(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072977
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】水中ポンプ用電気絶縁判断装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20230518BHJP
F04B 51/00 20060101ALI20230518BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G01R31/52
F04B51/00
F04D13/08 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185747
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
(72)【発明者】
【氏名】坂野 聖治
【テーマコード(参考)】
2G014
3H130
3H145
【Fターム(参考)】
2G014AA16
2G014AA17
2G014AB07
3H130AA03
3H130AB23
3H130AB60
3H130AC01
3H130BA90H
3H130DD01Z
3H130DF01X
3H130DF03X
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA41
3H145CA21
3H145EA20
3H145FA02
3H145FA16
3H145FA23
3H145FA24
(57)【要約】
【課題】 水中ポンプ用電気絶縁判断装置の一例を開示する。
【解決手段】 制御装置21は、電動モータ12の巻き線の温度が予め決められた温度以上となっているときの絶縁抵抗値が予め決められた値より小さいときに、電気絶縁が劣化しているものとみなして予め決められた漏電判定処理を実行する。したがって、管理者が定期又は不定期なタイミングで絶縁抵抗を計測して電気絶縁劣化を検査する方式に比べて、漏電の発生が確実に抑制され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部及び電動モータが一体化され、当該一体化された部位が水中に浸漬した状態で使用される水中ポンプに用いられる電気絶縁判断装置において、
前記電動モータの給電ラインと接地ラインとの間の電気抵抗値(以下、絶縁抵抗値という。)を検出する絶縁抵抗検出部と、
前記電動モータが停止し、かつ、当該電動モータの巻き線の温度が予め決められた温度条件を満たしているときの前記絶縁抵抗値(以下、検出抵抗値という。)が予め決められた値より小さいときに、予め決められた漏電判定処理を実行する絶縁判断部と
を備える水中ポンプ用電気絶縁判断装置。
【請求項2】
前記給電ラインの電気抵抗値を検出する抵抗検出部を備え、
前記絶縁判断部は、前記給電ラインの電気抵抗値を利用して前記巻き線の温度を判断する請求項1に記載の水中ポンプ用電気絶縁判断装置。
【請求項3】
前記給電ラインに溜まった電荷を当該給電ラインから放出させる放電部を備え、
前記絶縁判断部は、前記放電部が作動した後の前記検出抵抗値を利用して前記漏電判定処理を実行するか否かを判断する請求項1又は2に記載の水中ポンプ用電気絶縁判断装置。
【請求項4】
前記接地ラインと大地側との接続回路を開く開閉器を備え、
前記絶縁判断部は、前記開閉器が開いた後の前記検出抵抗値を利用して前記漏電判定処理を実行するか否かを判断する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水中ポンプ用電気絶縁判断装置。
【請求項5】
今回の前記検出抵抗値が前回の前記検出抵抗値より小さく、かつ、今回の前記検出抵抗値と前回の前記検出抵抗値との関係が予め決められた条件を満たす場合に、今回の前記検出抵抗値を予め決められた機器に送信する送信部を備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水中ポンプ用電気絶縁判断装置。
【請求項6】
前記絶縁判断部は、前記電動モータの巻き線の温度が予め決められた温度以上であるときに、前記温度条件を満たしていると判断する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水中ポンプ用電気絶縁判断装置。
【請求項7】
水中ポンプと、
前記水中ポンプの停止及び稼働を制御するポンプ制御部と、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水中ポンプ用電気絶縁判断装置とを備え、
