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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073137
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】船舶推進機、船舶及び船舶用エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/42 20060101AFI20230518BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20230518BHJP
   B63H 20/32 20060101ALI20230518BHJP
   F02B 31/04 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
F02F1/42 F
B63H21/14
B63H20/32 553
F02F1/42 A
F02F1/42 B
F02B31/04 520A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185986
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 慎也
(72)【発明者】
【氏名】木脇 聡志
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA09
3G024AA11
3G024DA23
3G024DA25
3G024EA11
(57)【要約】
【課題】エンジンの燃焼室におけるωスワールの発生を抑制することができる船舶推進機、この船舶推進機を含む船舶、及び、この船舶推進機に含まれる船舶用エンジンを提供する。
【解決手段】船舶推進機は、エンジン20と、エンジン20によって駆動されるプロペラと、を含む。エンジン20は、燃焼室28と燃焼室28に連通する一対の吸気口63とが設けられたシリンダヘッド29と、一対の吸気口63にそれぞれ接続された一対の吸気ポート55と、を含む。一対の吸気ポート55において吸気口63に接続される下流部55A同士の間隔Dは、吸気口63に近付くにつれて狭くなっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と前記燃焼室に連通する一対の吸気口とが設けられたシリンダヘッドと、前記一対の吸気口にそれぞれ接続された一対の吸気ポートと、を含むエンジンと、
前記エンジンによって駆動される推進ユニットと、
を含み、
前記一対の吸気ポートにおいて前記吸気口に接続される下流部同士の間隔は、前記吸気口に近付くにつれて狭くなっている、船舶推進機。
【請求項2】
過給器と、前記過給器によって圧縮された空気を冷却するインタークーラと、をさらに含み、
前記一対の吸気ポートには、前記インタークーラによって冷却された空気が流入し、
前記一対の吸気ポートのそれぞれは、前記インタークーラから前記吸気口まで別々に延びる独立吸気ポートである、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項3】
燃焼室と前記燃焼室に連通する一対の吸気口とが設けられたシリンダヘッドと、前記一対の吸気口にそれぞれ接続された一対の吸気ポートと、を含むエンジンと、
前記エンジンによって駆動される推進ユニットと、
を含み、
前記シリンダヘッドには、前記一対の吸気口の周縁からそれぞれ延びて前記一対の吸気口の並び方向において互いに対向する一対の内側面が設けられ、
前記一対の内側面の間に前記燃焼室が区画され、
前記一対の内側面において前記吸気口の周縁につながった上流部同士の間隔は、前記吸気口の周縁から離れるにつれて狭くなっている、船舶推進機。
【請求項4】
前記シリンダヘッドには、前記並び方向に沿って並んで前記燃焼室に連通する一対の排気口が設けられ、
前記エンジンは、前記一対の排気口にそれぞれ接続された一対の排気ポートを含み、
前記一対の内側面における第1内側面は、前記一対の吸気口における第1吸気口の周縁と前記一対の排気口における第1排気口の周縁とをつなぎ、
前記一対の内側面における第2内側面は、前記一対の吸気口における第2吸気口の周縁と前記一対の排気口における第2排気口の周縁とをつなぎ、
前記第1内側面と前記第2内側面とは、互いに接近するように湾曲している、請求項3に記載の船舶推進機。
【請求項5】
前記エンジンは、垂直方向に沿って配置されたクランクシャフトを含み、
前記船舶推進機は、前記クランクシャフトに結合されて垂直方向に沿って配置されたドライブシャフトと、水平方向に沿って延びるプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトに結合された前記推進ユニットとしてのプロペラと、前記ドライブシャフトの回転を前記プロペラシャフトに伝達する伝達機構と、を含む船外機である、請求項1~4のいずれか一項に記載の船舶推進機。
【請求項6】
船体と、
前記船体に装備されて前記船体に推進力を与える、請求項1~5のいずれか一項に記載の船舶推進機と、を含む、船舶。
【請求項7】
燃焼室と前記燃焼室に連通する一対の吸気口とが設けられたシリンダヘッドと、
前記一対の吸気口にそれぞれ接続された一対の吸気ポートと、
を含み、
前記一対の吸気ポートにおいて前記吸気口に接続される下流部同士の間隔は、前記吸気口に近付くにつれて狭くなっている、船舶用エンジン。
【請求項8】
燃焼室と前記燃焼室に連通する一対の吸気口とが設けられたシリンダヘッドと、
前記一対の吸気口にそれぞれ接続された一対の吸気ポートと、
を含み、
