(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073139
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
F01N 13/10 20100101AFI20230518BHJP
B63H 20/24 20060101ALI20230518BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20230518BHJP
F01N 13/12 20100101ALI20230518BHJP
【FI】
F01N13/10
B63H20/24 100
F02F1/42 B
F01N13/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185988
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 慎也
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸一
(72)【発明者】
【氏名】前川 真也
【テーマコード(参考)】
3G004
3G024
【Fターム(参考)】
3G004AA05
3G004BA03
3G004DA01
3G024AA11
3G024DA17
3G024DA23
3G024EA11
(57)【要約】
【課題】エンジンの排気の圧力損失の低減を図ることができる船外機を提供する。
【解決手段】船外機4は、エンジン20と、中継排気管85と、中継排気管85に接続された下流排気管86と、エンジン20によって駆動されるプロペラとを含む。エンジン20は、垂直方向に沿って直列に配置された複数のシリンダ24と、複数のシリンダ24の燃焼室28からそれぞれ側方へ延びる複数の排気ポート54と、複数の排気ポート54に接続されて下方へ延びる上流排気管81とを含む。上流排気管81の下端部81Aは、上方から中継排気管85に接続されている。上流排気管81において下端部81Aよりも上方に位置する上流部81Bは、下方へ直線状に延びている。下端部81Aは、左右方向において上流部81Bよりも燃焼室28に接近して配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に沿って直列に配置された複数のシリンダと、前記複数のシリンダの燃焼室からそれぞれ側方へ延びる複数の排気ポートと、前記複数の排気ポートに接続されて下方へ延びる上流排気管と、を含むエンジンと、
前記上流排気管の下端部が上方から接続された中継排気管と、
前記中継排気管に接続された下流排気管と、
前記エンジンによって駆動されるプロペラと、
を含み、
前記上流排気管において前記下端部よりも上方に位置する上流部は、下方へ直線状に延び、
前記下端部は、左右方向において前記上流部よりも前記燃焼室に接近して配置されている、船外機。
【請求項2】
前記複数の排気ポートの全ては、前記上流部に接続されている、請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記エンジンは、前記燃焼室における吸排気のために回転するカムシャフトと、前記複数のシリンダの下方に配置されて前記カムシャフトを回転させるカムチェーンと、を含み、
前記上流排気管において、前記上流部は、前記カムチェーンよりも側方に配置され、前記下端部の少なくとも一部は、前記カムチェーンの真下に配置されている、請求項1又は2に記載の船外機。
【請求項4】
前記上流部の内面において前記上流排気管の中心軸線よりも前記燃焼室から側方へ離れた第1領域と、前記下端部の内面において前記中心軸線よりも前記燃焼室から側方へ離れた第2領域とは、面一になっている、請求項1~3のいずれか一項に記載の船外機。
【請求項5】
前記複数の排気ポートが設けられて前記上流排気管が一体形成されたシリンダヘッドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の船外機。
【請求項6】
前記中継排気管は、前記下端部が差し込まれる内管と、前記内管を取り囲む外管と、を含み、
前記内管と前記外管との間には、冷却水の流路が区画されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の船外機。
【請求項7】
前記エンジンは、前記燃焼室に接続された吸気路と、垂直方向に沿って配置されたクランクシャフトと、前記クランクシャフトの上端部に取り付けられて前記クランクシャフトと一体回転するロータと、を含み、
前記ロータの回転が伝達されることによって駆動され、前記吸気路を流れる空気を圧縮する過給器をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された船外機は、排気排出路が形成されたエンジンホルダと、エンジンホルダの上部に設置されたエンジンと、エンジンによって駆動されるプロペラと、排気マニホールドとを含む。エンジンは、垂直方向に沿って直列に配置された複数のシリンダが形成されたシリンダブロックと、シリンダブロックに対して後方から接続されたシリンダヘッドとを含む。シリンダヘッドには、複数のシリンダにそれぞれ対応する複数の燃焼室と、各燃焼室に繋がる排気ポートとが形成されている。排気マニホールドは、シリンダヘッドの側面とエンジンホルダの側面とに跨るように配置されている。