(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073107
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】屋根材
(51)【国際特許分類】
E04D 3/367 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
E04D3/367 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185944
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】598042275
【氏名又は名称】株式会社 セキノ興産
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】今 貴志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 伸雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 周藏
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AS02
2E108AZ01
2E108BN06
2E108CC02
2E108DD07
2E108ER03
2E108FF03
2E108GG05
2E108GG15
(57)【要約】
【課題】屋根材の強度を高めつつ、容易に成形可能な屋根材を提供する。
【解決手段】屋根材(2)は、一対のはぜ締め部(26)、底部(22)、一対の傾斜部(23)を備え、傾斜部は、タイトフレーム(3)と嵌合する嵌合部(24)、第1傾斜部分(51)、第2傾斜部分(52)、第1折面部(55)、第3傾斜部分(53)、第4傾斜部分(54)、第2折面部(56)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
働き巾方向両端部に位置する一対のはぜ締め部と、
上記一対のはぜ締め部の間に位置する底部と、
上記一対のはぜ締め部と上記底部との間で傾斜して延びている一対の傾斜部とを備え、
上記傾斜部は、
タイトフレームに対して嵌合する嵌合部と、
上記嵌合部に接続され傾斜して延びている第1傾斜部分と、
上記第1傾斜部分より上記底部側に位置し、傾斜して延びている第2傾斜部分と、
上記第1傾斜部分との接続部が上から見て谷折りになっており、上記第2傾斜部分との接続部が上から見て山折りになっている第1折面部と、
傾斜して延びている第3傾斜部分と、
上記底部に接続され傾斜して延びている第4傾斜部分と、
上記第3傾斜部分との接続部が上から見て谷折りになっており、上記第4傾斜部分との接続部が上から見て山折りになっている第2折面部と、
を含むことを特徴とする屋根材。
【請求項2】
上記第1折面部は、高さ方向における上記嵌合部の下端と上記底部との中心より上記嵌合部側に位置し、
上記第2折面部は、高さ方向における上記嵌合部の下端と上記底部との中心より上記底部側に位置する、請求項1に記載の屋根材。
【請求項3】
上記嵌合部の下端と上記底部との間を、上記嵌合部側に位置する上部区間、中央区間、および上記底部側に位置する下部区間に、高さ方向において3等分したとき、
上記第1折面部は、上記上部区間に位置し、
上記第2折面部は、上記下部区間に位置する、請求項1または2に記載の屋根材。
【請求項4】
上記第1折面部の長さおよび上記第2折面部の長さは、1cm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の屋根材。
【請求項5】
上記第1折面部および上記第2折面部は、上記底部側に液体が流れるよう傾斜している、請求項1から4のいずれか一項に記載の屋根材。
【請求項6】
上記第1傾斜部分に対する上記第1折面部の角度、および上記第2傾斜部分に対する上記第1折面部の角度は、上記底部に対する上記第1折面部の角度以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の屋根材。
【請求項7】
上記第1傾斜部分と上記第2傾斜部分とは互いに平行である、請求項1から6のいずれか一項に記載の屋根材。
【請求項8】
上記第1折面部および上記第2折面部は互いに平行である、請求項1から7のいずれか一項に記載の屋根材。
【請求項9】
上記第2傾斜部分と上記第3傾斜部分とは互いに平行でかつ直接繋がっている、請求項1から8のいずれか一項に記載の屋根材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
