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特開2023-730保険買取りシステム及び保険買取り方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000730
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】保険買取りシステム及び保険買取り方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20221222BHJP
   G06Q 40/08 20120101ALI20221222BHJP
   G16Y 10/50 20200101ALI20221222BHJP
【FI】
G06Q40/06
G06Q40/08
G16Y10/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101715
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】321002639
【氏名又は名称】ブレインツリーコンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真也
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB58
5L055BB61
(57)【要約】
【課題】被保険者、保険契約者が不利益を受けることなく、公平な買取り価格決定基準に基づき、安全な買取り市場を形成可能とする保険契約買取りシステム及び買取り方法を提供することを目的とする。
【解決手段】生命保険の被保険者の属性情報及び保険契約情報を売却者側端末から受け付け、前記受け付けた属性情報及び保険契約情報を保険情報として登録し、前記保険情報を前記生命保険の買取り希望者の買取り希望者端末に送信する。前記保険情報に基づき、前記死亡保険金を将来価値として算定する前記生命保険の現在価値に基づく前記生命保険の買取り額の見積りを前記買取り希望者端末から受信し、前記見積り情報を登録すると、前記売却者側端末に前記見積りを送信する保険契約買取りシステム及び買取り方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生命保険の被保険者の少なくとも生年月日、性別を含む属性情報及び前記生命保険の少なくとも死亡保険金、未払い保険料を含む保険契約情報を売却者側端末から受け付ける受付部と、
前記受け付けた属性情報及び保険契約情報を保険情報として登録する保険情報登録部と、
前記保険情報を前記生命保険の買取り希望者の買取り希望者端末に送信する送信部と、
前記保険情報に基づき、前記死亡保険金を将来価値として算定する前記生命保険の現在価値に基づく前記生命保険の買取り額の見積りを前記買取り希望者端末から受信する受信部と、
前記見積り情報を登録する見積り情報登録部と、を有し、
前記送信部は、前記売却者側端末に前記見積り情報登録部から、見積り情報を読み出して送信するサーバを備えた保険買取りシステム。
【請求項2】
前記サーバは、前記受信部が、少なくとも、償還利回り率を含む生命保険の買取り条件を提示する買取り計画情報を複数の買取り希望者端末から受信すると、前記受信した買取り計画情報を登録する買取り計画情報登録部と、
前記買取り計画情報登録部から前記買取り計画情報を読み出すとともに、前記保険情報登録部から前記保険情報を読み出し、前記死亡保険金を前記生命保険の将来価値として設定し、所定の平均余命に基づいて、前記被保険者における前記死亡保険金の受け取り事由の発生時点を特定し、前記死亡保険金の現在価値を算出する算出部と、
前記算出された現在価値から、少なくとも、前記未払い保険料を控除して前記生命保険の買取り額の見積りを生成する生成部と、
前記見積りを前記売却者側端末に送信する送信部と、
を有する請求項1記載の保険買取りシステム。
【請求項3】
前記算出部は、前記読み出された買取り計画情報のうち、前記読み出された保険情報が、前記買取り計画情報の買取り条件を満たすか否か、判定する判定部を有し、前記買取り条件を満たすと判定された買取り計画情報によって、前記現在価値を算出する請求項2記載の保険買取りシステム。
【請求項4】
前記サーバは、前記見積りによって、前記生命保険の買取り契約が成立した場合、前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報を取得する取得部を有し、前記契約変更情報は、更新情報として前記保険情報登録部に登録される請求項2又は請求項3記載の保険買取りシステム。
【請求項5】
前記取得部で前記契約変更情報を取得するまで、前記生成部は、前記見積りを順次又は逐次生成し、前記送信部から、前記売却者側端末に、前記生成された見積りを送信する請求項4記載の保険買取りシステム。
【請求項6】
前記サーバは、少なくとも、前記属性情報、前記保険契約情報、前記生成部によって生成された買い取り額の見積り情報及び前記契約変更情報と、前記契約変更情報に従って、前記死亡保険金の新たな受取人に前記死亡保険金が支払われたことを告知する死亡保険金情報とを時系列に第1分散管理台帳に記録する第1取引管理部を有する請求項5記載の保険買取りシステム。
【請求項7】
前記生成部は、一つの前記生命保険に対して、買取り希望者数分の前記見積りを生成するとともに、前記売却者側端末で、前記買取り契約の締結を希望する見積りの選択を可能とするリストを生成する請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の保険買取りシステム。
【請求項8】
前記サーバは、前記受信部が、前記買取り希望者端末から、前記生命保険を買い取った場合に、前記死亡保険金を証券化するための証券組成計画情報を受信し、前記証券組成計画情報を登録する証券組成計画情報登録部と、
前記証券組成計画情報によって設定されたタイミングで証券組成処理を開始する組成起動部と、
前記証券組成処理が開始されると、前記取得部によって前記死亡保険金の受取人を変更する前記契約変更情報が取得され、前記更新情報によって更新されて前記保険情報登録部に登録された前記証券化の対象となる保険情報と、前記証券組成計画情報登録部から前記証券組成計画情報とを読み出すとともに、前記所定の平均余命から算定された死亡率に基づいて、前記証券化した場合の収支を分析する証券組成分析部と、
前記送信部が、前記証券組成分析部で分析された分析情報を前記買取り希望者端末に送信し、前記受信部が、前記買取り希望者端末から、前記証券化の対象となる生命保険について、保険証券の発行の指示情報を受け取ると、前記保険証券を証券市場で発行及び募集するための保険証券情報を発信するとともに、前記保険証券の発行処理を行う発行処理部と、
前記発行処理が行われた前記保険証券について前記保険証券情報を登録する保険証券登録部と、を有する請求項5又は請求項6に記載の保険買取りシステム。
【請求項9】
