(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073208
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】眼用レンズの成形
(51)【国際特許分類】
G02C 7/00 20060101AFI20230518BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G02C7/00
G02C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168193
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2022549827の分割
【原出願日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】63/002,388
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/002,393
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516340043
【氏名又は名称】アドオン オプティクス リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハラーミ,イズハル
(72)【発明者】
【氏名】エングラー,ハイム
(72)【発明者】
【氏名】アーキン,ジェド
(72)【発明者】
【氏名】アーリックマン,アミール
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】バー エレズ,アリエ
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BA03
2H006DA00
(57)【要約】
【課題】 光学設計の要素を好適に維持することである。
【解決手段】 非晶質粘弾性材料から作られ光学設計を有する付加レンズ(24)を備えた装置及び方法が記載されている。付加レンズ(24)の曲率を、付加レンズ(24)を非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2~0.8である温度まで加熱し、付加レンズ(24)を成形することによって、付加レンズ(24)の光学設計の喪失を引き起こすことなくベース眼鏡レンズ(22)の曲率と一致するように変化させる。その後、付加レンズ(24)はベース眼鏡レンズ(22)に固着される。付加レンズ(24)の光学設計は、ベース眼鏡レンズ(22)に固着されると、固着されたベース眼鏡レンズ(22)及び付加レンズ(24)が所望の光学的処方を有する結合レンズ(20)を提供するようなものである。他の適用例も記載されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース眼鏡レンズで用いる方法であって、
付加レンズを前記付加レンズが光学設計を有するように非晶質粘弾性材料から形成すること、
前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱すること、及び
前記付加レンズが前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である前記温度にある間に、前記付加レンズの曲率が前記ベース眼鏡レンズの曲率と一致するように前記付加レンズを成形することによって、
前記付加レンズの前記光学設計の喪失を引き起こすことなく、前記付加レンズの曲率を前記付加レンズの曲率が前記ベース眼鏡レンズの曲率と一致するように変化させること、及び
その後、前記付加レンズを前記ベース眼鏡レンズに固着させることを含み、前記付加レンズの前記光学設計が、前記ベース眼鏡レンズに固着されると、前記固着されたベース眼鏡レンズ及び前記付加レンズが所望の光学的処方を有する結合レンズを提供するようなものである方法。
【請求項2】
前記付加レンズを加熱することが、前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度、及び前記非晶質粘弾性材料のタンデルタがそのピークにある温度より低い温度まで前記付加レンズを加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加レンズを加熱することが、前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度、及び前記非晶質粘弾性材料のタンデルタがそのピークにある温度を下回る少なくともセ氏5度である温度まで前記付加レンズを加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記付加レンズを前記非晶質粘弾性材料から形成することが、前記付加レンズを非晶質熱可塑性材料から形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱することが、前記付加レンズが大きな内部応力を保持することなく、前記付加レンズを成形することを促進することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ベース眼鏡レンズが単焦点光学補正レンズを含み、前記付加レンズを前記ベース眼鏡レンズに固着させることが、所望の光学的処方を提供する結合累進レンズを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記付加レンズを成形することが、前記付加レンズが0.1秒から1時間の期間にわたり前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である前記温度にある間に前記付加レンズを成形することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記付加レンズが光学設計を有するように前記付加レンズを前記非晶質粘弾性材料から形成することが、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング、3次元印刷、鋳造、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された形成プロセスを用いて、前記付加レンズを前記非晶質粘弾性材料から形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱することが、前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.3から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.3から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱することが、前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.5から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱することが、前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.5である温度まで前記付加レンズを加熱することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.5である温度まで前記付加レンズを加熱することが、前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.3である温度まで前記付加レンズを加熱することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記付加レンズが機能性コーティングで被覆されており、前記付加レンズの曲率が前記ベース眼鏡レンズの曲率と一致するように前記付加レンズの曲率を変化させることが、前記機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく前記機能性コーティングの曲率を変化させることを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく前記機能性コーティングの曲率を変化させることが、大きな応力を前記付加レンズに導入することなく前記機能性コーティングの曲率を変化させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく前記機能性コーティングの曲率を変化させることが、大きな応力を前記機能性コーティングに導入することなく前記機能性コーティングの曲率を変化させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱することが、前記機能性コーティングが作られている材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで前記付加レンズを加熱することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記付加レンズがハードコーティングで被覆されており、前記機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく前記機能性コーティングの曲率を変化させることが、大きな応力を前記ハードコーティングに導入することなく前記ハードコーティングの曲率を変化させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記付加レンズがハードコーティングで被覆されており、前記機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく前記機能性コーティングの曲率を変化させることが、大きな応力を前記付加レンズに導入することなく前記ハードコーティングの曲率を変化させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記付加レンズがハードコーティングで被覆されており、前記機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく前記機能性コーティングの曲率を変化させることが、前記ハードコーティングに亀裂を生じさせることなく前記ハードコーティングの曲率を変化させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記付加レンズが、ハードコーティング、反射防止コーティング、超疎水性コーティング、帯電防止コーティング、クリーンコーティング、ブルーライトフィルタ、反射コーティング、抗UVコーティング、フォトクロミックコーティング、偏光コーティング、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された機能性コーティングで被覆されている、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記付加レンズを成形することが、前記付加レンズが前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である前記温度にある間に、0.01から100kg毎平方cmの圧力を前記付加レンズに印加することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記付加レンズを成形することが、前記付加レンズが前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である前記温度にある間に、0.2から1kg毎平方cmの圧力を前記付加レンズに印加することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記付加レンズの曲率が前記ベース眼鏡レンズの曲率と一致するように前記付加レンズを成形することが、前記付加レンズの曲率をプラス/マイナス2ジオプターより大きく変化させることを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記付加レンズの曲率が前記ベース眼鏡レンズの曲率と一致するように前記付加レンズを成形することが、前記付加レンズの曲率を最大でプラス/マイナス4ジオプターだけ変化させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記付加レンズを前記ベース眼鏡レンズに固着させた後に、前記付加レンズから応力を解放するために前記付加レンズに熱処理を適用することを更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記付加レンズを前記ベース眼鏡レンズに固着させた後に、前記付加レンズと前記ベースレンズとの間に位置し得る空孔を除去するように前記結合レンズに加圧処理を適用することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記付加レンズを前記ベース眼鏡レンズに固着させた後に、前記付加レンズと前記ベースレンズとの間に配され得る気泡を除去するように前記結合レンズに加圧処理を適用することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記付加レンズを成形することが、前記付加レンズが前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である前記温度にある間に、比較的柔らかい材料から作られている加圧面を使用して前記付加レンズを型枠に押し付けることを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記付加レンズが前記非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である前記温度にある間に前記付加レンズを成形することが、前記加圧面を介して前記付加レンズを直接加熱することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記加圧面がクッションを備えており、前記加圧面を介して前記付加レンズを直接加熱することが、前記クッション内に配されている加熱流体を使用して前記付加レンズを直接加熱することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記加圧面を介して前記付加レンズを直接加熱することが、前記加圧面に結合されているスパイラル発熱体を介して前記付加レンズを直接加熱することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記スパイラル発熱体の隣接する巻線間の隙間が、スパイラルの中心からスパイラルの外側に向かって小さくなる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記加圧面が90ショアA未満の硬度を有する材料から作られている、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記加圧面が20から85ショアAの硬度を有する材料から作られている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
所与の光学設計を有する結合レンズを形成するように第1のレンズを第2のレンズに固着させることを含む方法であって、
前記固着させることが、
前記第1のレンズ及び前記第2のレンズを、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に接着層を配して、それぞれの内部の圧力を独立に制御可能な第1の圧力チャンバ及び第2の圧力チャンバ内にそれぞれ配置すること、
前記第1のレンズの凸面を、前記第1のレンズの前記凸面の中央領域が初めに前記接着層に接触し、その後前記第1のレンズの前記凸面と前記接着層との接触が、前記第1のレンズの前記凸面が前記接着層によって覆われるようになるまで前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域から外向きに放射状に広がるように前記接着層と接触させること、及び
前記第2のレンズの凹面を、前記第2のレンズの前記凹面の中央領域が初めに前記接着層に接触し、その後前記第2のレンズの前記凹面と前記接着層との接触が、前記第2のレンズの前記凹面が前記接着層によって覆われるようになるまで前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域から外向きに放射状に広がるように前記接着層と接触させることを含む方法。
