(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073156
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】表面実装可能な薄型圧電ブロアデバイスナ
(51)【国際特許分類】
F04B 45/04 20060101AFI20230518BHJP
F04B 45/047 20060101ALI20230518BHJP
F04B 43/02 20060101ALI20230518BHJP
F04B 43/04 20060101ALI20230518BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20230518BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
F04B45/04 D
F04B45/047 C
F04B43/02 D
F04B43/04 B
B23K20/00 310L
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186020
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】721010814
【氏名又は名称】椛澤 康成
(72)【発明者】
【氏名】椛澤 康成
【テーマコード(参考)】
3C081
3H077
4E167
【Fターム(参考)】
3C081AA11
3C081AA13
3C081BA03
3C081BA22
3C081BA23
3C081BA25
3C081BA45
3C081BA48
3C081BA55
3C081CA13
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA11
3C081EA03
3C081EA05
3C081EA31
3C081EA39
3H077AA12
3H077BB10
3H077CC02
3H077CC09
3H077DD06
3H077EE36
3H077FF12
3H077FF36
4E167AA03
4E167DA02
4E167DA07
(57)【要約】
【課題】携帯端末に代表される小型・薄型の機器に内蔵して高圧で大流量のエアを扱いたいアプリケーションは多く存在するが、適用可能な圧電ブロアデバイスが今までなかった。
【解決手段】小型化して駆動周波数が高くなった時に、一方向弁の揺動が追従するよう、変位揺動するダイヤフラム内の中心に一方向弁機能を設け、圧電素子中心部に穿った穴から流体を整流するようにした。また、強度の高い金属材料を積層接合することによってキャビティ及びブロア筐体を構成した。また、予め携帯端末に実装することを想定した電気接続や流路接続の形態を構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子の振動によって反復可動する厚さ100μm以下で且つ3層で金属箔にて積層接合されたダイヤフラムの中心内部に、厚さ10μm以下のフラップ弁とフラップ弁の上に弁揺動空間を設け、ダイヤフラムの反復可動でフラップ弁を強制的に揺動させ流体の流れを整流し、ダイヤフラムの直下に形成された円形キャビティの中心とダイヤフラム内に内蔵したフラップ弁の可動中心と圧電素子の中心部に穿たれた穴を一致させ、圧電素子の中心部に穿たれた穴を通して一方向に外部に流体を送出するように構成した圧電ブロアであって、ダイヤフラム表面に絶縁層及び導電層を形成して圧電素子を駆動するための電気的接続用ランドを付設し、また同時にダイヤフラム表面に流体導入口を設けた構成であることを特徴とする薄型圧電ブロアデバイス。
【請求項2】
請求項1に示す薄型圧電ブロアデバイスで、フラップ弁を内蔵する厚さ100μm以下の積層ダイヤフラムは、複数(3層)の金属箔を積層し、金属拡散接合法によって一体的に製造することを特徴とする構成。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に示す薄型圧電ブロアデバイスで、ブロア本体を構成する円形キャビティ及び流体導入流路も同様に金属箔を積層し、金属拡散接合法によって一体的に製造することを特徴とする構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に代表される小型電子機器等、に内蔵するのに好適な薄型の圧電ブロアデバイスの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子をアクチュエータとして高周波領域の駆動周波数でダイヤフラムを稼働させ、気体を送出する圧電ブロアデバイス、特に小型化を想定して考案された構成は、古くから数多く出願され、以下のような構成例がある。 (特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)
