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特開2023-73167コンロバーナ、およびコンロバーナを搭載した加熱調理器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073167
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】コンロバーナ、およびコンロバーナを搭載した加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/06 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
F23D14/06 H
F23D14/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186044
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AA02
3K017AB01
3K017AB04
(57)【要約】
【課題】上下に分割可能な炎口形成部材の外周面に開口した下側の第1炎口および上側の第2炎口の互いの火炎の干渉を抑制して燃焼の安定化を図る。
【解決手段】炎口形成部材20の下側の第1形成部材21は、外縁部分から上方に立設された第1環状壁21dの上端に径方向の第1溝21eを周方向に複数凹設し、隣り合う第1溝の間を上に凸の第1凸部21sとする。一方、上側の第2形成部材22は、外縁部分から下方に垂設された第2環状壁22aの下端に径方向の第2溝22bを周方向に複数凹設し、隣り合う第2溝の間を下に凸の第2凸部22sとする。そして、第1溝と第2溝とが重ならないように周方向にずらして第1形成部材に第2形成部材を載置することにより、第1溝と第2凸部の下端とで第1炎口20Uaを形成し、第2溝と第1凸部の上端とで第2炎口20Ubを形成する。このとき、第1凸部の上端を第2凸部の下端よりも上方に位置させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に分割可能な炎口形成部材の外周面に複数の炎口が開口しており、該炎口から燃料ガスと空気との混合ガスを噴出して燃焼させるコンロバーナにおいて、
前記炎口形成部材の下側の第1形成部材は、外縁部分から上方に向かって環状に立設された第1環状壁を有し、該第1環状壁の上端に径方向の第1溝が周方向に所定の間隔で複数凹設されて、隣り合う該第1溝の間が上に凸の第1凸部となっており、
前記炎口形成部材の上側の第2形成部材は、外縁部分から下方に向かって環状に垂設された第2環状壁を有し、該第2環状壁の下端に径方向の第2溝が周方向に所定の間隔で複数凹設されて、隣り合う該第2溝の間が下に凸の第2凸部となっており、
前記第1形成部材に対して前記第2形成部材を、前記第1環状壁の前記第1溝と前記第2環状壁の前記第2溝とが重ならないように周方向にずらして載置することにより、前記複数の炎口として、前記第1溝と前記第2凸部の下端とで形成された第1炎口が前記第1環状壁の外周面に開口すると共に、前記第2溝と前記第1凸部の上端とで形成された第2炎口が前記第2環状壁の外周面に開口し、
前記第1形成部材に前記第2形成部材を載置した状態では、前記第1凸部の上端が前記第2凸部の下端よりも上方に位置している
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンロバーナにおいて、
前記炎口形成部材の外周面は、周方向に前記第1炎口と前記第2炎口とが交互に開口した炎口領域と、前記第1炎口および前記第2炎口の何れも所定の間隔以上に亘って開口していない非炎口領域とに分けられており、
前記炎口領域における前記第1凸部の上端が、前記非炎口領域における前記第1環状壁の上端よりも上方に位置している第1条件と、前記炎口領域における前記第2凸部の下端が、前記非炎口領域における前記第2環状壁の下端よりも下方に位置している第2条件との少なくとも一方の条件を満たしている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンロバーナにおいて、
前記炎口形成部材の周方向における前記第1凸部の幅が前記第2溝の幅よりも広くなっていると共に、前記第2凸部の幅が前記第1溝の幅よりも広くなっており、
前記第1凸部における周方向の両側面と上端面との間に第1面取り部が設けられ、
前記第2凸部における周方向の両側面と下端面との間に第2面取り部が設けられ、
前記第1形成部材に前記第2形成部材を載置した状態では、前記第1凸部の前記第1面取り部と前記第2凸部の前記第2面取り部とで当接している
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項4】
請求項3に記載のコンロバーナにおいて、
前記第1面取り部および前記第2面取り部は、前記第1環状壁および前記第2環状壁の径方向に沿って曲率中心を有する円弧が連続した曲面である
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のコンロバーナにおいて、
前記第1形成部材および前記第2形成部材の何れか一方には、前記非炎口領域における前記第1環状壁と前記第2環状壁との合わせ目を径方向の内側から覆う遮断壁が設けられている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のコンロバーナにおいて、
前記第1形成部材は、外縁部分から下方に向かって環状に垂設された第3環状壁を有し、該第3環状壁の下端に径方向の第3溝が周方向に複数凹設されており、
前記第1形成部材の前記第3環状壁が載置される環状の載置面を有するバーナボディを備え、