前記シリンダヘッドには、前記一対の吸気口の周縁からそれぞれ延びて前記一対の吸気口の並び方向において互いに対向する一対の内側面が設けられ、
前記一対の内側面の間に前記燃焼室が区画され、
前記一対の内側面において前記吸気口の周縁につながった上流部同士の間隔は、前記吸気口の周縁から離れるにつれて狭くなっている、船舶用エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶推進機、この船舶推進機を含む船舶、及び、この船舶推進機に含まれる船舶用エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、船舶推進機の一例である船外機を開示している。船外機に用いられるエンジンは、複数のシリンダが設けられたシリンダブロックと、各シリンダ内に配置されたピストンと、シリンダブロックに接続されたシリンダヘッドとを含む。シリンダヘッドにおいて各シリンダに臨む部分には、対応するシリンダ及びピストンと共に燃焼室を構成する燃焼凹部が1つずつ設けられている。各燃焼凹部には、一対の吸気弁開口と、排気弁開口とが形成されている。一対の吸気弁開口には、吸気マニホールドから延びる一対の吸気ポートがそれぞれ接続されている。排気弁開口には、排気ポートが接続されている。各シリンダでの吸排気に関し、吸気マニホールドに流入した空気は、一対の吸気ポートに分かれて一対の吸気弁開口から燃焼室に流入し、燃焼室で燃料と共に燃焼されることによって排気となってから、排気弁開口及び排気ポートを流れて船外機の外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-138925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の船外機のような船舶推進機では、エンジンにおいて一対の吸気弁開口から燃焼室に流入した空気による、いわゆるωスワールを考慮する必要がある。ωスワールとは、一対の吸気弁開口のそれぞれから燃焼室に流入した空気が、流入直後に互いの間隔が広がるように排気弁開口へ流れた後に、互いに接近するように旋回することにより、ピストンの移動方向から見てω状の軌跡を描くスワールである。ωスワールの発生を抑制することができると、燃焼速度を上昇させることによってエンジンの性能向上を図ることができる。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態は、エンジンの燃焼室におけるωスワールの発生を抑制することができる船舶推進機、この船舶推進機を含む船舶、及び、この船舶推進機に含まれる船舶用エンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、エンジンと、前記エンジンによって駆動される推進ユニットと、を含む、船舶推進機を提供する。前記エンジンは、燃焼室と前記燃焼室に連通する一対の吸気口とが設けられたシリンダヘッドと、前記一対の吸気口にそれぞれ接続された一対の吸気ポートと、を含む。前記一対の吸気ポートにおいて前記吸気口に接続される下流部同士の間隔は、前記吸気口に近付くにつれて狭くなっている。
【0007】
この構成により、船舶推進機のエンジンでは、空気が、一対の吸気ポートに分かれて一対の吸気口から燃焼室に流入し、燃焼室において燃料と共に燃焼される。これにより、船舶推進機では、エンジンが駆動力を発生して推進ユニットが駆動されるので、船舶推進機が推進力を発生する。一対の吸気ポートにおいて吸気口に接続される下流部同士の間隔が、吸気口に近付くにつれて狭くなっているので、一対の吸気口のそれぞれから燃焼室に流入した直後の空気を、互いの間隔が広がらないように流すことができる。これにより、エンジンの燃焼室において、ωスワールの発生を抑制することができる。
【0008】
本発明の一実施形態においては、前記船舶推進機は、過給器と、前記過給器によって圧縮された空気を冷却するインタークーラと、をさらに含む。前記一対の吸気ポートには、前記インタークーラによって冷却された空気が流入する。前記一対の吸気ポートのそれぞれは、前記インタークーラから前記吸気口まで別々に延びる独立吸気ポートである。
【0009】
この構成により、それぞれが独立吸気ポートである一対の吸気ポートであれば、吸気口に接続される下流部同士の間隔を、吸気口に近付くにつれて狭くなるように容易に構成することができる。
【0010】
本発明の一実施形態は、エンジンと、前記エンジンによって駆動される推進ユニットと、を含む、船舶推進機を提供する。前記エンジンは、燃焼室と前記燃焼室に連通する一対の吸気口とが設けられたシリンダヘッドと、前記一対の吸気口にそれぞれ接続された一対の吸気ポートと、を含む。前記シリンダヘッドには、前記一対の吸気口の周縁からそれぞれ延びて前記一対の吸気口の並び方向において互いに対向する一対の内側面が設けられている。前記一対の内側面の間に前記燃焼室が区画されている。前記一対の内側面において前記吸気口の周縁につながった上流部同士の間隔は、前記吸気口の周縁から離れるにつれて狭くなっている。
【0011】