前記サーバは、少なくとも、前記証券組成計画情報、前記保険証券を組成し、資金収集を行う特別目的事業体の組成事業者情報、前記証券組成処理の組成化予定情報、実際に証券組成化が起動し、実行された組成化起動情報、前記証券化の対象となる生命保険を特定する対象保険情報、前記発行された保険証券の償還が実行されたこをと示す償還情報とを時系列に第2分散管理台帳に記録する第2取引管理部を有し、前記発行処理部は、前記第2取引管理部から、所定の情報を抽出して、スマートコントラクトを自動生成する請求項8記載の保険買取りシステム。
【請求項10】
少なくとも、償還利回り率を含む生命保険の買取り条件を提示する買取り計画情報を複数の買取り希望者端末からインターネットを介して受信するステップと、
生命保険の被保険者の少なくとも生年月日、性別を含む属性情報及び前記生命保険の少なくとも死亡保険金、未払い保険料を含む保険契約情報を保険情報として売却者側端末からインターネットを介して受け付けるステップと、
前記受信した買取り計画情報と前記受け付けた保険情報と所定の平均余命情報とを読み出して、前記死亡保険金を前記生命保険の将来価値として設定し、前記平均余命情報に基づいて、前記被保険者における前記死亡保険金の受け取り事由の発生時点を特定し、前記死亡保険金の現在価値を算出するステップと、
前記算出された現在価値から、少なくとも、前記未払い保険料を控除して前記生命保険の買取り額の見積りを生成するステップと、
前記生成された複数の見積りを、インターネットを介して前記売却者側端末に送信するステップと、
前記複数の見積りを受信した前記売却者側端末から、前記生命保険の買取り者を選択した選択情報と、前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報を取得するステップと、を有する保険買取り方法。
【請求項11】
前記買取り希望者端末から、インターネットを介して、前記生命保険を買い取った場合に前記死亡保険金を証券化するための証券組成計画情報を受信し、前記証券組成計画情報を登録するステップと、
前記証券組成計画情報に、証券組成処理の起動情報が含まれていない場合は、前記買取り希望者端末から、インターネットを介して、前記証券組成処理の指示情報を受信して、前記指示情報に基づいて、前記証券組成処理を起動し、前記証券組成計画情報に、前記証券組成処理の起動情報が含まれている場合は、前記起動情報で設定されたタイミングで、自動的に、前記証券組成処理を起動するステップと、
前記証券組成処理が実際に起動されると、前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報を取得し、前記証券化の対象となる保険情報と、前記証券組成計画情報とを読み出すとともに、前記所定の平均余命情報から算定された死亡率に基づいて、前記証券化した場合の収支を分析するステップと、
前記分析された分析情報を、インターネットを介して、前記買取り希望者端末に送信し、前記買取り希望者端末から、前記証券化の対象となる生命保険について、保険証券の発行の指示情報を受け取ると、前記保険証券を証券市場で発行及び募集するための保険証券情報を発信するとともに、前記保険証券の発行処理を行うステップと、
前記発行処理が行われた保険証券について前記保険証券情報を登録するステップと、を有する請求項10記載の保険買取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書における開示は、保険の買取りシステム及び保険買取り方法に関し、特に、生命保険の死亡保険金を対象としたものに関する。
【背景技術】
【0002】
老衰、病気、障害などで経済的に苦しい状況の患者はもとより、健康な高齢者であっても、死亡保険金を生活資金に充てたいという要請がある。しかしながら、死亡保険金は、文字通り、保険事故(被保険者の死亡)が発生したときに支払われるものであるため、生前に現金化することはできない。終身保険の場合、現金化する方法として、解約返戻金という選択肢もあるが、死亡保険金に比べれば低額である。そこで、生命保険を生活資金として活用するために、前記生命保険にかかる保険契約を第三者に譲渡(売却)することによって、現金化する生命保険の売買が考えられる。
【0003】
ところで、生命保険の売買は、保険契約者の変更と保険金受取人の変更を伴うことになるが、少なくとも、わが国では契約譲渡の一類型として、法律で生命保険の売買は禁じられていない(例えば、非特許文献1参照。)
【0004】
また、実際に、保険金受領権の売買取引にオークションの仕組みを取り入れたシステムが提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
前記オークションシステムは、被保険者に掛けられた保険金額と、医者が算定した被保険者の算定余命、前記被保険者が支払うべき保険料と、投資信託機関の手数料利率と、保険金受領権の年利と、に基づいて、保険金受領権の適正価格を算出することにより、保険金受領権が不当に安く設定されることを防止することが可能な構成になっている。
【0006】
さらに、前記オークションシステムは、取引の一部始終の動向及び経緯の履歴の記録を保存するデータベースを生成し、入札者(投資家)に、ポイント、ランクをつけることにより、不自然な購入(投資)金額をチェック、監視する自動パトロール機能をそなえ、金銭未払い等のトラブルを格段に低減することができる構成になっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】吉澤卓哉、他1名、“日本における生命保険売買の法的可能性”、〔online〕、2015年12月31日、保険学雑誌、〔2021年5月17日〕インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsis/2015/631/2015_631_1/_pdf>
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4726892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、わが国では、生命保険売買における保険契約者変更手続で、保険者承諾要件を規定する保険約款条項の有効性が争われたが、判例(東京高判平成18年3月22日判タ1198号108頁)により、同要件が、契約上有効であることが確認された。生命保険売買の当事者以外の第三者(保険会社)が、前記承諾要件によって介在するという“足かせ”によって、以後、生命保険売買の時勢が失われている。しかし、そもそも、保険者承諾が要求される理由は、債権者(すなわち、保険契約者)が生命保険売買によって不利益を受けるおそれがあるからである。具体的には、生命保険売買契約締結後、保険料支払い残が支払われない場合、死亡保険金を不正な目的で取得するなどモラルリスクが生じる恐れがある場合、さらには、被保険者が早期に死亡することで買取り者の収益が向上することから、被保険者の早期死亡を画策する反社会的勢力が介入し、その資金源とするおそれがある場合、などである。したがって、生命保険の売買をシステムによって実現する場合、保険契約者に不利益とならないような構成とすることが必要である。
