(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073405
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
A01K89/01 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053291
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2020061187の分割
【原出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 和之
(72)【発明者】
【氏名】對馬 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷本 大飛
(57)【要約】
【課題】必要以上の駆動力が入力されることに起因する各構成部材の破損を防ぐとともに、小型化、軽量化を図る。
【解決手段】ツマミ部113とアーム部111とを有するハンドル組立体5と、アーム部111に連結され、ハンドル組立体5の回転操作による駆動力が入力されるハンドル駆動軸4と、を備えている。ハンドル駆動軸4上には、ハンドル組立体5からの駆動力の伝達を所定の範囲に制限する制限手段120が備わる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツマミ部とアーム部とを有するハンドル組立体と、
前記アーム部に連結され、前記ハンドル組立体の回転操作による駆動力が入力されるハンドル駆動軸と、を備えた魚釣用リールであって、
前記ハンドル駆動軸上には、前記ハンドル組立体からの駆動力の伝達を所定の範囲に制限する制限手段が備わることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記制限手段は、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸との連結部分に設けられており、
前記制限手段は、
前記アーム部に設定上限値未満のトルクが作用したとき、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸とを駆動力伝達可能に連結し、前記アーム部に設定上限値以上のトルクが作用したとき、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸との駆動力伝達可能な連結を解除することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記制限手段は、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸との対向部位に設けられ、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸との間の駆動力の伝達を摩擦力により所定の範囲に制限する摩擦制限手段であり、
前記アーム部と前記ハンドル駆動軸とは、前記アーム部及び前記ハンドル駆動軸の一方に設定上限値未満のトルクが作用したとき、前記摩擦制限手段の摩擦力によって共回りし、前記アーム部及び前記ハンドル駆動軸の一方に設定上限値以上のトルクが作用したとき、前記ハンドル駆動軸及び前記アーム部の一方が他方に対して前記摩擦制限手段の摩擦力に抗して空転することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記ハンドル駆動軸は、前記アーム部が連結されるハンドル駆動軸と、前記ハンドル駆動軸に連結されドライブギャが取り付けられるドライブギャ組立体と、を備え、
前記制限手段は、前記ハンドル駆動軸と前記ドライブギャ組立体との間に介在され、前記ハンドル駆動軸から前記ドライブギャ組立体への駆動力の伝達を摩擦力により所定の範囲に制限する摩擦制限手段であり、
前記ハンドル駆動軸及び前記ドライブギャ組立体の一方に設定上限値未満のトルクが作用したとき、前記ハンドル駆動軸と前記ドライブギャ組立体とが前記摩擦制限手段の摩擦力によって共回りし、前記ハンドル駆動軸及び前記ドライブギャ組立体の一方に設定上限値以上のトルクが作用したとき、前記ハンドル駆動軸及び前記ドライブギャ組立体の一方が他方に対して前記摩擦制限手段の摩擦力に抗して空転することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
ツマミ部とアーム部とを有するハンドル組立体を備えた魚釣用リールであって、
前記ツマミ部の軸上には、前記ツマミ部から前記アーム部への駆動力の伝達を所定の範囲に制限する制限手段が備わり、
前記制限手段は、
前記ツマミ部に設定上限値未満のトルクが作用したとき、前記ツマミ部と前記アーム部と駆動力伝達可能に連結し、前記ツマミ部に設定上限値以上のトルクが作用したとき、前記ツマミ部と前記アーム部との駆動力伝達可能な連結を解除することを特徴とする魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、魚釣用リールとして知られる魚釣用スピニングリールは、リール本体にスプールを支持し、リール本体の一側に回転可能に支持したハンドルを通じてリール本体内の巻き取り駆動機構を駆動することにより、スプールに釣糸を巻回保持する構成とされている。通常、リール本体内には、逆転防止装置が備わる(例えば、特許文献1参照)。
逆転防止装置は、巻き取り駆動機構を構成する駆動軸が釣糸の繰り出しにより逆回転するのを防止する作用をなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実釣時の様々な状況の中で、例えば、大きな魚が掛かって釣糸に過大な張力が作用している際に、釣人は咄嗟に魚を取り込むべくハンドルを巻き取り操作する場合がある。この場合、必要以上の駆動力が入力されることに起因して、巻き取り駆動機構を構成するギャ(ドライブギャ、ピニオンギャ)等の構成部材が破損したり、釣糸案内部を有するロータのアーム部等の構成部材が破損するおそれがあった。また、釣糸に過大な張力が作用することによる衝撃で、逆転防止機構の構成部材が破損するおそれもあった。
【0005】