前記バーナボディに前記第1形成部材を載置することにより、前記第3溝と前記載置面とで形成された第3炎口が前記第3環状壁の外周面に開口し、
前記混合ガスを前記第3炎口には供給して前記第1炎口および前記第2炎口には供給しない状態と、前記混合ガスを前記第3炎口に加えて前記第1炎口および第2炎口にも供給する状態とに切り換え可能である
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載のコンロバーナを搭載し、該コンロバーナの上方に置かれた調理容器を加熱する加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に分割可能な炎口形成部材の外周面に下側の第1炎口と上側の第2炎口とが周方向に交互に開口したコンロバーナ、および当該コンロバーナを搭載した加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の炎口が炎口形成部材の外周面に開口しており、それらの炎口から燃料ガスと空気との混合ガスを噴出して燃焼させるコンロバーナは、ガスコンロなどの加熱調理器に搭載されて広く使用されている。こうしたコンロバーナでは、炎口形成部材の加工性を高めるために、炎口形成部材を上下に分割可能に構成することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
炎口形成部材の下側の第1形成部材は、外縁部分から上方に向かって環状に立設された第1環状壁を有し、第1環状壁の上端に径方向の第1溝が周方向に所定の間隔で複数凹設されて、隣り合う第1溝の間が上に凸の第1凸部となっている。一方、炎口形成部材の上側の第2形成部材は、外縁部分から下方に向かって環状に垂設された第2環状壁を有し、第2環状壁の下端に径方向の第2溝が周方向に所定の間隔で複数凹設されて、隣り合う第2溝の間が下に凸の第2凸部となっている。そして、第1溝と第2溝とが重ならないように周方向にずらして第1形成部材に第2形成部材を載置することにより、第1溝と第2凸部の下端とで形成された第1炎口が第1環状壁の外周面に開口し、第2溝と第1凸部の上端とで形成された第2炎口が第2環状壁の外周面に開口した状態となる。従って、炎口形成部材の外周面には、第1炎口と第2炎口とが周方向に交互に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-143959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のように炎口形成部材が上下に分割可能に構成された従来のコンロバーナでは、下側の第1形成部材に上側の第2形成部材を載置した状態で、第1環状壁の外周面に開口した第1炎口と、第2環状壁の外周面に開口した第2炎口とが上下方向に近接しており、互いの火炎が干渉することによって燃焼が不安定になることがあるという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、上下に分割可能な炎口形成部材の外周面に下側の第1炎口と上側の第2炎口とが周方向に交互に開口したコンロバーナで、第1炎口および第2炎口の互いの火炎の干渉を抑制して燃焼の安定化を図ることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明のコンロバーナは次の構成を採用した。すなわち、
上下に分割可能な炎口形成部材の外周面に複数の炎口が開口しており、該炎口から燃料ガスと空気との混合ガスを噴出して燃焼させるコンロバーナにおいて、
前記炎口形成部材の下側の第1形成部材は、外縁部分から上方に向かって環状に立設された第1環状壁を有し、該第1環状壁の上端に径方向の第1溝が周方向に所定の間隔で複数凹設されて、隣り合う該第1溝の間が上に凸の第1凸部となっており、
前記炎口形成部材の上側の第2形成部材は、外縁部分から下方に向かって環状に垂設された第2環状壁を有し、該第2環状壁の下端に径方向の第2溝が周方向に所定の間隔で複数凹設されて、隣り合う該第2溝の間が下に凸の第2凸部となっており、
前記第1形成部材に対して前記第2形成部材を、前記第1環状壁の前記第1溝と前記第2環状壁の前記第2溝とが重ならないように周方向にずらして載置することにより、前記複数の炎口として、前記第1溝と前記第2凸部の下端とで形成された第1炎口が前記第1環状壁の外周面に開口すると共に、前記第2溝と前記第1凸部の上端とで形成された第2炎口が前記第2環状壁の外周面に開口し、
前記第1形成部材に前記第2形成部材を載置した状態では、前記第1凸部の上端が前記第2凸部の下端よりも上方に位置している
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明のコンロバーナでは、第1凸部の上端側と第2凸部の下端側とで上下方向の重なりが生じることにより、第1炎口の上端と第2炎口の下端との間に上下方向の間隔(距離)を確保することができる。そのため、第1凸部の上端と第2凸部の下端とが揃っている(同一平面上に位置している)場合に比べて、第1炎口の火炎と第2炎口の火炎との干渉を抑制して燃焼の安定化を図ることが可能となる。
【0009】
上述した本発明のコンロバーナでは、次のようにしてもよい。まず、炎口形成部材の外周面が、周方向に第1炎口と第2炎口とが交互に開口した炎口領域と、第1炎口および第2炎口の何れも所定の間隔以上に亘って開口していない非炎口領域とに分けられている。そして、炎口領域における第1凸部の上端が、非炎口領域における第1環状壁の上端よりも上方に位置している第1条件と、炎口領域における第2凸部の下端が、非炎口領域における第2環状壁の下端よりも下方に位置している第2条件との少なくとも一方の条件を満たしている。
【0010】
