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2023-72968成形品及びその製造方法、射出成形金型、成形装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072968
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】成形品及びその製造方法、射出成形金型、成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20230518BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20230518BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20230518BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230518BHJP
   B29C 45/56 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C33/42
B29C45/37
B29C45/26
B29C45/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185732
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】須田 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】西野 彰馬
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA01
4F202AB25
4F202AF10
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK23
4F202CK52
4F206AA01
4F206AB25
4F206AF10
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN11
4F206JQ02
4F206JQ81
4F206JQ90
4F206JT07
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】任意の位置における濃淡模様の付与が容易である成形品を提供する。
【解決手段】本開示に係る成形品は、セルロース系繊維複合樹脂を用いた射出成形品であって、射出成形時のゲート跡と、セルロース系繊維複合樹脂で構成される第1領域と、ゲート跡から離間した位置を起点として、ゲート跡から離れる方向に延びる樹脂合流界面に沿って樹脂合流界面の両面にわたって構成される第2領域と、を有し、第1領域と第2領域とは、色調が異なる。
【選択図】図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維複合樹脂を用いた射出成形品であって、
射出成形時のゲート跡と、
前記セルロース系繊維複合樹脂で構成される第1領域と、
前記ゲート跡から離間した位置を起点として、前記ゲート跡から離れる方向に延びる樹脂合流界面に沿って前記樹脂合流界面の両面にわたって構成される第2領域と、
を有し、
前記第1領域と前記第2領域とは、色調が異なる、成形品。
【請求項2】
前記ゲート跡と前記起点との間に、転写跡が形成される、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記第2領域は、前記第1領域よりも幅が狭く、線状の模様である、請求項1または2に記載の成形品。
【請求項4】
前記第2領域は、セルロース系繊維の炭化物を含む、請求項3に記載の成形品。
【請求項5】
ゲートから離間させて、金型の間のキャビティに向かって第1高さで突出する障害物を配置することと、
前記ゲートから前記キャビティにセルロース系繊維複合樹脂を射出成形して、前記セルロース系繊維複合樹脂による第1領域を構成するとともに、前記障害物から下流側に延びる樹脂合流界面に沿って前記樹脂合流界面の両面にわたって前記第1領域とは異なる色調の第2領域を構成することと、
前記障害物を、前記第1高さより小さい第2高さに、前記金型の内部に後退させることと、
を含む、成形品の製造方法。
【請求項6】
前記セルロース系繊維複合樹脂の射出圧力によって、前記第1高さから前記第2高さに前記障害物を後退させる、請求項5に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
前記障害物に接続された駆動源によって、前記第1高さから前記第2高さに前記障害物を後退させる、請求項5に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
キャビティを形成する金型と、
前記キャビティに突出した第1高さと、前記金型の内部に後退して、前記第1高さより小さい第2高さとの間で移動可能に設けた障害物と、
を有する、射出成形金型。
【請求項9】
前記障害物を、前記第2高さから前記第1高さに向かって付勢するバネをさらに有する、請求項8に記載の射出成形金型。
【請求項10】
前記障害物を、前記第1高さと前記第2高さとの間で移動させる駆動源をさらに有する、請求項8に記載の射出成形金型。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載の射出成形金型と、
セルロース系繊維複合樹脂を射出する射出成形機と、
