(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073072
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185894
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AC02
5J084BA04
5J084BA06
5J084BA50
5J084BB01
5J084BB14
5J084BB26
5J084BB28
5J084BB37
5J084CA31
5J084CA70
5J084DA01
5J084EA02
(57)【要約】
【課題】受光素子に生成されるスポットの大きさを大きくする。
【解決手段】発光素子110から出射された送信光Tは、ビームスプリッタ400によって反射されて可動反射部200に照射されている。送信光Tは、可動反射部200よって反射されて、測定対象Oに照射されている。可動反射部200によって反射された受信光Rは、ビームスプリッタ400、第1受信レンズ332、アパーチャ320及び第2受信レンズ334を通過して、受光素子310の第3方向Zの正方向側の受光面312に照射されている。可動反射部200と受光素子310とは、実質的に光学的に共役な位置にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動反射部と、
前記可動反射部によって反射された光が照射される受光素子と、
を備え、
前記可動反射部と前記受光素子とが実質的に光学的に共役な位置にある、光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置において、
前記可動反射部によって反射されて前記受光素子に照射される前記光が通過するアパーチャをさらに備える、光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学装置において、
無限遠又は有限の距離にある物体の反射光又は散乱光を前記アパーチャに結像させる受信レンズをさらに備え、
前記アパーチャが前記物体に対して実質的に光学的に共役な位置にある、光学装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の光学装置において、
前記可動反射部の回転によって前記アパーチャにおける前記光の照射位置が変位し、
前記アパーチャが、前記照射位置の変位方向に長手方向を有している、光学装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記アパーチャの所定位置における透過率が、前記アパーチャの前記所定位置から前記アパーチャにおける前記光の照射位置の変位方向にずれた位置における透過率より低くなっている、光学装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記アパーチャの所定位置における透過率が、前記アパーチャの前記所定位置に対して前記アパーチャにおける前記光の照射位置の変位方向の両側の位置における透過率より低くなっている、光学装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記アパーチャにおける前記光の照射位置の変位方向における前記アパーチャの長さを制御する制御部をさらに備える光学装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光学装置において、
前記制御部が、前記照射位置を前記変位方向に変位させる方向における前記可動反射部の回転の角速度に応じて、前記アパーチャの前記長さを制御する、光学装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光学装置において、
前記制御部が、前記可動反射部が搭載されている物体の移動速度に応じて、前記アパーチャの前記長さを制御する、光学装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記受光素子が、複数のセルを有し、前記光が照射された前記セルの数に応じた信号を出力する、光学装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の光学装置において、
発光素子をさらに備え、
前記可動反射部が、前記発光素子から出射された光を反射する、光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の光学装置が開発されている。光学装置は、発光素子、可動反射部及び受光素子を備えている。可動反射部は、発光素子から出射された送信光を反射する。可動反射部によって反射された送信光は、測定対象に照射されて、測定対象によって反射又は散乱される。送信光の反射光及び散乱光の少なくとも一部は、可動反射部に照射される。可動反射部に照射された反射光及び散乱光の少なくとも一部は、受信光として、可動反射部によって反射されて受光素子に照射される。受信光が受光素子に照射されることで、受光素子にはスポットが生成される。
