(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007335
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】多層フレキシブル配線板の製造方法、多層フレキシブル配線板及びその応用
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20230111BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230111BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K3/00 N
H05K1/03 610N
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198260
(22)【出願日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】202110729574.2
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520480382
【氏名又は名称】富佳生技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 凱
(72)【発明者】
【氏名】林 俊宇
(72)【発明者】
【氏名】張 必聖
(72)【発明者】
【氏名】馬 世▲クン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 裕民
(72)【発明者】
【氏名】廖 本揚
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲レン▼翔
(72)【発明者】
【氏名】劉 信顕
(72)【発明者】
【氏名】古 健佑
(72)【発明者】
【氏名】謝 重仁
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA12
5E338AA16
5E338BB55
5E338BB56
5E338CC01
5E338CD13
5E338EE27
5E338EE32
5E338EE60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造方法が簡単で、コストが低く、回線の作製効率が高い多層フレキシブル配線板の製造方法、多層フレキシブル配線板及びその応用を提供する。
【解決手段】多層フレキシブル配線板の製造方法であって、対向して配置された第1表面及び第2表面を含む基板1を提供するステップと、第1表面に第1配線領域21と、第1配線領域と電気的に接続された第2配線領域22とを含む配線層2を形成し、片面フレキシブル配線板10を得るステップと、片面フレキシブル配線板10の第1配線領域と第2配線領域との間の領域に第1折り曲げ領域23を形成するステップと、第1折り曲げ領域に折れ線を形成する複数の折目孔を形成するステップと、折れ線に沿って、第2配線領域を第1配線領域に対して折り曲げて、第2配線領域と第1配線領域とを積層して設けることにより、多層フレキシブル配線板を得るステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された第1表面及び第2表面を含む基板を提供するステップと、
前記第1表面に第1配線領域と、前記第1配線領域と電気的に接続された第2配線領域とを含む配線層を形成し、前記基板における前記第1配線領域と前記第2配線領域との間の領域に第1折り曲げ領域を形成するステップと、
前記第1折り曲げ領域に折れ線を形成する複数の折目孔を形成するステップと、
前記折れ線に沿って、前記第2配線領域を前記第1配線領域に対して折り曲げて、前記第2配線領域と前記第1配線領域とを積層して設けることにより、多層フレキシブル配線板が得られるステップと、を含むことを特徴とする多層フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項2】
前記配線層は、導電性ペーストが印刷された後に、硬化されることにより得られることを特徴とする請求項1に記載の多層フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項3】
前記配線層を形成した後、前記製造方法は、
前記第2表面に前記第1配線領域及び前記第2配線領域の少なくとも一方に対応した機能要素を設けることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多層フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項4】
