(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073098
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/04 20060101AFI20230518BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C08F290/04
C08G59/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185928
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀典
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
【テーマコード(参考)】
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
4J036AB01
4J036AB07
4J036AD08
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4J127FA31
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4J127FA38
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】電気絶縁性に優れる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る硬化性組成物は、(メタ)アクリル系重合体(A)と;エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)と;光ラジカル重合開始剤(C)と;エポキシ硬化剤(D)と;を含有している。(メタ)アクリル系重合体(A)とエポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)との重量比は、(1:99)~(50:50)である。(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下であり;重合体中に含まれる臭素元素およびカリウム元素の合計が、0ppm以上、25ppm以下であり;かつ、「-OC(O)C(R1)=CH2」で表わされる基を1分子あたり1.0個以上有する。式中、R1は水素原子または炭素数1~20の有機基を表わす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体(A)と、
エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)と、
光ラジカル重合開始剤(C)と、
エポキシ硬化剤(D)と、
を含有し、
上記(メタ)アクリル系重合体(A)と上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)との重量比が、(1:99)~(50:50)であり、
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、
分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下であり、
重合体中に含まれる臭素元素およびカリウム元素の合計が、0ppm以上、25ppm以下であり、かつ、
下記一般式(a)で表わされる(メタ)アクリロイル系官能基を1分子あたり1.0個以上有する、
-OC(O)C(R1)=CH2・・・一般式(a)
(式中、R1は水素原子または炭素数1~20の有機基を表わす)
硬化性組成物。
【請求項2】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、上記(メタ)アクリロイル系官能基を分子の末端に有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる臭素元素が、0ppm以上、15ppm以下である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)が、芳香族系エポキシ化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)が、ラジカル反応性基を有するエポキシ化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
上記エポキシ硬化剤(D)がアミン化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法であって、
銅錯体、多座アミン、多座アミン以外の塩基、および還元剤を使用して、上記(メタ)アクリル系重合体(A)を製造する工程と、
得られた上記(メタ)アクリル系重合体(A)と、上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)と、上記光ラジカル重合開始剤(C)と、上記エポキシ硬化剤(D)とを混合する工程と、
を含む、硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系重合体およびエポキシ化合物を含有する硬化性組成物が、従来技術として知られている。特許文献1には、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合により製造されるビニル系重合体の精製方法が記載されている。特許文献2には、銅錯体を触媒とする(メタ)アクリル系モノマーのリビングラジカル重合法による、特定の末端構造を有するビニル系重合体と、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と、光ラジカル性重合開始剤と、光カチオン性重合開始剤と、分子中にエポキシ基および(メタ)アクリロイル系基を有する化合物と、を必須成分とする、硬化性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-155846号公報
【特許文献2】国際公開第2012/020545号
【特許文献3】国際公開第2005/092981号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、電気絶縁性に優れる硬化性組成物を実現するという観点からさらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明の一態様は、電気絶縁性に優れる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る硬化性組成物は、
(メタ)アクリル系重合体(A)と、
エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)と、
光ラジカル重合開始剤(C)と、
エポキシ硬化剤(D)と、
を含有し、
上記(メタ)アクリル系重合体(A)と上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)との重量比が、(1:99)~(50:50)であり、
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、
分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下であり、
重合体中に含まれる臭素元素およびカリウム元素の合計が、0ppm以上、25ppm以下であり、かつ、
下記一般式(a)で表わされる(メタ)アクリロイル系官能基を1分子あたり1.0個以上有する。
-OC(O)C(R1)=CH2・・・一般式(a)
(式中、R1は水素原子または炭素数1~20の有機基を表わす)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、電気絶縁性に優れる硬化性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について、以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタアクリルを意味する。
【0009】
〔1.(メタ)アクリル系重合体(A)〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(メタ)アクリル系重合体(A)を含有している。(メタ)アクリル系重合体(A)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0010】
[1.1.(メタ)アクリル系重合体の主鎖]
(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖を構成する(メタ)アクリル系モノマーは、特に限定されない。(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチルが挙げられる。
【0011】
得られる(メタ)アクリル系重合体(A)の物性の観点に基づくと、これらのモノマーの中でも、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸エステルがより好ましく、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸-2-メトキシエチルからなる群より選択される1種類以上がさらに好ましい。