を有する、成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形品及びその製造方法、射出成形金型、成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇、地球温暖化等の環境問題、または海洋プラスチック問題の観点より、天然資源の効率的な利用(SDGsゴール12)や、海洋汚染の防止および大幅な削減(SDGsゴール14)が国連の開発目標として定められている。そこで、石油由来の樹脂量の削減が世界的に求められている。
【0003】
石油由来の樹脂量を減らす研究開発活動において、天然由来成分であるセルロースファイバーを55%濃度で樹脂に混ぜ込む複合加工技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、セルロースの特性を活かした意匠性の高い成形品が開示されている。具体的に、特許文献1には、色の濃淡模様を有する成形品が開示されている。
【0005】
特許文献1では、セルロース系複合樹脂を使用し、成形品において、あえてウェルドラインが発生するように金型の構造及び成形時のゲート位置を設計する。ウェルドラインにおけるセルロースが変性することによって、褐色化成分のフルフラールが生成され、色の濃淡模様が形成される。そのため、複数種類のペレットの混合や着色剤等を使用しない場合においても、濃淡模様を有する成形品を提供できる。フルフラールの生成量を制御することで、天然の木の経年変化および成長によって生まれる自然な変色または色むらを成形品に形成しつつ、成形品の基本的な色味を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-115989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、色の濃淡模様を形成する障害物を製品外部に位置するタブゲートに設置し、成形後にタブゲートを除去する。そのため、成形品の任意の位置に色の濃淡を付与できないという課題がある。
【0008】
したがって、特許文献1に記載の方法では、成形品の任意の位置における濃淡模様の付与が困難であるといった点で未だ改善の余地がある。
【0009】
本開示は、前記課題を解決することにあって、任意の位置における濃淡模様の付与が容易である成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る成形品は、セルロース系繊維複合樹脂を用いた射出成形品であって、射出成形時のゲート跡と、セルロース系繊維複合樹脂で構成される第1領域と、ゲート跡から離間した位置を起点として、ゲート跡から離れる方向に延びる樹脂合流界面に沿って樹脂合流界面の両面にわたって構成される第2領域と、を有し、第1領域と第2領域とは、色調が異なる。
【0011】
本開示に係る成形品の製造方法は、ゲートから離間させて、金型の間のキャビティに向かって第1高さで突出する障害物を配置することと、ゲートからキャビティにセルロース系繊維複合樹脂を射出成形して、セルロース系繊維複合樹脂による第1領域を構成するとともに、障害物から下流側に延びる樹脂合流界面に沿って樹脂合流界面の両面にわたって第1領域とは異なる色調の第2領域を構成することと、障害物を、第1高さより小さい第2高さに、金型の内部に後退させることと、を含む。
【0012】
本開示に係る射出成形金型は、キャビティを形成する金型と、キャビティに突出した第1高さと、金型の内部に後退して、第1高さより小さい第2高さとの間で移動可能に設けた障害物と、を有する。
【0013】
本開示に係る成形装置は、射出成形金型と、セルロース系繊維複合樹脂を射出する射出成形機と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、任意の位置における濃淡模様の付与が容易である成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。
図1B】実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。
図1C】実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。
図1D】実施の形態1に係る成形品の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。
図2A】セルロース系繊維複合樹脂の流動を詳細に示す平面図である。
図2B】セルロース系繊維複合樹脂の流動を詳細に示す平面図である。
図3A】成形品の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。
図3B】成形品における障害物の動作を示す断面図である。
図3C】成形品における障害物の動作を示す断面図である。
図3D】成形品における障害物の動作を示す断面図である。
図4】実施の形態1に係る射出成形装置の断面構成を示す模式断面図である。
図5A】射出成形装置の金型に設けられた障害物の動作を示す断面図である。
図5B】射出成形装置の金型に設けられた障害物の動作を示す断面図である。
図5C】射出成形装置の金型に設けられた障害物の動作を示す断面図である。
図6】実施の形態2に係る射出成形装置の断面構成を示す模式断面図である。
図7A】射出成形装置の金型に設けられた障害物の動作を示す模式図である。
図7B】射出成形装置の金型に設けられた障害物の動作を示す模式図である。
図8A】実施の形態3に係る成形品及び障害物を示す斜視図である。