【請求項36】
前記固着させることが、前記第1のレンズの前記凸面を前記接着層と接触させながら、前記第1の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記固着させることが、前記第2のレンズの前記凹面を前記接着層と接触させながら、前記第2の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域が初めに前記接着層に接触するように、前記第1のレンズの前記凸面を前記接着層と接触させることが、前記第1及び前記第2の圧力チャンバ間の圧力差を適用することによって、前記第1のレンズの前記凸面に面する凸曲面を前記接着層に形成させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域が初めに前記接着層に接触するように、前記第2のレンズの前記凹面を前記接着層と接触させることが、前記第1のレンズの前記凸面が前記接着層で覆われた後に、前記接着層が配された前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域が前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域に接触するように、前記第1のレンズ、前記接着層、及び前記第2のレンズを互いに向かって移動させることを含み、前記第1のレンズの前記凸面の曲率が、前記第2のレンズの前記凹面の曲率より大きい、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、オートクレービング、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、前記第1のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡を除去することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、オートクレービング、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、前記第2のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡を除去することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、前記第1のレンズと前記接着層との間に位置する空孔を除去することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、前記第2のレンズと前記接着層との間に位置する空孔を除去することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記接着層の厚さが20から300ミクロンである、請求項35から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記接着層の厚さが50から200ミクロンである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記固着させることにおける1つ以上の段階において、前記ベースレンズ、前記付加レンズ、前記接着層、前記第1の圧力チャンバ、前記第2の圧力チャンバ、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの要素を加熱することを更に含む、請求項35から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの要素を加熱することが、前記少なくとも1つの要素をセ氏25度から75度の温度まで加熱することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つの要素を加熱することが、前記少なくとも1つの要素を0.1秒から1時間の期間加熱することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
所与の光学設計を有する結合レンズを形成するように、少なくとも1つの凸面を有する第1のレンズを少なくとも1つの凹面を有する第2のレンズに固着させるための装置であって、
それぞれの内部の圧力を独立に制御可能な、前記第1のレンズを収容するように構成されている第1の圧力チャンバ及び前記第2のレンズを収容するように構成されている第2の圧力チャンバと、
前記第1及び前記第2の圧力チャンバ間に配された接着層と、
1つ以上の機械的押し要素と、
前記第1のレンズの前記凸面の中央領域が初めに前記接着層に接触し、その後前記第1のレンズの前記凸面と前記接着層との接触が、前記第1のレンズの前記凸面が前記接着層によって覆われるようになるまで前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域から外向きに放射状に広がるように、前記第1のレンズの前記凸面を前記接着層と接触させるように前記機械的押し要素の1つを駆動し、
前記第2のレンズの前記凹面の中央領域が初めに前記接着層に接触し、その後前記第2のレンズの前記凹面と前記接着層との接触が、前記第2のレンズの前記凹面が前記接着層によって覆われるようになるまで前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域から外向きに放射状に広がるように、前記第2のレンズの前記凹面を前記接着層と接触させるように前記機械的押し要素の1つを駆動するように構成されているコンピュータプロセッサとを含む装置。
【請求項50】
前記コンピュータプロセッサが、前記第1のレンズの前記凸面を前記接着層と接触させるように前記機械的押し要素の1つを駆動しながら、前記第1の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させるように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記コンピュータプロセッサが、前記第2のレンズの前記凹面を前記接着層と接触させるように前記機械的押し要素の1つを駆動しながら、前記第2の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させるように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記コンピュータプロセッサが、前記第1及び前記第2の圧力チャンバ間の圧力差を適用することによって、前記第1のレンズの前記凸面に面する凸曲面を前記接着層に形成させるように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項53】
前記装置が、前記第1のレンズの前記凸面の曲率が前記第2のレンズの前記凹面の曲率より大きくなるように成形されている第1のレンズ及び第2のレンズで使用され、前記コンピュータプロセッサが、前記第1のレンズの前記凸面が前記接着層で覆われた後に、前記接着層が配された前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域が前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域に接触するように、前記第1のレンズ、前記接着層、及び前記第2のレンズを互いに向かって移動させるように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項54】
前記コンピュータプロセッサが、前記第1の圧力チャンバ内に空気圧を印加することによって、前記第1のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡及び前記第1のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項55】
前記コンピュータプロセッサが、前記第1の圧力チャンバ内に空気圧を印加することによって、前記第2のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡及び前記第2のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項56】
前記1つ以上の機械的押し要素が、機械的圧力を印加することによって、前記第1のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡及び前記第1のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項57】
1つ以上の前記機械的押し要素が、機械的圧力を印加することによって、前記第2のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡及び前記第2のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項58】
前記付加レンズと前記接着層との間に捕捉される気泡、前記第2のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡、前記第1のレンズと前記接着層との間に配される空孔、及び前記第2のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている加熱及び/又は圧力チャンバを更に備える、請求項49に記載の装置。
【請求項59】
前記接着層の厚さが20から300ミクロンである、請求項49から58のいずれか一項に記載の装置。
【請求項60】
前記接着層の厚さが50から200ミクロンである、請求項59に記載の装置。
【請求項61】
前記固着させることにおける1つ以上の段階において、前記ベースレンズ、前記付加レンズ、前記接着層、前記第1の圧力チャンバ、前記第2の圧力チャンバ、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの要素を加熱するように構成されている加熱コンポーネントを更に備える、請求項49から58のいずれか一項に記載の装置。
【請求項62】
前記加熱コンポーネントが、前記少なくとも1つの要素をセ氏25度から75度の温度まで加熱するように構成されている、請求項61に記載の装置。
【請求項63】
前記加熱コンポーネントが、前記少なくとも1つの要素を0.1秒から1時間の期間加熱するように構成されている、請求項61に記載の装置。
【請求項64】
前記機械的押し要素の少なくとも1つが、90ショアA未満の硬度を有する材料から作られている、請求項49から58のいずれか一項に記載の装置。
【請求項65】
前記機械的押し要素の少なくとも1つが、20から85ショアAの硬度を有する材料から作られている、請求項64に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年3月31日に出願された「Shaping an ophthalmic lens」と題するHalahmiらによる米国仮特許出願第63/002,388号、及び2020年3月31日に出願された「Stress-release procedure for an ophthalmic lens」と題するHalahmiらによる米国仮特許出願第63/002,393号の優先権を主張するものであり、上記米国仮出願はいずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の一部の適用例は概して眼用レンズに関する。具体的には一部の適用例は眼用レンズを成形することに関する。
【背景技術】
【0003】
眼用レンズは通常、弾性特性と塑性特性の両方を示す非晶質の粘弾性ポリマーから作られる。純粋な弾性特性を有する理論的材料では、応力に対する反応として歪みが即座に発現する。純粋な塑性特性を有する理論的材料では、応力から生じる歪みが、材料への応力の印加に対して(数ミリ秒から数年)遅れて発現する。塑性に関連する現象は、クリープ(応力が塑性材料に印加される限り歪みが絶えず変化する)及び緩和(塑性材料が所定の寸法に保持され内部プリロード応力を有する限り応力が低下する)である。
【0004】
理論的な純粋な塑性材料に、正弦波状に変化する応力による負荷がかかるとき、結果として生じる歪みは、ただし位相シフトと特徴付けられ得るある遅延後に検知される。現実世界の材料は通常、塑性特性と弾性特性の両方を示す粘弾性である。粘弾性材料は位相シフトを示すが、理論的な純粋な塑性材料の位相シフトより小さい。これは、応力対時間の正弦曲線と、結果として得られる、応力対時間の曲線に対して位相シフトした歪み対時間の正弦曲線とを示す
図1に示されている。
【0005】
粘弾性材料への力学的エネルギーの印加に対する材料の反応が、いずれも温度に依存したその貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)によって特徴付けられることがある。材料の貯蔵弾性率は、材料の弾性挙動の測度、すなわち材料に印加される力学的エネルギーがポリマー鎖に沿って結合伸縮時に貯蔵され、回復時に解放される程度である。損失弾性率は、材料の塑性挙動の測度、すなわち材料に印加される力学的エネルギーがポリマー鎖間の内部摩擦によって失われる(かかるエネルギーは貯蔵されないため解放されない)程度である。同様に温度に依存し、材料のタンデルタとして知られている更なるパラメータが、任意の温度における損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比を測定する。このように、材料のタンデルタは、材料が散逸し寸法不安定になる傾向の測度である。上記のように、一般的に上述の3つのパラメータ(すなわち、貯蔵弾性率、損失弾性率、及びタンデルタ)は全て、材料の温度が変化すると変化する。上述のパラメータは、動的機械分析(「DMA分析」としても知られている)を用いて材料を分析することによって決定される。
【0006】
老眼は40歳を超えた人口の大部分に次第に影響を及ぼす症状である。この症状は近くの物体にはっきりと焦点を合わせる能力を次第に悪化させることになる。老眼は通常、レーザ光線による近視手術(すなわちLASIK)やその他の種類の手術がこの症状の治療に向かないことから、多焦点眼鏡、累進眼鏡又はコンタクトレンズで手当てされる。
【0007】
眼鏡には老眼及びその他の調節障害を矯正する矯正レンズが使用される。老眼に苦しむ多くの人々は近視(すなわち近眼)にも苦しむ。このような人々の基本的な解決策は多焦点眼鏡レンズの使用である。多焦点眼鏡レンズは、それぞれがそれぞれの距離にある物体に適した2つ以上のレンズ度数を有する。二焦点レンズは2つのレンズ度数を有し、三焦点レンズは3つのレンズ度数を有する。累進眼鏡レンズは増加するレンズ度数の勾配によって特徴付けられる。勾配は、着用者の距離処方で始まり、レンズ下部において最大加入度数、又は完全読書加入度(full reading addition)に達する。レンズ中央の加入度は通常、コンピュータ画面上の文字を読むことなど、中距離の明確な視覚を可能にする。レンズ表面の累進度数勾配の長さはレンズの設計に依存し、最終加入度数は一般的に0.50~3.50ジオプターである。処方される加入度の値は、患者の老眼の度合に依存する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一部の適用例によれば、1つ以上のレンズが、ベースレンズと、ベースレンズに固着された付加レンズとから作られている。一部の適用例では、付加レンズは累進レンズであり、ベースレンズは単焦点の矯正レンズ(例えば遠方視矯正レンズ)であり、付加レンズの光学設計は、ベースレンズに固着されると結合レンズが所望の処方と一致する累進レンズになるようなものである。
【0009】
背景部分で既に説明したように、粘弾性材料への力学的エネルギーの印加に対する材料の反応は、その貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)によって特徴付けられることがある。材料の貯蔵弾性率は、その弾性挙動の測度、すなわち材料に印加される力学的エネルギーがポリマー鎖に沿って結合伸縮時に貯蔵され、回復時に解放される程度である。損失弾性率は、材料の塑性挙動の測度、すなわち材料に印加される力学的エネルギーがポリマー鎖間の内部摩擦によって失われる(かかるエネルギーは貯蔵されないため解放されない)程度である。材料のタンデルタとして知られている更なるパラメータが、損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比を測定する。このように、材料のタンデルタは、材料が散逸し寸法が不安定になる傾向の測度である。一般的に上述の3つのパラメータ(すなわち、貯蔵弾性率、損失弾性率、及びタンデルタ)は全て、材料の温度が変化すると変化する。上述のパラメータは、動的機械分析(「DMA分析」としても知られている)を用いて材料を分析することによって決定される。
