(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072985
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20230518BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230518BHJP
【FI】
C02F1/28 L
C02F1/28 D
C02F1/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185759
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 達生
(72)【発明者】
【氏名】河野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】赤松 佑介
(72)【発明者】
【氏名】國井 聡
(72)【発明者】
【氏名】仁平 義祐
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 直樹
【テーマコード(参考)】
4D025
4D624
【Fターム(参考)】
4D025AA09
4D025AB34
4D025BA07
4D025BB02
4D025BB03
4D025BB04
4D025DA03
4D624AA04
4D624AB04
4D624AB06
4D624AB11
4D624BA02
4D624BA07
4D624BA11
4D624BA14
4D624BB01
4D624BC04
4D624BC05
4D624CA06
4D624DB01
(57)【要約】
【課題】長期にわたり効率よくフッ素の除去能力を保ち続ける水処理装置及び水処理方法を提供すること。
【解決手段】縦に配置される外筒1と、外筒1の内部に縦に配置される内筒2であって、外筒1と内筒2との間の環状空間Tと、内筒2の内部の筒状空間Cを画定する内筒2と、筒状空間C内の粒状処理材を上方へと搬送し、内筒2の上端から環状空間Tへと横溢させるスクリュー5と、環状空間T内を降下した前記粒状処理剤を筒状空間Cに導入する導入口11と、筒状空間Cに下側から接続され、要処理水を筒状空間C内に給水する給水口12と、有する水処理装置100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦に配置される外筒と、
前記外筒の内部に縦に配置される内筒であって、前記外筒と前記内筒との間の環状空間と、前記内筒の内部の筒状空間を画定する内筒と、
前記筒状空間内の粒状処理材を上方へと搬送し、前記内筒の上端から前記環状空間へと横溢させるスクリューと、
前記環状空間内を降下した前記粒状処理剤を前記筒状空間に導入する導入口と、
前記筒状空間に下側から接続され、要処理水を前記筒状空間内に給水する給水口と、
を有する水処理装置。
【請求項2】
少なくとも前記筒状空間内の前記粒状処理剤に振動を与える起振器を備えた、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記スクリューの表面に滑り止め形状が設けられた、請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記スクリューの少なくとも表面は、前記要処理水の処理が可能な材料である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の水処理装置の前記筒状空間に前記粒状処理剤を充填し、
前記給水口より前記要処理水を給水し、
前記スクリューを回転させ、前記粒状処理剤及び前記要処理水を前記筒状空間内を上方に搬送し、前記要処理水内の処理対象物質を除去する水処理方法であって、
前記スクリューの前記材料は、前記粒状処理剤と共通の、前記処理対象物質を反応固定する金属元素を含む、水処理方法。
【請求項6】
前記金属元素は、鉄又はマグネシウムである、請求項5に記載の水処理方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理装置の前記筒状空間に前記粒状処理剤を充填し、
前記給水口より前記要処理水を給水し、
前記スクリューを回転させ、前記粒状処理剤及び前記要処理水を前記筒状空間内を上方に搬送し、前記要処理水内の処理対象物質を除去する水処理方法であって、
前記スクリューの前記材料と、前記粒状処理剤との乾摩擦係数が0.1以上である、水処理方法。
【請求項8】
