(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073106
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】屋根材、タイトフレーム、屋根構造体および屋根構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/367 20060101AFI20230518BHJP
E04D 3/36 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
E04D3/367 A
E04D3/36 A
E04D3/36 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185943
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】598042275
【氏名又は名称】株式会社 セキノ興産
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】今 貴志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 伸雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 周藏
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108BN06
2E108CC02
2E108DD07
2E108DF07
2E108ER03
2E108FF03
2E108GG05
2E108GG15
(57)【要約】
【課題】屋根材の強度を高めつつ、容易に施工可能な屋根材を提供する。
【解決手段】屋根材(2)は、上はぜ(26)、下はぜ(27)とを備え、上はぜは、タイトフレーム(3)の頂部に形成される突起部(35)から突出する第1の掛止部(361)および第2の掛止部(362)に掛止されるが、下はぜは、第1の掛止部に掛止されるが、第2の掛止部に掛止されない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
働き巾方向の一方の端部に位置する上はぜ、および他方の端部に位置する下はぜと、
上記上はぜと上記下はぜとの間に位置する底部と、
上記上はぜおよび上記下はぜと、上記底部との間で傾斜して延びている一対の傾斜部とを備え、
上記上はぜは、タイトフレームの頂部に形成される突起部から突出する第1の掛止部に、はぜ締めによって掛止される第1の底部掛止部を備え、
上記下はぜは、上記第1の掛止部に掛止される第3の底部掛止部を備えるが、上記第1の掛止部とは反対側で上記突起部に下側から掛かる底部掛止部を備えないことを特徴とする屋根材。
【請求項2】
上記上はぜは、上記第1の掛止部とは反対側に突出する第2の掛止部に掛止される第2の底部掛止部を備えることを特徴とする請求項1に記載の屋根材。
【請求項3】
上記上はぜは上面に一対の角部を備え、かつ、上記下はぜは一対の斜辺を備え、
複数の上記屋根材の上記上はぜと上記下はぜとが互いにはぜ締めされた状態で、
上記一対の斜辺に対向する位置に、上記一対の角部が間隔をあけて配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の屋根材。
【請求項4】
はぜ締めされた状態で、上記上はぜと上記下はぜとは異なる形状となるように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の屋根材。
【請求項5】
はぜ締めされた状態で、上記上はぜは略台形形状の外形を有し、上記下はぜは略三角形状の外形を有することを特徴とする請求項4に記載の屋根材。
【請求項6】
上記第1の底部掛止部および上記第2の底部掛止部は、垂直方向の位置が互いに相違するように形成されることを特徴とする請求項2に記載の屋根材。
【請求項7】
一対の傾斜面と、
上記一対の傾斜面の間に位置する頂部と、
上記一対の傾斜面に設けられ、2つの屋根材と嵌合する一対の嵌合顎部と、
上記頂部から突出して形成され、上記2つの屋根材と共にはぜ締めされた状態で、上記2つの屋根材を保持する突起部と、
上記突起部から突出する第1の掛止部を備え、
上記突起部が、上記頂部を形成する板部材の一部を切り起こして形成されていることを特徴とするタイトフレーム。
【請求項8】
上記突起部は、上記屋根材の一方の端部に形成される下はぜの少なくとも一部を掛止することにより、上記下はぜの移動を抑制することを特徴とする請求項7に記載のタイトフレーム。
