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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073070
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】電極製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20230518BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230518BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185892
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】近都 佑介
(72)【発明者】
【氏名】塩野谷 遥
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛司
(72)【発明者】
【氏名】川本 祐太
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA28
5H050GA29
5H050HA12
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】電極の膜厚の均一性を維持可能な電極製造装置を提供する。
【解決手段】電極製造装置は、基材の表面に電極層を形成する成膜装置を備えている。成膜装置は、回転する第1ロールと、第1ロールと間隔を空けて対向し第1ロールとは逆方向に回転する第2ロール22と、第2ロール22と間隔を空けて対向し第2ロール22とは逆方向に回転する第3ロール23と、第1ロール、第2ロール22および第3ロール23のうちの少なくともいずれか1つのロールの、軸方向における中央部と端部との温度差を小さくする温度調整部と、を有している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に電極層を形成する成膜装置を備え、
前記成膜装置は、
回転する第1ロールと、
前記第1ロールと間隔を空けて対向し前記第1ロールとは逆方向に回転する第2ロールと、
前記第2ロールと間隔を空けて対向し前記第2ロールとは逆方向に回転する第3ロールと、
前記第1ロール、前記第2ロールおよび前記第3ロールのうちの少なくともいずれか1つのロールの、軸方向における中央部と端部との温度差を小さくする温度調整部と、を有する、電極製造装置。
【請求項2】
前記温度調整部は、少なくとも前記第2ロールの温度を調整する、請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項3】
前記温度調整部は、少なくとも前記第3ロールの温度を調整する、請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項4】
前記温度調整部は、前記端部を冷却する冷却装置を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記温度調整部は、前記中央部を加熱する加熱装置を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記成膜装置は、前記中央部と前記端部との温度を検知する温度センサをさらに有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電極製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-103015号公報(特許文献1)には、第1の位置で対向する第1ロールおよび第2ロールと、第2の位置で第2ロールと対向する第3ロールとを有する、電極板製造装置が開示されている。この電極板製造装置では、第1から第3のロールを回転させつつ、第1の位置に電極材料を供給するとともに第2の位置に集電箔を通過させる。電極板製造装置は、内部に流路が形成されているとともに、外周面が第1から第3のロールのうちの少なくとも1つの外周面に接触している流路ロールと、流路に流体を循環させる循環部とを有し、電極板の製造時には、循環部に、流路ロールの流路に流体を循環させて、流路ロールが接触しているロールの温度変化を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-103015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の装置では、大面積の電池を製造する場合に、幅方向における電極の膜厚の均一性を維持することが困難である。
【0005】