排気マニホールド内には、シリンダブロックの各排気ポートとエンジンホルダの排気排出路とを繋ぐ排気通路が形成されている。排気通路は、各排気ポートから延びて排気マニホールド内で集合されて排気排出路に繋がっている。エンジンの作動に応じて各燃焼室内で発生した排気は、対応する排気ポートと、排気通路と、排気排出路とを流れてから船外機の外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の船外機では、シリンダヘッドの側面とエンジンホルダの側面とに跨るように配置された排気マニホールドの構造上、排気マニホールド内の排気通路の下端部は、折れ曲がって、エンジンホルダの排気排出路に対して側方から接続されている。この場合、排気通路を下方へ流れて排気通路の下端部に到達した排気は、排気排出路に流入するために、側方へ向きを変える必要があるので、排気の圧力損失が増大する場合がある。排気の圧力損失の増大は、エンジンの性能を低下させる要因の一つなので、排気の圧力損失を低減できると望ましい。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態は、エンジンの排気の圧力損失の低減を図ることができる船外機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、エンジンと、中継排気管と、前記中継排気管に接続された下流排気管と、前記エンジンによって駆動されるプロペラと、を含む、船外機を提供する。前記エンジンは、垂直方向に沿って直列に配置された複数のシリンダと、前記複数のシリンダの燃焼室からそれぞれ側方へ延びる複数の排気ポートと、前記複数の排気ポートに接続されて下方へ延びる上流排気管と、を含む。前記上流排気管の下端部は、上方から前記中継排気管に接続されている。前記上流排気管において前記下端部よりも上方に位置する上流部は、下方へ直線状に延びている。前記下端部は、左右方向において前記上流部よりも前記燃焼室に接近して配置されている。
【0007】
この構成により、船外機では、エンジンが駆動力を発生すると、プロペラが駆動されるので、船外機が推進力を発生する。エンジンにおいて直列に配置された複数のシリンダの燃焼室のそれぞれで発生した排気は、対応する排気ポートを側方へ流れた後に、上流排気管を下方へ流れてから中継排気管及び下流排気管を順に流れて、船外機の外に排出される。上流排気管では、下端部が、下端部よりも上方に位置する上流部よりも燃焼室に接近して配置されているので、上流排気管の下端部と中継排気管との接続部を燃焼室に接近して配置することができる。これにより、当該接続部が、左右方向における船外機の外方へ突出することを抑制できるので、左右方向における船外機のコンパクト化を図れる。
【0008】
上流排気管の上流部は、下方へ直線状に延びているので、上流部を下方へ流れる空気は、ほとんど向きを変えることなく、上流排気管の下端部に到達することができる。さらに、上流排気管の下端部は、中継排気管に対して上方から接続されているので、下方へ流れて排気通路の下端部に到達した排気は、ほとんど向きを変えることなく、中継排気管に流入することができる。これにより、上流排気管から中継排気管に向かう排気を円滑に流すことができるので、エンジンの排気の圧力損失の低減を図ることができる。
【0009】
本発明の一実施形態においては、前記複数の排気ポートの全ては、前記上流部に接続されている。
【0010】
この構成により、全ての燃焼室で発生した排気を上流排気管から中継排気管に向けて円滑に流すことができるので、エンジンの排気の圧力損失の一層の低減を図ることができる。
【0011】
本発明の一実施形態においては、前記エンジンは、前記燃焼室における吸排気のために回転するカムシャフトと、前記複数のシリンダの下方に配置されて前記カムシャフトを回転させるカムチェーンと、を含む。前記上流排気管において、前記上流部は、前記カムチェーンよりも側方に配置され、前記下端部の少なくとも一部は、前記カムチェーンの真下に配置されている。
【0012】
この構成により、上流排気管において、下端部を上流部よりも燃焼室に接近して配置することができる。
【0013】
本発明の一実施形態においては、前記上流部の内面において前記上流排気管の中心軸線よりも前記燃焼室から側方へ離れた第1領域と、前記下端部の内面において前記中心軸線よりも前記燃焼室から側方へ離れた第2領域とは、面一になっている。
【0014】
この構成により、上流排気管の排気は、上流部の第1領域及び下端部の第2領域に沿って下方へ流れることによって、ほとんど向きを変えることなく、下端部に到達することができるので、エンジンの排気の圧力損失の一層の低減を図ることができる。
【0015】
本発明の一実施形態においては、前記船外機は、前記複数の排気ポートが設けられて前記上流排気管が一体形成されたシリンダヘッドを含む。
【0016】
この構成により、エンジンのシリンダヘッドでは、複数の排気ポートと上流排気管とが一体形成されているので、エンジンのコンパクト化を図ることができる。
【0017】
本発明の一実施形態においては、前記中継排気管は、前記下端部が差し込まれる内管と、前記内管を取り囲む外管と、を含む。前記内管と前記外管との間には、冷却水の流路が区画されている。
【0018】