前記要処理水から、界面活性成分及び油分の少なくともいずれかを除去した後、前記水処理装置に給水する、請求項5~7のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項9】
前記界面活性成分及び油分の少なくともいずれかの除去は、前記要処理水を、活性炭及びイオン交換樹脂の少なくともいずれかからなる濾材を充填した吸着槽に通水することによりなされる、請求項8に記載の水処理方法。
【請求項10】
前記界面活性成分及び油分の少なくともいずれかの除去は、前記要処理水に、吸着剤を混合攪拌し、フィルタにより前記要処理水と前記吸着材を分離することによりなされる、請求項8に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、縦型流動床を有する声機接触式排水処理装置において、前記流動床の中央部に縦型スクリューコンベアーを、該スクリューコンベアーの外側に同心円上にドラフトチューブを設け、該ドラフトチューブの内側を上向移動床、外側を下向移動床としたことを特徴とする排水処理装置が記載されている。同排水処理装置では、流動床に用いる担体として、活性炭、アレスラサイト、ゼオライト、プラスチックペレットが挙げられており、また、排水に含まれる処理対象物質として、アンモニア及びCODが挙げられている。
【0003】
特許文献2には、水処理タンクと、前記水処理タンクの内部に形設された内筒部と、前記水処理タンクの外筒部と前記内筒部との間に形設された浄水部と、前記浄水部の上方に配設された分離材供給部と、前記浄水部の上方に配設された上部原水給水部及び/又は前記外筒部の下部側に配設された下部原水給水部と、前記内筒部の底部側に前記浄水部と連通して形成された分離材及び原水の導入口と、前記内筒部の前記原水の液面の高さよりも高い位置に設けられ上部側から前記浄水部に前記原水に含まれる金属イオンを吸着することができる金属や合金からなる分離材を吐出する分離材吐出部と、前記内筒部の中心軸上に回転自在に配設されたスクリューと、前記スクリューを回転させる駆動部と、前記外筒部に配設された浄水排出部と、を備えていることを特徴とする浄水装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53-59252号公報
【特許文献2】特許第6023159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(パーフルオロオクタン酸)等のフッ素含有化合物は化学的に安定であるため、その処理としては、高温による熱分解が現実的である。その際、排気中にフッ素ガスが生じることとなるが、このフッ素ガスは水溶性を示すため、該排気を水と接触させて排気からフッ素ガスを取り除き、環境中への排出を抑えることができる。
【0006】
その結果、フッ素を含有する要処理水が生じる。要処理水中のフッ素は、多くはフッ酸の形で含有されるため、適切な処理材、例えば金属含有処理剤と接触、反応させることで、金属フッ化物としてフッ素を固定し、安全に処理することができる。
【0007】
このようなフッ素を含有する要処理水からのフッ素の除去処理において、長期にわたり効率よくフッ素の除去能力を保ち続ける水処理装置及び水処理方法は知られていない。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期にわたり効率よくフッ素の除去能力を保ち続ける水処理装置及び水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下のとおりである。
【0010】
(1)縦に配置される外筒と、前記外筒の内部に縦に配置される内筒であって、前記外筒と前記内筒との間の環状空間と、前記内筒の内部の筒状空間を画定する内筒と、前記筒状空間内の粒状処理材を上方へと搬送し、前記内筒の上端から前記環状空間へと横溢させるスクリューと、前記環状空間内を降下した前記粒状処理剤を前記筒状空間に導入する導入口と、前記筒状空間に下側から接続され、要処理水を前記筒状空間内に給水する給水口と、を有する水処理装置。
【0011】
(2)において、少なくとも前記筒状空間内の前記粒状処理剤に振動を与える起振器を備えた、水処理装置。
【0012】
(3)(1)又は(2)において、前記スクリューの表面に滑り止め形状が設けられた、水処理装置。
【0013】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、前記スクリューの少なくとも表面は、前記要処理水の処理が可能な材料である、水処理装置。
【0014】