【請求項9】
上記突起部は、上記突起部から上記第1の掛止部と異なる方向に突出する第2の掛止部をさらに備えることを特徴とする請求項7または8に記載のタイトフレーム。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか1項に記載の複数の屋根材と、
複数のタイトフレームとを備え、
各タイトフレームは、
一対の傾斜面と、
上記一対の傾斜面の間に位置する頂部と、
上記一対の傾斜面に設けられ、2つの屋根材と嵌合する一対の嵌合顎部と、
上記頂部から突出して形成され、上記2つの屋根材と共にはぜ締めされた状態で、上記2つの屋根材を保持する突起部と、
上記突起部から突出する第1の掛止部とを備えることを特徴とする屋根構造体。
【請求項11】
折板をタイトフレームに取付ける屋根構造体の施工方法であって、
第1の折板に形成される下はぜを、上記タイトフレームの頂部に形成された突起部に引っ掛けて保持させる下はぜ配置ステップと、
上記第1の折板の底部を上方から下方に押さえることで、上記タイトフレームの嵌合顎部に、上記第1の折板の嵌合突出部が嵌合するとともに、上記下はぜが、上記突起部に嵌合する嵌合部嵌合ステップと、
上記第1の折板と互いに隣接する第2の折板の上はぜを、上記下はぜに被せるように、上記第2の折板を配置する上はぜ配置ステップと、
上記上はぜを、上記下はぜおよび上記突起部と共にはぜ締めするはぜ締めステップと、
を含む屋根構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材、タイトフレーム、屋根構造体および屋根構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1枚の鋼板を折り曲げて成形した複数の折板を連結することによって構成される屋根構造体が、従来技術として知られている。当該複数の折板は、梁上に取付けられるタイトフレームによって、梁上に設置される。このような屋根構造体は、折板で構成されるため強度が高く、瓦屋根等に比べると軽量であるため耐震性能が高く、施工性が良い。このため、工場や倉庫等の大型の建物の屋根に好適に用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、断面略三角形状の一対の係合縁部を有する折板、タイトフレーム、吊子部材を備えた屋根構造が開示されている。吊子部材には、吊子部材の上面から立設して形成される起立部と、一対のフック片状の係止部とが備えられている。施工時において、互いに接合する折板の各係合縁部が、係止部の上方に位置するように各折板を配置し、上方から下方に踏みつけることによって、各折板を互いに接合するとともに、タイトフレームに取付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来技術では、一方の折板の係合縁部(以下「一方の係合縁部」という)は、他方の折板の係合縁部(以下「他方の係合縁部」という)より小さい相似形状に形成されている。また、一方の係合縁部および他方の係合縁部の下部には、接合する部材を挿入して嵌め込むための開口部が形成されている。上述したように、施工時に踏みつけることによって、タイトフレームの係止部が一方の折板の開口部に挿入され嵌め込まれるとともに、一方の係合縁部が他方の折板の開口部に挿入され嵌め込まれる。これによって、各折板を互いに接合した状態で、タイトフレームに取付ける。
【0006】
しかしながら、上記構成では、一方の係合縁部を他方の係合縁部に挿入するために他方の係合縁部を弾性変形させる。そのため、このような踏みつけによる嵌め込みは、容易ではないと考えられる。また、タイトフレームは梁上に所定の間隔をあけて配置されているため、タイトフレームが配置されていない場所で踏みつけると、下側の折板が下方に撓んでしまい、接合することは困難である。このように、従来技術の屋根構造には、施工性が悪いという問題が生じている。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、屋根材の強度を高めつつ、容易に施工可能な屋根材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様における屋根材は、働き巾方向の一方の端部に位置する上はぜ、および他方の端部に位置する下はぜと、上記上はぜと上記下はぜとの間に位置する底部と、上記上はぜおよび上記下はぜと、上記底部との間で傾斜して延びている一対の傾斜部とを備え、上記上はぜは、タイトフレームの頂部に形成される突起部から突出する第1の掛止部に、はぜ締めによって掛止される第1の底部掛止部を備え、上記下はぜは、上記第1の掛止部に掛止される第3の底部係止部を備えるが、上記第1の掛止部とは反対側で上記突起部に下側から掛かる底部掛止部を備えない。