【0003】
特許文献1では、ポンプ本体と、駆動手段によって変位する変位器と、この変位器と上記ポンプ本体との間に形成されるポンプ室とを備え、上記ポンプ室は逆止弁を有しない第1開口部と第2開口部とを介して入口と出口とに流体的に連結され、上記変位器はポンプ本体に固定されたプレート状またはダイヤフラム状の部材で構成され、上記ポンプ本体にはポンプ室を構成する凹部が設けられ、上記ポンプ室と境界を接する弾性バッファが設けられ、上記駆動手段の作動力は変位器の上記第1開口部と対向する部分に作用するものであり、上記変位器はその第1終端位置において第1開口部を閉じ、かつ第2終端位置において第1開口部を開放状態とし、上記駆動手段は上記変位器を動作させることにより、上記変位器の動きに基づいて上記バッファの変形を引き起こし、バッファの変形により第2開口部を介して流体を排出または流入させる、逆止弁を有しない、流体ポンプの事例が示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される構成においては、変位器の動作によって変化するポンプ容積>>バッファ内容積という関係が成り立たないと大きな差圧が発生しないため、気体のような圧縮性流体を扱う場合はバッファの変形を引き起こすのには非常に小さいバッファ容積に限定しなければならない。したがって排出される流体量は小さく、またバッファの復元力による流体排出であるので、出口側の背圧も小さいという問題があった。
【0005】
特許文献2では、ピストンあるいはダイヤフラム等の可動壁を変位させるアクチュエータと、該アクチュエータを駆動制御する駆動手段と、前記可動壁の変位により容積が変更可能なポンプ室と、前記ポンプ室へ動作流体を流入させる入口流路と、前記ポンプ室から動作流体を流出させる出口流路とを備えたポンプで、前記出口流路は、ポンプ動作時に前記ポンプ室と連通し、前記入口流路の合成イナータンス値は前記出口流路の合成イナータンス値よりも小さく、前記入口流路は、ポンプ室に動作流体が流入する場合の流体抵抗が流出する場合の流体抵抗よりも小さくなる流体抵抗要素を備え、前記駆動手段は、前記可動壁の運動周期を変更する周期制御手段を備え、当該周期制御手段は、前記ホンプ室の圧力が絶対0 気圧に達したときに、前記可動壁のポンプ室容積圧縮工程が開始するように前記アクチュエータを駆動する、流体ポンプの事例が示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に示される構成では、ピストンあるいはダイヤフラムを稼働させるアクチュエータとして、上下方向に伸縮する圧電素子を想定しており、一般的に圧電素子の上下方向の伸縮は非常に小さいため、大きな変位を得るには積層型の圧電素子を使用することが必須となり、ポンプの高さが大きくなって薄型の携帯端末には実装することは困難であるという問題があった。
【0007】
特許文献3では、ダイヤフラムとの間でブロア室を形成するブロア本体の第1壁部と、前記ダイヤフラムの中心部と対向する前記第1壁部の部位に形成され、ブロア室の内部と外部とを連通させる第1開口部と、前記第1壁部を間にしてブロア室と反対側に、第1壁部と間隔をあけて設けられた第2壁部と、前記第1開口部と対向する前記第2壁部の部位に形成された第2開口部と、前記第1壁部と第2壁部との間に形成され、外側端部が外部に連通され、内側端部が第1開口部及び第2開口部に接続された流入通路とを備え、前記第1開口部及び第2開口部と接続された流入通路の内側端部に、前記第1開口部及び第2開口部より大きな開口面積を有する中央空間が形成されており、前記ダイヤフラムの変位に伴い、前記第1壁部の前記中央空間と対向する部分が振動する、圧電マイクロブロアの事例が示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3に示される構成では慣性力により圧縮性流体を送出できるものの、逆止弁は存在していないため外圧に対する流量変動が大きく、本デバイスが搭載されたアプリケーションでは製品機能が極端に限定されるという問題があった。圧電ブロアデバイスとして小型化されても、圧縮性流体を大流量で且つ高圧で送出できる構成であることが望ましい。