このため、従来の魚釣用リールは、釣糸に過大な張力が作用することによる衝撃や、釣人の咄嗟の巻き上げ操作等に耐え得るように強度設計を行っており、大型化や重量化を来す傾向にあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、必要以上の駆動力が入力されることに起因する各構成部材の破損を防ぐとともに、小型化、軽量化を図ることができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る魚釣用リールは、ツマミ部とアーム部とを有するハンドル組立体と、前記アーム部に連結され、前記ハンドル組立体の回転操作による駆動力が入力されるハンドル駆動軸と、を備えている。前記ハンドル駆動軸上には、前記ハンドル組立体からの駆動力の伝達を所定の範囲に制限する制限手段が備わる。
【0008】
この魚釣用リールでは、ハンドル組立体からハンドル駆動軸に入力される駆動力が制限手段により制限されるため、必要以上の駆動力が入力されることに起因するハンドル組立体やハンドル駆動軸の破損を防ぐことができる。また、ハンドル組立体の回転操作で入力される人力を制限することができるため、魚釣用リールの各構成部材を最適強度で設計することができ、魚釣用リールの小型化、軽量化を図ることができる。
【0009】
また、前記制限手段は、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸との連結部分に設けられており、前記制限手段は、前記アーム部に設定上限値未満のトルクが作用したとき、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸とを駆動力伝達可能に連結することが好ましい。また、前記制限手段は、前記アーム部に設定上限値以上のトルクが作用したとき、前記ハンドル駆動軸に対する前記アーム部の駆動力伝達可能な連結を解除することが好ましい。
【0010】
この魚釣用リールでは、アーム部からハンドル駆動軸に入力される駆動力が制限手段により制限されるため、必要以上の駆動力が入力されることに起因するアーム部やハンドル駆動軸等の各構成部材の破損を防ぐことができる。
【0011】
また、前記制限手段は、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸との対向部位に設けられ、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸との間の駆動力の伝達を摩擦力により所定の範囲に制限する摩擦制限手段であることが好ましい。この場合、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸とは、前記アーム部及び前記ハンドル駆動軸の一方に設定上限値未満のトルクが作用したとき、前記アーム部と前記ハンドル駆動軸とが前記摩擦制限手段の摩擦力によって共回りし、前記アーム部及び前記ハンドル駆動軸の一方に設定上限値以上のトルクが作用したとき、前記ハンドル駆動軸及び前記アーム部の一方が他方に対して前記摩擦制限手段の摩擦力に抗して空転(相対回転)することが好ましい。
【0012】
この魚釣用リールでは、摩擦制限手段によりアーム部からハンドル駆動軸に入力される駆動力が制限されるため、必要以上の駆動力が入力されることに起因するアーム部やハンドル駆動軸等の各構成部材の破損を防ぐことができる。
【0013】
また、前記ハンドル駆動軸が、前記アーム部が連結されるハンドル駆動軸と、前記ハンドル駆動軸に連結されドライブギャが取り付けられるドライブギャ組立体と、を備えていることが好ましい。この場合、前記制限手段が、前記ハンドル駆動軸と前記ドライブギャ組立体との間に介在され、前記ハンドル駆動軸から前記ドライブギャ組立体への駆動力の伝達を摩擦力により所定の範囲に制限する摩擦制限手段であることが好ましい。そして、前記ハンドル駆動軸及び前記ドライブギャ組立体の一方に設定上限値未満のトルクが作用したとき、前記ハンドル駆動軸と前記ドライブギャ組立体とが前記摩擦制限手段の摩擦力によって共回りし、前記ハンドル駆動軸及び前記ドライブギャ組立体の一方に設定上限値以上のトルクが作用したとき、前記摩擦制限手段の摩擦力に抗して前記ハンドル駆動軸及び前記ドライブギャ組立体の一方が他方に対して空転(相対回転)することが好ましい。
【0014】
この魚釣用リールでは、摩擦制限手段によりハンドル駆動軸とドライブギャ組立体との間の駆動力の伝達が制限されるため、必要以上の駆動力が入力されることに起因するハンドル駆動軸やドライブギャ組立体の破損を防ぐことができる。また、ドライブギャ組立体のギャが噛合するピニオンギャや連動歯車等の破損も防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の魚釣用リールは、ツマミ部とアーム部とを有するハンドル組立体を備えた魚釣用リールである。前記ツマミ部の軸上には、前記ツマミ部から前記アーム部への駆動力の伝達を所定の範囲に制限する制限手段が備わる。前記制限手段は、前記ツマミ部に設定上限値未満のトルクが作用したとき、前記ツマミ部と前記アーム部とを駆動力伝達可能に連結し、前記ツマミ部に設定上限値以上のトルクが作用したとき、前記ツマミ部と前記アーム部との駆動力伝達可能な連結を解除することを特徴とする。
【0016】
この魚釣用リールでは、ツマミ部からアーム部に入力される駆動力が制限手段により制限されるため、必要以上の駆動力が入力されることに起因するツマミ部やアーム部の破損を防ぐことができる。また、ツマミ部の回転操作で入力される人力を制限することができるため、魚釣用リールの各構成部材を最適強度で設計することができ、魚釣用リールの小型化、軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、必要以上の駆動力が入力されることに起因する各構成部材の破損を防ぐとともに、小型化、軽量化を図ることができる魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る魚釣用リールとしての魚釣用スピニングリールの全体構成を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールのボディ前部及びロータ前部の構造を示す拡大断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの要部をさらに拡大して示す断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールの要部を拡大して示す断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る魚釣用スピニングリールのハンドル組立体及びハンドル駆動軸を示す断面図である。
