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  • 特開-太陽電池モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072992
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20230518BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185768
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田飼 伸匡
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151EA05
5F151JA02
5F151JA03
5F151JA09
5F251EA05
5F251JA02
5F251JA03
5F251JA09
(57)【要約】
【課題】保護板(ガラス)の表面に塗膜等の装飾層を形成した場合でも、出力低下を抑制できる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池ストリングと、前記太陽電池ストリングの光入射側に重ねられた、透光性を有する保護板と、前記保護板の光入射側の表面に形成された、厚み方向で減光または遮光をなす装飾層と、を備え、前記太陽電池ストリングは、受光により発電する発電セルと、前記発電セルに電気的に接続されておらず当該太陽電池ストリングの発電に寄与しないダミーセルと、を有し、前記ダミーセルは、平面視において前記発電セルよりも前記装飾層に近い位置に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池ストリングと、
前記太陽電池ストリングの光入射側に重ねられた、透光性を有する保護板と、
前記保護板の光入射側の表面に形成された、厚み方向で減光または遮光をなす装飾層と、を備え、
前記太陽電池ストリングは、受光により発電する発電セルと、前記発電セルに電気的に接続されておらず当該太陽電池ストリングの発電に寄与しないダミーセルと、を有し、
前記ダミーセルは、平面視において前記発電セルよりも前記装飾層に近い位置に配置されている、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記発電セルと前記ダミーセルとの、少なくとも平面視形状が同じである、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記発電セルが細長形状とされており、
前記太陽電池ストリングでは、複数の前記発電セルがシングリング接続されている、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記シングリング接続に係る前記太陽電池ストリングの、接続方向両端部に前記ダミーセルが配置されている、請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記装飾層が、前記保護板の表面に形成された塗膜である、請求項1~4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記塗膜は、前記保護板の表面に複数の遮光領域と複数の透光領域とを隣接して形成することにより、前記遮光領域と前記透光領域との組み合わせで厚み方向における減光がなされる塗膜である、請求項5に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美観上の目的で、発電セルの周囲に塗装を施した太陽電池モジュールが提案されている(特許文献1)。この太陽電池モジュールは、バックシート、バックシート上に形成された接着層、及び、接着層が形成されたバックシート上に設けられた配線シート(導電性シート部材)を備える。また、太陽電池モジュールは、配線シート上に設けられた複数の太陽電池セル(発電セル)と、太陽電池セル上に順に設けられた受光面側封止材と、カバーガラスと、を備える。
【0003】