(5)(4)の水処理装置の前記筒状空間に前記粒状処理剤を充填し、前記給水口より前記要処理水を給水し、前記スクリューを回転させ、前記粒状処理剤及び前記要処理水を前記筒状空間内を上方に搬送し、前記要処理水内の処理対象物質を除去する水処理方法であって、前記スクリューの前記材料は、前記粒状処理剤と共通の、前記処理対象物質を反応固定する金属元素を含む、水処理方法。
【0015】
(6)(5)において、前記金属元素は、鉄又はマグネシウムである、水処理方法。
【0016】
(7)(1)~(4)のいずれかの水処理装置の前記筒状空間に前記粒状処理剤を充填し、前記給水口より前記要処理水を給水し、前記スクリューを回転させ、前記粒状処理剤及び前記要処理水を前記筒状空間内を上方に搬送し、前記要処理水内の処理対象物質を除去する水処理方法であって、前記スクリューの前記材料と、前記粒状処理剤との乾摩擦係数が0.1以上である、水処理方法。
【0017】
(8)(5)~(7)のいずれかにおいて、前記要処理水から、界面活性成分及び油分の少なくともいずれかを除去した後、前記水処理装置に給水する、水処理方法。
【0018】
(9)(8)において、前記界面活性成分及び油分の少なくともいずれかの除去は、前記要処理水を、活性炭及びイオン交換樹脂の少なくともいずれかからなる濾材を充填した吸着槽に通水することによりなされる、水処理方法。
【0019】
(10)(8)において、前記界面活性成分及び油分の少なくともいずれかの除去は、前記要処理水に、吸着剤を混合攪拌し、フィルタにより前記要処理水と前記吸着材を分離することによりなされる、水処理方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係る水処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る水処理装置100の構成を示す図である。
【0022】
水処理装置100は、容器内に導入された要処理水を粒状処理剤と混合し、流動させることで、粒状処理剤の表面と接触させ、要処理水中の処理対象物質、特にフッ素を除去し、処理後の清浄水を容器から出水することで、連続的に要処理水の処理を行う装置である。
【0023】
水処理装置100は、その容器を構成する円筒形の外筒1が縦に配置され、その内部に、同じく縦に配置される内筒2が設けられ、二重円筒の構造となっている。内筒2は、外筒1の内部空間を、外筒1と内筒2との間の環状空間Tと、内筒2の内部の筒状空間Cを画定し、区画している。
【0024】
外筒1の底部は底板3により塞がれている。内筒2の下端は外筒1の下端より下側に突き出しており、底板3の傾斜部4により、内筒2の下端と外筒1の下端が繋がれているため、底板3は、環状空間Tから筒状空間Cに向かって傾斜するすり鉢状の形状となっている。
【0025】
筒状空間C内には、縦方向にスクリュー5が設けられ、外筒1上部に設けられた蓋6に取り付けられたモーター7により回転させられるようになっている。スクリュー5は、軸8の周囲にらせん羽根9が設けられた構造となっており、モーター7の回転により、筒状空間C内の流体を上方に搬送できる。軸8のモーター7と逆の端は、底板3に保持器10により、液密且つ回転可能に支持される。
【0026】
水処理装置100は、この容器内に要処理水と粒状処理剤とを入れ、モーター7を駆動してスクリュー5を回転させることにより、
図1中矢印で示したような流体の流れを生じさせ、要処理水と粒状処理剤とを混合させることで、要処理水中の処理対象物質を粒状処理材の表面に接触させて固定するものである。筒状空間C内の粒状処理剤は、要処理水と混合攪拌されながら筒状空間C内を上方へと搬送され、内筒2の上端から環状空間Tへと横溢する。間住空間T内では粒状処理剤は重力に従って降下し、底板3の傾斜部4を流れ下って、内筒2の下部側面に設けられた導入口11から筒状空間Cへと導入され、水処理装置内を循環する。
【0027】
要処理水は、筒状空間Cの下側から接続された給水口12から内筒2内に直接給水される。粒状処理剤と十分に接触し、処理対象物質が取り除かれた処理済水は、外筒1の上部側面に設けられた出水口13から処理済み水として出水される。ここで、出水口13の高さ方向の位置は、内筒2の上端より上となるように配置されているため、水処理装置100の運転中は、内筒2及び、内筒2内の筒状空間Cを搬送されてくる粒状処理剤は水面から出ることなく水没している。
【0028】
水処理装置100は、前述したように、要処理水中のフッ素の除去に特に適合したものとして設計されているが、必ずしもフッ素のみに限定されず、その他の水中汚染物質を対象として用いることもできるし、フッ素に加え、追加的に他の水中汚染物質の除去をするように運転することもできるが、以下では、特に水中のフッ素を除去するものとして説明する。