【0009】
特許文献4では、第1振動板と、前記第1振動板に対向する第2振動板と、前記第1振動板の周縁部および前記第2振動板の周縁部を接続する周壁部と、前記第1振動板および前記第2振動板の間に位置し、前記第1振動板、前記第2振動板および前記周壁部によって規定されたポンプ室と、前記第1振動板および前記第2振動板を屈曲振動させることにより、前記ポンプ室に圧力変動を生じさせる駆動体とを備え、前記第1振動板には、前記第1振動板の中央部および前記第2 振動板の中央部に直交する軸線の延在方向に沿って見た場合に当該軸線に重なる位置に配置されるとともに、逆止弁が付設されていない第1孔部が設けられ、前記第1振動板および前記第2振動板の少なくとも一方には、前記軸線の延在方向に沿って見た場合に前記第1孔部に重ならない位置に配置されるとともに、逆止弁が付設された第2 孔部が設けられ、前記第1 振動板および前記第2 振動板の少なくとも一方には、前記軸線を中心としつつ当該軸線の延在方向に沿って見た場合に前記第2孔部が設けられた領域よりも外側の領域に配置されるとともに、逆止弁が付設されていない第3孔部がさらに設けられている、流体ポンプの事例が示されている
【0010】
特許文献4に示される事例は、従来例に比して流量の増大を図ることができる構造として提案されているが、この事例に関しても高い吐出圧が得られる原理構造は記述されておらず、非圧縮性流体を大流量で且つ高圧で送出することが必要なアプリケーションを前提とした薄型の携帯端末へ搭載することができないという問題があった。
【0011】
特許文献5では、 流体を収容するためのキャビティを画定する実質的に円筒状の形状を有し、前記キャビティが両端において実質的に円形の端壁により閉じられた側壁により形成され、前記端壁のうちの少なくとも一方は駆動される端壁であり、前記駆動される端壁が中央部と、該駆動される端壁の中央部から半径方向外側に向かって延びる周縁部とを有するポンプ本体と、 前記駆動される端壁の前記中央部に動作的に関連されて、該駆動される端壁の振動運動を生じさせ、これにより、使用時において前記駆動される端壁の該端壁に実質的に垂直な方向の変位振動を、前記駆動される端壁の中心と前記側壁との間に環状のノードを伴って発生させるアクチュエータと、 前記駆動される端壁の前記周縁部と動作的に関連されて、前記変位振動の減衰を減少させるアイソレータと、 前記キャビティにおける前記環状のノードの位置以外の何れかの位置に配設されると共に、前記ポンプ本体を経て延在する第1 開口と、 前記ポンプ本体における前記第1 開口の位置以外の何れかの位置に配設されると共に、前記ポンプ本体を経て延在する第2 開口と、 前記第1 開口及び前記第2 開口のうちの少なくとも一方に配設されるバルブと、を有し、使用時に、前記変位振動が前記ポンプ本体の前記キャビティ内に前記流体の対応する半径方向の圧力振動を発生して、前記第1 及び第2 開口を経る流体の流れを生じさせるポンプ、の事例が示されている。
【0012】
特許文献5に示される事例では、垂直方向に振動するアクチュエータによって円筒形キャビティの半径方向に音響定在波を形成し、これによって円筒形キャビティ中心付近に大振幅圧力振動を発生させている。特許文献3,及び特許文献4に比べて圧縮性流体を高圧に送出する原理構成として優れた提案である。しかしながら、この構成に基づいてより小型のブロアを製作しようとすると以下の問題があった。1つ目は小型のブロアを製作するためにキャビティ径を小さく設計した場合、キャビティ径が小さくなることによる共振周波数の増大で、差圧により従動する原理で構成されたバルブ(一方向弁)の揺動が共振周波数に追い付かなくなり、一方向弁としての機能が得られなくなる可能性があること。小型化しても大流量で且つ高圧であるという両方を要求するようなアプリケーションに対して、十分に満足するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3035854号公報