この太陽電池モジュールでは、太陽電池セルの列で構成されるセル群が複数設けられている。また、太陽電池モジュールでは、複数のセル群以外の部分が黒塗りされていることで、見栄えや意匠性を向上できる(0090段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-170815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配線材などを隠して高い意匠性を得ることを目的として、このような太陽電池モジュールにおいて黒塗りされた部位を受光面側に設けると、設置角度や方位及び日時によって、太陽電池モジュールの法線方向に対して斜めに直達日射光が入射することがあり、その場合、黒塗りされた部位(塗膜)によって、一部の太陽電池セル(発電セル)に太陽光が遮られるものが発生する。塗膜により太陽光が遮られた太陽電池セルの受光量が低下すると、該セルがこのモジュール内で抵抗となり、このモジュールにおける該太陽電池セル以外のセルの発電量まで下がってしまい所望の出力が確保できないおそれがあった。このように、太陽光が遮られていない太陽電池セルも含め、太陽電池モジュール全体で発電効率が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明は、保護板(ガラス)の表面に塗膜等の装飾層を形成した場合でも、出力低下を抑制できる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池ストリングと、前記太陽電池ストリングの光入射側に重ねられた、透光性を有する保護板と、前記保護板の光入射側の表面に形成された、厚み方向で減光または遮光をなす装飾層と、を備え、前記太陽電池ストリングは、受光により発電する発電セルと、前記発電セルに電気的に接続されておらず当該太陽電池ストリングの発電に寄与しないダミーセルと、を有し、前記ダミーセルは、平面視において前記発電セルよりも前記装飾層に近い位置に配置されている。
【0008】
かかる構成によれば、太陽電池ストリングにおいて、装飾層により太陽光が遮蔽または減光される部分に、発電に寄与しないダミーセルが配置されているので、装飾層による太陽光の遮蔽または減光の影響が発電セルに及ばず、太陽電池ストリングの発電効率が低下することを抑制できる。このように、ダミーセルにより太陽電池ストリングの発電効率が低下することを抑制できることから、太陽電池モジュールの出力低下を抑制できる。
【0009】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記発電セルと前記ダミーセルとの、少なくとも平面視形状が同じであってもよい。
【0010】
かかる構成によれば、発電セルとダミーセルとで、平面視における見た目を揃えることができるため、ダミーセルを配置しても太陽電池モジュールの外観を損ねない。
【0011】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記発電セルが細長形状とされており、前記太陽電池ストリングでは、複数の前記発電セルがシングリング接続されていてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、複数の発電セルがシングリング接続された太陽電池ストリングでは、単体の発電セルが小さく、装飾層による太陽光の遮蔽または減光の影響による出力低下が生じやすいので、このような太陽電池ストリングを備えた太陽電池モジュールにおいて装飾層による出力低下の対策を有効にできる。
【0013】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記シングリング接続に係る前記太陽電池ストリングの、接続方向両端部に前記ダミーセルが配置されていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、シングリング接続の接続方向のどちら側に装飾層による太陽光の遮蔽または減光が生じても、装飾層による太陽光の遮蔽または減光の影響による出力低下に対応できる。
【0015】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記装飾層が、前記保護板の表面に形成された塗膜であってもよい。
【0016】
かかる構成によれば、美観を高めるための一般的な手法(塗装)が用いられた太陽電池モジュールにおいて、装飾層による出力低下の対策を有効にできる。
【0017】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記塗膜は、前記保護板の表面に複数の遮光領域と複数の透光領域とを隣接して形成することにより、前記遮光領域と前記透光領域との組み合わせで厚み方向における減光がなされる塗膜であってもよい。