【
図6】第4実施形態に係る魚釣用スピニングリールのハンドル組立体及びハンドル駆動軸を示す断面図である。
【
図7】第4実施形態に係る魚釣用スピニングリールの作用説明図である。
【
図8】第5実施形態に係る魚釣用スピニングリールのハンドル組立体及びハンドル駆動軸を示す断面図である。
【
図9】第6実施形態に係る魚釣用スピニングリールのハンドル組立におけるアーム部とツマミ部との連結構造を示す拡大断面図である。
【
図10】第7実施形態に係る魚釣用スピニングリールのハンドル組立におけるアーム部とツマミ部との連結構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を適用した魚釣用スピニングリールについて、適宜図面を参照して説明する。実施形態の説明において、「上下」、「前後」を言うときは、
図1に示した方向を基準とする。各実施形態において、同一の部分については同様の符号を付し詳細な説明は省略する。なお、以下では魚釣用リールとして魚釣用スピニングリールを例にとって説明するが適用されるリールを限定する趣旨ではない。
【0020】
(第1実施形態)
図1に示すように、魚釣用スピニングリールR1は、後記する駆動軸筒8及びスプール軸9を支持するリール本体1と、スプール軸9に装着されて釣糸が巻回されるスプール2と、駆動軸筒8に装着されてスプール2に釣糸を巻回するロータ3と、を備える。
【0021】
リール本体1は、内部に駆動装置を収容するボディ1Aと、ボディ1Aの上部から上方に延びて先端が釣竿に装着される脚部1Bと、ボディ1Aの前側で前後方向に開口する筒状のボディ前部1Cと、を備える。なお、ボディ1Aと脚部1Bとボディ前部1Cとは金属材料により一体に形成されて高い強度を備える。
【0022】
ボディ1Aには、図示しない軸受を介してハンドル駆動軸4が回転可能に支持されており、その図示しない突出端部には、巻き取り操作されるハンドル組立体5が取り付けられている。ハンドル駆動軸4には、図示しない軸筒が、回り止めされて固定されている。この軸筒には、ロータ3を巻き取り駆動するための内歯が形成されたドライブギャ6が一体的に形成されている。このドライブギャ6は、駆動軸筒8のピニオンギャ8aに噛合している。
【0023】
駆動軸筒8は、
図2に示すように、ハンドル駆動軸4と直交する方向に延出するとともに、内部に軸方向に延出する空洞部を有する。駆動軸筒8は、ボディ前部1C内に設けられた前側軸受8bと、ボディ1A内に設けられた図示しない後側軸受を介して回転可能に支持されている。駆動軸筒8の空洞部には、スプール軸(支軸)9が軸方向に移動可能に挿通されて支持されている。また、駆動軸筒8の前端部には、ナット21を介してロータ3が取り付けられている。
【0024】
スプール軸9の先端部には
図1に示すようにスプール2が取り付けられている。一方、スプール軸9の後端部には、スプール軸9をにより前後動させるための公知のスプール往復動装置9aが設けられている。
【0025】
ボディ前部1Cは、
図2に示すように、駆動軸筒8の中心軸O1を中心とする略円筒状に形成されている。ボディ前部1Cには、主として逆転防止装置40、操作カバー50、切換保持部60、磁性流体シール機構70、規制体80,後シール部材91、前シール部材92、及び制限手段10が組み付けられている。
以下、ボディ前部1Cと各部品との詳細について説明する。
【0026】
図2に示すように、ボディ前部1Cの後部には、径方向外側に張り出す円形状のフランジ16aと、周方向に亘って窪む周溝16bと、ねじ16dが螺合する雌ねじ孔16cと、が形成されている。
フランジ16aは、操作カバー50の後記する切換移動体51の内側形状に対応した形状となっており、切換移動体51の後側開口を閉じている。これにより、操作カバー50の内側に海水等が侵入し難くなっている。
周溝16bには、後シール部材91が組み付けられている。ねじ16dは、操作カバー50がボディ前部1Cから脱落することを防止している。
【0027】
ボディ前部1Cの後部内側には、前側軸受8bが嵌め込まれている。前側軸受8bの外輪の前面には、前側軸受8bの脱落を規制するリング状の止め輪18が当接している。
【0028】
ボディ前部1Cの前端部には、図示しない固定ねじで公知の磁性流体シール機構70が組み付けられている。磁性流体シール機構70は、環状の永久磁石71と、永久磁石71の前側(外側)に配置された環状の外側磁性板72と、永久磁石71の後側(内側)に配置された環状の内側磁性板73と、内輪41と一体に形成された磁性部41aと、を備える。また、外側磁性板72及び内側磁性板73と、磁性部41aとの間には磁性流体(不図示)が充填されている。
【0029】
磁性部41aは、駆動軸筒8の先端部側に向けて円筒状に延在しており、駆動軸筒8の外周面との間に筒状の収容空間S1を形成している。収容空間S1には、ロータ3の後記する円筒状のボス部31が差し込まれて収容されており、ボス部31の軸方向の中央部から後部側を保持する機能を有している。磁性部41aや収容空間S1周りの構成及び制限手段10の構成の詳細は後記する。
【0030】
逆転防止装置40は、駆動軸筒8の正転を許容しつつ、駆動軸筒8の逆転を防止するローラ式一方向クラッチであり、公知の装置である。なお、逆転防止装置40の内周側には、駆動軸筒8の外周面に嵌合することで駆動軸筒8に回り止めされた内輪41が設けられている。よって、逆転防止装置40は、内輪41を介して駆動軸筒8の回転を制御している。
【0031】
逆転防止装置40は、略円筒状の外輪42と、内輪41と外輪42との間に配置された複数のローラ43と、複数のローラ43を保持するリティナ44と、を備える。