この構成により、船舶推進機のエンジンでは、空気が、一対の吸気ポートに分かれて一対の吸気口から燃焼室に流入し、燃焼室において燃料と共に燃焼される。これにより、船舶推進機では、エンジンが駆動力を発生して推進ユニットが駆動されるので、船舶推進機が推進力を発生する。シリンダヘッドにおいて一対の吸気口の周縁からそれぞれ延びて一対の吸気口の並び方向において燃焼室を挟んで互いに対向する一対の内側面では、吸気口の周縁につながった上流部同士の間隔が、吸気口の周縁から離れるにつれて狭くなっている。そのため、一対の吸気口のそれぞれから燃焼室に流入した直後の空気を、互いの間隔が広がらないように流すことができる。これにより、エンジンの燃焼室において、ωスワールの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の一実施形態においては、前記シリンダヘッドには、前記並び方向に沿って並んで前記燃焼室に連通する一対の排気口が設けられている。前記エンジンは、前記一対の排気口にそれぞれ接続された一対の排気ポートを含む。前記一対の内側面における第1内側面は、前記一対の吸気口における第1吸気口の周縁と前記一対の排気口における第1排気口の周縁とをつなぐ。前記一対の内側面における第2内側面は、前記一対の吸気口における第2吸気口の周縁と前記一対の排気口における第2排気口の周縁とをつなぐ。前記第1内側面と前記第2内側面とは、互いに接近するように湾曲している。
【0013】
この構成により、シリンダヘッドの一対の内側面における上流部同士の間隔を、吸気口の周縁から離れるにつれて狭くなるように構成することができる。
【0014】
本発明の一実施形態においては、前記エンジンは、垂直方向に沿って配置されたクランクシャフトを含む。前記船舶推進機は、ドライブシャフトと、プロペラと、伝達機構と、を含む船外機である。前記ドライブシャフトは、前記クランクシャフトに結合されて垂直方向に沿って配置されている。前記プロペラシャフトは、水平方向に沿って延びている。前記プロペラは、前記推進ユニットとして、前記プロペラシャフトに結合されている。前記伝達機構は、前記ドライブシャフトの回転を前記プロペラシャフトに伝達する。
【0015】
この構成により、船外機では、エンジンのクランクシャフトの回転が、ドライブシャフト及び伝達機構を介してプロペラシャフトに伝達されることにより、プロペラシャフトがプロペラと回転するので、プロペラが推進力を発生する。このような船外機のエンジンの燃焼室において、前述しように、ωスワールの発生を抑制することができる。
【0016】
本発明の一実施形態は、船体と、前記船体に装備されて前記船体に推進力を与える前記船舶推進機と、を含む、船舶である。
【0017】
この構成により、船舶に含まれる船舶推進機のエンジンの燃焼室において、前述しように、ωスワールの発生を抑制することができる。
【0018】
本発明の一実施形態は、燃焼室と前記燃焼室に連通する一対の吸気口とが設けられたシリンダヘッドと、前記一対の吸気口にそれぞれ接続された一対の吸気ポートと、を含む、船舶用エンジンを提供する。前記一対の吸気ポートにおいて前記吸気口に接続される下流部同士の間隔は、前記吸気口に近付くにつれて狭くなっている。
【0019】
この構成により、船舶用エンジンの燃焼室において、前述しように、ωスワールの発生を抑制することができる。
【0020】
本発明の一実施形態は、燃焼室と前記燃焼室に連通する一対の吸気口とが設けられたシリンダヘッドと、前記一対の吸気口にそれぞれ接続された一対の吸気ポートと、を含む、船舶用エンジンを提供する。前記シリンダヘッドには、前記一対の吸気口の周縁からそれぞれ延びて前記一対の吸気口の並び方向において互いに対向する一対の内側面が設けられている。前記一対の内側面の間に前記燃焼室が区画されている。前記一対の内側面において前記吸気口の周縁につながった上流部同士の間隔は、前記吸気口の周縁から離れるにつれて狭くなっている。
【0021】
この構成により、船舶用エンジンの燃焼室において、前述しように、ωスワールの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エンジンの燃焼室におけるωスワールの発生を抑制することができる船舶推進機、この船舶推進機を含む船舶、及び、この船舶推進機を含まれる船舶用エンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る船舶の模式的な平面図である。
図2】船舶に含まれる船外機の模式的な側面図である。
図3】船外機の吸排気系を説明するための模式図である。
図4】吸排気系における吸気構造の斜視図である。
図5】吸気構造における要部の背面図である。
図6】吸気構造における要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る船舶1の模式的な平面図である。船舶1は、船体2と、船体2に装備された操船装置3及び船外機4とを含む。操船装置3の一例は、船体2の操船席の周辺の操作台5に設けられたステアリングホイール6及びスロットルレバー7と、船外機4に内蔵されたECU(電子制御ユニット)8とステアリングホイール6及びスロットルレバー7とをつなぐ通信バス9とを含む。操船者は、操舵のためにステアリングホイール6を左右方向に回動させる。操船者は、船外機4の出力調整のためにスロットルレバー7を前後方向に回動させる。操舵及び船外機4の出力調整のために操船者によって操作されるジョイスティック10が操作台5に設けられてもよい。
【0025】
船外機4は、船体2に推進力を与える船舶用推進機の一例であって、単数又は複数設けられる。単数設けられる場合の船外機4は、船体2の船尾2A及び船首2Bを通って前後方向に沿う仮想の中心線C上において、船尾2Aに取り付けられる。複数設けられる場合の船外機4は、中心線Cに対して左右対称な位置において、船尾2Aに取り付けられる。
【0026】
図2は、船外機4の模式的な右側面図である。図2における左方が、船外機4の前方であり、図2における右方が、船外機4の後方である。図2における上方が、船外機4の上方であり、図2における下方が、船外機4の下方である。上下方向は、垂直方向でもある。図2の紙面に直交する方向が船外機4の左右方向である。以下では、船外機4を前方から見たときを基準として船外機4の左右の向きを特定する。そのため、図2の紙面に直交する方向における手前が、船外機4の右方であり、図2の紙面に直交する方向における奥が、船外機4の左方である。