【0018】
かかる構成によれば、太陽電池モジュールにおいて、遮光領域と透光領域との組み合わせの塗膜によって外から見たときの一体感を担保しつつ、塗膜から部分的に太陽光を取り入れることによって装飾層による太陽光の遮蔽または減光による影響を緩和することで、装飾層による出力低下の対策を有効にできる。
【発明の効果】
【0019】
以上より、本発明によれば、保護板(ガラス)の表面に塗膜等の装飾層を形成した場合でも、出力低下を抑制できる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの模式的な平面図である。
図2図2は、図1のII-II位置における模式的な断面図である。
図3図3は、比較例に係る太陽電池モジュールの模式的な平面図である。
図4図4は、図3のIV-IV位置における模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図1図4を参照しつつ説明する。
【0022】
太陽電池モジュール1は、図2に示すように、太陽電池ストリング2と、太陽電池ストリング2の光入射側に重ねられた、透光性を有する保護板3と、保護板3の光入射側の表面に形成された、厚み方向で減光または遮光をなす装飾層4と、を備える。また、太陽電池モジュール1は、太陽電池ストリング2と保護板3の間に設けられた封止材5を備える。さらに、太陽電池モジュール1は、保護板3の外縁に配置される枠部(フレーム)6を備える。この太陽電池モジュール1は、板状であり、例えば、主面(受光面)側を上方(太陽側)に向けた状態で、民家等の建物の屋根に設置される。
【0023】
太陽電池ストリング2は、受光により発電する発電セル20と、発電セル20に電気的に接続されておらず当該太陽電池ストリング2の発電に寄与しないダミーセル21と、を有する。また、太陽電池ストリング2では、図1に示すように、ダミーセル21は、平面視において発電セル20よりも装飾層4に近い位置に配置されている。
【0024】
一方、比較例に係る太陽電池モジュール11では、図3及び図4に示すように、太陽電池ストリング12が、ダミーセルを備えず、発電セル120のみで構成されている。そのため、装飾層4によって、一部の発電セル120に太陽光が遮られるものが発生する。具体的に、この太陽電池モジュール11では、平面視において装飾層4に近い発電セル120a、120bでは、装飾層4によって、全部又は一部で太陽光の入射が遮られる(図4参照)。装飾層4により太陽光が遮られた発電セル120a、120bの受光量が低下すると、発電セル120a、120bが太陽電池モジュール11内で抵抗となり、この太陽電池モジュール11における該発電セル120a、120b以外の発電セル120c、120d、120eの発電量まで下がってしまい所望の出力が確保できない現象が生じる。このように、装飾層4の影響により太陽光が遮られていない発電セル120c、120d、120eも含め、太陽電池モジュール11全体で発電効率が低下するおそれがあった。
【0025】
これに対して、本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、太陽電池ストリング2において、装飾層4により太陽光が遮蔽または減光される部分に、発電に寄与しないダミーセル21が配置されているので(図2参照)、装飾層4による太陽光の遮蔽または減光の影響が発電セル20に及ばず、太陽電池ストリング2の発電効率が低下することを抑制できる。このように、ダミーセル21により太陽電池ストリング2の発電効率が低下することを抑制できることから、太陽電池モジュール1の出力低下を抑制できる。
【0026】
また、この太陽電池ストリング2では、発電セル20とダミーセル21との、少なくとも平面視形状が同じである(図1参照)。本実施形態では、発電セル20とダミーセル21との厚みが略同一で、ダミーセル21の色彩も発電セル20の色彩に近い。これにより、発電セル20とダミーセル21とで、平面視における保護板3越しの見た目を揃えることができるため、ダミーセル21を配置しても太陽電池モジュール1の外観を損ねない。
【0027】
さらに、太陽電池ストリング2では、各発電セル20が、細長形状とされており、複数の発電セル20がシングリング接続されている。シングリング接続とは、細長形状の発電セル20を、屋根板を葺くようにして、各発電セル20における長辺が重なるように順次配置していくことによる接続である。このように複数の発電セル20がシングリング接続された太陽電池ストリング2では、他の接続方式と比べて、単体の発電セル20が小さく、装飾層4による太陽光の遮蔽または減光の影響による出力低下が生じやすいので、このような太陽電池ストリング2を備えた太陽電池モジュール1において装飾層4による出力低下の対策を有効にできる。
