
【0046】
(画像生成部25)
次に、画像生成部25について
図2~
図4を参照しつつ説明する。
図2及び
図3に示すように、画像生成部25は、複数の送信アンテナ13から送信された反射波信号に基づいて、3次元的な画像データを生成する処理を行う。具体的に、画像生成部25は、反射波信号に基づいて、地中の縦断面画像(
図11(a)の左上図等参照)、水平断面画像(
図11(a)の下図等参照)及び横断面画像(
図11(a)の右上図等参照)の各画像データ(特許請求の範囲に記載の3次元の画像データに該当)を生成する制御を実行する。本実施形態では、画像生成部25によって、縦断面画像、水平断面画像及び横断面画像の各画像データが生成されると、逐一、生成された画像データが記憶部27に記憶されるように構成される。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、縦断面画像、水平断面画像及び横断面画像を特に区別する必要がない場合、これら画像を「複数断面画像」と総称し、これら画像の各画像データを「複数断面画像データ」と総称することとする。
【0047】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、送信アンテナ13及び受信アンテナ14の配列構造により、例えば、横断面方向において、例えば「75mm」の間隔(
図4の「t/2」の間隔)で「25断面」分の複数断面画像データを取得することができるように構成される(
図4の「channel」参照)。また、本実施形態に係る地中探査装置1では、縦断面方向において、車両Cの走行速度等に応じて変化するが、例えば「30mm」の間隔で各種画像の画像データを取得することが可能である。
【0048】
このように、本実施形態では、アンテナ装置10を探査方向に移動(車両C(
図1参照)を走行)させることで、例えば「30mm×75mm」のグリッドG毎に複数断面画像データを取得することができるようになっている。なお、深度方向の画像データは、地中に向けて発信される電磁波の周波数に応じて変化するが、例えば、送信アンテナ13により発信される電磁波の周波数が「200MHz~3,000MHz」であれば、少なくとも、探査深度「0m~1.0m」の範囲において、高解像度の画像データを十分に取得することが可能である(
図10等参照)。
【0049】
(位置検出部26)
次に、位置検出部26について説明する。
図2及び
図3に示すように、位置検出部26は、GPSアンテナ15から送信されるGPS信号に基づいてアンテナ装置10の位置を検出する処理を行う。GPS衛星Sを利用した測位方法(測位制御)は、既に公知であるため、詳しい説明を省略するが、本実施形態においても、GPS衛星Sからの電波を受信したGPSアンテナ15からのGPS信号に基づいて、所定の演算処理を行ってアンテナ装置10の緯度及び経度を測位するように構成される。本実施形態では、位置検出部26によってアンテナ装置10の位置が検出されると、その位置を示す位置データが、画像生成部25により生成された複数断面画像データに紐付けて、逐一、記憶部27に記憶されるようになっている。
【0050】
なお、位置検出部26は、GPSアンテナ15に加えて、距離センサ16を設けた場合、GPS信号と同様に、距離センサ16から送信される距離情報に基づいて距離を算出(計測)すればよい。この距離は、ユーザーが適宜設定した基準位置(例えば、マンホール(
図9の「マンホールMH1」等参照)や、地中探査を開始した位置)から所定方向(探査方向)に移動した距離に相当するため、これを求めることで、アンテナ装置10の位置を事後的に特定することが可能である。すなわち、アンテナ装置10に、GPSアンテナ15に加えて、距離センサ16を設けた場合、緯度及び経度に関する情報、及び距離情報の各情報に基づいて、アンテナ装置10の位置を特定することができるため、その位置精度を格段に向上させることが可能になる。
【0051】
(記憶部27)
次に、制御部21を構成する記憶部27について
図2を参照しつつ説明する。
図2に示すように、記憶部27は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリーからなり、(a)地中探査装置10の基本動作を司る基本動作プログラムの他、(b)画像生成部25により生成された複数断面画像データ、及び(c)位置検出部26により検出された位置データ等の各種情報を記憶する装置である。上記したように、複数断面画像データ、及びアンテナ装置10の位置を示す位置データは、互いに紐付けられた状態で、記憶部27に記憶される。
【0052】
(通信部28)
制御装置20を構成する通信部28は、外部端末ET等の通信機器と通信することが可能なインターフェイスである。
【0053】
(外部端末ET)
外部端末ETは、例えば、ディスプレイ等の表示装置が設けられた汎用のコンピュータ(PC:Personal Computer)からなり、制御装置28の通信部28に接続(有線又は無線接続)することで、記憶部27に記憶される各種データを取り込んで、これを表示装置に表示させることができるように構成される。このため、ユーザーは、地中探査を行うことにより取得した複数断面画像を、外部端末ETの表示装置に表示して、事後的に、管路P(
図7及び
図9参照)が埋設される地中の状態を精査することが可能になっている。
【0054】
本実施形態に係る外部端末ETには、グリッドG(