このようにすれば、非炎口領域では、第1環状壁の上端と第2環状壁の下端とを当接させつつ、炎口領域では、第1凸部の上端を第2溝に入り込ませるか、第2凸部の下端を第1溝に入り込ませるかの少なくとも一方によって第1凸部の上端側と第2凸部の下端側とで上下方向の重なりを生じさせることができるので、第1炎口の上端と第2炎口の下端との間で上下方向の間隔の確保が可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のコンロバーナでは、次のようにしてもよい。まず、炎口形成部材の周方向における第1凸部の幅が第2溝の幅よりも広くなっていると共に、第2凸部の幅が第1溝の幅よりも広くなっている。また、第1凸部における周方向の両側面と上端面との間に第1面取り部が設けられ、第2凸部における周方向の両側面と下端面との間に第2面取り部が設けられている。そして、第1形成部材に第2形成部材を載置した状態では、第1凸部の第1面取り部と第2凸部の第2面取り部とで当接している。
【0012】
このようにすれば、第1凸部の上端側と第2凸部の下端側とで上下方向の重なりを生じさせつつ、第1面取り部と第2面取り部との当接箇所によって、第1炎口と第2炎口とを確実に分断することができるので、第1炎口の火炎と第2炎口の火炎とが繋がることを回避して安定した燃焼を確保することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のコンロバーナでは、第1面取り部および第2面取り部を、第1環状壁および第2環状壁の径方向に沿って曲率中心を有する円弧が連続した曲面としてもよい。
【0014】
このように第1面取り部および第2面取り部として、いわゆるR面取り加工が施されていることにより、第1面取り部と第2面取り部との当接箇所が線接触となる。このため、例えば、コンロバーナの上方に置かれた調理容器から煮こぼれた際に炎口形成部材に煮こぼれ汁がかかったとしても、煮こぼれ汁の焼き付きによる第1形成部材と第2形成部材との固着を、面接触である場合に比べて抑制することができる。
【0015】
こうした本発明のコンロバーナでは、第1形成部材および第2形成部材の何れか一方に、非炎口領域における第1環状壁と第2環状壁との合わせ目を径方向の内側から覆う遮断壁が設けられていてもよい。
【0016】
このようにすれば、仮に、炎口領域における第1凸部の第1面取り部と第2凸部の第2面取り部とで先に当接することによって、非炎口領域における第1環状壁と第2環状壁との合わせ目に隙間が生じたとしても、その隙間の内側が遮断壁に覆われているので、隙間からの混合ガスの流出を抑制することができる。
【0017】
こうした本発明のコンロバーナでは、次のようにしてもよい。まず、第1形成部材の外縁部分から下方に向かって環状に垂設された第3環状壁の下端に径方向の第3溝が周方向に複数凹設されている。また、第1形成部材の第3環状壁が載置される環状の載置面を有するバーナボディを備え、バーナボディに第1形成部材を載置することにより、第3溝と載置面とで形成された第3炎口が第3環状壁の外周面に開口する。そして、混合ガスを第3炎口には供給して第1炎口および第2炎口には供給しない状態と、混合ガスを第3炎口に加えて第1炎口および第2炎口にも供給する状態とに切り換え可能とする。
【0018】
このように第1炎口および第2炎口とは独立して混合ガスが供給される第3炎口を有するタイプのコンロバーナ(いわゆる親子バーナ)においても、本発明の適用により、第1炎口の火炎と第2炎口の火炎との干渉を抑制して燃焼の安定化を図ることができる。
【0019】
また、こうした本発明のコンロバーナを加熱調理器に搭載することとして、コンロバーナの上方に置かれた調理容器を加熱してもよい。
【0020】
このような加熱調理器では、搭載したコンロバーナの炎口形成部材の外周面に開口した第1炎口および第2炎口の互いの火炎の干渉を抑制して燃焼の安定化を図ることができる。結果として、加熱調理器として安定した調理性能を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施例のコンロバーナ10を搭載した加熱調理器の例としてガスコンロ1の外観を示した斜視図である。
図2】本実施例のコンロバーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。
図3】本実施例のコンロバーナ10の上部を分解した状態を示す斜視図である。
図4】本実施例のコンロバーナ10の内部構造を示した縦断面図である。
図5】従来例のコンロバーナ10におけるバーナキャップ20の外周面を拡大して示した説明図である。
図6】本実施例のコンロバーナ10におけるバーナキャップ20の外周面を拡大して示した説明図である。
図7】本実施例のバーナキャップ20の非炎口領域における内部構造を拡大して示した縦断面図である。
図8】第1面取り部21tおよび第2面取り部22tの一方がR面取り加工であり、他方がC面取り加工である例を示した説明図である。
図9】第1凸部21sの幅が第2溝22bの幅よりも狭く、第2凸部22sの幅が第1溝21eの幅よりも狭くなっている例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本実施例のコンロバーナ10を搭載した加熱調理器の例としてガスコンロ1の外観を示した斜視図である。図示したガスコンロ1は、上面が開口した浅い箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2に載置されてコンロ本体2の上面を覆う天板3とを備えている。コンロ本体2には、燃料ガスを燃焼させるコンロバーナ10が2つ左右に設置されており、天板3に形成された挿通孔からコンロバーナ10の上部が突出している。
【0023】