前記ポンプ制御部又は前記水中ポンプ用電気絶縁判断装置は、予め決められた時間毎に前記水中ポンプを停止させる定期停止制御を実行可能であり、
さらに、前記水中ポンプ用電気絶縁判断装置は、前記定期停止制御の実行時に前記漏電判定処理を実行するポンプ装置。
【請求項8】
電動モータの電気絶縁寿命を推定する機械学習システムに向けて、機械学習用の教師データを予め決められたタイミングで送信する教師データ送信部を備える請求項7に記載のポンプ装置。
【請求項9】
送信する前記教師データは、前記絶縁抵抗値、前記電動モータが起動した時から停止した時まで時間(以下、稼働時間という。)、稼働時間にける平均電流値、1時間当たりの平均起動回数、及び水中ポンプの設置後の経過日数を少なくとも含むデータである請求項8に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中ポンプ用電気絶縁判断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中ポンプは、特許文献1に記載されているように、ポンプ部及び電動モータが一体化されているとともに、当該一体化された部位が水中に浸漬した状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、温泉水の揚水に水中ポンプが使用される場合においては、揚水の水素イオン濃度(pH値)に起因する腐食や、シリカ、カルシウム、硫黄、鉄等の不溶性物質の付着により、電動モータの巻き線の対地間の絶縁抵抗の低下が早期に進行する可能性がある。
【0005】
このため、従来では、水中ポンプの管理者が定期又は不定期なタイミングで絶縁抵抗を計測していた。本開示は、当該点に鑑みた水中ポンプ用電気絶縁判断装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポンプ部(11)及び電動モータ(12)が一体化され、当該一体化された部位が水中に浸漬した状態で使用される水中ポンプ(10)に用いられる電気絶縁判断装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0007】
すなわち、当該構成要件は、電動モータ(12)の給電ライン(22C)と接地ライン(22D)との間の電気抵抗値(以下、絶縁抵抗値という。)を検出する絶縁抵抗検出部(23)と、電動モータ(12)が停止し、かつ、当該電動モータ(12)の巻き線の温度が予め決められた温度条件を満たしているときの絶縁抵抗値(以下、検出抵抗値(Dr)という。)が予め決められた値より小さいときに、予め決められた漏電判定処理を実行する絶縁判断部(21)とを備えることが望ましい。
【0008】
これにより、当該電気絶縁判断装置は、検出抵抗値(Dr)が予め決められた値より小さいときに、絶縁劣化が進行したものとみなして予め決められた漏電判定処理を実行する。したがって、管理者が定期又は不定期なタイミングで絶縁抵抗を計測して電気絶縁劣化を検査する方式に比べて、漏電の発生が確実に抑制され得る。
【0009】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るポンプ装置を示す図である。
【
図2】絶縁判断装置の作動を示すフローチャートである。
【
図3】第2実施形態に係るポンプ監視システムを示す図である。
【
図4】遠隔監視装置の作動の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0012】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0013】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された流量検出器は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0014】
(第1実施形態)
<1.ポンプ装置の概要>
<1.1 ポンプ装置の構成>
本実施形態は、温泉水を地下から汲み上げるポンプ装置に本開示に係るポンプ装置及び水中ポンプ用電気絶縁判断装置(以下、絶縁判断装置という。)の一例が適用されたものである。当該ポンプ装置1は、
図1に示されるように、少なくとも1台の水中ポンプ10及び制御盤20等を備える。
【0015】
<1.2 水中ポンプ>
水中ポンプ10は、ポンプ部11及び電動モータ12等を少なくとも有する。ポンプ部11と電動モータ12とは一体化されている(特許文献1の
図1等参照)。当該一体化された部位、つまり水中ポンプ10は、温泉井戸の水中に浸漬した状態で使用される。
【0016】