リティナ44には、外輪42を貫通して径方向外側に突出する突出部(不図示)が形成されている。突出部が周方向へ移動すると、リティナ44が回動し、ローラ43が内輪41と外輪42との間で楔作用を発揮して内輪41(駆動軸筒8)の逆転が防止され、あるいは、ローラ43が内輪41と外輪42との間で楔作用を発揮せずに内輪41(駆動軸筒8)の逆転が許可される。
【0032】
操作カバー50は、ボディ前部1Cの外周側に配置された筒状部材である。操作カバー50は、有底筒状の切換移動体51と、切換移動体51の内側に設けられた係合部(不図示)と、切換移動体51の後端に設けられた切換操作部(不図示)と、を備えている。係合部には、逆転防止装置40の突出部が係合している。これにより、釣人が切換移動体51を介して切換移動体51を回動させると、逆転防止装置40の逆転防止状態と逆転許可状態とが切り換わるようになっている。
なお、切換操作部は、ボディ1Aの側部等に配置され、釣人の手指により操作可能である。
【0033】
切換移動体51の前壁部の中央部には、駆動軸筒8及びスプール軸9を貫通させるための孔が形成されている。また、切換移動体51の後部には、貫通孔52aが形成されている。貫通孔52a内には、前記したねじ16dが配置されている。これにより、操作カバー50がボディ前部1Cから脱落しない構造となっている。
【0034】
切換保持部60は、前側ボディ1C側に配置された移動体62と、操作カバー50の前壁部の後面53bに配置された係合保持部63と、を備える。移動体62は、前後方向に延在する円柱状の部品であり、前端62aが円錐状に形成されている。移動体62は、移動体収容孔17g内に収容されている。移動体収容孔17g内には、コイルばね64が縮設されている。コイルばね64は、移動体62を常時前方へ付勢している。
【0035】
係合保持部63は、切換移動体51の前壁部の後面に沿って上下方向(径方向)に延在する板状の金属部品であり、移動体62と対向している。係合保持部63は凸状部を備える。
よって、逆転防止装置40が逆転許可状態から逆転防止状態(又は逆転防止装置40が逆転防止状態から逆転許可状態)に切り換わろうとすると、凸状部に移動体62の前端62aが係止し、切換移動体51の回動が規制される。
【0036】
規制体80は、非磁性材料により形成された環状かつ薄板状の部品である。規制体80は、内側磁性板73と逆転防止装置(一方向クラッチ)40との間に配置され、逆転防止装置40が前後方向(中心軸O1方向)に移動しないように規制している。この規制体80によれば、逆転防止装置40のローラ43と内輪41との摺接状態が安定化する。この結果、駆動軸筒8の回転が安定化するとともに、ローラ43の楔作用も安定して発揮される。
【0037】
後シール部材91及び前シール部材92は、環状を呈し、弾性材により形成された弾性シール部材である。後シール部材91及び前シール部材92のそれぞれには、径方向外側に突出するリップ部が形成されている。後シール部材91及び前シール部材92は、ボディ前部1C内に浸入した海水等が逆転防止装置40に付着するのを防止している。
【0038】
次に、ロータ3及び制限手段10について詳細に説明する。
図2に示すように、ロータ3は、駆動軸筒8の外周面に装着される嵌合部を有し円筒部からなるボス部31と、ボス部31に一体的に形成された円筒部32と、円筒部32に一体的に形成された一対のアーム部33,34(
図1参照)と、を備えている。
【0039】
一対のアーム部33,34は、
図1に示すように、スプール2を挟んで対峙しており、その前端部には、ベール支持部材33a,34aが釣糸巻取位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。ベール支持部材33a,34a間には、放出状態にある釣糸をピックアップするベール35が配設されている。ベール35は、一方の基端部がベール支持部材33aに一体的に設けられた釣糸案内部33bに取り付けられており、他方の基端部がベール支持部材34aの先端部に取り付けられている。
【0040】
ロータ3は、
図3に示すように、ボス部31を介して駆動軸筒8に取り付けられている。ボス部31は、駆動軸筒8の断面略小判形状の円弧面8cに対応する円形の内周面31aを備えている。また、ボス部31は、逆転防止装置40の磁性部41aの円形の内周面41bに対応する円形の外周面31bを備えている。これによりボス部31は、磁性部41aの内周面41bと駆動軸筒8の円弧面8cとの間に形成される収容空間S1に収容された状態で、駆動軸筒8の外周及びこれに固定された磁性部41aの内周に対して回動可能に組み付けられている。
【0041】
収容空間S1にボス部31を収容した状態で、円筒部32の基端部32aの後面32bは、逆転防止装置40の磁性部41aの先端面41cに対向している。また、円筒部32の基端部32a及びボス部31の前面32cは、ナット21の後面21bに対向している。
本実施形態では、ボス部31の近傍領域における基端部32aの後面32bと磁性部41aの先端面41cとの間に、制限手段10として機能する第1ライニング材11を介在させている。また、ボス部31の近傍領域における基端部32aの前面32cとナット21の後面21bとの間には、制限手段10として機能する第2ライニング材12を介在させている。
【0042】
第1ライニング材11は、リング状を呈しており、基端部32aの後面32bに当接する前面と、磁性部41aの先端面41cに当接する後面と、を備えている。第1ライニング材11は、ロータ3のボス部31の外周面31bに対して軸方向に移動自在に支持されている。このため、後記するようにナット21の締め付けによる押圧力(
図3の矢印A1参照)が大きくなると、ロータ3の基端部32aの後面32bと磁性部41aの先端面41cとに作用する摩擦抵抗力が大きくなり、ロータ3が駆動軸筒8(内輪41の磁性部41a)に対して回動し難くなる。
【0043】
第2ライニング材12は、リング状を呈しており、ワッシャ13を介してナットに押圧される前面と、基端部32aの前面32cに当接する後面と、を備えている。第2ライニング材12は、駆動軸筒8の円弧面8cに対して軸方向に移動自在に支持されている。このため、後記するようにナット21の締め付けによる押圧力(
図3の矢印A1参照)が大きくなると、ワッシャ13の後面と基端部32aの前面32cとに作用する摩擦抵抗力が大きくなり、ロータ3が駆動軸筒8(内輪41の磁性部41a)に対して回動し難くなる。