【0010】
典型的には、付加レンズは非晶質粘弾性ポリマーから作られ、上記のニーズに合わせて(例えば、ベースレンズに固着されたときに、ベースレンズと付加レンズの結合体が累進レンズを形成するように)、所与のレンズ光学設計を示すように初めに形成される。例えば、付加レンズは、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング、3次元印刷、及び/又は鋳造などの形成プロセスを用いて初めに形成されることがある。付加レンズをベースレンズに固着させるために、一般的に、付加レンズが付加レンズの曲率がベースレンズの曲率と一致するような更なる成形手順を経ることが望ましい。具体的には、ベースレンズに固着されている付加レンズの表面は、固着されているベースレンズの表面と実質的に一致するように成形される必要がある。一部の例では、本明細書に記載の固着プロセスを促進するために、付加レンズの曲率をベースレンズの曲率よりわずかに大きくすることに留意されたい。更に、一部の例では、具体的には付加レンズ及びベースレンズの曲率が互いに同様である場合、固着ステップの前に付加レンズを成形する必要がないことに留意されたい。しかしながら、本発明者らは、付加レンズとベースレンズの結合体のかなりの割合が通常、本明細書に記載の成形技術が付加レンズに永続的に適用される必要があることが分かった。これは特に、眼科処方が、ベースレンズの凹曲度に影響を及ぼす傾向がある円柱及び関連する円柱軸の値を含む場合に言える。
【0011】
付加レンズの曲率がベースレンズの曲率と一致するように付加レンズを再成形することの代替案が、付加レンズが所望の光学設計を有するとともに、ベースレンズの形状と一致するように成形されるように初めに付加レンズを成形することであることに留意されたい。ただしこれは、小売業者や光学研究所が蓄えることが必要となる付加レンズの数を大幅に増やすことになる。なぜなら、形の異なる各ベースレンズと一致するように、所与の光学設計を有しているが曲率が異なる付加レンズの最小在庫管理単位を別々に蓄えることが必要になるためである。(上記のように、これは特に、眼科処方が、ベースレンズの凹曲度に影響を及ぼす傾向がある円柱及び関連する円柱軸の値を含む場合に言える。)代替的に、このことは、付加レンズが(患者の光学的要件及びベースレンズの選択に基づいて)特注で製造されなければならなくなることを意味し、その場合、伝統的な製造技術を用いるのではなく、ベースレンズと付加レンズを使用して累進レンズを製造することの利点の多くが失われることになる。
【0012】
レンズ成形は、レンズの予め指定されたサブエリアが(数ミクロンの厚さの差のレベルで)非常に精密であるため非常に困難である。累進レンズを制御されていない方法で成形することは、レンズの光学値を損なう危険を冒す。付加レンズが上記のように成形された後に、付加レンズが、その予め指定された臨床的に重要なサブエリアにおける光学設計を、再成形されベースレンズに固着された後にISO標準内に保持するだけでなく、レンズの予め指定された臨床的に重要なサブエリアにおいてほぼ同じ残留円柱数を保持することも望ましい。更に一般的には、レンズがその当初の光学設計をレンズの予め指定されたサブエリアにおける許容範囲内に保持することが、眼用レンズが(付加レンズが破裂したり、その寿命期間中に応力亀裂を起こしたりする可能性がある種類の)大きな内部応力を保持することなく達成されることが望ましい。一部の適用例では、本明細書に記載のレンズ成形プロセスを適用することによって、付加レンズの曲率は、レンズ光学設計を保持しつつ、かつ(上記のように)大きな応力をレンズに導入することなく、プラス/マイナス1ジオプター超(例えば、プラス/マイナス2ジオプター超)、及び/又は最大プラス/マイナス4ジオプター(例えば最大プラス/マイナス3ジオプター)だけ変化することがある。
【0013】
本願の発明者らは、タンデルタが0.8より大きい(一部の例では、0.5又は0.3より大きい)温度で付加レンズが成形される場合、一般的にレンズ光学設計に回復不能な障害が生じることが分かった。これは、レンズがかかる温度で応力を受けて成形される場合に、レンズの変形が一般的に塑性変形を引き起こし、その結果、レンズが周囲温度に戻ったときにその光学設計の要素が失われ、不要な円柱が現れることがあるためである。一方、発明者らは、タンデルタが0.2未満(一部の例では、0.5未満、又は0.3未満)の温度で付加レンズが成形される場合、これによって付加レンズが、そのレンズ光学設計を保持することができるが、後に亀裂、又はレンズが応力によりその透明性を失う領域へと発展し得る内部応力をレンズに残すことが分かった。例えば、レンズは、内部応力と、熱サイクル、熱衝撃、機械的衝撃、又は(例えば、化学洗浄剤、及び/又は体から分泌される流体に起因する)環境ストレスとの組み合わせの結果として亀裂を形成することがある。ポリマー、特に非晶質ポリマーの低速亀裂現象はよく知られており、付加レンズとその寿命期間中に接触するおそれがある脂肪(例えば、手や顔からの人体の脂肪又は油)、油、洗浄剤及び石鹸によって更に加速される。タンデルタが0.2未満(一部の例では、0.5未満、又は0.3未満)の温度で付加レンズを成形することに伴う追加的なリスクは、付加レンズがその原形に戻る傾向があることであり、これによってベースレンズから分離されるようになる。
【0014】
したがって、本発明の一部の適用例によれば、付加レンズは、付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さいタンデルタを有する温度で成形される。一部の適用例では、付加レンズは、付加レンズが作られている材料が0.2から0.5、又は0.2から0.3のタンデルタを有する温度で成形される。代替的又は付加的に、付加レンズは、付加レンズが作られている材料が0.3から0.8、又は0.5から0.8のタンデルタを有する温度で成形される。更に一般的に、付加レンズが成形される温度は、タンデルタ/温度曲線のピークより低い少なくともセ氏5度(例えば少なくともセ氏10度)である。一般的に、上述のタンデルタ範囲内で、材料は、低残留応力のみを維持しながらその当初のレンズ光学設計を保持する。
【0015】
したがって、本発明の一部の適用例によれば、ベース眼鏡レンズで用いる方法であって、
付加レンズが光学設計を有するように付加レンズを非晶質粘弾性材料から形成すること、
付加レンズの曲率を付加レンズの曲率がベース眼鏡レンズの曲率と一致するように、
非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで付加レンズを加熱すること、及び
付加レンズが非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である上記温度である間に、付加レンズの曲率がベース眼鏡レンズの曲率と一致するように付加レンズを成形することによって、
付加レンズの光学設計の喪失を引き起こすことなく変化させること、及び
その後、付加レンズをベース眼鏡レンズに固着させることを含み、付加レンズの光学設計が、ベース眼鏡レンズに固着されると、固着されたベース眼鏡レンズ及び付加レンズが所望の光学的処方を有する結合レンズを提供するようなものである方法が提供される。
【0016】
一部の適用例では、付加レンズを加熱することは、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度、及び非晶質粘弾性材料のタンデルタがそのピークにある温度より低い温度まで付加レンズを加熱することを含む。
【0017】
一部の適用例では、付加レンズを加熱することは、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度、及び非晶質粘弾性材料のタンデルタがそのピークにある温度を下回る少なくともセ氏5度である温度まで付加レンズを加熱することを含む。
【0018】
一部の適用例では、付加レンズを非晶質粘弾性材料から形成することは、付加レンズを非晶質熱可塑性材料から形成することを含む。
【0019】
一部の適用例では、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで付加レンズを加熱することは、付加レンズが大きな内部応力を保持することなく、付加レンズを成形することを促進することを含む。
【0020】
一部の適用例では、ベース眼鏡レンズは単焦点光学補正レンズを含み、付加レンズをベース眼鏡レンズに固着させることは、所望の光学的処方を提供する結合累進レンズを形成することを含む。
【0021】
一部の適用例では、付加レンズを成形することは、付加レンズが0.1秒から1時間の期間にわたり非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である上記温度にある間に付加レンズを成形することを含む。
【0022】
一部の適用例では、付加レンズが光学設計を有するように付加レンズを非晶質粘弾性材料から形成することは、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング、3次元印刷、鋳造、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された形成プロセスを用いて、付加レンズを非晶質粘弾性材料から形成することを含む。
【0023】
一部の適用例では、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで付加レンズを加熱することは、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.3から0.8である温度まで付加レンズを加熱することを含む。
【0024】
一部の適用例では、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.3から0.8である温度まで付加レンズを加熱することは、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.5から0.8である温度まで付加レンズを加熱することを含む。
【0025】
一部の適用例では、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで付加レンズを加熱することは、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.5である温度まで付加レンズを加熱することを含む。
【0026】
一部の適用例では、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.5である温度まで付加レンズを加熱することは、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.3である温度まで付加レンズを加熱することを含む。
【0027】
一部の適用例では、付加レンズは機能性コーティングで被覆されており、付加レンズの曲率がベース眼鏡レンズの曲率と一致するように付加レンズの曲率を変化させることが、機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく機能性コーティングの曲率を変化させることを含む。
【0028】
一部の適用例では、機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく機能性コーティングの曲率を変化させることは、大きな応力を付加レンズに導入することなく機能性コーティングの曲率を変化させることを含む。
【0029】
一部の適用例では、機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく機能性コーティングの曲率を変化させることは、大きな応力を機能性コーティングに導入することなく機能性コーティングの曲率を変化させることを含む。
【0030】
一部の適用例では、非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで付加レンズを加熱することは、機能性コーティングが作られている材料のタンデルタが0.2から0.8である温度まで付加レンズを加熱することを含む。
【0031】
一部の適用例では、付加レンズはハードコーティングで被覆されており、機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく機能性コーティングの曲率を変化させることは、大きな応力をハードコーティングに導入することなくハードコーティングの曲率を変化させることを含む。
【0032】
一部の適用例では、付加レンズはハードコーティングで被覆されており、機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく機能性コーティングの曲率を変化させることは、大きな応力を付加レンズに導入することなくハードコーティングの曲率を変化させることを含む。
【0033】
一部の適用例では、付加レンズはハードコーティングで被覆されており、機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく機能性コーティングの曲率を変化させることは、ハードコーティングに亀裂を生じさせることなくハードコーティングの曲率を変化させることを含む。
【0034】
一部の適用例では、付加レンズは、ハードコーティング、反射防止コーティング、超疎水性コーティング、帯電防止コーティング、クリーンコーティング、ブルーライトフィルタ、反射コーティング、抗UVコーティング、フォトクロミックコーティング、偏光コーティング、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された機能性コーティングで被覆されている。
【0035】
一部の適用例では、付加レンズを成形することは、付加レンズが非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である上記温度にある間に、0.01から100kg毎平方cmの圧力を付加レンズに印加することを含む。
【0036】
一部の適用例では、付加レンズを成形することは、付加レンズが非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である上記温度にある間に、0.2から1kg毎平方cmの圧力を付加レンズに印加することを含む。
【0037】
一部の適用例では、付加レンズの曲率がベース眼鏡レンズの曲率と一致するように付加レンズを成形することは、付加レンズの曲率をプラス/マイナス2ジオプターより大きく変化させることを含む。
【0038】
一部の適用例では、付加レンズの曲率がベース眼鏡レンズの曲率と一致するように付加レンズを成形することは、付加レンズの曲率を最大でプラス/マイナス4ジオプターだけ変化させることを含む。
【0039】
一部の適用例では、方法は、付加レンズをベース眼鏡レンズに固着させた後に、付加レンズから応力を解放するために付加レンズに熱処理を施すことを更に含む。
【0040】
一部の適用例では、方法は、付加レンズをベース眼鏡レンズに固着させた後に、付加レンズとベースレンズとの間に位置し得る空孔を除去するように結合レンズに加圧処理を施すことを更に含む。
【0041】
一部の適用例では、方法は、付加レンズをベース眼鏡レンズに固着させた後に、付加レンズとベースレンズとの間に配され得る気泡を除去するように結合レンズに加圧処理を施すことを更に含む。
【0042】
一部の適用例では、付加レンズを成形することは、付加レンズが非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である上記温度にある間に、比較的柔らかい材料から作られている加圧面を使用して付加レンズを型枠に押し付けることを含む。
【0043】
一部の適用例では、付加レンズが非晶質粘弾性材料のタンデルタが0.2から0.8である上記温度にある間に付加レンズを成形することは、加圧面を介して付加レンズを直接加熱することを含む。
【0044】
一部の適用例では、加圧面はクッションを備えており、加圧面を介して付加レンズを直接加熱することは、クッション内に配されている加熱流体を使用して付加レンズを直接加熱することを含む。