前記折目孔の孔径は0.05~0.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の多層フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項5】
前記折目孔は、レーザー穴あけの方法により形成されることを特徴とする請求項1に記載の多層フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項6】
前記第1配線領域の数は複数であり、複数の前記第1配線領域は電気的に接続され、隣り合う2つの前記第1配線領域の間には第2折り曲げ領域が設けられることを特徴とする請求項1に記載の多層フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項7】
前記基板の材質は、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートのうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の多層フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項8】
基板と、配線層と、複数の折目孔と、を有する多層フレキシブル配線板であって、
前記基板は、対向して配置される第1表面および第2表面を含み、
前記配線層は、前記第1表面に設けられ、且つ第1配線領域と、前記第1配線領域と電気的に接続される第2配線領域とを含み、
前記基板における前記第1配線領域と前記第2配線領域との間の領域には、第1折り曲げ領域が形成されており、
前記複数の折目孔は、前記第1折り曲げ領域に設けられ、且つ折れ線を形成し、
前記第2配線領域は、前記折れ線に沿って前記第1配線領域に対して折り曲げられ、且つ前記第1配線領域と積層して設けられていることを特徴とする多層フレキシブル配線板。
【請求項9】
前記第2表面には、前記第1配線領域及び前記第2配線領域の少なくとも一方に対応した機能要素が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項10】
前記折目孔の孔径は、0.05~0.5mmであることを特徴とする請求項8に記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項11】
前記基板の材質は、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートのうちの1つであることを特徴とする請求項8に記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項12】
前記第1配線領域の数は複数であり、複数の前記第1配線領域は電気的に接続され、隣り合う2つの前記第1配線領域の間には第2折り曲げ領域が設けられることを特徴とする請求項8に記載の多層フレキシブル配線板。
【請求項13】
第1カバー板と、
第2カバー板と、
対向する両面が前記第1カバー板及び前記第2カバー板にそれぞれ隣接するスペーサ層と、
請求項8~12の何れか一項に記載の多層フレキシブル配線板と、を含み、
前記第1カバー板、前記スペーサ層および前記第2カバー板が取り囲んでチャンネルを形成し、
前記多層フレキシブル配線板は、前記第1カバー板及び/又は前記第2カバー板の前記チャンネルから遠く離れる側に設けられることを特徴とする検出チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント印刷基板の技術に関し、特に、多層フレキシブル配線板の製造方法、多層フレキシブル配線板及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの携帯型の疾病検出デバイスにおける生体誘導チップ(例えば、核酸検出デバイス用チップ、血糖検出用チップ等)に対して、フレキシブル回路基板(Flexible Printed Circuit,FPC)が多く用いられている。
【0003】
従来のFPCは可撓性は良いが、二つ折りにした場合でも折り曲げ領域が反ったり、配線と基板とが分離したりするなどの不良が生じる。また、携帯型の疾病検知装置における生体感知チップは使い捨てで使用され、使用後はそのまま廃棄されることが多い。従来のFPCでは、製造工程が煩雑であり、コストが非常に高く、患者にとって経済的負担が増えることは疑われず、このような生体感知チップの幅広い応用に不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことから、上記少なくとも1つの欠点を解決するために、多層フレキシブル配線板の製造方法を提案する必要がある。
【0005】
また、本発明は、上記製造方法により製造された多層フレキシブル配線板を提供する。