【0029】
水中のフッ素は、固体のフッ素化合物を生成する処理剤と接触させて反応させることで固定し、要処理水中から取り除くことができる。そのような処理材には各種の金属や生石灰などのカルシウム化合物等種々のものが利用でき、流動性のある粒状とすることで水処理装置100において利用可能である。
【0030】
この時、水処理を長期にわたり効率的に実施しようとする場合に留意すべき点がある。その一つは、スクリュー5による粒状処理剤の筒状空間C中の上方への搬送が円滑になされることである。
【0031】
粒状処理材の表面は、要処理水中のフッ素と反応し、金属フッ化物等の安定した固体皮膜を形成する。そのため、表面が全てフッ素と反応し、固体皮膜で覆われてしまうと粒状処理剤はフッ素の吸着能を失う。そこで、粒状処理剤が常に攪拌され、互いにこすれあうことで固体皮膜が削られて、常に新生面が露出するようにすることで、長期にわたり処理能力が維持される。
【0032】
ところが、粒状処理剤がスクリュー5のらせん羽根上を滑り落ちてしまい、上方への搬送が十分でないと、粒状処理剤の攪拌が不十分となり、固体皮膜の除去が十分でなくなるため、処理能力の低下を招く。さらに、要処理水と粒状処理剤との攪拌も不十分となりやすく、不十分な処理水が出水口13から出水されやすくなる。
【0033】
そのため、スクリュー5のらせん羽根9は、粒状処理剤が滑り落ちることなくこれを支え、確実に上方へと搬送することが必要である。そのためには、粒状処理剤と、らせん羽根9の少なくとも表面とが滑りにくい関係にあることが必要であり、より具体的には、使用する粒状処理剤とらせん羽根9表面との乾摩擦係数を0.1以上、より好ましくは0.15以上とする。表1は、マグネシウム粒を粒状処理剤として用いた際の、らせん羽根9の材質と乾摩擦係数との関係を示す。
【0034】
【0035】
また、らせん羽根9の表面に、滑り止め形状14を設けてもよい。
図2は、滑り止め形状14の例を示す図であり、スクリュー5を軸方向から見たときのらせん羽根9の表面を示す図である。同図に示した滑り止め形状14は、軸8を中心とする放射状の畝状の突起であり、らせん羽根9上の粒状処理剤はかかる滑り止め形状14に引っかかり、滑り折ることなく上方に搬送される。滑り止め形状14の形状は個々で示したものに限定されず、ローレット形状であったり、ショットピーニング加工により形成される任意の凹凸形状であったりしてもよい。
【0036】
さらに、粒状処理剤がスクリュー5により上方に搬送される際には、粒状処理剤同士だけでなく、粒状処理剤とらせん羽根9との間でも互いにこすれあうことによる摩耗が生じる。そのため、らせん羽根9は、水処理装置100の運転中は、常に新生面が露出する状態となる。
【0037】
そこで、スクリュー5のらせん羽根9自体を、要処理水の処理が可能な材料にて形成することにより、さらに要処理水と処理材との接触面積を拡大し、処理能力を向上させることができる。例えば、処理対象物質がフッ素の場合、フッ素と反応し、なおかつ、構造材として十分な強度及び耐久性を持つ材質を選択すればよい。具体的には、上の表1に掲げたような鋼材や鉄含有合金、マグネシウム合金などを挙げることができる。
【0038】
さらに、粒状処理剤の材質を勘案して、らせん羽根9の材質を選択してもよい。一般に、金属材料間の乾摩擦係数は、同種金属、又は同種金属元素を含有する合金間において大きな値を示す。したがって、粒状処理剤としてマグネシウムを主体とするものを用いるならば、らせん羽根9にマグネシウム合金を、粒状処理剤として鉄を主体とするものを用いるならば、らせん羽根9に鉄鋼等の鉄含有材料を好適に用いることができる。
【0039】
水処理を長期にわたり効率的に実施しようとする場合に留意すべき二つ目の点は、粒状処理剤が容器内において流動することによる摩耗への対策である。すなわち、上で説明したように、スクリュー5による粒状処理剤の筒状空間C内における上方への搬送能力が重要であるところ、フッ素を処理対象物質とするならば、粒状処理剤の材質として、マグネシウム系材料や鉄系材料など、硬質の材料が選択されることが多いと考えられる。
【0040】
図1において、給水口12が筒状空間Cの下側から接続されているのは、そのような理由による。すなわち、給水口12に接続される給水管を、粒状処理剤の流動経路である、
図1の矢印で示した流れ中に配置すると、水処理装置100運転中、常に硬質の粒状処理剤が給水管に衝突しこれを激しく損耗することになってしまう。
【0041】
かといって、給水口12を外筒1の側面や、底板3の傾斜部4に設けると、給水した要処理水の一部が、内筒2内部の筒状空間Cではなく、環状空間Tから容器上部へと抜けてしまい、出水口13から出水されてしまうため、処理能力が低下してしまう恐れがある。