【0003】
特許文献1には、光学装置の一例について記載されている。この例では、受光素子に照射される受信光が受信レンズによって結像されている。受光素子には、受信レンズによって結像された受信光が照射されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受光素子に生成されるスポットの大きさを大きくすることが要請されることがある。例えば、受光素子が、SiPM(Silicon Photomultiplier)である等、行列状に配置された複数のセルを有する場合、受光素子に生成されるスポットの大きさが大きくなるほど、受光素子に発生する信号のレベルを高くすることができる。一方、例えば特許文献1に記載されているように受光素子に照射される受信光が受信レンズによって結像されることがある。しかしながら、この場合、受光素子に生成されるスポットの大きさが比較的小さくなる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、受光素子に生成されるスポットの大きさを大きくすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
可動反射部と、
前記可動反射部によって反射された光が照射される受光素子と、
を備え、
前記可動反射部と前記受光素子とが実質的に光学的に共役な位置にある、光学装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態に係るアパーチャを可動反射部が位置する側から見た図である。
【
図3】実施形態に係る受光素子を可動反射部が位置する側から見た図である。
【
図5】比較例に係る受光素子を可動反射部が位置する側から見た図である。
【
図7】実施例に係る制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態及び実施例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る光学装置10を示す図である。
図2は、実施形態に係るアパーチャ320を可動反射部200が位置する側から見た図である。
図3は、実施形態に係る受光素子310を可動反射部200が位置する側から見た図である。
【0011】
図1~
図3において、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zは、光学装置10の内部における方向を示している。第1方向X、第2方向Y又は第3方向Zを示す矢印は、当該矢印の基端から先端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の正方向であり、当該矢印の先端から基端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の負方向であることを示している。第2方向Y又は第3方向Zを示す黒点付き白丸は、紙面の奥から手前に向かう方向が当該白丸によって示される方向の正方向であり、紙面の手前から奥に向かう方向が当該白丸によって示される方向の負方向であることを示している。
【0012】
第1方向Xは、後述する受信光Rの変位方向に平行な方向となっている。第2方向Yは、第1方向Xに直交している。第3方向Zは、第1方向X及び第2方向Yの双方に直交している。第3方向Zの正方向は、受光素子310が位置する側から可動反射部200が位置する側に向かう方向である。第3方向Zの負方向は、可動反射部200が位置する側から受光素子310が位置する側に向かう方向である。
【0013】
図1を参照して、光学装置10の光学系について説明する。
【0014】
光学装置10は、発光素子110、可動反射部200、受光素子310、アパーチャ320、第1受信レンズ332、第2受信レンズ334及びビームスプリッタ400を備えている。
【0015】
発光素子110は、所定の繰返し周期で送信光Tを出射している。発光素子110は、例えば、レーザダイオード(LD)である。実施形態において、発光素子110は、3つのライン状の発光部を有する3スタックレーザとなっている。このため、送信光Tの光軸に垂直な断面における送信光Tの形状は、3本のライン状になっている。したがって、後述するフットプリントFの形状及び後述する仮想スポットISの形状は、送信光Tの形状と実質的に相似となっている。なお、送信光Tの光軸に垂直な断面における送信光Tの形状は、実施形態に係る形状に限定されない。
【0016】
発光素子110から出射された送信光Tは、ビームスプリッタ400によって反射されて可動反射部200に照射されている。ビームスプリッタ400によって反射されて可動反射部200に照射される送信光Tは、第3方向Zに実質的に平行となっている。送信光Tは、可動反射部200よって反射されて、測定対象Oに照射されている。測定対象Oは、光学装置10の外部に存在している。送信光Tが測定対象Oに照射されることで、測定対象OにはフットプリントFが生成されている。測定対象Oに照射された送信光Tは、測定対象Oによって反射又は散乱されている。送信光Tの反射光及び散乱光の少なくとも一部は、可動反射部200に照射されている。可動反射部200に照射された反射光及び散乱光の少なくとも一部分は、受信光Rとして可動反射部200によって反射されている。