1枚の鋼板を折り曲げて成形した複数の折板を連結することによって構成される屋根構造体が、従来技術として知られている。当該複数の折板は、梁上に取付けられるタイトフレームによって、梁上に設置される。このような屋根構造体は、折板で構成されるため強度が高く、瓦屋根等に比べると軽量であるため耐震性能が高く、施工性が良い。このため、工場や倉庫等の大型の建物の屋根に好適に用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、山フラット部と谷フラット部(底部)とが交互に連なって形成され、山フラット部と谷フラット部との間に立ち上がり部(傾斜部)が連続して形成される、はぜ係合の薄板折板屋根部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、山フラット部および谷フラット部と、立ち上がり部との間は、一つの折り曲げ部で区画され、はぜ部分を除き、他に折り曲げ部は形成されていない。通常、折り曲げ部が多いと折板の強度は高くなるが、従来技術は、折り曲げ部が少ないため強度が低い。
【0006】
強風等による折板屋根の変形や破損を防ぐため、屋根材として用いられる折板の強度を高くする必要がある。しかし、不用意に、折板に折り曲げ部を多数形成すると、ロール成形機での成形工程の増加、寸法精度の低下、および製造コストの増加等という問題が生じる。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、屋根材の強度を高めつつ、容易に成形可能な屋根材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様における屋根材は、働き巾方向両端部に位置する一対のはぜ締め部と、上記一対のはぜ締め部の間に位置する底部と、上記一対のはぜ締め部と上記底部との間で傾斜して延びている一対の傾斜部とを備え、上記傾斜部は、タイトフレームに対して嵌合する嵌合部と、上記嵌合部に接続され傾斜して延びている第1傾斜部分と、上記第1傾斜部分より上記底部側に位置し、傾斜して延びている第2傾斜部分と、上記第1傾斜部分との接続部が上から見て谷折りになっており、上記第2傾斜部分との接続部が上から見て山折りになっている第1折面部と、傾斜して延びている第3傾斜部分と、上記底部に接続され傾斜して延びている第4傾斜部分と、上記第3傾斜部分との接続部が上から見て谷折りになっており、上記第4傾斜部分との接続部が上から見て山折りになっている第2折面部と、を含む。
【0009】
上記の構成によれば、第1折面部および第2折面部という2つの折り曲げ部分を備えているため、折板の強度を向上させることができる。
上記第1折面部は、高さ方向における上記嵌合部の下端と上記底部との中心より上記嵌合部側に位置し、上記第2折面部は、高さ方向における上記嵌合部の下端と上記底部との中心より上記底部側に位置してもよい。
上記嵌合部の下端と上記底部との間を、上記嵌合部側に位置する上部区間、中央区間、および上記底部側に位置する下部区間に、高さ方向において3等分したとき、上記第1折面部は、上記上部区間に位置し、上記第2折面部は、上記下部区間に位置してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、第1折面部を嵌合部に近い位置に形成することによって、嵌合部と第1傾斜部分との角度を変形しにくくすることができる。また、第2折面部を底部に近い位置に形成することによって、底部と第4傾斜部分との角度を変形しにくくすることができる。これによって、強風等の負圧荷重を受けたときに、折板全体の形状を保持しやすくなり、タイトフレームとの嵌合を外れにくくすることができる。
上記第1折面部の長さおよび上記第2折面部の長さは、1cm以上であってもよい。
上記第1折面部および上記第2折面部は、上記底部側に液体が流れるよう傾斜していてもよい。上記の構成によれば、第1折面部および第2折面部に溜まった雨水等を底部へ案内することができる。
上記第1傾斜部分に対する上記第1折面部の角度、および上記第2傾斜部分に対する上記第1折面部の角度は、上記底部に対する上記第1折面部の角度以上であってもよい。
【0011】
上記の構成によれば、負圧を受けたときに角度が変形しにくく、第1折面部と、第1傾斜部分および第2傾斜部分との形状を保持しやすくすることができる。
上記第1傾斜部分と上記第2傾斜部分とは互いに平行であってもよい。
【0012】
上記の構成によれば、ロール成形機での折板の成形工程において、ロール調整などの管理がし易くなり、安価かつ容易に折板を製造することができる。また、強風等の負圧荷重を受けたときに、各部の角度を揃えることで、応力が一定かつ連続して伝わりやすくなり、折板の強度を安定させることができる。また、傾斜部の角度を揃えることによって、折板の美感を向上させることができる。