【0006】
また、本発明は、上記の多層フレキシブル配線板を用いた検査チップも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1方面では、多層フレキシブル配線板の製造方法を提供する。前記多層フレキシブル配線板の製造方法は、
対向して配置された第1表面及び第2表面を含む基板を提供するステップと、
前記第1表面に第1配線領域と、前記第1配線領域と電気的に接続された第2配線領域とを含む配線層を形成し、前記基板における前記第1配線領域と前記第2配線領域との間の領域に第1折り曲げ領域を形成するステップと、
前記第1折り曲げ領域に折れ線を形成する複数の折目孔を形成するステップと、
前記折れ線に沿って、前記第2配線領域を前記第1配線領域に対して折り曲げて、前記第2配線領域と前記第1配線領域とを積層して設けることにより、前記多層フレキシブル配線板が得られるステップと、を含む。
【0008】
本願の実施形態では、前記配線層は、導電性ペーストが印刷された後に、硬化されることにより得られる。
【0009】
本願の実施形態では、前記配線層を形成した後、前記方法はさらに、
前記第2表面に前記第1配線領域及び前記第2配線領域の少なくとも一方に対応した機能要素を設けることを含む。
【0010】
本願の実施形態では、前記折目孔の孔径は0.05~0.5mmである。
【0011】
本願の実施形態では、前記折目孔は、レーザー穴あけの方法により形成される。
【0012】
本願の実施形態では、前記第1配線領域の数は複数であり、複数の前記第1配線領域は電気的に接続され、隣り合う2つの前記第1配線領域の間には第2折り曲げ領域が設けられる。
【0013】
本願の実施形態では、前記基板の材質は、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートのうちの1つである。
【0014】
本発明の第2方面では、基板と、配線層と、複数の折目孔と、を有する多層フレキシブル配線板を提供する。前記基板は、対向して配置される第1表面および第2表面を含む。前記配線層は、前記第1表面に設けられ、且つ第1配線領域と、前記第1配線領域と電気的に接続される第2配線領域とを含む。前記基板における前記第1配線領域と前記第2配線領域との間の領域には、第1折り曲げ領域が形成されている。前記複数の折目孔は、前記第1折り曲げ領域に設けられて、折れ線を形成している。前記基板は、対向して配置される第3表面及び第4表面を含む。ここで、前記第2配線領域は、前記折れ線に沿って前記第1配線領域に対して折り曲げられ、且つ前記第1配線領域と積層して設けられている。
【0015】
本願の実施形態では、前記第2表面には、前記第1配線領域及び前記第2配線領域の少なくとも一方に対応した機能要素が設けられている。
【0016】
本願の実施形態では、前記折目孔の孔径は、0.05~0.5mmである。
【0017】
本願の実施形態では、前記基板の材質は、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートのうちの1つである。
【0018】
本願の実施形態では、前記第1配線領域の数は複数であり、複数の前記第1配線領域は電気的に接続され、隣り合う2つの前記第1配線領域の間には第2折り曲げ領域が設けられる。
【0019】
本発明の第3方面では、検出チップを提供する。前記検出チップは、第1カバー板と、第2カバー板と、スペーサ層と、多層フレキシブル配線板とを含む。前記スペーサ層の対向する両面は、それぞれ前記第1カバー板および前記第2カバー板に隣接し、前記第1カバー板、前記スペーサ層および前記第2カバー板が取り囲んでチャンネルを形成する。前記多層フレキシブル配線板は、上述したような多層フレキシブル配線板であり、前記第1カバー板及び/又は前記第2カバー板の前記チャンネルから遠く離れる側に設けられる。
【発明の効果】
【0020】
従来の技術に比べて、本発明は、片面フレキシブル配線板を折れ線に沿って折り曲げて多層フレキシブル配線板を形成し、従来の多層フレキシブル配線板よりも製造方法が簡単であり、コストが低く、使い捨て製品に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基板の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による片面フレキシブル配線板の正面構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る片面フレキシブル配線板の折り曲げ領域の断面構造を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による片面フレキシブル配線板の裏面構造