【0017】
可動反射部200によって反射された受信光Rは、ビームスプリッタ400、第1受信レンズ332、アパーチャ320及び第2受信レンズ334を通過して、受光素子310の第3方向Zの正方向側の受光面312に照射されている。
【0018】
第1受信レンズ332は、可動反射部200から第3方向Zの負方向に第1受信レンズ332の焦点距離f1離れた位置にある。アパーチャ320は、第1受信レンズ332から第3方向Zの負方向に第1受信レンズ332の焦点距離f1離れた位置にある。第2受信レンズ334は、アパーチャ320から第3方向Zの負方向に第2受信レンズ334の焦点距離f2離れた位置にある。受光面312は、第2受信レンズ334から第3方向Zの負方向に第2受信レンズ334の焦点距離f2離れた位置にある。
【0019】
図1を参照して、可動反射部200の詳細について説明する。
【0020】
実施形態において、可動反射部200は、可動反射部200から無限遠又は有限の距離にある物体に対して光学的に共役な位置からずれて位置している。実施形態において、可動反射部200は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。可動反射部200は、互いに直交する第1回転軸及び第2回転軸の周りに揺動可能となっている。具体的には、可動反射部200は、第1回転軸の周りに所定の共振周波数で揺動している。また、可動反射部200は、第2回転軸の周りに共振周波数よりも低い基本周波数で揺動している。可動反射部200は、第1回転軸の周りの揺動によって、主走査方向の走査を行っている。可動反射部200は、第2回転軸の周りの揺動によって、副走査方向の走査を行っている。実施形態において、主走査方向は水平方向であり、副走査方向は鉛直方向である。ただし、主走査方向、副走査方向、水平方向及び鉛直方向の関係は、実施形態に係る関係に限定されない。
【0021】
実施形態において、可動反射部200の第1回転軸は、第2方向Yに実質的に平行となっている。以下、可動反射部200の順方向の回転とは、第2方向Yの正方向から見て可動反射部200が第1回転軸の周りに時計回り方向に回転していることをいう。また、以下、可動反射部200の逆方向の回転とは、第2方向Yの正方向から見て可動反射部200が第1回転軸の周りに反時計回り方向に回転していることをいう。
【0022】
可動反射部200は、可動反射部200の順方向の回転及び可動反射部200の逆方向の回転のいずれにおいても、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の中心付近において比較的速い角速度で回転している。したがって、
図1において第1受信光R1、第2受信光R2及び第3受信光R3によって例示されるように、受信光Rは、可動反射部200によって異なる方向に向けて反射されることがある。
【0023】
受信光Rが第1受信光R1となる場合を説明する。この場合、可動反射部200から測定対象Oまでの距離が比較的近距離となっている。すなわち、測定対象Oは、可動反射部200から所定距離未満の距離に存在している。また、可動反射部200によって送信光Tが反射されるタイミングにおいて、可動反射部200は、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の中心付近において順方向又は逆方向に回転している。このため、可動反射部200によって第1受信光R1が反射されるタイミングにおける可動反射部200の第1回転軸の周りの変位角は、可動反射部200によって送信光Tが反射されるタイミングにおける可動反射部200の第1回転軸の周りの変位角からほとんど変動していない。したがって、可動反射部200から受光素子310までの第1受信光R1は、第3方向Zに実質的に平行となっている。
【0024】
受信光Rが第2受信光R2となる場合を説明する。この場合、可動反射部200から測定対象Oまでの距離が比較的遠距離となっている。すなわち、測定対象Oは、可動反射部200から上記所定距離以上の距離に存在している。また、可動反射部200によって送信光Tが反射されるタイミングにおいて、可動反射部200は、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の中心付近において順方向に回転している。このため、可動反射部200によって第2受信光R2が反射されるタイミングにおける可動反射部200の第1回転軸の周りの変位角は、可動反射部200によって送信光Tが反射されるタイミングにおける可動反射部200の第1回転軸の周りの変位角から第2方向Yの正方向から見て時計回りに変動している。したがって、第2受信光R2は、第1受信光R1に対して第1方向Xの正方向側にずれている。