天板3上には、コンロバーナ10の上方に鍋などの調理容器を置くための五徳4が設置されている。図示されるように五徳4は、コンロバーナ10を囲んで天板3上に据えられた円環状の枠部4aによって複数(本実施例では6本)の爪部4bが放射状に支持されており、これら爪部4bの上面に調理容器を載せるようになっている。また、天板3上の手前側には、2つのコンロバーナ10の各々に対応して、使用者が点火時や消火時、あるいは火力調節時などに操作する操作ツマミ5が設けられている。操作ツマミ5を押し下げて初期位置から所定方向(本実施例では反時計回り)に回転させると、コンロバーナ10に燃料ガスが供給されると共に、後述する点火プラグによって点火される。その後は、操作ツマミ5の回転角度を変えると、燃料ガスの供給量が変更されてコンロバーナ10の火力を調節することができ、操作ツマミ5を初期位置に戻すことにより、コンロバーナ10への燃料ガスの供給が停止されて消火に至る。
【0024】
図2は、本実施例のコンロバーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。図示されるようにコンロバーナ10は、略円筒形状のバーナボディ11の上に、略円筒形状のバーナキャップ20が載置された構造になっている。バーナボディ11には大小2本の混合管(大混合管12,小混合管13)が接続されており、本実施例のバーナボディ11および2本の混合管12,13は、ステンレス鋼などの薄板を用いた板金加工によって形成されている。後述のように混合管12,13を通って燃料ガスと一次空気との混合ガスがバーナボディ11に供給される。
【0025】
一方、本実施例のバーナキャップ20は、アルミニウム合金や真鍮などを用いたダイカストで形成されている。バーナボディ11に載置されたバーナキャップ20の外周面には、図2に拡大して示されるように、複数の炎口20U,20Lが上下二段に並んで開口している。このうち、上段側の複数の上段炎口20Uは、更に上下に分割されて、下側の第1上段炎口20Uaと、上側の第2上段炎口20Ubとがバーナキャップ20の外周面の周方向に交互に並んでいる。尚、本実施例のバーナキャップ20は、本発明の「炎口形成部材」に相当している。
【0026】
コンロバーナ10に燃料ガスを導くガス配管40には、ガス配管40を開閉する元弁41が設けられていると共に、元弁41よりも下流側でガス配管40が2つに分岐しており、分岐配管40a,40bの各々に燃料ガスの流量を調節する流量調節弁42a,42bが設けられている。元弁41は、図示しない制御部と電気的に接続されており、制御部によって開閉が制御される。一方、流量調節弁42a,42bは、天板3上の操作ツマミ5とシャフト(図示省略)を介して接続されており、操作ツマミ5の回転に応じて燃料ガスの流量を変更可能である。
【0027】
分岐配管40aの末端に接続された図示しないノズルから大混合管12の開口端12oに向かって燃料ガスが噴射されると、一次空気を吸い込みながら大混合管12に流入し、大混合管12を通過する燃料ガスと一次空気とが混合されてバーナボディ11に混合ガスが供給される。同様に、分岐配管40bの末端に接続された図示しないノズルから小混合管13の開口端13oに向かって燃料ガスが噴射されると、燃料ガスと一次空気とが小混合管13を通過しながら混合されてバーナボディ11に混合ガスが供給される。
【0028】
詳しくは後述するが、本実施例のコンロバーナ10は、いわゆる親子バーナであり、複数の上段炎口20U(第1上段炎口20Uaおよび第2上段炎口20Ub)には、大混合管12から混合ガスが供給されるのに対して、下段側の複数の下段炎口20Lには、小混合管13から混合ガスが供給されるようになっている。図示されるように、バーナボディ11の外周面に近接して点火プラグ30が設置されており、バーナキャップ20の外周面から張り出して設けられた庇部31が点火プラグ30の上方を覆っている。この点火プラグ30からバーナキャップ20に向けて火花放電することで、下段炎口20Lから噴出する混合ガスの燃焼が開始される。また、点火プラグ30に隣接する位置に、熱電対から成る火炎センサ32が設置されており、下段炎口20Lの火炎を検知することが可能になっている。この火炎センサ32は、前述した制御部と電気的に接続されている。
【0029】
本実施例のコンロバーナ10では、混合ガスを下段炎口20Lには供給して、上段炎口20Uには供給しない状態と、混合ガスを下段炎口20Lに加えて上段炎口20Uにも供給する状態とに、前述した流量調節弁42a,42bによって切り換え可能になっている。また、下段炎口20Lは、上段炎口20Uに比べて開口面積が小さく、混合ガスの噴出量が少なくなっている。このため、コンロバーナ10で必要とされる火力が小さければ、下段炎口20Lだけで混合ガスを燃焼させ、必要とされる火力が大きくなると、下段炎口20Lと上段炎口20Uとの両方で混合ガスを燃焼させることが可能である。その際は、下段炎口20Lの火炎からの火移りにより、上段炎口20Uから噴出する混合ガスの燃焼が開始される。尚、図示されるようにバーナキャップ20の外周面のうち、前述した五徳4の複数の爪部4bに対向する位置には上段炎口20Uが開口しておらず、上段炎口20Uの火炎によって爪部4bが炙られるのを回避するようになっている。
【0030】
図3は、本実施例のコンロバーナ10の上部を分解した状態を示す斜視図である。図示されるように、略円筒形状のバーナボディ11は、上端側が内向きに折り曲げられており、バーナキャップ20が載置される環状の載置面11aを備えている。このバーナボディ11の上部は、コンロバーナ10がコンロ本体2に設置された状態で、天板3の挿通孔から突出している。また、バーナボディ11の内側には、略円筒形状の中央筒体14が立設されており、バーナボディ11と中央筒体14との間に、混合ガスが供給される環状の混合室16が形成されている。
【0031】