上記第1折面部および上記第2折面部は互いに平行であってもよい。
【0013】
上記の構成によれば、ロール成形機での折板の成形工程において、ロール調整などの管理がし易くなり、安価かつ容易に折板を製造することができる。また、強風等の負圧荷重を受けたときに、各部の角度を揃えることで、応力が一定かつ連続して伝わりやすくなり、折板の強度を安定させることができる。また、傾斜部の角度を揃えることによって、折板の美感を向上させることができる。
上記第2傾斜部分と上記第3傾斜部分とは互いに平行でかつ直接繋がっていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、屋根材の強度を高めつつ、容易に成形可能な屋根材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る屋根構造体の外観の一例を示す正面図である。
【
図4】
図1に示す第1折面部および第2折面部について説明する図である。
【
図5】
図1に示す折板の各部の角度を説明する図である。
【
図6】
図1に示す第1折面部の角度を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、はぜ締めおよび嵌合により、屋根材として用いられる折板2を連結し、折板2をタイトフレーム3に取付け、タイトフレーム3を介して梁4等の屋根下地に固定される屋根構造体1の例について説明する。
【0017】
ただし、本発明はこれに限らず、折板をナットやボルト等の締結部材によってタイトフレームに固定する重ね式折板屋根材、吊子を介して折板をタイトフレームに固定するはぜ締め式折板屋根材、および、折板同士の連結部にキャップをかぶせて固定するキャップ嵌合式折板屋根材等、様々な種類の屋根材についても適用可能である。
【0018】
<屋根構造体>
図1は、本発明の実施形態1に係る屋根構造体1の外観の一例を示す正面図である。
図1に示すように、屋根構造体1は、互いに連結される複数の折板2と、タイトフレーム3とを備える金属製の屋根構造体である。折板2は、例えば、厚さ約0.6mm~1.0mmの1枚の鋼板を、ロール成形機等により折り曲げて成形される。折板2は、曲げ剛性が高く、1枚の鋼板をそのまま使用するより強度が高いため、工場、倉庫、および体育館等の大型の建物の屋根材として好適に使用される。また、近年、台風等の強風による被害が増加しているため、耐風圧性能が高い屋根構造体1が強く求められている。
【0019】
図1に示すように、折板2は、一対の頂部21、底部22、一対の傾斜部23、一対の嵌合部24、および、一対のはぜ締め部26を備える。折板2は、タイトフレーム3を介して、梁4上に設置されている。なお、折板2の詳細については後述する。
【0020】
タイトフレーム3は、梁4等の屋根下地の上面に、溶接またはボルト等の締結手段によって取付けられている。タイトフレーム3は、折板2の形状に沿うように、山部31と谷部32とが連続して形成され、山部31と谷部32とを連結する傾斜面からなる連結部33を備えている。
【0021】
タイトフレーム3は、連結部33の上部に、折板2の嵌合部24と嵌合して折板2を取付けるための、一対の嵌合顎部34を備えている。また、タイトフレーム3は、はぜ締め部26において、折板2および互いに隣接する折板2Aとともに、はぜ締めされる突起部35を備えている。
【0022】
このように、嵌合部24およびはぜ締め部26において、折板2,2Aと、タイトフレーム3とが接合されることによって、屋根構造体1は、高い接合強度を得ることができる。
【0023】
なお、実施形態1では、山部31と谷部32とが連続して形成される帯状のタイトフレーム3について説明した。これに限らず、タイトフレーム3は、1つの山部31と、山部31の両側に一対の連結部33とを備え、一対の梁用固定部が形成されるタイトフレームであってもよい。この場合、梁4上にタイトフレームを複数個、並設して取付けてもよい。
梁4は、鉄骨等によって実現される屋根下地であり、上面にタイトフレーム3が溶接またはボルト等によって取付けられる。梁4は、折板2の働き巾W(
図3に図示)の方向と直交する方向(屋根の頂点に向かう方向。以下「奥行き方向」という)に複数配置されている。これにより、折板2が奥行き方向に沿って変形、破損等するのを防止することができる。なお、働き巾とは、折板2の幅のうち、隣接する折板2Aと重畳する部分を除いた実際に使える部分の幅のことである。すなわち、働き巾は、複数の折板2を組み合わせる方向における、屋根構造体1における1つの折板2当たりの幅を示す。
<折板>
図2は折板2の斜視図の一例、
