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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072980
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20230518BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
F04D15/00 L
F04B49/06 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185750
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA01
3H020BA02
3H020BA16
3H020BA24
3H020CA01
3H020CA10
3H020DA01
3H020EA02
3H020EA05
3H020EA12
3H020EA14
3H145AA23
3H145BA47
3H145CA01
3H145CA19
3H145DA47
3H145EA13
3H145EA16
3H145EA34
3H145EA41
(57)【要約】
【課題】 外気温度センサを用いることなく、凍結防止機能の実行を制御可能な給水装置の一例を開示する。
【解決手段】 給水装置1は、凍結による圧力上昇を利用して凍結防止機能を実行するか否かを決定する。夏季においては、蓄圧器7内の圧力が上昇して検出圧力Pが非凍結時圧力Psより高くなり、凍結防止機能が誤作動するおそれがある。これに対して、当該給水装置1では、検出温度Tが非冬季温度Tw以下の場合において、検出圧力Pが非凍結時圧力Psより高くなったときに凍結防止機能を実行させるので、蓄圧器7内の圧力が上昇した場合に凍結防止機能が誤作動することがない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水用の電動ポンプを備え、当該電動ポンプ内の水の凍結を防止する凍結防止機能を実行可能な給水装置において、
前記電動ポンプの吐出し側圧力を検出する圧力センサと、
前記電動ポンプ内の水温を直接的又は間接的に検出する温度センサと、
前記電動ポンプの停止時に給水圧を保持するための蓄圧器と、
前記電動ポンプの停止時に前記電動ポンプ内の水が吐出し側から吸い込み側に流通することを防止する逆止弁と、
前記凍結防止機能の開始及び停止を制御する凍結防止制御部とを備え、
前記温度センサが検出した温度を検出温度とし、前記圧力センサが検出した圧力を検出圧力とし、
4℃より高く、かつ、25℃以下の予め決められた温度を非冬季温度とし、前記電動ポンプが停止した直後の検出圧力を非凍結時圧力としたとき、
前記凍結防止制御部は、検出温度が前記非冬季温度以下となり、かつ、検出圧力が前記非凍結時圧力より高いときに前記凍結防止機能を実行させる計測制御モードが実行可能である給水装置。
【請求項2】
前記計測制御モードの実行開始直後、又は当該実行開始直前の検出温度を凍結開始温度とし、当該凍結開始温度に対して予め決められた値を加算した温度を凍結防止開始温度としたとき、
前記凍結防止制御部は、検出温度が前記凍結防止開始温度以下となったときに前記凍結防止機能を実行させる凍結防止制御モードが実行可能である請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記凍結防止制御部は、前記計測制御モードを実行した以降は、前記凍結防止制御モードを実行する請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記凍結防止開始温度に対して予め決められた値を加算した温度を凍結防止停止温度としたとき、
前記凍結防止制御部は、検出温度が前記凍結防止停止温度以上となったときに前記凍結防止機能を停止させる請求項2又は3に記載の給水装置。
【請求項5】
前記凍結防止制御部は、前記凍結防止機能を停止させる温度(以下、凍結防止停止温度という。)を推定するための機械学習システムを実行する学習モデル作成部を有するとともに、検出温度が前記凍結防止停止温度以上となったときに前記凍結防止機能を停止させ、