図3参照)毎に取得された各複数断面画像を繋ぎわせて、1つの連続した断面画像を生成する公知のプログラムが記憶されている。すなわち、本実施形態では、
図10、
図11及び
図13に示すような連続した断面画像(縦断面画像等)を外部端末ETの表示装置に表示することができるので、ユーザーは、この画像を視ることで、漏水の可能性を示す不規則に乱れた波形(例えば、
図10(a)の波形W1参照)等を容易に確認することが可能である。
【0055】
また、上記した連続する断面画像には、ユーザーが適宜設定した基準位置(例えば、地中探査を開始した位置)からの距離(例えば、
図10(a)上図(縦断面画像)の「Distance」)が付記されるようになっている。なお、この距離は、複数断面画像データに紐付いて記憶される位置データ(緯度及び経度等)に基づいて算出されたものである。このため、ユーザーは、複数断面画像中に漏水の可能性を示す不規則に乱れた波形(例えば、
図10(a)の「波形W1a」)等があった場合、断面画像に付記された距離を確認することで、それが実際にどの位置であるのかを特定することが可能である。
【0056】
また、複数断面画像データに紐付いて記憶される位置データは、緯度及び経度の情報を含んでいるため、ユーザーは、漏水の可能性を示す不規則に乱れた波形を見つけた場合、その位置を、例えば、地図データに付記(マージ)することが可能である。なお、このような地図データとしては、汎用のウェブマッピングプログラム(例えば、Google(登録商標)社がインターネット上で提供するGoogle Maps)等の地図データを用いることができる。漏水位置を図面データに付記する工程(
図8の「図面作成工程S500」)については後述する。
【0057】
(管路Pの構成)
ここで、本実施形態の検査対象である管路Pと、管路Pが埋設される道路30の構造について説明する。
先ず、管路Pについて
図7及び
図9を参照しつつ説明する。
図7及び
図9に示すように、管路Pは、架橋ポリエチレン等の樹脂からなり、温められた液体を循環供給するロードヒーティング用の配管である。管路P内を流通する液体については後述する。本実施形態に係る管路Pは、路面(本実施形態では、車両Cが走行可能な車道の路面)を均一に加熱するため、道路全体に亘って、一定の間隔(例えば、20cm)を空けて平行かつ蛇行状に敷設される。なお、以下においては、管路Pが埋設される場所として、車道を例にとって説明するが、車道以外の道路(例えば、歩道)や、その他の場所(例えば、住宅の玄関先や駐車場)であってもよい。
【0058】
本実施形態では、管路P内を循環する液体として、プロピレングリコール(propylene glycol)を主成分とする不凍液(道路用のロードヒーティングシステムにおいて広く使用される不凍液、以下、「道路用不凍液」と称す)が用いられる。このような道路用不凍液は、所定条件が成立した場合、例えば、(a)外気温度が「2℃」以下であること、(b)降雪センサが「ON」であること、(c)路盤温度が「10℃」以下であること、といった条件を全て満たしたとき、所定の加熱設備(例えば、ヒートポンプ)により加熱されるようになっている。これにより、道路30の路面が内側から温められるため、その結果、路面への雪の堆積や路面の凍結を防止することが可能になっている。
【0059】
ここで、道路用不凍液が地中に浸透したときの状態変化(道路用不凍液の特性)について説明する。なお、以下においては、地中における道路用不凍液の状態変化について理解を容易にするため、「(1)道路用不凍液」と、比較例としての「(2)エチレングリコール(ethylene glycol)を主成分とする不凍液」及び「(3)水道水」とを比較した試験結果に基づいて説明する。
【0060】
本試験では、「(1)道路用不凍液」~「(3)水道水」の各液体を地中(例えば、
図7参照))に浸透させた後、時間経過に伴う各液体の「(a)地中への浸透度合い(浸透性)」及び「(b)地中からの揮発度合い(揮発性)」について検証を行った。また、この試験では、「(3)水道水」の試験結果を基準として、「(1)道路用不凍液」及び「(2)エチレングリコールを主成分とする不凍液」の「(a)浸透性」及び「(b)揮発性」について、それぞれ評価するようにした。なお、「(2)エチレングリコールを主成分とする不凍液」は、住宅の屋外(例えば、玄関や駐車場)等の家庭用のロードヒーティングシステムにおいて広く使用される不凍液(以下、「家庭用不凍液」と称す)である。
【0061】
先ず、「(1)道路用不凍液」及び「(3)水道水」を比較したときの試験結果について説明する。
「(1)道路用不凍液」及び「(3)水道水」の「(a)浸透性」についての試験では、「(3)水道水」の方が「(1)道路用不凍液」よりも浸透しやすい、という結果を得ることができた(「(1)道路用不凍液:悪い」、「(3)水道水:良好」)。
一方、「(1)道路用不凍液」及び「(3)水道水」の「(b)揮発性」について試験を行った結果、
図6に示すような試験データを取得することができている。
【0062】
ここで、
図6に示す試験データについて説明する。
図6は、地中に浸透した「(1)道路用不凍液」、「(2)家庭用不凍液」及び「(3)水道水」の時間経過に伴う水分残存率の遷移を示すグラフを示したものである。
【0063】
「(b)揮発性」の試験は、