【0027】
船外機4は、船外機4を船尾2Aに取り付けるための取付機構11と、船外機本体12とを含む。取付機構11は、船尾2Aに固定されたクランプブラケット13と、水平に沿って左右方向に延びるチルトシャフト14を介してクランプブラケット13に連結されたスイベルブラケット15と含む。スイベルブラケット15は、上下方向に延びるステアリングシャフト16を介して船外機本体12に連結されている。これにより、船外機本体12は、概ね垂直な姿勢で、取付機構11によって船尾2Aに取り付けられている。
【0028】
船外機本体12及びスイベルブラケット15は、クランプブラケット13に対して、チルトシャフト14まわりに上下方向に回動可能である。船外機本体12がチルトシャフト14まわりに回動されることにより、船外機本体12が、船体2及びクランプブラケット13に対して傾けられる。船外機本体12は、クランプブラケット13及びスイベルブラケット15に対して、ステアリングシャフト16と共に左右方向に回動可能である。船外機本体12が左右方向に回動すると、船舶1が操舵される。
【0029】
船外機本体12は、ボックス状のエンジンカバー17と、エンジンカバー17から下方に延びる中空のケーシング18と、ケーシング18の内部空間を上方から塞ぐようにエンジンカバー17の下端部に取り付けられた板状のエキゾーストガイド19とを含む。ケーシング18の下端部は、ロアケース18Aである。船外機本体12は、エンジンカバー17内でエキゾーストガイド19の上面に搭載されたエンジン20と、ケーシング18内で上下方向に沿って配置されたドライブシャフト21と、ロアケース18A内に配置されたプロペラシャフト22及び伝達機構23とを含む。
【0030】
エンジン20は、船舶用エンジンであって、例えばガソリン等の燃料を燃焼させて動力を発生する内燃機関によって構成される。エンジン20は、単数又は複数のシリンダ24を有するシリンダブロック25と、シリンダ24内に1つずつ配置されたピストン26と、シリンダブロック25内において上下方向に沿って配置されてピストン26に連結されたクランクシャフト27とを含む。本実施形態におけるエンジン20は、4つのシリンダ24が上下方向に沿って直列に配置された直列四気筒エンジンである。
【0031】
各シリンダ24の内部空間は、前後方向に沿って延びる円筒状である。各シリンダ24の内部空間においてピストン26よりも後方の領域には、燃焼室28が区画されている。シリンダブロック25においてクランクシャフト27を収容した前部分は、クランクケース25Aである。
【0032】
エンジン20は、シリンダブロック25に対して後方から取り付けられたシリンダヘッド29と、シリンダヘッド29に対して後方から取り付けられたヘッドカバー30とを含む。シリンダヘッド29及びヘッドカバー30をシリンダブロック25の一部とみなしてもよい。シリンダヘッド29の前面において各シリンダ24の燃焼室28に対向する部分には、燃焼室28の一部として後方へ窪んだ凹部29Aが1つずつ設けられている。エンジン20は、それぞれの凹部29Aに露出される吸気バルブ31及び排気バルブ32と、上下方向に沿って延びてヘッドカバー30によって回転可能に支持されたカムシャフト33とを含む。カムシャフト33は、吸気バルブ31及び排気バルブ32のそれぞれに応じて一対設けられてもよい。
【0033】
クランクシャフト27は、上下方向に延びるクランク軸線27Aを有する。クランクシャフト27の上端部は、クランクケース25Aから上方へはみ出している。クランクシャフト27の下端部は、ドライブシャフト21の上端部に結合されている。エンジン20は、クランクシャフト27の上端部に固定されたフライホイールマグネト34と、クランクシャフト27の下端部とカムシャフト33の下端部とに掛け回されたカムチェーン35とを含む。フライホイールマグネト34は、クランクケース25Aよりも上方に配置されている。カムチェーン35は、シリンダブロック25内において4つのシリンダ24の下方に配置されている。
【0034】
各燃焼室28での混合気の燃焼によって、ピストン26が、クランク軸線27Aと直交する前後方向に往復直線移動する。ピストン26が往復直線移動すると、クランクシャフト27が、ドライブシャフト21を伴って、クランク軸線27Aまわりに駆動回転される。クランクシャフト27の回転に応じて、フライホイールマグネト34が回転して発電し、カムチェーン35が周回移動する。カムチェーン35の周回移動に応じて、カムシャフト33が回転する。カムシャフト33の回転に連動して吸気バルブ31及び排気バルブ32が作動する。これにより、各燃焼室28では、吸排気が行われる。
【0035】
プロペラシャフト22は、ロアケース18A内において、前後方向に沿って水平方向に延びている。ドライブシャフト21の下端部は、伝達機構23によってプロペラシャフト22の前端部に連結されている。プロペラシャフト22の後端部は、ロアケース18Aから後方に突出している。プロペラシャフト22の後端部には、船外機4を構成する推進ユニットの一例としてのプロペラ36が結合されている。プロペラシャフト22は、前後方向に延びる回転軸線22Aまわりにプロペラ36と共に回転する。
【0036】
伝達機構23は、ドライブシャフト21の回転をプロペラシャフト22に伝達するための構成である。伝達機構23は、ドライブシャフト21の下端部に固定された駆動歯車38と、プロペラシャフト22の前端部に取り付けられた回転体39及びドッグクラッチ40とを含む。駆動歯車38は、傘歯車である。プロペラシャフト22は、駆動歯車38の下方に配置されている。回転体39は、プロペラシャフト22に沿って前後方向に並んで配置された第1回転体41及び第2回転体42を含む。第1回転体41及び第2回転体42は、例えば筒状の傘歯車である。