【0044】
ワッシャ13は、薄い金属板状の部品である。ワッシャ13は、駆動軸筒8の略小判形状の外周面(円弧面8cを含む)に支持されており、駆動軸筒8の周方向に回転不能に固定されている。ワッシャ13はナット21の締め付けによる押圧力(
図3の矢印A1参照)を受けて第2ライニング材12をロータ3の基端部32a側に向けて押圧する。
【0045】
ナット21は、駆動軸筒8の前端部に形成されたネジ部8eに螺合される部材であり、螺合によりロータ3のボス部31を内輪41の磁性部41aに向けて締め付け可能である。ナット21の内側には、有底円筒状の凹部22が形成されている。凹部22内には、有底円筒状の規制部材23が内嵌されている。規制部材23の底部23cには軸方向に貫通する貫通孔23aが形成されている。貫通孔23aの内径は、ナット21の内径よりも小さく設定されている。これにより、規制部材23の後側内縁部23bが径方向に突出している。後側内縁部23bは、駆動軸筒8の前端部に形成された小径の段部8fに対向しており、ナット21の締め付けにより段部8fに当接して、ナット21の締め付けを規制している。
【0046】
本実施形態では、ナット21の締め付けが規制される位置までナット21を締め付けることで、ナット21と内輪41の磁性部41aとの間に、第1,第2ライニング材11,12の摩擦力をもってロータ3の基端部32a周りが挟持されるように構成されている。つまり、第1,第2ライニング材11,12の摩擦力により、駆動軸筒8とロータ3のボス部31との間の駆動力の伝達が所定の範囲に制限される状態で、駆動軸筒8に対してロータ3が取り付けられている。
【0047】
規制部材23の内側には、先端軸受24が装着されている。先端軸受24の外輪の後面は、規制部材23の底部23cの前面に当接している。また、先端軸受24の外輪の前面は、リング状の薄板部材27に当接している。薄板部材27の前面には先端シール部材26が配置されている。先端シール部材26は、ナット21の前面に取り付けられたリング状の前面部材28と薄板部材27との間に挟持されている。先端シール部材26には、径方向内側に突出するリップ部26aが形成されている。このリップ部26aは、駆動軸筒8の先端部の前方においてスプール軸9の外周面9bに当接している。
【0048】
先端軸受24の内輪の内側には、カラー25が取り付けられている。カラー25は、先端シール部材26の後方において、スプール軸9の外周面を摺動自在に支持している。
【0049】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールR1では、駆動軸筒8とボス部31との一方に、第1,第2ライニング材11,12により設定される摩擦力未満のトルクが作用した場合には、駆動軸筒8とロータ3とが第1,第2ライニング材11,12の摩擦力で共回りする。また、駆動軸筒8とボス部31との一方に、第1,第2ライニング材11,12により設定される摩擦力以上のトルクが作用した場合には、駆動軸筒8及びボス部31の一方が他方に対して第1,第2ライニング材11,12の摩擦力に抗して空転(相対回転)する。
【0050】
したがって、本実施形態の魚釣用スピニングリールR1によれば、駆動軸筒8からボス部31を介してロータ3に入力される駆動力が制限手段10により制限される。また、ロータ3のボス部31を介して駆動軸筒8に入力される釣糸の過大な張力が制限手段10により制限される。このため、必要以上の駆動力や釣糸の過大な張力が入力されることに起因する駆動軸筒8やロータ3の構成部材の破損を防ぐことができる。また、ハンドル組立体5の回転操作で入力される人力を制限することができるため、魚釣用スピニングリールR1の各構成部材を最適強度で設計することができ、魚釣用スピニングリールR1の小型化、軽量化を図ることができる。
【0051】
(第2実施形態)
図4を参照して第2実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、円筒支持部材38を介してロータ3のボス部31を軸方向から第1,第2ライニング材11,12で挟むことで、摩擦力をボス部31に付与するように構成したものである。
【0052】
図4に示すように、ボス部31は、円筒支持部材38を介して駆動軸筒8に支持されている。円筒支持部材38は、駆動軸筒8の略小判形状の外周面(円弧面8cを含む)に外嵌されており、回転軸筒8の周方向に回転不能に嵌合固定されている。したがって、円筒支持部材38は、駆動軸筒8と一体に回転する。
【0053】
円筒支持部材38は、断面略L字形状を呈しており、円筒部35と、円筒部35の後端部に一体に設けられたフランジ部37とを備えている。円筒部35は、ボス部31の円形の内周面31aが装着される円形の外周面36aを備えている。円筒部35は、ボス部31を介してロータ3を回動可能に支持している。フランジ部37は、円筒部35の外周面36aよりも径方向外側に突出している。フランジ部37の後面は、内輪41の前端面41eに当接している。
【0054】
本実施形態では、ボス部31の後面31jとフランジ部37の前面37jとの間に、制限手段10として機能する第1ライニング材11を介在させている。
また、筒部32の基端部32a及びボス部31の前面32cとワッシャ93との間に、制限手段10として機能する第2ライニング材12を介在させている。
【0055】
つまり、ナット21の締め付けが規制される位置までナット21を締め付けることで、ナット21と円筒支持部材38との間が、第1,第2ライニング材11,12の摩擦力をもってロータ3のボス部31及び基端部32aが挟持されるように構成されている。つまり、第1,第2ライニング材11,12の摩擦力により、駆動軸筒8とロータ3のボス部31との間の駆動力の伝達が所定の範囲に制限される状態で、駆動軸筒8に対してロータ3が取り付けられている。