更に、バーナボディ11と中央筒体14との間には、略円筒形状の仕切り筒体15が設けられている。これにより、混合室16は、仕切り筒体15よりも内側部分(すなわち、仕切り筒体15と中央筒体14との間)の内混合室16aと、仕切り筒体15よりも外側部分(すなわち、バーナボディ11と仕切り筒体15との間)の外混合室16bとに分けられる。このうち、内混合室16aには、前述した大混合管12を通った混合ガスが供給され、外混合室16bには、前述した小混合管13を通った混合ガスが供給される。仕切り筒体15は、バーナボディ11と同様に板金加工で形成され、上端側が内向きに折り曲げられて、その内側が下向きに折り曲げられており、短い円筒形状の嵌合面15aを備えている。
【0032】
本実施例のバーナキャップ20は、加工性を高めるために、上下2つに分割可能に構成されており、下側の第1キャップ部材21をバーナボディ11上に載置し、上側の第2キャップ部材22を第1キャップ部材21上に載置するようになっている。図示されるように、環状の第1キャップ部材21の内縁部分からは、下方に向かって円筒形状の隔壁筒21aが垂設されている。また、第1キャップ部材21の外縁部分からは、下方に向かって浅い環状の下段環状壁21bが垂設されており、この下段環状壁21bの下端には、径方向の下段溝21cが周方向に並んで複数凹設されている。第1キャップ部材21をバーナボディ11上に載置する際には、隔壁筒21aを仕切り筒体15の嵌合面15aの内側に嵌め合わせて、第1キャップ部材21の下段環状壁21bの下端をバーナボディ11の載置面11aに当接させる。尚、本実施例の第1キャップ部材21は、本発明の「第1形成部材」に相当しており、本実施例の第2キャップ部材22は、本発明の「第2形成部材」に相当している。また、本実施例の下段環状壁21bは、本発明「第3環状壁」に相当しており、本実施例の下段溝21cは、本発明の「第3溝」に相当している。
【0033】
また、第1キャップ部材21は、外縁部分から上方に向かって環状に立設された第1環状壁21dを有しており、第1環状壁21dの上端には、径方向の第1溝21eが周方向に所定の間隔で複数凹設されている。尚、第1溝21eは、第1環状壁21dのうち五徳4の複数の爪部4bに対向する位置には設けられていない。
【0034】
一方、円形の第2キャップ部材22は、外縁部分から下方に向かって環状に垂設された第2環状壁22aを有しており、第2環状壁22aの下端には、径方向の第2溝22bが周方向に所定の間隔で複数凹設されている。また、第2環状壁22aの外周面からは、点火プラグ30の上方を覆う前述した庇部31が張り出して設けられている。尚、上述の第1溝21eと同様に、第2溝22bについても、第2環状壁22aのうち五徳4の複数の爪部4bに対向する位置には設けられていない。そして、本実施例のバーナキャップ20では、第1キャップ部材21上に第2キャップ部材22を載置する際に、第1溝21eと第2溝22bとが重ならないように周方向にずらした状態で、第1環状壁21dの上端と第2環状壁22aの下端とを合わせるようになっている。
【0035】
図4は、本実施例のコンロバーナ10の内部構造を示した縦断面図である。前述したようにバーナボディ11の内側には、中央筒体14との間に混合室16が設けられており、仕切り筒体15によって内混合室16aと外混合室16bとに分けられている。第1キャップ部材21がバーナボディ11上に載置された状態では、隔壁筒21aが仕切り筒体15の嵌合面15aの内側に嵌め合わされると共に、第1キャップ部材21の下段環状壁21bの下端が載置面11aに当接しており、下段溝21cと載置面11aとで形成された下段炎口20Lが下段環状壁21bの外周面に開口している。図4では、第1キャップ部材21における左側の断面が、下段溝21c(下段炎口20L)の位置で切断した断面を表しており、右側の断面が、下段溝21cの無い位置で切断した断面を表している。尚、本実施例の下段炎口20Lは、本発明の「第3炎口」に相当している。
【0036】
下段炎口20Lは、外混合室16bと連通しており、前述した小混合管13を通って供給される混合ガスが下段炎口20Lから噴出し、点火プラグ30の火花放電で混合ガスの燃焼が開始される。本実施例の火炎センサ32は、下段炎口20Lの火炎を検知可能に配置されている。
【0037】
図4に示されるように、第2キャップ部材22の下面からは、円筒形状の嵌合筒22dが垂設されており、第2キャップ部材22が第1キャップ部材21上に載置された状態では、嵌合筒22dが中央筒体14の上部内側に嵌め合わされている。尚、中央筒体14の下端側は、板金製の底板17に形成された貫通孔17hの周縁と気密に接合されている。
【0038】
また、第1キャップ部材21に対して第2キャップ部材22は、第1環状壁21dの第1溝21eと第2環状壁22aの第2溝22bとが重ならないように周方向にずらして載置されており、第1溝21eと第2環状壁22aの下端とで形成された第1上段炎口20Uaが第1環状壁21dの外周面に開口していると共に、第2溝22bと第1環状壁21dの上端とで形成された第2上段炎口20Ubが第2環状壁22aの外周面に開口している。図4では、第1キャップ部材21および第2キャップ部材22における右側の断面が、第1溝21e(第1上段炎口20Ua)の位置で切断した断面を表しており、左側の断面が、第2溝22b(第2上段炎口20Ub)の位置で切断した断面を表している。尚、本実施例の第1上段炎口20Uaは、本発明の「第1炎口」に相当しており、本実施例の第2上段炎口20Ubは、本発明の「第2炎口」に相当している。
【0039】
第1上段炎口20Uaおよび第2上段炎口20Ubは、内混合室16aと連通しており、前述した大混合管12を通って供給される混合ガスが第1上段炎口20Uaおよび第2上段炎口20Ubから噴出し、下段炎口20Lの火炎からの火移りで混合ガスの燃焼が開始される。前述したようにバーナキャップ20の外周面には、第1上段炎口20Uaと第2上段炎口20Ubとが周方向に交互に並んでいる。
【0040】
