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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007328
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】建具及び建具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/36 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
E06B7/36 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191185
(22)【出願日】2021-11-25
(62)【分割の表示】P 2021107808の分割
【原出願日】2021-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和 3年 6月18日に、永大産業株式会社のウェブサイトにて公開(https://www.eidai.com/news/backnumber/news20210618.html)
(71)【出願人】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 瞭
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄亮
(57)【要約】
【課題】手指の負傷を防止することと使用者に違和感を与えないこととを両立することができる建具及び建具の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る建具は、一方向に長い矩形板状の建具本体2と、該建具本体2に取り付けられるパッキン3とを備える建具において、前記建具本体2の長辺部2aに切り欠き21が設けられており、前記建具本体2の両面夫々に凹部22が設けられており、前記パッキン3は溝形部材であり、前記パッキン3の両内側面に、互いに向けて突出している2つの凸部31が設けられており、該凸部31が前記凹部22に嵌め込まれることにより、前記パッキン3が少なくとも前記切り欠き21及び前記切り欠き21の周縁部を覆うようにして前記建具本体2に取り付けられることを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長い矩形板状の建具本体と、
該建具本体に取り付けられるパッキンと
を備える建具において、
前記建具本体の長辺部に切り欠きが設けられており、
前記建具本体の両面夫々に凹部が設けられており、
前記パッキンは溝形部材であり、
前記パッキンの両内側面に、互いに向けて突出している2つの凸部が設けられており、
該凸部が前記凹部に嵌め込まれることにより、前記パッキンが少なくとも前記切り欠き及び前記切り欠きの周縁部を覆うようにして前記建具本体に取り付けられることを特徴と
する建具。
【請求項2】
前記長辺部の端面における前記建具本体の厚さ方向の両端部の少なくとも前記パッキンに覆われる部分は面取りされていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記パッキンの前記両内側面及び内底面は、前記両面及び前記長辺部の端面に接着され、
前記凸部は前記凹部の内面に接着され、
前記パッキンに開口が設けられており、
前記建具本体の前記開口を通して露出する部分に、部品が収容される収容穴が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
前記パッキンと前記両面及び前記端面との間に介在する一の接着剤は、前記凸部と前記内面との間に介在する他の接着剤に比べて速乾性、耐熱性、又は耐衝撃性に優れることを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記凹部は前記建具本体の全長にわたる溝であり、
前記パッキンは前記建具本体の前記長辺部を全長にわたって覆うことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の建具。
【請求項6】
一方向に長い矩形板状の建具本体と、
溝形部材であり、両内側面に、互いに向けて突出する2つの凸部が設けられているパッキンと
を備える建具を製造する方法であって、