この構成により、中継排気管において上流排気管の下端部が接続される部分は、内管及び外管による二重構造を有するため、上流排気管の下端部と中継排気管との接続部が太くなり得る。しかし、前述したように、当該接続部を燃焼室に接近して配置することにより、当該接続部が、左右方向における船外機の外方へ突出することを抑制できるので、二重構造の中継排気管を採用しても、左右方向における船外機のコンパクト化を図れる。
【0019】
本発明の一実施形態においては、前記エンジンは、前記燃焼室に接続された吸気路と、垂直方向に沿って配置されたクランクシャフトと、前記クランクシャフトの上端部に取り付けられて前記クランクシャフトと一体回転するロータと、を含む。前記船外機は、前記ロータの回転が伝達されることによって駆動され、前記吸気路を流れる空気を圧縮する過給器をさらに含む。
【0020】
この構成により、ロータがエンジンの上方に配置されることによってエンジンの下方には存在しないので、上流排気管の下端部を上流部よりも燃焼室に接近して配置するためのスペースをエンジンの下方に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エンジンの排気の圧力損失の低減を図ることができる船外機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る船舶の模式的な平面図である。
【
図2】船舶に含まれる船外機の模式的な側面図である。
【
図3】船外機の吸排気系を説明するための模式図である。
【
図4】船外機におけるエンジンの要部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る船舶1の模式的な平面図である。船舶1は、船体2と、船体2に装備された操船装置3及び船外機4とを含む。操船装置3の一例は、船体2の操船席の周辺の操作台5に設けられたステアリングホイール6及びスロットルレバー7と、船外機4に内蔵されたECU(電子制御ユニット)8とステアリングホイール6及びスロットルレバー7とをつなぐ通信バス9とを含む。操船者は、操舵のためにステアリングホイール6を左右方向に回動させる。操船者は、船外機4の出力調整のためにスロットルレバー7を前後方向に回動させる。操舵及び船外機4の出力調整のために操船者によって操作されるジョイスティック10が操作台5に設けられてもよい。
【0024】
船外機4は、船体2に推進力を与える船舶用推進機の一例であって、単数又は複数設けられる。単数設けられる場合の船外機4は、船体2の船尾2A及び船首2Bを通って前後方向に沿う仮想の中心線C上において、船尾2Aに取り付けられる。複数設けられる場合の船外機4は、中心線Cに対して左右対称な位置において、船尾2Aに取り付けられる。
【0025】
図2は、船外機4の模式的な左側面図である。
図2における左方が、船外機4の前方であり、
図2における右方が、船外機4の後方である。
図2における上方が、船外機4の上方であり、
図2における下方が、船外機4の下方である。上下方向は、垂直方向でもある。
図2の紙面に直交する方向が船外機4の左右方向である。以下では、船外機4を後方から見たときを基準として船外機4の左右の向きを特定する。そのため、
図2の紙面に直交する方向における手前が、船外機4の左方であり、
図2の紙面に直交する方向における奥が、船外機4の右方である。
【0026】
船外機4は、船外機4を船尾2Aに取り付けるための取付機構11と、船外機本体12とを含む。取付機構11は、船尾2Aに固定されたクランプブラケット13と、水平に沿って左右方向に延びるチルトシャフト14を介してクランプブラケット13に連結されたスイベルブラケット15と含む。スイベルブラケット15は、上下方向に延びるステアリングシャフト16を介して船外機本体12に連結されている。これにより、船外機本体12は、概ね垂直な姿勢で、取付機構11によって船尾2Aに取り付けられている。
【0027】
船外機本体12及びスイベルブラケット15は、クランプブラケット13に対して、チルトシャフト14まわりに上下方向に回動可能である。船外機本体12がチルトシャフト14まわりに回動されることにより、船外機本体12が、船体2及びクランプブラケット13に対して傾けられる。船外機本体12は、クランプブラケット13及びスイベルブラケット15に対して、ステアリングシャフト16と共に左右方向に回動可能である。船外機本体12が左右方向に回動すると、船舶1が操舵される。
【0028】
船外機本体12は、ボックス状のエンジンカバー17と、エンジンカバー17から下方に延びる中空のケーシング18と、ケーシング18の内部空間を上方から塞ぐようにエンジンカバー17の下端部に取り付けられた板状のエキゾーストガイド19とを含む。ケーシング18の下端部は、ロアケース18Aである。船外機本体12は、エンジンカバー17内でエキゾーストガイド19の上面に搭載されたエンジン20と、ケーシング18内で上下方向に沿って配置されたドライブシャフト21と、ロアケース18A内に配置されたプロペラシャフト22及び伝達機構23とを含む。
【0029】
エンジン20は、船舶用エンジンであって、例えばガソリン等の燃料を燃焼させて動力を発生する内燃機関によって構成される。エンジン20は、単数又は複数のシリンダ24を有するシリンダブロック25と、シリンダ24内に1つずつ配置されたピストン26と、シリンダブロック25内において上下方向に沿って配置されてピストン26に連結されたクランクシャフト27とを含む。本実施形態におけるエンジン20は、4つのシリンダ24が上下方向に沿って直列に配置された直列四気筒エンジンである。
【0030】