【0042】
そのため、給水口12は筒状空間Cの下側から接続され、環状空間Tや傾斜部4上部の空間を横切ることなく、筒状空間Cに直接要処理水を給水できるようになされている。給水口12の筒状空間Cへの出口には、金属メッシュなどのフィルタを配置し、粒状処理剤やその摩耗片が給水管内に入らないようにしてもよい。
【0043】
粒状処理剤は、長期の水処理装置100の運転に伴い、その表面が摩耗し、小さくなっていく。そのため、定期的に、あるいは必要に応じて、蓋6に設けられた開口であるメンテナンスポート15から新たな粒状処理剤を補充するとよい。メンテナンスポートには別途蓋を設けてもよい。
【0044】
また、粒状処理剤及びらせん羽根9から生じた、フッ素を固定した金属フッ化物等からなる摩耗片は、底板4上に沈降するので、底板4に設けられた排出口16から定期的に、あるいは必要に応じて排出するとよい。排出口16には、図示しない金属メッシュ等が設けられてよく、粒状処理剤は通過しないが、摩耗片のみを排出できるようにするとよい。あるいは、金属メッシュのメッシュサイズは、摩耗片と、摩耗により粒径が所定のサイズよりも小さくなった粒状処理剤を排出できるように設定してもよい。
【0045】
さらに、水処理装置100は、筒状空間C内の粒状処理剤に振動を与える起振器17を備えてよい。起振器17は、一例として、
図1に示すように、内筒2の上部側面に設けられる超音波振動子である。起振器17により起振されることで、その振動は筒状空間C内の粒状処理剤に伝わり、粒状処理剤の流動性が高まって、粒状処理剤同士が締め固まるように、より密に接触しあうため、互いにこすれあう効果が増大し、より一層、粒状処理剤の表面を新生面に保つことができるため、処理能力をさらに向上させることができる。
【0046】
起振器17の配置位置・配置数・形状・振動周波数は任意である。水処理装置100の具体的構造や、使用する粒状処理剤に応じて、粒状処理剤に効率的に振動を与える構成を適宜選択してよい。
【0047】
以上説明したとおり、本実施形態に係る水処理装置100では、スクリュー5により粒状処理剤を確実に上方に搬送し、攪拌混合することで、高い水処理能力を長期にわたり維持することができる。そのためには、粒状処理剤同士が互いにこすれあうことにより表面が摩耗し、常にその表面に新生面が形成される作用が持続的になされることが重要である。
【0048】
その観点から、要処理水を、水処理装置100に給水する前の段階で、粒状処理剤同士が互いにこすれあう作用を阻害する要因を除去しておくことが有効である。すなわち、要処理水に、界面活性成分や油分が含まれていた場合、これらの作用により、粒状処理剤同士の摩擦、及び、粒状処理剤とらせん羽根9との摩擦が低下し、水処理装置100の処理能力が低下する恐れがある。
【0049】
図3は、そのような前処理の一例を示す図である。同図に示すように、要処理水を、水処理装置100に給水する前に、活性炭やイオン交換樹脂などの濾材を充填した吸着槽200に通水させて、界面活性成分や油分を除去しておくことで、水処理装置100における処理を効果的に行うことができる。
【0050】
図4は、そのような前処理の別の一例を示す図である。同図に示すように、要処理水に活性炭やゼオライト等の吸着剤を混合攪拌し、フィルタにより要処理水と吸着剤を分離して、界面活性成分や油分が除去された要処理水を水処理装置100に給水することで、水処理装置100における処理を効果的に行うことができる。すなわち、要処理水は処理水槽300に貯められ、吸着剤301が混ぜられた状態で、水中撹拌機302により混合攪拌されて、要処理水中の界面活性成分や油分が除去される。除去後の要処理水は、フィルタ303により吸着剤301を分離され、水処理装置100に給水される。なお、同図中ではフィルタ303として、メッシュスクリーンを使用したものを例示したが、フィルタ303は要処理水と吸着剤301を分離できるものであればどのようなものであってもよい。機械的な分離、例えばサイクロン等による遠心分離機であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 外筒、2 内筒、3 底板、4 傾斜部、5 スクリュー、6 蓋、7 モーター、8 軸、9 らせん羽根、10 保持器、11 導入口、12 給水口、13 出水口、14 滑り止め形状、15 メンテナンスポート、16 排出口、17 起振器、100 水処理装置、200 処理槽、300 処理水槽、301 吸着剤、302 水中撹拌機、303 フィルタ、C 筒状空間、T 環状空間。