図8B図8Aに示す障害物の斜視図である。
図8C】実施の形態3に係る成形品の製造方法の一工程を示す平面図である。
図8D】実施の形態3に係る成形品の製造方法の一工程を示す断面図である。
図8E】実施の形態3に係る成形品の製造方法の一工程を示す断面図である。
図8F】実施の形態3に係る成形品の製造方法の一工程を示す平面図である。
図9】成形品の線状の模様を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の第1態様に係る成形品は、セルロース系繊維複合樹脂を用いた射出成形品であって、射出成形時のゲート跡と、セルロース系繊維複合樹脂で構成される第1領域と、ゲート跡から離間した位置を起点として、ゲート跡から離れる方向に延びる樹脂合流界面に沿って樹脂合流界面の両面にわたって構成される第2領域と、を有し、第1領域と第2領域とは、色調が異なる。
【0017】
このような構成により、ゲート跡から離間した成形品の任意の位置において、第1領域と第2領域による濃淡模様を形成できる。
【0018】
本開示の第2態様に係る成形品において、ゲート跡と起点との間に、転写跡が形成されてもよい。
【0019】
このような構成により、射出成形時に障害物を任意の位置に配置し、障害物の周りでセルロース系繊維複合樹脂の流動の分岐と合流が生じることによって、任意の位置で濃淡模様を形成できる。
【0020】
本開示の第3態様に係る成形品において、第2領域は、第1領域よりも幅が狭く、線状の模様であってもよい。
【0021】
このような構成により、線状の模様を形成できる。
【0022】
本開示の第4態様に係る成形品において、第2領域は、セルロース系繊維の炭化物を含んでもよい。
【0023】
このような構成により、本物の木材に近い印象の濃淡模様を形成できる。
【0024】
本開示の第5態様に係る成形品の製造方法は、ゲートから離間させて、金型の間のキャビティに向かって第1高さで突出する障害物を配置することと、ゲートからキャビティにセルロース系繊維複合樹脂を射出成形して、セルロース系繊維複合樹脂による第1領域を構成するとともに、障害物から下流側に延びる樹脂合流界面に沿って樹脂合流界面の両面にわたって第1領域とは異なる色調の第2領域を構成することと、障害物を、第1高さより小さい第2高さに、金型の内部に後退させることと、を含む。
【0025】
このような方法により、ゲートから離間した成形品の任意の位置において、第1領域と第2領域による濃淡模様を形成できる。
【0026】
本開示の第6態様に係る成形品の製造方法は、セルロース系繊維複合樹脂の射出圧力によって、第1高さから第2高さに障害物を後退させてもよい。
【0027】
このような方法により、成形品に障害物が転写されることを抑制できる。
【0028】
本開示の第7態様に係る成形品の製造方法は、障害物に接続された駆動源によって、第1高さから第2高さに障害物を後退させてもよい。
【0029】
このような方法により、成形品に障害物が転写されることを抑制できる。
【0030】
本開示の第8態様に係る射出成形金型は、キャビティを形成する金型と、キャビティに突出した第1高さと、金型の内部に後退して、第1高さより小さい第2高さとの間で移動可能に設けた障害物と、を有する。
【0031】
このような構成により、キャビティの任意の位置において、第1領域と第2領域による濃淡模様を形成できる。
【0032】
本開示の第9態様に係る射出成形金型は、障害物を、第2高さから第1高さに向かって付勢するバネをさらに有してもよい。
【0033】
このような構成により、障害物に加わる力に応じて、障害物は第1高さと第2高さとの間で移動できる。
【0034】
本開示の第10態様に係る射出成形金型は、障害物を、第1高さと第2高さとの間で移動させる駆動源をさらに有してもよい。
【0035】
このような構成により、成形品に障害物が転写されることを抑制できる。
【0036】
本開示の第11態様に係る射出成形装置は、射出成形金型と、セルロース系繊維複合樹脂を射出する射出成形機と、を有する。
【0037】
このような構成により、射出成形金型が形成するキャビティの任意の位置において、濃淡模様を形成できる。
【0038】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0039】
(実施の形態1)
図1A図1Dは、実施の形態1に係る成形品100の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。図2A及び図2Bは、セルロース系繊維複合樹脂101の流動を詳細に示す平面図である。
【0040】
[成形品の構成]
実施の形態1に係る成形品100は、セルロース系繊維複合樹脂101を射出成形樹脂として用いた射出成形品である。図1Dに示すように、成形品100は、射出成形時のゲート跡112と、セルロース系繊維複合樹脂101で構成される第1領域と、樹脂合流界面104に沿って樹脂合流界面104の両面にわたって構成される第2領域107とを有する。樹脂合流界面104は、ゲート跡112から離間した位置を起点として、ゲート跡112から離れる方向に延びる。第1領域101と第2領域107とは、色調が異なる。
【0041】
第2領域107は、第1領域101よりも幅が狭く、連続した線状の模様、例えば、線状木目模様である。
【0042】
[セルロース系繊維複合樹脂の構成]
セルロース系繊維複合樹脂101は、母材となるベース樹脂と、セルロース系繊維とを含む。より具体的に、セルロース系繊維複合樹脂101の全質量の40%以上は、セルロース系繊維によって構成される。