【0037】
本実施形態では、第1回転体41が駆動歯車38よりも前方に配置され、第2回転体42が駆動歯車38よりも後方に配置されるが、第1回転体41と第2回転体42との前後の位置関係は、本実施形態と逆であってもよい。第1回転体41の後面において、テーパー状の外周部には歯部41Aが形成され、内周部には爪部41Bが形成されている。第2回転体42の前面において、テーパー状の外周部には歯部42Aが形成され、内周部には爪部42Bが形成されている。
【0038】
第1回転体41は、プロペラシャフト22の前端部において駆動歯車38よりも前方の部分を取り囲み、第2回転体42は、プロペラシャフト22の前端部において駆動歯車38よりも後方の部分を取り囲んでいる。第1回転体41及び第2回転体42は、互いの歯部41A及び42Aが前後方向に間隔を空けて向かい合うように配置され、駆動歯車38に噛み合っている。エンジン20の駆動に伴って駆動歯車38がドライブシャフト21と一体回転すると、駆動歯車38の回転が第1回転体41及び第2回転体42に伝達される。これにより、第1回転体41及び第2回転体42は、プロペラシャフト22の回転軸線22Aまわりに、互いに逆向きに回転する。
【0039】
ドッグクラッチ40は、第1回転体41及び第2回転体42の間に配置されている。ドッグクラッチ40は、例えば筒状であって、プロペラシャフト22の前端部を取り囲んでいる。ドッグクラッチ40の前端面には、第1爪部40Aが形成され、ドッグクラッチ40の後端面には、第2爪部40Bが形成されている。ドッグクラッチ40は、例えばスプラインによって、プロペラシャフト22の前端部に連結されている。したがって、ドッグクラッチ40は、プロペラシャフト22の前端部と共に回転する。さらに、ドッグクラッチ40は、プロペラシャフト22の前端部に対して前後方向に移動可能である。つまり、ドッグクラッチ40は、プロペラシャフト22に対して一体回転可能かつ前後方向に沿って相対移動可能である。
【0040】
伝達機構23は、ロアケース18A内でプロペラシャフト22よりも前方に配置されたシフト機構43も含む。シフト機構43は、例えば、上下方向に延びるシフトロッド44と、シフトロッド44に結合された電動のシフトアクチュエータ45とを含む。シフトロッド44の下端部は、ドッグクラッチ40に連結されている。シフトアクチュエータ45がECU8(図1参照)の制御によって作動すると、シフトロッド44は、シフトロッド44の軸線まわりに回動する。ドッグクラッチ40は、シフトロッド44が回動されることにより、切断位置と接続位置との間において前後方向に沿って移動される。
【0041】
切断位置は、図2に示すようにドッグクラッチ40が第1回転体41及び第2回転体42から離れて、これらの回転体39のいずれにも噛み合わない位置である。ドッグクラッチ40が切断位置に配置されている状態では、ドライブシャフト21の回転が伝達される各回転体39は、空転するので、ドライブシャフト21の回転がプロペラシャフト22に伝達されない。以下、このときの船外機4のシフト位置を「ニュートラル」という。
【0042】
接続位置は、ドッグクラッチ40が第1回転体41及び第2回転体42のどちらかと噛み合う位置である。接続位置は、ドッグクラッチ40の第1爪部40Aが第1回転体41の爪部41Bとだけ噛み合う第1接続位置と、ドッグクラッチ40の第2爪部40Bが第2回転体42の爪部42Bとだけ噛み合う第2接続位置とを含む。切断位置は、第1接続位置と第2接続位置との間の位置である。第1接続位置は、切断位置よりも前方であり、第2接続位置は、切断位置よりも後方である。
【0043】
ドッグクラッチ40が第1接続位置に配置されて第1回転体41だけに連結された状態では、第1回転体41の回転がプロペラシャフト22に伝達されるので、船外機4のシフト位置は「前進」にシフトインされる。すると、ドライブシャフト21の回転が、第1回転体41及びドッグクラッチ40を介してプロペラシャフト22に伝達されることにより、プロペラ36が前進回転方向(例えば、後方から見て時計回り)に回転する。これにより、プロペラ36が、エンジン20によって駆動されて前進方向の推進力を発生する。
【0044】
ドッグクラッチ40が第2接続位置に配置されて第2回転体42だけに連結された状態では、第2回転体42の回転がプロペラシャフト22に伝達されるので、船外機4のシフト位置は「後進」にシフトインされる。すると、ドライブシャフト21の回転が、第2回転体42及びドッグクラッチ40を介してプロペラシャフト22に伝達されることにより、プロペラ36が、前進回転方向とは反対の後進回転方向に回転する。これにより、プロペラ36が、エンジン20によって駆動されて後進方向の推進力を発生する。このように、本実施形態では、第1回転体41が前進用歯車であって第2回転体42が後進用歯車である。もちろん、第1回転体41が後進用歯車であって、第2回転体42が前進用歯車であってもよい。
【0045】
船外機本体12は、船外機本体12の内部に設けられてエンジン20に接続された排気路46を含む。排気路46は、エキゾーストガイド19を上下方向に貫通してケーシング18内で下方に延び、プロペラ36内で後方へ延びている。排気路46は、プロペラ36の後端面に設けられた出口46Aを含む。船舶1が水に浮かべられてプロペラ36が水面よりも下方に位置する状態では、出口46Aは、水中に位置しているので、出口46Aを通過した水が、排気路46の下流部に進入している。一方、エンジン20が高速回転しているときには、排気路46内の水が、エンジン20からの排気の圧力によって押されて、排気と共に出口46Aから排出される。これにより、エンジン20で生成された排気が水中に排出される。