【0056】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールR1では、円筒支持部材38(駆動軸筒8)とボス部31との一方に、第1,第2ライニング材11,12により設定される摩擦力未満の摩擦力が作用した場合には、円筒支持部材38(駆動軸筒8)とロータ3とが第1,第2ライニング材11,12の摩擦力で共回りする。また、円筒支持部材38(駆動軸筒8)とボス部31との一方に、第1,第2ライニング材11,12により設定される摩擦力以上の摩擦力が作用した場合には、円筒支持部材38(駆動軸筒8)及びボス部31の一方が他方に対して第1,第2ライニング材11,12の摩擦力に抗して空転(相対回転)する。
【0057】
したがって、本実施形態の魚釣用スピニングリールR1によれば、円筒支持部材38(駆動軸筒8)からボス部31を介してロータ3に入力される駆動力が制限手段10により制限される。また、ロータ3のボス部31を介して円筒支持部材38(駆動軸筒8)に入力される釣糸の過大な張力が制限手段10により制限される。このため、必要以上の駆動力や釣糸の過大な張力が入力されることに起因する駆動軸筒8やロータ3の構成部材の破損を防ぐことができる。また、ハンドル組立体5の回転操作で入力される人力を制限することができるため、魚釣用スピニングリールR1の各構成部材を最適強度で設計することができ、魚釣用スピニングリールR1の小型化、軽量化を図ることができる。
このように、駆動軸筒8の外周または駆動軸筒8と一体的に回転する円筒支持部材38の外周にロータ3のボス部31を回転可能に摩擦結合する制限手段10を設けたので、ロータ3内の限られたスペース内の効果的な配設が可能となるとともに、巻き取り操作時の負荷に対しても、軸方向長を有するボス部31で安定して嵌合支持できる。
【0058】
(第3実施形態)
次に
図5を参照して第3実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態の魚釣用スピニングリールR1は、ハンドル駆動軸4上に、ハンドル組立体5のアーム部110からの駆動力の伝達を所定の範囲に制限する制限手段120を設けたものである。
【0059】
ハンドル駆動軸4は、第1ハンドル駆動軸101と、第1ハンドル駆動軸101に接続される第2ハンドル駆動軸102と、を備える。第1ハンドル駆動軸101と第2ハンドル駆動軸102との外周部には、ドライブギャ組立体103が外嵌されて固定されている。ドライブギャ組立体103にはスプール往復動装置9a(
図1参照)を駆動するための連動歯車104が一体的に設けられている。ドライブギャ組立体103は、軸受105を介してリール本体1のボディ1Aに回転自在に支持されている。
【0060】
ハンドル組立体5は、アーム部111と、アーム部111に支軸112を介して回転自在に支持されたツマミ部113と、を備える。ハンドル組立体5は、アーム部111の基端部111aに貫通形成された貫通孔111bに挿通される連結ネジ106でハンドル駆動軸4に連結されている。
【0061】
連結ネジ106は、アーム部111の貫通孔111bを通じて第1ハンドル駆動軸101の駆動軸孔101aを貫通し、第2ハンドル駆動軸102のネジ穴102aに螺合している。連結ネジ106を締め付けることで、アーム部111の基端部111aの端面111eと第1ハンドル駆動軸101の端面101eとが接合されている。
【0062】
本実施形態では、この端面111e,101e同士の接合により制限手段120を構成している。端面111e,101eには、所望の粗面処理が施されており、連結ネジ106を締め付けることで、端面111e,101e同士が所定の摩擦力をもって当接している。端面111e,101e同士の摩擦力の大きさは、連結ネジ106の締め付け強さによって適宜設定することができる。なお、連結ネジ106を一番締め付けた状態で、端面111e,101e同士の間に所望の摩擦力が生じるように構成してもよい。
【0063】
次に、制限手段120の作用について説明する。はじめにハンドル組立体5を操作した際に、アーム部111と第1ハンドル駆動軸101との間に、端面111e,101e同士の接合により設定される摩擦力未満のトルクが作用した場合には、アーム部111と第1ハンドル駆動軸101とが、端面111e,101e同士の接合による摩擦力で共回りする。
【0064】
また、ハンドル組立体5を操作した際に、アーム部111と第1ハンドル駆動軸101との間に、端面111e,101e同士の接合により設定される摩擦力以上のトルクが作用した場合には、端面111e,101e同士の接合により設定される摩擦力に抗して、第1ハンドル駆動軸101に対してアーム部111が空転(相対回転)する。
【0065】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールR1によれば、巻き取り操作時にアーム部111から第1ハンドル駆動軸101に入力される駆動力が制限手段120により制限される。このため、必要以上の駆動力に起因する駆動軸筒8やロータ3、ハンドル駆動軸4、ドライブギャ組立体103等の構成部材の破損を防ぐことができる。また、ハンドル組立体5の回転操作で入力される人力を制限することができるため、魚釣用スピニングリールR1の各構成部材を最適強度で設計することができ、魚釣用スピニングリールR1の小型化、軽量化を図ることができる。
【0066】
(第4実施形態)
次に
図6を参照して第4実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態の魚釣用スピニングリールR1は、第3実施形態と異なる制限手段120Aをハンドル駆動軸4上に設けたものである。
【0067】
制限手段120Aは、アーム部111をハンドル駆動軸4に連結するための連結部分に設けられている。制限手段120Aは、連結ネジ106と、支持ピン107と、スカート部108と、スプリング109と、を備えている。制限手段120は、後記するように、アーム部111とハンドル駆動軸4との駆動力伝達可能な連結を維持または解除するものである。
【0068】
連結ネジ106は、ハンドル駆動軸4とアーム部111とを連結する部材であり、先端にネジが形成されている。連結ネジ106は、支持ピン107が挿通される孔部106bを端部に備え、スカート部108の通孔108bを通じて、第1ハンドル駆動軸101の駆動軸孔101aを貫通し、第2ハンドル駆動軸102のネジ穴102aに螺合している。
【0069】