を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による片面フレキシブル配線板の折り曲げ状態での正面の構成を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による片面フレキシブル配線板の折り曲げ状態での裏面の構成を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による多層フレキシブル配線板の正面構造を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態による多層フレキシブル配線板の裏面構造を示す図である。
【
図9】本発明の異なる基板による片面フレキシブル配線板及び従来のFPCの、異なる配線厚さでの抵抗値変化を示すグラフである。
【
図10a-d】は、本発明の異なる基板による片面フレキシブル配線板が異なる配線厚さに対して折り曲げられる前後の抵抗値の対比図である。
【
図11】本発明の異なる基板および異なる配線厚さによる片面フレキシブル配線板の、パンチングされない時の折り曲げ領域のイメージである。
【
図12】本発明のPET基板による片面フレキシブル配線板の、同一配線厚さに対する折り曲げられていないおよび折り曲げられた後のイメージである。
【
図13】本発明のPET基板による片面フレキシブル配線板にパンチングする前後の抵抗値増加百分率の対比図である。
【
図14】本発明の異なる基板による片面フレキシブル配線板の抵抗値変化を示すグラフである。
【
図15】本発明の2種類の配線幅による片面フレキシブル配線板の抵抗値変化を示すグラフである。
【
図16】本発明の一実施形態によって提供される検知チップの構成を示す図である。
【
図17】本発明の一実施形態によって提供される検出チップの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態における図面に関連して、本発明の実施形態における技術的な態様を明確にし、完全に説明するが、説明した実施形態は、全ての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態にすぎないことは明らかである。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明の技術分野に属する技術者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明する目的だけであり、本発明を限定することを意味するものではない。
【0023】
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態による多層フレキシブル配線板100の製造方法は、具体的には、以下のステップを含む。ステップS11では、
図1に示すように、対向して配置された第1表面11および第2表面12を有する基板1が提供される。
【0024】
本実施形態では、基板1の材質は絶縁樹脂である。具体的には、基板1の材質は、ポリフェニレンエーテル(Polyphenylene Oxide, PPO)、ポリイミド(polyimide, PI)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate,PET)、及びポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate, PEN)等の樹脂から選ばれる1種であってよい。
【0025】
本実施形態では、前記基板1の材質は、PI又はPETであることが好ましい。
【0026】
ステップS12では、
図2に示すように、第1表面11に第1配線領域21と第1配線領域21に電気的に接続された第2配線領域22とを含む配線層2を形成し、基板1における第1配線領域21と第2配線領域22との間の領域に第1折り曲げ領域23を形成する。
【0027】
本実施形態では、配線層2は、導電ペーストが印刷された後に、硬化されることにより得られる。
【0028】
本実施形態では、配線層2は、基板1の第1表面11に銀ペーストや銅ペーストやカーボンペースト等の導電ペーストを用いて印刷により形成されてなる。
【0029】
本実施形態では、印刷方式は、平面印刷(例えば、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット)又は3D印刷方法であることができる。
【0030】
本実施形態では、配線層2の配線線幅は8~20μmであり、好ましくは8~10μmまたは11~13μmである。
【0031】
本実施形態では、配線層2の厚さは、異なる必要に応じて、異なる層数の導電ペーストを印刷することによって設計される。
【0032】