【0025】
受信光Rが第3受信光R3となる場合を説明する。この場合、可動反射部200から測定対象Oまでの距離が比較的遠距離となっている。すなわち、測定対象Oは、可動反射部200から上記所定距離以上の距離に存在している。また、可動反射部200によって送信光Tが反射されるタイミングにおいて、可動反射部200は、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の中心付近において逆方向に回転している。このため、可動反射部200によって第3受信光R3が反射されるタイミングにおける可動反射部200の第1回転軸の周りの変位角は、可動反射部200によって送信光Tが反射されるタイミングにおける可動反射部200の第1回転軸の周りの変位角から第2方向Yの正方向から見て反時計回りに変動している。したがって、第3受信光R3は、第1受信光R1に対して第1方向Xの負方向側にずれている。
【0026】
なお、可動反射部200は、MEMSミラーに限定されない。例えば、可動反射部200は、ポリゴンミラー等、順方向及び逆方向の一方のみに回転可能なミラーであってもよい。また、可動反射部200の順方向の回転期間と、可動反射部200の逆方向の回転期間と、の一方のみにおいて可動反射部200によって送信光Tを反射していてもよい。例えば、可動反射部200が比較的速い角速度で順方向に回転しているタイミングで可動反射部200によって送信光Tを反射した場合、可動反射部200によって反射される受信光Rは、可動反射部200から測定対象Oまでの距離が長くなるほど第1方向Xの正方向に向けて変位する。これに対して、可動反射部200が比較的速い角速度で逆方向に回転しているタイミングで可動反射部200によって送信光Tを反射した場合、可動反射部200によって反射される受信光Rは、可動反射部200から測定対象Oまでの距離が長くなるほど第1方向Xの負方向に向けて変位する。
【0027】
以下、特に断りがない限り、受信光Rに関する説明は、第1受信光R1、第2受信光R2及び第3受信光R3のいずれについても共通している。
【0028】
図1及び
図2を参照して、アパーチャ320の詳細について説明する。
【0029】
実施形態において、アパーチャ320は、第1受信レンズ332から無限遠の物体に対して実質的に光学的に共役な位置にある。第1受信レンズ332から無限遠とは、例えば、第1受信レンズ332から十分に遠いことを意味している。しかしながら、アパーチャ320が設けられる位置は、この位置に限定されるものではない。例えば、アパーチャ320は、第1受信レンズ332から有限の距離にある物体に対して実質的に光学的に共役な位置にあってもよい。
図1に示すように、アパーチャ320には、第1受信レンズ332によって受信光Rが結像されている。したがって、
図2に示すように、第3方向Zの正方向から見てアパーチャ320には仮想スポットISを生成することができる。仮想スポットISは、アパーチャ320を通過して第3方向Zに垂直な仮想平面にフットプリントFを結像することで生成されている。仮想スポットISは、アパーチャ320における受信光Rの照射位置を示している。仮想スポットISは、フットプリントFと実質的に相似となっている。
【0030】
なお、アパーチャ320がある距離の物体に対して実質的に光学的に共役な位置にあるとは、アパーチャ320がある距離の物体に対して厳密に光学的に共役な位置にあることだけを意味するのでなく、アパーチャ320がある距離の物体に対して厳密に光学的に共役な位置から公差等の要因によってずれていてもよいことを意味している。
【0031】
図2には、第1受信光R1によって生成される第1仮想スポットIS1と、第2受信光R2によって生成される第2仮想スポットIS2と、第3受信光R3によって生成される第3仮想スポットIS3と、が図示されている。
図1において第1受信光R1、第2受信光R2及び第3受信光R3によって例示されるように、受信光Rは、可動反射部200によって第1方向Xに変位することがある。したがって、受信光Rが第1方向Xに変位することで、仮想スポットISも、
図2において第1仮想スポットIS1、第2仮想スポットIS2及び第3仮想スポットIS3によって例示されるように、第1方向Xに変位することがある。
【0032】
以下、特に断りがない限り、仮想スポットISに関する説明は、第1仮想スポットIS1、第2仮想スポットIS2及び第3仮想スポットIS3のいずれについても共通している。
【0033】
図2に示すように、第3方向Zの正方向から見て、受信光Rは、アパーチャ320と重なる領域に照射されている。したがって、受信光Rは、アパーチャ320を第3方向Zに通過することができる。これに対して、第3方向Zの正方向から見てアパーチャ320と重なる領域の周囲は遮光性を有している。したがって、第3方向Zの正方向から見てアパーチャ320と重なる領域の周囲に太陽光等の背景光等が照射されても、背景光を遮ることができる。したがって、実施形態では、アパーチャ320が設けられていない場合と比較して、背景光等のノイズ光が受光面312に照射されることを抑制することができる。