なお、本実施形態に係る電動モータ12は、三相誘導電動機等の三相交流モータにて構成されている。つまり、本実施形態では、電動モータ12の固定子コイル(図示せず。)への通電が制御されることにより、水中ポンプ10の作動が制御される。
【0017】
<1.3 制御盤>
制御盤20は、制御装置21及び駆動部22等を少なくとも有する。制御装置21は、ポンプ制御部及び漏電監視部等を有する。ポンプ制御部は、駆動部22と協働して電動モータ12の起動及び停止等を制御する。
【0018】
駆動部22は、複数の電磁開閉器22A及び複数の漏電遮断器22B等を有して構成されている。各電磁開閉器22A及び各漏電遮断器22Bは、各固定子コイルに接続された給電ライン22Cに直列に設けられている。
【0019】
ポンプ制御部、つまり制御装置21は、温泉水が貯留されるタンク(図示せず。)の貯水量が所定量以下となったときに、水中ポンプ10を稼働させて温泉水を汲み上げる。そして、制御装置21は、貯水量が所定量以上となったときに水中ポンプ10を停止する。
【0020】
さらに、制御装置21は、予め決められた時間(例えば、100時間)毎に水中ポンプ10を停止させる定期停止制御を実行する。そして、定期停止制御により水中ポンプ10、つまり電動モータ12が停止すると、漏電監視部による絶縁劣化判断が実行される。
【0021】
給電ライン22Cは、対応する固定子コイルに駆動電流を供給するための給電線である。そして、各電磁開閉器22Aは対応する給電ライン22Cを開閉(断続)する。各漏電遮断器22Bは、漏電が発生したときに、対応する給電ライン22Cを開く。
【0022】
漏電監視部は、電動モータ12の電気絶縁不良を監視する監視機能が発揮可能である。具体的には、給電ライン22Cと接地ライン22Dとの間の電気抵抗値(以下、絶縁抵抗値Rzという。)の低下を監視する。
【0023】
接地ライン22Dは、モータハウジング(図示せず。)等の固定子コイルに対して電気絶縁状態にある部位と大地と接続する接地線である。当該接地ライン22Dは、接地端子22Eを介して大地と電気的に接続されている。
【0024】
制御装置21は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。そして、本実施形態では、ソフトウェアがCPUにて実行されることにより、ポンプ制御部及び漏電監視部等が実現される。なお、当該ソフトウェアは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0025】
<2.絶縁判断装置>
<2.1 絶縁判断装置の主機器>
絶縁判断装置は、漏電監視部(以下、制御装置21と記す。)、絶縁抵抗検出部23及び温度検出部24等を少なくとも有する。絶縁抵抗検出部23は、絶縁抵抗値Rz、つまり給電ライン22Cと接地ライン22Dとの間の電気抵抗値を検出する。
【0026】
なお、本実施形態では、絶縁抵抗検出部23は、W相に接続された給電ライン22C(以下、対象給電ライン22Cという。)と接地ライン22Dとの間の絶縁抵抗値Rzを検出する。
【0027】
具体的には、絶縁抵抗検出部23は、電流センサ23A、電圧センサ23B及び電池23C等を有して構成されている。電池23Cは、絶縁抵抗値Rzを検出するための電圧を対象給電ライン22Cと接地ライン22Dとの間に印加する。
【0028】
電圧センサ23Bは、電池23Cの印加電圧を検出する。電流センサ23Aは、対象給電ライン22Cから接地ライン22Dに至る回路を流れる電流値を検出する。制御装置21は、検出電圧値及び検出電流値を用いて絶縁抵抗値Rzを演算する。
【0029】
温度検出部24は、固定子コイル、つまり電動モータ12の巻き線の温度を直接的又は間接的に検出する。本実施形態に係る温度検出部24は、抵抗法により間接的に巻き線の温度を検出する。
【0030】
具体的には、電流センサ24A、電圧センサ24B及び電池24C等を有して構成されている。電池24Cは、給電ライン22Cの電気抵抗値を検出するための電圧を2本の給電ライン22C間(本実施形態では、U相とW相との間)に電圧を印加する。
【0031】
電圧センサ24Bは、電池24Cの印加電圧を検出する。電流センサ24Aは、当該給電ライン22Cを流れる電流値を検出する。制御装置21は、検出電圧値及び検出電流値を用いて電気抵抗値を検出する。つまり、本実施形態に係る温度検出部24は、給電ライン22Cの電気抵抗値を検出する抵抗検出部により構成されている。
【0032】
なお、電気抵抗値が決まれば、巻き線(固定子コイル)の温度が一義的に決まる。このため、本実施形態に係る制御装置21は、電気抵抗値を温度に換算することなく、当該電気抵抗値(以下、巻き線抵抗値という。)をもって固定子コイルの温度を把握する。
【0033】