本実施形態では、基板1および印刷導電ペーストの材料特性に基づいて、印刷された導電ペーストを焼付硬化により硬化する。
【0033】
本実施形態では、硬化温度は70℃~250℃である。
【0034】
ステップS13では、
図2及び
図3に示すように、第1折り曲げ領域23に折れ線4を形成する複数の折目孔3を形成する。
【0035】
本実施形態では、折目孔3は、レーザー穴あけ方法によって形成される。
【0036】
本実施形態では、折目孔3を形成する前に、硬化した製品を先にカット成型して余分な部分を切除し、その後、レーザー穴あけによって第1折り曲げ領域23に複数の折目孔3を打ち出すことができる。ここで、折目孔3は、第1折り曲げ領域23(即ち、非配線領域)に位置して、基板1を貫通している。
【0037】
本実施形態では、折目孔3は、丸孔、矩形孔、またはその他の形状の孔であってもよい。本実施形態は、丸孔であることが好ましい。
【0038】
本実施形態では、折目孔3の孔径は0.05~0.5mmであり、折目孔3の孔径は大きすぎてはいけない。孔径があまりにも大きいと、最終的に形成される多層フレキシブル配線板の全体強度に影響する。ところが、孔径は小さすぎてはいけない。孔径があまりにも小さいと、折り曲げ易さの目的に到達せず、第1折り曲げ領域23の折り曲げ性に影響する。折目孔の設計は、配線板の折り曲げ及び多層フレキシブル配線板の形成に有利であり、且つ配線層の配線伝送に影響せず、折り曲げ領域の反り、配線層2と基板1とが分離するなどの不良を低減できる。
【0039】
ステップS14では、
図2及び
図4に示すように、第2表面12(即ち、基板1の非配線面)に、第1配線領域21及び第2配線領域22の少なくとも一方に対応する機能素子5を設けることにより、片面フレキシブル配線板10を得る。
【0040】
基板1の非配線面に機能素子機能素子5を設けることで、配線層2のスペースを占有することなく、配線層2の印刷にも影響せず、しかも機能素子5の実装が容易となり、配線板の多機能化を図る面で有利となる。
【0041】
本実施形態では、機能素子5は、伝熱銅箔や電磁シールド素子等であってもよい。機能素子5が熱伝導銅箔であれば、伝熱放熱の役割を果たす。機能素子5が電磁シールド素子であれば、電磁シールドの役割を果たすことができる。
【0042】
ステップS15では、
図5乃至8に示すように、片面フレキシブル配線板10を第1折り曲げ領域23に沿って折り曲げて、第2配線領域22と第1配線領域21とを積層して設けることで、上記の多層フレキシブル配線板100を得る。
【0043】
即ち、本発明は、上述のようにして作製した2Dの片面フレキシブル配線板10の第1配線領域21と第2配線領域22とを2つ折りにして貼り合わせて、3Dの多層フレキシブル配線板100を形成する。本発明は、まず、フレキシブルな基板1にプリント方式により配線層2を形成して片面フレキシブル配線板10を製造し、基板1の片面において配線印刷を行う。これにより、プロセスが簡単で、成形サイクルが短く、効率が高く、しかも片面フレキシブル配線板10の幅に制限がなく、実際の需要に応じて設計することができる。
【0044】
本実施形態では、第2配線領域22は複数であり、第1配線領域21に対応する第2表面12と第2配線領域22に対応する第2表面12とを貼り合わせた後、他の第2配線領域22に対応する第2表面12を1つ前の第2配線領域22の配線層2に順次に積層して貼り合わせることにより、多層フレキシブル配線板100を形成する。
【0045】
本実施形態では、第1配線領域21の数は複数であってもよく、隣り合う2つの第1配線領域21は、電気的に接続され且つ両者の間に第2折り曲げ領域24が設けられている。各第1配線領域21の周り毎に第2配線領域22が設けられていてもよいし、第2配線領域が設けられなくてもよい。この場合、積層する際に、第2配線領域22があれば、各第1配線領域21とそれに対応する第2配線領域22とを積層して重ね合わせて、多層フレキシブル配線板100が形成されるようにする。後続の適用過程において、複数の電気的に接続された第1配線領域21(第1配線領域21に重ねられた第2配線領域22を含む)を異なる応用平面に置くことができる。異なる応用平面は、同一の平面に位置していてもよいし、異なる平面に位置していてもよい。第2折り曲げ領域24は、異なる平面に位置するときに、複数の第1配線領域21が異なる平面になるように折り曲げ状態にされてもよい。本実施形態の多層フレキシブル配線板100によれば、同一の応用機器に用いる配線板の数を減らすことができ、配線の引き回しの複雑さを簡素化することができる。
【0046】
本実施形態では、第1配線領域21と第2配線領域22とは、貼り合わせられる時に絶縁の乾式または湿式コロイド(例えば、PET両面テープ、PI両面テープ、UV接着剤又は感圧接着剤など)を用いて硬化(熱硬化、感圧型硬化、UV硬化など)を行って、多層フレキシブル配線板100を得てもよい。