【0010】
一方、生命保険の売買は、個人(被保険者)と法人(例えば金融機関)との間の契約になることも多いため、買い手側の立場が強いと、被保険者が不利な条件での売買契約締結を余儀なくされるおそれがある。この点、前記先行技術では、被保険者に掛けられた保険金額と、医者が算定した被保険者の算定余命、前記被保険者が支払うべき保険料と、投資信託機関の手数料利率と、保険金受領権の年利と、を基に、保険金受領権の適正価格を算出する構成とすることで公平性を担保するようにしている。
【0011】
しかし、前記医者が算定した被保険者の算定余命については、すでに余命数年と診断された致死疾患患者または高齢者等(被保険者)など、比較的余命が明確な被保険者を対象として適正価格の算出が行われているが、生命保険の売却の需要は、上記のような限定的な被保険者層だけではない。
【0012】
また、医者が算定した被保険者の算定余命は、具体的には、DNA情報、医師の診断書から入手可能な被保険者の病名及び病状、被保険者の健康状態など、個人情報の入手を前提とし、仲介業者のみが個人情報にアクセスできるようにしているとはいえ、適正価格の算出が一般に非公開情報を前提としている点で、実現性に乏しい構成になっていた。
【0013】
ところで、生命保険には入院給付などの特約が付されていることが多いため、被保険者は、生命保険の売買によって死亡保険金は売却しても、前記のような特約の利益の享受は引き続き被保険者側で維持したいと考える。そこで、リバースモーゲージのような手法(死亡保険金を担保として貸付けを受けるという手法)によって現金化を実現することも考えられる。しかし、このような手法では、最終的には利息付きで返済しなければならず、そもそも、生活資金のために現金化が必要である被保険者(すなわち、手元の現金が不足している被保険者)にとってリスクが高い。
【0014】
本明細書における開示は、上記課題を解消させるためのものであり、被保険者、保険契約者ともに不利益とならない保険契約買取りシステム及び買取り方法を提供することを第1の目的とする。また、一般に開示されない個人情報を利用しなくても、公平な買取り価格決定基準に基づき、安全な買取り市場を形成可能とする保険契約買取りシステム及び買取り方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解消させるために、本明細書において開示する保険買取りシステムの一態様は、前記生命保険の被保険者の少なくとも生年月日、性別を含む属性情報及び前記生命保険の少なくとも死亡保険金、未払い保険料を含む保険契約情報を売却者側端末から受け付ける受付部と、
前記受け付けた属性情報及び保険契約情報を保険情報として登録する保険情報登録部と、
前記保険情報を前記生命保険の買取り希望者の買取り希望者端末に送信する送信部と、
【0016】
前記保険情報に基づき、前記死亡保険金を将来価値として算定する前記生命保険の現在価値に基づく前記生命保険の買取り額の見積りを前記買取り希望者端末から受信する受信部と、
前記見積り情報を登録する見積り情報登録部と、を有し、
前記送信部は、前記売却者側端末に前記見積り情報登録部から、見積り情報を読み出して送信するサーバを有する。
【0017】
この構成によれば、被保険者側で開示可能な情報(前記属性情報、保険契約情報)に基づいて、死亡保険金を将来価値とする現在価値の算定によって客観的な買取額の見積りを提示することができる。
【0018】
前記サーバは、前記受信部が、少なくとも、償還利回り率を含む生命保険の買取り条件を提示する買取り計画情報を複数の買取り希望者端末から受信すると、前記受信した買取り計画情報を登録する買取り計画情報登録部と、
【0019】
前記買取り計画情報登録部から買取り計画情報を読み出すとともに、前記保険情報登録部から前記保険情報を読み出し、前記死亡保険金を前記生命保険の将来価値として設定し、所定の平均余命に基づいて、前記被保険者における前記死亡保険金の受け取り事由の発生時点を特定し、前記死亡保険金の現在価値を算出する算出部と、
前記算出された現在価値から、少なくとも、前記未払い保険料を控除して前記生命保険の買取り額の見積りを生成する生成部と、
前記見積りを前記売却者側端末に送信する送信部と、
を有する構成としてもよい。
【0020】
現在価値の算出で使用する平均余命は、たとえば、公的な生命表で算出されたデータを導入することで、客観性が確保される。
【0021】
また、前記サーバは、少なくとも、前記属性情報、前記保険契約情報、前記生成部によって生成された買い取り額の見積り情報及び前記契約変更情報と、前記契約変更情報に従って、前記死亡保険金の新たな受取人に死亡保険金が支払われたことを告知する死亡保険金情報とを時系列に第1分散管理台帳に記録する第1取引管理部を有する構成としてもよい。
【0022】
第1分散管理台帳で管理することにより、生命保険買取りに関する全取引履歴を時系列で改ざん困難に記録することができる。
【0023】
さらに、前記サーバは、前記受信部が、前記買取り希望者端末から、前記生命保険を買い取った場合に、前記死亡保険金を証券化するための証券組成計画情報を受信し、前記証券組成計画情報を登録する証券組成計画情報登録部と、
前記証券組成計画情報によって設定されたタイミングで証券組成処理を開始する組成起動部と、
【0024】
前記証券組成処理が開始されると、前記取得部によって前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報が取得され、前記更新情報によって更新されて前記保険情報登録部に登録された前記証券化の対象となる保険情報と、前記証券組成計画情報登録部から前記証券組成計画情報とを読み出すとともに、前記所定の平均余命から算定された死亡率に基づいて、前記証券化した場合の収支を分析する証券組成分析部と、
【0025】
前記送信部が、前記証券組成分析部で分析された分析情報を前記買取り希望者端末に送信し、前記受信部が、前記買取り希望者端末から、前記証券化の対象となる生命保険について、保険証券の発行の指示情報を受け取ると、前記保険証券を証券市場で発行及び募集するための保険証券情報を発信するとともに、前記保険証券の発行処理を行う発行処理部と、
前記発行処理が行われた保険証券について前記保険証券情報を登録する保険証券登録部と、を有する構成を付加してもよい。
【0026】
この構成によれば、あらかじめ証券組成計画を登録することで、買い取った生命保険を自動的に証券化することができる。
【0027】
また、本明細書において開示する保険買取り方法の一態様は、少なくとも、償還利回り率を含む生命保険の買取り条件を提示する買取り計画情報を複数の買取り希望者端末からインターネットを介して受信するステップと、
【0028】