一方向に長い矩形板から、長辺部に切り欠きが設けられており、且つ両面夫々に凹部が設けられている前記建具本体を形成し、
前記パッキンが少なくとも前記切り欠き及び前記切り欠きの周縁部を覆うようにして前記凸部を前記凹部に嵌め込むことにより、前記パッキンを前記建具本体に取り付けることを特徴とする建具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具及び建具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
引戸又は開戸等の建具は壁体に設けられた開口を開閉する。従来、建具に手指を挟んで負傷する事故を防止するために、建具本体とクッション材とを備える建具が提案されている。クッション材は、建具本体の縁部に設けられた切り欠きに嵌め込まれている。
例えば建具と建具を支持する建具枠との間に手指が挟まれたとしても、クッション材が衝撃を吸収するので、手指の負傷を防止することができる。
この種の建具は、例えば特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-316409号公報
【特許文献2】特開2007-138587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に開示されている建具の場合、クッション材が切り欠きに嵌め込まれているので、切り欠きの周縁の角部に手指が触れて使用者に違和感を与える虞がある。
【0005】
本開示の目的は、手指の負傷を防止することと使用者に違和感を与えないこととを両立することができる建具及び建具の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る建具は、一方向に長い矩形板状の建具本体と、該建具本体に取り付けられるパッキンとを備える建具において、前記建具本体の長辺部に切り欠きが設けられており、前記建具本体の両面夫々に凹部が設けられており、前記パッキンは溝形部材であり、前記パッキンの両内側面に、互いに向けて突出している2つの凸部が設けられており、該凸部が前記凹部に嵌め込まれることにより、前記パッキンが少なくとも前記切り欠き及び前記切り欠きの周縁部を覆うようにして前記建具本体に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
本開示にあっては、建具本体の長辺部に切り欠きが設けられている。また、建具本体の両面夫々に凹部が設けられている。
パッキンは溝形部材であり、パッキンの両内側面に2つの凸部が設けられている。2つの凸部夫々はパッキンの内側面から互いに向けて突出している。
パッキンの2つの凸部が建具本体夫々の凹部に嵌め込まれることにより、パッキンが建具本体に取り付けられる。このとき、パッキンは切り欠き及び切り欠きの周縁部を覆う。
【0008】
例えば建具と建具を支持する建具枠との間に手指が挟まれたとしても、パッキンが切り欠きの内部に向けて変形することによって衝撃を吸収するので、手指の負傷を防止することができる。
また、切り欠きの周縁部もパッキンによって覆われるので、切り欠きの周縁の角部に手指が触れて使用者に違和感を与える虞はない。
以上の結果、手指の負傷を防止することと使用者に違和感を与えないこととを両立することができる。
【0009】
本開示に係る建具は、前記長辺部の端面における前記建具本体の厚さ方向の両端部の少なくとも前記パッキンに覆われる部分は面取りされていることを特徴とする。
【0010】
本開示にあっては、建具本体の長辺部の端面における建具本体の厚さ方向の両端部は面取りされている。故に、端面の両端の角部がパッキンに当接してパッキンの内面を傷つける虞はない。また、端面の両端の角部がパッキンに当接することによりパッキンと建具本体の両面及び端面との間に無用な空隙が形成される不都合を防止することができる。
面取りは、少なくともパッキンに覆われる部分に施してあればよい。
【0011】
本開示に係る建具は、前記パッキンの前記両内側面及び内底面は、前記両面及び前記長辺部の端面に接着され、前記凸部は前記凹部の内面に接着され、前記パッキンに開口が設けられており、前記建具本体の前記開口を通して露出する部分に、部品が収容される収容穴が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、パッキンの両内側面が建具本体の両面に接着され、パッキンの内底面が建具本体の長辺部の端面に接着される。更に、パッキンの凸部が建具本体の凹部の内面に接着される。以上の事から、パッキンの建具本体からの脱落を確実に防止することができる。