【0034】
また、実施形態では、第1受信レンズ332から無限遠の物体に対して光学的に共役な位置にアパーチャ320が設けられている。このため、第1受信レンズ332から無限遠の物体からの反射光又は散乱光によって、この物体と実質的に光学的に共役な位置においてこの物体のスポットが生成されている。また、この物体のスポットの大きさ、すなわち受信光Rの大きさは、この物体と実質的に光学的に共役な位置において最小となる。このため、実施形態では、第1受信レンズ332から無限遠の物体に対して実質的に光学的に共役な位置にアパーチャ320を設けることで、第1受信レンズ332から無限遠の物体に対して実質的に光学的に共役な位置から第3方向Zにずれた位置にアパーチャ320が設けられている場合と比較して、第3方向Zの正方向から見て、アパーチャ320の大きさを小さくすることができる。したがって、第1受信レンズ332から無限遠の物体に対して実質的に光学的に共役な位置に対して第3方向Zにずれた位置にアパーチャ320が設けられている場合と比較して、背景光等のノイズ光が受光面312に照射されることを抑制することができる。
【0035】
なお、アパーチャ320が設けられる位置は、実施形態に係る位置に限定されない。例えば、アパーチャ320は、第1受信レンズ332から無限遠の物体に対して実質的に光学的に共役な位置に対して第3方向Zにずれた位置に設けられていてもよい。また、光学装置10は、アパーチャ320を備えていなくてもよい。例えば、屋内等、太陽光等の背景光が比較的少ない場所で光学装置10が用いられる場合、アパーチャ320によって背景光等のノイズ光を低減しなくてもよい。
【0036】
図2に示す例において、アパーチャ320は、第1方向Xに長手方向を有している。すなわち、アパーチャ320は、アパーチャ320における受信光Rの照射位置の変位方向に長手方向を有している。具体的には、第3方向Zの正方向から見て、アパーチャ320は、第1方向Xに長さdxの長辺及び第2方向Yに長さdyの短辺を有する実質的に長方形形状となっている。
図2における第1仮想スポットIS1、第2仮想スポットIS2及び第3仮想スポットIS3によって例示されるように、仮想スポットISは、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動によって第1方向Xに変位することがある。これに対して、仮想スポットISは、第2方向Yにほとんど変位しない。したがって、アパーチャ320の第1方向Xの長さは、仮想スポットISの第1方向Xの変位を考慮して、仮想スポットISの第1方向Xの長さより長くする必要がある。これに対して、アパーチャ320の第2方向Yの長さは、仮想スポットISの第2方向Yの長さとほとんど等しくすることができる。アパーチャ320の第2方向Yの長さが仮想スポットISの第2方向Yの長さとほとんど等しい場合、アパーチャ320の第2方向Yの長さが仮想スポットISの第2方向Yの長さより長い場合と比較して、背景光等のノイズ光が受光面312に照射されることを抑制することができる。したがって、
図2に示す例では、アパーチャ320の第1方向Xの長さがアパーチャ320の第2方向Yの長さくなっている。
【0037】
なお、アパーチャ320の形状は、上述した例に限定されない。例えば、第3方向Zの正方向から見て、アパーチャ320は、長方形形状でなく、第1方向Xの長軸及び第2方向Yの短軸を有する楕円形状であってもよい。或いは、第3方向Zの正方向から見て、アパーチャ320は、実質的に正方形形状となっていてもよい。
【0038】
受信光Rに対するアパーチャ320の透過率は、仮想スポットISの位置に応じて異なっていてもよい。例えば、
図2に示す例では、アパーチャ320の所定位置における透過率が、アパーチャ320の当該所定位置の第1方向Xの両側の位置における透過率より低くなっていてもよい。アパーチャ320の当該所定位置は、例えば、アパーチャ320の第1方向Xの中央位置である。具体的には、第1仮想スポットIS1は、可動反射部200から比較的近距離に存在する測定対象Oによって反射又は散乱された第1受信光R1によって生成されている。これに対して、第2仮想スポットIS2及び第3仮想スポットIS3は、可動反射部200から比較的遠距離に存在する測定対象Oによって反射又は散乱された第2受信光R2及び第3受信光R3によってそれぞれ生成されている。したがって、第1受信光R1の強度は、第2受信光R2の強度及び第3受信光R3の強度より高くなっている。このため、第1仮想スポットIS1が生成される位置におけるアパーチャ320の透過率が、第2仮想スポットIS2が生成される位置におけるアパーチャ320の透過率及び第3仮想スポットIS3が生成される位置におけるアパーチャ320の透過率より低くなっていてもよい。これによって、受光素子310によって出力される信号のレベルが第1受信光R1によって飽和することを抑制することができる。