各シリンダ24の内部空間は、前後方向に沿って延びる円筒状である。各シリンダ24の内部空間においてピストン26よりも後方の領域には、燃焼室28が区画されている。シリンダブロック25においてクランクシャフト27を収容した前部分は、クランクケース25Aである。
【0031】
エンジン20は、シリンダブロック25に対して後方から取り付けられたシリンダヘッド29と、シリンダヘッド29に対して後方から取り付けられたヘッドカバー30とを含む。シリンダヘッド29及びヘッドカバー30をシリンダブロック25の一部とみなしてもよい。シリンダヘッド29の前面において各シリンダ24の燃焼室28に対向する部分には、燃焼室28の一部として後方へ窪んだ凹部29Aが1つずつ設けられている。エンジン20は、それぞれの凹部29Aに露出される吸気バルブ31及び排気バルブ32と、上下方向に沿って延びてヘッドカバー30によって回転可能に支持されたカムシャフト33とを含む。カムシャフト33は、吸気バルブ31及び排気バルブ32のそれぞれに応じて一対設けられてもよい。
【0032】
クランクシャフト27は、上下方向に延びるクランク軸線27Aを有する。クランクシャフト27の上端部は、クランクケース25Aから上方へはみ出している。クランクシャフト27の下端部は、ドライブシャフト21の上端部に結合されている。エンジン20は、クランクシャフト27の上端部に固定されたフライホイールマグネト34と、クランクシャフト27の下端部とカムシャフト33の下端部とに掛け回されたカムチェーン35とを含む。フライホイールマグネト34は、クランクケース25Aよりも上方に配置されている。カムチェーン35は、シリンダブロック25内において4つのシリンダ24の下方に配置されている。
【0033】
各燃焼室28での混合気の燃焼によって、ピストン26が、クランク軸線27Aと直交する前後方向に往復直線移動する。ピストン26が往復直線移動すると、クランクシャフト27が、ドライブシャフト21を伴って、クランク軸線27Aまわりに駆動回転される。クランクシャフト27の回転に応じて、フライホイールマグネト34が回転して発電し、カムチェーン35が周回移動する。カムチェーン35の周回移動に応じて、カムシャフト33が回転する。カムシャフト33の回転に連動して吸気バルブ31及び排気バルブ32が作動する。これにより、各燃焼室28では、吸排気が行われる。
【0034】
プロペラシャフト22は、ロアケース18A内において、前後方向に沿って水平方向に延びている。ドライブシャフト21の下端部は、伝達機構23によってプロペラシャフト22の前端部に連結されている。プロペラシャフト22の後端部は、ロアケース18Aから後方に突出している。プロペラシャフト22の後端部には、船外機4を構成する推進ユニットの一例としてのプロペラ36が結合されている。プロペラシャフト22は、前後方向に延びる回転軸線22Aまわりにプロペラ36と共に回転する。
【0035】
伝達機構23は、ドライブシャフト21の回転をプロペラシャフト22に伝達するための構成である。伝達機構23は、ドライブシャフト21の下端部に固定された駆動歯車38と、プロペラシャフト22の前端部に取り付けられた回転体39及びドッグクラッチ40とを含む。駆動歯車38は、傘歯車である。プロペラシャフト22は、駆動歯車38の下方に配置されている。回転体39は、プロペラシャフト22に沿って前後方向に並んで配置された第1回転体41及び第2回転体42を含む。第1回転体41及び第2回転体42は、例えば筒状の傘歯車である。
【0036】
本実施形態では、第1回転体41が駆動歯車38よりも前方に配置され、第2回転体42が駆動歯車38よりも後方に配置されるが、第1回転体41と第2回転体42との前後の位置関係は、本実施形態と逆であってもよい。第1回転体41の後面において、テーパー状の外周部には歯部41Aが形成され、内周部には爪部41Bが形成されている。第2回転体42の前面において、テーパー状の外周部には歯部42Aが形成され、内周部には爪部42Bが形成されている。
【0037】
第1回転体41は、プロペラシャフト22の前端部において駆動歯車38よりも前方の部分を取り囲み、第2回転体42は、プロペラシャフト22の前端部において駆動歯車38よりも後方の部分を取り囲んでいる。第1回転体41及び第2回転体42は、互いの歯部41A及び42Aが前後方向に間隔を空けて向かい合うように配置され、駆動歯車38に噛み合っている。エンジン20の駆動に伴って駆動歯車38がドライブシャフト21と一体回転すると、駆動歯車38の回転が第1回転体41及び第2回転体42に伝達される。これにより、第1回転体41及び第2回転体42は、プロペラシャフト22の回転軸線22Aまわりに、互いに逆向きに回転する。
【0038】
ドッグクラッチ40は、第1回転体41及び第2回転体42の間に配置されている。ドッグクラッチ40は、例えば筒状であって、プロペラシャフト22の前端部を取り囲んでいる。ドッグクラッチ40の前端面には、第1爪部40Aが形成され、ドッグクラッチ40の後端面には、第2爪部40Bが形成されている。ドッグクラッチ40は、例えばスプラインによって、プロペラシャフト22の前端部に連結されている。したがって、ドッグクラッチ40は、プロペラシャフト22の前端部と共に回転する。さらに、ドッグクラッチ40は、プロペラシャフト22の前端部に対して前後方向に移動可能である。つまり、ドッグクラッチ40は、プロペラシャフト22に対して一体回転可能かつ前後方向に沿って相対移動可能である。