【0028】
太陽電池ストリング2は、少なくとも一つの発電セル20を有し、具体的には、複数の発電セル20を有する。各発電セル20の大きさ(シングリング接続された太陽電池ストリング2では、各発電セル20の幅寸法)は同じである。各発電セル20は、例えば、長方形の板状である。
【0029】
また、太陽電池ストリング2は、少なくとも一つのダミーセル21を有し、具体的には、複数のダミーセル21を有する。各ダミーセル21の大きさ(シングリング接続された太陽電池ストリング2では、各ダミーセル21の幅寸法)は同じである。
【0030】
ダミーセル21は、例えば、樹脂板や金属板であってもよい。また、ダミーセル21は、発電セル20と同一の構成であり且つ他の発電セル20と電気的に接続されていないものであってもよい。さらに、ダミーセル21は、平面視において、装飾層4と重ならない位置に配置されている。
【0031】
この太陽電池ストリング2では、発電セル20とダミーセル21との形状は、断面視形状も同じである(図2参照)。発電セル20とダミーセル21との、太陽電池モジュール1の外観を損ねない範囲で、発電セル20とダミーセル21との形状等を異ならせることもできる。例えば、発電セル20とダミーセル21との平面視形状が同じである場合に、発電セル20の形状及びサイズは、ダミーセル21の形状及びサイズと異なっていてもよい。
【0032】
また、この太陽電池ストリング2では、装飾層4により太陽光が遮蔽または減光される部位の全体に、ダミーセル21が配置されている。装飾層4により太陽光が遮蔽または減光される部位は、図2におけるドットで塗られた部位である。具体的に、シングリング接続に係る太陽電池ストリング2の、接続方向両端部(図1における左右方向における両端部)に、ダミーセル21が配置されている。これにより、シングリング接続の接続方向のどちら側に装飾層4による太陽光の遮蔽または減光が生じても、装飾層4による太陽光の遮蔽または減光の影響による出力低下に対応できる。
【0033】
なお、太陽電池モジュール1に対する日差しの方向が定まっている場合、即ち、シングリング接続の接続方向の一方側に装飾層4による太陽光の遮蔽または減光が生じると定まっている場合、シングリング接続に係る太陽電池ストリング2の接続方向一端部(図1における左右方向における一端部)にダミーセル21が配置されてもよい。
【0034】
保護板3は、例えば、ガラス板である。また、保護板3の厚みは、例えば、2mm以上8mm以下である。本実施形態の太陽電池モジュール1では、保護板3は、太陽電池ストリング2の表面22のみに設けられている。この場合、太陽電池ストリング2の裏面23には、樹脂シート7が設けられている。なお、保護板3は、太陽電池ストリング2の表面22及び裏面23の両方に設けられていてもよい。
【0035】
装飾層4は、例えば、保護板3の表面30(光入射側に位置する面)に形成された塗膜である。そのため、美観を高めるための一般的な手法(塗装)が用いられた太陽電池モジュール1において、装飾層4による出力低下の対策を有効にできる。
【0036】
また、装飾層4は、例えば、太陽電池ストリング2周囲の電気配線を隠す等して、太陽電池モジュール1の外観を整えるために設けられている。具体的に、装飾層4は、膜厚5μm以上50μm以下の塗膜である。また、この塗膜は、例えば、セラミック印刷により形成されている。なお、装飾層4は、入射光を遮蔽または入射光のうちある程度の光を透過する(減光する)塗膜である。本実施形態の太陽電池モジュール1では、装飾層4は、黒色の塗膜であるが、他の色の塗膜であってもよい。
【0037】
装飾層4は、例えば、所定範囲を塗りつぶした(べた塗りした)塗膜である。なお、装飾層4は、保護板3の表面に複数の遮光領域と複数の透光領域とを隣接して形成することにより、遮光領域と透光領域との組み合わせで厚み方向における減光がなされる塗膜であってもよく、具体的には、所定範囲をドット状や網状に塗った塗膜であってもよい。塗膜がドット状の場合における各ドットの形状や網状の場合における網形状は特に限定されず、種々の形状とできる。この場合、太陽電池モジュール1において、ドットや網状の塗膜によって外から見たときの一体感を担保しつつ、塗膜から部分的に太陽光を取り入れることによって遮蔽率を下げ、装飾層に4による太陽光の遮蔽または減光による影響を緩和することで、装飾層4による出力低下の対策を有効にできる。また、ペンキ等の塗材がドット状や網状に配置された遮光領域と、塗材が配置されていない透光領域との面積比により、塗膜の透光率を調整することができる。装飾層4は、塗膜以外、例えば、黒色や他の色のフィルム等の遮光部材であってもよい。