【0012】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、これらのモノマーのうち1種類のみに由来するユニットから構成されていてもよいし、2種類以上のモノマーに由来するユニットから構成されていてもよい。(メタ)アクリル系重合体(A)は、上述した好ましいモノマーに由来するユニットと、他のモノマーに由来するユニットとの共重合体であってもよい。この場合、(メタ)アクリル系重合体(A)において好ましいモノマーに由来するユニットが占める割合は、20重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。
【0013】
[1.2.(メタ)アクリル系重合体(A)が有する(メタ)アクリロイル系官能基]
(メタ)アクリル系重合体(A)は、下記一般式(a)で表わされる(メタ)アクリロイル系官能基を、1分子あたり1.0個以上有している。式中、R1は、水素原子または炭素数1~20の有機基を表わす。(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリロイル置換基を有しているため、光照射により硬化する。
-OC(O)C(R1)=CH2・・・一般式(a)
【0014】
一般式(a)で表される(メタ)アクリロイル系官能基は、(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖の途中に位置していてもよいし、主鎖の末端に位置していてもよい。得られるゴム弾性の観点から、(メタ)アクリロイル系官能基は、主鎖の末端に位置していることが好ましい。
【0015】
一般式(a)において、R1の構造の例としては、-H、-CH3、-CH2CH3、-(CH2)nCH3(nは2~19の整数を表す)、-C6H5(フェニル基)、-CH2OH、-CNが挙げられる。(メタ)アクリロイル系官能基の反応性の観点から、R1は、-Hまたは-CH3が好ましい。
【0016】
(メタ)アクリル系重合体(A)が有している(メタ)アクリロイル系官能基の数は、1分子当たり1.2個以上が好ましく、1.5個以上がより好ましく、1.8個以上がさらに好ましい。(メタ)アクリル系重合体(A)が有している(メタ)アクリロイル系官能基の数の上限は、例えば、1分子当たり2.0個以下、2.5個以下または3.0個以下でありうる。
【0017】
[1.3.(メタ)アクリル系重合体(A)の分子量分布]
(メタ)アクリル系重合体(A)の分子量分布は、1.8以下である。本明細書において、分子量分布とは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を表す。重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する。一実施形態において、GPC測定で用いる移動相は、クロロホルムまたはテトラヒドロフランである。一実施形態において、GPC測定で用いるカラムは、ポリスチレンゲルカラムである。分子量の値は、ポリスチレン換算値として求められる。
【0018】
(メタ)アクリル系重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されない。数平均分子量の下限は、好ましくは500以上であり、より好ましくは3,000以上であり、さらに好ましくは5,000以上であり、最も好ましくは8,000以上である。数平均分子量の上限は、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは100,000以下であり、さらに好ましくは80,000以下であり、最も好ましくは50,000以下である。数平均分子量が低過ぎると、(メタ)アクリル系重合体(A)に求められる引っ張り物性などの特性が発現されにくい傾向にある。数平均分子量が高過ぎると、重合体の取扱いが困難になる傾向がある。
【0019】
(メタ)アクリル系重合体(A)の分子量分布は、好ましくは1.7以下であり、より好ましくは1.6以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布の理論上の下限は、1である。
【0020】
[1.4.(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれるイオン性元素]
(メタ)アクリル系重合体(A)は、イオン性元素の含有量が低減されている。本明細書において、イオン性元素とは、臭素およびカリウムを意味する。これらのイオン性元素は、基本的には、(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖の合成時に混入するものである。しかし、カリウム元素は、官能基を導入する際にも混入する。
【0021】
(メタ)アクリル系重合体(A)中に含まれる臭素元素およびカリウム元素の合計量は、25ppm以下である。(メタ)アクリル系重合体(A)中に含まれる臭素元素およびカリウム元素の合計量は、電気絶縁性の観点から、20ppm以下が好ましく、15ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましい。臭素元素およびカリウム元素は、(メタ)アクリル系重合体(A)の合成に伴い不可避的に含まれるので、これらの元素の合計含有量の下限は0ppm超である。この下限は、例えば、0.1ppmまたは0.5ppmであってもよい。臭素元素およびカリウム元素の合計量が上記の範囲であれば、得られる硬化物が良好な電気絶縁性を示す。
【0022】
臭素元素とカリウム元素では、臭素元素の方が(メタ)アクリル系重合体(A)に多く含まれやすい傾向にある。したがって、(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる臭素元素の量を低減させれば、(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれるイオン性元素を効率よく低減させることができる。(メタ)アクリル系重合体(A)中に含まれる臭素元素の量は、15ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下がさらに好ましい。この下限は、例えば、0.1ppmまたは0.5ppmであってもよい。
【0023】
イオン性元素の含有量は、誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry;ICP-MS)により測定する。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体(A)のイオン性元素含有量を低下させるためには、例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)の製造工程に精製工程を設けることが好ましい。精製工程で除去する対象の例としては、溶媒(重合溶媒など)、不溶成分(重合触媒など)が挙げられる。精製工程における具体的な処理の例としては、水を用いた液液抽出、吸着剤を用いた吸着処理が挙げられる。精製効率を向上させるために、精製工程において加熱処理を施してもよい。
【0025】
(メタ)アクリル系重合体(A)のイオン性元素含有量を低下させる方法の他の例としては、化学変性が挙げられる。具体的には、官能基を導入することにより、重合体分子に含まれる臭素基を脱離させる方法が挙げられる。
【0026】
精製工程に関するより詳細な説明は、例えば、特開2004-002835号公報の〔0040〕~〔0066〕、特開2013-241541号公報の〔0117〕~〔0143〕を参照。
【0027】
(メタ)アクリル系樹脂(A)のイオン性元素含有量を低減させるための好ましい製造方法の具体例としては、(メタ)アクリロイル系官能基の導入工程の前に特開2004-002835号公報の〔0040〕~〔0066〕に記載の吸着濾過精製を行い;(メタ)アクリロイル系官能基の導入工程の後に特開2013-241541号公報の〔0117〕~〔0143〕に記載の水精製を行う方法が挙げられる。後述する製造例においては、より詳細な製造方法を説明する。
【0028】
〔2.(メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法〕
[2.1.主鎖の製造方法]
(メタ)アクリル系重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.8以下である。このように小さい分子量分布を達成するためには、リビング重合により(メタ)アクリル系重合体(A)を製造することが好ましい。リビング重合の例としては、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合が挙げられる。原料管理、設備設計、および製造プロセスの観点からは、リビングラジカル重合が好ましい。リビングラジカル重合の例としては、ATRP(原子移動ラジカル重合法)、ARGET、ICAR、SET-LRP、RAFT、NMPが挙げられる。原料調達および精製の容易さの観点から、ATRPおよびARGETが好ましい。以下、それぞれの方法について簡潔に説明する。