生命保険の被保険者の少なくとも生年月日、性別を含む属性情報及び前記生命保険の少なくとも死亡保険金、未払い保険料を含む保険契約情報を保険情報として売却者側端末からインターネットを介して受け付けるステップと、
【0029】
前記受信した買取り計画情報と前記受け付けた保険情報と所定の平均余命情報とを読み出して、前記死亡保険金を前記生命保険の将来価値として設定し、前記平均余命情報に基づいて、前記被保険者における前記死亡保険金の受け取り事由の発生時点を特定し、前記死亡保険金の現在価値を算出するステップと、
前記算出された現在価値から、少なくとも、前記未払い保険料を控除して前記生命保険の買取り額の見積りを生成するステップと、
前記生成された複数の見積りを、インターネットを介して前記売却者側端末に送信するステップと、
【0030】
前記複数の見積りを受信した前記売却者側端末から、前記生命保険の買取り者を選択した選択情報と、前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報を取得するステップと、を有する。
【0031】
さらに、前記買取り希望者端末から、インターネットを介して、前記生命保険を買い取った場合に前記死亡保険金を証券化するための証券組成計画情報を受信し、前記証券組成計画情報を登録するステップと、
【0032】
前記証券組成計画情報に、証券組成処理の起動情報が含まれていない場合は、前記買取り希望者端末から、インターネットを介して、証券組成処理の指示情報を受信して、前記指示情報に基づいて、前記証券組成処理を起動し、前記証券組成計画情報に、証券組成処理の起動情報が含まれている場合は、前記起動情報で設定されたタイミングで、自動的に、証券組成処理を起動するステップと、
【0033】
前記証券組成処理が実際に起動されると、前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報を取得し、前記証券化の対象となる保険情報と、前記証券組成計画情報とを読み出すとともに、前記所定の平均余命情報から算定された死亡率に基づいて、前記証券化した場合の収支を分析するステップと、
【0034】
前記分析された分析情報を、インターネットを介して、前記買取り希望者端末に送信し、前記買取り希望者端末から、前記証券化の対象となる生命保険について、保険証券の発行の指示情報を受け取ると、前記保険証券を証券市場で発行及び募集するための保険証券情報を発信するとともに、前記保険証券の発行処理を行うステップと、
前記発行処理が行われた保険証券について前記保険証券情報を登録するステップと、を有する構成を付加してもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の保険買取りシステム及び保険買取り方法によれば、前記生命保険の売却者側である被保険者は、死亡保険金の現在価値を算出することにより、適正な価格で売却することができるという効果を奏する。特に、特定の被保険者(致死疾患患者または高齢者等)に限定することなく、どのようなステータスの被保険者であっても、客観的な公開データに基づいて適正な価格で売買を行うことができる。
【0036】
また、前記生命保険の新たな保険契約者となる買取り希望者も、適正かつ公正な価格決定基準によって前記現在価値が算出されるため、生命保険の売買によって不利益を受けるおそれが低減できるという効果を奏する。
【0037】
前記第1分散管理台帳で管理する場合は、生命保険買取りに関する全取引履歴を時系列で改ざん困難に記録することができるため、安全な買取り市場を形成することができるという効果を奏する。
【0038】
さらに、あらかじめ、証券組成計画情報を登録することにより、買い取った生命保険を自動的に証券化することができるため、容易に資金調達が可能となり、生命保険売買市場を活性化させるという効果もそうする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本明細書で開示する保険買取りシステムの構成図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるサーバのブロック構成図である。
図3図3は、第1実施形態にかかるサーバの第1変形例を示すブロック構成図である。
図4図4は、第1実施形態にかかるサーバの第2変形例を示すブロック構成図である。
図5図5は、第1実施形態にかかるサーバの第3変形例を示すブロック構成図である。
図6図6は、第1実施形態にかかるサーバの第4変形例を示すブロック構成図である。
図7図7は、第2実施形態にかかるサーバのブロック構成図である。
図8図8は、第1分散管理台帳の登録情報例を示すフロー図である。
図9図9は、第2分散管理台帳の登録情報例を示すフロー図である。
図10図10は、本明細書で開示する保険買取り方法の第1実施形態を示すシーケンス図である。
図11図11は、本明細書で開示する保険買取り方法の第2実施形態を示すシーケンス図である。
図12図12は、本明細書で開示する保険買取りシステムで算出された買取り価格の実施例を示す図であり、(A)は、生命保険の買取り価格の設定基準を示す概念図、(B)は、実施例にかかる現在年齢の違いによる買取り価格の比較例を示す図である。である。
図13図13は、複数の生命保険を証券化した場合の分析例の想定条件及びサマリーを示す図である。
図14図14は、複数の生命保険を証券化した場合の運用益の年次ごとの内訳を示した図である。
図15図15は、単一の生命保険を証券化した場合の分析例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら本明細書による開示を実施するための形態を説明する。先に説明した実施形態に対応する構成要素を後続の実施形態が有する場合には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、各実施形態において構成の一部のみを説明している場合、当該構成の他の部分については先行して説明した実施形態の参照符号を使用する場合がある。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示していない場合でも、特に当該組み合わせに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0041】
図1は、本明細書で開示する保険買取りシステムの構成図である。1は、保険買取りシステムを構成するサーバである。本明細書で開示するサーバ1の各機能の詳細については後述するが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(メモリ)、ROM(ストレージ)、及び必要に応じてマウス、キーボード等の入力装置、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置を備える。そして、前記CPUは、前記入力装置等から入力される指示に従い、前記ストレージや外部記憶装置に記憶された各種データ等を読み出して、ディスプレイ等に出力するように制御する。また、サーバ1のCPUは、所定の信号を受け付けると、ストレージに格納された処理プログラムをメモリに読み出し、該処理プログラムによって、前記データを前記出力装置に出力するように制御する。