【0039】
伝達機構23は、ロアケース18A内でプロペラシャフト22よりも前方に配置されたシフト機構43も含む。シフト機構43は、例えば、上下方向に延びるシフトロッド44と、シフトロッド44に結合された電動のシフトアクチュエータ45とを含む。シフトロッド44の下端部は、ドッグクラッチ40に連結されている。シフトアクチュエータ45がECU8(
図1参照)の制御によって作動すると、シフトロッド44は、シフトロッド44の軸線まわりに回動する。ドッグクラッチ40は、シフトロッド44が回動されることにより、切断位置と接続位置との間において前後方向に沿って移動される。
【0040】
切断位置は、
図2に示すようにドッグクラッチ40が第1回転体41及び第2回転体42から離れて、これらの回転体39のいずれにも噛み合わない位置である。ドッグクラッチ40が切断位置に配置されている状態では、ドライブシャフト21の回転が伝達される各回転体39は、空転するので、ドライブシャフト21の回転がプロペラシャフト22に伝達されない。以下、このときの船外機4のシフト位置を「ニュートラル」という。
【0041】
接続位置は、ドッグクラッチ40が第1回転体41及び第2回転体42のどちらかと噛み合う位置である。接続位置は、ドッグクラッチ40の第1爪部40Aが第1回転体41の爪部41Bとだけ噛み合う第1接続位置と、ドッグクラッチ40の第2爪部40Bが第2回転体42の爪部42Bとだけ噛み合う第2接続位置とを含む。切断位置は、第1接続位置と第2接続位置との間の位置である。第1接続位置は、切断位置よりも前方であり、第2接続位置は、切断位置よりも後方である。
【0042】
ドッグクラッチ40が第1接続位置に配置されて第1回転体41だけに連結された状態では、第1回転体41の回転がプロペラシャフト22に伝達されるので、船外機4のシフト位置は「前進」にシフトインされる。すると、ドライブシャフト21の回転が、第1回転体41及びドッグクラッチ40を介してプロペラシャフト22に伝達されることにより、プロペラ36が前進回転方向(例えば、後方から見て時計回り)に回転する。これにより、プロペラ36が、エンジン20によって駆動されて前進方向の推進力を発生する。
【0043】
ドッグクラッチ40が第2接続位置に配置されて第2回転体42だけに連結された状態では、第2回転体42の回転がプロペラシャフト22に伝達されるので、船外機4のシフト位置は「後進」にシフトインされる。すると、ドライブシャフト21の回転が、第2回転体42及びドッグクラッチ40を介してプロペラシャフト22に伝達されることにより、プロペラ36が、前進回転方向とは反対の後進回転方向に回転する。これにより、プロペラ36が、エンジン20によって駆動されて後進方向の推進力を発生する。このように、本実施形態では、第1回転体41が前進用歯車であって第2回転体42が後進用歯車である。もちろん、第1回転体41が後進用歯車であって、第2回転体42が前進用歯車であってもよい。
【0044】
船外機本体12は、船外機本体12の内部に設けられてエンジン20に接続された排気路46を含む。排気路46は、エキゾーストガイド19を上下方向に貫通してケーシング18内で下方に延び、プロペラ36内で後方へ延びている。排気路46は、プロペラ36の後端面に設けられた出口46Aを含む。船舶1が水に浮かべられてプロペラ36が水面よりも下方に位置する状態では、出口46Aは、水中に位置しているので、出口46Aを通過した水が、排気路46の下流部に進入している。一方、エンジン20が高速回転しているときには、排気路46内の水が、エンジン20からの排気の圧力によって押されて、排気と共に出口46Aから排出される。これにより、エンジン20で生成された排気が水中に排出される。
【0045】
船外機本体12には、例えば前方へ延びる操舵ロッド47が固定されている。操舵ロッド47には、ECU8によって制御される電動の操舵アクチュエータ48が結合されている。操舵アクチュエータ48が作動することによって、船外機本体12をステアリングシャフト16まわりに回動させることができるので、操舵を行うことができる。
【0046】
図3は、船外機4の吸排気系49を説明するための模式図である。吸排気系49は、エンジン20と、空気を圧縮してエンジン20に供給する過給器50と、過給器50によった圧縮された空気を冷却するインタークーラ51とを含む。
【0047】
吸排気系49に関連して、エンジン20は、前述した排気路46と、吸気路52と、吸気路52内に配置された電動のスロットルバルブ53とを含む。排気路46は、エンジン20のシリンダヘッド29に設けられた複数の排気ポート54を介して各燃焼室28に接続されている。吸気路52は、シリンダヘッド29に設けられた複数の吸気ポート55を介して各燃焼室28に接続されている。吸気路52において吸気ポート55とは反対の端部には入口52Aが設けられている。ECU8がスロットルバルブ53を制御することによって、スロットルバルブ53の開度が調節される。
【0048】
過給器50は、吸気路52の途中に介装されている。過給器50は、エンジン20のクランクシャフト27の回転によって駆動されるスーパーチャージャである。過給器50は、吸気路52の一部を構成する内部空間を有するハウジング50Aと、ハウジング50A内に配置されたコンプレッサーホイール50Bと、コンプレッサーホイール50Bに対して同軸で固定された回転軸50Cとを含む。回転軸50Cにおいてコンプレッサーホイール50Bから離れた端部は、ハウジング50Aの外に配置されていて、この端部には、ロータ56が同軸で固定されている。