【0029】
[2.1.1.ATRP]
ATRPにおいて使用される開始剤の例としては、有機ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル化合物が挙げられる。有機ハロゲン化物の中でも、反応性の高い炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物がより好ましい(α位にハロゲンを有するカルボニル化合物、ベンジル位にハロゲンを有する化合物など)。具体的な開始剤の例は、特開2005-232419号公報の段落〔0040〕~〔0064〕に記載されている。
【0030】
開始剤としては、開始点を2箇所以上有する化合物が好ましい。このような開始剤を使用すれば、製造される(メタ)アクリル系樹脂(A)の分子構造を好ましいものに制御しやすい。具体的には、分子の末端に(メタ)アクリロイル系官能基を有しており、当該官能基の数が1分子当たり1.0個以上である(メタ)アクリル系樹脂(A)を得やすい。
【0031】
ATRPにおいて用いられる(メタ)アクリル系モノマーは、特に限定されない。〔1〕節にて例示した(メタ)アクリル酸エステルモノマーを、いずれも好適に用いることができる。
【0032】
ATRPにおいて重合触媒として用いられる遷移金属錯体は、特に限定されない。好ましくは、周期表の第7族、第8族、第9族、第10族または第11族元素を中心金属とする金属錯体である。より好ましくは、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体である。さらに好ましくは、1価の銅を中心金属とする錯体である。このような錯体の形成に使用される1価の銅化合物の例としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅が挙げられる。
【0033】
1価の銅を中心金属とする金属錯体を重合触媒とする場合は、配位子として多座アミンを用いると、触媒活性を高められ好ましい。多座アミンの例としては、2,2’-ビピリジンまたはその誘導体、1,10-フェナントロリンまたはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミンが挙げられる。
【0034】
ATRPの重合反応は、無溶媒下でも実施できるし、溶媒中でも実施できる。重合に用いられる溶媒の例は、特開2005-232419号公報の〔0067〕に記載されている。溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、エマルジョン系または超臨界流体CO2を媒体とする系で重合反応を実施することもできる。
【0035】
ATRPにおける重合温度は、好ましくは0~200℃であり、より好ましくは室温(例えば20℃)~150℃である。
【0036】
[2.1.2.ARGET]
ARGETは、ATRPの一態様である。ARGETでは、還元剤を使用することにより金属触媒を再生させるので、使用する金属触媒の量を大幅に低減できる。それゆえ、製造後の精製負荷も低減し、コストダウンにもつながる。
【0037】
一実施形態において、ARGETは、1価の銅、多座アミン、多座アミン以外の塩基、および還元剤を使用する。この重合系においては、多座アミンが配位した1価の銅が重合触媒として機能する。多座アミン以外の塩基は、触媒サイクルの副生成物である酸を除去し、多座アミンが被毒することを防ぐ機能がある。還元剤は、2価の銅錯体を還元して、活性な1価の銅錯体とする。還元剤の添加速度を制御すれば、重合速度および重合熱を制御できる。
【0038】
ARGETの好ましい実施形態においては、(メタ)アクリル系モノマーの総仕込み量に対して、重量比で5~30ppmの銅原子を使用する。この実施形態において、多座アミンの使用量は、重合系全体に対して7mmol%以下であり、銅原子の総量に対して150mol%以下である。この重合系は、多座アミン以外の塩基および還元剤も含んでいる。
【0039】
(多座アミン)
多座アミンの例としては、以下が挙げられる。多座アミンは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
・2座配位の多座アミン:2,2-ビピリジン、4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジン、N-(n-プロピル)ピリジルメタンイミン、N-(n-オクチル)ピリジルメタンイミン
・3座配位の多座アミン:N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N-プロピル-N,N-ジ(2-ピリジルメチル)アミン
・4座配位の多座アミン:ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン、N,N-ビス(2-ジメチルアミノエチル)-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、2,5,9,12-テトラメチル-2,5,9,12-テトラアザテトラデカン、2,6,9,13-テトラメチル-2,6,9,13-テトラアザテトラデカン、4,11-ジメチル-1,4,8,11-テトラアザビシクロヘキサデカン、N’,N’’-ジメチル-N’,N’’-ビス((ピリジン-2-イル)メチル)エタン-1,2-ジアミン、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン、2,5,8,12-テトラメチル-2,5,8,12-テトラアザテトラデカン
・5座配位の多座アミン:N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’’,N’’’’-ヘプタメチルテトラエチレンテトラミン
・6座配位の多座アミン:N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン
・ポリアミン:ポリエチレンイミン
【0040】
多座アミンとしては、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミンおよびN,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミンが好ましい。これらの多座アミンを使用すると、遷移金属原子の使用量を低減させつつ((メタ)アクリル系モノマーに対して30ppm以下程度)、充分な反応速度を達成できる。また、得られる(メタ)アクリル系樹脂の分子量分布も狭くなる。
【0041】
(多座アミン以外の塩基)
多座アミン以外の塩基は、ブレンステッド塩基(プロトンを受け入れる化合物)であってもよいし、ルイス塩基(非共有電子対を授与して配位結合を形成する化合物)であってもよい。多座アミン以外の塩基の例としては、以下が挙げられる。多座アミン以外の塩基は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
・モノアミン:モノアミンとは、塩基として作用するアミン部位が1つしかない化合物を表す。モノアミンの具体例としては、一級アミン(メチルアミン、アニリン、リシンなど)、二級アミン(ジメチルアミン、ピペリジンなど)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)、芳香族アミン(ピリジン、ピロールなど)、アンモニアが挙げられる。
・無機塩基:無機塩基とは、周期表の第1族または第2族の単体あるいは化合物を表す。単体の例としては、リチウム、ナトリウム、カルシウムが挙げられる。化合物の例としては、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、メチルリチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、フェノキシナトリウム、フェノキシカリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムが挙げられる。これらに加えて、弱酸(水酸化アンモニウムなど)と強塩基の塩も無機塩基である。
【0042】
多座アミン以外の塩基は、直接反応系に加えてもよいし、反応系中で発生させてもよい。
【0043】
多座アミン以外の塩基は、通常、(メタ)アクリル系重合体(A)製造後に精製によって除去する。そのため、低沸点であるか、または低コストであるアミンが好ましい。このような条件を満たすアミンの例としては、トリエチルアミン、トリメチルアミンが挙げられる。
【0044】
(還元剤)
還元剤の例は、国際公開第2012/020545号の〔0083〕~〔0095〕に記載されている。還元剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
還元剤は、通常、(メタ)アクリル系重合体(A)製造後に精製によって除去する。そのため、精製が容易であるか、または低コストである還元剤が好ましい。このような条件を満たす還元剤の例としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、有機スズ化合物が挙げられる。