さらに、学習モデル作成部は、検出温度、前記凍結防止開始温度及び前記凍結防止機能の実行時に消費された電力を含むデータを教師データとして、前記凍結防止停止温度を推定する学習モデルを作成する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、凍結防止機能を備える給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の給水装置では、外気温度センサの検出温度が一定温度以下に低下した場合に、発熱体に通電して電動ポンプを加熱することにより、電動ポンプ内の水が凍結することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-240376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明においては、外気温度に基づいて凍結防止機能の実行を制御する。このため、例えば、外気温度センサが電動モータの近傍に配置されていると、適切に外気温度を検出することができない。
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、外気温度センサを用いることなく、凍結防止機能の実行を制御可能な給水装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
給水用の電動ポンプ(3)を備え、当該電動ポンプ(3)内の水の凍結を防止する凍結防止機能を実行可能な給水装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、電動ポンプ(3)の吐出し側圧力を検出する圧力センサ(Ps)と、電動ポンプ(3)内の水温を直接的又は間接的に検出する温度センサ(Ts)と、電動ポンプ(3)の停止時に給水圧を保持するための蓄圧器(7)と、電動ポンプ(3)の停止時に電動ポンプ(3)内の水が吐出し側から吸い込み側に流通することを防止する逆止弁(9)と、凍結防止機能の開始及び停止を制御する凍結防止制御部(5)とを備え、凍結防止制御部(5)は、検出温度(T)が非冬季温度(Tw)以下となり、かつ、検出圧力(P)が非凍結時圧力(Ps)より高いときに凍結防止機能を実行させる計測制御モードが実行可能であることである。
【0007】
なお、検出温度とは、温度センサ(Ts)が検出した温度をいう。検出圧力とは、圧力センサ(Ps)が検出した圧力をいう。非冬季温度(Tw)とは、4℃より高く、かつ、25℃以下の予め決められた温度をいう。非凍結時圧力(Ps)とは、電動ポンプ(3)が停止した直後の検出圧力をいう。
【0008】
これにより、当該給水装置では、凍結による圧力上昇を利用して凍結防止機能を実行するか否かが決定される。なお、夏季においては、蓄圧器(7)内の圧力が上昇して検出圧力が非凍結時圧力(Ps)より高くなり、凍結防止機能が誤作動するおそれがある。
【0009】
これに対して、当該給水装置では、検出温度(T)が非冬季温度(Tw)以下の場合において、検出圧力が非凍結時圧力(Ps)より高くなったときに凍結防止機能を実行させるので、蓄圧器(7)内の圧力が上昇した場合に凍結防止機能が誤作動することがない。
【0010】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る給水装置を示す図である。
図2】第1実施形態に係る凍結防止制御を示すフローチャートである。
図3】第2実施形態に係る給水装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0013】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0014】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された給水装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0015】
(第1実施形態)
<1.給水装置の概要>
<1.1 給水装置の構成>
本実施形態は、図1に示されるように、家庭用給水ポンプ等の比較的に小型の給水装置に本開示に係る給水装置1の一例が適用されたものである。給水装置1は、電動ポンプ3、制御部5、蓄圧器7、逆止弁9、流量センサFs、温度センサTs及び圧力センサPs等を少なくとも有する。
【0016】
電動ポンプ3は、ポンプ部3A及び電動モータ部3B等を有して構成されている。ポンプ部3Aは、カスケード型(渦流型)ポンプ等の高揚程型のタービンポンプである。電動モータ部3Bは、ポンプ部3Aのインペラ(図示せず。)を回転駆動する。
【0017】