【特許文献2】特許第5003700号公報
【特許文献3】特許第4873014号公報
【特許文献4】特許第6769568号公報
【特許文献5】特表2012-528980公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の流体ポンプないしはブロアによれば、アクチュエータとして圧電素子を使用して高周波領域で駆動し、簡素な構成で流体を送出する機能を実現しており、小型電子機器へ適合することができる技術提案であることは確かである。しかしながら、携帯端末に代表されるような、より薄型の小型電子機器に内蔵して大流量且つ高圧であることを求めるアプリケーションに適用するには、これらの提案はそれを満足するものではない。例えばカフを加圧して血圧を測定する機能を携帯端末や時計型携帯機器に内蔵したい場合や、同様に花粉や大気汚染物質を吸引し検出あるいはカウントしたりする機能を、携帯端末や時計型携帯機器に内蔵する場合、さらには医療機器の一つである、傷口患部を吸引して肉芽形成効果を高める携帯可能な陰圧治療器に適用したい場合等では、ブロアデバイスの薄型化とともに、大流量且つ高圧であることが必須条件となる。
【0015】
本発明は携帯端末に代表される今後の社会生活において継続的な需要が見込まれると考えられる、より薄型・小型の電子機器に内蔵することを目的として、薄型化が可能な圧電ブロアデバイスの具体的な構成を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る圧電ブロアは、圧電素子によって変位振動する厚さ100μm以下の円形ダイヤフラムの中心内部にダイヤフラムの変位振動に伴いアクティブに動作する一方向弁機構を内蔵し、ダイヤフラムを含んで構成された円筒状キャビティ内に生じる流体の半径方向振動(縦波)によって生成される圧力定在波の最大・最小値となる位置に一方向弁機構の中心軸を一致させる。また一方向弁機構の流体出口側となるダイヤフラム面に貼り付けられた圧電素子は円筒形であり且つ中心部に流体導通穴を有した形状であり、一方向弁機構と同様圧力定在波の最大・最小値となる位置に流体導通穴の中心軸を一致させる。円筒形キャビティ内で生成される圧力定在波はダイヤフラムに内蔵された一方向弁によって変位振動に同期して選択的に開閉が切り替えられ、円筒形キャビティ内の高圧位相の流体は圧電素子の中心に形成された流体導通穴を通って外部に送出されることとなる。ダイヤフラムは円形縁部が接合固定されて振動し、薄型化したダイヤフラムに貼り付けられた圧電素子への電圧印可で生じる屈曲変位によって外部への流体送出を誘引する。これらの構造を薄い領域で形成するために、一方向弁機能を有するダイヤフラムは金属箔材を3層で拡散接合して製作される。また円筒形キャビティ及び吸入流路となる部分も同様に金属箔材による拡散接合によって一体的に形成される。またダイヤフラムの表面には絶縁層と導電層が形成されワイヤーボンディングで圧電素子と電気的な接続が行なわれるとともに、同様にダイヤフラム表面に別途流路基板と接続する流体経路が形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、サイズダウンに伴う駆動周波数増加に対する一方向弁の追従性を維持できるため、携帯端末に代表される、薄型・小型の電子機器に内蔵して大流量で且つ高圧が必要な種々のアプリケーションに対応することができる。
【0018】
また、また金属箔材の拡散接合によって本体を形成することで、従来例に比べて圧電ブロアデバイスの厚さを極めて薄くすることができるため、実装における自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の典型的な製品形状を示す外観斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の正面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の矢視A方向から見た模式断面図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の矢視B方向から見た模式断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1内に配置される一方向弁周辺を拡大した模式断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の分解構成斜視図である。一部を拡大した図として、分解構成斜視図に示された第1弁穴層14Aの複数の弁穴14A-1の形状を示す。