【0046】
還元剤の添加量の下限は、(メタ)アクリル酸モノマーの仕込み総量に対して、10ppm以上が好ましい。還元剤の添加量の上限は、(メタ)アクリル酸モノマーの仕込み総量に対して、100000ppm以下が好ましく、10000ppm以下がより好ましく、1000ppm以下がさらに好ましく、500ppm以下が特に好ましい。還元剤の添加量が上記の範囲であれば、充分な重合活性が期待でき、また精製による除去も容易である。
【0047】
還元剤が常温で固体の物質である場合は、還元剤を良溶媒に溶解させた溶液を重合系に加えることが好ましい。このようにすれば、還元剤としての効果をより発揮しやすくなる。
【0048】
上述した通り、還元剤の添加速度を調整することによって、重合速度および重合熱を制御できる。安全性の観点からは、重合の進行に伴い少量ずつ還元剤を重合系に加えることが好ましい。還元剤の添加速度の下限は、銅錯体に対して、10mol%/Hr以上が好ましく、20mol%/Hr以上がより好ましく、30mol%/Hr以上がさらに好ましい。還元剤の添加速度の上限は、銅錯体に対して、1000mol%/Hr以下が好ましく、700mol%/Hr以下がより好ましく、500mol%/Hr以下がさらに好ましい。
【0049】
[2.2.(メタ)アクリロイル系官能基の導入方法]
(メタ)アクリル系重合体の主鎖に、一般式(a)で表される(メタ)アクリロイル系官能基を導入する方法は、公知の方法を利用できる。このような方法は、例えば、特開2004-203932号公報の〔0080〕~〔0091〕に記載されている。
【0050】
とりわけ、下記一般式(b)で表される(メタ)アクリル系重合体の末端ハロゲン基を、下記一般式(c)で表される(メタ)アクリロイル系官能基を有する化合物で置換する方法が好ましい。この方法は、反応の制御が容易である。
【0051】
-CR2R3X・・・一般式(b)
式中、R2およびR3は、(メタ)アクリル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合している基である。Xは、塩素、臭素またはヨウ素を表す。
【0052】
M+-OC(O)C(R1)=CH2・・・一般式(c)
式中、R1は、一般式(a)について説明した通りである。M+は、アルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオンを表す。アルカリ金属イオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンの例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、およびジメチルピペリジニウムイオンが挙げられる。好ましいM+は、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンから選択される1種類以上である。
【0053】
[2.1.1.]節で説明した有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とすれば、一般式(b)で表される末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造できる。あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤としても、一般式(b)で表される末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造できる。好ましいのは、前者の製造方法である。
【0054】
一般式(b)で表される重合体に一般式(c)で表される化合物を反応させる際には、一般式(b)中のハロゲン基に対する一般式(c)中のオキシアニオンの量が、好ましくは1.0~5.0当量、より好ましくは1.0~1.2当量となるように、量比を設定する。
【0055】
導入反応に使用する溶媒は、好ましくは極性溶媒である。これは、導入反応が求核置換反応であるためである。極性溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリルが挙げられる。
【0056】
導入反応の反応温度は、好ましくは0~150℃である。(メタ)アクリロイル系官能基の重合性を保持する観点からは、反応温度は室温(例えば20℃)~100℃がより好ましい。
【0057】
〔3.エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)を含有している。エポキシ化合物およびオキセタン化合物は、硬化物の強度を向上させる役割をはたす。オキセタン化合物は、硬化性組成物の粘度を下げて作業性を改良する役割をも果たす。エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
[3.1.エポキシ化合物]
エポキシ化合物は、エポキシ基を有している化合物を一般に表す。エポキシ化合物の例としては、芳香族型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物が挙げられる。硬化物の硬度を高める観点からは、芳香族型エポキシ化合物が好ましい。
【0059】
さらに、エポキシ化合物は、ラジカル反応性基を有することが好ましい。このようなエポキシ化合物は、(メタ)アクリル系重合体の(メタ)アクリロイル系官能基との間に架橋を形成する。そのため、溶剤への溶出性が低い強靭な硬化物が得られる。ラジカル反応性基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基が挙げられる。ラジカル反応性基を有するエポキシ化合物は、日本化薬株式会社、DIC株式会社、昭和電工マテリアルズ株式会社などから入手できる。
【0060】
芳香族型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、水添型ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添型ビスフェノールF型エポキシ化合物が挙げられる。芳香族型エポキシ化合物の一例として、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0061】
脂環式エポキシ化合物の例としては、シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデセンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する化合物が挙げられる。より具体的な脂環式エポキシ化合物の例としては、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカーボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロへキシル5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチレン)アジペートが挙げられる。
【0062】
[3.2.オキセタン化合物]
オキセタン化合物の例としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4-フルオロ-〔1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4-メトキシ-〔1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-テトラブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-トリブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトシキ)メチル〕ベンゼン、1,2-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,2-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕ブタン、1,6-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕ヘキサン、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルが挙げられる。
【0063】
硬化性組成物における(メタ)アクリル系重合体(A)とエポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)の重量比は、1:99~50:50が好ましく、2:98~40:60がより好ましく、3:97~30:70がさらに好ましい。両者の配合比が上記の範囲内であれば、硬化物に充分な強度および伸びを与えられる。
【0064】
〔4.光ラジカル重合開始剤(C)〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、光ラジカル重合開始剤(C)を含有している。光ラジカル重合開始剤(C)は、光照射(UV照射など)をトリガーとして、硬化性組成物を硬化させる役割を果たす。光ラジカル重合開始剤(C)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