制御部5は、ポンプ制御部及び凍結防止制御部等を少なくとも有している。ポンプ制御部は、電動ポンプ3の停止及び稼働を制御する。凍結防止制御部は、凍結防止機能の開始及び停止を制御する。
【0018】
本実施形態に係る制御部5は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。そして、ポンプ制御部及び凍結防止制御部は、制御部5にてソフトウェアが実行されることにより実現される。なお、当該ソフトウェアは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0019】
制御部5には、流量センサFs、温度センサTs及び圧力センサPsの出力信号が入力されている。流量センサFsは、電動ポンプ3の吐出し流量を検出する。温度センサTsは、電動ポンプ3内の水温を直接的又は間接的に検出する。
【0020】
具体的には、温度センサTsは、ポンプケーシングの温度やケーシング内の水温(吐出し口での水温も含む。)等を検出する。なお、本実施形態に係る温度センサTsは、ポンプケーシングの温度を検出している。
【0021】
圧力センサPsは、電動ポンプ3の吐出し側圧力を検出する。蓄圧器7は、電動ポンプ3の吐出し側に接続されて当該電動ポンプ3が停止しているときに吐出し側の水圧、つまり給水圧を保持する。当該蓄圧器7は、封入された不活性ガスの圧力を利用して給水圧を保持する。
【0022】
蓄圧器7及び圧力センサPsが配置された部位より上流側(本実施形態では、電動ポンプ3の吸入側)には逆止弁9が配置されている。逆止弁9は、電動ポンプ3の停止時に電動ポンプ3内の水が吐出し側から吸い込み側に流通することを防止する。
【0023】
<1.2 ポンプ制御>
ポンプ制御部、つまり制御部5は、電動ポンプ3の作動を制御可能である。なお、本実施形態に係る制御部5は、インバータ方式の駆動回路(図示せず。)を介して電動ポンプ3の作動を制御する。
【0024】
制御部5は、ポンプ制御として、「起動制御」、「目標圧力制御」及び「小水量停止制御」等が実行可能である。以下、温度センサTsが検出した温度を検出温度Tとし、圧力センサPsが検出した圧力を検出圧力Pとし、流量センサFsが検出流量を検出流量Fという。
【0025】
起動制御は、検出圧力Pが予め決められた圧力以下となったときに電動ポンプ3を起動させる制御である。目標圧力制御は、検出圧Pが目標とする標圧力となるように電動ポンプ3を稼働させる制御である。小水量停止制御は、検出流量Fが予め設定された流量以下となったときに電動ポンプ3を停止させる制御である。
【0026】
<2.凍結防止制御>
凍結防止制御部、つまり制御部5は、凍結防止機能の実行開始及び停止等を制御する。凍結防止機能とは、電動ポンプ3内の水の凍結を防止するための制御である。なお、本実施形態では、凍結防止機能が実行されると、電動ポンプ3のインペラが予め決められた回転速度で回転する。
【0027】
制御部5は、凍結防止制御として、計測制御モード及び凍結防止制御モードが実行可能である。そして、本実施形態に係る制御部5は、計測制御モードを実行した以降は、凍結防止制御モードにて凍結防止制御を実行する。
【0028】
<2.1 計測制御モード>
計測制御モードとは、凍結防止開始温度Tsが確定していないときに実行される凍結防止制御の一例である。凍結防止開始温度Tsとは、凍結防止制御モードの実行時に利用される閾値をなす温度である。
【0029】
具体的には、計測制御モードとは、検出温度Tが非冬季温度Tw以下となり、かつ、検出圧力Pが非凍結時圧力Psより高いときに凍結防止機能を実行させる制御モードである。非冬季温度Twとは、4℃より高く、かつ、25℃以下の予め決められた温度(例えば、10℃)をいう。非凍結時圧力Psとは、電動ポンプ3が停止した直後の検出圧力をいう。
【0030】
つまり、計測制御モードでは、検出温度Tが非冬季温度Tw以下となって冬季と推定可能な状態時において、停止時の電動ポンプ3内の圧力が非凍結時圧力Psより高くなったときに凍結が発生したとみなして凍結防止機能が実行される。
【0031】
凍結防止機能が実行されると、制御部5は、検出温度が凍結防止停止温度Te以上となったときに凍結防止機能を停止させる。本実施形態に係る凍結防止停止温度Teは、凍結防止開始温度Tsに対して予め決められた値(例えば、5deg)を加算した温度である。
【0032】
<2.2 凍結防止制御モード>