【0043】
セルロース系繊維の平均アスペクト比、即ち繊維長と繊維径との比は、5以上である。セルロース系繊維の繊維径は、μmオーダーからnmオーダーの範囲で自由に選定されてもよい。また、セルロース系繊維の種類は、針葉樹、広葉樹、竹等、セルロース繊維が抽出できる素材であればよい。例えば、セルロース系繊維として、紙などの原料となるパルプを用いる。
【0044】
セルロース系繊維は、漂白され、リグニン成分が除去されたものであってもよい。このようなセルロース系繊維を射出成形樹脂として用いることで、成形品100において幅広い色味を再現することができる。
【0045】
成形品100を構成するセルロース系繊維複合樹脂101は、例えば、ベース樹脂としてプロピレン、及びセルロース系繊維として木材から抽出された漂白済みの針葉樹パルプを含む。針葉樹パルプは、平均直径が50μm、平均長さ300μmになるように予備粉砕された粉末である。
【0046】
[成形品の製造方法]
ここで、図1A図1Dを参照しながら、セルロース系繊維複合樹脂101を用いた成形品100の製造方法の一例について説明する。
【0047】
まず、ベース樹脂と針葉樹パルプとを、190℃において混練機で混ぜ合わせて混練し、セルロース系繊維複合樹脂からなる射出成形樹脂を製造する。混練温度を190℃に設定することで、加熱による針葉樹パルプの変色を抑制できる。また、混練機内で生じるせん断力により繊維の解繊が生じるため、混練前の針葉樹パルプと比べ、混練後のセルロース系繊維複合樹脂内における針葉樹パルプのアスペクト比は大きくなる。
【0048】
続いて、図1Aに示すように、セルロース系繊維複合樹脂101を金型内部のゲート102から射出する。射出成形条件として、樹脂温度は180℃以上、金型温度は20以上100℃以下の範囲を用いてもよい。実施の形態1において、樹脂温度を200℃、金型温度を60℃、さらに射出速度を100mm/s、保圧力を80MPa及び保圧時間5sとして射出成形が行われる。
【0049】
セルロース系繊維複合樹脂101は、ゲート102から金型によって形成されるキャビティR1(点線)に流入する。金型には、ゲート102から離間した位置において、キャビティR1に突出する障害物103が配置される。セルロース系繊維複合樹脂101は、障害物103に向かって流れる。
【0050】
障害物103は、セルロース系繊維複合樹脂101の流動方向と交差する方向に、金型からキャビティR1に向かって突出する部材である。障害物103の形状は、円柱型、楕円柱型、多角柱型、またはそれらの中空形状等であってもよい。
【0051】
図1Bに示すように、セルロース系繊維複合樹脂101は、障害物103に当たり、セルロース系繊維複合樹脂101の流動が二手に分岐する。
【0052】
図1Cに示すように、分岐したセルロース系繊維複合樹脂101は、障害物103の下流側で樹脂合流界面104にて合流する。合流において、金型内部の残留空気圧縮による圧縮発熱と、樹脂合流によるせん断発熱とが生じる。圧縮発熱とせん断発熱とによって、樹脂合流界面104の近傍に位置する複合樹脂中のセルロース系繊維は熱変性され、セルロース系繊維の炭化物であるフルフラールを生成する。フルフラールの生成によって、障害物103の下流側に、セルロース系繊維複合樹脂101と異なる色調を有する線状の模様107が形成される。
【0053】
図1Dに示すように、セルロース系繊維複合樹脂101の流動方向に沿って、障害物103の下流側に線状の模様107が形成される。線状の模様107は、ゲート102から障害物103に向かう方向に沿って延びてもよい。
【0054】
濃淡模様として、セルロース系繊維複合樹脂101によって構成される第1領域とは異なる色調の線状の模様107が形成される。
【0055】
続いて、射出成形樹脂を硬化させて、成形品100を金型から取り出す。取り出した成形品100には、ゲート102の位置においてゲート跡112が形成される。ゲート跡112は、ゲート102に対応した模様であり、ゲート102の外周に沿った模様であってもよい。ゲート跡112は、成形品100の表面に沿っている白色化した模様であってもよい。さらに、障害物103の位置において転写跡113が形成されてもよい。転写跡113は、障害物103が後退したことによる転写形状である。転写跡113は、障害物103の外周面に沿った立体形状であってもよく、成形品100の表面に沿った模様であってもよい。
【0056】
以上によって、線状の模様107を有する成形品100が得られる。
【0057】
上記の製造方法において、ゲート102の数、位置及び大きさは、金型の内部に配置できる範囲で設定してもよい。障害物103の数、位置及び大きさは、金型の内部に配置できる範囲で設定してもよい。また、障害物103の数はゲート102の数より多くてもよく、例えば、1つのゲート102と複数の障害物103を設けてもよい。このような構成において、ゲート102の数の増加による充填バランス悪化やコスト増大を抑制しつつ、成形品100の意匠の自由度を向上できる。
【0058】
ここで、図2A及び図2Bを参照しながら、成形品100の製造方法において、線状の模様107が得られるメカニズムについて説明する。
【0059】
図2Aに示すように、障害物103を境に二手に分岐した樹脂に、障害物103の後方へ回りこむ内向きの流動201が生じる。
【0060】
図2Bに示すように、樹脂合流界面104にて合流したセルロース系繊維複合樹脂101に、絶えず内向きの力202、203が連続的にかかることで、フルフラールが形成され、線状の模様107が形成される。