光ラジカル重合開始剤(C)の例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4-メトキシアセトフェン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-クロロ-4’-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントーン、3,9-ジクロロキサントーン、3-クロロ-8-ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントーン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン)が挙げられる。
【0066】
光ラジカル重合開始剤(C)のさらなる例としては、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤も挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、UV照射時の深部硬化性に優れるため好ましい。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-イソブチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-イソブチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。これらの中では、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0067】
上述した光ラジカル重合開始剤(C)の中でも、反応性が高いことから、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、およびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0068】
光ラジカル重合開始剤(C)の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)およびエポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)の合計重量を100重量部として、0.01重量部~5重量部が好ましく、深部硬化性と硬化物の光透過性を両立させる観点から、0.05重量部~1重量部がより好ましい。
【0069】
〔5.エポキシ硬化剤(D)〕
硬化性組成物は、エポキシ硬化剤(D)を含有している。エポキシ硬化剤(D)は、従来公知のものを広く使用できる。エポキシ硬化剤(D)の例としては、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤が挙げられる。エポキシ硬化剤(D)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0070】
アミン系硬化剤の例としては、脂肪族アミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、グアニジン、オレイルアミンなど);脂環族アミン(メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ポリシクロヘキシルポリアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)など);エーテル結合を有するアミン(3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(ATU)、モルホリン、N-メチルモルホリン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシエチレンジアミンなど);水酸基含有アミン(ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど);芳香族アミン(トリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノールなど);アミノシラン(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-(2-(2-アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-エチルアミノ)-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、2-アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなど;ケチミン型シラン(N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンなど)が挙げられる。
【0071】
イミダゾール系硬化剤の例としては、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。エポキシ化合物と上述したイミダゾール化合物との付加体も、イミダゾール系硬化剤の例である。
【0072】
酸無水物系硬化剤の例としては、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸が挙げられる。
【0073】
エポキシ硬化剤(D)のさらなる例としては、ポリアミドアミン類(ダイマー酸とポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど)とを反応させて得られるポリアミド、ダイマー酸以外のポリカルボン酸とポリアミンを反応させて得られるポリアミドなど);ジシアンジアミド;変性アミン(アミンにエポキシ化合物を反応させて得られるエポキシ変性アミン、アミンにホルマリンまたはフェノール化合物を反応させて得られるマンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミン、ケチミンなど)が挙げられる。
【0074】
エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)の硬化性の観点から、エポキシ硬化剤(D)としては、アミン系硬化剤が好ましい。さらに、硬化性組成物の貯蔵安定性の観点も考慮すると、エポキシ硬化剤(D)としては、三級アミン化合物が好ましい。
【0075】
エポキシ硬化剤(D)の配合量は、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)の重量を100重量部として、1重量部から200重量部が好ましく、5重量部から100重量部がより好ましい。エポキシ硬化剤(D)の配合量が上記の範囲であれば、硬化性組成物の硬化性を高め、硬化物からの成分溶出性を低減できる。
【0076】
〔6.その他の成分〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、上述した(A)~(D)に加えて、目的に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例としては、重合性のモノマーおよび/またはオリゴマー、充填剤、可塑剤、溶剤、チクソ剤、酸化防止剤、その他の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、いずれも、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
[6.1.重合性のモノマーおよび/またはオリゴマー]
重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーを添加すると、例えば、硬化性組成物の粘度を低下させたり、硬化性を向上させたり、硬化物の力学物性を向上させたりできる。重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーの例としては、特開2006-274085号公報の〔0110〕~〔0124〕に記載の物質が挙げられる。
【0078】
重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーの配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは10~200重量部であり、より好ましくは20~150重量部であり、さらに好ましくは30~100重量部である。配合量が上記の範囲であれば、粘度低減により作業性が向上するという利点がある。重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0079】
[6.2.充填剤]
充填剤を添加すると、硬化性組成物のチクソ性を調整したり、硬化物に機械的強度および耐摩耗性を与えたりできる。充填剤の例としては、特開2006-291073号公報〔0134〕~〔0151〕に記載の充填剤および微小中空粒子が挙げられる。
【0080】