支持ピン107は、アーム部111の基端部111aに設けられた縦孔111cに挿通され、連結ネジ106に対して基端部111aを傾倒可能に支持する部材である。スカート部108は、アーム部111の基端部111aの端面111eに当接する当接面108aを有する。スプリング109は、スカート部108と第1ハンドル駆動軸101との間に縮設されており、スカート部108をアーム部111の基端部111aに向けて所定の付勢力で付勢している。これによりスカート部108の側面と基端部111aの端面111eとの間には、アーム部111の回動操作で入力される所定のトルクに抗することが可能な連結力が備わる。
【0070】
次に、制限手段120Aの作用について説明する。はじめにハンドル組立体5を操作した際に、アーム部111とスカート部108との間に、スプリング109の付勢力により設定される当接力未満の押圧力(スプリング109の付勢力に抗する力)が作用した場合について説明する。この場合には、スプリング109による当接力が勝って、アーム部111とスカート部108とが密着する状態が維持され、スカート部108に対するアーム部111の姿勢が崩れることがない。これにより、ハンドル組立体5の回転操作時に、アーム部111とスカート部108とが良好に共回りする。
【0071】
一方、強負荷巻き取り操作時にハンドル軸4回り以外のこねくるような不規則な方向の力がハンドル組立体5に作用した際に、アーム部111とスカート部108との間に、スプリング109の付勢力により設定される当接力以上の押圧力が作用し、スプリング109による当接力に抗してアーム部111が支持ピン107を中心として回動し、アーム部111の基端部111aがスカート部108をハンドル駆動軸4側に押圧する。これにより、
図7に示すように、アーム部111が支持ピン107を中心として傾倒し、アーム部111とスカート部108との駆動力伝達可能な連結状態が解除される。
【0072】
以上説明した魚釣用スピニングリールR1では、制限手段120Aによりアーム部111からハンドル駆動軸4に入力される駆動力が制限されるため、必要以上の駆動力が入力されることに起因するアーム部111やハンドル駆動軸4、ドライブギャ組立体103等の各構成部材の破損を防ぐことができる。
【0073】
(第5実施形態)
次に
図8を参照して第5実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態の魚釣用スピニングリールR1は、前記した第3,第4実施形態と異なる制限手段130をハンドル駆動軸4上に設けたものである。
【0074】
制限手段130は、ハンドル駆動軸4と、ドライブギャ組立体103と、弾性ゴム部材からなる円筒状部材131と、により構成されている。円筒状部材131は、ハンドル駆動軸4である第1ハンドル駆動軸101と第2ハンドル駆動軸102との連結部分に外嵌されるとともに、ドライブギャ組立体103の径方向内側に配置される部材である。円筒状部材131は、ハンドル駆動軸4とドライブギャ組立体103との間に摩擦力をもって介在している。つまり、アーム部111からハンドル駆動軸4に入力された駆動力は、円筒状部材131を介してドライブギャ組立体103に入力される。
【0075】
なお、第1ハンドル駆動軸101と第2ハンドル駆動軸102とは、第1ハンドル駆動軸101側から差し込まれるネジ106Cにより連結されている。また、アーム部111は、基端部111aに取り付けられた取付部材115を介して第1ハンドル駆動軸101に取り付けられている。
【0076】
次に、制限手段130の作用について説明する。はじめにハンドル組立体5を操作した際に、ハンドル駆動軸4とドライブギャ組立体103の一方に、円筒状部材131の介在により設定される摩擦力未満のトルクが作用した場合には、ハンドル駆動軸4とドライブギャ組立体103とが円筒状部材131の介在による摩擦力で共回りする。
【0077】
また、ハンドル組立体5を操作した際に、ハンドル駆動軸4とドライブギャ組立体103との一方に、円筒状部材131の介在により設定される摩擦力以上のトルクが作用した場合には、円筒状部材131の介在により設定される摩擦力に抗して、ハンドル駆動軸4及びドライブギャ組立体103の一方が他方に対して空転(相対回転)する。
【0078】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールR1では、ハンドル駆動軸4からドライブギャ組立体103に入力される駆動力が制限手段130により制限される。このため、必要以上の駆動力に起因する駆動軸筒8やロータ3、ドライブギャ組立体103、ハンドル駆動軸4等の構成部材の破損を防ぐことができる。また、ハンドル組立体5の回転操作で入力される人力を制限することができるため、魚釣用スピニングリールR1の各構成部材を最適強度で設計することができ、魚釣用スピニングリールR1の小型化、軽量化を図ることができる。
【0079】
(第6実施形態)
次に
図9を参照して第6実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態の魚釣用スピニングリールR1は、ハンドル組立体5のツマミ部113の軸上に、ツマミ部113からアーム部111への駆動力の伝達を所定の範囲に制限する制限手段140を設けたものである。
【0080】
ツマミ部113は、
図9に示すように、支軸116と、支軸116に軸受116aを介して回転可能に支持されるツマミ本体117と、ツマミ本体117に装着されたカバー部材118と、を備えている。
【0081】
支軸116の先端側となる端部には、ツマミ本体117を支軸116に固定するための固定ネジ119が取り付けられている。これとは反対側となるツマミ部113の他端部には、端部側に向けて凹むツマミ部側凹部116gが形成されている。ツマミ部側凹部116gは、断面四角形状を呈している。ツマミ部側凹部116gには、制限手段140として機能する永久磁石142が取り付けられている。
【0082】
一方、ハンドル組立体5のアーム部111の先端部111fには、ツマミ部113に対向する部位にアーム部側凹部111gが形成されている。アーム部側凹部111gは、断面四角形状を呈している。アーム部側凹部111gには、制限手段140として機能する永久磁石141が取り付けられている。
【0083】