(1)地中を構成する材料(例えば、土)が収納された規定重量(以下、「本体重量」と称す)の容器を3セット用意し、これらの容器に、規定量(以下、「基準水分量」と称す)の「(1)道路用不凍液」、「(2)家庭用不凍液」及び「(3)水道水」をそれぞれ注入(散布)する、
(2)日毎に、各液体の水分量(以下、「水分残存量」と称す)を測定(例えば、「容器総重量」-「本体重量」)し、残存率(「水分残存量」/「基準水分量」、以下、「水分残存率」と称す)を求める、
(3)日毎に求めた「水分残存率」をグラフにプロットする(
図6参照)、
といった作業手順で行った。なお、各液体が蒸発した比率(以下、「揮発率」と称す)は、「1-「水分残存率」」といった計算式を用いることにより求めることが可能である。
【0064】
図6に示すように、「(3)水道水」は、試験を行った日から「29日目」に「水分残存率:0%」(「揮発率:100%」)に至ったのに対し、「(1)道路用不凍液」は、その時点で「水分残存率:約59%」(「揮発率:約41%」)であった。
このような試験結果から、「(1)道路用不凍液」及び「(3)水道水」の「(b)揮発性」についての試験では、「(3)水道水」の揮発度合い(揮発率)を「1」とした場合、「(1)道路用不凍液」の「揮発度合い」(「揮発率」):「約0.41」(「約1/2」)」であることが判明した。
【0065】
次に、「(2)家庭用不凍液」及び「(3)水道水」を比較したときの試験結果について説明する。
「(2)家庭用不凍液」及び「(3)水道水」の「(a)浸透性」についての試験では、両者共、浸透しやすい、という結果を得ることができた(「(2)家庭用不凍液:良好」、「(3)水道水:良好」)。
一方、「(2)家庭用不凍液」及び「(3)水道水」の「(b)揮発性」についての試験では、「(3)水道水」が「水分残存量:0%」(「揮発率:100%」)に至った時点(「29日目」)で、「(2)家庭用不凍液」の「水分残存率」が「約43%」(「揮発率:約57%」)という結果を得ることができている(
図6参照)。
このような試験結果から、「(b)揮発性」の試験では、「(3)水道水」の揮発度合い(揮発率)を「1」とした場合、「(2)家庭用不凍液の揮発度合い(「揮発率」):「約0.57」(「約1/2」)」であることが判明した。
【0066】
これらを纏めると、本試験では、
・「(a)浸透性;(1)道路用不凍液:悪い、(2)家庭用不凍液:良好、(3)水道水:良好」
・「(b)揮発性;(1)道路用不凍液:約1/2(約0.41)、(2)家庭用不凍液:約1/2(約0.57)、(3)水道水:1」
という結果を得ることができた。
【0067】
以上より、「(1)道路用不凍液」については、液状のまま地中の1箇所に滞留し易い特性があること、「(2)家庭用不凍液」については、地中に浸透し易く乾き難い特性があること、また、「(3)水道水」については、地中に浸透し易く乾き易い特性があることが判明した。すなわち、このような結果から、ロードヒーティングシステムで使用される「(1)道路用不凍液」及び「(2)家庭用不凍液」については、何れも、管路Pから漏出した場合、「(3)水道水」よりも、地中で乾き難い(液状のまま地中に存在し易い)特性があることが判明した。
【0068】
この点、「(1)道路用不凍液」及び「(2)家庭用不凍液」は、漏水している管路Pについて電磁波を用いた漏水検査(地中探査)を行った場合、複数断面画像中に、不自然な波形(不規則に乱れた波形や不明瞭な波形)として表れ易い液体といえるので(
図11(a)の「波形W2a」等参照)、後述する漏水検査方法による漏水検査において、漏水位置の特定を良好に行うことが可能である(
図8参照)。特に、「(1)道路用不凍液」は、液状のまま地中の1箇所に滞留し易い特性を有しているため、「(2)家庭用不凍液」よりも、高い精度で漏水位置を特定することができる。本実施形態に係る漏水検査方法については後述する。
【0069】
(道路30の構造)
次に、管路Pが埋設される道路30の構造の一例について
図7を参照しつつ説明する。
図7に示すように、管路Pが埋設される道路30は、アスファルト舗装が施された車道であり、下層から順に、路床層33、路盤層32及びアスファルト層31が積層される構造となっている。
【0070】
路床層33は、砂及び砂利等からなり、路体(図示省略)上に構築される層である。
路盤層32は、路床層32上に構築される下層路盤層32bと、下層路盤層32b上に積層される上層路盤層32aとを備えた2層構造となっている。下層路盤層32bは、クラッシャランなどの粒状路盤材料からなり、転圧機械(例えば、ロードローラ)により締め固められた層である。上層路盤層32aは、砕石にセメントや石灰等を混合した安定処理材料からなり、例えば「50mm」厚さに形成された層である。
【0071】
アスファルト層31は、路盤層32(上層路盤層32a)上に構築される粗粒度アスファルト層31cと、粗粒度アスファルト層31c上に積層される密粒度アスファルト層31bと、密粒度アスファルト層31b上に積層される細粒度アスファルト層31a(表層)とを備えた3層構造となっている。粗粒度アスファルト層31cは、粗粒度アスファルト材料からなり、例えば「50mm」の厚さに形成された層である。密粒度アスファルト層31bは、粗粒度アスファルト混合物よりも粒度が低い密粒度アスファルト混合物からなり、例えば「30mm」の厚さに形成された層である。細粒度アスファルト層31aは、密粒度アスファルト混合物よりも粒度が低い細粒度アスファルト混合物からなり、例えば「30mm」の厚さに形成された、道路30の路面を構成する層である。