【0009】
上記の構成によれば、下はぜは、突起部を挿入する開口部を大きく開口させることができる。また、上はぜの第1の底部掛止部および第2の底部掛止部のように、両側から突起部を挟み込む首部分を備えていない。このため、突起部と下はぜとの嵌合を容易にすることができる。
【0010】
上記上はぜは、上記第1の掛止部とは反対側に突出する第2の掛止部に掛止される第2の底部掛止部を備えてもよい。
【0011】
上記上はぜは上面に一対の角部を備え、かつ、上記下はぜは一対の斜辺を備え、複数の上記屋根材の上記上はぜと上記下はぜとが互いにはぜ締めされた状態で、上記一対の斜辺に対向する位置に、上記一対の角部が間隔をあけて配置されてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、一対の斜辺と、一対の角部との間に複数の空間が形成される。これにより、はぜ締め部内の毛細管現象を防止し、雨水等のはぜ締め部内への侵入を防ぐことができる。また、空間内に、防水シート、止水剤等を配置し、より効果的に雨水等の侵入を防止することができる。
【0013】
はぜ締めされた状態で、上記上はぜと上記下はぜとは異なる形状となるように形成されていてもよい。
【0014】
はぜ締めされた状態で、上記上はぜは略台形形状の外形を有し、上記下はぜは略三角形状の外形を有していてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、下はぜは略三角形状に形成され、上方に向かうにつれて、先細りになるように形成されている。これによって、上はぜの開口部に下はぜの略三角形状の頂部を容易に挿入させ、嵌合させることができる。
【0016】
また、下はぜをタイトフレームの突起部に引っ掛けて、突起部の上側先端部に、下はぜの略三角形状の頂部の内壁を係止させ、下はぜの移動を抑制させることができる。これにより、折板を踏みつけても、折板の位置がずれることなく、容易に嵌合させることができる。
【0017】
上記第1の底部掛止部および上記第2の底部掛止部は、垂直方向の位置が互いに相違するように形成されてもよい。
【0018】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様におけるタイトフレームは、一対の傾斜面と、上記一対の傾斜面の間に位置する頂部と、上記一対の傾斜面に設けられ、2つの屋根材と嵌合する一対の嵌合顎部と、上記頂部から突出して形成され、上記2つの屋根材と共にはぜ締めされた状態で、上記2つの屋根材を保持する突起部と、上記突起部から突出する第1の掛止部を備え、上記突起部が、上記頂部を形成する板部材の一部を切り起こして形成されている。
【0019】
上記の構成によれば、折板を吊子を介さすに、直接、タイトフレームに強固に接合することができ、接合強度を向上させることができる。また、吊子を使用しないため、コストを抑え、吊子を取付ける手間を省き、施工性を向上させることができる。
【0020】
また、突起部をタイトフレームの一部を切り起こして形成することにより、タイトフレームと略同一の板厚を有し、タイトフレームと同様の剛性を備えることができる。また、部品数・製造工程を減少させ、コストを削減することができ、溶接や締結部材によって取付けた場合と比較して、一定の接合強度を担保することができる。
【0021】
上記突起部は、上記屋根材の一方の端部に形成される下はぜの少なくとも一部を掛止することにより、上記下はぜの移動を抑制してもよい。
【0022】
上記の構成によれば、折板を踏みつけても、折板の位置がずれることなく、容易に嵌合させることができる。
【0023】
上記突起部は、上記突起部から上記第1の掛止部と異なる方向に突出する第2の掛止部をさらに備えてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、折板を、タイトフレームと直接強固に接合させることができる。
【0025】
屋根構造体は、複数の上記屋根材と、複数のタイトフレームとを備え、各タイトフレームは、一対の傾斜面と、上記一対の傾斜面の間に位置する頂部と、上記一対の傾斜面に設けられ、2つの屋根材と嵌合する一対の嵌合顎部と、上記頂部から突出して形成され、上記2つの屋根材と共にはぜ締めされた状態で、上記2つの屋根材を保持する突起部と、上記突起部から突出する第1の掛止部を備えていてもよい。