【0061】
ここで、図3A図3Dを参照しながら、射出成形における障害物103の動作についてより詳細に説明する。
【0062】
図3Aは、成形品100の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。図3B図3Dは、成形品100における障害物103の動作を示す断面図である。
【0063】
図3Aに示すように、断面Aは、ゲート102の中心から障害物103の中心に向かうベクトルYと、障害物103の動作方向Xとがなす無限平面XYにより成形品を切断した断面であり、法線方向301を有する。以降、この断面Aを用いて、障害物103の動作について説明する。
【0064】
図3Bに示すように、成形機のシリンダから射出されたセルロース系繊維複合樹脂101は金型内部のゲート102から射出され、障害物103に向かって流動する。障害物103は成形品の中に第1高さD1(>0)で突出した状態で存在する。第1高さD1は、成形品高さD0(>0)より小さい(D0≧D1)。
【0065】
障害物103より上方(+X側)の流路高さとなるD0-D1は、セルロース系繊維複合樹脂101の流動の妨げにならない範囲で設定してもよい。セルロース系繊維複合樹脂101の流動性を踏まえると、D0-D1≧1mmの関係が望ましい。さらに、成形品100の全体の充填バランス等も加味した上で第1高さD1の値を設計してもよく、流動解析による充填性確認を行ってもよい。
【0066】
図3Cに示すように、障害物103を通過するセルロース系繊維複合樹脂101は、障害物103に衝突せずに直進する流動302と、障害物103に衝突する流動303とに分岐する。流動302においては、線状の模様107は形成されないが、流動303においては、障害物103の下流で線状の模様107が形成される。
【0067】
障害物103の第1高さD1が成形品高さD0に近いと、流動303の発生が促進され、線状の模様107の形成が促進される。
【0068】
図3Dに示すように、障害物103を移動量D1-D2だけ金型内に引っ込み、セルロース系繊維複合樹脂101の充填が完了すると、障害物103は成形品の中に第2高さD2(≧0)で突出した状態で存在する。ここで、0≦D2≦D1かつ0<D1≦D0の関係が成り立つ。図示の状態で成形品100が冷却固化することで、第2高さD2の障害物103の形状が成形品100にそのまま転写される。
【0069】
第2高さD2は、成形品高さD0の0%以上10%以下であってもよい。このような構成によって、即ち、障害物103の第2高さD2を小さくすることで、成形品への障害物103の形状転写を抑制できる。例えば、第2高さD2は0である。この場合において、障害物103の先端面形状304は成形品100の表面に一致する。そのため、成形品への障害物103の形状転写をさらに抑制し、転写跡113は成形品100の表面に沿った模様である。
【0070】
また、障害物103の先端面形状304は特に限定されない。簡単のため平面として図示しているが、曲面や斜面形状などでも構わない。図3Dで示す先端投影面積A1は、先端面形状304を示す障害物103の投影図である。先端投影面積A1を小さくすることで、成形品への障害物103の形状転写をさらに抑制できる。
【0071】
ここで、図4を参照しながら、上記製造方法を実現する射出成形装置400について説明する。
【0072】
図4は、射出成形装置400の断面構成を示す模式断面図である。
【0073】
図4に示すように、実施の形態1に係る射出成形装置400は、射出成形機401と、固定金型402と、可動金型403とを含む。射出成形機401は、セルロース系繊維複合樹脂101を固定金型402と可動金型403との間に画成されるキャビティ内に射出する。固定金型402と、可動金型403とは、互いに嵌合し、嵌合した状態で、射出されたセルロース系繊維複合樹脂101が流入するキャビティR1を形成する。固定金型402と、可動金型403とは併せて射出成形金型440と総称する。
【0074】
射出成形金型440は、障害物103と、障害物103を支持するバネ404とをさらに有する。障害物103は、固定金型402または可動金型403を貫通して、キャビティR1の内部に突出した第1高さD1と、第1高さD1から射出成形金型440の内部に後退した第2高さD2との間で移動可能に設けられている。障害物103は、シャフト103Aと、ベース103Bとを有する。シャフト103Aと、ベース103Bとは一体的に構成されてもよく、ボルト等で締結されていてもよい。バネ404は、ベース103Bの後方に設けられており、第2高さD2から第1高さD1に向かって障害物103を付勢する。言い換えれば、ベース103Bはバネ404の反力を受ける。ベース103Bの後方の距離D3が障害物103の最大移動量となる。
【0075】
障害物103は、キャビティR1に向かって突出することができれば、任意の場所及び個数において配置してもよい。
【0076】
続いて、図5A図5Cを参照しながら、射出成形装置400の動作について説明する。
【0077】
図5A図5Cは、射出成形装置400の射出成形金型440に設けられた障害物103の動作を示す断面図である。
【0078】