凍結防止制御モードとは、検出温度Tが凍結防止開始温度Ts以下となったときに凍結防止機能を実行させる制御モードである。そして、制御部5は、検出温度が凍結防止停止温度Te以上となったときに凍結防止機能を停止させる。
【0033】
凍結防止開始温度Tsとは、凍結開始温度Tsoに対して予め決められた値(例えば、2deg)を加算した温度をいう。凍結開始温度Tsoとは、計測制御モードの実行開始直後(実行の時も含む。)、又は当該実行開始直前の検出温度Tをいう。
【0034】
なお、凍結開始温度Tsoは、計測制御モードによって凍結が発生したとみなされたときの検出温度Tであって、凍結防止機能により電動ポンプ3の温度が上昇する前の検出温度Tである。
【0035】
<2.3 凍結防止制御の詳細(図2参照)>
本実施形態に係る凍結防止制御は、小水量停止制御により電動ポンプ3が停止したときに実行される。なお、凍結防止制御の実行中に起動制御が実行された場合には、凍結防止制御は、その時点で終了し、ポンプ制御が実行される。
【0036】
図2に示されるように、凍結防止制御が起動されると、制御部5は、凍結防止開始温度Tsが確定し、その確定した凍結防止開始温度Ts及び凍結防止停止温度Teが記憶部(図示せず。)に記憶されているか否かを判断する(S1)。
【0037】
なお、本実施形態では、上記記憶部には、初期値にとしてNull値が記憶されている。そして、制御部5は、Null値が記憶されている場合には、凍結防止開始温度Ts及び凍結防止停止温度Teを示すデータが無いと判断する。
【0038】
凍結防止開始温度Ts及び凍結防止停止温度Teを示すデータが無いと判断された場合には(S1:YES)、制御部5は、電動ポンプ3が停止した直後の検出圧力を非凍結時圧力Psとして記憶部に記憶させた後(S2)、検出温度Tが非冬季温度Tw以下であるか否かを判断する(S3)。
【0039】
検出温度Tが非冬季温度Tw以下でない場合には(S3:NO)、制御部5は、S1を再び実行する。検出温度Tが非冬季温度Tw以下である場合には(S3:YES)、検出圧力Pが非凍結時圧力Ps以上であるか否かを判断する(S4)。
【0040】
検出圧力Pが非凍結時圧力Ps以上でない場合には(S4:NO)、制御部5は、S1を再び実行する。検出圧力Pが非凍結時圧力Ps以上である場合には(S4:YES)、制御部5は、現時の検出温度Tを凍結開始温度Tsoとして取得する(S5)。
【0041】
次に、制御部5は、その凍結開始温度Tsoに基づいて凍結防止開始温度Ts及び凍結防止停止温度Teを決定した後、それらの温度Ts、Teを記憶部に記憶させた後(S6)、凍結防止機能を実行させる(S7)。そして、制御部5は、検出温度Tが凍結防止停止温度Te以上となったときに(S8:YES)、凍結防止機能を停止させる(S9)。
【0042】
また、S1にて凍結防止開始温度Ts及び凍結防止停止温度Teを示すデータがあると判断された場合には(S1:NO)、制御部5は、検出温度Tが凍結防止開始温度Ts以下であるか否かを判断する(S10)。
【0043】
検出温度Tが凍結防止開始温度Ts以下である場合には(S10:YES)、制御部5は、凍結防止機能を実行させる(S7)。検出温度Tが凍結防止開始温度Ts以下でない場合には(S10:NO)、制御部5は、S1を再び実行する。
【0044】
<3.本実施形態に係る給水装置の特徴>
本実施形態に係る給水装置1の計測制御モードにおいては、凍結による圧力上昇を利用して凍結防止機能を実行するか否かが決定される。なお、夏季においては、蓄圧器7内の圧力が上昇して検出圧力Pが非凍結時圧力Psより高くなり、凍結防止機能が誤作動するおそれがある。
【0045】
これに対して、計測制御モードにおいては、検出温度Tが非冬季温度Tw以下の場合において、検出圧力が非凍結時圧力Psより高くなったときに凍結防止機能を実行させるので、蓄圧器7内の圧力が上昇した場合に凍結防止機能が誤作動することがない。
【0046】
ところで、凍結は、外気温度が低下して電動ポンプ3内の水が凍結開始温度以下まで低下したときに始まる。したがって、温度センサTsの検出温度Tが凍結開始温度となったときに凍結防止機能を実行すれば、凍結を防止でき得る。
【0047】
しかし、電動ポンプ3の設置環境が異なると、最初に凍結が始まる部位が異なるため、温度センサTsにて当該部位の水温を正確に検出することができない可能性がある。具体的には、温度センサTsが水温を検出する部位が、最初に凍結が始まる部位と異なる場合には、検出温度Tが凍結開始温度より高い状態であっても、当該部位で凍結が発生してしまう。