【0026】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様における屋根構造体の施工方法は、折板をタイトフレームに取付ける屋根構造体の施工方法であって、第1の折板に形成される下はぜを、上記タイトフレームの頂部に形成された突起部に引っ掛けて保持させる下はぜ配置ステップと、上記第1の折板の底部を上方から下方に押さえることで、上記タイトフレームの嵌合顎部に、上記第1の折板の嵌合突出部が嵌合するとともに、上記下はぜが、上記突起部に嵌合する嵌合部嵌合ステップと、上記第1の折板と互いに隣接する第2の折板の上はぜを、上記下はぜに被せるように、上記第2の折板を配置する上はぜ配置ステップと、上記上はぜを、上記下はぜおよび上記突起部と共にはぜ締めするはぜ締めステップと、を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、屋根材の強度を高めつつ、容易に施工可能な屋根材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態1に係る屋根構造体の外観の一例を示す正面図である。
【
図4】
図2に示す折板の上はぜの正面図の一例である。
【
図5】
図2に示す折板の下はぜの正面図の一例である。
【
図6】
図1に示すタイトフレームの正面図の一例である。
【
図7】
図6に示すタイトフレームの平面図の一例である。
【
図8】
図6に示すタイトフレームの側面図の一例である。
【
図9】
図6に示すタイトフレームの斜視図の一例である。
【
図10】
図6に示すタイトフレームの斜視図の他の一例である。
【
図11】
図1に示す折板をタイトフレームに取付けた状態を示す図である。
【
図12】
図1に示す折板とタイトフレームとの接合方法を説明する図である。
【
図14】本発明の実施形態2に係るタイトフレームの正面図の一例である。
【
図17】
図14に示すタイトフレームの斜視図の他の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、はぜ締めおよび嵌合により、屋根材として用いられる折板2を連結し、折板2をタイトフレーム3に取付け、タイトフレーム3を介して梁4等の屋根下地に固定される屋根構造体1の例について説明する。
【0030】
<屋根構造体>
図1は、本発明の実施形態1に係る屋根構造体1の外観の一例を示す正面図である。
図1に示すように、屋根構造体1は、互いに連結された複数の折板2と、タイトフレーム3とを備える、金属製の屋根構造体である。折板2は、例えば、厚さ約0.6mm~1.0mmの1枚の鋼板を、ロール成形機等により折り曲げて成形される。折板2は、曲げ剛性が高く、1枚の鋼板をそのまま使用するより強度が高いため、工場、倉庫、および体育館等の大型の建物の屋根材として好適に使用可能である。また、近年、台風等の強風による被害が増加しているため、耐風圧性能が高い屋根構造体1が強く求められている。
【0031】
図1に示すように、折板2は、頂部21、底部22、一対の傾斜部23、一対の嵌合部24、および、はぜ締め部25を備える。はぜ締め部25において、折板2と、互いに隣接する折板2Aと、後述するタイトフレーム3の突起部35とがはぜ締めによって接合されている。これにより、屋根構造体1は、山状に形成された頂部21と、谷状に形成された底部22とを交互に連続して備えている。
【0032】
また、折板2の2つの頂部21と底部22との間には、頂部21と底部22とを連結し、頂部21および底部22から連なる一対の傾斜部23が形成されている。
【0033】
はぜ締め部25と傾斜部23との間には、タイトフレーム3と嵌合する一対の嵌合部24が形成されている。嵌合部24は、タイトフレーム3に形成される嵌合顎部34と嵌合する嵌合突出部241を備えている。
【0034】
また、折板2は、結露を防ぐため、折板2の裏側(下側)に薄い断熱性のシート(図示せず)を裏貼りしてもよい。断熱性のシートは、厚さが例えば約4.0mm程度であり、鋼板を折り曲げて成形する前に、鋼板の裏側に接着剤等で貼り付けてもよい。断熱性のシートは、例えば樹脂で形成されている。
【0035】
折板2は、タイトフレーム3を介して、梁4上に設置されている。タイトフレーム3は、梁4等の屋根下地の上面に、溶接またはボルト等の締結手段によって取付けられている。タイトフレーム3は、折板2の形状に沿うように、山部(頂部)31と谷部32とが連続して形成され、山部31と谷部32とを連結する傾斜面からなる連結部(傾斜面)33を備えている。
