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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073005
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
F02M25/08 311D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185792
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA20
3G144CA12
3G144EA03
3G144GA12
(57)【要約】
【課題】キャニスタの通気抵抗を抑制する。
【解決手段】キャニスタは、少なくとも1つの室と、流入ポートと、大気ポートと、流出ポートと、複数の棒状部と、を備える。少なくとも1つの室は、燃料蒸気の吸着材が配置される。複数の棒状部は、少なくとも1つの室のいずれかである対象室に配された細長い部位である。対象室に配置される吸着材は、複数の粒状部材として構成されている。複数の棒状部の少なくとも一部には、その外周面に少なくとも1つの凹部が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車両に搭載されるよう構成されたキャニスタであって、
燃料蒸気を吸着する吸着材が配置された少なくとも1つの室と、
前記車両の燃料タンクから、前記少なくとも1つの室に燃料蒸気を流入させるよう構成された流入ポートと、
前記車両の外部から、前記少なくとも1つの室に大気を流入させるよう構成された大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させるよう構成された流出ポートと、
前記少なくとも1つの室のいずれかである対象室に配された細長い複数の棒状部と、を備え、
前記対象室に配置される前記吸着材は、複数の粒状部材として構成されており、
前記複数の棒状部の少なくとも一部には、その外周面に少なくとも1つの凹部が形成されている
キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記複数の棒状部は、前記対象室における気体の流れ方向に略平行に伸びる
キャニスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも1つの凹部は、当該少なくとも1つの凹部が設けられた棒状部の伸長方向と略平行に伸びる溝状の部位である
キャニスタ。
【請求項4】
請求項3に記載のキャニスタであって、
前記対象室に配置される吸着材である前記複数の粒状部材の各々は、略円柱状に形成されており、
前記少なくとも1つの凹部の幅は、前記複数の粒状部材の各々における伸長方向に直交する断面の径よりも狭い
キャニスタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記複数の棒状部の各々を、他の棒状部に連結する連結部をさらに備え、
前記連結部は、前記複数の棒状部の端部に設けられる
キャニスタ。
【請求項6】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記複数の棒状部の各々を、他の棒状部に連結する連結部をさらに備え、
前記連結部は、前記複数の棒状部の端部から離れた位置に設けられる
キャニスタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記複数の棒状部は、少なくとも1つの特定棒状部を含み、
前記特定棒状部は、前記少なくとも1つの凹部が設けられていると共に、当該特定棒状部の伸長方向に並ぶ少なくとも2つの区間を有し、
隣接する前記区間は、前記特定棒状部の伸長方向に直交する断面の形状が異なる
キャニスタ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記複数の棒状部は、少なくとも2種類の棒状部を含み、
それぞれの種類の前記棒状部は、当該棒状部の伸長方向に直交する断面の形状が異なる
キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンクから発生する燃料蒸気を吸着するキャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、通気抵抗を抑制するため、キャニスタの室に、燃料蒸気の流れ方向と略平行に伸びる複数の棒状部を設ける技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-96254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、燃費向上のため車両のエンジンの排気量が減少する傾向があり、これにより、キャニスタに蓄積された燃料を除去するためのパージエアが減少する。そして、少ないパージエアでキャニスタに蓄積された燃料を良好に除去するためには、キャニスタの通気抵抗を減少させる必要がある。
【0005】
また、近年では、環境対策のため、キャニスタに要求される性能がさらに向上しており、キャニスタは、一般的にL/Dの向上に伴い性能が向上する。なお、Lとは、キャニスタの室における気体の流れ方向の長さを意味し、Dとは、室における気体の流れ方向に直交する断面の相当直径を意味する。しかし、L/Dの向上に伴いキャニスタの通気抵抗が増加し、キャニスタの圧力損失が高くなる。
【0006】
本開示の一態様では、キャニスタの通気抵抗を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、エンジンを有する車両に搭載されるよう構成されたキャニスタであって、少なくとも1つの室と、流入ポートと、大気ポートと、流出ポートと、複数の棒状部と、を備える。少なくとも1つの室は、燃料蒸気を吸着する吸着材が配置される。流入ポートは、車両の燃料タンクから、少なくとも1つの室に燃料蒸気を流入させるよう構成される。大気ポートは、車両の外部から、少なくとも1つの室に大気を流入させるよう構成される。流出ポートは、大気ポートから流入した大気により、吸着材に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させるよう構成される。複数の棒状部は、少なくとも1つの室のいずれかである対象室に配された細長い部位である。対象室に配置される吸着材は、複数の粒状部材として構成されている。複数の棒状部の少なくとも一部には、その外周面に少なくとも1つの凹部が形成されている。
【0008】
上記構成によれば、対象室では、棒状部に形成された凹部と、複数の粒状部材である吸着材との間に隙間が形成される。このため、キャニスタの通気抵抗を抑制できる。
本開示の一態様では、複数の棒状部は、対象室における気体の流れ方向に略平行に伸びてもよい。
【0009】
上記構成によれば、対象室では、棒状部の凹部と吸着材との間の隙間が、気体の流れ方向に沿って形成されるように促される。このため、より一層、キャニスタの通気抵抗を抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、少なくとも1つの凹部は、当該少なくとも1つの凹部が設けられた棒状部の伸長方向と略平行に伸びる溝状の部位であってもよい。
上記構成によれば、対象室では、棒状部の凹部と吸着材との間の隙間が、該棒状部の伸長方向に沿って形成されるように促される。このため、より一層、キャニスタの通気抵抗を抑制できる。
【0011】
本開示の一態様では、対象室に配置される吸着材である複数の粒状部材の各々は、略円柱状に形成されていてもよい。少なくとも1つの凹部の幅は、複数の粒状部材の各々における伸長方向に直交する断面の径よりも狭くてもよい。
【0012】
上記構成によれば、吸着材である各粒状部材が棒状部に形成された凹部の内側に入り込むのを抑制できるため、棒状部の凹部と吸着材との間に隙間が形成されるよう促される。このため、より一層、キャニスタの通気抵抗を抑制できる。
【0013】
本開示の一態様は、複数の棒状部の各々を、他の棒状部に連結する連結部をさらに備えてもよい。連結部は、複数の棒状部の端部に設けられてもよい。
上記構成によれば、複数の棒状部及び連結部の製造が容易になる。また、対象室に吸着材を配置する際の作業負荷を低減できる。
【0014】
本開示の一態様は、複数の棒状部の各々を、他の棒状部に連結する連結部をさらに備えてもよい。連結部は、複数の棒状部の端部から離れた位置に設けられてもよい。