このように上段炎口20Uが上下に分割されたコンロバーナ10では、下側の第1上段炎口20Uaの火炎と上側の第2上段炎口20Ubの火炎とが干渉することによって燃焼が不安定になってしまうことがある。そこで、本実施例のコンロバーナ10では、第1上段炎口20Uaの上端と第2上段炎口20Ubの下端との間に上下方向の間隔を確保することによって、互いの火炎の干渉を抑制して燃焼の安定化を図っている。以下では、この点について説明するが、比較として、第1上段炎口20Uaおよび第2上段炎口20Ubの互いの火炎の干渉によって燃焼が不安定になることがある従来例のコンロバーナ10について先に説明する。
【0041】
図5は、従来例のコンロバーナ10におけるバーナキャップ20の外周面を拡大して示した説明図である。図では、第1キャップ部材21の第1環状壁21dおよび第2キャップ部材22の第2環状壁22aのそれぞれの外周面にハッチングを付して表している。図示されるように、第1環状壁21dの隣り合う第1溝21eの間は上に凸の第1凸部21sになっており、第2環状壁22aの隣り合う第2溝22bの間は下に凸の第2凸部22sになっている。また、バーナキャップ20の周方向(図中の左右方向)における第1凸部21sの幅が第2溝22bの幅よりも広く、第2凸部22sの幅が第1溝21eの幅よりも広くなっており、第1凸部21sと第2凸部22sとの周方向の重なり代が設けられている。
【0042】
そして、第1溝21eと第2凸部22sの下端とで第1上段炎口20Uaが形成され、第2溝22bと第1凸部21sの上端とで第2上段炎口20Ubが形成されている。尚、バーナキャップ20の外周面のうち、前述した五徳4の複数の爪部4bに対向する位置には第1上段炎口20Uaおよび第2上段炎口20Ubが開口しておらず、以下では、第1上段炎口20Uaおよび第2上段炎口20Ubの何れも所定の間隔以上に亘って開口していない領域を「非炎口領域」と称し、第1上段炎口20Uaと第2上段炎口20Ubとが周方向に交互に開口した領域を「炎口領域」と称する。
【0043】
従来例のコンロバーナ10では、炎口領域における第1凸部21sの上端と、非炎口領域における第1環状壁21dの上端との高さが揃っていると共に、炎口領域における第2凸部22sの下端と、非炎口領域における第2環状壁22aの下端との高さが揃っており、第1キャップ部材21に第2キャップ部材22を載置した状態では、第1凸部21sの上端と第2凸部22sの上端とが同一平面上に位置している。このため、第1上段炎口20Uaの上端(第2凸部22sの下端)と、第2上段炎口20Ubの下端(第1凸部21sの上端)とが上下方向に近接しており、特に、バーナキャップ20の小径化や、第1上段炎口20Uaおよび第2上段炎口20Ubの数の増加に伴って、第1上段炎口20Uaと第2上段炎口20Ubとの周方向の間隔を確保し難い状況では、第1上段炎口20Uaの火炎と第2上段炎口20Ubの火炎とが干渉し易く、燃焼が不安定となる。
【0044】
一方、図6は、本実施例のコンロバーナ10におけるバーナキャップ20の外周面を拡大して示した説明図である。図6(a)には、第1キャップ部材21に第2キャップ部材22を載置した状態が示されており、図6(b)には、第1キャップ部材21から第2キャップ部材22を分離した状態が示されている。また、図5と同様に、第1環状壁21dおよび第2環状壁22aのそれぞれの外周面にハッチングを付して表している。
【0045】
図示されるように本実施例のコンロバーナ10では、炎口領域における第1凸部21sの上端が、非炎口領域における第1環状壁21dの上端よりも上方に位置している。また、炎口領域における第2凸部22sの下端が、非炎口領域における第2環状壁22aの下端よりも下方に位置している。
【0046】
加えて、バーナキャップ20の周方向(図中の左右方向)における第1凸部21sの幅が第2溝22bの幅よりも広くなっていると共に、第1凸部21sにおける周方向の両側面と上端面との間に第1面取り部21tが設けられている。同様に、バーナキャップ20の周方向における第2凸部22sの幅が第1溝21eの幅よりも広くなっていると共に、第2凸部22sにおける周方向の両側面と下端面との間に第2面取り部22tが設けられている。本実施例の第1面取り部21tおよび第2面取り部22tは、バーナキャップ20の径方向(図中の前後方向)に沿って曲率中心を有する円弧が連続した曲面(いわゆるR面取り加工)になっている。
【0047】
そして、第1キャップ部材21に第2キャップ部材22を載置すると、図6(a)に示されるように、非炎口領域では第1環状壁21dの上端と第2環状壁22aの下端とで当接しており、炎口領域では第1凸部21sの第1面取り部21tと第2凸部22sの第2面取り部22tとで当接している。その結果、第1凸部21sの上端が第2溝22bに入り込むと共に、第2凸部22sの下端が第1溝21eに入り込むことによって、第1凸部21sの上端が第2凸部22sの下端よりも上方に位置することになる。
【0048】
このような本実施例のコンロバーナ10では、炎口領域における第1凸部21sの上端側と第2凸部22sの下端側とで上下方向の重なりが生じることにより、第1上段炎口20Uaの上端と第2上段炎口20Ubの下端との間に上下方向の間隔Gを確保することができる。そのため、前述した従来例のように第1凸部21sの上端と第2凸部22sの上端とが同一平面上に位置する場合に比べて、第1上段炎口20Uaの火炎と第2上段炎口20Ubの火炎との干渉を抑制して燃焼の安定化を図ることが可能となる。
【0049】