【
図5A】
図5Aは、一方向弁が閉動したことを説明する模式断面図である。
【
図5B】
図5Bは、一方向弁が開動したことを説明する模式断面図である。
【
図6】
図6は、拡散接合の原理を示す模式図である。
【
図7】
図7は、拡散接合原理使って積層接合したダイヤフラム14の厚さ構成例を示している。
【
図8】
図8は、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の好適な実装方法を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0020】
図1は本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の典型的な外観形状を示す斜視図である。金属箔材を金属拡散接合法によって多層化接合した略四角形状のブロア本体10の不図示のダイヤフラム面14に、中心部に流体導通穴31を有した円形の圧電素子30が貼り付けられている。略四角状のブロア本体10に接合され、ダイヤフラム14としては変位振動しない対角領域に、圧電素子30を駆動するための2つの電圧印可用ランド41,42が設けられている。そのうちの1つはGND用ランド41であり、圧電素子30下面に形成された不図示の-電極面30Bと導電性を持つ金属材料で構成された略四角状のブロア本体10に電気的に導通されている。他方はSIG用ランド42であり、絶縁層20上にAuメッキやAgをパターン印刷するなどによってSIG用ランド42は形成され、圧電素子30の+電極面30AとSIG用ランド42はAuないしはAl/Si材質の細いボンディングワイヤ50で電気的に接続されている。また、略四角状のブロア本体10に接合され、ダイヤフラム14としては変位振動しない領域で且つ2つの電圧印可用ランド41及び42が形成されていない領域、には流体を吸入しブロア本体内に導入するINLET穴60が形成される。本実施例のようにブロア機能に影響しない領域には貫通孔70を予め形成しておき、製品内に組み込む時に位置決め穴として使用しても良い。
不図示の電源装置を2つの電圧印可用ランド41及び42に接続して交流電圧を印可することで圧電素子30は圧縮・伸長を繰り返し、後述する原理にて流体を加圧・整流・送出し、圧電素子30の中心に穿たれた流体導通穴31をOUTLETとして矢印方向に吐出が行われる。
【0021】
図2A,
図2B,
図2C,及び
図3は、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の模式断面図を示しており、特に
図3では一方向弁の詳細な構造を示している。また本発明の構成をよく理解するために、
図4に本発明に係る典型的な圧電ブロアデバイス
1の分解構成斜視図を示している。
図2Bまたは
図2Cは
図2Aに矢視した方向から見たそれぞれの断面図を示している。略四角状のブロア本体10は
図2Bまたは
図2Cに示す通り断面方向から見ると、ダイヤフラム層14・キャビティ層13・ノード層12・流路層11の大きく4つのブロックで構成されている。これらの4つの層は金属箔材を後述する金属拡散接合法によって接合され一体化している。キャビティ層13の下に配置されたノード層12には2つのノード穴12Aが形成されており、INLET穴60から流路溝11Aを通り流路が接続され、さらにキャビティ13Aに流体経路が連結されている。
ダイヤフラム層14はさらに、薄い3つの層によって構成されている。
図3の図中下から弁穴層14A、フラップ弁層14B、弁揺動空間層14C、となっており、同様に金属拡散接合法によってフラップ弁層14Bの一部であるフラップ弁14B―1以外はすべて一体化している。
弁穴層14Aは扇状の4つの弁穴14A-1を有した層として形成されている。フラップ弁14B-1は弁穴層14Aの扇状の4つの弁穴14A-1とは重ならない中心位置に貫通孔14B-2が形成されている。後述する2つの動作モードによってフラップ弁14B-1は弁揺動空間14D―1の間で強制的に揺動し、一方向弁としての機能を発現する。金属箔材の積層接合により、一方向弁機構を内蔵しつつ薄いダイヤフラム14としてバルク材料に近い組織構成となっている。