上記構成によれば、対象室の端部に連結部が配置されるのを回避でき、対象室の端部で大気及び燃料蒸気の流れに偏りが生じるのを抑制できる。これにより、対象室全体として、大気及び燃料蒸気の流れがより一様になるよう促すことができる。
【0015】
本開示の一態様では、複数の棒状部は、少なくとも1つの特定棒状部を含んでもよい。特定棒状部は、少なくとも1つの凹部が設けられていると共に、当該特定棒状部の伸長方向に並ぶ少なくとも2つの区間を有してもよい。隣接する区間は、特定棒状部の伸長方向に直交する断面の形状が異なってもよい。
【0016】
上記構成によれば、対象室の通気抵抗を、より柔軟に調整できる。
本開示の一態様では、複数の棒状部は、少なくとも2種類の棒状部を含んでもよい。それぞれの種類の棒状部は、当該棒状部の伸長方向に直交する断面の形状が異なってもよい。
【0017】
上記構成によれば、対象室の通気抵抗を、より柔軟に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態のキャニスタを側面視した際の断面図である。
図2】第1実施形態における活性炭のペレットとして構成された吸着材の説明図である。
図3】第1実施形態のグリッド部材の正面図である。
図4】第1実施形態のグリッド部材の側面図である。
図5】第1実施形態のグリッド部材を第1端側から視た底面図である。
図6】第1実施形態の棒状部における伸長方向に直交する断面図である。
図7】第1実施形態の棒状部における伸長方向に直交する断面図である。
図8】第1実施形態の棒状部における伸長方向に直交する断面図である。
図9】第1実施形態の棒状部における伸長方向に直交する断面図である。
図10】第1実施形態の棒状部における伸長方向に直交する断面図である。
図11】第1実施形態の棒状部における伸長方向に直交する断面図である。
図12】第2実施形態のグリッド部材の正面図である。
図13】第2実施形態のグリッド部材の側面図である。
図14】第2実施形態のグリッド部材を第1端側から視た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0020】
[第1実施形態]
[1.キャニスタの構成]
第1実施形態のキャニスタ1は、車両に搭載される(図1参照)。以後、キャニスタ1が搭載された車両を、自車両と記載する。キャニスタ1は、第1~第3室20~40を備える合成樹脂製の容器10を有し、第1~第3室20~40には、それぞれ、燃料蒸気を吸着するための吸着材60~62が配される。なお、キャニスタ1の室の数は、例えば、2以下、又は4以上であっても良い。
【0021】
第1室20の吸着材60は、例えば、粉状の活性炭により構成されても良いし、後述するペレットにより構成されていても良い。
また、第2室30の吸着材61は、粒状の活性炭であるペレットにより構成される(図2参照)。一例として、ペレットは、略円柱状となっており、以後、ペレットの伸長方向(換言すれば、軸方向)に直交する断面の径をRとする。しかし、ペレットの形状は、円柱状に限らず、例えば、球状等であっても良い。なお、ペレットが球状である場合、ペレットの径をRとしても良い。また、吸着材60は、ペレット以外の粒状の吸着材として構成されていても良い。
【0022】
また、第3室40の吸着材62は、一例として、粉状の活性炭やペレットよりも通気抵抗の低いハニカムカーボンとして構成されている。ハニカムカーボンは、円筒状の側壁を有し、気体の流れ方向に伸びた状態で第3室40に配置される。また、側壁の内側には、ハニカムカーボンを伸長方向に貫通する複数の流路が設けられる。
【0023】
なお、第3室40の吸着材62は、粉状の活性炭により構成されても良いし、ペレットにより構成されていてもよい。また、第1~第3室20~40の吸着材60~62は、活性炭以外の材料から構成されていても良い。
【0024】
容器10の端部には、流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられている。流入ポート11及び流出ポート12は、第1室20の内部と容器10の外部とを繋ぎ、大気ポート13は、第3室40の内部と容器10の外部とを繋ぐ。
【0025】
以後、キャニスタ1の容器10における流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられた側を、ポート側と記載する。また、容器10は、ポート側の反対側に開口を有している。該開口は、蓋部材14により閉鎖されている。以後、ポート側の反対側(換言すれば、蓋部材14が設けられた側)を、蓋側と記載する。