【0038】
なお、装飾層4は、保護板3の外縁に配置され、太陽電池モジュール1の形態を整えたり補強したりするために設けられた枠部(フレーム)6とは別部材である。このため、後述のように、装飾層4により生じる影と、枠部(フレーム)6により生じる影とは全く異なる。
【0039】
封止材5は、例えば、太陽電池ストリング2の表面22及び裏面23のそれぞれに重ねられている。また、封止材5は、例えば、樹脂層である。さらに、封止材5は、太陽電池ストリング2の端面(外周)も覆っている。具体的に、封止材5は、太陽電池ストリング2の表面22、裏面23、及び、端面を連続して覆っている。
【0040】
以上の太陽電池モジュール1において、シングリング接続に係る太陽電池ストリング2の接続方向における一方側に設けられるダミーセル21の枚数を0枚、1枚、2枚、3枚と異ならせたサンプルを準備し、発電量を計算するシミュレーションを行った。これら太陽電池モジュール1では、発電セル20の幅は24mmであり、保護板3(ガラス板)の厚みは6mmである。また、太陽電池モジュール1は、90度設置とし、南面向きとした。なお、90度設置とは、太陽電池モジュール1を水平面に対して90度の角度で設置した状態である。
【0041】
このシミュレーションでは、装飾層4によって直達光もしくは準直達光が遮蔽されるときに、太陽電池ストリング2の接続方向における一方側(太陽側)の一番端に位置するダミーセル21又は発電セル20にかかる割合だけ、直達光もしくは準直達光が減衰するとして計算を行った。なお、シミュレーションにおける日射量は、年間時別日射量データベース(METPV-11)の福岡の平年値データを使用した。
【0042】
このシミュレーションの結果、1kW設置当たりの年間発電量は、ダミーセル21が0枚のとき653kWhであり、ダミーセル21が1枚のとき755kWhであり、ダミーセル21が2枚のとき762kWhであり、ダミーセル21が3枚のとき763kWhであった。このように、シングリング接続に係る太陽電池ストリング2の接続方向における一方側にダミーセル21を少なくとも1枚設けることで、発電量が16%程度増大するとの結果が得られた。
【0043】
また、以上の太陽電池モジュール1では、装飾層4による太陽光の遮蔽や減光はモジュール内部で生じるため、例えば枠部(フレーム)6により生じる影のように、太陽電池モジュール1に目視(外観上)で認識できる影(モジュール外部の影)は装飾層4によっては生じない。そのため、装飾層4による太陽光の遮蔽または減光(モジュール外部からの目視では認識困難な、いわば「モジュール内部で完結する影」)による太陽電池モジュール1の出力低下という課題は、現在まで着目がされていなかったもので、本願の発明者が初めて見出した、新しい課題である。
【0044】
さらに、装飾層4による太陽光の遮蔽または減光の影響度合いも、本願の発明者が以下のシミュレーションを実際に行って初めて、年間を通じたこの影響の程度を想定するに至ったものであるため、このようなシミュレーションを行った上で、本実施形態に係る装飾層4(塗膜)とダミーセル21との組み合わせの構成に想到することは、当業者であっても容易ではない。
【0045】
以下、太陽電池モジュール1において、装飾層4(塗膜)によって遮蔽または減光される部位の長さ(シングリング接続に係る太陽電池ストリング2の接続方向における寸法)を計算するシミュレーションについて説明する。これら太陽電池モジュール1では、発電セル20の幅は25mmであり、保護板3(ガラス板)の厚みは6mmである。また、太陽電池モジュール1は、垂直(90度)設置とし、南面向きとした。さらに、シミュレーションにおける日射量は、年間時別日射量データベース(METPV-11)の大阪の平年値データを使用した。
【0046】
シミュレーションの結果は下記表1の通りである。×はモジュールに直達日射光が届かない時間帯である。また、数値がマイナスの場合は、塗膜から西側で太陽光が遮蔽または減光されている状態を示し、数値がプラスの場合は、塗膜から東側で太陽光が遮蔽または減光されている状態を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