【0042】
なお、図1では、サーバ1は単体であるが、本明細書で開示するサーバ1は、各機能に応じて複数の専用サーバ群から構成されるものであってもよい。本明細書では、特に明示しない限り、サーバ1の構成は単体として説明する。
【0043】
サーバ1は、インターネット4を介して、売却者側端末2及び買取り希望者端末3と通信可能に接続されている。本明細書では、売却者側端末2は、売却者側端末2a、2b、2c等、複数の端末の総称であり、買取り希望者端末3は、買取り希望者端末3a、3b、3c等、複数の端末の総称である。売却者側端末2は、生命保険の売却を望む当該保険の契約者、被保険者又は仲介する業者などが、後述する属性情報、保険契約情報などをサーバ1に提供するために使用される端末である。一方、買取り希望者端末3は、前記生命保険の買取りを希望する金融機関などが、後述する買取り計画情報などをサーバ1に提供するために使用される端末である。
【0044】
なお、売却者側端末2及び買取り希望者端末3は、具体的には、例示として、デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォンであればよい。いずれの端末も、インターネット等の通信回線に接続され、ウェブブラウザを搭載し、ディスプレイによってデータを表示可能なものであれば、特に限定しない。さらに、ディスプレイによる表示に限定せず、プリンタなどの出力装置によって出力された紙媒体に表示するものであってもよい。
【0045】
<第1実施形態>
【0046】
図2は、第1実施形態にかかる保険買取りシステムを構成するサーバ1のブロック構成図である。サーバ1は、売却者側端末2から被保険者の属性情報、売却を希望する生命保険の保険契約情報を受け付ける受付部111を有する。前記属性情報、保険契約情報は、本明細書で開示する保険買取りシステムで、買取りの対象となる生命保険の被保険者と当該生命保険の契約内容を特定するために必要な情報である。ただし、属性情報について、被保険者の健康状態の情報、行動情報、遺伝子情報など、個人情報または非公開情報については、本システムでは要求されない。保険契約情報は、少なくとも、死亡保険金、未払い保険料を含む。受付部111は、売却者側端末2からのアクセス(認証機能を有するもの)に対して、前記属性情報、保険契約情報で必要な情報を入力可能とするユーザインタフェースを提供し、売却者側端末2で所定データが入力されたものを受け付ける構成としてもよい(図示せず)。
【0047】
受付部111で受け付けられた属性情報、保険契約情報は、保険情報登録部112で、相互に対応付けられて保険情報として登録される。
【0048】
保険情報登録部112で登録された保険情報は、送信部113からインターネット4を介して買取り希望者端末3に送信される。買取り希望者端末3は、受信した前記保険情報に基づいて、当該生命保険の買取り額についての見積りを作成する。サーバ1の受信部115は、インターネット4を介して買取り希望者端末3から、前記見積りを受信する。
【0049】
受信部115で受信した前記見積りは、見積り情報として見積り情報登録部114に登録される。見積り情報登録部114から、適時見積り情報が読み出され、前記送信部113から、インターネット4を介して、売却者側端末2に送信される。
【0050】
<第1実施形態の第1変形例>
【0051】
図3は、第1実施形態にかかるサーバ1の第1変形例である。第1変形例では、図1のサーバ1に、取得部116が追加されている。取得部116は、生命保険の買取り契約が成立した場合、死亡保険金の受取人を変更する必要があるため、売却者側端末2から、インターネット4を介して、前記生命保険の契約変更情報を取得する。取得部116で、取得された契約変更情報は、すでに登録されている保険情報の更新情報として、保険情報登録部112に登録される。
【0052】
<第1実施形態の第2変形例>
図4は、第1実施形態にかかるサーバ1の第2変形例である。第2変形例では、サーバ1が、前記見積りを自動生成する機能を有する。
【0053】
受信部115は、複数の買取り希望者端末3から、インターネット4を介して、生命保険の買取り条件を提示する買取り計画情報を受信する。前記受信した買取り計画情報は、買取り計画情報登録部117で登録される。前記買取り計画情報は、少なくとも、償還利回り率を含む。前記償還利回り率は、被保険者の性別、年齢、在住地域、さらには、当該生命保険の保険会社などの情報から設定される。
【0054】
第2変形例にかかるサーバ1は、保険情報登録部112から前記保険情報を読み出し、買取り計画情報登録部117から買取り計画情報を読み出す。さらに、所定の生命表から、平均余命データを取り寄せる。ここで、生命表とは、たとえば、ある期間における死亡状況(年齢別死亡率)が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したものである。たとえば、わが国では、厚生労働省によって、公的な生命表が開示されている。かかる生命表は、国勢調査に基づき、所定の計算方法により、ほぼ毎年更新されている。本明細書で開示する保険買取りシステムでは、サーバ1が、この生命表のデータを適時取り寄せるように設定すればよい。
【0055】
算出部118は、前記死亡保険金を将来価値として設定し、読み出した前記保険情報、前記買取り計画情報および前記生命表の平均余命に基づいて、前記被保険者における前記死亡保険金の受け取り事由の発生時点を特定し、前記死亡保険金の現在価値を算出する。
【0056】
前記現在価値は、たとえば、下記式により、算出することができる。
【0057】
【数1】
【0058】
算出部118で、算出された現在価値から、生成部119で、少なくとも、前記未払い保険料を控除して前記生命保険の買取り額の見積りを生成する。生成部119で生成された見積りは、見積り情報登録部114に登録される。送信部113は、見積り情報登録部114に登録された前記見積りを前記売却者側端末2に送信する。前記見積りによって、生命保険の買取り契約が成立した場合、取得部116は、売却者側端末2から、インターネット4を介して、前記生命保険の契約変更情報を取得する。
【0059】
なお、取得部116で契約変更情報を取得するまで、生成部119は、前記見積りを順次又は逐次生成し、送信部113から、売却者側端末2に、前記生成された見積りを送信してもよい。売却者側は、より有利な条件の買取り条件の見積りを選定するためである。また、売却者側端末2で、見積りの比較可能なユーザインタフェースを提供するために、生成部119は、一つの生命保険に対して、買取り希望者数分の前記見積りを生成するとともに、売却者側端末2で、前記買取り契約の締結を希望する見積りの選択を可能とするリストを生成するようにしてもよい(図示せず)。