図3は折板2の正面図の一例である。
図2および
図3に基づいて、実施形態1の折板2について詳細に説明する。
【0024】
図2および
図3に示すように、折板2は、1枚の鋼板を折り曲げて成形されている。折板2は、一対の頂部21a,21b、底部22、一対のはぜ締め部26a,26b、および、一対の傾斜部23a,23bを備えている。一対の傾斜部23a,23bは、一対の嵌合部24a,24bを備えている。
【0025】
なお、本明細書において、一対の頂部21、一対の傾斜部23等の一対の部材について、一対の部材を互いに区別するときは、例えば、頂部21a,21bのように、aまたはbを付して記載する。互いに区別せず総称する目的で記載するときは、例えば、頂部21のように、aまたはbを付さないで記載する。
【0026】
一対のはぜ締め部26a,26bは、折板2の働き巾W方向両端部に位置し、それぞれ一対の頂部21a,21b上に形成されている。底部22は、はぜ締め部26a,26bの間に谷状に形成されている。
【0027】
折板2に形成されるはぜ締め部26aと、互いに隣接する折板2Aに形成されるはぜ締め部26bと、タイトフレーム3の突起部35とが、互いにはぜ締めされる。これにより、頂部21と底部22とを交互に連続して備える屋根構造体1が構成される。
【0028】
一対の傾斜部23a,23bは、はぜ締め部26a,26bと底部22との間に、それぞれ傾斜して延びるように形成されている。
【0029】
一対の嵌合部24a,24bは、互いに近接する方向(底部22側)に突出し、それぞれ、タイトフレーム3に形成される一対の嵌合顎部34と嵌合する。
【0030】
折板2の底部22には、略中央部に凹部22aが形成されている。凹部22aは、リブとして機能し、折板2を補強するために形成されている。
【0031】
また、暑さのため、底部22の長さが伸びた場合、伸長した長さ分、底部22は上方または下方に膨出して変形する。この際、凹部22aが形成されていると、底部22が膨出する方向を、凹部22aの膨出する方向と同じ方向である下方へ導くことができる。このため、底部22の変形方向を制御し、各底部22がそれぞれ勝手な方向へ変形するのを抑制することができる。
一対の傾斜部23a,23bは、一対の嵌合部24の他に、一対の第1傾斜部分51a,51b、一対の第2傾斜部分52a,52b、一対の第3傾斜部分53a,53b、および、一対の第4傾斜部分54a,54bを備えている。また、一対の傾斜部23a,23bは、さらに、一対の第1折面部55a,55b、一対の第2折面部56a,56b、および、一対の嵌合部下端25a,25bを備えている。
【0032】
<折面部>
折板2は、通常、折り曲げ部分が多いと曲げ剛性が向上し、強度が高くなる。本実施形態の折板2は、第1折面部55および第2折面部56という2つの折り曲げ部分を備えることによって、折板2の強度を向上させることができる。
【0033】
図4は、折板2の傾斜部23に設けられる第1折面部55および第2折面部56について説明する図、
図5は折板2の各部の角度を説明する図である。
【0034】
なお、折板2は、一対のはぜ締め部26を除き、互いに、ほぼ左右対称になるように形成されている。以下では、説明の便宜上、
図3に示される折板2の左側部分の傾斜部23aについて説明する。なお、特に説明した場合を除き、折板2の右側部分の傾斜部23bは、左側部分の傾斜部23aと、ほぼ左右対称に構成されている。
【0035】
図4および
図5に示すように、傾斜部23は、第1傾斜部分51、第2傾斜部分52、第3傾斜部分53、第4傾斜部分54、第1折面部55、および第2折面部56を備えている。
【0036】
第1傾斜部分51は、嵌合部下端25において、一方の端部が嵌合部24と接続し、嵌合部24から連なって延びている。
【0037】
第2傾斜部分52は、第1傾斜部分51より底部22側に位置し、傾斜して延びている。
【0038】
第3傾斜部分53は、第2傾斜部分52より底部22側に位置し、傾斜して延びている。第3傾斜部分53は、本実施形態では、第2傾斜部分52と互いに平行で、かつ、直接繋がって形成されている。つまり、第3傾斜部分53は、第2傾斜部分52と実質同一の部分である。なお、これに限らず、第2傾斜部分52と第3傾斜部分53との間に、第3の折面部を設ける構成にしてもよい。
【0039】
第4傾斜部分54は、一方の端部が底部22と接続し、底部22から連なって延びている。
【0040】
嵌合部下端25は、嵌合部24の下端部であって、嵌合部24と第1傾斜部分51とを接続する。詳しくは後述するが、折板2は、強風による負圧荷重を受けたとき、応力を嵌合部下端25に伝えることができる。これにより、嵌合部下端25がタイトフレーム3の嵌合顎部34に食い込み、折板2とタイトフレーム3との嵌合が外れてしまうのを防止することができる。