【0026】
流入ポート11は、自車両のエンジンの燃料タンクに接続される。燃料タンクにて生じた燃料蒸気は、流入ポート11を介してキャニスタ1の内部に流入し、各室の吸着材60~62に吸着する。これにより、キャニスタ1の内部に燃料が蓄積される。
【0027】
また、流出ポート12は、自車両のエンジンの吸気管に接続されており、大気ポート13は、自車両の外部に繋がっている。そして、エンジンの吸気負圧により、大気ポート13を介して大気(換言すれば、パージエア)がキャニスタ1の内部に流入する。パージエアの流入により、吸着材60~62に吸着した燃料が脱離し、脱離した燃料は、パージエアと共に流出ポート12から吸気管に向けて流出する。これにより、吸着材60~62に吸着していた燃料を除去するパージが行われ、吸着材60~62が再生される。
【0028】
つまり、流入ポート11から流入した燃料蒸気、パージの際に流出ポート12から流出する燃料蒸気、及びパージの際に大気ポート13から流入するパージエアは、ポート側の端部と蓋側の端部とが対面する方向に沿って各室20~40を流れる。
【0029】
第1室20は、一例として略直方体形状であり、ポート側の端部が、流入ポート11及び流出ポート12に繋がっている。また、第1室20のポート側の端部と蓋側の端部とには、それぞれ、フィルタ21、22が配置されており、フィルタ21、22の間には、吸着材60が配置されている。
【0030】
また、第1室20は、蓋側の端部が連通路15に繋がっている。連通路15は、蓋部材14に沿って設けられ、第1室20と第2室30とを繋ぐ。そして、第1室20の蓋側のフィルタ22と連通路15との間には、透過性を有する多孔板23が配置されており、多孔板23と蓋部材14との間には、コイルばね16が配置されている。コイルばね16は、多孔板23をポート側に向けて押し付けている。このため、キャニスタ1の内部では、流体は、連通路15を介して第1室20と第2室30とを往来できる。
【0031】
また、第2室30及び第3室40は、第1室20に隣接しており、蓋側からポート側に伸びる細長い形状を有する。また、第2及び第3室30、40は、端部が隣接した状態で、蓋側からポート側に並び、第2室30と第3室40とは、透過性を有する板状の仕切り部材18により隔てられている。このため、流体は、仕切り部材18を通過して、第2室30の内部空間と第3室40の内部空間とを往来できる。
【0032】
また、第2室30の蓋側の端部には、フィルタ31が配置されており、フィルタ31と仕切り部材18との間には、吸着材61が配置される。また、第3室40のポート側の端部には、フィルタ41が配置されており、フィルタ41と仕切り部材18との間には、吸着材62が配置される。
【0033】
また、第2室30の蓋側のフィルタ31と連通路15との間には、透過性を有する多孔板32が配置され、多孔板32と蓋部材14との間には、コイルばね17が配置される。コイルばね17は、多孔板32をポート側に向けて押し付けている。また、第3室40は、ポート側の端部が大気ポート13に繋がっている。
【0034】
[2.グリッド部材]
第1実施形態では、一例として、第2室30が対象室として構成され、第2室30にグリッド部材5が設けられている(図1参照)。グリッド部材5は、一例として樹脂により一体的に構成されており、複数の棒状部50と、第1及び第2連結部52、53と、第1及び第2離間部54、55とを備える(図3~5参照)。なお、グリッド部材5は、樹脂以外の材料から構成されていても良い。
【0035】
複数の棒状部50は、互いに間隔を空けて略平行に伸びる細長い部位であり、一例として、第1列~第3列5C~5Eを形成するように並ぶ。複数の棒状部50は、略同一の長さを有し、気体の流れ方向に略平行に伸びるように第2室30の全域に配置され、各棒状部50の第1端5Aは、第2室30のポート側の端部又はその付近に位置し、第2端5Bは蓋側の端部又はその付近に位置する。
【0036】
なお、複数の棒状部50の列の数、及び、各列に並ぶ棒状部50の数は、グリッド部材5が配置される室の大きさに応じて適宜定められ得る。また、各棒状部50の第1端5Aは第2室30の蓋側の端部に位置し、第2端5Bはポート側の端部に位置していても良い。