【0072】
本実施形態では、管路Pが粗粒度アスファルト層31cに敷設されるように構成される。具体的に、管路Pの敷設は、(a)路盤層32(上層路盤層32a)上にワイヤーメッシュ34を敷き詰める、(b)次に、結束線等を用いてワイヤーメッシュ34に管路Pを結束する、といった手順を踏むことにより行われる。その後、管路Pは、粗粒度アスファルト材料により覆われて、粗粒度アスファルト層30c内に埋設されるようになっている。このように、この例では、道路用不凍液が、管路Pから漏出した場合、主に、アスファルト層31の粗粒度アスファルト層31cや、路盤層32の上層路盤層32aに滞留し易い構造となっている。
【0073】
(漏水検査方法の構成)
次に、本実施形態に係る漏水検査方法について
図1~
図3及び
図7~
図13を参照しつつ説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、(a)車両Cに搭載されるアンテナ装置10と制御装置20とが電気的に接続されていること、(b)制御装置20と外部端末ETとが電気的に接続されていること、(c)管路Pの途中に漏水箇所があることが判明していること、(d)管路Pに道路用不凍液が充満していることを前提として説明する。
【0074】
図8に示すように、本実施形態に係る漏水検査方法は、地中に埋設される管路P(
図7及び
図9参照)の漏水位置を特定する検査方法であって、第1画像データ取得工程S100と、加圧工程S200と、第2画像データ取得工程S300と、漏水位置特定工程S400と、図面作成工程S500とを備えている。なお、上記「漏水検査方法」と、「第1画像データ取得工程S100」と、「加圧工程S200」と、「第2画像データ取得工程S300」と、「漏水位置特定工程S400」と、「図面作成工程S500」とが、それぞれ特許請求の範囲に記載の漏水検査方法と、第1画像データ取得工程と、加圧工程と、第2画像データ取得工程と、漏水位置特定工程と、図面作成工程とに該当する。
【0075】
(第1画像データ取得工程S100)
図1、
図2及び
図8に示すように、本実施形態に係る漏水検査方法は、第1画像データ取得工程S100を行うことから始まる。
第1画像データ取得工程S100では、管路Pを含む地中の複数断面画像データ(特許請求の範囲に記載の第1の画像データに該当)を取得する作業を行う。
【0076】
具体的に、第1画像データ取得工程S100では、アンテナ装置10が搭載された車両Cを管路P(
図9参照)に沿った探査経路上で走行させて、管路Pを含む地中の複数断面画像データを取得する作業を行う。これにより、縦断面方向(探査方向)、横断面方向及び深度方向の各方向に沿った複数断面画像データ(縦断面画像、横断面画像及び水平断面画像の各画像データ)、例えば、「25断面」の縦断面画像データ等が、連続的かつ同時に取得されることとなる(
図3参照)。
【0077】
また、本実施形態に係る管路P(ロードヒーティング用配管)は、道路全体に亘って、埋設されているが(
図9参照)、道路幅に対するアンテナ装置10の全長(延設長さ、例えば「2.1m」)に応じて、車両Cを道なりに1回若しくは数回走行させるだけで、管路Pの複数断面画像を全て取得することが可能である。このため、本実施形態によれば、複数断面画像を取得する際、道路を通行止め等することなく、比較的短時間で作業を完了することができる。なお、このようにして取得された複数断面画像データは、上記したように、これに対応する位置データが紐付けられた状態で、記憶部27に記憶される。
【0078】
本実施形態では、第1画像データ取得工程S100を行った後、加圧工程S200を行うように構成される。第1画像データ取得工程S100の具体的な実施例については後述する。なお、第1画像データ取得工程S100は、良好な複数断面画像(管路Pから道路用不凍液が漏出した地中の画像)を取得する観点から、雨や雪が降っていないタイミングで行うことが好ましく、その数日前から雨等が降っていないことが更に望ましい。
【0079】
(加圧工程S200)
加圧工程S200では、管路Pの管内圧力を上昇させる作業を行う。
具体的に、加圧工程S200では、管路P内に道路用不凍液を追加的に注入して管内圧力を上昇させる作業を行う。これにより、管路Pが漏水している場合、その部分(漏水箇所)から道路用不凍液が、地中に更に漏出することとなる。なお、このような道路用不凍液の注入は、水圧試験を行う際に用いられる一般的な手法、例えば、公知の電動式又は手動式の加圧ポンプを用いて、管路P内に所定量(例えば、10L)の道路用不凍液を注入することにより実現することが可能である。
本実施形態では、加圧工程S200を行った後、第2画像データ取得工程S300を行うように構成される。
【0080】
(第2画像データ取得工程S300)
第2画像データ取得工程S300では、第1画像データ取得工程S100と同様な作業を行う。
すなわち、第2画像データ取得工程S300では、アンテナ装置10が搭載された車両Cを、管路Pに沿った探査経路上で走行させて、管路Pを含む地中の複数断面画像データ(特許請求の範囲に記載の第2の画像データに該当)を取得する作業を行う。これにより、加圧工程S200を行った後の地中の状態、すなわち、管路Pが漏水している場合、道路用不凍液が更に漏出した地中の状態を、複数断面画像を通じて確認することが可能になる。なお、このようにして取得された複数断面画像データは、第1画像データ取得工程S100を行うことにより取得された複数断面画像データと同様に、これに対応する位置データが紐付けられた状態で、記憶部27に記憶される。