<2.2 絶縁判断装置の補機器>
絶縁判断装置は、制御装置21、絶縁抵抗検出部23及び温度検出部24に加えて、放電部25、第1開閉器26A~第5開閉器26E、及び第6開閉器26F~第9開閉器26J等も有する。
【0034】
放電部25は、対象給電ライン22Cに溜まった電荷を対象給電ライン22Cから放出させる除電部である。なお、本実施形態に係る放電部25は、電気抵抗に構成されている。つまり、当該放電部25は、溜まった電化を熱に変換して放出する。
【0035】
第1開閉器26Aは、電流センサ23Aが配置された回路を開閉する。第2開閉器26Bは、電流センサ24Aが配置された回路を開閉する。第3開閉器26C及び第4開閉器26Dそれぞれは、放電部25の前後に配置され、放電部25に至る回路を開閉する。第5開閉器26Eは、接地ライン22Dと接地端子22Eとの接続回路を開閉する。
【0036】
第6開閉器26F及び第7開閉器26Gそれぞれは、電池23Cの前後に配置され、電池23Cに至る回路を開閉する。第8開閉器26H及び第9開閉器26Jそれぞれは、電池24Cの前後に配置され、電池24Cに至る回路を開閉する。
【0037】
なお、第5開閉器26Eは、常時閉・通電開となるタイプの開閉器である。第5開閉器26E以外の他の開閉器は、常時開・通電閉となるタイプの開閉器である。そして、各開閉器の開閉作動は、制御装置21によって制御される。
【0038】
<2.3 絶縁判断装置の制御>
<制御の概要>
漏電監視部、つまり制御装置21は、以下の4つの条件満たす絶縁抵抗値Rz(以下、検出絶縁抵抗値Drという。)を用いて絶縁劣化判断を実行する。すなわち、検出絶縁抵抗値Drは、(1)電動モータ12が停止し、(2)巻き線の温度が予め決められた温度条件を満たし、(3)放電部25の作動し、かつ(4)第5開閉器26Eが開いた後の絶縁抵抗値Rzである。
【0039】
そして、制御装置21は、検出絶縁抵抗値Drが予め決められた値(以下、限界絶縁抵抗値Lrという。)より小さいときに、予め決められた漏電判定処理を実行する。漏電判定処理とは、例えば、漏電が発生した可能性がある旨の警告の発信である。
【0040】
当該警告は、通信部27を介してポンプ装置1の管理者及び当該ポンプ装置1を管理する遠隔監視装置(図示せず。)に向けて送信される。なお、通信方法は、無線通信及び有線通信のいずれでもよい。
【0041】
本実施形態では、限界絶縁抵抗値Lrとして、現実に漏電を発生する絶縁抵抗値Rzより大きな値が選択されている。このため、検出絶縁抵抗値Drが限界絶縁抵抗値Lrより小さくても漏電が発生していない場合もある。
【0042】
上記の「巻き線の温度が予め決められた温度条件を満たす」とは、例えば、「巻き線の温度が予め決められた温度以上の場合」をいう。なお、巻き線の温度は、巻き線抵抗値に対応する。このため、本実施形態では、「巻き線抵抗値が予め決められた抵抗値(以下、温間時抵抗値という。)以上の場合」に上記の温度条件が満たされる。
【0043】
本実施形態に係る温間時抵抗値は、ポンプ装置1の設置後、初回の電動モータ12の起動前に検出された巻き線抵抗値に係数K1が乗算された値である。係数K1は、1より大きい所定数である。
【0044】
つまり、温間時抵抗値は、電動モータ12が冷えているときの巻き線抵抗値(以下、冷間時抵抗値という。)に係数K1が乗算された値である。換言すれば、温間時抵抗値とは、電動モータ12の温度が上記「予め決められた温度」相当まで上昇したときの巻き線抵抗値である。
【0045】
なお、冷間時抵抗値は、「ポンプ装置1の設置後、初回の電源スイッチ(図示せず。)の投入後、電動モータ12の起動前に自動的に取得された値」、又は「設置作業者の手動操作によって取得された値である。
【0046】
さらに、制御装置21は、今回の検出絶縁抵抗値Dr2が前回の検出絶縁抵抗値Dr1より小さく、かつ、今回の検出絶縁抵抗値Dr2と前回の検出絶縁抵抗値Dr1との関係が予め決められた条件を満たす場合に、通信部27を介して今回の検出絶縁抵抗値Dr2を予め決められた機器に送信する。
【0047】
予め決められた機器とは、例えば、管理者の所有する通信機器や遠隔監視装置等である。上記の「予め決められた条件を満たす」とは、例えば、以下の(a)又は(b)の条件が成立する場合等をいう。
【0048】
条件(a)とは、「検出絶縁抵抗値Drの減少率が予め決められた値K2以上となる場合」である。
【0049】
検出絶縁抵抗値Drの減少率とは、前回の検出絶縁抵抗値Dr1から今回の検出絶縁抵抗値Dr2が減算された値を前回の検出絶縁抵抗値Dr1で除算した値である。つまり、検出絶縁抵抗値Drの減少率とは、(Dr1-Dr2)/Dr1である。
【0050】