本開示では、電極の膜厚の均一性を維持することが可能な、電極製造装置が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、基材の表面に電極層を形成する成膜装置を備える、電極製造装置が提案される。成膜装置は、回転する第1ロールと、第1ロールと間隔を空けて対向し第1ロールとは逆方向に回転する第2ロールと、第2ロールと間隔を空けて対向し第2ロールとは逆方向に回転する第3ロールと、温度調整部とを有している。温度調整部は、第1ロール、第2ロールおよび第3ロールのうちの少なくともいずれか1つのロールの、軸方向における中央部と端部との温度差を小さくする。
【0007】
温度調整部がロールの中央部と端部との温度差を低減する構成とすることで、ロールの中央部と端部との熱膨張の均一性を向上でき、ロールの中央部と端部とにおけるロールの外径の均一性を向上できる。したがって、幅方向における電極の膜厚の均一性を維持することができる。
【0008】
上記の電極製造装置において、温度調整部は、少なくとも第2ロールの温度を調整してもよい。第2ロールの温度を調整することで、電極の膜厚の均一性を効率的に維持することができる。
【0009】
上記の電極製造装置において、温度調整部は、少なくとも第3ロールの温度を調整してもよい。第3ロールの温度を調整することで、電極の膜厚の均一性を効率的に維持することができる。
【0010】
上記の電極製造装置において、温度調整部は、端部を冷却する冷却装置を有してもよい。このようにすれば、ロールの中央部と端部との温度差を確実に低減することができる。
【0011】
上記の電極製造装置において、温度調整部は、中央部を加熱する加熱装置を有してもよい。このようにすれば、ロールの中央部と端部との温度差を確実に低減することができる。
【0012】
上記の電極製造装置において、成膜装置は、中央部と端部との温度を検知する温度センサをさらに有してもよい。ロールの中央部と端部との温度差に基づいて、温度調整部は、ロールの中央部と端部との温度差を効率的に低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の電極製造装置に従えば、大面積の電池を製造する場合であっても、電極の膜厚の均一性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における電極の概略構成を示す斜視図である。
図2】実施形態における電極製造装置を示す概念図である。
図3】成膜装置の構成の詳細を示す概念図である。
図4】成膜装置の構成の詳細を示す概念斜視図である。
図5】温度調整部の第1の例を示す模式図である。
図6】温度調整部の第2の例を示す模式図である。
図7】比較例における、ロールの中央部と端部との温度差および膜厚差を示すグラフである。
図8】実施例における、ロールの中央部と端部との温度差および膜厚差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
<電極100>
図1は、実施形態における電極100の概略構成を示す斜視図である。電極100は、たとえば、リチウムイオン二次電池(非水電解質二次電池)の電極として用いられる。そのリチウムイオン二次電池は、たとえば、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)などの電源として用いることができる。ただし、本開示の電極100は、このような車載用途に限られず、あらゆる用途に適用可能である。
【0017】
図1に示されるように、電極100は、基材110と、電極層120とを有している。基材110は、電極層120の支持体である。基材110は、たとえばシート状であってもよい。基材110は、たとえば帯状であってもよい。基材110は、導電性を有していてもよい。基材110は、集電体として機能してもよい。基材110は、たとえば金属箔などを含んでいてもよい。電極100が正極であるとき、基材110は、たとえばアルミニウム箔を含んでいてもよい。電極100が負極であるとき、基材110は、たとえば銅箔を含んでいてもよい。
【0018】
電極層120は、基材110の表面に形成されている。電極層120は、図1に示されるように基材110の片面のみに形成されていてもよく、基材110の表裏両面に形成されていてもよい。
【0019】
電極層120は、電極活物質を含む電極活物質層である。電極活物質は、正極活物質でもよいし、負極活物質でもよい。正極活物質としては、たとえば、リチウム含有金属酸化物、リチウム含有リン酸塩などが挙げられる。負極活物質としては、たとえば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素などの炭素系負極活物質、および、ケイ素、スズなどを含有する合金系負極活物質が挙げられる。