このシミュレーションの結果、例えば、大阪における6月20日の13時30分において、
受光面側の保護板3の厚みが6mmのモジュールが南面を向いて垂直に設置されている場合、塗膜よりも東側に10.7mmの幅の太陽光が遮蔽または減光された部位が生じることがわかった。このように太陽光が遮蔽または減光されとき、電気的に接続された幅が25mmのセルで構成された太陽電池ストリング2が塗膜に密接して配置されていた場合(太陽電池ストリング2が発電セル20のみで構成される場合)、塗膜に最も密接して配置される発電セル20のうちの42.8%の領域に直達日射光が遮蔽または減光されることとなり、その分モジュール全体の発電量が低下する。一方、塗膜との間に、発電セル20と同じ寸法であり且つ発電セル20と電気的に接続されていないダミーセル21が配置されている場合(太陽電池モジュール1のように太陽電池ストリング2がダミーセル21を含む場合)、電気的に接続されている発電セル20での太陽光の遮蔽または減光は発生しないため、発電量の低下は生じない。
【0049】
なお、本発明の太陽電池モジュールは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0050】
上記実施形態の太陽電池モジュール1では、太陽電池ストリング2のうち装飾層4により太陽光が遮蔽または減光される部位の全体に、ダミーセル21が配置されていたが、この部位の一部にダミーセル21が配置され、この部位の残部にスペース(空間)が配置されてもよい。例えば、図2の太陽電池モジュール1では、ダミーセル21が二つ設けられていたが、二つのダミーセル21のうち一方のダミーセル21の代わりに、スペース(空間)が設けられていてもよい。なお、このスペースには、封止材5が配置される。さらに、上記実施形態の太陽モジュール1では、ダミーセル21が、平面視において装飾層4と重ならない位置に配置されていたが、ダミーセル21の一部が、平面視において、装飾層4と重なる位置に配置されてもよい。この構成では、決められた保護板3のサイズ(ガラスサイズ)に対する各部位の配置の自由度が増すとの利点がある。
【0051】
また、上記実施形態の太陽電池ストリング2では、各発電セル20の大きさが同じであったが、異なっていてもよい。例えば、ダミーセル21の近くに配置された発電セル20の大きさ(シングリング接続された発電セル20では幅寸法)を、他の発電セル20の大きさよりも大きくすることができる。この場合、ダミーセル21の近くに配置された発電セル20の一部において装飾層4により太陽光が遮蔽または減光されても、この発電セル20の実際に光が当たる受光面の面積を確保できるため、装飾層4による太陽光の遮蔽または減光の影響による出力低下が生じにくい。
【0052】
上記実施形態の太陽電池モジュール1は、例えば、主面(受光面)側を上方に向けた状態で設置されていたが、例えば、民家の外壁等の垂直面またはそれに近い面(例えば、垂直面に対して15°以内で傾斜した面)に対して取り付けられてもよい。この場合、太陽電池モジュール1は、垂直面等に対して取り付けるための取付部(ブラケット等)を備えることもできる。例えば、取付部は、枠部(フレーム)6に設けられる。取付部を備える太陽電池モジュール1では、発電セル20とダミーセル21との、少なくとも平面視形状が同じであれば、取付部を利用して太陽電池モジュール1を垂直面設置した場合、見えやすい位置にある太陽電池ストリング2が保護板3越しに見えたとしても、美観上問題ない。
【0053】
上記実施形態の太陽電池ストリング2では、発電セル20が、細長形状とされており、複数の発電セル20がシングリング接続されていたが、発電セル20の形状は正方形板状等の細長形状以外の形状を有してもよく、複数の発電セル20はシングリング接続されておらず、配線材によって接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…太陽電池モジュール、2…太陽電池ストリング、3…保護板、4…装飾層、5…封止材、6…枠部(フレーム)、7…樹脂シート、11…太陽電池モジュール、12…太陽電池ストリング、20…発電セル、21…ダミーセル、22…表面、23…裏面、30…表面、120、120a、120b、120c、120d、120e…発電セル
図1
図2
図3
図4