【0022】
汎用的で且つ安価に中空構造体を形成可能な技術として、金属拡散接合法は大きな特徴を持つ。MEMS(Micro Electoro Mechanical System)の技術領域においては、小型化を目的として微細な構造体と電子回路を、半導体シリコン材料を基に製造することが良く知られている。微細な構造体が高周波で動作する場合、必ずしも半導体シリコン材料が適するとは限らない。材料の機械的特性において、例えばSUS304と単結晶シリコンの曲げ強さを比較するとSUS304の方が3倍程度高い。またSUS304の方が延性も高いのでクラックが起きにくいなどのメリットがある。高周波で繰り返し弾性変形する動作が行われるようなデバイスでは、割れなどの破壊を回避するために、微細な加工が可能な範囲においては、金属材料を選択することが商業的には望ましいことは想像しやすいであろう。
圧電素子30はダイヤフラム14の表面に接着固定されている。接着剤80は導電性を有しない熱硬化性エポキシ樹脂接着剤等が選定される。圧電素子30の下面電極30Bは表面粗さがあり、微視的には加圧接着した時にダイヤフラム14表面と電気的に接続が保たれる。一方圧電素子30の上面電極30Aは、前述のボンディングワイヤ50によってSIG用ランド42と電気的に接続が保たれている。
【0023】
図5A及び
図5Bは、ダイヤフラム14の変位振動によって一方向弁が開動・閉動したことを説明する模式断面図である。
図5Aでは、圧電素子30の上面電極32に―電位が印可されて圧電素子30が径方向に伸長し、接着剤80により拘束されたダイヤフラム14との間で歪変形が起こり、ダイヤフラム14が図中上方向に変位した場合を示している。
図5Bでは、圧電素子30の上面電極32に+電位が印可されて圧電素子30が径方向に圧縮し、接着剤80により拘束されたダイヤフラム14との間で歪変形が起こり、ダイヤフラム14が図中下方向に変位した場合を示している。この時ダイヤフラム14内に内蔵されたフラップ弁14B-1は、相対的にダイヤフラム14の変位方向とは逆方向に強制的に揺動することになる。
図5Aのようにダイヤフラム14が上方向に変位した時にはフラップ弁14B-1は弁揺動空間層側14C―1に揺動して第1弁穴層14Aに係止し、外部への流体送出が不可の状態となる。ダイヤフラム14が下方向に変位した時には
図5Bのようにフラップ弁14B-1は弁揺動空間14D―1側に揺動して圧電素子30に係止し、外部への流体送出が可の状態となる。
【0024】
フラップ弁14B-1は10μm以下の極薄い金属箔材からなり、フラップ弁層14Bの一部として形成されている。金属の圧延加工は年々発展しており、圧延によって表面粗さが小さく数μm厚の均一な箔材を製作することが可能である。本発明に係る圧電ブロアデバイス1の構造を前提としてサイズダウンを試みていく場合にはダイヤフラム14の駆動周波数が高くなるため、フラップ弁14B―1の追従性を考慮するとより薄い材料を選択する必要性があることが予想される。
フラップ弁14B-1は弁穴層14Aと弁揺動空間層14Cの間に金属拡散接合で固定されているため、金属材料の弾性力によって貫通孔14B―2を含む周辺部が揺動可能となっている。圧力差によって弁体が従動的に開閉する従来例の構成よりも、ダイヤフラム14の変位振動によって強制的にフラップ弁14B―1を揺動させる方が高周波数駆動への適用性は高い。
【0025】
図6は、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1を製作する元となる金属拡散接合の原理を示す模式図である。図は「Q&A 拡散接合」1993年 産報出版刊 著者: 大橋修 からの出典である。JISでは、拡散接合を「母材を密着させ、母材の融点以下の温度条件で、塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法」と定義している。拡散接合は接合部の完全化(表面被膜の除去、接合面の密着)であり、金属原子の拡散を利用する接合機構に由来し、摩擦圧接・鍛接・熱間圧接・冷間圧接などの方法とは異なる。