【0020】
電極層120には、凹部121(溝)が形成されている。少なくとも1つの凹部121が、電極層120に形成されている。凹部121の断面形状は任意である。凹部121の底部は、平坦であってもよく、湾曲していてもよく、傾斜していてもよい。断面視において、凹部121は、U字状であってもよく、V字状であってもよい。凸部122は、隣り合う凹部121の間に形成されている。
【0021】
電極100は、長手方向(Y方向)と短手方向(X方向)とを有する。長手方向は、電極100の製造工程における搬送方向に該当する。短手方向は、長手方向に直交する方向であり、電極100の幅方向とも換言され得る。電極100はまた、厚み方向(Z方向)を有する。厚み方向は、XY平面に直交する方向である。凹部121は、電極層120の一部が電極層120の表面から凹んで、Z方向に延びるように形成されている。
【0022】
図1に示される例では、凹部121および凸部122は、短手方向に沿って延びている。凹部121は、長手方向において等間隔に形成されている。電極層120に、電極100の短手方向に延びる凹部121が形成されており、電極100に可撓性が付与されている。これにより、電極100の搬送時における電極層120のひび割れが抑制され、電極100の搬送性が向上されている。
【0023】
電極100は、長手方向に延びる凹部121および凸部122を有していてもよい。電極100は、長手方向に延びる凹部121および凸部122と、短手方向に延びる凹部121および凸部122との両方を有していてもよい。
【0024】
個々の凹部121の形状は、図1に示される直線状に限られず、曲線状であってもよく、波線状であってもよく、ドット状であってもよい。凹部121の平面パターンは、万線状であってもよく、格子状であってもよい。
【0025】
<電極製造装置1>
図2は、実施形態における電極製造装置1を示す概念図である。図2に示されるように、電極製造装置1は、搬送装置10と、成膜装置20と、成形装置40と、乾燥装置50とを備えている。
【0026】
搬送装置10は、送り出しロール11と、巻き取りロール12とを有している。送り出しロール11は、芯材に基材110が巻回されて形成されている。基材110は、送り出しロール11から巻き出される。巻き取りロール12が、基材110(電極100)を巻き取る。搬送装置10は、成膜装置20、成形装置40、乾燥装置50をこの順に通過するように、基材110を搬送し、基材110に電極層120を積層した積層体である電極100を搬送する。
【0027】
成膜装置20は、基材110の表面に電極層120を形成する。成膜装置20の詳細は後述する。
【0028】
成形装置40は、電極層120の表面に凹凸形状を形成する。成形装置40は、電極層120に、凹部121と凸部122とを形成する。成形装置40は、たとえば、成形ロール41と、対向ロール42とを有している。成形ロール41の外周面に、1つ以上の凸型が形成されている。成形装置40は、搬送装置10によって長手方向(Y方向)に搬送される電極100を成形ロール41と対向ロール42とによって挟み込み、このとき電極層120の表面に成形ロール41の凸型を押し付けることにより、電極層120の表面に凹部121と凸部122とを形成する。電極100の搬送方向における乾燥装置50よりも上流側に成形装置40が配置されており、乾燥前の湿った状態の電極層120の表面を加工する構成とされている。そのため、凹凸形状の成形が容易になっている。
【0029】
乾燥装置50は、凹凸形状を形成した後の電極層120を乾燥する。乾燥装置50は、任意の方法により、電極層120を乾燥し得る。乾燥装置50は、たとえば、熱風乾燥装置、赤外線乾燥装置などを含んでいてもよい。乾燥装置50における乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間など)は、電極層120がドライ状態になるように調整される。
【0030】
電極層120が乾燥された後の電極100を、たとえばスリッタなどを用いて所定の寸法に切断加工することにより、図1に示されるようなシート状の電極100を製造することができる。
【0031】
<成膜装置20>
成膜装置20では、間隔を空けて互いに平行に配置されそれぞれが回転駆動される一対のロール間に、電極材料が供給され、電極材料を一対のロールで圧縮成形することにより、シート状の塗膜が形成される。
【0032】
図3は、成膜装置20の構成の詳細を示す概念図である。図4は、成膜装置20の構成の詳細を示す概念斜視図である。図3,4に示されるように、成膜装置20は、第1ロール21と、第2ロール22と、第3ロール23とを有している。第1ロール21、第2ロール22および第3ロール23は、ほぼ同じ直径を有する円筒状の概略形状を有している。