【0049】
吸排気系49は、クランクシャフト27と過給器50との間を結合する動力伝達機構を含む。動力伝達機構の一例は、前述したロータ56と、クランクシャフト27の取り付けられた別のロータ57と、ロータ56とロータ57とをつなぐベルト58とを有する。ロータ56及びロータ57のそれぞれの一例は、プーリである。ロータ57は、クランクシャフト27の上端部においてフライホイールマグネト34よりも上方の部分に取り付けられている(
図2参照)。
【0050】
クランクシャフト27が回転すると、ロータ57は、クランクシャフト27と一体回転する。ロータ57の回転は、ベルト58を介してロータ56に伝達される。すると、回転軸50Cがコンプレッサーホイール50Bと一体回転することによって、過給器50が駆動される。なお、ロータ56及びロータ57のそれぞれとして、プーリの代りにスプロケットを用いて、ベルト58の代りにチェーンを用いてもよい。
【0051】
スロットルバルブ53が開いた状態で過給器50が作動すると、入口52Aから取り込まれて吸気路52内を流れる空気が、ハウジング50A内で回転するコンプレッサーホイール50Bによって圧縮される。なお、過給器50として、
図3で図示した遠心式に限らず、リショルム式等の他の構成も採用できる。
【0052】
インタークーラ51は、吸気路52においてエンジン20の各吸気ポート55と過給器50との間に介装されている。インタークーラ51は、吸気路52の一部を構成する内部空間を有するハウジング51Aと、冷却フィン(図示せず)とを有する。インタークーラ51として、空冷式及び水冷式のいずれを用いてもよい。インタークーラ51は、ハウジング51Aから延びて吸気ポート55に接続されたインテークマニホールド51Bを含む。インテークマニホールド51Bは、ハウジング51Aと一体形成されている。
【0053】
過給器50のハウジング50A内でコンプレッサーホイール50Bによって圧縮された空気は、吸気路52を引き続き流れることによってインタークーラ51に導かれ、インタークーラ51のハウジング51A内での冷却フィンとの熱交換によって冷却される。インタークーラ51によって冷却された空気は、インテークマニホールド51Bを流れた後に混合気となって、吸気ポート55からシリンダ24内の燃焼室28に供給されて燃焼される。燃焼によって発生した排気は、排気ポート54から排気路46を流れた後に、前述したように出口46Aから水中に排出される。
【0054】
図4は、ヘッドカバー30が取り外された状態におけるエンジン20の要部の背面図である。
図4では、エンジン20の吸排気系49に含まれる排気構造80が図示されている。排気構造80は、複数の排気ポート54と、これらの排気ポート54の左方に配置された上流排気管81とを含む。前述したシリンダヘッド29は、複数(本実施形態では4つ)のシリンダ24に跨るように上下方向に長手である。シリンダヘッド29には、シリンダ24と同数の凹部29A(燃焼室28の一部)がシリンダヘッド29に設けられている。
【0055】
以下では、上下方向に並ぶ4つのシリンダ24のうち、上端のシリンダ24を第1シリンダ24Aということがあり、第1シリンダ24Aの下隣のシリンダ24を第2シリンダ24Bということがある。第2シリンダ24Bの下隣のシリンダ24を第3シリンダ24Cということがあり、第3シリンダ24Cの下隣のシリンダ24つまり下端のシリンダ24を第4シリンダ24Dということがある。
【0056】
第1シリンダ24Aを参照して、シリンダヘッド29の後面において背面視で燃焼室28と重なる領域には、吸気口82及び排気口83がそれぞれ一対ずつ設けられている。吸気口82及び排気口83のそれぞれは、シリンダヘッド29を前後方向又は略前後方向に貫通した丸穴である。吸気口82には吸気バルブ31が1つずつ配置され、排気口83には排気バルブ32が1つずつ配置されている(図示せず)。
【0057】
一つの燃焼室28に対応する吸気口82及び排気口83では、上下方向に沿って並んだ一対の排気口83が、上下方向に沿って並んだ一対の吸気口82よりも左方に配置されている。一対の吸気口82及び一対の排気口83は、燃焼室28に後方から連通している。前述した吸気ポート55は、吸気口82と同数(本実施形態では8つ)設けられ、これらの吸気ポート55は、例えば円管状の管路であって、吸気口82に1つずつ接続されている(図示せず)。
【0058】
前述した排気ポート54は、例えば円管状の管路であって、シリンダヘッド29において、シリンダ24毎つまり燃焼室28毎に一対ずつ、本実施形態では合計で8つ設けられている。これらの排気ポート54は、排気口83に1つずつ接続されている。これにより、複数の排気ポート54は、複数の燃焼室28にそれぞれ接続されて、これらの燃焼室28からそれぞれ側方、具体的には左方へ延びている。各燃焼室28に接続された一対の排気ポート54は、上下方向に並んでいる。
【0059】
以下では、第1シリンダ24Aの燃焼室28に接続された一対の排気ポート54を一対の第1排気ポート54Aということがあり、第2シリンダ24Bの燃焼室28に接続された一対の排気ポート54を一対の第2排気ポート54Bということがある。第3シリンダ24Cの燃焼室28に接続された一対の排気ポート54を一対の第3排気ポート54Cということがあり、第4シリンダ24Dの燃焼室28に接続された一対の排気ポート54を一対の第4排気ポート54Dということがある。一対の第2排気ポート54Bは、一対の第1排気ポート54Aの下隣に配置され、一対の第3排気ポート54Cは、一対の第2排気ポート54Bの下隣に配置され、一対の第4排気ポート54Dは、一対の第3排気ポート54Cの下隣に配置されている。