【0039】
アパーチャ320の第1方向Xの透過率分布は、特に限定されない。例えば、アパーチャ320の透過率は、第1仮想スポットIS1が生成される位置から、第2仮想スポットIS2が生成される位置及び第3仮想スポットIS3が生成される位置にかけて、連続的に減少してもよいし、又は階段状に減少してもよい。
【0040】
また、アパーチャ320の所定位置の透過率は、アパーチャ320の当該所定位置から第1方向Xの正方向又は負方向にずれた位置における透過率より低くてもよい。例えば、可動反射部200が順方向に回転しているタイミングにおいてのみ送信光Tが可動反射部200によって反射される場合、アパーチャ320の所定位置の透過率が、アパーチャ320の当該所定位置から第1方向Xの正方向にずれた位置における透過率より低くなっていてもよい。アパーチャ320の当該所定位置には、例えば、可動反射部200から比較的近距離に存在する測定対象Oによって反射又は散乱された受信光Rが照射される。この場合、受光素子310によって出力される信号のレベルがアパーチャ320の当該所定位置に照射された受信光Rによって飽和することを抑制することができる。或いは、可動反射部200が逆方向に回転しているタイミングにおいてのみ送信光Tが可動反射部200によって反射される場合、アパーチャ320の所定位置の透過率が、アパーチャ320の当該所定位置から第1方向Xの負方向にずれた位置における透過率より低くなっていてもよい。アパーチャ320の当該所定位置には、例えば、可動反射部200から比較的近距離に存在する測定対象Oによって反射又は散乱された送信光Tが照射される。この場合、受光素子310によって出力される信号のレベルがアパーチャ320の当該所定位置に照射された受信光Rによって飽和することを抑制することができる。
【0041】
なお、アパーチャ320の透過率分布は、上述した例に限定されない。例えば、アパーチャ320の透過率は、第1方向Xの位置によらず一定であってもよい。
【0042】
次に、
図1及び
図3を参照して受光素子310の詳細について説明する。
【0043】
受光素子310は、受光面312に照射された受信光Rを光電変換によって検出している。
図3に示す例において、第3方向Zの正方向から見て、受光面312は、直径dの円形状となっている。ただし、受光面312の形状は、この例に限定されない。実施形態において、受光素子310は、SiPM(Silicon Photomultiplier)である。受光面312は、第3方向Zの正方向から見て、第1方向X及び第2方向Yの2方向に配列された複数のセルを有している。各セルは、フォトンの入射により所定の確率で励起する性質を有している。各セルは、例えば、ガイガーモードAPD(アバランシェフォトダイオード)である。各セルは、入射したフォトンの数に関わらず、励起している(出力1)か、していない(出力0)かで2値の出力を行う。受光素子310は、光が照射されたセルの数に応じた信号を出力する。具体的には、受光素子310の出力は、励起したセルの数に比例する。このため、受光素子310は、受光面312に生成されるスポットSが大きいほど高レベルの信号を出力することが可能になっている。
【0044】
実施形態において、可動反射部200と受光素子310とは、実質的に光学的に共役な位置にある。したがって、
図3に示すように、第3方向Zの正方向から見て、受光面312にはスポットSを生成することができる。スポットSは、可動反射部200の第3方向Zの負方向側の面を第3方向Zに垂直な仮想平面に第3方向Zの負方向に平行に射影することで形成される影と実質的に相似となっている。この影は、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動又は第2回転軸の周りの揺動によって変形する。しかしながら、当該影の変形は、僅かなものである。このため、スポットSの大きさは、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動及び第2回転軸の周りの揺動によらず、ほとんど一定にすることができる。
【0045】
なお、可動反射部200と受光素子310とが実質的に光学的に共役な位置にあるとは、可動反射部200と受光素子310とが厳密に光学的に共役な位置にあることだけを意味するのでなく、可動反射部200と受光素子310とが厳密に光学的に共役な位置から公差等の要因によってずれていてもよいことを意味している。
【0046】
図3に示す例において、第3方向Zの正方向から見て、スポットSの形状は、受光面312の形状と近似している。このため、第3方向Zの正方向から見て、受光面312のほとんど部分にスポットSを照射することができる。したがって、第3方向Zの正方向から見て受光面312の僅かな一部分にしかスポットSが照射されない場合と比較して、スポットSによって受光素子310に発生する信号のレベルを高くすることができる。
【0047】