特に、本実施例のコンロバーナ10では、炎口領域における第1凸部21sの上端が、非炎口領域における第1環状壁21dの上端よりも上方に位置していると共に、炎口領域における第2凸部22sの下端が、非炎口領域における第2環状壁22aの下端よりも下方に位置している。これにより、非炎口領域では、第1環状壁21dの上端と第2環状壁22aの下端とを当接させつつ、炎口領域では、第1凸部21sの上端を第2溝22bに入り込ませると共に、第2凸部22sの下端を第1溝21eに入り込ませることができるので、第1上段炎口20Uaの上端と第2上段炎口20Ubの下端との間で上下方向の間隔Gの確保が可能となる。
【0050】
また、本実施例のコンロバーナ10では、バーナキャップ20の周方向における第1凸部21sの幅が第2溝22bの幅よりも広く、第2凸部22sの幅が第1溝21eの幅よりも広くなっているものの、第1凸部21sに第1面取り部21tが設けられていると共に、第2凸部22sに第2面取り部22tが設けられている。このようにすれば、第1面取り部21tと第2面取り部22tとで当接させながら、第1凸部21sの上端を第2溝22bに入り込ませると共に、第2凸部22sの下端を第1溝21eに入り込ませることができる。こうして第1面取り部21tと第2面取り部22tとの当接箇所によって、第1上段炎口20Uaと第2上段炎口20Ubとが確実に分断されるので、第1上段炎口20Uaの火炎と第2上段炎口20Ubの火炎とが繋がることを回避して安定した燃焼を確保することが可能となる。
【0051】
そして、本実施例のコンロバーナ10では、第1面取り部21tおよび第2面取り部22tとして、いわゆるR面取り加工が施されていることにより、第1面取り部21tと第2面取り部22tとの当接箇所が線接触となる。このため、例えば、コンロバーナ10の上方に置かれた調理容器から煮こぼれた際にバーナキャップ20に煮こぼれ汁がかかったとしても、煮こぼれ汁の焼き付きによる第1キャップ部材21と第2キャップ部材22との固着を、面接触である場合に比べて抑制することができる。
【0052】
また、図7は、本実施例のバーナキャップ20の非炎口領域における内部構造を拡大して示した縦断面図である。図示されるように、第1キャップ部材21の非炎口領域における第1環状壁21dよりも径方向の内側には、上方に向かって遮断壁21gが立設されている。そして、第1キャップ部材21に第2キャップ部材22が載置された状態では、非炎口領域における第1環状壁21dと第2環状壁22aとの合わせ目を、遮断壁21gが径方向の内側から覆うようになっている。
【0053】
このような本実施例のコンロバーナ10では、仮に、炎口領域における第1凸部21sの第1面取り部21tと第2凸部22sの第2面取り部22tとが先に当接することによって、非炎口領域における第1環状壁21dと第2環状壁22aとの合わせ目に隙間が生じたとしても、その隙間の内側が遮断壁21gに覆われているので、隙間からの混合ガスの流出を抑制することができる。
【0054】
以上、本実施例のコンロバーナ10について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0055】
例えば、前述した実施例では、第1凸部21sの第1面取り部21tおよび第2凸部22sの第2面取り部22tとして、何れもR面取り加工が施されていた。しかし、第1面取り部21tおよび第2面取り部22tは、R面取り加工に限られず、何れか一方がいわゆるC面取り加工であってもよい。図8は、第1凸部21sの第1面取り部21tおよび第2凸部22sの第2面取り部22tの一方がR面取り加工であり、他方がC面取り加工である例を示した説明図である。図では、バーナキャップ20の外周面を拡大して示しており、第1環状壁21dおよび第2環状壁22aのそれぞれの外周面にハッチングを付して表している。また、図8(a)には、第1キャップ部材21に第2キャップ部材22を載置した状態が示されており、図8(b)には、第1キャップ部材21から第2キャップ部材22を分離した状態が示されている。
【0056】
図示した例では、第1凸部21sの第1面取り部21tについては、前述した実施例と同様に、R面取り加工が施されているのに対して、第2凸部22sの第2面取り部22tについては、第2凸部22sの下端面に対して45度の角度で傾斜した平面にするC面取り加工が施されている。そして、第1キャップ部材21に第2キャップ部材22を載置すると、図8(a)に示されるように炎口領域では、R面取り加工が施された第1面取り部21tの曲面と、C面取り加工が施された第2面取り部22tの平面とで当接している。もちろん、これとは逆に、第2面取り部22tにR面取り加工が施されており、第1面取り部21tにC面取り加工が施されていてもよい。
【0057】
このようなコンロバーナ10においても、前述した実施例と同様に、第1凸部21sの上端を第2溝22bに入り込ませると共に、第2凸部22sの下端を第1溝21eに入り込ませて、第1上段炎口20Uaの上端と第2上段炎口20Ubの下端との間に上下方向の間隔Gを確保しつつ、第1面取り部21tと第2面取り部22tとの当接箇所によって、第1上段炎口20Uaと第2上段炎口20Ubとを分断することが可能となる。
【0058】
尚、第1凸部21sの第1面取り部21tおよび第2凸部22sの第2面取り部22tの両方をC面取り加工にしてもよい。その場合、第1面取り部21tと第2面取り部22tとの当接箇所は面接触となる。一方、第1面取り部21tおよび第2面取り部22tの少なくとも一方をR面取り加工にしておけば、第1面取り部21tと第2面取り部22tとの当接箇所が線接触となるため、煮こぼれ汁の焼き付きなどによる第1キャップ部材21と第2キャップ部材22との固着を、面接触に比べて抑制することができる。
【0059】
また、前述した実施例では、バーナキャップ20の周方向における第1凸部21sの幅が第2溝22bの幅よりも広く、第2凸部22sの幅が第1溝21eの幅よりも広くなっていた。しかし、これに限られず、図9に示されるように、バーナキャップ20の周方向における第1凸部21sの幅が第2溝22bの幅よりも狭く、第2凸部22sの幅が第1溝21eの幅よりも狭くなっていてもよい。図9では、バーナキャップ20の外周面を拡大して示しており、第1環状壁21dおよび第2環状壁22aのそれぞれの外周面にハッチングを付して表している。