パッキンには開口が設けられている。建具本体の、パッキンの開口を通して露出する部分に収容穴が設けられている。建具本体の収容穴には部品が収容される。
パッキンは建具本体に接着されるので、パッキンの建具本体への接着後に、パッキンの開口及び建具本体の収容穴を形成することができる。
【0013】
本開示に係る建具は、前記パッキンと前記両面及び前記端面との間に介在する一の接着剤は、前記凸部と前記内面との間に介在する他の接着剤に比べて速乾性、耐熱性、又は耐衝撃性に優れることを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、一の接着剤は他の接着剤よりも速乾性、耐熱性、又は耐衝撃性に優れる。
他の接着剤が一の接着剤と同様の速乾性、耐熱性、及び耐衝撃性を有する必要はない。故に、他の接着剤の選択の自由度は高い。
【0015】
一の接着剤の速乾性により、パッキンは建具本体に短時間で接着固定される。故に、パッキンの建具本体への接着後、長時間乾燥させることなくパッキンの開口及び建具本体の収容穴を形成することができる。
一の接着剤の耐熱性により、パッキンの建具本体への接着後に一の接着剤が熱によって変質し、パッキンが建具本体から剥離する虞がない。一の接着剤の耐衝撃性により、パッキンの建具本体への接着後に衝撃を受けたパッキンが建具本体から剥離する虞がない。故に、パッキンの建具本体への接着後、パッキンの開口及び建具本体の収容穴を形成したとしても、パッキンが建具本体から剥離する虞がない。
【0016】
本開示に係る建具は、前記凹部は前記建具本体の全長にわたる溝であり、前記パッキンは前記建具本体の前記長辺部を全長にわたって覆うことを特徴とする。
【0017】
本開示にあっては、パッキンが建具本体の長辺部を全長にわたって覆っている。故に、パッキンが建具本体の長辺部の長さ方向の一部のみを覆う場合に比べて、建具本体とパッキンとの一体感が向上するので、建具の美観を向上させることができる。
【0018】
本開示に係る建具の製造方法は、一方向に長い矩形板状の建具本体と、溝形部材であり、両内側面に、互いに向けて突出する2つの凸部が設けられているパッキンとを備える建具を製造する方法であって、一方向に長い矩形板から、長辺部に切り欠きが設けられており、且つ両面夫々に凹部が設けられている前記建具本体を形成し、前記パッキンが少なくとも前記切り欠き及び前記切り欠きの周縁部を覆うようにして前記凸部を前記凹部に嵌め込むことにより、前記パッキンを前記建具本体に取り付けることを特徴とする。
【0019】
本開示にあっては、本開示に係る建具を製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の建具及び建具の製造方法によれば、手指の負傷を防止することと使用者に違和感を与えないこととを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係る建具の正面図である。
図2図1におけるII-II線による断面図である。
図3】建具本体及びパッキンの正面図である。
図4図3におけるVI-VI線による断面図である。
図5】建具の側面図である。
図6】建具の製造手順を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0023】
図1は、実施の形態に係る建具の正面図である。
図2は、図1におけるII-II線による断面図である。
図中1は建具であり、建具1は建具本体2及びパッキン3を備える。
図3は、建具本体2及びパッキン3の正面図である。
図4は、図3におけるVI-VI線による断面図である。
【0024】
図1及び図3に示すように、建具本体2は一方向に長い矩形板状をなす。建具本体2は例えばフラッシュパネルであり、木質材製又は無垢材製の枠状の芯材と、芯材を覆う面材とを備える。
建具本体2の一方の長辺部2aには切り欠き21が設けられている。切り欠き21は矩形状をなし、長辺部2aの中央から一端にわたる。図2及び図4には建具本体2の長辺部2aの近傍が示されている。
【0025】
図2図4に示すように、建具本体2の両面夫々に凹部22が設けられている。凹部22は建具本体2の全長にわたって長辺部2aに平行に延びる溝である。凹部22は切り欠き21と建具本体2の幅方向に隣り合うようにして切り欠き21の近傍に設けられている。