【0033】
第1ロール21、第2ロール22および第3ロール23は、それぞれ回転駆動される。図3および図4において、各ロールに描かれた曲線矢印は、各ロールの回転方向を示している。第2ロール22は、第1ロール21とは逆方向に回転する。第3ロール23は、第2ロール22とは逆方向に回転する。図3および図4においては、第1ロール21は時計回り方向に回転し、第2ロール22は反時計回り方向に回転し、第3ロール23は時計回り方向に回転する。
【0034】
第2ロール22は、第1ロール21と間隔を空けて平行に配置されている。第1ロール21の外周面と第2ロール22の外周面とが、第1ロール21と第2ロール22との間の隙間である第1間隙を介して、互いに対向している。第1ロール21と第2ロール22とは、その間の距離が一定に維持されるように、それらの軸が固定されている。
【0035】
第3ロール23は、第2ロール22と間隔を空けて平行に配置されている。第2ロール22の外周面と第3ロール23の外周面とが、第2ロール22と第3ロール23との間の隙間である第2間隙を介して、互いに対向している。第3ロール23は、第2ロール22との間の距離が一定に維持されるように、その軸が固定されている。
【0036】
フィーダ25は、一対のロール間、具体的には第1ロール21と第2ロール22との間の第1間隙の直上に配置されている。フィーダ25は、電極材料91を、第1ロール21と第2ロール22との間の第1間隙に供給する。電極材料91は、たとえば粉体である。
【0037】
図4に示されるように、成膜装置20は、一対の隔壁24をさらに有している。一対の隔壁24は、各ロールの軸方向に所定の間隔を隔てて、互いに平行に配置されている。この一対の隔壁24によって、第1ロール21と第2ロール22との間の隙間に供給される電極材料91は、幅寸法を規制される。
【0038】
電極材料91は、第1ロール21と第2ロール22との回転によって、第1ロール21と第2ロール22との間の第1間隙を通過して、第1間隙の下方に引き込まれる。電極材料91は、第1ロール21と第2ロール22との間の第1間隙を通過する時に、圧密(圧縮)され、シート状に成形される。これにより、電極材料91から、薄膜状の塗膜92が形成される。第1ロール21と第2ロール22との間の第1間隙の寸法を変更することで、塗膜92の厚さ、および塗膜92の単位面積あたりの質量を調整可能である。
【0039】
塗膜92は、第1ロール21と第2ロール22との間の第1間隙を通過した後、第2ロール22に付着した状態で搬送され、第2ロール22と第3ロール23との間の第2間隙に供給される。
【0040】
基材110は、送り出しロール11(図2)から送り出された後、第3ロール23に搬送される。基材110は、第3ロール23上を搬送されて、第2ロール22と第3ロール23との間の第2間隙に供給される。
【0041】
第2ロール22と第3ロール23との間に、塗膜92と、基材110とが供給される。第2間隙では、塗膜92が基材110に押し付けられ、塗膜92は第2ロール22から離れて、基材110の表面に圧着される。すなわち、塗膜92が第2ロール22から基材110に転写される。このようにして、基材110の表面上の所定位置にシート状の電極層120が積層された、電極100が形成される。第2ロール22と第3ロール23とは、電極100を間に挟み互いに逆方向に回転する、一対のロールを構成する。
【0042】
なお、成膜装置20が一対の隔壁24を有しており電極層120の幅寸法が規制されることにより、電極100において、電極層120に対して電極100の幅方向(X方向)の両側に、電極層120が形成されない露出部(図1参照)が設けられる。
【0043】
図3,4には、第1ロール21、第2ロール22および第3ロール23が横並びに配置され、第1ロール21、第2ロール22および第3ロール23の回転軸が同一平面上にある例が示されている。第1ロール21、第2ロール22および第3ロール23は、図3,4に示される例に限られず、任意に配置されてもよい。たとえば、第2ロール22の直下に、第2ロール22と間隔を空けて第3ロール23が配置されてもよい。
【0044】
<温度調整部>
実施形態の成膜装置20は、温度調整部をさらに有している。温度調整部は、第1ロール21、第2ロール22および第3ロール23のうちの少なくともいずれか1つのロールの、軸方向における中央部と端部との温度差を小さくする機能を有している。
【0045】
図5は、温度調整部の第1の例を示す模式図である。図5に示される温度調整部は、第2ロール22の温度を調整し、第3ロール23の温度を調整する。より詳しくは、温度調整部は、冷却装置60を有している。冷却装置60は、第2ロール22の両端部を冷却する。冷却装置60は、第3ロール23の両端部を冷却する。