【0045】
一部の適用例では、加圧面を介して付加レンズを直接加熱することは、加圧面に結合されているスパイラル発熱体を介して付加レンズを直接加熱することを含む。
【0046】
一部の適用例では、スパイラル発熱体の隣接する巻線間の隙間は、スパイラルの中心からスパイラルの外側に向かって小さくなる。
【0047】
一部の適用例では、加圧面は、90ショアA未満の硬度を有する材料から作られている。
【0048】
一部の適用例では、加圧面は、20から85ショアAの硬度を有する材料から作られている。
【0049】
本発明の一部の適用例によれば、
所与の光学設計を有する結合レンズを形成するように、第1のレンズを第2のレンズに固着させることを含む方法であって、
固着させることが、
第1のレンズ及び第2のレンズを、第1のレンズと第2のレンズとの間に接着層を配して、それぞれの内部の圧力を独立に制御可能な第1の圧力チャンバ及び第2の圧力チャンバ内にそれぞれ配置すること、
第1のレンズの凸面を、第1のレンズの凸面の中央領域が初めに接着層に接触し、その後第1のレンズの凸面と接着層との接触が、第1のレンズの凸面が接着層によって覆われるようになるまで第1のレンズの凸面の中央領域から外向きに放射状に広がるように接着層と接触させること、及び
第2のレンズの凹面を、第2のレンズの凹面の中央領域が初めに接着層に接触し、その後第2のレンズの凹面と接着層との接触が、第2のレンズの凹面が接着層によって覆われるようになるまで第2のレンズの凹面の中央領域から外向きに放射状に広がるように接着層と接触させることを含む方法が更に提供される。
【0050】
一部の適用例では、固着させることは、第1のレンズの凸面を接着層に接触させながら、第1の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させることを更に含む。
【0051】
一部の適用例では、固着させることは、第2のレンズの凹面を接着層に接触させながら、第2の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させることを更に含む。
【0052】
一部の適用例では、第1のレンズの凸面の中央領域が初めに接着層に接触するように、第1のレンズの凸面を接着層と接触させることは、第1及び第2の圧力チャンバ間の圧力差を適用することによって、第1のレンズの凸面に面する凸曲面を接着層に形成させることを含む。
【0053】
一部の適用例では、第2のレンズの凹面の中央領域が初めに接着層に接触するように、第2のレンズの凹面を接着層と接触させることは、第1のレンズの凸面が接着層で覆われた後に、接着層が配された第1のレンズの凸面の中央領域が第2のレンズの凹面の中央領域に接触するように、第1のレンズ、接着層、及び第2のレンズを互いに向かって移動させることを含み、第1のレンズの凸面の曲率は、第2のレンズの凹面の曲率より大きい。
【0054】
一部の適用例では、方法は、空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、オートクレービング、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、第1のレンズと接着層との間に捕捉される気泡を除去することを更に含む。
【0055】
一部の適用例では、方法は、空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、オートクレービング、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、第2のレンズと接着層との間に捕捉される気泡を除去することを更に含む。
【0056】
一部の適用例では、方法は、空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、第1のレンズと接着層との間に位置する空孔を除去することを更に含む。
【0057】
一部の適用例では、方法は、空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、第2のレンズと接着層との間に位置する空孔を除去することを更に含む。
【0058】
一部の適用例では、接着層の厚さは20から300ミクロンである。
【0059】
一部の適用例では、接着層の厚さは50から200ミクロンである。
【0060】
一部の適用例では、方法は、固着させることにおける1つ以上の段階において、ベースレンズ、付加レンズ、接着層、第1の圧力チャンバ、第2の圧力チャンバ、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの要素を加熱することを更に含む。
【0061】
一部の適用例では、少なくとも1つの要素を加熱することは、少なくとも1つの要素をセ氏25度から75度の温度まで加熱することを含む。
【0062】
一部の適用例では、少なくとも1つの要素を加熱することは、少なくとも1つの要素を0.1秒から1時間の期間加熱することを含む。
【0063】
本発明の一部の適用例によれば、所与の光学設計を有する結合レンズを形成するように、少なくとも1つの凸面を有する第1のレンズを少なくとも1つの凹面を有する第2のレンズに固着させるための装置であって、
それぞれの内部の圧力を独立に制御可能な、第1のレンズを収容するように構成されている第1の圧力チャンバ及び第2のレンズを収容するように構成されている第2の圧力チャンバと、
第1及び第2の圧力チャンバ間に配された接着層と、
1つ以上の機械的押し要素と、
第1のレンズの凸面の中央領域が初めに接着層に接触し、その後第1のレンズの凸面と接着層との接触が、第1のレンズの凸面が接着層によって覆われるようになるまで第1のレンズの凸面の中央領域から外向きに放射状に広がるように、第1のレンズの凸面を接着層と接触させるように機械的押し要素の1つを駆動し、
第2のレンズの凹面の中央領域が初めに接着層に接触し、その後第2のレンズの凹面と接着層との接触が、第2のレンズの凹面が接着層によって覆われるようになるまで第2のレンズの凹面の中央領域から外向きに放射状に広がるように、第2のレンズの凹面を接着層と接触させるように機械的押し要素の1つを駆動するように構成されているコンピュータプロセッサとを含む装置が更に提供される。
【0064】
一部の適用例では、コンピュータプロセッサは、第1のレンズの凸面を接着層に接触させるように機械的押し要素の1つを駆動しながら、第1の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させるように構成されている。
【0065】
一部の適用例では、コンピュータプロセッサは、第2のレンズの凹面を接着層に接触させるように機械的押し要素の1つを駆動しながら、第2の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させるように構成されている。
【0066】
一部の適用例では、コンピュータプロセッサは、第1及び第2の圧力チャンバ間の圧力差を適用することによって、第1のレンズの凸面に面する凸曲面を接着層に形成させるように構成されている。
【0067】
一部の適用例では、装置は、第1のレンズの凸面の曲率が第2のレンズの凹面の曲率より大きくなるように成形されている第1のレンズ及び第2のレンズで使用され、コンピュータプロセッサは、第1のレンズの凸面が接着層で覆われた後に、接着層が配された第1のレンズの凸面の中央領域が第2のレンズの凹面の中央領域に接触するように、第1のレンズ、接着層、及び第2のレンズを互いに向かって移動させるように構成されている。
【0068】
一部の適用例では、コンピュータプロセッサは、第1の圧力チャンバ内に空気圧を印加することによって、第1のレンズと接着層との間に捕捉される気泡及び第1のレンズと接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている。
【0069】
一部の適用例では、コンピュータプロセッサは、第2の圧力チャンバ内に空気圧を印加することによって、第2のレンズと接着層との間に捕捉される気泡及び第2のレンズと接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている。
【0070】
一部の適用例では、1つ以上の機械的押し要素は、機械的圧力を印加することによって、第1のレンズと接着層との間に捕捉される気泡及び第1のレンズと接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている。
【0071】
一部の適用例では、1つ以上の機械的押し要素は、機械的圧力を印加することによって、第2のレンズと接着層との間に捕捉される気泡及び第2のレンズと接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている。
【0072】
一部の適用例では、装置は、付加レンズと接着層との間に捕捉される気泡、第2のレンズと接着層との間に捕捉される気泡、第1のレンズと接着層との間に配される空孔、及び第2のレンズと接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている加熱及び/又は圧力チャンバを更に備える。
【0073】
一部の適用例では、接着層の厚さは20から300ミクロンである。
【0074】
一部の適用例では、接着層の厚さは50から200ミクロンである。
【0075】
一部の適用例では、装置は、固着させることにおける1つ以上の段階において、ベースレンズ、付加レンズ、接着層、第1の圧力チャンバ、第2の圧力チャンバ、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの要素を加熱するように構成されている加熱コンポーネントを更に備える。
【0076】
一部の適用例では、加熱コンポーネントは、少なくとも1つの要素をセ氏25度から75度の温度まで加熱するように構成されている。
【0077】
一部の適用例では、加熱コンポーネントは、少なくとも1つの要素を0.1秒から1時間の期間加熱するように構成されている。
【0078】
一部の適用例では、機械的押し要素の少なくとも1つは、90ショアA未満の硬度を有する材料から作られている。
【0079】
一部の適用例では、機械的押し要素の少なくとも1つは、20から85ショアAの硬度を有する材料から作られている。
【0080】
本発明は、図面と照らし合わせた以下の本発明の実施形態の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】従来技術において知られており本明細書の背景部分に記載した、正弦波負荷により負荷がかけられ、遅延正弦波変位に反応する粘弾性材料の応力対時間曲線及び歪み対時間曲線を示すグラフである。
【
図2】本発明の一部の適用例に係る、ベースレンズと、ベースレンズに固着された付加レンズとから構成される1つ以上のレンズを含む眼鏡の概略図である。
【
図3A】本発明の一部の適用例に係る、付加レンズが作られている一般的な各材料の貯蔵弾性率、損失弾性率及びタンデルタの温度に伴う変化を示すグラフである。
【
図3B】本発明の一部の適用例に係る、付加レンズが作られている一般的な各材料の貯蔵弾性率、損失弾性率及びタンデルタの温度に伴う変化を示すグラフである。
【
図4】本発明の一部の適用例に従って通常実行されるステップを要約したフローチャートである。
【
図5】本発明の一部の適用例に係る、レンズを一定の温度まで加熱しながら成形するための装置の概略図である。
【
図6】本発明の一部の適用例に係る、レンズを一定の温度まで加熱しながら成形するための装置の概略図である。
【
図7A】本発明の一部の適用例に係る、付加レンズをベースレンズに固着させるための固着プロセスの各ステップの概略図である。
【
図7B】本発明の一部の適用例に係る、付加レンズをベースレンズに固着させるための固着プロセスの各ステップの概略図である。
【
図7C】本発明の一部の適用例に係る、付加レンズをベースレンズに固着させるための固着プロセスの各ステップの概略図である。
【
図7D】本発明の一部の適用例に係る、付加レンズをベースレンズに固着させるための固着プロセスの各ステップの概略図である。
【
図8】本発明の一部の適用例に係る、付加レンズ及びベースレンズが互いに固着された後に、結合された付加レンズ及びベースレンズに熱及び/又は圧力を印加するのに使用されるチャンバの概略図である。
【
図9A】本発明の一部の適用例に従って作られるレンズに対してどのように許容性測定が実行されるかを示すグラフである。
【
図9B】本発明の一部の適用例に従って作られるレンズに対してどのように許容性測定が実行されるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
これより
図2を参照する。
図2は、本発明の一部の適用例に係る、ベースレンズ22と、ベースレンズに固着された付加レンズ24とから構成されている1つ以上の結合レンズ20を眼鏡フレーム21内に備える眼鏡18の概略図である。一部の適用例では、結合レンズ20は累進レンズであり、ベースレンズ22は単焦点矯正レンズ(例えば遠方視矯正レンズ)であり、付加レンズ24の光学設計は、ベースレンズ22に固着されると、結合レンズ20が所望の処方に一致する累進レンズになるようなものである。一般的に付加レンズ24は、ベースレンズ22の内面(すなわち、ユーザが着用する眼鏡に結合レンズ20が組み込まれるときにユーザの目に近い方の、通常は凹状の面)に結合される。代替的に、付加レンズ24は、ベースレンズ22の外面(すなわち、ユーザが着用する眼鏡に結合レンズ20が組み込まれるときにユーザの目から遠い方の、通常は凸状の面)に結合される。
図2の拡大部では、付加レンズの外縁と眼鏡フレーム21との間に隙間が示されていることに留意されたい。一般的に、かかる隙間は実際には存在せず、かかる隙間は、付加レンズ24及びベースレンズ22を示すために、単に例示を目的として
図2に示されている。
【0083】
本発明の一部の適用例が上記の例(ベースレンズ22が単焦点矯正レンズ(例えば遠方視矯正レンズ)であり、付加レンズ24の光学設計が、ベースレンズ22に固着されると、結合レンズ20が所望の処方に一致する累進レンズになるようなものである)を参照して説明されるが、本願の範囲は、本明細書に記載のレンズ成形技術をベースレンズ22と付加レンズ24の他の結合体に適用することを含む。例えば、本明細書に記載のレンズ成形技術は、特定の光学機能性(例えば、偏光、単焦点追加処方など)を提供し、累進特性を有するベースレンズに固着されるように構成されている付加レンズに適用される可能性がある。代替的に、本明細書に記載のレンズ成形技術は、光学的に補正しない特性を有するベースレンズ、例えば安全ゴーグルや水泳用ゴーグルのレンズに付加されるように構成されている付加レンズに適用される。一部の適用例では、本明細書に記載のレンズ成形技術は、機能性コーティング、例えば以下に記載される機能性コーティングのいずれかが被覆されている平たい付加レンズに適用される。代替的に、本明細書に記載のレンズ成形技術は、光学機能性(例えば、単焦点光学補正機能、累進光学補正機能など)を提供し、太陽からの保護(例えば、UV保護及び/又は偏光)を与えるベースレンズに固着されるように構成されている付加レンズに適用される。また、レンズ成形技術の一部の適用例が本明細書では付加レンズについて説明されているが、本願の範囲は、本明細書に記載の成形プロセスをあるレンズ設計を有する任意の眼用レンズに適用することを含む。以下で更に詳細に説明するように、一般的に本明細書に記載の技術は、眼用レンズの再成形を促進するように構成されており、その結果、レンズは、再成形されベースレンズ22に固着された後に、その予め指定された臨床的に重要なサブエリアにおける光学設計をISO標準内に保持するだけでなく、レンズの予め指定された臨床的に重要なサブエリアにおいてほぼ同じ残留円柱数を保持する。更に一般的に、レンズがその当初の光学設計をレンズの予め指定されたサブエリアにおける許容範囲内に保持することが、眼用レンズが(付加レンズが破裂したり、その寿命期間中に応力亀裂を起こしたりする可能性がある種類の)大きな内部応力を保持することなく達成される。レンズがその当初の光学設計をレンズの予め指定されたサブエリアにおける許容範囲内に保持することについての更なる詳細は、
図5A及び5Bを参照して以下で説明される。
【0084】
これより
図3A及び
図3Bを参照する。
図3A及び