条件(b)とは、「検出絶縁抵抗値Drの減少量、つまり、(Dr1-Dr2)が予め決められた値ΔR以上の場合」である。
【0051】
したがって、制御装置21は、今回の検出絶縁抵抗値Dr2が限界絶縁抵抗値Lrより小さいときには漏電判定処理を実行し、上記の(a)又は(b)の条件が成立した場合には、今回の検出絶縁抵抗値Dr2を送信する。
【0052】
<制御の詳細(
図2参照)>
図2示される監視機能制御は、電源スイッチの投入と共に起動し、電源スイッチが遮断された時に停止する。監視機能制御が起動すると、制御装置21は、水中ポンプ10が停止中であるか否かを判断する(S1)。
【0053】
水中ポンプ10が停止中である場合には(S1:YES)、制御装置21は、第1開閉器26A、第2開閉器26B、第8開閉器26H及び第9開閉器26Jを閉じて巻き線抵抗値を検出する(S2)。
【0054】
次に、第2開閉器26B、第8開閉器26H及び第9開閉器26Jを開いた後、その検出した巻き線抵抗値が温間時抵抗値以上であるか否かを判断する(S3)。巻き線抵抗値が温間時抵抗値以上である場合には(S3:YES)、第3開閉器26C及び第4開閉器26Dを閉じて放電部25を作動させる(S4)。
【0055】
その後、制御装置21は、第3開閉器26C及び第4開閉器26Dを開くとともに、第5開閉器26Eを開いた後(S5)、第6開閉器26F及び第7開閉器26Gを閉じて絶縁抵抗値Rz、つまり検出絶縁抵抗値Drを検出する(S6)。
【0056】
なお、本実施形態に係る制御装置21は、第6開閉器26F及び第7開閉器26Gを閉じた時から所定時間が経過したとき、つまり電池23Cの電圧が印加された時から所定時間(例えば、60秒)が経過したときの検出値を用いて検出絶縁抵抗値Drを取得する。
【0057】
次に、制御装置21は、第5開閉器26Eを閉じ、第6開閉器26F及び第7開閉器26Gを開いた後、検出絶縁抵抗値Drが限界絶縁抵抗値Lrより小さいか否かを判断する(S7)。
【0058】
検出絶縁抵抗値Drが限界絶縁抵抗値Lrより小さい場合には(S7:YES)、制御装置21は、漏電判定処理を実行する(S8)。検出絶縁抵抗値Drが限界絶縁抵抗値Lr以上の場合には(S7:NO)、制御装置21は、検出絶縁抵抗値Drの減少率が値K2以上であるか否かを判断する(S9)。
【0059】
検出絶縁抵抗値Drの減少率が値K2以上である場合には(S9:YES)、今回の検出絶縁抵抗値Dr2を外部の機器に送信する(S10)。検出絶縁抵抗値Drの減少率が値K2未満である場合には(S9:NO)、制御装置21は、検出絶縁抵抗値Drの減少量が値ΔR以上であるか否かを判断する(S11)。
【0060】
そして、検出絶縁抵抗値Drの減少量が値ΔR以上である場合には(S11:YES)、制御装置21は、今回の検出絶縁抵抗値Dr2を外部の機器に送信する(S10)。検出絶縁抵抗値Drの減少量が値ΔR未満である場合には(S11:NO)、制御装置21は、S1を再び実行する。
【0061】
<3.本実施形態に係るポンプ装置(特に、絶縁判断装置)の特徴>
絶縁判断装置は、巻き線の温度が予め決められた温度条件を満たすときの絶縁抵抗値Rz(検出絶縁抵抗値Dr)が予め決められた値より小さいときに、絶縁劣化が進行したものとみなして予め決められた漏電判定処理を実行する。したがって、管理者が定期又は不定期なタイミングで絶縁抵抗を計測して電気絶縁劣化を検査する方式に比べて、漏電の発生が確実に抑制され得る。
【0062】
なお、本実施形態に係る絶縁判断装置は、巻き線の温度が「予め決められた温度以上の場合」に「温度条件を満たす」と判断する。これは、巻き線を覆う絶縁被覆は、使用温度が高くなるほど、絶縁劣化が進行し易いからである。
【0063】
ところで、水中ポンプ10の起動・停止時には、水中ポンプ10と揚水管13(
図1参照)に回転力が発生する。このため、揚水管13に固定された給電ライン22Cに捻れが発生し、当該捻れに伴って発生する内部摩擦によって絶縁部が帯電する可能性がある。
【0064】
そして、絶縁抵抗値Rzを検出する際に、絶縁体の容量成分に電荷が蓄積されていると、電池23Cにて印可する直流電圧が乱されてしまい、絶縁抵抗値Rzを正確に検出できないおそれがある。
【0065】
これに対して、本実施形態では、放電部25が作動した後に検出された絶縁抵抗値Rz(検出抵抗値Dr)を利用して漏電判定処理を実行するか否かを判断するので、絶縁抵抗値Rzを正確に検出することができ得る。
【0066】
本実施形態では、第5開閉器26Eが開いた後に検出された絶縁抵抗値Rz(検出抵抗値Dr)を利用して漏電判定処理を実行するか否かを判断するので、接地ライン22Dに誘起された対地電圧や対地間の静電容量の影響を遮断でき得るので、絶縁抵抗値Rzを正確に検出することができ得る。