【0060】
シリンダヘッド29において第4シリンダ24Dの燃焼室28よりも下方の下端部には、左右方向に長手のスペース84が設けられている。船外機4の縦断面背面図である
図5に示すように、スペース84には、カムチェーン35の一部と、カムチェーン35用の潤滑油とが配置されている。
図5では、排気構造80以外の構成の図示が省略されている。前述したように、クランクシャフト27の上端部にフライホイールマグネト34が取り付けられている(
図2参照)。フライホイールマグネト34は、重量物であるので、クランクシャフト27に捩じり共振が発生しないように、フライホイールマグネト34の位置をできる限り低くする必要があり、これに応じて本実施形態では、カムチェーン35がシリンダヘッド29の下端部のスペース84に配置されている。
【0061】
図6は、
図5から要部を抜き出した拡大図である。上流排気管81は、上下方向に沿って下方へ延びる管であり、その内面は、上下方向に延びる筒状(例えば円筒状又は略円筒状)に形成されている。上流排気管81は、シリンダヘッド29の各排気ポート54に一体形成されている。これにより、エンジン20のコンパクト化(本実施形態では、特に左右方向におけるコンパクト化)を図ることができる。上流排気管81に関連して、排気構造80は、エンジン20を下方から支持するエキゾーストガイド19を上下方向に貫通するように設けられた中継排気管85と、中継排気管85の下端に接続されて下方へ延びる下流排気管86とを含む。上流排気管81、中継排気管85及び下流排気管86は、前述した排気路46を構成している。
【0062】
上流排気管81は、下端部81Aと、下端部81Aよりも上方に位置する上流部81Bとを含む。以下の説明では、下端部81Aを円筒状であることを前提としているが、下端部81Aは、角筒状であってもよい。上流部81Bも同様である。下端部81Aは、中継排気管85に対して上方から接続されている。中継排気管85は、下端部81Aが差し込まれる内管85Aと、内管85Aを取り囲む外管85Bとを含み、エキゾーストガイド19の左端部に一体化されている。内管85Aと外管85Bとの間には、冷却水の流路85Cが区画されている。
【0063】
流路85Cは、ケーシング18の外面に形成された入口(図示せず)及び出口(図示せず)を含み、冷却ジャケットとしてエンジン20にも行き渡るように構成されている。ドライブシャフト21の回転に連動して作動するポンプ(図示せず)が、入口から外部の水を取り込んで流路85Cに流して出口から排出する。流路85Cを流れる水は、冷却水としてエンジン20を冷却する。
【0064】
上流排気管81の下端部81Aには、その下端を構成する円筒状の小径部81AAと、小径部81AAよりも大径の大径部81ABとが設けられている。中継排気管85の内管85Aの内周面において上端よりも少し下方の位置には、円環状の第1段部85Dが設けられている。外管85Bの上端部は、内管85Aの上端部よりも上方にはみ出している。中継排気管85には、内管85Aの上端から水平に広がって外管85Bに繋がった円環状の第2段部85Eが設けられている。
【0065】
小径部81AAは、内管85Aの上端部によって囲まれた状態で第1段部85Dに上方から対向している。大径部81ABは、外管85Bの上端部によって囲まれた状態で第2段部85Eに上方から対向している。小径部81AAと内管85Aの上端部との隙間がOリング等のシール部材87によって塞がれていて、大径部81ABと外管85Bの上端部との隙間がOリング等のシール部材88によって塞がれている。これにより、流路85Cを流れる水が下端部81Aと中継排気管85との隙間から漏れることが抑制される。なお、内管85Aにおいて第1段部85Dよりも下方の部分の内径は、小径部81AAの内径つまり上流排気管81の下端部81Aの内径と同じ、または、小径部81AAの内径よりも少し大きい。
【0066】
上流排気管81の上流部81Bは、下方へ直線状に延びている。一対の第1排気ポート54Aは、下方へ湾曲して合流した状態で、上流部81Bの上端に上方から接続されている。一対の第2排気ポート54Bは、下方へ湾曲して合流した状態で、上流部81Bに右方から接続されている。一対の第3排気ポート54Cは、下方へ湾曲して合流した状態で、上流部81Bに右方から接続されている。一対の第4排気ポート54Dは、下方へ湾曲して合流した状態で、上流部81Bに右方から接続されている。つまり、複数の排気ポート54の全てが上流部81Bに接続されている。
【0067】
上流排気管81において、上流部81Bは、シリンダヘッド29の下端部のスペース84内のカムチェーン35よりも左方に配置され、下端部81Aの少なくとも一部は、カムチェーン35の真下に配置されている。そのため、下端部81Aは、左右方向において上流部81Bよりも5~10mm程度、燃焼室28に接近して、つまり上流部81Bよりも右方に配置されている。
【0068】
以上のように、この実施形態によれば、エンジン20において直列に配置された複数のシリンダ24の燃焼室28のそれぞれで発生した排気は、対応する排気ポート54を左方へ流れた後に、上流排気管81を下方へ流れてから中継排気管85及び下流排気管86を順に流れて、排気路46の出口46A(