図3Bは、本発明の一部の適用例に係る、付加レンズ24が作られている一般的な材料の貯蔵弾性率(曲線30)、損失弾性率(曲線32)及びタンデルタ(曲線34)の温度に伴う変化を示すグラフである。一般的には、付加レンズ24は、弾性特性と塑性特性の両方を示す非晶質粘弾性ポリマー(例えば、非晶質熱可塑性ポリマー)から作られている。更に一般的に、付加レンズは、ホモポリマー及びコポリマーのポリメチルメタクリレート(PMMA)グループのポリマー、例えば耐衝撃性改質PMMAポリマーから作られている。更に一般的に、付加レンズが作られている材料は、付加レンズが結合レンズ20の使用中に曝される可能性が高い周囲温度の全ての範囲内で付加レンズがその光学設計を維持するように選択される。したがって、一般的に材料はセ氏-10度からセ氏60度の温度範囲内で形状変化しない又は亀裂を生じない材料である。
【0085】
図3Aに示す曲線は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)について、ASTM指定番号D 5023(プラスチックの標準試験法:動的機械特性:曲げ(三点曲げ))に従って、動的機械分析(「DMA」分析としても知られている)を用いて測定され、分析はTGA Q800 TA機器を使用して0から200℃の温度範囲内で行われた。一部の適用例では、付加レンズはポリカーボネートポリマーから作られている。
図3Bに示す曲線は同様に、ポリカーボネートレンズについて、ASTM指定番号D 5023(プラスチックの標準試験法:動的機械特性:曲げ(三点曲げ))に従って、動的機械分析を用いて測定され、分析はTGA Q800 TA機器を使用して0から200℃の温度範囲内で行われた。
【0086】
図3A及び
図3Bに示す曲線の形状は、本発明の一部の適用例に従って使用される非晶質粘弾性ポリマーの具体例である。ただし、本願の範囲は、任意の非晶質粘弾性ポリマー(例えば、任意の非晶質熱可塑性ポリマー、及び/又は任意のPMMAポリマー、ポリカーボネートポリマー、ポリウレタン、及び/又は環状オレフィンポリマー)を使用すること、及び本明細書に記載のレンズ成形技術を適用することを含む。使用される他のポリマーは、
図3A及び
図3Bに示すものと異なる貯蔵弾性率曲線、損失弾性率曲線、及びタンデルタ曲線を有する。ただし、
図3A及び
図3Bを参照して説明される一般的原理は他の非晶質粘弾性ポリマーにも適用可能である。したがって、本明細書に記載のレンズ成形技術の一般的原理は一般的に、それらの材料に適切な温度を用いることを除いて、他の非晶質粘弾性ポリマーにも適用される。
【0087】
背景部分に既に説明したように、粘弾性材料への力学的エネルギーの印加に対する材料の反応は、その貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)によって特徴付けられることがある。材料の貯蔵弾性率は、その弾性挙動の測度、すなわち材料に印加される力学的エネルギーがポリマー鎖に沿って結合伸縮時に貯蔵され、回復時に解放される程度である。損失弾性率は、材料の塑性挙動の測度、すなわち材料に印加される力学的エネルギーがポリマー鎖間の内部摩擦によって失われる(かかるエネルギーは貯蔵されないため解放されない)程度である。材料のタンデルタとして知られている更なるパラメータが、任意の温度における損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比を測定する。このように、材料のタンデルタは、材料が散逸し寸法が不安定になる傾向の測度である。典型的には、上述の3つのパラメータ(すなわち、貯蔵弾性率、損失弾性率、及びタンデルタ)は全て、
図3Aの曲線30、32及び34が示すように、材料の温度が変化すると変化する。上述のパラメータは、以上で説明したように動的機械分析(「DMA分析」としても知られている)を用いて材料を分析することによって決定される。
【0088】
一般的に、付加レンズ24は初めに、上記のニーズに合わせて(例えば、ベースレンズ22に固着されたときに、ベースレンズと付加レンズの結合体が累進レンズを形成するように)、所与のレンズ光学設計を示すように形成される。例えば、付加レンズは初めに、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング、3次元印刷、及び/又は鋳造などの形成プロセスを用いて形成されることがある。付加レンズ24をベースレンズ22に固着させるために、一般的に、付加レンズが付加レンズの曲率がベースレンズの曲率と一致するような更なる成形手順を経ることが望ましい。具体的には、ベースレンズに固着される付加レンズの表面は、固着されるベースレンズの表面と一致するように成形される必要がある。一部の例では、
図7Aから
図7Dを参照して以下で説明される固着プロセスを促進するために、付加レンズの曲率をベースレンズの曲率よりわずかに大きくすることに留意されたい。更に、一部の例では、具体的には付加レンズ及びベースレンズの曲率が互いに同様である場合、固着ステップの前に付加レンズを成形する必要がないことに留意されたい。しかしながら本発明者らは、一般的に付加レンズとベースレンズの結合体のかなりの割合が、本明細書に記載の成形技術が付加レンズに永続的に適用される必要があることが分かった。これは特に、眼科処方が、ベースレンズの凹曲度に影響を及ぼす傾向がある円柱及び関連する円柱軸の値を含む場合に言える。
【0089】
付加レンズの曲率がベースレンズの曲率と一致するように付加レンズを再成形することの代替案は、付加レンズが所望の光学設計を有するとともに、ベースレンズの形状と一致するように成形されるように初めに付加レンズを成形することになるであろう。ただしこれは、小売業者や光学研究所が蓄えなければならなくなる付加レンズの数を大幅に増やすことになる。なぜなら、形の異なる各ベースレンズと適合するように、所与の光学設計を有しつつも曲率が異なる付加レンズの最小在庫管理単位を別々に蓄えることが必要になるためである。(上記のように、これは特に、眼科処方が、ベースレンズの凹曲度に影響を及ぼす傾向がある円柱及び関連する円柱軸の値を含む場合に言える。)代替的に、このことは付加レンズが(患者の光学的要件及びベースレンズの選択に基づいて)特注で製造されなければならなくなることを意味し、その場合、伝統的な製造技術を用いるのではなく、ベースレンズと付加レンズを使用して累進レンズを製造することの利点の多くが失われることになる。
【0090】
レンズ成形は、レンズの予め指定されたサブエリアが(数ミクロンの厚さの差のレベルで)非常に精密であるため非常に困難である。累進レンズを制御されていない方法で成形することは、レンズの光学値を損なう危険を冒す。付加レンズが上記のように成形された後に、付加レンズが、その予め指定された臨床的に重要なサブエリアにおける光学設計を、再成形されベースレンズ22に固着された後にISO標準内に保持するだけでなく、レンズの予め指定された臨床的に重要なサブエリアにおいてほぼ同じ残留円柱数を保持することも望ましい。更に一般的に、レンズがその当初の光学設計をレンズの予め指定されたサブエリアにおける許容範囲内に保持することが、眼用レンズが(付加レンズが破裂したり、その寿命期間中に応力亀裂を起こしたりする可能性がある種類の)大きな内部応力を保持することなく達成されることが望ましい。(付加レンズがレンズの予め指定されたサブエリアにおけるその当初の光学設計を保持すべき許容範囲のレベルの詳細が、
図9Aから
図9Bを参照して以下に更に詳細に説明される。)上述の検討に基づいて、付加レンズの初期形成の後に、本明細書で説明されるレンズ成形プロセスが一般的に付加レンズ24に適用される。
【0091】
一部の適用例では、本明細書に記載のレンズ成形プロセスを適用することによって、付加レンズの曲率は、レンズ光学設計を保持しつつ、かつ(以上に記載したように)大きな応力をレンズに導入することなく、プラス/マイナス1ジオプター超(例えば、プラス/マイナス2ジオプター超)、及び/又は最大でプラス/マイナス4ジオプター(例えば最大プラス/マイナス3ジオプター)だけ変化することがある。
【0092】
図3A及び
図3Bを再び参照すると、上記のように、曲線30は温度に伴う貯蔵弾性率の変化を示し、曲線32は温度に伴う損失弾性率の変化を示す。
図3A及び
図3Bに示す曲線が、付加レンズが作られ得る材料の具体例の貯蔵弾性率、損失弾性率及びタンデルタに対応することに再び留意されたい。ただし、
図3A及び
図3Bを参照して説明する一般的原理は、一般的に付加レンズが作られ得る任意の非晶質粘弾性ポリマーに適用可能である。
【0093】
上記のように、タンデルタは損失弾性率と貯蔵弾性率の比率である。初めに
図3Aを参照すると、温度に伴うタンデルタの変化を示す曲線34は急上昇し、ピークに達した後に急下降する。同様に、
図3Bを参照すると、温度に伴うタンデルタの変化を示す曲線34が急上昇し、ピークに達した後に急下降することが観察されることがある。付加レンズに通常使用される材料は、一般的に図に示すようにタンデルタ/温度曲線のピークが1つだけである。
【0094】
本願の発明者らは、タンデルタが0.8より大きい(一部の例では、0.5又は0.3より大きい)温度で付加レンズ24が成形される場合に、一般的にレンズ光学設計に回復不能な障害が生じることが分かった。これは、レンズがかかる温度で応力を受けて成形される場合に、レンズの変形が一般的に塑性変形を引き起こし、その結果、レンズが周囲温度に戻ったときにその光学設計の要素が失われ、不要な円柱が現れることがあるためである。一方、発明者らは、タンデルタが0.2より小さい(一部の例では、0.3又は0.5より小さい)温度で付加レンズ24が成形される場合、これによって付加レンズが、そのレンズ光学設計を保持することができるが、後に亀裂、又はレンズが応力により透明性を失う領域へと発展し得る内部応力をレンズに残すことが分かった。例えば、レンズは、内部応力と、熱サイクル、熱衝撃、機械的衝撃、又は(例えば、化学洗浄剤、及び/又は体から分泌される流体に起因する)環境ストレスとの組み合わせの結果として亀裂を形成することがある。ポリマー、特に非晶質ポリマーの低速亀裂現象はよく知られており、付加レンズとその寿命期間中に接触するおそれがある脂肪(例えば、手や顔からの人体の脂肪又は油)、油、洗浄剤及び石鹸によって更に加速される。タンデルタが0.2未満(一部の例では、0.5未満、又は0.3未満)の温度で付加レンズを成形することに伴う追加的なリスクは、付加レンズがその原形に戻る傾向があることであり、これによってベースレンズから分離されるようになる。
【0095】
したがって、本発明の一部の適用例によれば、付加レンズ24は、付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さいタンデルタを有する温度で成形される。一部の適用例では、付加レンズは、付加レンズが作られている材料が0.2~0.5又は0.2~0.3のタンデルタを有する温度で成形される。代替的又は付加的に、付加レンズは、付加レンズが作られている材料が0.3~0.8又は0.5~0.8のタンデルタを有する温度で成形される。
【0096】
材料のタンデルタが一般的に上述のタンデルタ/温度曲線の急上昇部分内とタンデルタ/温度曲線の急下降部分内の両方の範囲内にあることに留意されたい。材料は通常、材料のタンデルタ/温度がタンデルタ/温度曲線の上昇部分内の上述の範囲内にある温度まで、すなわちタンデルタ/温度曲線が0.8を初めに通過する(例えば、0.5を初めに通過する、又は0.3を初めに通過する)温度より低い温度に加熱される。換言すれば、付加レンズ24は通常、付加レンズが作られている材料のタンデルタ/温度曲線のピーク未満の温度(a)、及び付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さい、例えば0.2~0.8、0.2~0.5、0.2~0.3、0.3~0.8、もしくは0.5~0.8のタンデルタを有する温度(b)で成形される。一般的に、上述のタンデルタ範囲内で、材料は、低残留応力のみを維持しながらその当初のレンズ光学設計を保持する。
【0097】
一部の適用例では、付加レンズは、更に付加レンズが作られている材料のタンデルタ/温度曲線のピーク未満の少なくともセ氏5度(例えば少なくともセ氏10度)である上述の範囲内の温度まで加熱される。換言すれば、付加レンズ24は通常、付加レンズが作られている材料のタンデルタ/温度曲線のピーク未満の少なくともセ氏5度(例えば少なくともセ氏10度)である温度(a)、及び付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さい、例えば0.2~0.8、0.2~0.5、0.2~0.3、0.3~0.8、もしくは0.5~0.8のタンデルタを有する温度(b)で成形される。一般的に、上述のタンデルタ範囲内で、材料は、低残留応力のみを維持しながらその当初のレンズ光学設計を保持する。
【0098】
付加レンズが加熱される温度が上記の制限に制約されるのに対し、タンデルタ/温度曲線のピークにおけるタンデルタの実際の値が制約ではないことに留意されたい。換言すれば、付加レンズは通常、タンデルタ/温度曲線のピークにおけるタンデルタの値に関係なく、付加レンズが作られている材料が0.2より大きく0.8より小さいタンデルタを有する温度まで加熱される。
【0099】
これより
図4を参照する。
図4は、本発明の一部の適用例に係る、付加レンズ24とベースレンズ22(いずれも例えば
図2に示されている)を結合するために通常実行されるステップを要約したフローチャートである。
【0100】
第1のステップ60において、付加レンズ24は、上記のニーズに合わせて(例えば、ベースレンズ22に固着されたときに、ベースレンズと付加レンズの結合体が累進レンズを形成するように)、所与のレンズ光学設計を示すように形成される。例えば、付加レンズは初めに、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング、3次元印刷、及び/又は鋳造などの形成プロセスを用いて形成されることがある。
【0101】
第2のステップ62において、付加レンズは、付加レンズの曲率がベースレンズ22の曲率と一致するように、(以下で更に詳細に説明するように)一定期間にわたり付加レンズに圧力を印加することによって再成形される。一般的にこのステップの間、付加レンズは上記の温度まで加熱される。つまり、一般的にこのステップの間、付加レンズは、付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さい、例えば0.2~0.8、0.2~0.5、0.2~0.3、0.3~0.8、もしくは0.5~0.8のタンデルタを有する温度まで加熱される。更に一般的に、このステップの間、付加レンズは、付加レンズが作られている材料のタンデルタ/温度曲線のピーク未満の温度(a)、及び付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さい、例えば0.2~0.8、0.2~0.5、0.2~0.3、0.3~0.8、もしくは0.5~0.8のタンデルタを有する温度(b)まで加熱される。更に一般的に、このステップの間、付加レンズは、付加レンズが作られている材料のタンデルタ/温度曲線のピーク未満の少なくともセ氏5度(例えば少なくともセ氏10度)である温度(a)、及び付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さい、例えば0.2~0.8、0.2~0.5、0.2~0.3、0.3~0.8、もしくは0.5~0.8のタンデルタを有する温度(b)まで加熱される。以上で説明したように、上述のタンデルタ範囲内で、付加レンズが作られている材料は通常、低残留応力のみを維持しながらその当初のレンズ光学設計を保持する。
【0102】
ステップ62は、
図5及び
図6を参照して以下で更に詳細に説明される。一部の適用例では、付加レンズが上述の温度範囲まで加熱される間、付加レンズは型枠40(例えば
図5及び
図6に示す金型)に、例えば一般的に柔らかい材料で作られている圧力印加要素42(同様に
図5及び
図6に示されている)を使用して押し付けられる。一部の適用例では、ベースレンズ22自体が型枠として使用される。一部の適用例では、型枠及び圧力印加要素はオーブン44(同様に
図5及び
図6に示されている)内部に配置され、オーブン44内では付加レンズが上記の温度範囲まで加熱される。一部の例では、付加レンズの曲率が、
図7Aから
図7Dを参照して以下で説明される固着プロセスを促進するために、ベースレンズの曲率よりわずかに大きくなるように再成形されることに留意されたい。更に、一部の例では、具体的には付加レンズ及びベースレンズの曲率が互いに同様である場合、固着ステップの前に付加レンズを成形する必要がないことに留意されたい。しかしながら、本発明者らは、付加レンズとベースレンズの結合体のかなりの割合が通常、本明細書に記載の成形技術が付加レンズに適用される必要があることが分かった。