【0046】
冷却装置60は、たとえば、ロールの端部を支持するハウジング内に形成されている冷却媒体の流路によって実現される。冷却媒体は、たとえば水である。ハウジングは、軸受を介して、ロールの端部を回転可能に支持する。軸受の周囲に、冷却媒体の流路が形成されて、冷却媒体は当該流路を循環する。ロールの端部からの熱伝達で温度が上昇した冷却媒体が、ロールの端部から離れた位置で冷却されて、ロールの端部へ還流する。この例に限られず、冷却装置60は、たとえばペルチェ素子、ヒートパイプなど、任意の手段でロールの端部を冷却するものであってもよい。
【0047】
図6は、温度調整部の第2の例を示す模式図である。図6に示される温度調整部は、第2ロール22の温度を調整し、第3ロール23の温度を調整する。より詳しくは、温度調整部は、加熱装置70を有している。加熱装置70は、第2ロール22の中央部を加熱する。加熱装置70は、第3ロール23の中央部を加熱する。
【0048】
加熱装置70は、たとえば電気ヒータによって実現される。加熱装置70は、ロールの軸方向に並べられた複数のヒータを有してもよい。軸方向におけるロールの温度分布に従って、複数のヒータのうちどのヒータに熱を発生させるか、またヒータの発熱量が制御されてもよい。
【0049】
図5,6に示されるように、成膜装置20は、温度センサ80をさらに有している。温度センサ80は、たとえば赤外線センサなどの非接触式のセンサであってもよい。ロールの中央部の温度を検知する温度センサ80と、ロールの端部の温度を検知する温度センサ80とが設けられてもよい。ロールの軸方向に走査する温度センサ80が、ロールの中央部と端部との温度を検知してもよい。温度センサ80の検知の結果によって、ロールの中央部と端部との温度差が求められる。ロールの中央部と端部との温度差に基づいて温度調整部をフィードバック制御することで、温度調整部は、ロールの中央部と端部との温度差を効率的に低減することが可能である。
【0050】
<作用および効果>
上述した実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。
【0051】
図2に示されるように、電極製造装置1は、成膜装置20を備えている。図5,6に示されるように、成膜装置20は、第1ロール21、第2ロール22および第3ロール23の少なくともいずれか1つのロールの、軸方向における中央部と端部との温度差を小さくする温度調整部を有している。
【0052】
ロールの端部は、ハウジングに支持されている。ハウジングに対してロールが相対回転するときに、摩擦熱が発生する。摩擦熱がロールに伝達することで、ロールの端部はロールの中央部と比較して温度が上昇しやすい。幅広の電極100を製造する場合、ロールの中央部とロールの端部とにおける温度差が顕著になり、この温度差の影響でロールの端部の熱膨張がロールの中央部よりも大きくなることがある。ロールの端部の方が中央部よりも大径になり、ロールの端部において対向する一対のロール間の間隙が狭くなる。その結果、ロールの端部において電極層120の膜厚が薄くなり、電極100の幅方向の中央部と端部とにおける電極層120の厚みの均一性を維持できない可能性がある。
【0053】
実施形態の電極製造装置1では、成膜装置20が温度調整部を有しており、ロールの中央部と端部との温度差が低減できる構成とされている。ロールの中央部と端部との熱膨張の均一性を向上でき、ロールの中央部と端部とにおけるロールの外径の均一性を向上できる。したがって、実施形態の電極製造装置1は、幅広の電極100を製造する場合であっても、幅方向における電極層120の膜厚の均一性を維持することができる。
【0054】
図5,6に示されるように、温度調整部は、第2ロール22の温度を調整してもよい。第1ロール21と第2ロール22との間の第1間隙で塗膜92が成形され、第2ロール22と第3ロール23との間の第2間隙で塗膜92が第2ロール22から基材110に転写される。第2ロール22にかかる負荷が最も高く、第2ロール22の端部で発生する摩擦熱が大きくなり、第2ロール22の中央部と端部との温度差が大きくなりやすい。第2ロール22の温度を調整して、第2ロール22の中央部と端部とにおける外径の均一性を向上させることで、電極層120の膜厚の均一性を効率的に維持することができる。
【0055】
図5,6に示されるように、温度調整部は、第3ロール23の温度を調整してもよい。第2ロール22と第3ロール23との間の第2間隙で塗膜92を圧密することで、塗膜92が薄く引き延ばされて基材110に転写される。第3ロール23にかかる負荷が比較的高く、第3ロール23の端部で発生する摩擦熱が大きくなり、第3ロール23の中央部と端部との温度差が大きくなりやすい。第3ロール23の温度を調整して、第3ロール23の中央部と端部とにおける外径の均一性を向上させることで、電極層120の膜厚の均一性を効率的に維持することができる。