図2参照)から船外機4の外に排出される。
【0069】
上流排気管81では、下端部81Aが、下端部81Aよりも上方に位置する上流部81Bよりも燃焼室28に接近して配置されているので、上流排気管81の下端部81Aと中継排気管85との接続部89を燃焼室28に接近して配置することができる。これにより、接続部89が左右方向における船外機4の外方へ突出することを抑制できる。この場合、エンジンカバー17において接続部89の周辺の部分90(
図7参照)が左右方向における船外機4の外方へ突出することを抑制できるので、左右方向における船外機4のコンパクト化を図れる。そのため、複数の船外機4を左右方向に並べて船舶1に搭載する場合において、隣り合う船外機4間での干渉を抑制できる。
【0070】
ロータ57が、前述したようにエンジン20の上方に配置されることによって、エンジン20の下方には存在しない。これにより、上流排気管81の下端部81Aを上流部81Bよりも燃焼室28に接近して配置するためのスペース91をエンジン20の下方に確保することができる。
【0071】
上流排気管81の上流部81Bは、下方へ直線状に延びているので、上流部81Bを下方へ流れる空気は、ほとんど向きを変えることなく、上流排気管81の下端部81Aに到達することができる(
図6における太い実線矢印X1を参照)。さらに、上流排気管81の下端部81Aは、中継排気管85に対して上方から接続されているので、下方へ流れて排気通路の下端部81Aに到達した排気は、ほとんど向きを変えることなく、最短経路で中継排気管85に流入することができる(
図6における太い実線矢印X2を参照)。これにより、上流排気管81から中継排気管85に向かう排気を円滑に流すことができるので、エンジン20の排気の圧力損失の低減を図ることができる。本実施形態のように過給器50が装備されることによって排気の量が比較的多くなる構成では、排気の圧力損失の低減を図ることができることによるメリットが特に大きい。
【0072】
この実施形態においては、複数の排気ポート54の全ては、上流部81Bに接続されている。この構成により、全ての燃焼室28で発生した排気を上流排気管81から中継排気管85に向けて円滑に流すことができるので、エンジン20の排気の圧力損失の一層の低減を図ることができる。また、カムチェーン35を配置するためのスペース84も確保できる。
【0073】
この実施形態においては、上流部81Bの内面において上流排気管81の中心軸線Vよりも燃焼室28から左方へ離れた第1領域81Cと、下端部81Aの内面において中心軸線Vよりも燃焼室28から左方へ離れた第2領域81Dとは、面一になっている。中心軸線Vは、上流排気管81の内面の中心(上流排気管81の流路断面の中心)を通る仮想線である。
【0074】
この構成により、上流排気管81の排気は、上流部81Bの第1領域81C及び下端部81Aの第2領域81Dに沿って下方へ流れることによって、ほとんど向きを変えることなく、下端部81Aに到達することができる(
図6における太い実線矢印X1及びX2を参照)。そのため、エンジン20の排気の圧力損失の一層の低減を図ることができる。
【0075】
なお、上流排気管81内では、下方へ向かうにつれて各排気ポート54から排気が合流することによって流量が増えるので、第1領域81Cにおいて比較的流量が少ない上部81CAは、上方へ向かうにつれて燃焼室28側へ傾斜するように構成されてもよい。一方、上流部81Bの内面において燃焼室28寄りの第3領域81Eは、右方へ湾曲した後に下方へ直線状に延びるように構成されている。これに応じて、中心軸線Vは、上流部81Bでは上下方向に沿って延びているが、下端部81Aでは少し右方へずれて下方へ延びている。
【0076】
また、上流排気管81の流路断面積は、上流部81Bと下端部81Aとにわたって一定及び略一定になるように構成されているので、エンジン20の排気の圧力損失の一層の低減を図ることができる。上流部81Bの流路断面積と下端部81Aの流路断面積とを同じにするために、下端部81Aの流路断面を例えば左右方向に長手となるように構成してもよい。
【0077】
また、中継排気管85において上流排気管81の下端部81Aが接続される部分は、内管85A及び外管85Bによる二重構造を有するため、上流排気管81の下端部81Aと中継排気管85との接続部89が太くなり得る。しかし、前述したように、接続部89を燃焼室28に接近して配置することにより、接続部89が、左右方向における船外機4の外方へ突出することを抑制できるので、二重構造の中継排気管85を採用しても、左右方向における船外機4のコンパクト化を図れる。
【0078】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、以上で説明した様々な特徴は、適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0079】
4:船外機、20:エンジン、24:シリンダ、27:クランクシャフト、28:燃焼室、29:シリンダヘッド、33:カムシャフト、35:カムチェーン、36:プロペラ、50:過給器、52:吸気路、54:排気ポート、57:ロータ、81:上流排気管、81A:下端部、51B:上流部、51C:第1領域、51D:第2領域、85:中継排気管、85A:内管、85B:外管、85C:流路、86:下流排気管、V:中心軸線