図5Aに示すように、セルロース系繊維複合樹脂101が射出成形機401を介してゲート102から射出されると、障害物103に向かう流動501が生じる。そのため、障害物103の側面には、流動501に沿った射出圧力が加わる。時間経過とともに、障害物103の周囲はセルロース系繊維複合樹脂101で満たされ、障害物103の突出面全体に射出圧力が加わる。具体的には、障害物103の先端面形状304に作用する射出圧力502と、障害物103の側面に作用する射出圧力503とが加わる。成形品高さD0と第1高さD1との差が大きいと、障害物103の先端面形状304の上方にセルロース系繊維複合樹脂101が多く存在し、射出圧力502が大きくなる。この状態において、より大きい力で押されるため、障害物103は金型へ後退しやすくなる。
【0079】
図5Bにおいて、障害物103には射出圧力が作用していない状況を示す。バネ404の自然長をD4とすると、バネ404は障害物103を支持することによって長さD5まで縮む。この場合、バネ定数kを用いて、バネ反力F1はk×(D4-D5)で算出される。
【0080】
図5Cにおいて、障害物103に射出圧力M1が作用している状況を示す。射出圧力M1は、セルロース系繊維複合樹脂101の成形性や転写性を考慮するとおおよそ400~900kgf/cmの範囲である。射出圧力により障害物103が押される力は、射出圧力M1と先端投影面積A1(図3D)との積である。射出圧力M1×A1の力がバネ反力F1より大きいと、障害物103はキャビティR1から後退する。
【0081】
障害物103が後退している状態において、障害物103の周囲で流動するセルロース系繊維複合樹脂101が増加すると射出圧力M1は増加し、さらに、バネ404が縮むことによってバネ反力も増加する。バネ404の最小長さ、即ち、ベース103Bが可動金型403に当たった状態のバネ404の長さをD6とすると、最大のバネ反力F2はk×(D4-D6)によって算出される。障害物103が押される力M1×A1がバネ反力F2より充分大きい(M1×A1>>F2)と、障害物103は、ベース103Bが可動金型403に当たるまで後退できる。この状態において、障害物103は第2高さD2を有する。
【0082】
図5B及び図5Cに示すように、移動量D1-D2はベース103Bの後方の距離D3と等しい。ベース103Bの後方の距離D3を調整することにより、障害物103の移動量D1-D2を調整することができる。そのため、障害物103が成形品に形状を転写する第2高さD2を制御することが可能となる。
【0083】
[効果]
実施の形態1に係る成形品100、成形品100の製造方法、射出成形金型440、及び射出成形装置400によれば、以下の効果を奏することができる。
【0084】
実施の形態1に係る成形品100は、セルロース系繊維複合樹脂101を用いた射出成形品である。成形品100は、射出成形時のゲート跡112と、セルロース系繊維複合樹脂101で構成される第1領域と、樹脂合流界面104に沿って構成される第2領域107と、を有する。樹脂合流界面104は、ゲート跡112から離間した位置を起点として、ゲート跡112から離れる方向に延びる。第1領域101と第2領域107とは、色調が異なる。
【0085】
このような構成によって、ゲート跡112から離間した成形品100の任意の位置において、線状の模様107を形成できる。
【0086】
実施の形態1に係る成形品100において、第2領域107は、第1領域101よりも幅が狭く、線状の模様である。
【0087】
このような構成によって、線状の模様107を形成できる。
【0088】
実施の形態1に係る成形品100において、第2領域107は、半炭化状態におけるセルロース系繊維であるフルフラールを含む。
【0089】
このような構成によって、木の経年変化および成長によって生まれる自然な変色または色むらを有する線状の模様107を成形品100に付与できる。したがって、成形品100によって、本物の木材に近い印象を実現できる。
【0090】
実施の形態1に係る成形品100の製造方法は、ゲート102から離間させて、金型402、403の間のキャビティR1に向かって第1高さD1で突出する障害物103を配置することを含む。また、製造方法は、ゲート102からキャビティR1にセルロース系繊維複合樹脂101を射出成形することを含む。また、製造方法は、セルロース系繊維複合樹脂101による第1領域を構成するとともに、障害物103から下流側に延びる樹脂合流界面104に沿って樹脂合流界面104の両面にわたって第1領域とは異なる色調の第2領域107を構成することを含む。また、製造方法は、障害物103を、第1高さD1より小さい第2高さD2に、金型402、403の内部に後退させることを含む。
【0091】
このような方法によって、セルロース系繊維複合樹脂101は、突出した障害物103によって流動を阻害され、障害物103の上流側で分岐し、下流側で合流する。そのため、障害物103の下流側を起点とする線状の模様107を形成することができる。したがって、障害物103を配置することによって、成形品100の任意の位置において、線状の模様107を形成できる。また、その後に障害物103を第2高さD2までに後退させることによって、障害物103の形状を成形品100に転写することを抑制できる。
【0092】
実施の形態1に係る成形品100の製造方法において、セルロース系繊維複合樹脂101の射出圧力M1によって、第1高さD1から第2高さD2に障害物103を後退させる。
【0093】
このような方法によって、複雑な機構を用いない場合においても、線状の模様107が形成された後、障害物103を後退させて、成形品100に障害物103が転写されることを抑制できる。
【0094】
実施の形態1に係る射出成形金型440は、キャビティR1を形成する金型402、403と、キャビティR1に突出した第1高さD1と、金型402、403の内部に後退した第2高さD2との間で移動可能に設けた障害物103と、を有する。