【0103】
第3のステップ64において、付加レンズは再形成されると、例えば感圧接着剤、光硬化性液状接着剤、光硬化性感圧接着剤、及び/又は異なる接着剤を使用してベースレンズに固着される。ステップ64は、
図7Aから
図7Dを参照して以下で更に詳細に説明される。
【0104】
一部の適用例では、任意選択の第4のステップ66が適用される。かかる適用例では、付加レンズがベースレンズに固着された後、付加レンズ及び/又は結合構造全体に存在し得る残留応力を更に除去するために、結合レンズに追加の熱処理が施される。代替的又は付加的に、付加レンズ及びベースレンズがその間に空間や気泡がなく互いに完全に接触することを確実にするために、結合構造に圧力が印加される。ステップ66は、
図8を参照して以下で更に詳細に説明される。
【0105】
これより
図5を参照する。
図5は、本発明の一部の適用例に係る、付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さいタンデルタを有する温度まで加熱されている間に成形される付加レンズ24の概略図である。以上で説明したように、一般的に、付加レンズ24は初めに、上記のニーズに合わせて(例えば、ベースレンズ22(
図2に示されている)に固着されたときに、ベースレンズと付加レンズの結合体が累進レンズを形成するように)、所与のレンズ光学設計を示すように形成される。例えば、付加レンズは初めに、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング、3次元印刷、及び/又は鋳造などの形成プロセスを用いて形成されることがある。付加レンズ24をベースレンズ22に固着させるために、付加レンズは通常、その曲率がベースレンズの曲率と一致するように更なる成形手順を経る必要がある。
【0106】
一部の適用例では、付加レンズ24が上記の温度範囲に含まれる温度まで加熱される間、更なる成形プロセスは、付加レンズの曲率がベースレンズ22(非球面レンズである場合がある)の曲率と一致するように付加レンズに適用される。一部の適用例では、更なる成形プロセスは、付加レンズを、例えば通常柔らかい材料で作られている圧力印加要素42を使用して型枠40(金型など)に押し付けることを含む。一般的に、柔らかい材料は、硬度が90ショアAより小さい(例えば20~85ショアA)のエラストマーである。代替的又は付加的に、柔らかい材料は、プラスチック、弾性発泡体、発泡プラスチック、発泡エラストマー、液体充填ポーチ、ガス充填ポーチ、多分子層もしくは単分子層、及び/又はゲルである。一部の適用例では、柔らかい材料は、シリコンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、熱可塑性エラストマー、加硫エラストマー及び/又は熱可塑性加硫物(TPV)の1種以上である。一部の適用例では、圧力印加要素は、上述の材料の1種以上を含むドーム形クッションである。一部の適用例では、クッションは別の形をしている。一部の適用例(図示せず)では、ベースレンズ22自体(
図2に示されている)が型枠として使用される。
【0107】
一部の適用例では、型枠及び圧力印加要素はオーブン44内部に配置され、オーブン44内では付加レンズが上記の温度範囲に含まれる温度まで加熱される。一部の適用例では、付加レンズの曲率は、
図7Aから
図7Dを参照して以下で説明される固着プロセスを促進するために、ベースレンズの曲率よりわずかに大きくされる。上記のように、一部の例では、具体的には付加レンズ及びベースレンズの曲率が互いに同様である場合、固着ステップの前に付加レンズを成形する必要はない。しかしながら、本発明者らは、付加レンズとベースレンズの結合体のかなりの割合が通常、本明細書に記載の成形技術が付加レンズに適用される必要があることが分かった。
【0108】
一般的に、成形プロセス中に付加レンズに印加される圧力は、0.01kg毎平方cmより大きい(例えば0.2kg毎平方cmより大きい)、及び/又は100kg毎平方cmより小さい(例えば1kg毎平方cmより小さい)、例えば0.01~100kg毎平方cm、又は0.2~1kg毎平方cmである。一般的に、上述の範囲より低い圧力を印加することはレンズの再成形を引き起こすのに十分ではないのに対して、上述の範囲より大きい圧力を印加することはレンズ(及び/又は以下で説明するようなレンズのコーティング)への損傷を引き起こす可能性がある。一部の適用例では、加熱及び圧力は、0.1秒より長い、及び/又は1時間より短い、例えば0.1秒~1時間の間付加レンズに印加される。一般的に、上述の範囲未満の期間に圧力を印加することはレンズの再成形を引き起こすのに十分ではないのに対して、上述の範囲より長い期間に圧力を印加することは、(例えばクリープによる)レンズの光学設計の喪失を引き起こす可能性がある。
【0109】
レンズの再成形がタンデルタ曲線のピーク未満である温度で実行されるため、一部の例では、付加レンズの形状が、上記のプロセスが実行された後でさえもわずかにその原形に戻ることに留意されたい。一般的にそのような場合でも、以下で説明される手順の後続のステップ(
図7Aから
図7Dを参照して説明される固着プロセスなど)は、付加レンズが永続的にベースレンズの形状に一致することを確実にする。
【0110】
一般的に成形プロセスの後、レンズは、成形プロセス中に配置された型枠(例えば金型)から取り除かれる前に冷却される。付加レンズは成形されると、例えば感圧接着剤、光硬化性液状接着剤、光硬化性感圧接着剤、及び/又は異なる接着剤を使用してベースレンズに固着される。一部の適用例では、付加レンズは、
図7Aから
図7Dを参照して以下で説明される固着手順を用いてベースレンズに固着される。付加レンズをベースレンズに固着させる前に付加レンズが再成形されるため、再成形された付加レンズの特性が、付加レンズがベースレンズに固着される前に試験されることがあることに留意されたい。この場合、再成形プロセスが特定の付加レンズの光学設計の忠実度を必須の許容レベルを超えて低下させたことが判明した場合には、付加レンズは、ベースレンズが使用されることが拒絶されることなく使用されることが拒絶される可能性がある。
【0111】
一部の適用例では、付加レンズは、ハードコーティング、反射防止コーティング、超疎水性コーティング、帯電防止コーティング、クリーンコーティング(すなわち、液体、塵などをはじくように構成されているコーティング)、ブルーライトフィルタ、反射コーティング、抗UVコーティング、フォトクロミックコーティング、偏光コーティング及び/又はそれらの任意の組み合わせなどの機能性コーティングで被覆されている。各適用例によれば、コーティングは、一般的に当技術分野で知られている技術を用いて液体、気体及び/又は固体の状態で付加レンズに塗布される。一般的に、コーティングは成形プロセスが付加レンズに適用される前に付加レンズに施され、コーティングが作られている材料は、付加レンズが上記の温度範囲まで加熱され、成形プロセスが付加レンズに適用される場合に、機能性コーティングの機能の喪失を引き起こさず、(コーティングが破裂したり、その寿命期間中に応力亀裂を起こしたりする可能性がある種類の)コーティングに大きな応力を導入せず、又はコーティングに(付加レンズが破裂したり、その寿命期間中に応力亀裂を起こしたりする可能性がある種類の)付加レンズ自体に大きな応力を導入させないようにコーティングも変形可能となるように選択される。したがって、機能性コーティングの曲率は、機能性コーティングの機能の喪失を引き起こすことなく変化する可能性もある。一部の適用例では、付加レンズが加熱される温度は、機能性コーティングが作られている材料のタンデルタが0.2より大きい及び/又は0.8より小さい、例えば0.2~0.8、0.2~0.5、0.2~0.3、0.3~0.8、もしくは0.5~0.8になるような温度である。
【0112】
一部の適用例では、機能性コーティングはハードコーティングであり、ハードコーティングが作られている材料及び成形プロセスは、ハードコーティングにひびを入れることなく、(ハードコーティングが破裂したり、その寿命期間中に応力亀裂を起こしたりする可能性がある種類の)ハードコーティングに大きな応力を導入することなく、そしてハードコーティングに(付加レンズが破裂したり、その寿命期間中に応力亀裂を起こしたりする可能性がある種類の)付加レンズ自体に大きな応力を導入させることなくハードコーティングが再成形されるように選択される。
【0113】
一般的にコーティングは、眼鏡のレンズが通常使用中に曝され得る温度範囲内(例えば、セ氏-10度からセ氏60度)で形状変化しない又は亀裂を生じないように選択される。
【0114】
コーティングが作られている材料を上記のように選択することによって、コーティングを結合レンズ20の製造における第1の時点で付加レンズに付けることができ、次いで成形プロセスを結合レンズ20の製造における異なる時点でレンズ及びコーティングに適用することができる。例えば、コーティングを付加レンズが大量生産される製造のある時点で付加レンズ24に付けることができ、次いで成形プロセスを店頭でレンズ及びコーティングに適用することができる。一部のそのような適用例では、結合レンズ20は、(単焦点光学補正レンズである)ベースレンズ22を(ベースレンズに付加的な光学補正機能性を提供する)付加レンズ24と結合することによって、患者の処方に合わせて店頭で製造される累進レンズである。例えば、ベースレンズは単焦点光学補正レンズであり、付加レンズは、ベースレンズと付加レンズの結合体が、例えば参照により本明細書に組み込まれるArieliによる米国特許第9,995,948号に概ね記載されているように、患者の処方に適合する累進レンズを提供するように、付加的な光学補正機能性をベースレンズに提供することがある。
【0115】
一部の適用例では、付加レンズ24は、1つ以上の機能性コーティングで被覆されている平面レンズである。一部のそのような適用例では、被覆されている平面レンズは、累進レンズであるベースレンズ22に付けられる。例えば、ベースレンズ22は、直接レンズ面仕上げ(direct-to-lens surfacing)製造プロセス(例えばフリーフォーム製造プロセス)を用いて製造される累進レンズである場合がある。一般的に、かかる累進レンズは所与の患者の処方に適合するように特注で製造される。累進レンズが直接レンズ面仕上げ製造プロセスを用いて製造される場合、累進レンズの1つの表面(通常は裏面である)が製造プロセス中に切断される。一般的にこの切断が完了した後にのみこの表面に機能性コーティングを塗布することができる。なぜなら、切断が完了する前にこの表面に機能性コーティングを塗布したい場合、コーティングは切断によって劣化することになるためである。機能性コーティングを切断面に塗布するための従来の技術を採用することは、通常、用いられる(及び患者の処方に適合するようにレンズが切断された後にのみ適用され得る)化学プロセスが時間のかかるものであるため、かかるレンズの製造プロセスに遅延を導入する。このことは累進レンズの製造に、かかるレンズが通常、眼鏡士のところの現場で製造されるのとは対照的に、研究室で現場から離れて製造されるという障害をもたらす。本発明の一部の適用例では、1つ以上の機能性コーティングが予め被覆されている平らな付加レンズが、上記の技術を用いてベース累進レンズの切断面の曲率と正確に一致するように成形される。一般的に、平らな付加レンズは次に、
図7Aから
図7Dを参照して以下で説明される技術を用いて、ベース累進レンズの切断面に固着される。
【0116】
一般的に累進レンズの表面(特に、直接レンズ面仕上げ製造プロセスを用いて製造される累進レンズの切断面)が非常に複雑な曲率を有することに留意されたい。それにもかかわらず、本明細書に記載の技術を用いて、付加レンズを、実質的な応力(及び結果として生じる光学的歪み)を付加レンズ又は機能性コーティングに導入することなく、切断面の曲率と実質的に一致するように再形成することができる。一部の適用例では、上記の段落で説明したものと概ね同様の技術が、直接レンズ面仕上げ製造プロセス以外の製造プロセスを用いて製造されるベース累進レンズに適用される。
【0117】
これより
図6を参照する。
図6は、本発明の一部の代替的な適用例に係る、付加レンズが作られている材料が0.2より大きい及び/又は0.8より小さいタンデルタを有する温度まで加熱されながら成形される付加レンズ24の概略図である。
図6に示されている装置と関連して用いられる装置及び方法は、以下に説明される相違点を除けば、
図5を参照して以上で説明された装置及び方法と概ね同様である。
【0118】
図5は、圧力印加要素が付加レンズを型枠に向かって下方向に押すように、型枠40の上方に配設された圧力印加要素42を示す一方、一部の適用例では、
図6に示すように圧力印加要素が付加レンズを型枠に向かって上方向に押すように、圧力印加要素42が型枠40の下方に配設されている。
【0119】
一部の適用例では、型枠40の曲率は、付加レンズが成形されることになる曲率より大きい。したがって、付加レンズが再成形される程度は通常、型枠の特定の曲率に制限されているというよりむしろ、圧力印加要素が付加レンズに印加する圧力によって制御される。これは、付加レンズが再成形されても、付加レンズの中心にある付加レンズ24と型枠40との間の隙間を示す
図6に概略的に示されている。一般的に、これは付加レンズが型枠に完全に接触するように押されることによって付加レンズが成形される場合と比べて、付加レンズと型枠との接触を減らすことによって、付加レンズと型枠との接触により生じる可能性がある潜在的な損傷を減らす。また、これによって1つの型枠を広範囲の付加レンズの曲率を生成するのに使用することができる。
【0120】
以上で説明したように、一般的に成形ステップの間、付加レンズは、付加レンズの温度が上記の温度範囲内に含まれる温度に維持されるためにオーブン44内部に配される。一部の適用例では、成形プロセス中に付加レンズを加熱するオーブンの代用として又はこれに加えて、付加レンズが加熱される温度の精密な制御を維持するために、直接加熱が付加レンズに適用される。一部の適用例では、直接加熱は圧力印加要素42を介して付加レンズに適用される。例えば図に示すように、発熱体45が圧力印加要素内に埋め込まれていることがある。代替的又は付加的に、加熱流体が圧力印加要素内部に配されることがある。一部の適用例では、(通常はガラス製の)型枠40が加熱されることによって直接加熱が付加レンズに適用される。代替的又は付加的に、直接加熱は赤外線放射を用いて適用される。
【0121】
上記の段落で説明したように、一部の適用例では、発熱体45は圧力印加要素内に埋め込まれており、成形ステップ中に付加レンズを直接加熱するように構成されている。一部の適用例では、発熱体は図に示すようにスパイラル状である。更に一部の適用例では、スパイラルは、スパイラルの隣接する巻線間の隙間がスパイラルの中心からスパイラルの外側に向かって小さくなるような形状である。一般的に発熱体のこの形状は、付加レンズの表面に比較的均一な加熱を提供する。一部の適用例では、直接加熱は、異なる技術を用いて(例えば以上で説明したように、圧力印加要素の内部に配されている加熱流体を用いて)比較的均一に付加レンズに適用される。
【0122】
付加レンズに直接加熱を適用するための圧力印加要素の利用、及び圧力印加要素42を参照して説明された材料、形状及び設計などの上記の特徴が、
図5に示す圧力印加要素42、及び/又は
図7Aから
図7Dに示す押し要素80などの本明細書に記載の他のコンポーネントに組み込まれ得ることに留意されたい。
【0123】
これより本発明の一部の適用例に係る、付加レンズ24をベースレンズ22に固着させるための固着プロセスの各ステップの概略図である
図7A、7B、7C及び7Dを参照する。一般的に
図7Aから
図7Dに示すステップは、付加レンズがその曲率がベースレンズの曲率と一致するように再成形された後に実行される。一般的に付加レンズは少なくとも1つの凸面を画定し、ベースレンズは少なくとも1つの凹面を画定し、付加レンズの凸面はベースレンズの凹面に固着される。一部の適用例では、付加レンズを(例えば上記の技術を用いて)再成形する場合、付加レンズの凸面の曲率を、
図7Aから
図7Dを参照して説明される技術(特に
図7Cを参照して説明されるステップ)を促進するために、ベースレンズの凹面の曲率よりわずかに大きくする。
【0124】
一部の適用例では、