【0046】
船外機本体12には、例えば前方へ延びる操舵ロッド47が固定されている。操舵ロッド47には、ECU8によって制御される電動の操舵アクチュエータ48が結合されている。操舵アクチュエータ48が作動することによって、船外機本体12をステアリングシャフト16まわりに回動させることができるので、操舵を行うことができる。
【0047】
図3は、船外機4の吸排気系49を説明するための模式図である。吸排気系49は、エンジン20と、空気を圧縮してエンジン20に供給する過給器50と、過給器50によった圧縮された空気を冷却するインタークーラ51とを含む。
【0048】
吸排気系49に関連して、エンジン20は、前述した排気路46と、吸気路52と、吸気路52内に配置された電動のスロットルバルブ53とを含む。排気路46は、エンジン20のシリンダヘッド29に設けられた複数の排気ポート54を介して各燃焼室28に接続されている。吸気路52は、シリンダヘッド29に設けられた複数の吸気ポート55を介して各燃焼室28に接続されている。吸気路52において吸気ポート55とは反対の端部には入口52Aが設けられている。ECU8がスロットルバルブ53を制御することによって、スロットルバルブ53の開度が調節される。
【0049】
過給器50は、吸気路52の途中に介装されている。過給器50は、エンジン20のクランクシャフト27の回転によって駆動されるスーパーチャージャである。過給器50は、吸気路52の一部を構成する内部空間を有するハウジング50Aと、ハウジング50A内に配置されたコンプレッサーホイール50Bと、コンプレッサーホイール50Bに対して同軸で固定された回転軸50Cとを含む。回転軸50Cにおいてコンプレッサーホイール50Bから離れた端部は、ハウジング50Aの外に配置されていて、この端部には、ロータ56が同軸で固定されている。
【0050】
吸排気系49は、クランクシャフト27と過給器50との間を結合する動力伝達機構を含む。動力伝達機構の一例は、前述したロータ56と、クランクシャフト27の取り付けられた別のロータ57と、ロータ56とロータ57とをつなぐベルト58とを有する。ロータ56及びロータ57のそれぞれの一例は、プーリである。ロータ57は、クランクシャフト27の上端部においてフライホイールマグネト34よりも上方の部分に取り付けられている(図2参照)。
【0051】
クランクシャフト27が回転すると、ロータ57は、クランクシャフト27と一体回転する。ロータ57の回転は、ベルト58を介してロータ56に伝達される。すると、回転軸50Cがコンプレッサーホイール50Bと一体回転することによって、過給器50が駆動される。なお、ロータ56及びロータ57のそれぞれとして、プーリの代りにスプロケットを用いて、ベルト58の代りにチェーンを用いてもよい。
【0052】
スロットルバルブ53が開いた状態で過給器50が作動すると、入口52Aから取り込まれて吸気路52内を流れる空気が、ハウジング50A内で回転するコンプレッサーホイール50Bによって圧縮される。なお、過給器50として、図3で図示した遠心式に限らず、リショルム式等の他の構成も採用できる。
【0053】
インタークーラ51は、吸気路52においてエンジン20の各吸気ポート55と過給器50との間に介装されている。インタークーラ51は、吸気路52の一部を構成する内部空間を有するハウジング51Aと、冷却フィン(図示せず)とを有する。インタークーラ51として、空冷式及び水冷式のいずれを用いてもよい。インタークーラ51は、ハウジング51Aから延びて吸気ポート55に接続されたインテークマニホールド51Bを含む。インテークマニホールド51Bは、ハウジング51Aと一体形成されている。
【0054】
過給器50のハウジング50A内でコンプレッサーホイール50Bによって圧縮された空気は、吸気路52を引き続き流れることによってインタークーラ51に導かれ、インタークーラ51のハウジング51A内での冷却フィンとの熱交換によって冷却される。インタークーラ51によって冷却された空気は、インテークマニホールド51Bを流れた後に混合気となって、吸気ポート55からシリンダ24内の燃焼室28に供給されて燃焼される。燃焼によって発生した排気は、排気ポート54から排気路46を流れた後に、前述したように出口46Aから水中に排出される。
【0055】
図4は、吸排気系49において排気路46以外の構成である吸気構造60を右前方から見た斜視図である。インタークーラ51は、エンジン20のシリンダブロック25の側方(詳しくは左側方)に配置されている。インタークーラ51のハウジング51Aは、例えばアルミニウム等の金属製であり、上下方向に長手の中空体である。ハウジング51Aと一体形成されたインテークマニホールド51Bは、ハウジング51Aから後方へ延びてから右方へ湾曲している。
【0056】
過給器50は、シリンダブロック25の前方に配置されている。吸気路52において過給器50よりも入口52Aに近い上流領域52Bは、過給器50のハウジング50Aから下方へ延びた後に右後方へ延び、シリンダブロック25の右方において湾曲して上方へ延びている。上流領域52Bの上端部には、入口52Aが前方を向いて設けられている。入口52Aには、メッシュ等によって構成されたフィルタ61が設けられている。上流領域52Bにおいてシリンダブロック25の右方に位置する部分を吸気ダクトと呼んでもよい。前述したロータ56は、過給器50のハウジング50Aの上面に配置されている。
【0057】