【0037】
また、各棒状部50は、その太さ(換言すれば、断面の面積)が一定となるように外周面が伸長方向に対し平行に広がっていても良いし、外周面が伸長方向に対し傾斜していても良い。より詳しくは、各棒状部50は、第1又は第2連結部52、53から端部に向かうに従い細くなるように、外周面が伸長方向に対し傾斜していても良い。
【0038】
第1及び第2連結部52、53は、各棒状部50の伸長方向の略中央に設けられており、各棒状部50を、少なくとも1つの他の棒状部50と連結する。一例として、第1及び第2連結部52、53は、第1及び第3列5C、5Eの各棒状部50と、該棒状部に最も近接する第2列5Dの棒状部50とを連結する。また、第1及び第2連結部52、53は、第2列5Dの各棒状部50を、該棒状部50に隣接する第2列5Dの他の1つ又は2つの棒状部50と連結する。
【0039】
また、第1連結部52は、棒状部50の伸長方向の中央よりも第1端5A側に位置し、第2連結部53は、該中央よりも第2端5B側に位置する。なお、第1及び第2連結部52、53の位置は、これに限らず、適宜定められるが、第1及び第2連結部52、53は、複数の棒状部50の端部(換言すれば、第2室30の端部)から離れた位置に設けられるのが好適である。
【0040】
第1離間部54は、複数の棒状部50を第2室30の内壁から離間させるための部位であり、第1及び第3列5C、5Eの各々における両端に位置する各棒状部50の伸長方向の略中央に設けられる。第1離間部54は、該棒状部50の外周面から第2室30の内壁に向かって突出し、第2室30の内壁に当接する。
【0041】
また、第2離間部55は、複数の棒状部50を第2室30の内壁から離間させるための部位であり、第1及び第3列5C、5Eの各々における中央に位置する2つの棒状部50の第1端5Aに設けられる。第2離間部55は、第2室30の内壁に当接する第1部分を有すると共に、第1部分と該2つの棒状部50の各々の外周面とを連結する第2部分を有する。
【0042】
なお、第1又は第3室20、40を、グリッド部材5が配置される対象室として構成しても良いし、第1~第3室20~40のうちの2つ以上を対象室として構成しても良い。なお、対象室には、例えばペレット等といった粒状の吸着材が配置される。
【0043】
[3.棒状部の詳細]
グリッド部材5における各棒状部50の外周面には、少なくとも1つの凹部51が形成されている(図3~5参照)。一例として、凹部51は、第1端5A又はその付近から第2端5B又はその付近まで、棒状部50の伸長方向と略平行に伸びる溝状の部位として形成されている。また、グリッド部材5には、様々な形状の棒状部50が用いられ得る。
【0044】
具体的には、例えば、伸長方向に直交する断面(以後、単に断面と記載)が略円形となるように各棒状部50を形成すると共に、該断面の縁に沿って略等間隔に並ぶように、各棒状部50の外周面に複数の凹部51を形成しても良い(図6参照)。
【0045】
また、例えば、断面が略正方形となるように各棒状部50を形成すると共に、各棒状部50の外周面における該断面の4つの角を形成する各位置に凹部51を形成しても良い(図7参照)。
【0046】
また、例えば、断面が略長正方形となるように各棒状部50を形成すると共に、該断面の縁に沿って略等間隔に並ぶように、各棒状部50の外周面に複数の凹部51を形成しても良い(図8参照)。
【0047】
また、例えば、断面がX状となるように各棒状部50を形成すると共に、該断面の縁に沿って略等間隔に並ぶように、各棒状部50の外周面に複数の凹部51を形成しても良い(図9参照)。
【0048】
また、例えば、断面が湾曲した長方形状となるように各棒状部50を形成すると共に、該断面の縁に沿って略等間隔に並ぶように、各棒状部50の外周面に複数の凹部51を形成しても良い(図10参照)。
【0049】
なお、凹部51の幅Wは、円柱状のペレットとして構成された吸着材60の断面の径Rよりも狭い。無論、これに限らず、凹部51の幅Wは、適宜定めることができ、吸着材60の断面の径R以上であっても良い。また、各棒状部50には、1つの凹部51が形成されていても良い。
【0050】
[4.棒状部の変形例]