【0047】
図2及び
図3を合せて、
図7および
図8を参照すると、本発明は、基板1と、配線層2と、複数の折目孔3とを含む多層フレキシブル配線板100をさらに提供する。基板1は、対向して配置された第1表面11および第2表面12を含む。配線層2は、第1表面11に設けられ、第1配線領域21と、第1配線領域21に電気的に接続された第2配線領域22とを含む。基板1における第1配線領域21と第2配線領域22との間の領域には、第1折り曲げ領域23が形成されている。複数の折目孔3は、第1折り曲げ領域23に設けられ、且つ折れ線4を形成する。第1配線領域21は、第1配線領域に対して折り曲げられ、且つ第2配線領域22と積層して設けられている。
【0048】
本実施形態では、第2表面12には、第1配線領域及び第2配線領域の少なくとも一方に対応した機能素子5が設けられている。
【0049】
本実施形態では、折目孔3の孔径は、0.05~0.5mmである。
【0050】
本実施形態では、基板1の材質は、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートのうちの1つである。
【0051】
本実施形態では、第1配線領域21の数は複数である。複数の第1配線領域21は電気的に接続されており、隣り合う2つの第1配線領域21の間には、第2折り曲げ領域24が設けられている。
【0052】
以下、具体的な実施形態を用いて、本発明により作製された片面フレキシブル配線板10に対して抵抗値分析を行う。ここで、実施例の基板1はPETやPIを用い、異なる基板1の厚さは同じであり、配線層2は銀ペースト層であり、比較例は従来のFPC(銅箔配線)である。
【0053】
図9は、本発明の上記の方法で作製された異なる基板による片面フレキシブル配線板及び従来のFPCの、異なる配線厚さでの抵抗値変化を示すグラフである。
図9から分かるように、同一基板(PETまたはPI)については、配線厚さの増加に伴い、抵抗値が低くなっている。異なる基板(PETまたはPI)、同一の配線厚さについては、PI基板の片面フレキシブル配線板の抵抗値は、PET基板の片面フレキシブル配線板の抵抗値よりも小さくなり、基板の電気的性質は、片面フレキシブル配線板の抵抗値にも若干影響を与え、PIの電気性能がPETよりも優れていると表明されている。従って、PIをフレキシブル配線板の基板として選んだ方が、フレキシブル配線板の電気的性能がより優れている。本提案によって作製される片面フレキシブル配線板は、従来のFPC銅箔配線板よりもやや抵抗値が高いが、単回使用の性能要求を完全に満足でき、総合性能も使用ニーズに応えることができる。また、従来のFPCよりも、製造工程が簡単であり、コストが安価であり、成形サイクルが短く、使い捨て製品への適用が非常に適している。
【0054】
図10a~10dを参照して、本発明の上記方法を用いてPET基板とPI基板とに基づいて作製された片面フレキシブル配線板の、異なる配線厚さに対する折り曲げ前後の抵抗値の対比図である。具体的には、PET基板の一層銀ペースト配線の折り曲げられた後の抵抗値が折り曲げられない場合に比べて12.09%向上し、PET基板の二層銀ペースト配線の折り曲げられた後の抵抗値が折り曲げられない場合に比べて16.53%向上し、PI基板の一層銀ペースト配線の折り曲げられた後の抵抗値が折り曲げられない場合に比べて1.11%向上し、PI基板の二層銀ペースト配線の折り曲げられた後の抵抗値が折り曲げられない場合に比べて3.95%向上した。このことから、同一基板同一配線厚さに対して、折れ線がある片面フレキシブル配線板の抵抗値は、折れ線がない片面フレキシブル配線板の抵抗値よりやや向上するが、片面フレキシブル配線板の機能への影響は大きくなく、特にPI基板一層銀ペースト配線の場合、折り曲げ前後の抵抗値の差は大きくないことが分かる。
【0055】
図11は、本発明の上記方法により、異なる基板および異なる配線厚さに基づいて作製された片面フレキシブル配線板の、折目孔が空けられない場合の折り曲げ領域のイメージである。
【0056】
図12は、本発明の上記方法を用いて、PET基板に基づいて製造された片面フレキシブル配線板の、同一配線厚さで折り曲げられておらず、折り曲げられた後の拡大イメージである。
【0057】
図10a~