【0026】
図2及び図3に示すように、長辺部2aの端面において、建具本体2の厚さ方向の両端部は面取りされている。面取りされている部分は長辺部2aの端面の全長にわたる。故に、長辺部2aの端面の両端には鋭利な角部がない。
図においては凹面の面取りがなされているが、これに限定されず、C面又はR面等の面取りでもよい。
本実施の形態では、切り欠き21の周縁は面取りされていない(後述する図6参照)。
【0027】
パッキン3は溝形部材であり、帯状の底壁3aの幅方向の両端部から同じ向きに側壁3bが突出している。底壁3aの長さは建具本体2の長さに等しい。側壁3bは底壁3aの全長にわたる。各側壁3bと底壁3aとの境界部分は弧状をなす。
【0028】
側壁3bの内面の先端部には凸部31が設けられている。凸部31は側壁3bの全長にわたる条状をなす。側壁3bからの凸部31の突出量は、建具本体2の凹部22の深さと同程度の大きさである。凸部31の表面には凹凸が設けられており、凸部31の表面の摩擦係数は大きい。凸部31の最大幅は建具本体2の凹部22の幅よりもやや大きい。
2つの側壁3b夫々の凸部31は、互いに向けて突出している。
【0029】
側壁3bの凸部31よりも先端側の部分は内側に湾曲していることが望ましい。
パッキン3は適宜の柔軟性を有し、例えばエラストマ製である。ただし、側壁3bの先端部及び凸部31は比較的硬質であることが望ましい。
【0030】
図2に示すように、パッキン3の2つの凸部31は、パッキン3の底壁3aが建具本体2の長辺部2aの端面と切り欠き21とを覆うようにして、建具本体2の2つの凹部22に嵌め込まれている。このとき、パッキン3の2つの側壁3bが建具本体2の長辺部2aの両面を覆う。この結果、パッキン3は切り欠き21、切り欠き21の周縁部、及び凹部22を覆う。
パッキン3の側壁3bの凸部31よりも先端側の部分が内側に湾曲している場合、側壁3bの先端部分が建具本体2の表面に密着しやすい。故に、側壁3bがめくれて美観を損なう虞がない。
【0031】
凸部31は凸部31の表面と凹部22の内面と摩擦力により凹部22の内部に保持される。本実施の形態では、凸部31の凹部22からの抜脱を確実に阻止すべく、凸部31は凹部22の内面に接着されている。
また、パッキン3の底壁3aの内面は建具本体2の長辺部2aの端面に接着されている。パッキン3の2つの側壁3bの内面は建具本体2の両面に接着されている。
凸部31の凹部22への嵌め込み及び接着、並びにパッキン3の建具本体2への接着により、パッキン3は建具本体2に取り付けられている。図1に示すように、パッキン3は建具本体2の長辺部2aを全長にわたって覆っている。
【0032】
建具1は、例えば吊り引戸として用いられる。この場合、パッキン3が戸先側に位置し、切り欠き21が下側に位置するようにして、建具本体2の長さ方向、幅方向、及び厚さ方向が、上下、左右、及び前後に向けられる。図においては、向かって左側/右側が戸先側/戸尻側である。
建具本体2の上辺の左右両端部には2つの吊り車11が設けられる。2つの吊り車11は左右方向に延びる図示しない案内レールに沿って走行する。これにより、建具1は壁体に設けられた開口を開閉する(各不図示)。
【0033】
図5は、建具1の側面図である。図5には戸先側の側面が示されている。
建具本体2の戸先側の端面(長辺部2aの端面)には2つの収容穴23,24が設けられている。パッキン3の底壁3aには2つの開口32,33が設けられている。パッキン3の開口32を通して建具本体2の収容穴23が露出しており、パッキン3の開口33を通して建具本体2の収容穴24が露出している。
【0034】
収容穴23は建具本体2の戸先側の端面から上面にわたって開口している。収容穴23は、例えば建具本体2の芯材を構成する縦枠及び横枠にわたって設けられている。図1に示すように、収容穴23には吊り車11の下部に連結されている吊り車ケース111が収容してある。吊り車ケース111は建具本体2に例えばビス留め固定されている。図5における吊り車11及び吊り車ケース111の図示は省略している。
同様に、建具本体2の戸尻側の端面にも収容穴23が設けられており、吊り車11の吊り車ケース111が収容されている。
【0035】
図1に示すように、収容穴24は建具本体2の戸先側の上下方向中央部に位置している。収容穴24は、例えば建具本体2の芯材を構成する縦枠及び縦枠に固定された補強部材に設けられている。収容穴24には鎌錠装置12が収容してある。鎌錠装置12は建具本体2に例えばビス留め固定されている。図5における鎌錠装置12の図示は省略してある。