【0036】
また、タイトフレーム3は、上述したように、連結部33の上部に、折板2の嵌合部24と嵌合して、折板2を取付けるための嵌合顎部34を備えている。嵌合顎部34は、一対に構成され、嵌合顎部34a,34bを備えている。
【0037】
また、タイトフレーム3は、はぜ締め部25によって、折板2、2Aとともに連結される突起部35を備えている。折板2、2Aとタイトフレーム3との嵌合の詳細、および突起部35については後述する。
【0038】
なお、実施形態1では、山部31と谷部32とが連続して形成される帯状のタイトフレーム3について説明した。これに限らず、タイトフレーム3は、1つの山部31と、山部31の両側に一対の連結部33とを備え、一対の梁用固定部が形成されるタイトフレームであってもよい。この場合、梁4上にタイトフレームを複数個、並設して取付けてもよい。
【0039】
梁4は、鉄骨等によって実現される屋根下地であり、上面にタイトフレーム3が溶接またはボルト等によって取付けられる。梁4は、折板2の働き巾W(
図2に図示)の方向と直交する方向(屋根の頂点に向かう方向。以下「奥行き方向」という)に複数配置されている。これにより、折板2が奥行き方向に沿って変形、破損等するのを防止することができる。なお、働き巾とは、折板2の幅のうち、隣接する折板2と重畳する部分を除いた実際に使える部分の幅のことである。すなわち、働き巾は、複数の折板2を組み合わせる方向における、屋根構造体1における1つの折板2当たりの幅を示す。
【0040】
<折板>
図2は折板2の正面図の一例、
図3は折板2の斜視図の一例、
図4は折板2の上はぜ26の正面図の一例、
図5は折板2の下はぜ27の正面図の一例である。
図2から
図5に基づいて、実施形態1の折板2について詳細に説明する。
【0041】
図2および
図3に示すように、折板2は、1枚の鋼板を折り曲げて成形されている。折板2は、働き巾W方向両端部に、それぞれ、山状に形成された一対の頂部21a,21bを備え、折板2の略中央部には、谷状に形成された底部22を備えている。
【0042】
また、頂部21a、21bと、底部22との間には、頂部21a、21bと、底部22とを連結する一対の傾斜部23a、23bが、それぞれ形成される。また、傾斜部23a、23bは、それぞれ、頂部21a,21bと、底部22とに連なって形成されている。
【0043】
頂部21aには、上はぜ26が形成され、頂部21bには、下はぜ27が形成されている。折板2は、上はぜ26が、互いに隣接する折板2Aに形成される下はぜ27およびタイトフレーム3の突起部35と係合し、はぜ締めされることによって、隣接する折板2Aおよびタイトフレーム3と強固に接合される。
【0044】
このように、折板2、2Aおよび突起部35をはぜ締めにより接合することによって、
図1に示すように、複数の頂部21と、複数の底部22とが交互に連続して形成される屋根構造体1が構成される。
【0045】
また、折板2は、上はぜ26と傾斜部23aとの間に位置する嵌合部24aに、タイトフレーム3の嵌合顎部34aと嵌合する、嵌合突出部241aを備えている。また、下はぜ27と傾斜部23bとの間に位置する嵌合部24bにも、嵌合顎部34bと嵌合する嵌合突出部241bを備えている。嵌合突出部241aと嵌合突出部241bとは、一対に構成されている。
【0046】
折板2の底部22には、略中央部に凹部22aが形成されている。凹部22aは、リブとして機能し、折板2を補強するために形成されている。
【0047】
また、暑さのため、底部22の長さが伸びた場合、伸長した長さ分、底部22は上方または下方に膨出して変形する。この際、凹部22aが形成されていると、底部22が膨出する方向を、凹部22aの膨出する方向と同じ方向である下方へ導くことができる。このため、底部22の変形方向を制御し、各底部22がそれぞれ勝手な方向へ変形するのを抑制することができる。
【0048】
(上はぜおよび下はぜ)
上述したように、折板2の頂部21aには上はぜ26が形成され、頂部21bには下はぜ27が形成されている。折板2の上はぜ26は、互いに隣接する折板2Aに形成された下はぜ27およびタイトフレーム3の突起部35と係合し、はぜ締めされることによって、折板2は、折板2Aと連結される。
【0049】
図2、3に示すように、はぜ締めされる前において、上はぜ26の下側の開口部は、下はぜ27を自由に挿入可能な程度に開いた状態である。
図4に示すように、はぜ締めされた後において、上はぜ26の下側の開口部は、下はぜ27が抜けない程度に閉じた(狭くなった)状態である。