【0060】
<第1実施形態の第3変形例>
【0061】
図5は、第1実施形態にかかるサーバ1の第3変形例である。第3変形例では、算出部118が、前記読み出された買取り計画情報のうち、前記読み出された保険情報が、前記買取り計画情報の買取り条件を満たすか否か、判定する判定部118aを有する。算出部118は、判定部118aによって、前記買取り条件を満たすと判定された買取り計画情報によって、前記現在価値を算出する。たとえば、判定部118aは、保険情報登録部112で登録されている保険情報のうち、前記買取り条件を満たすもの(前記保険会社の格付け、保険商品自体のリスク、地元在住者への優遇など)を判定する。
【0062】
<第1実施形態の第4変形例>
【0063】
図6は、第1実施形態にかかるサーバ1の第4変形例である。第4変形例では、少なくとも、前記保険情報(属性情報及び保険契約情報)、前記生成部によって生成された買取り額の見積り情報、前記契約変更情報、前記契約変更情報に従って、前記死亡保険金の新たな受取人に死亡保険金が支払われたことを告知する死亡保険金情報と、を時系列に第1分散管理台帳に記録する第1取引管理部120を有する。
【0064】
第1分散管理台帳は、本明細書で開示する保険買取りシステムにおいて、生命保険の売買に関する全取引履歴を記録する。第1分散管理台帳は、限定的な複数のノードが相互にP2P接続され、閉じたネットワークを形成し、記録された情報の平等なアクセスを保証するとともに、一部で登録された情報のデータを不正に改ざんしても、記録されているハッシュ値の連鎖状態を検証することで当該不正改ざんを直ちに検出し、周辺ノードから承認済みの正常なデータが取寄せられ、自動的に修正される。
【0065】
本明細書で開示する保険買取りシステムにおける所定の生命保険の売買に関するすべての情報は、第1取引管理部120で管理され、情報の登録、読み出しともに、第1取引管理部120を経由して行われる。
【0066】
<第2実施形態>
【0067】
図7は、第2実施形態にかかる保険買取りシステムを構成するサーバ1のブロック構成図である。第2実施形態は、前記買取り契約成立後、買い取った側の契約当事者が、資金調達をするために、死亡保険金を証券化するためのシステム構成である。
【0068】
受信部115が、買取り希望者端末3から、前記生命保険を買い取った場合に、前記死亡保険金を証券化するための証券組成計画情報を受信すると、証券組成計画情報登録部121で前記証券組成計画情報を登録する。
【0069】
証券組成処理は、組成起動部122によって開始される。すなわち、組成起動部122は、証券組成計画情報登録部121に登録された前記証券組成計画情報で設定された情報(たとえば、日時情報)によって設定されたタイミングで証券組成処理を開始する。
【0070】
組成起動部122によって、前記証券組成処理が開始されると、証券組成分析部123は、取得部116によって前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報が取得され、前記更新情報によって更新されて保険情報登録部112に登録された前記証券化の対象となる保険情報と、証券組成計画情報登録部121から前記証券組成計画情報とを読み出すとともに、前記所定の平均余命から算定された死亡率に基づいて、前記証券化した場合の収支を分析する。
【0071】
送信部113が、証券組成分析部123で分析された分析情報を買取り希望者端末3に送信し、受信部115が、買取り希望者端末3から、前記証券化の対象となる生命保険について、保険証券の発行の指示情報を受け取ると、発行処理部124は、前記保険証券を証券市場で発行及び募集するための保険証券情報を発信するとともに、前記保険証券の発行処理を行う。前記発行処理が行われた保険証券は、保険証券登録部125によって前記保険証券情報を登録する。
【0072】
前記証券化における諸情報は、第2取引管理部126において、第2分散管理台帳に時系列に記録される。前記諸情報は、少なくとも、前記証券組成計画情報、前記証券を組成し、資金収集を行う特別目的事業体の組成事業者情報、前記証券組成処理の組成化予定情報、実際に証券組成化が起動し、実行された組成化起動情報、前記証券化の対象となる生命保険を特定する対象保険情報、前記発行された保険証券の償還が実行されたこをと示す償還情報を含む。
【0073】
発行処理部124は、第2取引管理部126から、所定の情報を抽出して、スマートコントラクトを自動生成する。
【0074】
なお、前記のとおり、サーバ1単体で、第1実施形態と第2実施形態を構成しているが、第2実施形態の証券化については、別のサーバ(証券化サーバ)を設けて、第1実施形態にかかるサーバ1から、前記証券化サーバが、必要な情報(保険情報、契約変更情報等)を受け取るようにしてもよい。
【0075】
<分散管理台帳>
以下、図8図9により、前記第1分散管理台帳及び前記第2分散管理台帳の登録情報例をフロー図で説明する。
【0076】
図8は、第1分散管理台帳の登録情報例を示すフロー図である。売却者側端末2から属性情報及び保険契約情報が提供されると、新たな生命保険に対する保険管理番号のレコードが登録され(D1)、保険情報(D2)、被保険者情報(D3)、保険契約者情報(D4)が順次登録される。なお、D2からD4までの登録順序は、図8記載の順序でなくてもよい。生成部119によって、見積りが生成されると、見積り情報が登録される(D5)。さらに、前記生命保険の買取り契約が成立すると、前記したとおり、死亡保険金の受取人を変更するが、かかる変更情報を登録するとともに(D6)、契約変更に伴い、契約に利害関係者の関するステークホルダ情報が登録される(D7)。たとえば、被保険者が高齢者などの場合に、当該被保険者の関係者(親族、入居先施設の責任者、かかりつけ医、生命保険会社等)が、保険契約内容を参照できるようにするため、前記ステークホルダ情報も登録の対象としている。具体的には、前記生命保険の買取り契約締結後も、入院特約などは被保険者が維持することから、前記ステークホルダが、入院特約の契約条項を参照しなければならないことがある。このような場合に、関連情報にアクセスする権限が誰にあるのかを第1分散管理台帳に登録できるようにしたものである。
【0077】
前記生命保険が、前記証券組成化の対象となった場合、証券化情報をその都度追加する(D8乃至D11)。
【0078】
生命保険の買取り契約が成立した場合、死亡保険金の受取人を変更する必要があるため、売却者側端末2から、インターネット4を介して、前記生命保険の契約変更情報を取得する。取得部116で、取得された契約変更情報は、すでに登録されている保険情報の更新情報として、保険情報登録部112に登録される。保険事故(被保険者の死亡)が発生すると、死亡保険金が、契約変更後の受取人に支払われるが、その際に、死亡保険金情報を登録され(D12)、このときに、D1で登録された本レコードの更新は終了する。
【0079】