【0041】
第1折面部55は、第1傾斜部分51と第2傾斜部分52との間に形成される。第1折面部55は、第1傾斜部分51との接続部が上から見て谷折り(X1)に形成され、第2傾斜部分52との接続部が山折り(Y1)に形成される。つまり、第1折面部55は、両端部に折り曲げ部X1、Y1を備え、第1折面部55の幅(折り曲げ部X1とY1との間の長さ)L1は、約1cmから3cm程度に形成される。第1折面部55の幅L1は、1cm以上であってよい。
【0042】
第2折面部56は、第3傾斜部分53と第4傾斜部分54との間に形成される。第2折面部56は、第3傾斜部分53との接続部が上から見て谷折り(X2)に形成され、第4傾斜部分54との接続部が山折り(Y2)に形成される。つまり、第2折面部56は、両端部に折り曲げ部X2、Y2を備え、第2折面部56の幅(折り曲げ部X2とY2との間の長さ)L2は、約1cmから3cm程度に形成される。第2折面部56の幅L2は、1cm以上であってよい。
【0043】
また、第1折面部55および第2折面部56は、底部22側に液体が流れるよう傾斜しており、第1折面部55および第2折面部56に溜まった雨水等を底部22へ案内することができる。
【0044】
(位置)
図4に示すように、嵌合部下端25と底部22との間を、高さ方向において2等分し、中心より嵌合部24側である上部H1と、中心より底部22側である下部H2に分割したとき、第1折面部55は上部H1に位置し、第2折面部56は下部H2に位置する。
【0045】
また、嵌合部下端25と底部22との間を、高さ方向において3等分し、嵌合部24側の上部区間P1、中央区間P2、および底部22側の下部区間P3に分割したとき、より好ましくは、第1折面部55は、上部区間P1に位置するように形成される。第2折面部56は、下部区間P3に位置するように形成される。
【0046】
このように、第1折面部55を嵌合部24に近い位置に形成することによって、嵌合部24と第1傾斜部分51との角度を変形しにくくすることができる。また、第2折面部56を底部22に近い位置に形成することによって、底部22と第4傾斜部分54との角度を変形しにくくすることができる。また、これによって、強風等の負圧荷重を受けたときに、折板2全体の形状を保持しやすくなり、タイトフレーム3との嵌合を外れにくくすることができる。
【0047】
(傾斜角)
図5に示すように、水平線に対する傾斜角を、第1傾斜部分51はθ1、第3傾斜部分53はθ2、第4傾斜部分54はθ3とする。このとき、傾斜角θ1、θ2、θ3は、いずれも約45度から55度、より好ましくは、約50度から53度になるように形成される。つまり、傾斜角θ1、θ2、θ3は、略同角度であり、第1傾斜部分51、第3傾斜部分53、および第4傾斜部分54は、互いに略平行になるように形成される。
【0048】
第1折面部55および第2折面部56の水平線に対する傾斜角を、第1折面部55はθ5、第2折面部56はθ6とする。このとき、傾斜角θ5、θ6は、いずれも約18度から25度、より好ましくは、約21度から23度になるように形成される。つまり、傾斜角θ5、θ6は、略同角度であり、第1折面部55および第2折面部56は、互いに略平行になるように形成される。
【0049】
このように、折板2は、第1傾斜部分51、第3傾斜部分53、および第4傾斜部分54が互いに略平行になるように形成され、また、第1折面部55および第2折面部56が互いに略平行になるように形成される。
【0050】
これによって、ロール成形機での折板2の成形工程において、ロール調整などの管理がし易くなり、安価かつ容易に折板2を製造することができる。また、詳しくは後述するが、強風等の負圧荷重(下側からの力)を受けたときに、各部の角度を揃えることで、傾斜部23から嵌合部下端25にわたって、応力がより均一になりやすい。また、底部22に下側から加わる力が第1傾斜部分51、第2傾斜部分52、第3傾斜部分53、および第4傾斜部分54の延びる方向に沿って嵌合部下端25に伝わりやすくなる。そのため、傾斜部23が変形する(曲がる)のを防ぐことができる。また、これにより、嵌合部下端25には第1傾斜部分51に沿った方向に力が加わる。この力は、嵌合部下端25を嵌合顎部34の下側に食い込ませる方向に働く。そのため、負圧荷重によって嵌合部24が嵌合顎部34から外れにくくすることができる。
【0051】
なお、傾斜部23の各部の角度を揃えることによって、折板2の美感を向上させることができる。
【0052】