本実施形態では、第2画像データ取得工程S300を行った後、漏水位置特定工程S400を行うように構成されている。第2画像データ取得工程S300の具体的な実施例については後述する。
【0081】
なお、第2画像データ取得工程S300は、第1画像データ取得工程S100を行った後、雨や雪が降っていない状態で行うことが好ましい。このようにすれば、後述する漏水位置特定工程S400において、第1画像データ取得工程S100により取得された複数断面画像(以下、「加圧前の複数断面画像」と称す)と、第2画像データ取得工程S300により取得された複数断面画像(以下、「加圧後の複数断面画像」)と称す)とを、極力同じ条件で比較することが可能になる。これにより、同じ場所で取得した複数断面画像に相違点がある場合、その原因が漏水によるものであるか否かの判断等を良好に行うことができるので、検査精度の向上を図ることができる。
【0082】
(漏水位置特定工程S400)
漏水位置特定工程S400では、加圧前の複数断面画像(第1画像データ取得工程S100を行うことにより取得された画像)と、加圧後の複数断面画像(第2画像データ取得工程S300を行うことにより取得された画像)とを時系列に沿って比較して、管路P(
図9参照)の漏水位置を特定する作業を行う。
【0083】
具体的に、漏水位置特定工程S400では、外部端末ETにおいて、(a)記憶部27に記憶された位置データ付きの加圧前及び加圧後の各複数断面画像の画像データを読み込む、(b)同じ場所で取得した加圧前及び加圧後の各複数断面画像を表示する、(c)両画像に表された波形を観察して、漏水の可能性を示す不規則に乱れた波形(不自然な波形、
図11(a)の「波形W2a」等参照)等が存在するか否かを確認する、(d)この波形が取得された位置を特定する、といった手順で作業を行う。
本実施形態では、漏水位置特定工程S400を行った後、図面作成工程S500を行うように構成されている。漏水位置特定工程S400のより具体的な実施例については後述する。
【0084】
(図面作成工程S500)
図面作成工程S500では、漏水位置特定工程S400において特定した漏水位置を、管路Pが埋設された埋設地域の図面データに付記する(マージする)作業を行う。
例えば、このような図面データは、緯度及び経度(GPS情報)を指定して場所を特定することが可能な汎用のウェブマッピングプログラム(例えば、「Google Maps」)を利用して入手することができる(
図12参照)。この場合、漏水位置特定工程S400において特定した位置データ(緯度及び経度)を入力するだけで、管路Pが埋設された埋設地域の地図データを、所望の縮尺、すなわち、ピンポイントで取得することが可能なため、漏水位置を書き込む労力を軽減することが可能である。このような図面データを作成すれば、図面を通じて、管路Pの漏水位置を視覚的に把握することができるため、例えば、管路Pの漏水箇所を修理する際、施工位置や範囲の確認を容易に行うことが可能になる。
【0085】
なお、漏水位置を付記する地図データは、管路Pの配管系統が記されていることが好ましい(
図9参照)。この場合、例えば、汎用のウェブマッピングプログラムを用いて取得した地図データを基に、管路Pの配管系統が記された図面データに転記等すればよい。このような管路Pの管路系統が付記された図面データを作成すれば、管路Pの漏水箇所を修理する際、図面を確認するだけで、修理対象となる管路Pの配管系統を把握することができるため、管路Pの修理を効率よく行うことが可能である。
本実施形態では、図面作成工程S500を行った後、本漏水検査方法に係る作業が終了するように構成される。図面作成工程S500の具体的な実施例については後述する。
【0086】
なお、アンテナ装置10の位置を検出する装置として、GPSアンテナ15に加えて、距離センサ16を設けた場合、この距離センサにより取得された距離情報に基づいて、漏水位置が記された図面を作成することもできる。この距離情報は、ユーザーが適宜設定した基準位置(例えば、マンホール(
図9の「マンホールMH1」等参照))から探査方向に移動したときの距離を示す情報であるため、これを、図面データにプロットすることで、漏水位置が記された図面を作成することが可能である。
【実施例0087】
以下、上記実施形態に係る漏水検査方法の具体的な実施例(実施例1及び実施例2)について
図9~
図13を参照しつつ説明する。
【0088】
(実施例1)
先ず、実施例1について、
図9~
図11を参照しつつ説明する。
図9は漏水検査を行った検査場所Aを示す地図、
図10(a)及び
図11(a)は
図9の検査場所で第1画像データ取得工程を行った際に取得した画像を示す画像図、
図10(b)及び
図11(b)は同場所で第2画像データ取得工程を行った際に取得した画像を示す画像図である。なお、
図9においては、説明の便宜上、図面の左側を上方向と、右側を下方向と、上側及び下側を左右方向と称することとする。
【0089】
図8及び