【0067】
本実施形態では、今回の検出絶縁抵抗値Dr2が前回の検出絶縁抵抗値Dr1より小さく、かつ、今回の検出絶縁抵抗値Dr2と前回の検出絶縁抵抗値Dr1との関係が予め決められた条件を満たす場合に、今回の検出絶縁抵抗値Dr2が予め決められた機器に送信される。これにより、漏電が現実に発生する前に漏電の発生を検知することが可能となり得る。
【0068】
本実施形態では、予め決められた時間毎に水中ポンプ10を停止させる定期停止制御が実行されるので、今回の検出絶縁抵抗値Dr2と前回の検出絶縁抵抗値Dr1との関係の変化と相まって、制御装置21は、絶縁抵抗値Rzの劣化変化を確実に把握でき得る。
【0069】
(第2実施形態)
本実施形態は、
図3に示されるように、少なくとも1台のポンプ装置1及び少なくとも1台の遠隔監視装置30等が互いに通信可能に接続されたポンプ監視システムである。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0070】
そして、各ポンプ装置1は、教師データ送信部を備える。教師データ送信部は、機械学習用の教師データを予め決められたタイミングで遠隔監視装置30に送信する。本実施形態に係る教師データ送信部は、制御装置21及び通信部27により構成されている。
【0071】
なお、送信する教師データは、検出絶縁抵抗値Dr、電動モータ12が起動した時から停止した時まで時間(以下、稼働時間という。)、稼働時間にける平均電流値、1時間当たりの平均起動回数、及び水中ポンプ10の設置後の経過日数を少なくとも含むデータである。
【0072】
遠隔監視装置30は、CPU又はGPU、ROM、RAM及び大容量記憶装置(図示せず。)等を有するコンピュータである。遠隔監視装置30には、各ポンプ装置1から送信されてきた教師データを用いて、漏電発生時を推定するための機械学習システム、つまり学習モデル作成部が構築されている。
【0073】
そして、機械学習システムにて作成又は更新された学習済みモデルは、各ポンプ装置1から要請等を受けて遠隔監視装置30にて実行される。当該学習済みモデルにて得られた結論、つまり推定漏電発生時は、要請元のポンプ装置1に返信される。
【0074】
つまり、遠隔監視装置30は、例えば、
図4に示されるように、教師データを所得すると(S31)、当該教師データを学習モデル作成部に入力させて(S32)、漏電発生時を推定する学習済みモデルを作成又は更新するめの演算を開始する(S33)。
【0075】
そして、新規又は更新した学習済みモデルが完成すると、遠隔監視装置30は、その学習済みモデルを利用可能な状態で記憶するとともに(S35)、当該学習済みモデルにて推定された漏電発生時が教師データを送信したポンプ装置1に返信する。
【0076】
これにより、本実施形態に係るポンプ装置1では、人工知能を利用して漏電発生時を推定することができきるので、漏電発生時、つまり水中ポンプ10の交換時期等を正確に予測でき得る。
【0077】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、巻き線の温度が「予め決められた温度以上の場合」に「温度条件を満たす場合」とした。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、巻き線の温度が「予め決められた温度範囲である場合」又は「予め決められた温度以下の場合」に「温度条件」を満たすとしてもよい。
【0078】
上述の実施形態に係る制御装置21は、定期停止制御が実行されたときに絶縁抵抗値Rzの検出及び漏電判定処理を実行するか否かの判断を実行した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、制御装置21は、水中ポンプ10が停止したときに絶縁抵抗値Rzの検出及び漏電判定処理を実行するか否かの判断を実行してもよい。
【0079】
上述の実施形態では、ポンプ制御部が定期的に定期停止制御を実行した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、絶縁判断装置、つまり漏電監視部がポンプ制御部に対して定期的に定期停止制御の実行を指令してもよい。
【0080】
上述の実施形態では、ポンプ制御部及び漏電監視部が1つの制御基板により構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ポンプ制御部と別に絶縁判断装置が構成されていてもよい。なお、当該構成の場合には、既設のポンプ装置に絶縁判断装置を後付けすることも可能である。
【0081】