図5は、吸気構造60における要部の背面図である。図5では、シリンダヘッド29の一部と、一対の吸気ポート55とが図示されている。シリンダヘッド29には、前述した凹部29A、つまり燃焼室28の一部が、シリンダ24と同数設けられていて、本実施形態では、4つの凹部29Aが上下方向に並んでいる(図2参照)。吸気ポート55は、燃焼室28毎に一対ずつ存在する円管状の管路であって、インテークマニホールド51Bから右方(背面視では左方)へ延びて、対応する燃焼室28に接続されている。各吸気ポート55には、吸気バルブ31(図1参照)を支持するバルブガイド62が設けられている。なお、図5以降の各図では、吸気バルブ31及び排気バルブ32の図示が省略されている。排気ポート54は、燃焼室28毎に一対ずつ存在する円管状の管路である(図6参照)。
【0058】
シリンダヘッド29の後面において背面視で各燃焼室28と重なる領域には、吸気口63及び排気口64がそれぞれ一対ずつ設けられている。吸気口63及び排気口64のそれぞれは、シリンダヘッド29を前後方向又は略前後方向に貫通した丸穴である(図6も参照)。吸気口63には吸気バルブ31が1つずつ配置され、排気口64には排気バルブ32が1つずつ配置されている(図示せず)。なお、シリンダヘッド29には、点火プラグ(図示せず)を各燃焼室28に露出させる貫通穴29Bも形成されている。
【0059】
以下では、一つの燃焼室28に着目して、各燃焼室28に関する構成について説明する。一つの燃焼室28に対応する吸気口63及び排気口64では、上下方向に沿って並んだ一対の吸気口63が、上下方向に沿って並んだ一対の排気口64よりもインテークマニホールド51B側の左方(背面視では右方)に配置されている。つまり、本実施形態では、一対の吸気口63の並び方向は上下方向であり、一対の排気口64の並び方向も上下方向である。
【0060】
一対の吸気口63は、燃焼室28の略左半分をなす第1領域28Aに後方から連通していて、一対の排気口64は、燃焼室28の略右半分をなす第2領域28Bに後方から連通している。背面視において一対の吸気口63と一対の排気口64によって囲まれた領域は、燃焼室28の中央領域28Cである。中央領域28Cは、第1領域28Aと第2領域28Bとの境界領域である。前述した貫通穴29Bは、背面視において中央領域28Cと重なる位置に配置されている。
【0061】
以下では、一対の吸気口63のうち、上方に位置する吸気口63を第1吸気口63Aといい、下方に位置する吸気口63を第2吸気口63Bということがある。また、一対の排気口64のうち、上下方向において第1吸気口63A側に位置する上方の排気口64を第1排気口64Aといい、上下方向において第2吸気口63B側に位置する下方の排気口64を第2排気口64Bということがある。
【0062】
一つの燃焼室28に連通する一対の吸気口63には、一対の吸気ポート55がそれぞれ接続されている。この燃焼室28に連通する一対の排気口64には、一対の排気ポート54がそれぞれ接続されている(図6参照)。
【0063】
一対の吸気ポート55のそれぞれは、インタークーラ51に一体形成されたインテークマニホールド51Bから吸気口63まで別々に延びる独立吸気ポートである。一対の吸気ポート55のそれぞれにおいて吸気口63に接続される部分、つまり、吸気口63寄りの部分を下流部55Aという。一対の吸気ポート55の下流部55A同士の間隔Dは、吸気口63に近付くにつれて狭くなっている。
【0064】
吸気ポート55の中心(厳密には、吸気ポート55の流路断面の中心)を通る仮想線を管軸55Bという。一対の吸気ポート55の下流部55Aにおける管軸55B同士の間隔D’も、下流部55A同士の間隔Dと同様に、吸気口63に近付くにつれて狭くなっている。なお、下流部55A同士の間隔Dだけでなく、一対の吸気ポート55の全域同士の間隔が、吸気口63に近付くにつれて狭くなるように構成されてもよい。
【0065】
船外機4のエンジン20では、インタークーラ51によって冷却された空気が、一対の吸気ポート55に分かれて流入する。一対の吸気ポート55に分かれた空気は、一対の吸気口63から、対応する燃焼室28に流入し、燃焼室28において燃料と共に燃焼される。これにより、船外機4では、エンジン20が駆動力を発生してプロペラ36が駆動されるので、船外機4が推進力を発生する。
【0066】
前述したように、一対の吸気ポート55において吸気口63に接続される下流部55A同士の間隔Dが、吸気口63に近付くにつれて狭くなっている。この構成により、一対の吸気口63のそれぞれから燃焼室28に流入した直後の空気を、互いの間隔が広がらないように燃焼室28の中央領域28C側(貫通穴29Bから露出される点火プラグ側)へ流すことができる(図5の太い実線矢印を参照)。これにより、エンジン20の燃焼室28において、ωスワール(図5の太い2点鎖線矢印を参照)の発生を抑制することができる。ωスワールの発生を抑制できれば、ノッキングの発生を抑制できるとともに、特に点火進角での燃焼速度の上昇を図れるので、エンジン20の性能向上を図れる。そして、それぞれが独立吸気ポートである一対の吸気ポート55であれば、吸気口63に接続される下流部55A同士の間隔Dを、吸気口63に近付くにつれて狭くなるように容易に構成することができる。
【0067】
図6は、吸気構造60における要部の正面図である。図6では、シリンダヘッド29において燃焼室28(凹部29A)が形成された前面29Cの一部と、一対の排気ポート54とが図示されている。一対の排気ポート54は、右方へ延びている。
【0068】
シリンダヘッド29には、一対の吸気口63の並び方向(本実施形態では上下方向)において互いに対向する一対の内側面65と、当該並び方向に直交する左右方向において互いに対向する別の一対の内側面66とが、燃焼室28毎に設けられている。
【0069】