図9に示すように、実施例1は、上記した漏水検査方法による漏水検査を検査場所Aで実際に行ったものである。実施例1に係る漏水検査は、ロードヒーティングシステムが原則稼働しない時期(例えば、7月)に、第1画像データ取得工程S100~第2画像データ取得工程S300を行うと共に、その後に、漏水位置特定工程S400及び図面作成工程S500を行っている。
【0090】
検査場所Aは、車両Cが走行可能な車道(
図7参照)であり、管路Pとしてのロードヒーティング用配管が、車道全体に亘って、一定の間隔を空けて平行且つ蛇行状に埋設されている。この管路Pの埋設深度(地表面からの埋設深さ)は、「約0.2m(20cm)」である。なお、
図9中の符号MH1,MH2は、それぞれマンホールを示している。
【0091】
実施例1では、第1画像データ取得工程S100を、路面が濡れていない日(雨等が降っていない日)に行った。
図10(a)及び
図11(a)に示す各画像は、第1画像データ取得工程S100を行うことにより取得されたものである。なお、
図10の上図は縦断面画像を、下図は水平断面画像を、
図11の上左図は縦断面画像を、上右図は横断面画像を、下図は水平断面画像を、それぞれ示している。また、
図10中のマンホールMH1及び
図11中のマンホールMH2は、
図9中のマンホールMH1及びマンホールMH2に対応している。
【0092】
図10(a)は
図9に示すMH1付近の画像を、
図11(a)は
図9に示すMH2付近の画像を、それぞれ示している。
図10(a)及び
図11(a)の各画像は、何れも、
図9に示す車道において、アンテナ装置10が搭載された車両C(
図1参照)を右方向に向けて走行させることにより取得されたものである。なお、
図10(b)及び
図11(b)に示す各画像(第2画像データ取得工程S300を行うことにより取得された画像)も、これと同じ条件で取得されている。
【0093】
第1画像データ取得工程S100及び加圧工程S200の後工程である第2画像データ取得工程S300は、第1画像データ取得工程S100と同様に、路面が濡れていない日(雨等が降っていない日)に行った。
図10(b)及び
図11(b)に示す各画像は、第2画像データ取得工程S300を行うことにより取得されたものである。
図10(b)は
図10(a)に対応する画像(マンホールMH1近辺の画像)を、
図11(b)は、
図11(a)に対応する画像(マンホールMH2付近の画像)を、それぞれ示している。
【0094】
第2画像データ取得工程S300の次工程である漏水箇所特定工程S400では、外部端末ETにおいて、
図10(a)及び
図11(a)の画像(加圧前の複数断面画像)と、
図10(a)及び
図11(a)の画像(加圧後の複数断面画像)とを比較して、漏水位置を特定する作業を行った。
【0095】
図10(a)の縦断面画像では、「埋設深度(Depth):0.2m」近辺において、マンホールMH1付近に、不規則に乱れた波形W1aが存在することが明瞭に読み取れる。一方、
図10(b)の縦断面画像においても、
図10(a)の縦断面画像と略同じ位置に、波形W1aに類似する波形W1bが存在することを明瞭に読み取ることができる。
ところで、このような不規則に乱れた波形は、この波形に対応する場所(位置)における地中の環境が、その周囲の地中の環境とは異なっていることを示しているため、本実施例1のような漏水検査を行った場合、その位置の近くに漏水箇所が存在すると判断しがちである(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、上記したように、加圧工程S400を行う前後の波形W1a,W1bは殆ど変化していない(同一視できる範囲で類似している)ため、このような波形W1a,W1bが生じた原因は、管路Pの漏水に起因するものではなく、管路P廻りの地中の材料等(例えば、部分的な道路補修)に直接依存していると見るのが妥当である。
【0096】
このような推測結果から、本実施例1では、不規則に乱れた波形W1a,W1bの位置で、管路Pが漏水している可能性が低い、という結論に至った。なお、一般に、管路Pとしてのロードヒーティング用配管は、その埋設深度が、他の埋設配管(例えば、水道管)と比較して浅いため(本実施形態では「約0.2m(20cm」))、路面の状態、例えば、部分的な道路補修を行っているか否かを確認することにより、管路P廻りの地中の環境(不規則に乱れた波形W1a,W1bの原因)を十分に推測することが可能である。このため、実施例1では、管路Pが波形W1a,W1bの位置で漏水しているか否かの最終的な判断をするため、この位置を特定することとした。
【0097】
波形W1a,W1bの位置は、
図10(a)及び(b)の画像に表された「Distance」や「Width」と、これらの各画像データに紐付く位置データ(緯度及び経度等)に基づいて、マンホールMH1から右方向に離れた「4.2m~6.3m」の範囲で、かつ2つのマンホールMH1間の中心位置から上方向に「0.85m」、下方向に「0.95m」の範囲であることを特定した(
図9参照)。なお、検査場所Aにおいて、後日、目視検査を行ったところ、この範囲に、道路補修が行われた痕跡(アスファルト補修等)があることを確認することができた。その結果、管路Pは、波形W1a,W1bの位置で漏水していない、という最終的な結論に至っている。
【0098】
また、
図11(a)の縦断面画像では、「埋設深度(Depth):0.2m」近辺において、マンホールMH2付近に、比較的明瞭な波形W2aが存在するに対し、