【0095】
このような構成によって、第1高さD1における障害物103によって、セルロース系繊維複合樹脂101を分岐及び合流させて線状の模様107を形成することができる。また、第2高さD2における障害物103によって、障害物103の先端面形状304の上方により多くのセルロース系繊維複合樹脂101が存在でき、障害物103の形状を成形品100に転写することを抑制できる。
【0096】
実施の形態1に係る射出成形金型440は、障害物103を、第2高さD2から第1高さD1に向かって付勢するバネ404をさらに有する。
【0097】
このような構成によって、第1高さD1における障害物103に加わる力がバネ反力F1より小さいと、障害物103は第1高さD1を維持できる。障害物103に加わる力が増加することによって、障害物103は第1高さD1から第2高さD2に後退する。
【0098】
実施の形態1に係る射出成形装置400は、射出成形金型440と、セルロース系繊維複合樹脂101を射出する射出成形機401と、を有する。
【0099】
このような構成によって、障害物103の形状を成形品100に転写することを抑制しつつ、成形品100の任意の位置において、線状の模様107を形成できる。
【0100】
なお、実施の形態1において、ベース樹脂としてプロピレンを用いた例について説明したが、これに限定されない。混錬工程においてセルロース系繊維が炭化しない範囲で複合樹脂化できる樹脂であればよい。
【0101】
なお、実施の形態1において、障害物103の第1高さD1が成形品高さD0より小さい例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1高さD1と成形品高さD0は等しくてもよい。この場合、障害物103に衝突しない流動302は生じず、障害物103に衝突する流動303のみとなる。
【0102】
(実施の形態2)
図6図7A及び図7Bを参照しながら、本開示の実施の形態2に係る射出成形金型640及び射出成形装置600について説明する。なお、実施の形態2では、主に、実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0103】
図6は、実施の形態2に係る射出成形装置の断面構成を示す模式断面図である。図7A及び図7Bは、射出成形装置の金型に設けられた障害物の動作を示す模式図である。
【0104】
実施の形態2では、射出成形装置600がバネ404の代わりに駆動源601を有する点において、実施の形態1と異なる。
【0105】
図6に示すように、射出成形装置600は、射出成形機401と、射出成形金型640とを有する。射出成形金型640は、障害物103と、障害物103を支持する駆動源601とをさらに有する。駆動源601は、ベース103Bの後方に設けられており、第1高さD1と第2高さD2との間で障害物103を移動可能に支持する。より具体的には、駆動源601は、ホルダー部品602を介してベース103Bに接続され、障害物103を駆動方向603に移動させる。ホルダー部品602の後方の距離D7が障害物103の最大移動量となる。例えば、駆動源601として、油圧または空圧シリンダを採用してもよい。
【0106】
図7Aに示すように、セルロース系繊維複合樹脂101は金型402、403の内部のゲート102から射出され、障害物103に向かう樹脂流動501を生じる。このとき、駆動源601は押出力F3の方向に障害物103を押し続けている。そのため、障害物103に接続されたホルダー部品602が可動金型403の平面702に当接することで、成形品610の中の障害物103の第1高さD1が維持される。駆動源601の押出力F3は、射出圧力と障害物103の自重及び摺動抵抗を組み合わせた力より大きい。
【0107】
図7Bに示すように、図7Aの状態から時間が経過すると、障害物103の周囲がセルロース系繊維複合樹脂101で満たされる。この状態において、駆動源601は引き込み力F4の方向に障害物103を引っ張り続ける。障害物103を可動金型403内に引き込み、ホルダー部品602が可動金型403の平面704に当接することで、成形品610の中の障害物103の第2高さD2が維持される。
【0108】
図7A及び図7Bに示すように、ホルダー部品602の後方の距離D7を調整することにより、障害物103の移動量D1-D2を調整することができる。そのため、障害物103が成形品に形状を転写する第2高さD2を制御することが可能となる。
【0109】
[効果]
実施の形態2に係る成形品610の製造方法、及び射出成形金型640によれば、以下の効果を奏することができる。
【0110】
実施の形態2に係る成形品610の製造方法において、障害物103に接続された駆動源601によって、第1高さD1から第2高さD2に障害物103を後退させる。
【0111】
このような方法によって、線状の模様107が形成された後、障害物103を後退させて、成形品100に障害物103が転写されることを抑制できる。
【0112】
実施の形態1に係る射出成形金型640は、障害物103を、第1高さD1と第2高さD2との間で移動させる駆動源601をさらに有する。
【0113】
このような構成によって、線状の模様107が形成された後、障害物103を後退させて、成形品100に障害物103が転写されることを抑制できる。
【0114】
なお、実施の形態2において、ホルダー部品602が平面702、704に当接することで駆動源601の動作を制御する例について説明したが、これに限定されない。駆動源601自体が位置制御機構を有し、位置制御により、自由に移動量D1-D2を調整してもよい。さらに、駆動源601の移動のタイミングは電気信号により自由に制御してもよく、したがって、障害物103の移動のタイミングを自由に制御できる。