図4は、比較例に係る光学装置10Kを示す図である。
図5は、比較例に係る受光素子310Kを可動反射部200Kが位置する側から見た図である。比較例に係る光学装置10Kは、以下の点を除いて、実施形態に係る光学装置10と同様である。
【0048】
比較例に係る光学装置10Kにおいて、測定対象Oと受光素子310Kとは、実質的に光学的に共役な位置にある。比較例に係る光学装置10Kは、実施形態に係るアパーチャ320を備えていない。
図4に示すように、可動反射部200Kによって反射された受信光RKは、ビームスプリッタ400を通過して受信レンズ330Kに入射している。受信レンズ330Kを通過した受信光RKは、受光素子310Kの第3方向Zの正方向側の受光面312Kに照射されている。受光面312Kは、受信レンズ330Kから第3方向Zの負方向に受信レンズ330Kの焦点距離f離れた位置にある。
【0049】
図4には、
図1と同様にして、第1受信光R1K、第2受信光R2K及び第3受信光R3Kが例示的に図示されている。以下、特に断りがない限り、比較例に係る受信光RKに関する説明は、比較例に係る第1受信光R1K、第2受信光R2K及び第3受信光R3Kのいずれについても共通している。
【0050】
図5に示すように、第3方向Zの正方向から見て、比較例に係る受光面312KにはスポットSKが生成されている。比較例に係るスポットSKは、受光面312KにフットプリントFを結像することで生成されている。
図5には、比較例に係る第1受信光R1Kによって生成される第1スポットS1Kと、比較例に係る第2受信光R2Kによって生成される第2スポットS2Kと、比較例に係る第3受信光R3Kによって生成される第3スポットS3Kと、が図示されている。以下、特に断りがない限り、比較例に係るスポットSKに関する説明は、比較例に係る第1スポットS1K、第2スポットS2K及び第3スポットS3Kのいずれについても共通している。
【0051】
実施形態に係る光学装置10と、比較例に係る光学装置10Kと、を比較する。
【0052】
図5に示すように、比較例に係る受光面312Kに生成されるスポットSKは、フットプリントFと実質的に相似となっている。また、比較例に係る光学装置10Kでは、第1スポットS1K、第2スポットS2K及び第3スポットS3Kが第1方向Xにずれて位置している。したがって、比較例では、受信光RKの第1方向Xの変位を考慮して、受光面312Kの直径dに対するスポットSKの第1方向Xの幅の比を比較的小さくする必要がある。これに対して、
図3に示すように、実施形態に係る受光面312に生成されるスポットSは、可動反射部200の第3方向Zの負方向側の面を第3方向Zに垂直な仮想平面に第3方向Zの負方向に平行に射影することで形成される影と実質的に相似となっている。したがって、実施形態において、スポットSの大きさは、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動及び第2回転軸の周りの揺動によらず、ほとんど一定にすることができる。このため、実施形態では、第3方向Zの正方向から見て、受光面312のほとんどの部分にスポットSを生成することができる。したがって、実施形態に係る受光面312に生成されるスポットSの大きさは、比較例に係る受光面312Kに生成されるスポットSKの大きさより大きくすることができる。このため、実施形態に係る受光素子310から出力される信号のレベルは、比較例に係る受光素子310Kから出力される信号のレベルより高くすることができる。
【実施例0053】
図6は、実施例に係る光学装置10Aを示す図である。実施例に係る光学装置10Aは、以下の点を除いて、実施形態に係る光学装置10と同様である。
【0054】
実施例に係る光学装置10Aは、制御部500を備えている。制御部500は、第1方向Xのアパーチャ320の長さを制御している。例えば、アパーチャ320の第1方向Xの長さがスリットの幅で決定されている場合、制御部500は、スリットの幅を機械的に変化させることでアパーチャ320の第1方向Xの長さを制御することができる。
【0055】
一例において、制御部500は、可動反射部200の第1回転軸の周りの回転の角速度に応じて、アパーチャ320の第1方向Xの長さを制御してもよい。例えば、可動反射部200の第1回転軸の周りの共振周波数を一定に維持したまま可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の振れ角を変化させた場合について説明する。この場合、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の振れ角が小さくなるほど、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の中心付近における角速度が小さくなる。可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の中心付近における角速度が比較的小さい場合、アパーチャ320の第1方向Xの長さは比較的短くてもよい。