図4および
図5に示すように、上はぜ26と下はぜ27とは、互いに異なる形状となるように形成されている。具体的には、例えば、はぜ締めされた上はぜ26は略台形形状の外形を有し、下はぜ27は、略三角形状の外形を有している。
【0050】
(上はぜ)
図4に示すように、上はぜ26は、上面に一対の円弧状の角部263a、263bを備えている。また、上はぜ26の底部には、施工時に、下はぜ27およびタイトフレーム3の突起部35が挿入される、開口部264が形成されている。
【0051】
上はぜ26は、タイトフレーム3の突起部35に形成される掛止部36(
図13参照)に掛止される、一対の第1の底部掛止部261および第2の底部掛止部262が形成されている。なお、掛止とは、引っ掛けて止める、または固定することを意味する。
【0052】
また、
図13に示すように、タイトフレーム3の掛止部36は、一対の第1の掛止部361および第2の掛止部362を備えている。
【0053】
上はぜ26の先端側の第1の底部掛止部261は、タイトフレーム3の第1の掛止部361によって掛止され、上はぜ26の底部22側の第2の底部掛止部262は、タイトフレーム3の第2の掛止部362によって掛止される。これにより、上はぜ26は、タイトフレーム3と接合される。
【0054】
再び、
図4に戻って説明する。第1の底部掛止部261と第2の底部掛止部262とは、はぜ締めされた後の状態において、縦方向の位置が互いに相違するように形成されている。具体的には、はぜ締めされた後の状態において、第1の底部掛止部261は、第2の底部掛止部262より所定の長さ(L)、下方に位置する。所定の長さLは、例えば、下はぜ27の第3の底部掛止部271の厚さに対応する。第2の底部掛止部262は、タイトフレーム3の第2の掛止部362によって掛止される(
図13)。これに対し、第1の底部掛止部261は、下はぜ27の第3の底部掛止部271を介して、タイトフレーム3の第1の掛止部361によって掛止されるためである。
【0055】
(下はぜ)
図5に示すように、下はぜ27は、略三角形状の外形を有し、一対の斜辺273a、273bを備えている。また、底部には、施工時に、タイトフレーム3の突起部35が挿入される、開口部274が形成されている。
【0056】
図13に示すように、下はぜ27は、タイトフレーム3の突起部35に形成される掛止部36に掛止される、第3の底部掛止部271が形成されている。下はぜ27は、上はぜ26とは異なる態様でタイトフレーム3に掛止されている。
【0057】
具体的に説明すると、上はぜ26は、上述したように、第1の底部掛止部261がタイトフレーム3の第1の掛止部361によって掛止され、第2の底部掛止部262がタイトフレーム3の第2の掛止部362によって掛止されている。
【0058】
一方、下はぜ27は、上述したように、第3の底部掛止部271がタイトフレーム3の第1の掛止部361によって掛止されるが、上はぜ26の場合と異なり、第2の掛止部362によって下側から掛止される部分を備えない。
【0059】
これにより、下はぜ27は、突起部35を挿入する開口部274を大きく開口させることができる。また、上はぜ26の第1の底部掛止部261および第2の底部掛止部262ように、両側から突起部35を挟み込む首部分265を備えていない。このため、下はぜ27をタイトフレーム3の突起部35に上から掛けるだけで、大きな力を加えることなく、突起部35と下はぜ27との嵌合が可能となる。
【0060】
また、下はぜ27は略三角形状に形成され、上方に向かうにつれて、先細りになるように形成されている。また、首部分265を備えないため、上はぜ26を下はぜ27の上方から嵌合させるときに、上はぜ26を嵌め込みやすいように、突起部35の先端を軸として回転させやすい。これによって、上はぜ26の開口部264に下はぜ27の略三角形状の頂部を容易に挿入させ、嵌合させることができる。
【0061】
<タイトフレーム>
次に、実施形態1のタイトフレーム3について詳細に説明する。
【0062】
図6はタイトフレーム3の正面図の一例、
図7はタイトフレーム3の平面図の一例、
図8はタイトフレーム3の側面図の一例、
図9はタイトフレーム3を上から見た斜視図の一例、
図10はタイトフレーム3を下から見た斜視図の他の一例である。
【0063】
図6から
図10に基づいて、タイトフレーム3について詳細に説明する。タイトフレーム3は1枚の鋼板から成形され、鋼板を折り曲げ、鋼板の一部を切り起こして成形されている。
【0064】
(突起部および掛止部)