また、上述したように、傾斜角θ5、θ6は、約20度から25度に形成され、傾斜角θ1、θ2、θ3は、約45度から55度に形成される。このように、第1折面部55および第2折面部56の傾斜角θ5、θ6は、第1傾斜部分51、第3傾斜部分53、および第4傾斜部分54の傾斜角θ1、θ2、θ3の約半分程度の角度である。すなわち、第1折面部55および第2折面部56は、第1傾斜部分51、第3傾斜部分53、および第4傾斜部分54より緩やかな傾斜になるように形成される。
【0053】
折板2が第1折面部55および第2折面部56を備えた場合、第1折面部55は、第1傾斜部分51と第2傾斜部分52とを斜めに接続し、第2折面部56は第3傾斜部分53と第4傾斜部分54とを斜めに接続する。このため、働き巾等の仕様が変わらなければ、第1折面部55および第2折面部56を備えない場合と比較して、傾斜部23および底部22を成形するのに必要な剛板の寸法を短くすることができる。
【0054】
一般に、市販されている鋼板の幅の寸法は決まっているため、必要な寸法が短くなると、鋼板の幅方向の寸法に余裕が生じる。この鋼板の寸法の余裕分を、例えば、折板2の山高(底部22の下面から頂部21の上面までの長さ)を高くするために、使用することができるようになる。
【0055】
折板2は、通常、山高の寸法が大きくなると、断面二次モーメントが大きくなるため、剛性(断面性能)が向上する。このため、第1折面部55および第2折面部56を備えることにより、鋼板の余裕分を使用して山高を高くすることができ、折板2の強度をさらに高めることができる。
【0056】
上記の効果を得るために、第1折面部55および第2折面部56の傾斜角θ5、θ6を、第1傾斜部分51、第3傾斜部分53、および第4傾斜部分54の傾斜角θ1、θ2、θ3の約半分程度の角度に形成する。かつ、第1折面部55および第2折面部56の幅L1,L2を、約1cmから3cm程度に形成する。
【0057】
これにより、市販されている鋼板の幅を、効率よく有効に配分しつつ、山高を高くし、折板2の強度を高めるとともに、第1折面部55および第2折面部56によって、傾斜部23の強度を上げることができる。
【0058】
このように、第1折面部55および第2折面部56を備えることにより、成形が容易で、耐風圧性能が高く、強度の高い折板2を生産することができる。
【0059】
(嵌合部下端)
折板2は、強風等の負圧荷重(下側からの力)を受けると、底部22および嵌合部下端25より下方の傾斜部23が、風圧によって建物の外側(上側)に膨らみ、折板2がタイトフレーム3の嵌合顎部34から外れやすくなる。
【0060】
上述したように、折板2は、第1折面部55が嵌合部24に近い位置にあるため、嵌合部24と第1傾斜部分51との角度が変形しにくい。また、第2折面部56が底部22に近い位置にあるため、底部22と第4傾斜部分54との角度が変形しにくい。これにより、折板2の傾斜部23全体の形状が保持しやすくなる。
【0061】
このため、折板2が、負圧によって底部22を下から押し上げる力を受けても、底部22および嵌合部下端25以下の傾斜部23が変形し、外側に膨らむのを防止することができ、全体の形状を保持しやすくなる。
【0062】
これにより、負圧荷重による力は、底部22および嵌合部下端25以下の傾斜部23を介して、嵌合部下端25に伝わり、力を受けた嵌合部下端25は、タイトフレーム3の嵌合顎部34の下側に食い込む。
【0063】
これにより、嵌合部下端25とタイトフレーム3の嵌合顎部34との接合が、却って強固になり、折板2とタイトフレーム3との嵌合が外れてしまうのを防止することができる。
【0064】
(折面部と傾斜部分)
図6は、第1折面部55の角度を説明する図である。
図6に示すように、第1傾斜部分51に対する第1折面部55の角度θ21、および第2傾斜部分52に対する第1折面部55の角度θ22は、底部22と平行な仮想線Q1に対する第1折面部55の角度θ23以上であってもよい。第2折面部56、第3傾斜部分53、および第4傾斜部分54の関係も同様であってよい。
【0065】
これにより、負圧を受けたときに、角度θ21,θ22が変形しにくく、第1折面部55と、第1傾斜部分51および第2傾斜部分52との形状を、保持しやすくすることができる。このため、さらに傾斜部23全体の形状を保持しやすくなり、折板2とタイトフレーム3との嵌合が外れてしまうのを防止することができる。
【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
2 折板(屋根材)
3 タイトフレーム
22 底部
23 傾斜部
24 嵌合部
25 嵌合部下端
26 はぜ締め部
51 第1傾斜部分
52 第2傾斜部分
53 第3傾斜部分
54 第4傾斜部分
55 第1折面部
56 第2折面部
P1 上部区間
P2 中央区間
P3 下部区間