【0060】
図示した例では、炎口領域における第1凸部21sの上端が、非炎口領域における第1環状壁21dの上端よりも上方に位置していると共に、バーナキャップ20の周方向(図中の左右方向)における第1凸部21sの幅が第2溝22bの幅よりも僅かに狭くなっている。また、炎口領域における第2凸部22sの下端が、非炎口領域における第2環状壁22aの下端よりも下方に位置していると共に、バーナキャップ20の周方向における第2凸部22sの幅が第1溝21eの幅よりも僅かに狭くなっている。そして、第1キャップ部材21に第2キャップ部材22を載置すると、非炎口領域では、第1環状壁21dの上端と第2環状壁22aの下端とで当接しており、炎口領域では、第1凸部21sの上端が第2溝22bに入り込むと共に、第2凸部22sの下端が第1溝21eに入り込むことによって、第1凸部21sの上端が第2凸部22sの下端よりも上方に位置することになる。
【0061】
このようなコンロバーナ10では、第1凸部21sの第1面取り部21tや第2凸部22sの第2面取り部22tを設けていなくても、炎口領域における第1凸部21sの上端側と第2凸部22sの下端側とで上下方向の重なりが生じることにより、第1上段炎口20Uaの上端と第2上段炎口20Ubの下端との間に上下方向の間隔Gを確保することができる。但し、第1凸部21sに第2凸部22sが載置されるわけではなく、第1凸部21sと第2凸部22sとの間に周方向(図中の左右方向)の隙間が生じ易いため、第1溝21eの幅や第1凸部21sの幅の公差、および第2溝22bの幅や第2凸部22sの幅の公差について厳密に管理する必要がある。これに対して、前述した実施例のように第1面取り部21tと第2面取り部22tとで当接するようにすれば、当接箇所によって第1上段炎口20Uaと第2上段炎口20Ubとを分断することができる。
【0062】
また、前述した実施例では、炎口領域における第1凸部21sの上端が、非炎口領域における第1環状壁21dの上端よりも上方に位置している第1条件と、炎口領域における第2凸部22sの下端が、非炎口領域における第2環状壁22aの下端よりも下方に位置している第2条件との両方を満たしていた。しかし、第1条件および第2条件の両方を満たしていなくても、何れか一方を満たしているだけでもよい。例えば、第1条件だけを満たしていれば、非炎口領域で第1環状壁21dの上端と第2環状壁22aの下端とを当接させつつ、炎口領域で第1凸部21sの上端を第2溝22bに入り込ませることができるので、第1上段炎口20Uaの上端と第2上段炎口20Ubの下端との間で上下方向の間隔Gの確保が可能となる。尚、前述した実施例のように第1条件および第2条件の両方を満たしていれば、何れか一方だけを満たしている場合よりも間隔Gを大きく確保することができる。
【0063】
また、前述した実施例では、バーナキャップ20の非炎口領域における第1環状壁21dと第2環状壁22aとの合わせ目を径方向の内側から覆う遮断壁21gが第1キャップ部材21から立設されていた。しかし、遮断壁21gが設けられるのは第1キャップ部材21に限られるわけではなく、第2キャップ部材22の非炎口領域における第2環状壁22aよりも径方向の内側から下方に向かって遮断壁21gが垂設されていてもよい。
【0064】
また、前述した実施例では、大混合管12を通じて上段炎口20U(第1上段炎口20Uaおよび第2上段炎口20Ub)に混合ガスを供給し、小混合管13を通じて下段炎口20Lに混合ガスを供給するタイプのコンロバーナ10(いわゆる親子バーナ)を例に説明した。しかし、本発明の適用は、親子バーナに限られず、小混合管13や下段炎口20Lを有していないタイプ(いわゆるシングルバーナ)であってもよい。
【0065】
さらに、前述した実施例では、コンロバーナ10の上方に置かれた調理容器の温度を検出する温度センサを有していないタイプのコンロバーナ10を例に説明した。しかし、本発明は、温度センサを有するタイプのコンロバーナ10にも適用することが可能である。この場合は、第2キャップ部材22における嵌合筒22dよりも内側に挿通孔を貫通させておくと共に(図4参照)、中央筒体14の内側に立設された温度センサの上部を挿通孔から突出させることとして、付勢バネで上方に付勢された温度センサの上端が調理容器の下面に当接することで調理容器の温度を検出するようにすればよい。
【符号の説明】
【0066】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、
4…五徳、 4a…枠部、 4b…爪部、
5…操作ツマミ、 10…コンロバーナ、 11…バーナボディ、
11a…載置面、 12…大混合管、 13…小混合管、
14…中央筒体、 15…仕切り筒体、 15a…嵌合面、
16…混合室、 16a…内混合室、 16b…外混合室、
17…底板、 17h…貫通孔、 20…バーナキャップ、
20L…下段炎口、 20U…上段炎口、 20Ua…第1上段炎口、
20Ub…第2上段炎口、 21…第1キャップ部材、 21a…隔壁筒、
21b…下段環状壁、 21c…下段溝、 21d…第1環状壁、
21e…第1溝、 21g…遮断壁、 21s…第1凸部、
21t…第1面取り部、 22…第2キャップ部材、 22a…第2環状壁、
22b…第2溝、 22d…嵌合筒、 22s…第2凸部、
22t…第2面取り部、 30…点火プラグ、 31…庇部、
32…火炎センサ、 40…ガス配管、 40a…分岐配管、
40b…分岐配管、 41…元弁、 42a…流量調節弁、
42b…流量調節弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9