タイトフレーム3は、はぜ締め部25において、折板2、2Aとともに連結される突起部35を備えている。突起部35は、タイトフレーム3の山部31の一部を切り起こすことにより、タイトフレーム3の山部31(頂部)から突出して形成される。突起部35は、はぜ締めされた状態で、折板2、2Aを保持する。
【0065】
このように、タイトフレーム3の鋼板の一部を利用して突起部35を形成し、突起部35を、上はぜ26および下はぜ27とはぜ締めすることによって、タイトフレーム3自体に吊子機能を付加させる。吊子機能とは、折板2を吊子を介してタイトフレーム3に取付ける機能のことである。なお吊子はタイトフレームへの締結手段を必要とし、締結手段の強度が折板とタイトフレームとの接合強度を制限し得る。
【0066】
これにより、吊子を介さずに、折板2を直接、タイトフレーム3に強固に接合することができ、接合強度を向上させることができる。また、吊子を使用しないため、コストを抑え、吊子を取付ける手間を省き、施工性を向上させることができる。
【0067】
突起部35の掛止部36は、突起部35から所定の方向へ突出する第1の掛止部361、および第1の掛止部361と異なる方向に突起部35から突出する、第2の掛止部362を備えている。
【0068】
第1の掛止部361は、下はぜ27、および下はぜ27を介して上はぜ26を掛止する。一方、第2の掛止部362は、上はぜ26を掛止するが、下はぜ27は掛止しない(
図13参照)。
【0069】
上記の例では、掛止部36が、第1の掛止部361および第2の掛止部362を備える例について説明したが、これに限らず、一つの掛止部36のみを備えてもよい。一つの掛止部36であっても、上はぜ26および下はぜ27とともに、はぜ締めされることにより、高い接合強度を得ることができる。
【0070】
これにより、屋根材の葺き方向等によって、必要な向きに、一つの掛止部36を突起部35から突出させて形成することができる。
【0071】
(切り起こし)
タイトフレーム3の嵌合顎部34、突起部35、および掛止部36は、タイトフレーム3を構成する鋼板と一体的に構成され、例えば、ルーバー加工等により、タイトフレーム3を構成する鋼板の一部を切り起こして形成される。
【0072】
これにより、嵌合顎部34、突起部35、および掛止部36は、所定の剛性を有するタイトフレーム3と略同一の板厚を有し、タイトフレーム3と同様の剛性を備えることができる。
【0073】
また、嵌合顎部34、突起部35、および掛止部36が、タイトフレーム3を構成する鋼板から構成されることにより、部品数・製造工程を減少させ、コストを削減することができる。またこれにより、溶接や締結部材によってタイトフレームに、突起部35および掛止部36を取付けた場合と比較して、本実施形態のタイトフレーム3は、より高いの接合強度を担保することができる。
【0074】
<折板とタイトフレームとの嵌合>
図11は、折板2をタイトフレーム3に取付けた状態を示す図である。折板2とタイトフレーム3とは、はぜ締め部25と嵌合部24との両部分によって、互いに強固に接合されている。これにより、接合部の接合強度を向上させることができる。また、仮に、台風等の強風時に、負圧荷重によって嵌合部24の嵌合が外れたとしても、はぜ締め部25による折板2とタイトフレーム3との接合が残存するため、折板2がタイトフレーム3から完全に外れてしまうのを防ぐことができる。
【0075】
折板2の嵌合突出部241は、タイトフレーム3の連結部33から突出して形成される嵌合顎部34の形状に沿うように、嵌合顎部34よりやや大きく形成されている。これによって、タイトフレーム3の嵌合顎部34に、折板2の嵌合突出部241を容易に嵌合させることができる。
【0076】
上述したはぜ締め部25と嵌合部24の構成によって、施工時に作業者が足で踏みつける等、折板2、2A等を上方から押圧することによって、はぜ締め部25および嵌合部24を容易に嵌合させることができ、施工性を向上させることができる。
【0077】
<施工方法>
図12は、折板2,2Aとタイトフレーム3との接合方法を説明する図である。実施形態1の屋根構造体1は、施工時において、折板2のタイトフレーム3への取付け作業を容易に行うことができる。
【0078】
具体的に説明すると、
図12に示すように、まず、作業者は、折板2の下はぜ27をタイトフレーム3の突起部35に引っ掛けて保持させる(下はぜ配置ステップ)。折板2の上はぜ側(図示せず)は、はぜ締めされているとして説明する。
【0079】