ツマミ部113は、これらの永久磁石141,142同士の吸引力によりアーム部111の先端部111fに取り付けられている。つまり、永久磁石141,142がハンドル組立体5とツマミ部113との連結部材として機能している。吸引力の大小は、永久磁石141,142の磁力を調整することで適宜設定することができる。
【0084】
次に、制限手段140の作用について説明する。はじめにツマミ部113を操作した際に、ツマミ部113とアーム部111との間に、永久磁石141,142により設定される吸引力未満のトルクが作用した場合には、ツマミ部113とアーム部111とが永久磁石141,142により設定される吸引力で吸着し共回りする。
【0085】
また、ツマミ部113を操作した際に、ツマミ部113とアーム部111との間に、永久磁石141,142により設定される吸引力以上のトルクが作用した場合には、永久磁石141,142により設定される吸引力に抗して、アーム部111に対してツマミ部113が空転(相対回転)あるいは分離する。
【0086】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールR1では、ツマミ部113からアーム部111に入力される駆動力が制限手段140により制限される。このため、必要以上の駆動力が入力されることに起因するハンドル駆動軸4やドライブギャ組立体103等の構成部材の破損を防ぐことができる。また、ツマミ部113の回転操作で入力される人力を制限することができるため、魚釣用スピニングリールR1の各構成部材を最適強度で設計することができ、魚釣用スピニングリールR1の小型化、軽量化を図ることができる。
【0087】
(第7実施形態)
次に、
図10を参照して第7実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態の魚釣用スピニングリールR1は、第6実施形態と異なる制限手段150をツマミ部113の軸上に設けたものである。
【0088】
制限手段150は、ツマミ部113をアーム部111に連結するための連結部分に設けられている。制限手段150は、支軸152と、支持ピン151と、バネ部材153と、を備えている。制限手段150は、後記するように、ツマミ部113とアーム部111との駆動力伝達可能な連結を維持または解除するものである。
【0089】
支軸152は、ツマミ部113を支持する軸部材である。支軸152におけるアーム部111側の端部152bには、支持ピン151が貫通している。支軸152は、支持ピン151を介してアーム部111側に取り付けられている。支持ピン151は、支軸152の端部を径方向に貫通し、アーム部111の先端部111nに設けられた透孔111kに挿通されている。支持ピン151は、アーム部111に対してツマミ部113を傾倒可能に支持する部材である。支軸152は、有底凹状(断面略U字状)のカバー部材155で覆われている。
【0090】
バネ部材153は、カバー部材155の底部155aの内面と支軸152の頭部152aとの間に縮設されている。バネ部材153は、カバー部材155の底部155aを、アーム部111の先端部111nの対向部111jに向けて所定の付勢力で付勢している。これによりカバー部材155の底部155aの底面とアーム部111の対向部111jとの間には、ツマミ部113の回動操作で入力される所定のトルクに抗することが可能な連結力が備わる。なお、アーム部111の先端部111nの内側には、ツマミ部113の支軸152の端部152bを収容可能な収容凹部111hが形成されている。
【0091】
次に、制限手段150の作用について説明する。はじめにツマミ部113を操作した際に、カバー部材155の底部155aとアーム部111の対向部111jとの間に、バネ部材153の付勢力により設定される当接力未満の押圧力(バネ部材153の付勢力に抗する力)が作用した場合には、ばね部材153による当接力が勝って、カバー部材155の底部155aとアーム部111の対向部111jとが密着する状態が維持される。これにより、アーム部111に対するツマミ部113の姿勢が崩れることが防止されるとともに、ツマミ部113の回転操作時にツマミ部113とアーム部111とが良好に共回りする。
【0092】
また、ツマミ部113を操作した際に、カバー部材155の底部155aとアーム部111の対向部111jとの間に、バネ部材153の付勢力により設定される当接力以上の押圧力が作用した場合には、バネ部材153による当接力に抗してツマミ部113が支持ピン151を中心として回動し、アーム部111の対向部111jがカバー部材155の底部155aを押圧する。これにより、ツマミ部113が支持ピン151を中心として傾倒し、ツマミ部113とアーム部111との駆動力伝達可能な連結状態が解除される。
【0093】
以上説明した魚釣用スピニングリールR1では、制限手段150によりツマミ部113からアーム部111に入力される駆動力が制限されるため、必要以上の駆動力が入力されることに起因するハンドル駆動軸4やドライブギャ組立体103等の各構成部材の破損を防ぐことができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、前記実施形態では、本発明を魚釣用スピニングリールに適用したものを示したが、これに限られることはなく、両軸受型の魚釣用リール等に対して適宜適用することができる。
また、前記実施形態を種々組み合わせて魚釣用スピニングリールや魚釣用リール等を構成してもよい。
【0095】
また、前記第1実施形態において、第1ライニング材11と第2ライニング材12との両方を設けたが、これに限られることはなく、いずれか一方を備える構成であってもよい。
【0096】
また、第4,第7実施形態では、付勢する部材としてスプリング109やバネ部材153を用いたが、これに限られることはなく、他の付勢部材、例えば板バネ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0097】
2 スプール
3 ロータ
4 ハンドル駆動軸
5 ハンドル組立体
6 ドライブギャ
8 駆動軸筒
10 制限手段
31 ボス部
103 ドライブギャ組立体
111 アーム部
113 ツマミ部
120 制限手段
120A 制限手段
130 制限手段
140 制限手段
150 制限手段
R1 魚釣用スピニングリール(魚釣用リール)