この他にも、例えば、断面の形状が異なる(換言すれば、凹部51の数、位置、大きさ、及び/又は、形状の異なる)2種類以上の棒状部50により、グリッド部材5を構成しても良い。具体的には、例えば、種類が異なる第1~第3棒状部を設け、第1~第3棒状部を、それぞれ、第1~第3列5C~5Eに配置しても良い(図4、5参照)。
【0051】
なお、第1~第3棒状部の全てに、少なくとも1つの凹部51が形成されていても良いし、第1~第3棒状部のうちの1つ又は2つは、凹部51が形成されていなくても良い。また、凹部51が形成されていない棒状部50の断面は、一例として、円形であっても良い(図11参照)。また、第1~第3棒状部の各々は、図6~10に記載したいずれかの断面を有していても良い。また、各列に、断面の形状が異なる2種類以上の棒状部を配置しても良い。
【0052】
また、複数の棒状部50のうちの少なくとも一部を、特定棒状部として構成しても良い。特定棒状部は、当該特定棒状部の伸長方向に並ぶ複数の区間を有する。隣接する区間は、断面の形状が異なる。また、特定棒状部における各区間の断面の形状は、互いに異なっていても良い。具体的には、例えば、特定棒状部は、第1又は第2連結部52、53が設けられた部分に境界を有し、該境界よりも第1端5A側に第1区間50Aが設けられ、第2端5B側に第2区間50Bが設けられていても良い(図3、4参照)。無論、特定棒状部では、第1又は第2連結部52、53とは異なる位置に、該境界が設けられていても良い。
【0053】
なお、第1及び第2区間50A、50Bの全てに、少なくとも1つの凹部51が形成されていても良いし、第1及び第2区間50A、50Bのうちの1つは、凹部51が形成されていなくても良い。また、少なくとも1つの凹部51が形成された第1及び第2区間50A、50Bの各々は、図6~10に記載したいずれかの断面を有していても良い。
【0054】
さらに、少なくとも1つの特定棒状部と、第1端5Aから第2端5Bまで断面の形状が略同一である少なくとも1つの棒状部50(以後、通常棒状部)とにより、グリッド部材5を構成しても良い。この場合、グリッド部材5は、少なくとも1つの区間において断面の形状が異なる2種類以上の特定棒状部を有していても良いし、断面の形状が異なる2種類以上の通常棒状部を有していても良い。
【0055】
なお、上述したように、各棒状部50の外周面が伸長方向に対し傾斜しており、各棒状部50の太さが一定でない場合が想定される。そして、このような場合には、棒状部50における伸長方向の位置の異なる各断面は、形状は略同一であるが大きさは異なる(換言すれば、相似となる)。このような断面は、上述した「形状が異なる」断面に相当しないことを、念のため付言しておく。
【0056】
[第2実施形態]
[5.グリッド部材]
次に、第2実施形態のキャニスタ1について説明する。第2実施形態のキャニスタ1は、グリッド部材7の構成において第1実施形態と相違する。以下では、第1実施形態との相違点を中心に、第2実施形態のキャニスタ1について説明する。
【0057】
グリッド部材7は、第1実施形態と同様、一例として樹脂により一体的に構成されており、複数の棒状部70と、連結部72とを備える(図12~14参照)。なお、グリッド部材7は、樹脂以外の材料から構成されていても良い。
【0058】
複数の棒状部70は、第1実施形態と同様の構成を有し、第1実施形態と同様にして、キャニスタ1の室に配置される。また、複数の棒状部70には、第1実施形態と同様にして少なくとも1つの凹部71が設けられると共に、各棒状部70の断面の形状は、第1実施形態と同様に定められ得る。
【0059】
一方、第2実施形態のグリッド部材7は、連結部72の構成において第1実施形態と相違する。すなわち、連結部72は、各棒状部70の第1端7Aに設けられ、各棒状部70を、少なくとも1つの他の棒状部70と連結する。なお、連結部72は、各棒状部70の第2端7Bに設けられても良い。
【0060】
また、第2実施形態のグリッド部材7においても、第1実施形態と同様にして、複数の棒状部70を第2室30の内壁から離間させるための離間部(図示無し)が設けられても良い。
【0061】
[6.効果]