充填剤の具定例としては、補強性シリカである微粉シリカ(ヒュームドシリカ、湿式法シリカなど)、カーボンブラック、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、白土、シリカ(結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸など)、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、べんがら、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛、シラスバルーン、ビーズ類(ポリアクリル樹脂製、ポリアクリロニトリル-塩化ビニリデン樹脂製、フェノール樹脂製、ポリスチレン樹脂製など)およびその中空微粒子、無機系中空微粒子(ガラスバルーン・シラスバルーン、フライアッシュバルーンなど)、繊維状充填剤(ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバーなど)が挙げられる。これらの中でも、補強性に優れる観点から、ヒュームドシリカ、湿式法シリカ、カーボンブラック、重質炭酸カルシウムおよび硬質炭酸カルシウムからなる群より選択される1種類以上が好ましい。
【0081】
ヒュームドシリカおよび湿式法シリカの粒子径は、50μm以下が好ましい。ヒュームドシリカおよび湿式法シリカの比表面積は、80m2/g以上が好ましい。このようなヒュームドシリカおよび湿式法シリカは、補強性を充分に高めることができる。本明細書において、比表面積値とは、BET法による測定値を表す。充填剤に用いるシリカは、表面処理シリカ(例えば、オルガノシラン、オルガノシラザン、ジオルガノシクロポリシロキサンなどで表面処理されたシリカ)よりも、表面無処理シリカの方が好ましい。表面無処理シリカには、混練がしやすく、硬化性組成物の流動性が良好となり、経済性にも優れるといった利点がある。
【0082】
市販されているヒュームドシリカの例としては、AEROSIL(日本アエロジル株式会社製)が挙げられる。市販されている湿式法シリカの例としては、Nipsil(東ソー・シリカ株式会社製)が挙げられる。
【0083】
カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックが挙げられる。補強性および経済性の観点からは、ファーネスブラックが好ましい。
【0084】
充填剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1~500重量部であり、より好ましくは0.5~200重量部であり、さらに好ましくは1~50重量部である。配合量が上記の範囲内であれば、硬化物の補強性および硬化性組成物の作業性を両立できる。充填剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
[6.3.可塑剤]
可塑剤を添加すると、硬化性組成物の粘度を調整したり、硬化物の機械特性(引張り強度、伸びなど)を調整したりできる。また、可塑剤を添加すると、硬化物の透明性を改善することもできる。
【0086】
可塑剤の例としては、フタル酸エステル(ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレートなど);ポリアルキレングリコールの芳香族エステル(ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエートなど);リン酸エステル(トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなど);トリメリット酸エステル;ピロメリット酸エステル;ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレンなど);飽和脂肪族アルコールおよび飽和脂肪酸を反応させて得られるエステル系可塑剤;ポリブタジエン;ポリブテン;ポリイソブチレン;ブタジエン-アクリロニトリル;ポリクロロプレン;塩素化パラフィン;炭化水素系油(アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなど);プロセスオイル;ポリエーテル(ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)、ポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基またはエーテル基などに変換した誘導体など);エポキシ可塑剤(エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなど);ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られる(メタ)アクリル系重合体(アクリル系可塑剤など;市販品としては、ARUFONシリーズ(東亞合成株式会社製)など)が挙げられる。
【0087】
可塑剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、1~100重量部が好ましく、1~50重量部がより好ましい。配合量が上記の範囲であれば、硬化性組成物の作業性が良好となり、得られる硬化物の機械特性への影響も小さい。可塑剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0088】
[6.4.溶剤]
溶剤の例としては、芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレンなど);エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブなど);ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなど);アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど);炭化水素系溶剤(ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)が挙げられる。
【0089】
溶剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましい。配合量が上記の範囲であれば、硬化性組成物の作業性が良好となり、硬化収縮の影響も小さい。また、作業環境への影響が小さいという観点からは、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、10重量部以下がさらに好ましい。溶剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0090】
[6.5.チクソ性付与剤]
チクソ性付与剤(垂れ防止剤)を添加すると、垂れを防止し、作業性を良くすることができる。
【0091】
チクソ性防止剤の例としては、水添ヒマシ油誘導体、長鎖アルキル基を有する金属石鹸、長鎖アルキル基を有するエステル化合物、無機充填剤(シリカなど)、アミドワックスが挙げられる。
【0092】
チクソ性付与剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましい。配合量が上記の範囲であれば、硬化性組成物の作業性が良好となる。チクソ性付与剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0093】
[6.6.酸化防止剤]
酸化防止剤(老化防止剤)を添加すると、硬化物の耐熱性を高めることができる。
【0094】
酸化防止剤の例としては、一次酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、エタノールアミン系酸化防止剤など)、二次酸化防止剤(イオウ系酸化剤やリン系酸化剤など)が挙げられる。酸化防止剤のさらなる例としては、特開2007-308692号公報の〔0232〕~〔0235〕に記載の物質、国際公開第2005/116134号の〔0089〕~〔0093〕に記載の物質が挙げられる。
【0095】
酸化防止剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、0.1~3重量部がより好ましい。配合量が上記の範囲であれば、耐熱効果が充分に発揮され、かつ経済的にも不利にならない。
【0096】
[6.7.その他の添加剤]
その他の添加剤の例としては、相溶化剤、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、消泡剤、発泡剤、防蟻剤、防かび剤、紫外線吸収剤、光安定剤が挙げられる。その他の添加剤のさらなる例としては、特開昭63-006041号公報、特開昭63-006003号公報、特開昭63-254149号公報、特開昭64-022904号公報、特開2001-072854号公報に記載されている添加剤が挙げられる。
【0097】
〔7.硬化方法〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、光ラジカル硬化および熱硬化の両方の処理を施すことにより硬化する。
【0098】
光ラジカル硬化は、活性エネルギー線(UVや電子線など)を照射することで開始される硬化である。活性エネルギー線源は、光ラジカル重合開始剤(C)の性質に応じて適宜選択できる。活性エネルギー線源の例としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、LED、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザーが挙げられる。