図9は、第2分散管理台帳の登録情報例を示すフロー図である。買取り希望者端末3から新たな証券組成計画情報を受信すると、証券管理番号のレコードが登録される(D101)。そして、証券組成計画情報(具体的には、額面、利回り、単価、個数、起債日、償還日、配当など)(D102)及び証券組成企業情報(D103)、組成起動予定日情報(D104)、組成実行日情報(D105)が順次追加される。
【0080】
前記証券組成計画情報に記載された証券組成に使用される生命保険の保険管理番号(管理番号は、第1分散管理台帳において、登録されたもの)をすべて登録する(D106乃至D109)。
【0081】
保険証券の償還情報が追加されると、本証券管理番号が振られたレコードの更新が終了する(D110)。
【0082】
<保険買取り方法>
以下、図10図11により、本明細書で開示する保険買取り方法を説明する。
【0083】
図10は、生命保険の買取り計画に基づく、買取り契約締結までの保険買取り方法を示すシーケンス図である。オブジェクトは、売却者側端末2、サーバ1、第1分散管理台帳、生命表、買取り希望者端末3になる。
【0084】
少なくとも、サーバ1が、償還利回り率を含む生命保険の買取り条件を提示する買取り計画情報を複数の買取り希望者端末3からインターネットを介して受信する(S1)。図10では、説明の便宜上、単一の買取り希望者端末3をオブジェクトとしているが、実際には複数の買取り希望者端末3から、各々の買取り計画情報を受信している。本実施形態では、前記のとおり、第1分散管理台帳を有する形態であるため、サーバ1は、前記受信した買取り計画情報を第1分散管理台帳に登録する(S2)。
【0085】
売却者側端末2から、生命保険の被保険者の少なくとも生年月日、性別を含む属性情報及び前記生命保険の少なくとも死亡保険金、未払い保険料を含む保険契約情報を保険情報としてインターネット4を介して受け付ける(S3)。受け付けた前記保険情報も、第1分散管理台帳に登録される(S4)。また、生命表から、平均余命情報も、第1分散管理台帳に登録される(S5)。
【0086】
前記受信した買取り計画情報と前記受け付けた保険情報と所定の平均余命情報とを読み出して(本実施形態では、いずれの情報も第1分散管理台帳に登録されているため、第1分散管理台帳から読み出して)(S6)、見積りを生成する。前記見積りは、前記受信した買取り計画情報と前記受け付けた保険情報と所定の平均余命情報とを読み出して、前記死亡保険金を前記生命保険の将来価値として設定し、前記平均余命情報に基づいて、前記被保険者における前記死亡保険金の受け取り事由の発生時点を特定し、前記死亡保険金の現在価値を算出し、前記算出された現在価値から、少なくとも、前記未払い保険料を控除して生成される。なお、見積りの生成について、買取り希望者端末3から、買取り計画情報を受信していない場合は、条件分岐し、サーバ1から買取り希望者端末3に、見積り生成に必要な見積り情報(保険情報)が送信されると(S7)、買取り希望者端末3側で見積りを生成し、サーバ1に返す(S8)。買取り希望者端末3から見積りを受信したサーバ1は、見積り情報を第1分散管理台帳に登録する(S9)。
【0087】
以上のS6又はS7乃至S9の処理は、見積りを提出する企業数に対応して、繰り返し処理される。
【0088】
前記繰り返し処理によって、蓄積されたすべての見積り情報(すなわち、複数の見積り情報)をサーバ1が、第1分散管理台帳から読み出し(S10)、インターネット4を介して売却者側端末2に送信する(S11)。本実施の形態では、複数の見積りをリスト化して、送信するようにしている。売却者側端末2は、受信した前記買取り希望者数分の見積り(リスト)から、前記生命保険の買取り者を選択し、選択情報をサーバ1に送信する(S12)。なお、複数の見積りを見やすくするために前記リスト化の機能を有するが、たとえば、見積りが単一の場合、さらには、たとえば、見積りを定期的に配信するようにした場合、見積りが特定期間内にない場合にも、リスト化して送信するようにしてもよい。
【0089】
S12の処理が行われた場合(条件一致した場合)は、サーバ1から、買取りの対象となる生命保険の保険情報を買取り希望者端末3に送信すると(S13)、買取り希望者端末3から買取り契約締結のための契約情報が返信される(S14)。一方、サーバ1は、売却者側端末2から前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報を取得する(S15)。前記取得された契約変更情報は、第1分散管理台帳に登録される(S16)。なお、前記買取りの対象となった生命保険の契約者である生命保険会社側の端末から、前記契約変更情報を閲覧可能なように、閲覧権限を付与し(S17)、被保険者の親族など、ステークホルダ側の端末から、前記買取りに関する情報の参照権限を付与してもよい(S18)。
【0090】
図11は、前記買取り契約締結された生命保険に対して証券化する保険買取り方法を示すシーケンス図である。オブジェクトは、第1分散管理台帳、生命表、第2分散管理台帳、サーバ1、買取り希望者端末3になる。
【0091】
サーバ1は、買取り希望者端末3から、インターネット4を介して、買い取った前記生命保険の死亡保険金を証券化するための証券組成計画情報を受信し(S101)、第2分散管理台帳に、前記証券組成計画情報を登録する(S102)。
【0092】
前記証券組成計画情報に、証券組成処理の起動情報が含まれていない場合は、買取り希望者端末3から、インターネット4を介して、証券組成処理の指示情報を受信して(S103)、前記指示情報に基づいて、前記証券組成処理を起動し、前記証券組成計画情報に、証券組成処理の起動情報が含まれている場合は、前記起動情報で設定されたタイミングで、自動的に、証券組成処理を起動する(S104)。
【0093】
証券組成処理が実際に起動されると、サーバ1は、前記証券組成計画情報を第2分散管理台帳から読み出すとともに(S105)、前記生命表から、前記所定の平均余命情報によって算定された死亡率を読み出し(S106)、第1分散管理台帳から、前記死亡保険金の受取人を変更する契約変更情報を取得し、前記証券化の対象となる保険情報を読み出す(S107)。サーバ1は、前記読み出された証券組成計画情報、死亡率、証券化の対象となる保険情報に基づき、前記証券化した場合の収支を分析する。前記分析された分析情報を、インターネット4を介して、買取り希望者端末3に送信する(S108)。
【0094】
サーバ1は、買取り希望者端末3から、前記証券化の対象となる生命保険について、保険証券の発行の指示情報(証券組成依頼情報)を受け取ると(S109)、前記保険証券を証券市場で発行及び募集するための保険証券情報を第2分散管理台帳に登録するとともに(S110)、証券市場に発信し、前記保険証券の発行処理を行う(S111)。
【0095】
サーバ1は、前記発行処理が行われた保険証券について、第1分散管理台帳に前記保険証券情報を登録し、すでに保険証券情報が登録されている場合は、更新情報として登録する(S112)。第1分散管理台帳は、新たな前記更新情報を登録すると、最新の保険情報を買取り希望者端末3に送信する(S113)。