【0036】
図1に示すように、鎌錠装置12はチャイルドロック用の摘まみ121を備える。建具本体2の一面には収容穴24に連通する開口が設けられており、この開口を通して摘まみ121が露出している。図示はしないが、建具本体2の一面と同様にして建具本体2の他面にも摘まみ121が露出している。
鎌錠装置12は図示しない鎌錠を備える。使用者が摘まみ121を操作することにより、鎌錠装置12の鎌錠がパッキン3の開口33を通して、向かって左側に突出する。
【0037】
建具本体2の一面には握りバー13が設けられている。握りバー13はパッキン3の戸尻側に隣り合うようにして、建具本体2の長手方向の中央部に配されている。図示はしないが、建具本体2の一面と同様にして建具本体2の他面にも握りバー13が設けられている。
握りバー13を握ることにより、使用者は建具1を開閉する。
【0038】
図6は、建具1の製造手順を説明するための斜視図である。
製造者は、一方向に長い矩形板20(図3参照)を準備し、長辺部2aに切り欠き21を設け、且つ両面夫々に凹部22を設けることにより、建具本体2を形成する。更に、製造者は、建具本体2の長辺部2aの端面に面取りを施す。なお、面取りは切り欠き21を設ける前に施されてもよい。
また、製造者はパッキン3を準備する。パッキン3は、例えば硬化後の硬度が相異なる2種類の材料を用いた押出成形によって形成される。
【0039】
更に、製造者は2種類の接着剤を準備する。一の接着剤は他の接着剤に比べて速乾性に優れ、且つ、硬化後の耐熱性及び耐衝撃性に優れることが望ましい。例えば、一の接着剤はウレタン樹脂系接着剤(好ましくはシリル化ウレタン樹脂系接着剤)であり、他の接着剤は酢酸ビニル樹脂系接着剤(いわゆる木工用ボンド)である。なお、2種類の接着剤はウレタン樹脂系接着剤及び酢酸ビニル樹脂系接着剤に限定されない。
【0040】
製造者は、他の接着剤を建具本体2の凹部22の内面に全体的に塗布する。
次に、製造者は、建具本体2の長辺部2aの端面及び両面に一の接着剤を塗布する。具体的には、製造者は、長辺部2aの端面から凹部22の開口の戸先側の縁部にわたって一の接着剤を塗布する。
一の接着剤を塗布する範囲は、パッキン3が建具本体2に取り付けられた場合に底壁3a及び2つの側壁3bが接触する範囲である。ただし、製造者は、凹部22の開口の戸尻側の縁部、及び、切り欠き21と凹部22との間に接着剤を塗布しなくてもよい。この場合、図6にハッチングで図示された範囲に一の接着剤が塗布される。
【0041】
接着剤の塗布後、製造者は、パッキン3が建具本体2の長辺部2aを全長にわたって覆うようにして、パッキン3の2つの凸部31を建具本体2の2つの凹部22に嵌め込み、パッキン3を建具本体2に接着する。
一の接着剤の効果後、製造者は、パッキン3に開口32,33を形成すると共に、建具本体2に収容穴23,24を形成する(図5参照)。
以上のようにして、建具1は例えば工場にて製造される。その後、建具1は施工現場に搬入され、施工現場にて、建具1に吊り車11の吊り車ケース111及び鎌錠装置12が夫々取り付けられる(図1参照)。
【0042】
以上のような建具1によれば、建具1と建具1が開閉する開口の周縁部(不図示)との間に手指が挟まれたとしても、パッキン3が切り欠き21の内部に向けて変形することによりパッキン3が衝撃を吸収するので、手指の負傷を防止することができる。
また、切り欠き21の周縁部もパッキン3によって覆われるので、切り欠き21の周縁の角部に手指が触れて使用者に違和感を与える虞はない。
以上の結果、手指の負傷を防止することと使用者に違和感を与えないこととを両立することができる。
【0043】
パッキン3は切り欠き21及び切り欠き21の周縁部のみを覆う構成でもよい。しかしながら、本実施の形態のようにパッキン3が建具本体2の長辺部2aを全長にわたって覆う方が、長辺部2aの長さ方向の一部のみを覆う場合に比べて、建具本体2とパッキン3との一体感が向上するので、建具1の美観を向上させることができる。
建具1の美観を更に向上させるためには、パッキン3の色及び模様等と建具本体2の色及び模様等とが互いに共通していることが望ましい。例えば、パッキン3の表面に建具本体2の表面の木目と同様の木目が印刷されていることが望ましい。
【0044】