【0048】
これに対して、凍結防止機能を実行させる温度が、現実の凍結開始温度より高い温度に設定されていれば、検出温度Tが凍結開始温度より高い状態であっても、当該部位で凍結が発生してしまうことを未然に防止でき得る。しかし、この手法では、凍結防止機能の実行時に消費される電力が増大してしまう。
【0049】
これに対して、本実施形態に係る給水装置1では、計測制御モードの実行開始直後(実行の時も含む。)、又は当該実行開始直前の検出温度Tである凍結開始温度Tsoに基づいて決定された凍結防止開始温度Tsを、凍結防止機能を実行させる温度としている。
【0050】
つまり、本実施形態では、現実に凍結が発生したとき、又は凍結が発生したとみなすことが可能なときの検出温度Tを利用して凍結防止機能を実行させる温度である凍結防止開始温度Tsを決定している。
【0051】
したがって、本実施形態では、「温度センサTsにて凍結が始まる部位の水温を正確に検出することができない」といった問題、及び「凍結防止機能の実行時に消費される電力が増大してしまう」といった問題が発生することが抑制され得る。
【0052】
そして、本実施形態では、計測制御モードが実行された後、つまり凍結防止開始温度Tsが決定された後においては、検出圧力Pによらず、検出温度Tが凍結防止開始温度Ts以下であるか否かに基づいて、凍結防止機能を実行させるか否かが判断される。したがって、計測制御モードの実行後における凍結防止制御が簡便な制御となる。
【0053】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る凍結防止停止温度Teは、凍結防止開始温度Tsに対して予め決められた値を加算した温度であった。これに対して、本実施形態では凍結防止停止温度Teを推定するための機械学習システムを実行する学習モデル作成部を有する(図3参照)。
【0054】
学習モデル作成部は、検出温度T、凍結防止開始温度Ts及び凍結防止機能が実行されたときの消費電力を含むデータを教師データとして、可能な限り当該消費電力が小さくなる凍結防止停止温度Teを推定する学習モデルを作成する。
【0055】
なお、学習モデル作成部は、GPU、ROM、RAM及び学習モデルを作成するためのソフトウェアが記憶された記憶部等を有して構成されている。上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0056】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る給水装置は、家庭用給水ポンプ等の比較的に小型の給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、マンションや商業施設に用いられる受水槽方式の給水装置又は直結給水方式の給水装置にも適用可能である。
【0057】
上述の実施形態では、電動ポンプ3の吸入側には逆止弁9が配置されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、電動ポンプ3の吐出し側には逆止弁9が配置された構成であってもよい。
【0058】
上述の実施形態では、計測制御モードが実行された以降は、凍結防止制御モードのみが実行される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、定期的に計測制御モードが実行され、凍結防止開始温度Ts及び凍結防止停止温度Teが更新される構成であってよい。
【0059】
上述の第2実施形態では、制御部5が学習モデル作成部に教師データを与える構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、制御部5又は管理者が学習モデル作成部に教師データを与える構成であってもよい。
【0060】
上述の第2実施形態では、制御部5に学習モデル作成部が設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、学習済みの学習モデルが制御部5に組み込まれ、その学習済みの学習モデルを利用して凍結防止停止温度Teを推定する構成であってもよい。
【0061】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1… 給水装置
3… 電動ポンプ
5… 制御部
7… 蓄圧器
9… 逆止弁
Fs… 流量センサ
Ts… 温度センサ
Ps… 圧力センサ
図1
図2
図3