図7Aに示すように、付加レンズ24は第1のチャンバ71内に保持され、ベースレンズ22は第2のチャンバ72内に保持される。一部の適用例では、チャンバ71及び72のそれぞれは、チャンバのそれぞれの温度を制御できるという点でオーブンとして機能する。代替的に、チャンバは加熱されない。一般的に、チャンバ71は第1のチューブ70を介して真空圧源に結合され、チャンバ71は第2のチューブ75を介して同じ又は別の真空圧源に結合されるため、それぞれのチャンバ内の圧力は互いに独立して制御される可能性がある。
【0125】
一般的に、(通常、感圧接着剤であり、その両面が接着性である)薄くて柔軟な接着層73が2つのチャンバ間に保持される。例えばチャンバの断面図に示すように、接着層73は固体板79によって第1及び第2のチャンバ間に保持されることがある。一般的に接着層は、一般的に20ミクロンより大きい(例えば50ミクロンより大きい)、及び/又は300ミクロンより小さい(例えば200ミクロンより小さい)、例えば20~300ミクロン、又は50~200ミクロンの均一な厚さを有する。一部の適用例では、付加レンズを、
図7Aから
図7Dに示すステップに従ってチャンバ内の圧力を制御し、レンズを接着層に向けて移動させることによって、レンズのいずれか一方と接着層との間に大きな気泡やその他の空間を残すことなく接着層73によってベースレンズに固着させる。一般的に、この手順のかなりの期間、真空圧(例えば1ミリバール~1バールの負圧)が各チャンバ内に生成されることによって、圧力が周囲圧力未満に低下する。手順のいくつかの段階において、チャンバの一方又は両方の中の圧力は、以下で説明されるように上昇したり低下したりすることがある。一部の適用例では、固着プロセスにおける1つ以上の段階において、加熱がレンズの一方又は両方、及び/又は接着層、及び/又は圧力チャンバの一方又は両方に適用される。
【0126】
付加レンズの凸面は中央領域76を有する。
図7Bに示すように、一部の適用例では、接着層に付加レンズの凸面に面する凸曲面を形成させるための圧力差がチャンバ71及び72間に生成されることによって、接着層の中央領域74が、接着層と付加レンズの凸面上の他のどの2つの点よりも付加レンズの凸面の中央領域76に近くなる。以上で説明したように、一般的にチャンバ71及び72内の圧力は互いに独立に制御される。一部の適用例では、この段階においてチャンバ71内の圧力を、接着層を上記のように曲げるためにチャンバ72内の圧力より低くする。
【0127】
接着層が付加レンズの方向に曲がっている間、付加レンズ及び接着層は、例えば機械的押し要素80を使用して互いに引き寄せられる。一部の適用例では、機械的押し要素80は、
図5から
図6に示した圧力印加要素42を参照して以上で説明したものと概ね同様の形状、サイズ及び/又は機能性を有する。一部の適用例では、押し要素は、図に示すようにピストン81を使用して油圧制御されるドーム形の押し要素である。一般的に、接着層73と付加レンズ24は、それぞれの中央領域74及び76で最初に接触し合う。付加レンズが接着層に引き寄せられ続けると、付加レンズと接着層との接触が、付加レンズの凸面が接着層によって完全に覆われるようになるまで付加レンズの凸面の中央領域76から外側に放射状に広がる。一部の適用例では、接着層が付加レンズの方向に曲げられていないことに留意されたい。それでもなお付加レンズと接着層との最初の接点は通常、付加レンズの凸面の凸曲率のおかげで付加レンズの中心にある。一般的に、付加レンズを接着層とその中心で最初に接触させた後、付加レンズと接着層との接触を外側に放射状に広げることによって、付加レンズと接着層との間から気泡が押し出されるため、気泡が付加レンズと接着層との間に捕捉されるのを実質的に防ぐ。
【0128】
一部の適用例では、付加レンズと接着層とを互いに引き寄せる前に、真空圧が、接着層と付加レンズとの間から気泡を除去するために、少なくとも第1のチャンバ71内に確立される(すなわち、第1のチャンバ内の圧力を周囲圧力より小さくする)。第1のチャンバ内での真空圧の確立は通常、この段階で第1及び第2のチャンバ間に差圧が確立されているかどうかに関係なく(すなわち、以上で説明したように接着層を曲げるために)実行される。一部の適用例では、接着層を付加レンズに固着させた後、それでもなお付加レンズと接着層との間に捕捉され得るより小さい気泡及び/又は付加レンズと接着層との間に位置し得る空孔を除去するために、チャンバ71及び/又はチャンバ72内の圧力を(例えば周囲圧力に)上昇させる。圧力の上昇は通常、付加レンズと接着層との間に捕捉され得る小さい気泡を付加レンズと接着層との間から滲み出させ、付加レンズと接着層との間に位置し得る空孔を、接着層に圧力を印加することによって除去させる。
【0129】
図7C及び7Dを参照すると、接着層73を付加レンズ24に固着させた後に、付加レンズ及び接着層は(例えば機械的押し要素80を使用して)ベースレンズ22に引き寄せられる。一部の適用例では、付加レンズ及び接着層をベースレンズに引き寄せる前に、真空圧が、接着層とベースレンズとの間から気泡を除去するために、少なくとも第2のチャンバ72内に確立される(すなわち、第2のチャンバ内の圧力を周囲圧力より小さくする)。以上で説明したように、一般的に付加レンズの再成形において、接着層に固着される付加レンズの表面の凸曲率を、接着層に固着されるベースレンズの表面の凹曲率より大きくする。したがって、付加レンズ及びベースレンズのそれぞれの形状は通常、接着層(この段階では付加レンズの形状に適合する)とベースレンズとの最初の接点が(
図7Cに示すように)ベースレンズ22の凹面の中央領域77にあるようなものである。付加レンズがベースレンズに向かって押され続けると、接着層とベースレンズとの接触が、(
図7Dに示すように)ベースレンズの凹面が接着層によって完全に覆われるようになるまでベースレンズの凹面の中心から外側に放射状に広がる。一般的に、ベースレンズを接着層とその中心で最初に接触させた後、ベースレンズと接着層との接触を外側に放射状に広げることによって、ベースレンズと接着層との間から気泡が押し出されるため、気泡がベースレンズと接着層との間に捕捉されるのを実質的に防ぐ。
【0130】
一部の適用例では、それでもなおベースレンズと接着層との間に捕捉され得るより小さい気泡及び/又は付加レンズと接着層との間に位置し得る空孔を除去するために、チャンバ71及び/又は72内の圧力を(例えば周囲圧力に)上昇させる。圧力の上昇は通常、ベースレンズと接着層との間に捕捉され得る小さい気泡を滲み出させ、付加レンズと接着層との間に位置し得る空孔を除去させる。代替的又は付加的に、付加レンズと接着層との間及び/又はベースレンズと接着層との間に捕捉され得る小さい気泡を滲み出させるために、及び/又は付加レンズと接着層との間及び/又はベースレンズと接着層との間に位置し得る空孔を除去するために、結合レンズの一方又は両方の側に(例えば、機械的押し要素80、及び/又はベースレンズ22の外面を押すように構成されている追加の押し要素を使用して)機械的圧力が印加される。更に代替的又は付加的に、例えば
図8に示すように、結合レンズは、結合レンズの一方又は両方の側に熱及び圧力を印加するのに使用される別個のチャンバに移される。
【0131】
以上で説明したように、一部の適用例では、チャンバ71及び72のそれぞれは、チャンバのそれぞれの温度を制御できるという点でオーブンとして機能する。一部の適用例では、押し要素80などのチャンバ内の追加要素は温度制御可能である場合がある。一部の適用例では、
図7Aから
図7Dを参照して説明された1つ以上のステップにおいて、ベースレンズ、付加レンズ、接着層、第1の圧力チャンバ及び/又は第2の圧力チャンバが加熱される。例えば上述の要素の1つ以上は、セ氏25~75度の温度まで加熱されることがある。
【0132】
図7Aから
図7Dは、接着層が初めに付加レンズに付けられた後に接着層をベースレンズに付けることを示しているが、本願の範囲には、接着層を初めにベースレンズに付けた後に接着層を付加レンズに付けることが含まれることに留意されたい。同様に、
図7Aから
図7Dに概略的に示した配置は、付加レンズが接着層及びベースレンズの下方に配置されることを示しているが、本願の範囲には、ベースレンズが接着層及び付加レンズの下方に配置されること、及び/又はベースレンズ、接着層、及び付加レンズが互いに並んで配置されること、及び/又は異なる配置を除いて、概ね同様の技術を実行することが含まれる。
【0133】
一部の適用例では、
図7Aから
図7Dを参照して説明されたステップの1つ以上は、圧力チャンバ内の圧力を制御する、及び/又は機械的要素(例えば機械的押し要素)の動きを制御するように構成されているコンピュータプロセッサ82によって実行される。一般的に、コンピュータプロセッサ82により実行される本明細書に記載の動作は、コンピュータプロセッサと通信する実際の物理的物品であるメモリの物理的状態を、使用されるメモリの技術に依存して異なる磁極性、電荷などを有するように変換する。コンピュータプロセッサは一般的に専用コンピュータを作るためのコンピュータプログラム命令でプログラムされたハードウェアデバイスである。例えば本明細書に記載の技術を実行するようにプログラムされた場合、コンピュータプロセッサは通常、専用のレンズ固着コンピュータプロセッサの役割を果たす。
【0134】
これより
図8を参照する。
図8は、本発明の一部の適用例に係る、付加レンズ24がベースレンズ22に固着された後に、結合レンズ20が移送されるチャンバ90の概略図である。一般的に熱及び/又は圧力はチャンバ90内で結合レンズに印加される。一部の適用例では、図に示すように結合レンズはレセプタクル92内部に配置される。上カバー94は、結合レンズがその内部に配置される密閉された内側チャンバを形成するようにレセプタクルを覆うように構成されている。一般的にシール96(例えばOリング)が、上カバーとレセプタクルとの間に、この間の界面をシールするために配設される。一部の適用例では、密閉された内側チャンバが形成されると、例えば吸気チューブ97を介して空気を密閉された内側チャンバに送り込むことによって、結合レンズの外面に圧力が印加される。一般的に圧力の印加は、付加レンズとベースレンズとの間(例えば、付加レンズと接着層との間及び/又はベースレンズと接着層との間)に捕捉され得る小さい気泡を滲み出させるため、及び/又は付加レンズとベースレンズとの間(例えば、付加レンズと接着層との間及び/又はベースレンズと接着層との間)に位置し得る空孔を除去させるためのものである。
【0135】
一部の適用例では、チャンバ90は、チャンバ内の温度が制御されるオーブンである。代替的又は付加的に、結合レンズと接触して配置される1つ以上の表面(例えば、レセプタクル92及び/又は上カバー94の内面)は、この段階において結合レンズが加熱される温度を制御するように、結合レンズに直接熱を印加するのに使用される。更に代替的又は付加的に、結合レンズに圧力を印加するのに使用される空気は、この段階において結合レンズが加熱される温度を制御するように加熱される。一般的に結合レンズは、レンズの経時的な劣化につながる可能性があるレンズの一方又は両方の残留応力を除去するような温度まで加熱される。
【0136】
許容性測定
以上で説明したように、付加レンズ24が上記のように成形された後に、付加レンズが再成形されベースレンズ22に固着された後に予め指定された測定エリアにおけるその光学設計をISO標準内に保持するだけでなく、レンズの予め指定された臨床的に重要なエリアにおいてほぼ同じ残留円柱数を保持することが一般的に望ましい。付加レンズの光学設計の保持は通常、以下の技術を用いて測定される。
【0137】
ジオプター単位の規定の球面矯正量、円柱矯正量、規定された度単位の円柱軸方向、及びジオプター単位の度数加入値を含む個々の患者の視力矯正処方を所与として、ベースレンズ22の曲率と一致するように付加レンズを再成形する必要がある。ベースレンズは通常、球状又は非球状の表面、円環状、球面非円環状、又は非球状の裏面、特定の中心厚さ及び特定の屈折率を有する。ベースレンズは通常、その光学的球面円柱処方がISO標準内の患者の目標処方に近づくように選択される。付加レンズは通常、ISO標準内の精度で、レンズが互いに固着される前に付加レンズに対して患者の円柱軸処方により特定された角度だけベースレンズを回転させるようにベースレンズに固着される。固着は通常、結合レンズ20が正しい向きでフレームに取り付けられたときに以下の特性を有するようなものである。
・レンズ20の球面値と患者の目標球面Rx値との差が、レンズ20の距離基準位置においてISO規格の測定デバイスで測定した場合にISO標準内にある。
・レンズ20の円柱値と患者の目標円柱Rx値との差が、レンズ20の距離基準位置においてISO規格の測定デバイスで測定した場合にISO標準内にある。
・レンズ20の円柱軸値と患者の目標円柱軸Rx値との差が、レンズ20の距離基準位置においてISO規格の測定デバイスで測定した場合にISO標準内にある。
・レンズ20の加入度数(レンズ20の近用基準位置で測定された平均度数値)と患者の目標加入度数Rx値との差が、ISO規格の測定デバイスで測定した場合にISO標準内にある。
【0138】
眼用レンズの光学性能を評価する際に、一般的な方法が、眼用レンズの全エリアを多くの小さいサブエリアに分割すること、及びこれらの各サブエリアにおける残留球面、円柱及び円柱軸値をそれぞれ調べることであることが眼用レンズ設計の分野に精通している者によく知られている。これらのサブエリアは通常、空間広がりがおよそ4ミリメートルであり、円形又は矩形である場合がある。かかる各サブエリアにおけるレンズの残留球面及び円柱は、各サブエリアにおけるレンズの光学特性を測定し、これらの値から患者のRxを引くことによって得られる値である。患者Rx及びレンズの光学補正特性はスカラー量又はベクトル量でないため、以下の式を使用してこれらの値を数学的に計算することができる。
【0139】
【0140】
ここでmL(x,y)は、位置(x,y)を中心とするサブエリアにおいて測定されたレンズの球面円柱行列であり、s(x,y)は、上記サブエリアについて測定されたレンズの球面度数であり、c(x,y)は、上記サブエリアについて測定されたレンズの円柱であり、Ax(x,y)は、上記サブエリアについて測定されたレンズの円柱軸である。
【0141】
同様に、患者のRxを以下のRx球面円柱行列によって表すことができる。
【0142】
【0143】
上記レンズのサブエリアの患者のRxに関する残留球面値及び円柱値は以下の方法で取得される。
a.残留球面円柱行列mRes(x,y)=mL(x,y)-mRxを計算する。
b.行列mResの固有値及び対応する固有方向を見つける。
c.円柱マイナス規定において、上記サブエリアの残留球面値は行列の最大の正の固有値であり、残留円柱値は最小の正の固有値と最大の正の固有値との差であり、円柱軸は最大の正の固有値の固有方向である。
【0144】
今日ではいくつかの様々なレンズ設計ベンダーが設計した多くの市販の累進レンズ設計がある。これらのレンズ設計は、レンズが補正するように設計されている患者のRxを参照する際に、多くのサブエリアにわたる残留光学特性の値が互いに異なる。累進レンズ設計を差別化する最も一般的なパラメータは度数累進の長さである。大まかに言えば、この値は、平均度数が距離基準位置における遠方視値からその目標加入度数までチャネルに沿って何ミリメートル上昇するかを測定する。
【0145】
本発明の一部の適用例によれば、付加レンズは再成形されベースレンズ22に固着された後に、(上記の)予め指定された測定位置におけるその光学設計を保持するだけでなく、レンズの予め指定された臨床的に重要なエリアにおいてほぼ同じ残留円柱数を保持する。
【0146】
具体的には、付加レンズ24と、付加レンズ及びベースレンズ22から構成されている結合レンズ20とに適用され得る測定手順がある。これらの手順はレンズのサブエリアの大部分にわたって光学特性を測定する。これらの測定結果から、残留特性のマップをレンズのそれぞれについて容易に計算した後、様々な数量測定基準を用いて様々な領域において互いに比較することができる。付加レンズの残留特性は、球面円柱補正がゼロの患者について計算される一方、結合レンズの残留特性は、ベースレンズが通常補正する所与の目標Rxを有する患者について計算される。例えば1つの数量測定基準を以下の方法で定めることができる。つまり、近方視基準点のY座標と等しいY座標にある、チャネルに最も近い残留円柱グラフの絶対値の極小から、残留円柱の0.5D絶対値の閾値に達するまで左に及び右に横断しなければならないミリメートル単位の距離を計算すること。次いでそれらの2つの距離の和は、(再成形する前の)付加レンズの残留円柱について、及び結合レンズ20の残留円柱の絶対値について計算される場合に比較される可能性がある。同様に、かかる計算は、Y座標を2mmだけ、4mmだけ、6mmだけ及び8mmだけ高くして(フィッティングポイントに近くして)実行される可能性がある。一般的に、かかる数量測定基準が、(再成形前の)付加レンズ、及び本明細書に記載の技術が付加レンズに適用されたときの結合レンズ20の測定マップについて計算される場合、その差が-2Dから+2Dの球面度数、及びマイナス円柱度数表記で-2から0の円柱値を有するレンズについて10%以下であることが分かった。