【0115】
(実施の形態3)
図8A図8F及び図9を参照しながら、本開示の実施の形態3に係る成形品801について説明する。なお、実施の形態3では、主に、実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0116】
図8Aは、実施の形態3に係る成形品801及び障害物803を示す斜視図である。図8Bは、図8Aに示す障害物803の先端部分を示す斜視図である。図8C図8Fは、実施の形態3に係る成形品801の製造方法の一工程を示す平面図である。図9は、成形品801の線状の模様を示す写真である。
【0117】
実施の形態3では、成形品100と異なる成形品801及び障害物103と異なる障害物803を有する点において、実施の形態1と異なる。
【0118】
図8Aに示すように、成形品801はお椀の形状を有する。また、障害物803が4つ設けられている。
【0119】
図8Bに示すように、障害物803は円柱型であり、先端の曲面形状803Aは成形品801の表面の曲面形状と同一形状を有する。
【0120】
図8Cに示すように、実施の形態3では、4つのゲート802を採用している。それぞれのゲート802から射出流入した溶融樹脂805は円状に広がり、フローフロント806が障害物803に到達する直前に位置する。フローフロント806は、溶融樹脂805の流れの先端における境界である。なお、実施の形態3では4つのゲート802を採用しているため、ゲート間には樹脂合流部807が生じる。
【0121】
図8Dに示すように、射出時において、障害物803は金型間のキャビティに突出している。図示していないが、障害物803はバネ404または駆動源601によって支持されている。
【0122】
図8Eに示すように、障害物803(図8C)に到達した溶融樹脂805は、障害物803を境に二手に分岐して後方で樹脂合流界面804に沿って合流し、線状の模様809を形成する。完成した成形品801は、ゲート802(図8C)の間の樹脂合流部807と障害物803の後方の線状の模様809とによって構成された濃淡模様を有する。さらに、成形品801において、ゲート802の位置にはゲート跡812が形成され、障害物803の位置には障害物803の転写跡813が形成される。
【0123】
図8Fに示すように、充填時において、障害物803の上方の流動隙間808に樹脂が流動する。樹脂の流動による射出圧力が先端に印可されることで障害物803が後退する。障害物803の先端の曲面形状803Aは成形品801の表面と同一形状であるため、図示の通り、後退後は成形品801の表面と障害物803の先端の曲面形状803Aが一致する。この状態で冷却固化されると、成形品801の表面に、障害物803に対応した形状を有した転写跡813(図9)が形成される。転写跡813は、成形品801の表面に沿って形成された模様である。転写跡813は、周囲と異なる色調を有してもよい。
【0124】
図9に示すように、成形品801には、線状の模様809と、転写跡813とが形成される。
【0125】
実施の形態3に係る成形品801においては、ゲート跡812と樹脂合流界面804の起点との間に、射出成形時において、転写跡813が形成される。
【0126】
このような構成によって、転写跡813の下流側において、セルロース系繊維複合樹脂101が線状の模様809を形成する。したがって、障害物803の配置によって、成形品100の任意の位置において、線状の模様809を形成できる。
【0127】
なお、実施の形態3において、ゲート802が4つ及び障害物803が4つの例について説明したが、これに限定されない。ゲート802及び障害物803の数は金型に配置できる範囲で、任意に設定してもよい。また、ゲート802の数と障害物803の数は異なっていてもよい。
【0128】
なお、実施の形態3において、転写跡813が成形品801の表面に沿って形成された模様である例について説明したが、これに限定されない。転写跡813は、凹凸等の立体形状を有し、成形品801の表面から突出または凹んでいてもよい。
【0129】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本開示の成形品及びその製造方法、射出成形金型、成形装置は、成形品に対する模様及び着色の付与において有用である。本開示の成形品は、射出成形と同等のサイクルで濃淡模様を再現できる。例えば、木目模様を再現したら、長時間かかる木材の削出し加工で適用されていた商品の置換えや、耐久性の問題で採用が困難とされていた水周り等の本物の木材を採用できない部品にも適用できる。また1点ゲートでの成形が可能であるため、樹脂材料ロスの削減にもつながり、環境に貢献できる。
【符号の説明】
【0131】
100 成形品
101 セルロース系繊維複合樹脂
102 ゲート
112 ゲート跡
103 障害物
113 転写跡
104 樹脂合流界面
107 線状の模様
304 先端面形状
401 射出成形機
402 固定金型
403 可動金型
404 バネ
440 射出成形金型
601 駆動源
602 ホルダー部品
801 成形品
802 ゲート
803 障害物
813 転写跡
805 溶融樹脂
806 フローフロント
807 樹脂合流部
809 線状の模様
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9