【0096】
<保険買取り額(現在価値)の算出例>
【0097】
図12は、本明細書で開示する保険買取りシステムで算出された買取り価格の実施例を示す図であり、(A)は、生命保険の買取価格の設定基準を示す概念図、(B)は、実施例にかかる現在年齢の違いによる買取り価格の比較例を示す図である。
【0098】
図12(A)は、30歳で生命保険に加入し、75歳までの現在価値の変遷を時系列に示している。保険加入時の30歳から40歳までは、償還期間が長く、支払保険料の残額が多い。45歳から55歳までになると、経過年数により買取り価格は上昇し、60歳から75歳では、保険料の払い込みが完了しており、現在価値が高くなる。すなわち、本システムでは、生命保険の買取り価格は、高齢になるほど高額になるように設計されている。
【0099】
図12(B)は、現在価値の算出例として、各現在年齢に対する平均余命を所定の年数で設定し、死亡保険金を1,000万円、償還利回り率4.0%とし、保険料の払い込み完了後の現在価値を算出し、比較表としたものである。現在60歳の場合の死亡保険金の現在価値は、3,901,215円であるが、現在85歳の場合の死亡保険金の現在価値は、7,599,178円となる。(およそダブルスコアの違いがある。)
【0100】
以下、生命保険買取り価格と生命表との関係を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
たとえば、現在年齢が70歳の被保険者(男性)の死亡保険金が1,000万円で、払い込み保険料の残額がなく、平均余命を15年(85歳)とすると、各種利回りで、現在価値を算出すると下記のとおりになる。(なお、前記平均余命は、平成30年の厚労省発表の生命表15.84年に基づいて設定したものである。)
利回り2.0%:7,430,147円
利回り3.0%:6,418,619円
利回り4.0%:5,552,645円、
利回り5.0%:4,810,171円
いずれも、上記表1から明らかなとおり、平均余命までに、死亡保険金が発生した場合、購入時の予定利回り率を超えている。
【0103】
<証券化の収支分析例>
【0104】
前記実施形態2及び保険買取り方法(図11)で説明したとおり、証券組成分析部123によって、前記証券化した場合の収支を分析し、買取り希望者端末3に対して、送信部113から分析情報を送信する。以下、図13図14図15により、証券化した場合の収支分析例について説明する。
【0105】
図13図14は、複数の生命保険を証券化した場合の分析例を示す図である。図13は、本分析例の想定条件及び収支のサマリーをまとめた表であり、図14は、保険運用益の年次ごとの内訳を示した図である。本分析例では、被保険者70歳(男性)で、保険金総額10,000,000円(被保険者1万人×1,000円)、平均余命15年(平成30年の生命表15.84年による。この平均余命は、償還期間になる。)、保険買取り金額5,339,082円(利回り4.0%で平均余命15年時点の保険金総額の現在価値)、証券額面10,000,000円、証券価格7,4430,147円(すなわち、投資元本)、利回り2.0%を条件とする。
【0106】
以上の想定条件で、15年間資産運用した結果、運用利益は10,000,000円であり、保険運用益(保険金総額のうち、毎年の死亡率によって支払が発生する死亡保険金を元本に証券償還日まで資産運用した運用益)は、4,977,358円であり、これが証券の収益(収支)となる。すなわち、証券価格で証券と同じ利回り(2.0%)で資産運用を行うため、保険運用益が、証券の収益になる。
【0107】
なお、上記想定は、平均余命に基づく、15年債であるが、実際には、平均余命を上回る場合もある。そこで、第1回目の証券化で対象とした生命保険のうち、残金(前記運用利益から保険金収入を控除した額)5,614,225円を証券額面として、残る生命保険について再証券化する(2回目の15年債)。この場合、被保険者の年齢が高くなり、死亡率も高くなるため、保険運用益(収支)の収益率が向上する。2回目の15年債において、100歳までの死亡率は、98%になるため、ほとんどの死亡保険金は回収できる。
【0108】
以上のとおり、買い取った生命保険を証券化し、証券販売額と証券償還期間内に発生した死亡保険金の双方を証券償還期間内における資産運用の原資とすることで、損失を出すことなく、収益を上げることが可能になる。
【0109】
図15は、単一の生命保険を証券化した場合の分析例を示す図である。本分析例では、被保険者70歳(男性)で、保険金総額10,000,000円(被保険者1人)、平均余命15年(平成30年の生命表15.84年による。この平均余命は、償還期間になる。)、保険買取り金額5,339,082円(利回り4.0%で平均余命15年時点の保険金総額の現在価値)、証券額面10,000,000円、証券価格7,4430,147円(すなわち、投資元本)、利回り2.0%を条件とする。ここで償還後利益とは、証券販売価格の15年運用に死亡保険金発生時から償還日までの資産運用収益を加算した額である。死亡保険金は、5年単位での予測としているため、運用期間は5年の中間点と仮定している。なお、単一保険のため、生命表の死亡率は利用できない。
【0110】
証券利回りと証券価格の運用利回りは、同じ2.0%にしているので、証券償還日にはこの運用益で額面の支払を行う。償還期間内に発生した死亡保険金を償還日まで運用することで、収益が得られるため、死亡保険金の発生が早期なほど、高額な収益を得ることができる。一方、償還期間までに死亡保険金が発生しない場合には、収益は±0になる。
【0111】
なお、上記想定は、15年債であるが、実際には、15年で死亡保険金が発生しない場合もある。その場合は、再証券化することで1回目と同様の収益が得られるうえ、死亡率が向上するため、収益率も上がる。
【0112】
この明細書で開示された技術は、前記実施形態に制限されない。すなわち、例示的に示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。また、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。さらに、開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0113】
1 サーバ
2 売却者側端末
3 買取り希望者端末
4 インターネット
111 受付部
112 保険情報登録部
113 送信部
114 見積り情報登録部
115 受信部
116 取得部
117 買取り計画情報登録部
118 算出部
119 生成部
120 第1取引管理部
121 証券組成計画情報登録部
122 組成起動部
123 証券組成分析部
124 発行処理部
125 保険証券登録部
126 第2取引管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15