次に、作業者は、折板2の底部22を上方から下方に踏みつけることで、タイトフレーム3の嵌合顎部34に、折板2の嵌合突出部241が嵌合する(嵌合部嵌合ステップ)。これにより、下はぜ27(第3の底部掛止部271)も突起部35(第1の掛止部361)に嵌合する。
【0080】
次に、作業者は、折板2Aの上はぜ26を、折板2の下はぜ27に被せるように、折板2Aを配置する(上はぜ配置ステップ)。
【0081】
次に、作業者は、折板2Aの上はぜ26を、折板2の下はぜ27と共にはぜ締めする(はぜ締めステップ)。この後、上述のステップを繰り返す。このように、折板2、2A,およびタイトフレーム3を容易に接合し、折板2、2Aをタイトフレーム3に取付けることができる。
【0082】
<位置決め>
上述したように、「下はぜ配置ステップ」において、折板2の下はぜ27をタイトフレーム3の突起部35に引っ掛ける。このとき、突起部35の上側先端部に、下はぜ27の略三角形状の頂部の内壁が係止され、下はぜ27の移動が抑制される。これにより、折板2が、突起部35によって、位置決めされた状態で保持される。
【0083】
下はぜ27が突起部35に掛かっているので、折板2が横方向(底部22側)に逃げることを防止することができる。折板2Aを踏みつけても、折板2の横方向の位置がずれることなく、折板2、2A,および突起部35を容易に嵌合させることができ、施工性が向上する。
【0084】
<防水>
図13は、はぜ締め部25の一例を示す拡大図である。上述したように、上はぜ26と下はぜ27とは、互いに異なる形状となるように形成されている。具体的には、例えば、上はぜ26は略台形形状の外形を有し、下はぜ27は、略三角形状の外形を有している。
【0085】
図13に示すように、上はぜ26は上面に一対の角部263a、263bを備え、下はぜ27は一対の斜辺273a、273bを備えている。
【0086】
上はぜ26と下はぜ27とが互いにはぜ締めされた状態で、一対の斜辺273a、273bに対向する位置に、一対の角部263a、263bが間隔をあけて配置される。
【0087】
これにより、一対の斜辺273a、273bと、一対の角部263a、263bとの間に複数の空間28が形成される。これにより、はぜ締め部25内の毛細管現象を防止し、雨水等のはぜ締め部26内への侵入を防ぐことができる。
【0088】
なお、空間28内に、防水シート、止水剤等を配置し、より効果的に雨水等の侵入を防止してもよい。
【0089】
[実施形態2]
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明したものと同じ機能を有するものについては、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0090】
図14は本発明の実施形態2に係るタイトフレーム3Aの正面図の一例、
図15は平面図の一例、
図16は上から見た斜視図の一例、
図17は下から見た斜視図の他の一例である。
【0091】
図14から
図16に基づいて、タイトフレーム3Aについて説明する。タイトフレーム3Aは、実施形態1のタイトフレーム3と異なり、山部31に、山部31を覆うように嵌合頭部31Aが取付けられている。
【0092】
嵌合頭部31Aは、左右に突出する一対の嵌合顎部34A、頂部に突起部35Aおよび掛止部36Aが備えられている。嵌合顎部34Aは、折板2の嵌合突出部241と嵌合し、突起部35Aは、上はぜ26および下はぜ27とはぜ締めされる。
【0093】
突起部35Aおよび掛止部36Aは、嵌合頭部31Aの一部を切り起こして形成されている。
【0094】
嵌合頭部31Aは、タイトフレーム3と異なり、タイトフレーム3と一体的に構成されておらず、別個に形成したものをカシメ等により、山部31に取付けられている。
【0095】
嵌合頭部31Aを別個の構成にすることで、様々な規格・サイズのタイトフレームに嵌合頭部31Aを取付けて使用することができる。これにより、既存のタイトフレームであっても、突起部35Aを、上はぜ26および下はぜ27とはぜ締めさせることができ、接合強度を向上させることができる。
【0096】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 屋根構造体
2 折板(屋根材)
3 タイトフレーム
22 底部
23 傾斜部
26 上はぜ
27 下はぜ
31 山部(頂部)
33 連結部(傾斜面)
35 突起部
261 第1の底部掛止部
262 第2の底部掛止部
263a、263b 角部
271 第3の底部掛止部
273a、273b 斜辺
361 第1の掛止部
362 第2の掛止部