図11(b)の縦断面画像では、不明瞭な波形W2bが存在することが読み取れる。その結果、マンホールMH2付近の地中には、加圧工程S200を行う以前から極微量の道路用不凍液が漏出していた可能性があり、波形W2a,2bの位置において、管路Pが漏水している可能性が高い、という結論に至った。
【0099】
波形W4の位置は、
図11(a)及び(b)の画像に表された「Distance」や「Width」、及びこれらの各画像データに紐付く位置データ(緯度及び経度等)に基づいて、上側のマンホールMH2の中心位置から右方向に「4.5m」の範囲で、かつ当該マンホールMH2の中心位置から下方向に「0.7m」の範囲であることを特定した(
図9参照)。
【0100】
漏水箇所特定工程S400の次工程である図面作成工程S500では、漏水箇所特定工程S400を行うことにより特定した位置を、管路Pの配管系統が記された地図データに書き込む作業を行った(
図9の「範囲R1,R2」参照)。なお、実施例1では、この位置を、管路Pの配管系統が記された地図データに書き込んだが、後述する実施例2と同様に、これが記されていない地図データに記載してもよい(
図12参照)。
【0101】
(実施例2)
次に、実施例2について、
図12及び
図13を参照しつつ説明する。
図12は漏水検査を行った検査場所Bを示す地図、
図13(a)は
図12の検査場所で第1画像データ取得工程を行った際に取得した画像を示す画像図、
図13(b)は同場所で第2画像データ取得工程を行った際に取得した画像を示す画像図である。なお、
図12においては、説明の便宜上、図面の左側を上方向と、右側を下方向と、上側及び下側を左右方向と称することとする。
【0102】
図12及び
図13に示すように、実施例2は、上記した漏水検査方法による漏水検査を検査場所Bで実際に行ったものである。実施例2に係る漏水検査は、実施例1と同様に、ロードヒーティングシステムが原則稼働しない時期(例えば、7月)に、第1画像データ取得工程S100~第2画像データ取得工程S300を行うと共に、その後に、漏水位置特定工程S400及び図面作成工程S500を行っている。
【0103】
検査場所Bは、車両Cが走行可能な車道(
図7参照)であり、管路Pとしてのロードヒーティング用配管が一定の間隔を空けて平行且つ蛇行状に埋設されている(図示省略)。この管路Pの埋設深度は、「約0.2m(20cm)」である。なお、
図12中の符号C1,C2は、それぞれロードヒーティング配管を含む管路が密集する管路密集箇所の端部を示している。
【0104】
実施例2では、第1画像データ取得工程S100を、路面が濡れていない日(雨等が降っていない日)に行った。
図13(a)に示す画像は、第1画像データ取得工程S100を行うことにより取得されたものである。なお、
図13(a)及び(b)の上左図は縦断面画像を、上左図は横断面画像を、下図は水平断面画像をそれぞれ示している。また、
図13中の管路密集箇所の端部C1,C2は、
図12中の管路密集箇所の端部C1,C2に対応している。
【0105】
図13(a)に示す画像は、
図12に示す車道において、アンテナ装置10が搭載された車両C(
図1参照)を、管路密集箇所の端部C1付近から管路密集箇所の端部C2に向けて走行させることにより取得されたものである。なお、
図13(b)に示す画像(第2画像データ取得工程S300を行うことにより取得された画像)も、これと同じ条件で取得されている。
【0106】
第1画像データ取得工程S100及び加圧工程S200の後工程である第2画像データ取得工程S300は、第1画像データ取得工程S100と同様に、路面が濡れていない日(雨等が降っていない日)に行った。
図13(b)に示す画像は、第2画像データ取得工程S300を行うことにより取得されたものであり、
図13(a)に示す画像に対応している。
【0107】
第2画像データ取得工程S300の次工程である漏水箇所特定工程S400では、外部端末ETにおいて、
図13(a)の画像(加圧前の複数断面画像)と、
図13(b)の画像(加圧後の複数断面画像)とを比較して、漏水位置を特定する作業を行った。
【0108】
図13(a)の縦断面画像では、「埋設深度(Depth):0.2m」近辺において、管路密集箇所の端部C1付近に、不明瞭な波形W3aが存在することが読み取れる。これに対し、
図13(b)の縦断面画像では、
図13(a)の縦断面画像と略同じ位置に、明瞭な波形W3bが存在し、
図13(a)のような不明瞭な波形W3aは存在しない。このような原因としては、既に地中に浸透していた道路用不凍液に、管路Pの損傷箇所から漏出した道路用不凍液が地中に馴染むことで、波形がクリアになる、又は波形の乱れが収まるケースが考えられる。このため、本漏水検査では、管路密集箇所の端部C1付近の地中には、第1画像データ取得工程S100行う以前から、道路用不凍液が存在していた可能性があり、波形W3a,W3bの位置で、管路Pが損傷している可能性が高い、という結論に至った。
【0109】
波形W3a,W3bの位置は、
図13(a)及び(b)の画像に表された「Distance」や「Width」と、これらの各画像データに紐付く位置データ(緯度及び経度等)に基づいて、管路密集箇所の端部C1から右方向に「5.7m」離れた位置までの範囲で、かつ、管路密集箇所の端部C1の上下方向中央位置から上方に「1.05m」離れた位置までの範囲であることを特定した(
図12参照)。
【0110】
また、