【0099】
熱硬化は、加熱によって開始される効果である。熱硬化温度は、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)、エポキシ硬化剤(D)、ならびに他の添加物の種類により、適宜設定される。熱硬化温度は、15~300℃が好ましく、15℃~250℃がより好ましい。上記の温度範囲であれば、熱による硬化物の劣化を防げる。熱硬化には、加熱炉、オーブン、加熱コンベアなどが使用できる。
【0100】
〔8.用途〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、電気絶縁性が良好であるので、電気・電子部品、レジスト材料などに好適に用いられる。しかし、これらの用途には限定されず、種々の用途で使用できる。
【0101】
電気・電子部品の例としては、電気絶縁材(電線・ケーブル用絶縁被覆材など)、シール材、接着剤、粘着剤、コンフォーマルコーティング剤、電気電子用ポッティング剤、パッキン、Oリング、ベルトが挙げられる。より具体的な例を挙げると、高電圧用厚膜抵抗器、ハイブリッドICの回路素子、HIC、電気絶縁部品、半導電部品、導電部品、モジュール、印刷回路、セラミック基板、ダイオード、トランジスタもしくはボンディングワイヤーのバッファー材、光通信用オプティカルファイバーなどのコーティング材、トランス高圧回路、プリント基板、可変抵抗部付き高電圧用トランス、電気絶縁部品、太陽電池(結晶性シリコン太陽電池、非結晶シリコン太陽電池、CI(G)S太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、GaAs太陽電池など)、テレビ用フライバックトランスなどのポッティング材、重電部品、弱電部品、太陽電池の裏面封止材、電気・電子機器の回路や基板などのシーリング材が挙げられる。
【0102】
レジスト材料の例としては、半導体および導体の周辺部材が挙げられる。より具体的な例としては、フォトマスク、フォトレジスト、半導体表面保護テープ、ダイシングテープ、ダイボンディングテープ、ダイボンディング材料、層間絶縁材料(ビルドアップ材料)、感光性ドライフィルムレジスト、液状感光性樹脂材料、インターポーター材料、パッケージ基板材料、ソルダーレジスト、半導体封止用樹脂、アンダーフィル材、サイドフィル材、プリント基板材料、これら材料の改質剤が挙げられる。
【0103】
さらなる好適な用途の例としては、光(紫外線、可視光線、赤外線、X線、レーザーなど)通過させる部品が挙げられる。例えば、ディスプレイ周辺部材、3D印刷用UVインクが挙げられる。より具体的な例としては、フラットパネルディスプレイおよびその封止材;液晶表示装置周辺材料(液晶ディスプレイ分野における導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、前面ガラスの保護フィルム、偏光子保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤、液晶用フィルムなど);カラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、前面ガラスの保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤;発光ダイオード表示装置に使用される発光素子のモールド材、発光ダイオード(LED)の封止材、前面ガラスの保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤;プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板視野角補正フィルム、偏光子保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤;有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤;有機TFT(有機薄膜トランジスタ)ディスプレイにおける保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤;フィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤;電子ペーパーにおける保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤;タッチパネル、携帯電話のディスプレイ、カーナビのディスプレイの保護フィルムまたは接着剤、パネルまたはフィルム間の接着剤または充填剤;上記の表示装置の周辺材料が挙げられる。
【0104】
〔9.まとめ〕
本発明には、以下の態様が含まれる。
<1>
(メタ)アクリル系重合体(A)と、
エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)と、
光ラジカル重合開始剤(C)と、
エポキシ硬化剤(D)と、
を含有し、
上記(メタ)アクリル系重合体(A)と上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)との重量比が、(1:99)~(50:50)であり、
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、
分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下であり、
重合体中に含まれる臭素元素およびカリウム元素の合計が、0ppm以上、25ppm以下であり、かつ、
下記一般式(a)で表わされる(メタ)アクリロイル系官能基を1分子あたり1.0個以上有する、
-OC(O)C(R1)=CH2・・・一般式(a)
(式中、R1は水素原子または炭素数1~20の有機基を表わす)
硬化性組成物。
<2>
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、上記(メタ)アクリロイル系官能基を分子の末端に有する、<1>に記載の硬化性組成物。
<3>
上記(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる臭素元素が、0ppm以上、15ppm以下である、<1>または<2>に記載の硬化性組成物。
<4>
上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)が、芳香族系エポキシ化合物である、<1>~<3>のいずれかに記載の硬化性組成物。
<5>
上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)が、ラジカル反応性基を有するエポキシ化合物である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
<6>
上記エポキシ硬化剤(D)がアミン化合物である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
<7>
銅錯体、多座アミン、多座アミン以外の塩基、および還元剤を使用して、上記(メタ)アクリル系重合体(A)を製造する工程と、
得られた上記(メタ)アクリル系重合体(A)と、上記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)と、上記光ラジカル重合開始剤(C)と、上記エポキシ硬化剤(D)とを混合する工程と、
を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【0105】
上記の態様に加えて、本発明には、以下の態様もさらに含まれる。
<A1>
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、リビング重合法により製造されたものであってもよい。
<A2>
上記リビング重合法は、リビングラジカル重合法であってもよい。
【実施例0106】
以下に、本発明の具体的な実施例を示す。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0107】
〔(メタ)アクリル系樹脂の物性の測定方法〕
[1.数平均分子量および分子量分布]
数平均分子量および分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
【0108】
GPCカラムとしては、ポリスチレン架橋ゲルを充填したカラム(shodex GPC K-804およびK-802.5、昭和電工株式会社製)を用いた。GPC溶媒としては、クロロホルムを用いた。
【0109】
[2.イオン性元素の含有量]
イオン性元素(臭素元素およびカリウム元素)の含有量は、ICP-MS(HP-4500、横河アナリティカルシステムズ株式会社製)を用いて分析した。
【0110】
[3.官能化工程で導入された官能基の数]
重合体1分子当たりに導入された官能基の数は、1H-NMRによる濃度分析および数平均分子量に基づいて算出した。NMR用の装置としては、ASX-400(Bruker社製)を使用した。NMR用の溶媒としては、重クロロホルムを用いた。