上述の実施形態では、各固定子コイルに供給する駆動電流をそれぞれ断続するためのスイッチ手段を電磁開閉器にて構成した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、当該スイッチ手段が電磁接触器にて構成されていてもよい。
【0082】
上述の実施形態では、検出絶縁抵抗値Drは、4つの条件を満たす状態の絶縁抵抗値Rzであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、検出絶縁抵抗値Drは、少なくとも電動モータ12が停止し、巻き線の温度が予め決められた温度以上のときに検出された絶縁抵抗値Rzであれば十分である。
【0083】
上述の実施形態では、4つの条件を満たしたときの絶縁抵抗値Rzを検出し、その絶縁抵抗値Rzを検出絶縁抵抗値Drとした。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、絶縁抵抗値Rzを常に検出し、4つの条件を満たしたときに検出された絶縁抵抗値Rzを検出絶縁抵抗値Drとしてもよい。
【0084】
上述の実施形態に係る漏電判定処理は、漏電の可能性を示唆する警告であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、検出絶縁抵抗値Drを管理者等に送信する処理であってよい。
【0085】
上述の実施形態では、抵抗法により巻き線温度を検出した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、温度センサにより巻き線温度を検出する構成であってもよい。
【0086】
上述の実施形態では、電磁開閉器や電磁接触器のコイルのようなインダクタンスへの通電電流を遮断する際に、逆起電力による過大なサージ電圧が発生し易い。このため、水中ポンプの起動・停止頻度が高いと、固定コイルの絶縁抵抗が劣化するといった不具合が発生するおそれがある。
【0087】
このような場合には、電磁開閉器や電磁接触器のコイルの両端に、コンデンサと抵抗もしくはバリスタにより構成されるサージ吸収器を接続して電磁接触器等のコイルのへの通電電流を遮断する際に発生するサージ電圧を抑制することが望ましい。
【0088】
上述の第2実施形態では、学習済みモデルの作成及び更新が遠隔監視装置30にて実行される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、制御装置21に学習モデル作成部が構築されていてもよい。
【0089】
上述の第2実施形態では、学習済みモデルを利用した漏電発生時の推定は、遠隔監視装置30にて実行される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、学習済みモデルの作成及び更新は遠隔監視装置30にて実行され、その作成及び更新された学習済みモデルを利用した漏電発生時の推定は、各ポンプ装置にて実行される構成であってもよい。
【0090】
なお、当該構成においては、作成及び更新された学習済みモデルを各ポンプ装置にて実行する必要がある。このため、各ポンプ装置に組み込むべき学習済みモデルは、遠隔監視装置30による自動選択、制御装置21により自動選択、又は作業者により手動選択のいずれであってもよい。
【0091】
上述の第2実施形態では、学習済みモデルを作成又は更新するために教師データを遠隔監視装置30に送信した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、学習済みモデルが既に制御装置21に組み込まれている場合には、制御装置21は、自身に組み込まれた学習済みモデルを利用して漏電発生時を推定してもよい。
【0092】
上述の実施形態に係るポンプ装置は、温泉水を汲み上げるポンプ装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、深井戸水中ポンプ、汚水水中ポンプ、及び工事用水中ポンプ等のポンプ装置にも適用可能である。なお、複数の水中ポンプを備えるポンプ装置においては、各水中ポンプの運転方式は不問である。
【0093】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1… ポンプ装置 10…水中ポンプ 11… ポンプ部
12… 電動モータ 13…揚水管 20… 制御盤
21… 制御装置 22…駆動部 22A… 電磁開閉器
22C… 給電ライン 22D…接地ライン 22E… 接地端子
23… 絶縁抵抗検出部 23A…電流センサ 23B… 電圧センサ
23C… 電池 24…温度検出部 24A… 電流センサ
24B… 電圧センサ 24C…電池 25… 放電部