以下では、一対の内側面65のうち、上下方向において第1吸気口63A側に位置する上方の内側面65を第1内側面65Aといい、上下方向において第2吸気口63B側に位置する下方の内側面65を第2内側面65Bということがある。また、一対の内側面66のうち、左右方向において一対の吸気口63側に位置する左方の内側面66を第1内側面66Aといい、左右方向において一対の排気口64側に位置する右方の内側面66を第2内側面66Bということがある。
【0070】
一対の内側面65の左端は、第1内側面66A間に架設されていて、一対の内側面65の右端は、第2内側面66B間に架設されている。一対の内側面65の間かつ一対の内側面66の間に一つの燃焼室28が区画されている。燃焼室28は、正面視において、四隅が丸められた矩形状に形成されている。正面視における燃焼室28の四隅に、一対の吸気口63及び一対の排気口64のいずれかが1つずつ配置されている。
【0071】
第1吸気口63Aを縁取る円形状の周縁63AAのうち、第1内側面65Aの左端部と第1内側面66Aの上端部とをつなぐ円弧部分を周縁63ABという。第2吸気口63Bを縁取る円形状の周縁63BAのうち、第2内側面65Bの左端部と第1内側面66Aの下端部とをつなぐ円弧部分を周縁63BBという。第1排気口64Aを縁取る円形状の周縁64AAのうち、第1内側面65Aの右端部と第2内側面66Bの上端部とをつなぐ円弧部分を周縁64ABという。第2排気口64Bを縁取る円形状の周縁64BAのうち、第2内側面65Bの右端部と第2内側面66Bの下端部とをつなぐ円弧部分を周縁64BBという。
【0072】
第1内側面65Aは、第1吸気口63Aの周縁63ABと第1排気口64Aの周縁64ABをつないでいる。第2内側面65Bは、第2吸気口63Bの周縁63BBと第2排気口64Bの周縁64BBをつないでいる。つまり、一対の内側面65は、一対の吸気口63の周縁63AB及び周縁63BBから一対の排気口64の周縁64AB及び周縁64BBまでそれぞれ延びている。
【0073】
一対の内側面65のそれぞれにおいて、対応する吸気口63の周縁63AB又は周縁63BBにつながった部分、つまり、吸気口63寄りの略左分の部分を上流部65Cという。一対の内側面65を構成する第1内側面65Aと第2内側面65Bとは、互いに接近するように湾曲している。そのため、一対の内側面65の上流部65C同士の間隔Eは、周縁63AB及び周縁63BBから右方へ離れるにつれて狭くなっている。この構成によっても、一対の吸気口63のそれぞれから燃焼室28に流入した直後の空気を、互いの間隔が広がらないように流すことができる(図6の太い実線矢印を参照)。これにより、エンジン20の燃焼室28において、ωスワール(図6の太い2点鎖線矢印を参照)の発生を抑制することができる。なお、一対の内側面66は、一対の内側面65のように互いに接近するように湾曲してもよいし、平行な状態で直線状に延びてもよいし、一方の内側面66が湾曲していて他方の内側面66が直線状に延びていてもよい。
【0074】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、間隔Dが吸気口63に近付くにつれて狭くなる構成(図5参照)と、間隔Eが一対の吸気口63の周縁63AB及び周縁63BBから離れるにつれて狭くなる構成(図6参照)とは、両方組み合わせて適用してもよいし、一方だけの構成を適用してもよい。
【0076】
例えば、過給器50は、前述した実施形態ではスーパーチャージャだけを含む。船外機4には、排気路46を通る排気によって駆動されるターボチャージャ(図示せず)が設けられてもよい。過給器50は、ターボチャージャだけを含んでもよいし、スーパーチャージャ及びターボチャージャの両方を含んでもよい。
【0077】
また、船外機4以外の船舶用推進機の一例として、船内外機や船内機やウォータージェットドライブを用いてもよい。船内外機は、エンジン20と同様に構成された船舶用エンジンが船内に配置され、推進ユニット(プロペラ37等)及び舵切り機構を含むドライブユニットが船外に配置されたものである。船内機は、船舶用エンジン及びドライブユニットがいずれも船体2に内蔵され、ドライブユニットから船外に延び出たプロペラシャフトにプロペラ37が取り付けられた形態を有する。この場合、舵取り機構は別途設けられる。ウォータージェットドライブは、船底から吸い込んだ水をポンプで加速し、船尾の噴射ノズルから噴射することで推進力を得るものである。この場合、ポンプは、船舶用エンジンによって駆動され、舵取り機構は、噴射ノズルと、この噴射ノズルを水平面に沿って回動させる機構とで構成される。船舶用エンジンでは、クランクシャフト27が前後方向に延びるように複数のシリンダ24が水平方向等に沿って直列配置されてもよい。
【0078】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。例えば、以上で説明した様々な特徴は、適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1:船舶、2:船体、4:船外機、20:エンジン、21:ドライブシャフト、22:プロペラシャフト、23:伝達機構、27:クランクシャフト、28:燃焼室、29:シリンダヘッド、36:プロペラ、50:過給器、51:インタークーラ、54:排気ポート、55:吸気ポート、55A:下流部、63:吸気口、63A:第1吸気口、63AB:周縁、63B:第2吸気口、63BB:周縁、64:排気口、64A:第1排気口、64AB:周縁、64B:第2排気口、64BB:周縁、65:内側面、65A:第1内側面、65B:第2内側面、65C:上流部、D:間隔、E:間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6