【0111】
〔(メタ)アクリル系樹脂の製造例〕
製造例において用いた試薬は、工業化を意識して、大量生産されているものを入手後、精製などの処理を一切施さずに使用した。
【0112】
[製造例1]
<1.重合工程>
1. 100重量部のアクリル酸n-ブチル、20重量部のメタノール、1.76重量部の2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル、および955ppmのトリエチルアミン(Et3N)を仕込み、窒素気流下45℃で撹拌した。トリエチルアミンは、多座アミン以外のアミンに該当する。
2. 107ppmの臭化銅(II)と、109ppmのヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン(純度:96%)と、0.43重量部(0.54体積部)のメタノールとを混合した臭化銅溶液を調製した。臭化銅溶液における銅の含有量は30ppmであり、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミンの含有量は銅と等量である。ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミンは、多座アミンに該当する。
3. 17ppmアスコルビン酸と、0.10重量部(0.13体積部)のメタノールを混合したアスコルビン酸溶液を調製した。アスコルビン酸は、還元剤に該当する。
4. 臭化銅溶液およびアスコルビン酸溶液を反応系に加えて、反応を開始させた。反応中は、アスコルビン酸溶液を適宜添加し、反応溶液の温度が45℃~70℃になるように加熱攪拌を続けた。
5. 重合開始から153分後に、アクリル酸n-ブチルの反応率が94モル%に達した。この時点で、揮発分を減圧脱揮して除去し、(メタ)アクリル系重合体Xを得た。この時点までに反応系に加えたアスコルビン酸の量は432ppmであり、メタノールの量は65.4重量部(81.8体積部)であった。
【0113】
(メタ)アクリル系重合体重合体Xの数平均分子量は21,200であり、分子量分布は1.10であった。
【0114】
<2.吸着濾過精製工程(1)>
6. 重合工程で得られた(メタ)アクリル系重合体重合体Xを、100重量部の酢酸ブチルに加えて稀釈し、ポリマー溶液を調製した。
7. ポリマー溶液に吸着剤を加えて、約100℃にて1時間加熱攪拌した。吸着剤としては、キョーワード700SEN(吸着剤/協和化学工業株式会社製)と、キョーワード500SH(吸着剤/協化学工業社株式会社製)とを、それぞれ1重量部ずつ用いた。
8. 不溶成分(吸着剤など)を含有するポリマースラリー溶液をフィルター濾過して、固液分離させた。これにより、清澄なポリマー溶液を得た。
【0115】
<3.官能化工程>
9. 吸着濾過精製工程(1)で得られたポリマー溶液に、2.0重量部のアクリル酸カリウム、0.3重量部のテトラブチルアンモニウムブロミド、0.01重量部のH-TEMPOを加えた。
10. オートクレーブを用いて、内温120℃で2時間加熱攪拌した。これにより、「-OC(O)CH=CH2」で表わされる官能基を末端に有する(メタ)アクリル系重合体Yを得た。
【0116】
(メタ)アクリル系重合体Yにおいて、末端官能基の導入数は、1分子あたり2個であった。
【0117】
<4a.水精製工程>
11a. 官能化工程で得られた(メタ)アクリル系重合体Yのポリマー溶液に、400重量部の水を加えた。内温80℃で5分間攪拌した後、10分間静置した。この工程により溶液は二相に分離され、上部に有機相(ポリマー溶液)、下部に水相が形成された。
12a. オートクレーブ底部より水相を除去した。その後、有機相を130℃で減圧脱揮して、清澄な(メタ)アクリル系重合体(1)を得た。
【0118】
(メタ)アクリル系重合体(1)の数平均分子量は21,800であり、分子量分布は1.11であった。(メタ)アクリル系重合体(1)に含まれている臭素元素は5ppmであり、カリウム元素は2ppmであった。
【0119】
[製造例2]
重合工程、吸着濾過精製工程(1)および官能化工程については、製造例1と同じ処理を施した。官能化工程の後に、上述の水精製工程ではなく、以下に示す吸着濾過精製工程(2)を施した。
【0120】
<4b.吸着濾過精製工程(2)>
11b. 官能化工程で得られた(メタ)アクリル系重合体Yのポリマー溶液に吸着剤を加え、100℃にて1時間加熱攪拌した。吸着剤としては、キョーワード700SEN(協和化学工業株式会社製)およびキョーワード500SH(協和化学工業株式会社製)を、それぞれ1重量部ずつ用いた。
12b. 不溶成分(吸着剤など)を含有するポリマースラリー溶液をフィルター濾過した。その後、130℃で減圧脱揮し、清澄な(メタ)アクリル系重合体(2)を得た。
【0121】
(メタ)アクリル系重合体(2)の数平均分子量は21,900であり、分子量分布は1.12であった。(メタ)アクリル系重合体(2)に含まれている臭素元素は20ppmであり、カリウム元素は11ppmであった。したがって、(メタ)アクリル系重合体(2)は、本明細書で言う(メタ)アクリル系重合体(A)には該当しない。
【0122】
〔評価用サンプルの作製〕
以下の方法により、物性評価用のサンプルを作製した。
【0123】
[1.硬化性組成物の作製]
下記表1に記載の組成で各成分をディスポカップに加え、スパチュラで攪拌した。その後、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、株式会社シンキー製)を用いて、1600rpm×1.5分間の攪拌、および2200rpm×3分間の脱泡を施した。このようにして、硬化性組成物を得た。
【0124】
硬化性組成物に配合した各成分は、下記の通りである。
●(メタ)アクリル系重合体(A)
・(メタ)アクリル系重合体(1):製造例1で得たもの
・(メタ)アクリル系重合体(2):製造例2で得たもの
●エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(B)
・エポキシ化合物(B1):グリシジル基およびアクリロイル基を有するエポキシ化合物
・エポキシ化合物(B2):2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン(jER828、三菱ケミカル株式会社製)
●光ラジカル重合開始剤(C)
・光ラジカル重合開始剤(C1):2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad1173、IGM Resins B.V.製)
・光ラジカル重合開始剤(C2):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(Ominirad819、IGM Resins B.V.製)
●エポキシ硬化剤(D)
・エポキシ硬化剤(D1):トリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノール(Ankamine K54、EVONIK製)
【0125】
[2a.三点曲げ試験用サンプルの作製]
1. テフロン(登録商標)製型枠(幅10mm、長さ100mm、厚さ2mm)に、硬化性組成物を流し込んだ。
2. 80℃、20分間で予備加熱を行った。その後、UV照射装置(LIGHT HAMMER 6、Fusion UV Systems製)を用いて、硬化性組成物にUV光を照射した。照射した光は、光源:水銀灯ランプ、ピーク照度:250mW/cm2、積算光量:2,000mJ/cm2であった。
3. 150℃、60分間で加熱して、硬化物を得た。
【0126】
[2b.体積抵抗値測定用のサンプルの作製]
テフロン(登録商標)製型枠の大きさを、幅100mm、長さ100mm、厚さ2mmに変更した以外は、三点曲げ試験用サンプルの作製方法と同じ手順で硬化物を作製した。
【0127】
〔硬化物の物性の評価方法〕
[三点曲げ試験]
圧子の半径が5mm、支点の半径が2mmの治具を使用した。支点間の距離は32mmとした。測定にはオートグラフ(AG-2000A、株式会社島津製作所製)を使用した。測定温度:23℃、歪み速度:2mm/minとした。
【0128】
[体積固有抵抗値]
R8340 ULTRA HIGH RESISTANCE METER(ADVANTEST製)を使用し、JIS K6911に準拠した方法で体積固有抵抗率を測定した。体積固有抵抗値が高いほど、電気絶縁性に優れていると言える。
【0129】
【0130】
表1より、(メタ)アクリル系重合体(1)を配合した硬化物は、(メタ)アクリル系重合体(2)を配合した硬化物よりも体積固有抵抗値が高く、電気絶縁性が優れていた。(メタ)アクリル系重合体(1)と(メタ)アクリル系重合体(2)との差は、イオン性元素(臭素元素およびカリウム元素)の合計含有量である。
【0131】
実施例と比較例との比較により、臭素元素およびカリウム元素の合計含有量を低下させたとしても、硬化物の機械物性は影響を受けないことが確認できた。また、実施例および比較例と参考例との比較により、臭素元素およびカリウム元素の合計含有量を低下させた(メタ)アクリル系重合体を配合した場合にも、硬化物の機械物性の向上効果があることが確認できた。