清浄な金属同士が原子レベルで接近すると、溶融しなくても常温で容易に原子的な接合部が形成されることはよく知られている。商業的にこの現象を使って金属同士を接合するために表面粗さの小さい金属材料同士を重ねて真空中で加熱・加圧し接合する方法を汎用的には用いる。ある温度まで加熱すると金属材料表面の酸化被膜は拡散によって消失し金属原子が露出する。また加圧によって金属結晶のクリープは起こり、金属同士の接合面では距離が縮まり原子拡散が進んでいき、接合は完了する。
図6の(A)は加熱前の酸化被膜で覆われた金属面を示している。
図6の(B)は酸化被膜が消失し凹凸が塑性変形し始めた過程を示している。
図6の(C)はクリープ変形する過程を示している。
図6の(D)は拡散で空隙が消失する過程を示している。
拡散接合法のメリットはいくつか挙げられるが、1)接合完了後、接合面はなくなり、バルクに近い組織になること。2)中空構造体が形成できること。3)金属種において接合材料の選択自由度が高いこと。4)表面粗さの小さい且つ薄い圧延材を選択して微細構造体を作りやすいこと。などが特筆すべき項目として挙げられる。
【0026】
図7は、拡散接合原理使って積層接合したダイヤフラム14の厚さ構成例を示している。前述した通り、ダイヤフラム14は一方向弁機構を内蔵したものであるため、機能を満足する形状に予めエッチングや微細プレスにて加工された複数の金属箔材を重ねて接合される。フラップ弁14B-1部は外部からの加圧がないため、拡散接合実施後も弁穴層14A及び弁揺動空間層14C―1の間で揺動可能なように維持される。例えば金属材料としてSUS304を選択した場合、比較的入手がし易く且つ表面粗さが小さいものが安価に入手できる。厚さは概ね、t5μm~t1000μmの範囲にあり、ダイヤフラムを構成する各層の厚さを例えば以下のようにすることができる。
弁穴層14A:t30μm
フラップ弁層14B:t5μm
弁揺動空間層14C:t30μm
この例では拡散接合後のダイヤフラム層14厚はt65μmとなり、ダイヤフラム14の変位を最大化する方向に厚さを調整することができる。各層の厚さはこれに限定されることはなく、デバイス設計の目的に応じて種々の厚さが選択される。
【0027】
図8は、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1の実装方法を示した模式斜視図である。本発明の主目的は携帯端末に代表される薄型の小型電子機器への搭載であるため、圧電ブロアデバイス
1の実装方法についても薄型化への考慮がされていなければならない。前述の
図1で示したように、略四角状のブロア本体10には流体導通穴31が穿たれた圧電素子30と、INLET穴60と、圧電素子30を駆動するための2つの電圧印可用ランド41及び42が同一ダイヤフラム14表面に設けられている。
ここで、内部に流体流路を持ち、表面には電子回路を形成したような流路基板
3を圧電ブロアデバイス
1とは別に用意し、本発明の圧電ブロアデバイス
1を、間座
4を介して実装することで低ハイト流体モジュール
0として成立させることができる。間座
4は例えば接着性を有する熱硬化性接着シートなどが選定される。圧電ブロアデバイス
1に形成された流体導通穴31及びINLET穴60は流路基板
3内部に形成された流路に穴周囲をリークしないよう接着され、流体経路として接続される。また圧電素子30駆動用の2つの電圧印可用ランド41及び42は、導電性ペースト5や金属マイクロスプリング等で流路基板
3表面に形成された電気的配線パターンに接続される。流路基板
3内に内蔵された流路を前述した金属拡散接合で製作し、その上下に配線パターン化されたフィルム基板を貼り合わせた構成が薄型化と強度面が両立して小型電子機器への搭載には好ましいと考えられる。
フィルム基板は多層基板でもよく、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1のみを実装するのではなく、高密度配線により例えば圧力センサーダイ3Aや抵抗チップ3B、コンデンサーチップ3C、アンプ回路3D、コネクタ3E、システムLSI3Fなども同時にフィルム基板上に実装して、低ハイト流体モジュール
0として形成可能となる。
図に示すように、内部構造は異なるが、本発明に係る圧電ブロアデバイス
1と同様の製造方法で製作した圧電バルブデバイス
2も実装した構成とすれば、小型・薄型のカフ加圧型の血圧計モジュールとして、携帯端末に代表される小型電子機器、特に腕時計型の情報端末への実装が容易となる。