(1)上記実施形態によれば、対象室である第2室30では、棒状部50、70に形成された凹部51、71と、ペレットである吸着材60との間に隙間が形成される。このため、キャニスタ1の通気抵抗を抑制できる。これにより、圧力損失の増加を抑制しつつ、キャニスタ1のL/Dを向上させることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、通気抵抗を抑制するため、一例として、第3室40の吸着材62としてハニカムカーボンが用いられているが、ハニカムカーボンは、粉状の活性炭やペレット等と比べ高コストである。これに対し、第2室30にグリッド部材5、7を配置して第2室30の通気抵抗を抑制することで、ハニカムカーボンの小型化が可能となり、キャニスタ1のコストを低減できる。
【0063】
(2)また、複数の棒状部50、70は、第2室30における気体の流れ方向と略平行に伸びる。このため、第2室30では、複数の棒状部50、70の凹部51、71と吸着材60との間の隙間が、気体の流れ方向に沿って形成されるように促される。したがって、より一層、キャニスタ1の通気抵抗を抑制できる。
【0064】
(3)また、凹部51、71は、棒状部50、70の伸長方向と略平行に伸びる溝状の部位である。このため、第2室30では、凹部51、71と吸着材60との間の隙間が、棒状部50、70の伸長方向に沿って形成されるように促される。したがって、より一層、キャニスタ1の通気抵抗を抑制できる。
【0065】
(4)また、凹部51、71の幅Wは、吸着材60であるペレットの断面の径Rよりも狭い。このため、ペレットが凹部51、71の内側に入り込むのを抑制でき、これにより、凹部51、71とペレットとの間に隙間が形成されるのを促すことができる。したがって、より一層、キャニスタ1の通気抵抗を抑制できる。
【0066】
(5)また、第1実施形態における第1及び第2連結部52、53は、複数の棒状部50の略中央に設けられる。このため、第2室30の端部で大気及び燃料蒸気の流れに偏りが生じるのを抑制できる。これにより、第2室30全体として、大気及び燃料蒸気の流れがより一様になるよう促すことができる。
【0067】
(6)また、第2実施形態における連結部72は、複数の棒状部70の端部に設けられる。このため、例えば、グリッド部材7が射出成形等により一体の部材として形成される場合等には、グリッド部材7の製造が容易になる。
【0068】
また、キャニスタ1の製造工程において、容器10の開口を介して連結部72がポート側に位置するように第2室30にグリッド部材7を配置した後、該開口から第2室30に吸着材60を配置できる。このため、第2室30に吸着材60を配置する際の作業負荷を低減できる。
【0069】
(7)また、グリッド部材5、7は、断面の形状が異なる2種類以上の棒状部50、70により構成され得ると共に、少なくとも1つの特定棒状部を含み得る。これにより、対象室の通気抵抗を、より柔軟に調整できる。
【0070】
[7.他の実施形態]
(1)上記実施形態において、グリッド部材5、7は、複数の棒状部50、70が気体の流れ方向とは異なる方向(例えば、気体の流れ方向に対し略垂直な方向)に伸びるように配置されていても良い。また、グリッド部材5、7の複数の棒状部50、70は、曲がった形状を有していても良いし、異なる長さを有していても良いし、異なる方向に延びていても良い。
【0071】
(2)また、複数の棒状部50、70に形成された凹部51、71は、伸長方向とは異なる方向に伸びる溝状の部位として形成されていても良い。具体的には、例えば、凹部51、71は、棒状部50、70の断面の周方向に延びていても良いし、らせん状に延びていても良い。また、凹部51、71は、溝状に限らず、例えば、棒状部50、70の外周面における複数の点状の領域に形成されていても良い。
【0072】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…キャニスタ、20~40…第1~第3室、5…グリッド部材、50…棒状部、50A…第1区間、50B…第2区間、51…凹部、52…第1連結部、53…第2連結部、60~62…吸着材、7…グリッド部材、70…棒状部、71…凹部、72…連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
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図12
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図14