図13(a)の縦断面画像では、「埋設深度(Depth):0.2m」近辺において、管路密集箇所C2付近に、不規則に乱れた波形W4aが連続していることが読み取れる。これに対し、
図13(b)の縦断面画像では、
図13(a)の縦断面画像と略同じ位置に、比較的一定の波形W4bが存在し、
図13(a)のような乱れた波形W4aは存在しない。このような波形の変化は、上記したように、既に地中に浸透していた道路用不凍液に、加圧工程S200を行うことにより管路Pから漏出した道路用不凍液が馴染んだことが直接の原因と考えられる。このため、本漏水検査では、管路密集箇所の端部C2付近の地中には、第1画像データ取得工程S100行う以前から、道路用不凍液が浸透していた可能性があり、波形W4a,W4bの位置で、管路Pが損傷している可能性が高い、という結論に至った。
【0111】
波形W4a,W4bの位置は、
図13(a)及び(b)の画像に表された「Distance」や「Width」と、これらの各画像データに紐付く位置データ(緯度及び経度等)に基づいて、管路密集箇所の端部C2から左方向に「7.4m」離れた位置までの範囲で、かつ、管路密集箇所の端部C2の上下方向中央位置から上方に「1.35m」離れた位置までの範囲であることを特定した(
図12参照)。
【0112】
漏水箇所特定工程S400の次工程である図面作成工程S500では、漏水箇所特定工程S400を行うことにより特定された漏水位置を、地図データに書き込む作業を行った(
図12の「範囲R3,R4」参照)。なお、このような地図データは、上記したように、公知の汎用のウェブマッピングプログラムを利用して入手することが可能である。また、実施例2では、漏水位置を、管路Pの配管系統が記されていない地図データに書き込んだが、実施例1と同様に、これが記された地図データに記載してもよい(
図9参照)。
【0113】
以上より、本実施形態では、加圧前後の複数断面画像を比較することによって、地中埋設された管路Pの漏水位置を特定することができるように構成されている。すなわち、本実施形態では、加圧前後の複数断面画像に表された波形の変化に基づいて、管路Pの漏水位置を特定する構成となっているため、管路廻りの地中の環境(例えば、管路廻りの地中の地質や材料)に影響されず、その特定を精度良く行うことが可能である。
【0114】
また、本実施形態では、管路Pとしてのロードヒーティング用配管の漏水位置を特定するように構成されている。すなわち、ロードヒーティング用配管は、その埋設深度(地表面からの埋設深さ)が、他の埋設配管(例えば、ガス管や水道管)と比較して、一般に浅いため、電磁波を用いた地中探査(漏水検査)を行った際、高解像度の画像を得ることが可能である。また、ロードヒーティング用配管を流通する道路用不凍液は、他の液体と比較して、液状のまま地中の1箇所に滞留しやすい特性を有しているため、漏水しているロードヒーティング用配管について電磁波を用いた漏水検査(地中探査)を行った場合、複数断面画像中に、不自然な波形(不規則に乱れた波形や不明瞭な波形)として複数断面画像に表れ易い。従って、本実施形態によれば、地中に漏出した不凍液の状態を、複数断面画像を通じて確認し易いため、ロードヒーティング用配管(管路P)の漏水位置を高い精度(例えば、「約10cm」の精度)で特定することが可能である。
【0115】
さらに、本実施系形態では、道路幅に対するアンテナ装置10の全長(延設長さ)に応じて、車両Cを道なりに1回若しくは数回走行させるだけで、道路全体に亘って埋設される管路Pの複数断面画像を全て取得することが可能である。このため、本実施形態によれば、複数断面画像を取得する際、道路を通行止め等することなく、比較的短時間で作業を完了することができる。
【0116】
また、本実施形態では、管路Pの漏水位置が特定された場合、その位置を管路Pが埋設される埋設地域の図面データに付記するように構成されている。このため、本実施形態によれば、図面を通じて、管路Pの漏水位置を視覚的に把握することができるため、例えば、管路Pの漏水箇所を修理する際、施工位置や範囲の確認を容易に行うことが可能になる。
【0117】
なお、本実施形態では、アンテナ装置10を車両Cに搭載したが、これに限られず、人力で移動可能な台車や自転車等に搭載してもよい。
【0118】
また、本実施形態では、漏水検査をする管路P(埋設管)として、道路用不凍液を循環供給するロードヒーティング用配管を例示したが、液体が流通する管路であれば、他の管路(例えば、給水管、排水管)であっても構わない。
【0119】
さらに、本実施形態では、管路Pの漏水位置の特定を、ユーザーが複数断面画像に表された波形を目視することにより行ったが、これを自動化することも可能である。この場合、例えば、複数断面画像に表れる波形のうち、管路Pから漏水しているときの波形パターン(波形の乱れ度合いや濃度)を、人口知能(AI:Artificial Intelligence)に学習させることにより実現することが可能である。
【0120】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述および図面により、本発明は限定されるものではない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実例および運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることはもちろんであることを付け加えておく。