これに対して、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の振れ角が大きくなるほど、可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の中心付近における角速度が大きくなる。可動反射部200の第1回転軸の周りの揺動の中心付近における角速度が比較的大きい場合、アパーチャ320の第1方向Xの長さが比較的長くする必要がある。したがって、制御部500は、可動反射部200の第1回転軸の周りの回転の角速度が所定速度未満である場合、アパーチャ320の第1方向Xの長さを所定長さ未満にし、可動反射部200の第1回転軸の周りの回転の角速度が上記所定速度以上である場合、アパーチャ320の第1方向Xの長さを上記所定長さ以上にする。
【0056】
他の例において、制御部500は、可動反射部200が搭載されている物体の移動速度に応じて、アパーチャ320の第1方向Xの長さを制御してもよい。制御部500は、例えば、当該物体に搭載された加速度センサによって、当該物体の移動速度を検出している。例えば、光学装置10が自動車に搭載されている場合について説明する。自動車が生活道路を走っている等して比較的低速で移動している場合、光学装置10Aは、可動反射部200から比較的近距離に存在する測定対象Oを測定する。可動反射部200から比較的近距離に存在する測定対象Oを測定する場合、アパーチャ320の第1方向Xの長さは比較的短くしてもよい。これに対して、自動車が高速道路を走っている等して比較的高速で移動している場合、光学装置10Aは、可動反射部200から比較的遠距離に存在する測定対象Oを測定する。可動反射部200から比較的遠距離に存在する測定対象Oを測定する場合、アパーチャ320の第1方向Xの長さが比較的長くする必要がある。したがって、制御部500は、可動反射部200が搭載されている物体の移動速度が所定速度未満である場合、アパーチャ320の第1方向Xの長さを所定長さ未満にし、可動反射部200が搭載されている物体の移動速度が当該所定速度未満である場合、アパーチャ320の第1方向Xの長さを当該所定長さ以上にする。
【0057】
図7は、実施例に係る制御部500のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0058】
制御部500の主な構成は、集積回路を用いて実現される。この集積回路は、制御部500を備える制御装置となっている。この集積回路は、バス502、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510及びネットワークインタフェース512を有する。
【0059】
バス502は、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510及びネットワークインタフェース512が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ504等を互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0060】
プロセッサ504は、マイクロプロセッサ等を用いて実現される演算処理装置である。
【0061】
メモリ506は、RAM(Random Access Memory)等を用いて実現されるメモリである。
【0062】
ストレージデバイス508は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等を用いて実現されるストレージデバイスである。
【0063】
入出力インタフェース510は、制御部500を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。
図7において、入出力インタフェース510にはアパーチャ320が接続されている。
【0064】
ネットワークインタフェース512は、制御部500を通信網に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース512が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0065】
ストレージデバイス508は、制御部500の各機能要素を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ504は、このプログラムモジュールをメモリ506に読み出して実行することで、制御部500の各機能を実現する。
【0066】
なお、上記した集積回路のハードウェア構成は
図7に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ506に格納されてもよい。この場合、集積回路は、ストレージデバイス508を備えていなくてもよい。
【0067】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。