図12から分かるように、PET基板とPI基板とを用いて片面フレキシブル配線板を製造したところ、折り曲げ領域において配線層が基板と分離してしまい、配線クラックなどの不良が発生することがなかった。ところで、PET基板はPI基板に対して、折り曲げ領域において折り目が現れるおそれがあり、PET基板で作製される片面フレキシブル配線板は、折り曲げ前後における抵抗値の上昇が、PET基板を折り曲げた後に自ら現れる折り目に関係するおそれがある。これも、基板自体の耐屈曲性は抵抗値に一定の影響があり、基板としてPETを用いた場合、折り曲げ領域におけるPETの折り曲げ状況に注目する必要があり、製品の歩留りが低下するおそれがあるが、PETに比べて、PIを基板として用いる場合、折り曲げ領域に折り目が現れるおそれがなく、製品の歩留まりがより高く、かつ、電気性能に優れることを表明している。
【0058】
図13は、本発明の上記方法を用いてPET基板に基づいて作製された片面フレキシブル配線板にパンチングする前後での抵抗値増加百分率の対比図である。
図13から分かるように、PET基板に折目孔がパンチングされない場合、折り曲げられた後の方が折り曲げ前より、抵抗値が12.90%向上し、一実施形態では、PET基板に折目孔がパンチングされた場合、折り曲げられた後の方が折り曲げ前より、抵抗値が12.03%向上し、他の実施形態では、PET基板に折目孔がパンチングされた場合、折り曲げられた後の方が折り曲げ前より、抵抗値が14.02%向上した。このことから、折目孔をパンチングする前後の抵抗値の変化は明らかではなく、折目孔をあけることは、片面フレキシブル配線板の抵抗値への影響は大きくないことが分かる。
【0059】
図14及び
図15は、それぞれ本発明の上記方法によって作製された2種類の配線幅に対するPET及びPIによる片面フレキシブル配線板の抵抗値の変化を示すグラフである。ここで、基板はPET及びPIであり、第1エディションの線幅は8~10μm、第2エディションの線幅は11~13μmである。
図16から分かるように、配線幅が広いと、抵抗値が低下する。本発明の配線層2の線幅は、8~20μmとすることができる。実際に使う必要に応じて、配線幅を具体的に設けることができる。
【0060】
図16及び
図17に示すように、本発明は、核酸の検出に用いられる検出チップ200をさらに提供している。検出チップ200は、第1カバー板201と、第2カバー板202と、スペーサ層203と、多層フレキシブル配線板100と、を含む。スペーサ層203の対向する両面は、それぞれ第1カバー板201及び第2カバー板202に隣接して設けられる。第1カバー板201、スペーサ層203及び第2カバー板202は、取り囲んでチャンネル204を形成する。多層フレキシブル配線板100は、第1カバー板201及び/又は第2カバー板202のチャンネル204から遠く離れる側に設けられており、且つ上述したような多層フレキシブル配線板100である。
【0061】
本実施形態では、上述した多層フレキシブル配線板100と、上記第1カバー板201及び/又は第2カバー板202との間は、接着剤により貼り合わされている。
【0062】
図2に合せて、
図16及び
図17を参照すると、本実施形態では、多層フレキシブル配線板100は、2つ第1配線領域21を含む。一方の第1配線領域21の隣には、2つの第2配線領域22が設けられている。この一方の第1配線領域21及び2つの第2配線領域22は、第1カバー板201のチャンネル204から遠く離れる表面に設けられる。他方の第1配線領域21の隣には、1つの第2配線領域22が設けられている。この他方の第1配線領域21及び前記1つの第2配線領域22は、第2カバー板202のチャンネル204から遠く離れる表面に設けられる。本実施形態では、この多層フレキシブル配線板100は、上述したチャンネル204を加熱するために用いられるため、チャンネル204の対向する両側に加熱回線が設けられ、チャンネル204の加熱温度の均一性に有利である。この場合、チャンネル204の対向する両側に配置される多層フレキシブル配線板100は、一方の配線層2に出力配線を設ければよく、多層フレキシブル配線板100の配線引き出しが容易となるとともに、配線板の実装スペースを省スペース化することができる。
【0063】
本実施形態では、多層フレキシブル配線板100を、第1カバー板201及び/又は第2カバー板202の表面に、両面テープ(例えば、熱伝導両面テープ)を用いて貼り付けてもよい。
【0064】
以上説明したように、本発明は、片面フレキシブル配線板を折れ線に沿って折り曲げることで多層フレキシブル配線板を形成するので、従来の多層フレキシブル配線板の製造方法よりも簡単で、コストが低く、使い捨て製品に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
100 多層フレキシブル配線板
10 片面フレキシブル配線板
1 基板
11 第1表面
12 第2表面
2 配線層
21 第1配線領域
22 第2配線領域
23 第1折り曲げ領域
24 第2折り曲げ領域
3 折目孔
4 折れ線
5 機能素子
200 検出チップ
201 第1カバー板
202 第2カバー板
203 スペーサ層
204 チャンネル