【0147】
これより
図9A及び
図9Bを参照する。
図9A及び
図9Bは、上記の原理を明らかにするグラフである。
図9Aには、再成形前の測定された付加レンズの残留円柱度(破線曲線)及び平均加入度(実線曲線)の近方視基準点に水平クロスカットが示されている。チャネルに最も近い円柱グラフの絶対値の極小から、0.5Dの不要円柱の閾値に達するまで左に及び右に横断しなければならないミリメートル単位の距離を計算することができる。これらの点は点50としてグラフに示されている。これらの2点間の距離は、プリズム基準点の領域における上記レンズの残留円柱を評価するための数量測定基準としての機能を果たす可能性がある。同様に、付加レンズ24及びベースレンズ22から構成された結合レンズ20の測定が行われる可能性があり、これは同じ数量測定基準で評価される可能性がある。これは
図9Bに示されている。以上で説明したように、一般的に、かかる数量測定基準が、(再成形前の)付加レンズ、及び本明細書に記載の技術が付加レンズに適用されたときの結合レンズ20の測定マップについて計算される場合、その差が-2Dから+2Dの球面度数、及びマイナス円柱度数表記で-2から0の円柱値を有するレンズについて10%以下であることが分かった。
【0148】
当該技術に精通している者は、高いRx単焦点レンズがまたマッピング装置で測定された場合にレンズの光学的中心から離れたサブエリアで大きい残留球面値及び円柱値を示し得ることを知っている。比較的高いRx(-2Dより小さい又は+2Dより大きい球面、及び/又は-2Dより小さい円柱)を有するレンズについて、付加レンズ及びベースレンズに関連して結合レンズ20の光学性能を評価するための、以下のステップから構成される修正された方法を用いなければならない。
1.付加レンズのあらゆるサブエリアにおける予め成形された付加レンズの残留光学特性を測定し、各サブエリアの球面円柱行列madd(x,y)を計算すること。
2.ベースレンズのあらゆるサブエリアにおけるベースレンズの残留光学特性を測定し、各サブエリアの球面円柱行列mbl(x,y)を計算すること。
3.各サブエリアについてのベースレンズ及び付加レンズの残留特性の和を表す、mth(x,y)=mbl(x,y)+madd(x,y)により与えられる理論的球面円柱行列を計算すること。
4.各サブエリアにおけるmth(x,y)の残留円柱Cth(x,y)をmth(x,y)の正の最小固有値と正の最大固有値との差として計算すること。
5.このように得られたCth(x,y)円柱の絶対値をマップ上にプロットすること。
6.レンズのあらゆるサブエリアにおける結合レンズの残留光学特性を測定し、各サブエリアの球面円柱行列mcl(x,y)を計算すること。
7.各サブエリアにおけるmcl(x,y)の残留光学円柱Ccl(x,y)をmcl(x,y)の正の最小固有値と正の最大固有値との差として計算すること。
8.このように得られた残留円柱Ccl(x,y)をマップ上にプロットすること。
9.近い基準位置のYにおける、並びにY座標を2mmだけ、4mmだけ、6mmだけ及び8mmだけ高くした(フィッティングポイントに近くした)Cth(x,y)の絶対値及びCcl(x,y)の絶対値の上記の数量測定基準を計算すること。
【0149】
一般的に、かかる数量測定基準が、(再成形前の)付加レンズ、及び本明細書に記載の技術が付加レンズに適用されたときの結合レンズ20の測定マップについて計算される場合、その差が10%以下であることが分かった。
【0150】
以上に具体的に示され説明されたものに本発明が限定されないことは当業者によって理解されるであろう。むしろ本発明の範囲は、上記の明細書で説明された様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術にはないそれらの変形例及び修正例を含む。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の光学設計を有する結合レンズを形成するように第1のレンズを第2のレンズに固着させることを含む方法であって、
前記固着させることが、
前記第1のレンズ及び前記第2のレンズを、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に接着層を配して、それぞれの内部の圧力を独立に制御可能な第1の圧力チャンバ及び第2の圧力チャンバ内にそれぞれ配置すること、
前記第1のレンズの凸面を、前記第1のレンズの前記凸面の中央領域が初めに前記接着層に接触し、その後前記第1のレンズの前記凸面と前記接着層との接触が、前記第1のレンズの前記凸面が前記接着層によって覆われるようになるまで前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域から外向きに放射状に広がるように前記接着層と接触させること、及び
前記第2のレンズの凹面を、前記第2のレンズの前記凹面の中央領域が初めに前記接着層に接触し、その後前記第2のレンズの前記凹面と前記接着層との接触が、前記第2のレンズの前記凹面が前記接着層によって覆われるようになるまで前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域から外向きに放射状に広がるように前記接着層と接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記固着させることが、前記第1のレンズの前記凸面を前記接着層と接触させながら、前記第1の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固着させることが、前記第2のレンズの前記凹面を前記接着層と接触させながら、前記第2の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域が初めに前記接着層に接触するように、前記第1のレンズの前記凸面を前記接着層と接触させることが、前記第1及び前記第2の圧力チャンバ間の圧力差を適用することによって、前記第1のレンズの前記凸面に面する凸曲面を前記接着層に形成させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域が初めに前記接着層に接触するように、前記第2のレンズの前記凹面を前記接着層と接触させることが、前記第1のレンズの前記凸面が前記接着層で覆われた後に、前記接着層が配された前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域が前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域に接触するように、前記第1のレンズ、前記接着層、及び前記第2のレンズを互いに向かって移動させることを含み、前記第1のレンズの前記凸面の曲率が、前記第2のレンズの前記凹面の曲率より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、オートクレービング、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、前記第1のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、オートクレービング、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、前記第2のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、前記第1のレンズと前記接着層との間に位置する空孔を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
空気圧を印加すること、機械的圧力を印加すること、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの技術を用いて、前記第2のレンズと前記接着層との間に位置する空孔を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記接着層の厚さが20から300ミクロンである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記接着層の厚さが50から200ミクロンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記固着させることにおける1つ以上の段階において、前記ベースレンズ、前記付加レンズ、前記接着層、前記第1の圧力チャンバ、前記第2の圧力チャンバ、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの要素を加熱することを更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの要素を加熱することが、前記少なくとも1つの要素をセ氏25度から75度の温度まで加熱することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの要素を加熱することが、前記少なくとも1つの要素を0.1秒から1時間の期間加熱することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
所与の光学設計を有する結合レンズを形成するように、少なくとも1つの凸面を有する第1のレンズを少なくとも1つの凹面を有する第2のレンズに固着させるための装置であって、
それぞれの内部の圧力を独立に制御可能な、前記第1のレンズを収容するように構成されている第1の圧力チャンバ及び前記第2のレンズを収容するように構成されている第2の圧力チャンバと、
前記第1及び前記第2の圧力チャンバ間に配された接着層と、
1つ以上の機械的押し要素と、
前記第1のレンズの前記凸面の中央領域が初めに前記接着層に接触し、その後前記第1のレンズの前記凸面と前記接着層との接触が、前記第1のレンズの前記凸面が前記接着層によって覆われるようになるまで前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域から外向きに放射状に広がるように、前記第1のレンズの前記凸面を前記接着層と接触させるように前記機械的押し要素の1つを駆動し、
前記第2のレンズの前記凹面の中央領域が初めに前記接着層に接触し、その後前記第2のレンズの前記凹面と前記接着層との接触が、前記第2のレンズの前記凹面が前記接着層によって覆われるようになるまで前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域から外向きに放射状に広がるように、前記第2のレンズの前記凹面を前記接着層と接触させるように前記機械的押し要素の1つを駆動するように構成されているコンピュータプロセッサとを含む装置。
【請求項16】
前記コンピュータプロセッサが、前記第1のレンズの前記凸面を前記接着層と接触させるように前記機械的押し要素の1つを駆動しながら、前記第1の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させるように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記コンピュータプロセッサが、前記第2のレンズの前記凹面を前記接着層と接触させるように前記機械的押し要素の1つを駆動しながら、前記第2の圧力チャンバ内の圧力を周囲圧力未満まで低下させるように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記コンピュータプロセッサが、前記第1及び前記第2の圧力チャンバ間の圧力差を適用することによって、前記第1のレンズの前記凸面に面する凸曲面を前記接着層に形成させるように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記装置が、前記第1のレンズの前記凸面の曲率が前記第2のレンズの前記凹面の曲率より大きくなるように成形されている第1のレンズ及び第2のレンズで使用され、前記コンピュータプロセッサが、前記第1のレンズの前記凸面が前記接着層で覆われた後に、前記接着層が配された前記第1のレンズの前記凸面の前記中央領域が前記第2のレンズの前記凹面の前記中央領域に接触するように、前記第1のレンズ、前記接着層、及び前記第2のレンズを互いに向かって移動させるように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記コンピュータプロセッサが、前記第1の圧力チャンバ内に空気圧を印加することによって、前記第1のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡及び前記第1のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記コンピュータプロセッサが、前記第1の圧力チャンバ内に空気圧を印加することによって、前記第2のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡及び前記第2のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項22】
前記1つ以上の機械的押し要素が、機械的圧力を印加することによって、前記第1のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡及び前記第1のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項23】
1つ以上の前記機械的押し要素が、機械的圧力を印加することによって、前記第2のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡及び前記第2のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項24】
前記付加レンズと前記接着層との間に捕捉される気泡、前記第2のレンズと前記接着層との間に捕捉される気泡、前記第1のレンズと前記接着層との間に配される空孔、及び前記第2のレンズと前記接着層との間に配される空孔を除去するように構成されている加熱及び/又は圧力チャンバを更に備える、請求項15に記載の装置。
【請求項25】
前記接着層の厚さが20から300ミクロンである、請求項15から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記接着層の厚さが50から200ミクロンである、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記固着させることにおける1つ以上の段階において、前記ベースレンズ、前記付加レンズ、前記接着層、前記第1の圧力チャンバ、前記第2の圧力チャンバ、及びそれらの任意の組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも1つの要素を加熱するように構成されている加熱コンポーネントを更に備える、請求項15から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記加熱コンポーネントが、前記少なくとも1つの要素をセ氏25度から75度の温度まで加熱するように構成されている、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記加熱コンポーネントが、前記少なくとも1つの要素を0.1秒から1時間の期間加熱するように構成されている、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
前記機械的押し要素の少なくとも1つが、90ショアA未満の硬度を有する材料から作られている、請求項15から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記機械的押し要素の少なくとも1つが、20から85ショアAの硬度を有する材料から作られている、請求項30に記載の装置。
【外国語明細書】