【0056】
図5に示されるように、温度調整部は、ロールの端部を冷却する冷却装置60を有してもよい。冷却装置60がロールの端部を冷却することで、ロールの中央部と端部との温度差を確実に低減できる。成膜装置20では、少しだけ水で湿らせた電極材料91を粉のまま塗膜92に成形して、電極層120を形成する。ロールを加熱すると、電極層120中の水分蒸発が早くなり、電極層120の含有水分量が低下して取り扱いにくくなることがある。ロールの端部を冷却してロールの温度を調整するようにすれば、電極層120中の水分の蒸発を抑えられるので、電極100の含有水分量の変化に伴う性質の変化を抑制することができる。
【0057】
図6に示されるように、温度調整部は、ロールの中央部を加熱する加熱装置70を有してもよい。加熱装置70がロールの中央部を加熱することで、ロールの中央部と端部との温度差を確実に低減できる。加熱装置70による加熱量を制御することで、ロールの中央部と端部とにおける温度差を精密に低減することができる。加熱装置70がロールの軸方向に並べられた複数のヒータを有する構成とし、ロールの軸方向における温度分布に従って複数のヒータを制御することで、ロールの中央部と端部とにおける温度差をさらに低減することができる。
【0058】
図5,6に示されるように、成膜装置20は、ロールの中央部と端部との温度を検知する温度センサ80を有してもよい。ロールの中央部と端部との温度差に基づいて温度調整部をフィードバック制御することで、温度調整部は、ロールの中央部と端部との温度差を効率的に低減することができる。
【0059】
これまでの実施形態の説明では、図5に温度調整部が冷却装置60を有する例が示され、図6に温度調整部が加熱装置70を有する例が示されている。温度調整部は、冷却装置60と加熱装置70との両方を有してもよい。
【0060】
図5,6に示される例では、第2ロール22と第3ロール23との温度を調整する温度調整部が設けられている。温度調整部は、第1ロール21の温度をさらに調整してもよい。成膜装置20を構成する第1ロール21、第2ロール22および第3ロール23の3つの全てのロールに温度調整部を設けることで、電極層120の膜厚の均一性をさらに向上することができる。
【0061】
図5,6には、成膜装置20が温度センサ80を有する例が示されているが、温度センサ80は必ずしも設けられなくてもよい。たとえば、成膜の条件に従ってロールの温度がどのように変動するかを事前に検証し、その検証結果に基づいて作成したプログラムに従って温度調整部を制御してロールの中央部と端部との温度差を低減することで、上述した実施形態の作用効果を同様に得ることが可能である。
【実施例0062】
以下、実施例について説明する。実施形態で説明した、温度調整部の設けられた成膜装置20を用いて、基材110の表面に電極層120を成膜した。成膜中のロール温度と、ロールの中央部と端部とにおける電極層120の膜厚差とを計測した。比較例として、温度調整部の設けられていない成膜装置を用いて、同様に成膜を行ない、成膜中のロール温度と膜厚差とを計測した。
【0063】
図7は、比較例における、ロールの中央部と端部との温度差および膜厚差を示すグラフである。比較例では、成膜開始から10分経過後に、ロールの中央部と端部とに温度差が生じていた。熱膨張によってロールの端部の外径がロールの中央部の外径よりも大きくなり、その結果、中央部と端部との膜厚差が2μmを越え、電極層120の膜厚均一性を維持できない結果となった。
【0064】
図8は、実施例における、ロールの中央部と端部との温度差および膜厚差を示すグラフである。実施例では、昇温中のロールの中央部と端部との温度差が、比較例よりも小さくなっていた。ロールの中央部と端部との外径の差が小さくなり、その結果、中央部と端部との膜厚差が1μm未満に維持されていた。したがって、ロールの中央部と端部との温度差を小さくすることで、電極層120の膜厚の均一性を維持できることが明らかになった。
【0065】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 電極製造装置、10 搬送装置、11 送り出しロール、12 巻き取りロール、20 成膜装置、21 第1ロール、22 第2ロール、23 第3ロール、24 隔壁、25 フィーダ、40 成形装置、41 成形ロール、42 対向ロール、50 乾燥装置、60 冷却装置、70 加熱装置、80 温度センサ、91 電極材料、92 塗膜、100 電極、110 基材、120 電極層、121 凹部、122 凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8