パッキン3が建具本体2の長辺部2aの長さ方向の一部のみを覆う場合、凹部22はパッキン3に覆われる部分にのみ設けられていることが望ましい。
本実施の形態の凹部22は建具本体2の全長にわたる1本の溝であるが、これに限定されず、建具本体2の長さ方向に並設された複数本の溝、又は複数個の穴でもよい。しかしながら、凹部22が建具本体2の全長にわたる1本の溝である方が凹部22の内面に接着剤を満遍なく塗布しやすい。
【0045】
パッキン3の凸部31は、建具本体2の凹部22に嵌め込むことができる構成であればよい。本実施の形態では凹部22が建具本体2の全長にわたる1本の溝なので、パッキン3の全長にわたる条状の凸部31は凹部22の内面との接触面積が大きい。故にパッキン3の脱落が防止される。
【0046】
建具本体2の長辺部2aの端面について、建具本体2の厚さ方向の両端部の面取りは省略されてもよい。しかしながら、長辺部2aの端面の両端部が面取りされていることにより、端面の両端の角部がパッキン3に当接してパッキン3の内面を傷つけることを防止することができる。また、端面の両端の角部がパッキン3に当接することによりパッキン3と建具本体2との間に無用な空隙が形成される不都合を防止することができる。
パッキン3が建具本体2の長辺部2aの長さ方向の一部のみを覆う場合、面取りは、少なくともパッキン3に覆われる部分に施してあればよい。
【0047】
本実施の形態ではパッキン3の底壁3aが建具本体2の長辺部2aの端面に接着され、パッキン3の2つの側壁3bが建具本体2の両面に接着される。更に、パッキン3の凸部31が建具本体2の凹部22の内面に接着される。以上の事から、パッキン3の建具本体2からの脱落を確実に防止することができる。
【0048】
パッキン3は建具本体2に接着されるので、パッキン3の建具本体2への接着後に、パッキン3の開口32,33及び建具本体2の収容穴23,24を形成することができる。
一の接着剤の速乾性により、パッキン3は建具本体2に短時間で接着固定される。故に、パッキン3の建具本体2への接着後、長時間乾燥させることなくパッキン3の開口32,33及び建具本体2の収容穴23,24を形成することができる。
【0049】
一の接着剤の耐熱性により、パッキン3の建具本体2への接着後に一の接着剤が熱によって変質し、パッキン3が建具本体2から剥離する虞がない。一の接着剤の耐衝撃性により、パッキン3の建具本体2への接着後に衝撃を受けたパッキン3が建具本体2から剥離する虞がない。故に、パッキン3の建具本体2への接着後、パッキン3の開口32,33及び建具本体2の収容穴23,24を形成したとしても、パッキン3が建具本体2から剥離する虞がない。
【0050】
凹部22の内面には他の接着剤が塗布されるが、これに限定されず、凹部22の内面にも一の接着剤が塗布されてもよい。しかしながら、他の接着剤は一の接着剤と同様の速乾性、耐熱性、及び耐衝撃性を有する必要はない。即ち、他の接着剤の選択の自由度は高い。故に、例えば他の接着剤として一の接着剤よりも安価なものを用いることができる。
パッキン3の底壁3a及び側壁3bの接着のために一の接着剤が用いられるが、これに限定されず、他の接着剤が用いられてもよい。この場合、開口32,33が予め形成されたパッキン3が、収容穴23,24が予め形成された建具本体2に接着されてもよい。
【0051】
なお、建具1は吊り引戸として用いられる構成に限定されず、レール上を摺動する引戸、開戸、又は折戸等として用いられる構成でもよい。
切り欠き21の位置は長辺部2aの中央部から下端部に限定されず、例えば長辺部2aの中央部から上端部でもよく、戸尻側の長辺部の中央部でもよい。本実施の形態では、パッキン3に覆われた切り欠き21が、幼い子供の手が届く位置にあるので、建具1は幼い子供がいる住宅、施設等に適している。
【0052】
部品が収容される収容穴が建具本体2の一面に設けられており、この収容穴が露出するようにしてパッキン3の側壁2bに開口が設けられてもよい。例えば鎌錠装置12の摘まみ121はパッキン3の側壁2bに設けられた開口を通して露出してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 建具
111 吊り車ケース(部品)
12 鎌錠装置(部品)
2 建具本体
2a 長辺部
20 矩形板
21 切り欠き
22 凹部
23,24 収容穴
3 パッキン
31 凸部
32,33 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6